説明

硬化性組成物

【課題】透明性および接着性に優れる硬化性組成物の提供。
【解決手段】架橋性シリル基含有有機重合体(A)と、平均粒子径が0.01〜1μmの架橋された(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)と、硬化触媒(C)とを含有し、前記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)が、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子を50質量%以上含有する硬化性組成物。(A)100質量部に対して(B)1〜20質量部を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機微粒子を含有する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋性シリル基を含有する有機重合体(以下、「架橋性シリル基含有有機重合体」という。)は、室温での優れた硬化性、配合設計の容易さ等から、シーリング材、接着剤等の用途の硬化性組成物に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「一般式(I)


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、X1はハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基またはアミノ基、aは0〜2の整数を示す(ただし、R1およびX1がそれぞれ2以上であるばあいには、これらは同一または相異なる))で表わされる加水分解性シリル基を含有する乳化重合体の微粒子(A)、溶液重合法によってえられた前記一般式(I)で表わされる加水分解性シリル基を1分子中に少なくとも1つ含有するアクリル系共重合体(B)および硬化触媒(C)を含有してなる硬化性樹脂組成物。」が記載されている。
【0004】
また、本出願により、特許文献2において「主鎖がアルキレンオキシド単量体単位を含み、加水分解性ケイ素含有基を1分子あたり少なくとも1個有する重合体(A)と、前記重合体(A)中に分散した、3次元架橋された(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)と、シランカップリング剤(C)とを含有する硬化性組成物。」が提案されており、特許文献3において「主鎖がアクリル酸アルキルエステル単量体単位および/またはメタクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、加水分解性ケイ素含有基を1分子あたり少なくとも1個有する重合体(A)と、前記重合体(A)中に分散した、3次元架橋された(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)とを含有する硬化性組成物。」が提案されており、特許文献4において「重合体と、該重合体中に分散したポリマー微粒子とを含有し、前記重合体が、主鎖にアルキレンオキシド単量体単位を含み、加水分解性ケイ素含有基を1分子あたり少なくとも1個有する重合体(A)であり、前記ポリマー微粒子が、主鎖にアクリル酸アルキルエステル単量体単位および/またはメタクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体(b)が3次元架橋してなるポリマー微粒子(B)である、硬化性組成物。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−279648号公報
【特許文献2】特開2005−281638号公報
【特許文献3】特開2005−290040号公報
【特許文献4】特開2005−290162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、特許文献1〜4に記載された硬化性(樹脂)組成物を電子材料用の接着剤に用いると、使用する有機微粒子の種類によっては透明性や接着性に劣る場合があることを明らかとした。
【0007】
そこで、本発明は、透明性および接着性に優れる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、架橋性シリル基含有有機重合体とともにtert−ブチルアクリレートを重合して得られる有機微粒子を特定量以上含有する硬化性組成物が透明性および接着性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)に示す硬化性組成物を提供する。
【0009】
(1)架橋性シリル基含有有機重合体(A)と、
平均粒子径が0.01〜1μmの架橋された(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)と、
硬化触媒(C)とを含有し、
上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)が、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子を50質量%以上含有する硬化性組成物。
【0010】
(2)上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)の含有量が、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して1〜20質量部である上記(1)に記載の硬化性組成物。
【0011】
(3)上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)が、主鎖がアルキレンオキシド単量体単位を含む重合体および/またはアクリル重合体である上記(1)または(2)に記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0012】
以下に説明するように、本発明によれば、透明性および接着性に優れる硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明の硬化性組成物は、透明性および接着性に優れるため、電子材料用接着剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の硬化性組成物は、架橋性シリル基含有有機重合体(A)と、平均粒子径が0.01〜1μmの架橋された(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)と、硬化触媒(C)とを含有し、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)が、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子を50質量%以上含有する硬化性組成物である。
以下に、本発明の硬化性組成物に用いる架橋性シリル基含有有機重合体(A)、(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)および硬化触媒(C)について詳述する。
【0014】
<架橋性シリル基含有有機重合体(A)>
本発明の硬化性組成物が含有する架橋性シリル基含有有機重合体(A)は、以下に示す架橋性シリル基を末端または側鎖に少なくとも1個有する有機重合体である。
ここで、架橋性シリル基とは、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基やシラノール基のように湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより縮合反応を起こす基のことであり、代表的なものを示すと、例えば、下記式(1)で表される基が挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R33SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
ここで、R3は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR3は同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2をそれぞれ示す。
また、t個の下記式(2)で表される基におけるbは異なっていてもよい。tは0〜19の整数を示す。ただし、a+t×b≧1を満足するものとする。
【0017】
【化2】

【0018】
上記Yで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基であることが好ましく、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという理由からメトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
架橋性シリル基の中で、下記式(3)で表される架橋性シリル基が、入手容易の点から好ましい。下記式(3)中、R2、Y、aは上述のR2、Y、aと同義である。
【0019】
【化3】

【0020】
上記式(1)におけるR1およびR2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;R3がメチル基やフェニル基などである(R33SiO−で示されるトリオルガノシロキシ基;等が挙げられる。R1、R2、R3としてはメチル基が特に好ましい。
【0021】
したがって、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)は、末端または側鎖に、上記式(1)で表される架橋性シリル基を少なくとも1個有する有機重合体であれば特に限定されず、具体的には、例えば、シリル基含有ポリエーテル、シリル基含有ポリエステル、シリル基含有ビニル系重合体、シリル基含有ポリエステル変性ビニル系重合体、シリル基含有ジアリルフタレート系重合体、シリル基含有ジアリールフタレート系重合体、シリル基含有ポリイソブチレン、シリル基含有エチレン・α−オレフィン系共重合体、これらの混合物およびこれらの共重合体(ブロック共重合体、グラフト共重合体)のシリル基含有有機重合体等が挙げられる。
【0022】
これらのうち、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)がシリル基含有ポリエーテルである場合、主鎖のポリエーテルとしては、アルキレンオキシド単量体単位(例えば、−CH2CH2O−、−CH2CH(CH3)O−、−CH2CH(C25)O−、−CH(CH3)CH2O−、−CH(C25)CH2O−、−CH2CH2CH2O−、−CH2CH2CH2CH2O−等)を原料物質として、カチオン重合、アニオン重合の方法を用いて製造されるもの等が好適に例示される。
【0023】
上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)がシリル基含有ポリエステルである場合には、主鎖のポリエステルとしては、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フタル酸、アクリル酸などのカルボン酸、その無水物、そのエステルまたはハロゲン化物と、化学量論的過剰のエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのポリオールと、を反応させることにより調整されるポリエステルポリオール類、または、ラクトン類の開環重合により得られるラクトンポリオール類等が好適に例示される。
【0024】
上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)がシリル基含有ビニル系重合体である場合、ビニルモノマーとしてアクリルモノマーを主成分に用いることが、得られる架橋性シリル基含有有機重合体(A)を含有する本発明の硬化性組成物の耐候性が向上する理由から好ましい。
上記ビニルモノマーの具体例としては、特開2002−97449号公報に記載されているシクロヘキシルアクリレートおよび/またはブチルアクリレートを主成分とするビニルモノマーが挙げられる。また、上記公報では、上記ビニルモノマーとアルコキシシリル基含有モノマーとを共重合させることによって、シリル基含有ビニル系重合体が得られることが記載されている。更に、重合方法は、通常のラジカル重合に加え、特開昭57−502171号公報および特開昭59−6207号公報に記載されている高温連続重合を用いることもできる。
【0025】
上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)が、シリル基含有ポリイソブチレンやシリル基含有エチレン・α−オレフィン系共重合体である場合、主鎖としては、それぞれ、特開平4−154816号公報および特開2001−31719号公報に記載された方法により製造されたものが用いられる。
【0026】
また、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)の数平均分子量は1000以上であることが好ましく、3000〜30000であることがより好ましい。数平均分子量がこの範囲であると、架橋性シリル基含有有機重合体(A)を含有する本発明の硬化性組成物の硬化前の粘度が低くなるため取り扱い易く、硬化後の強度、伸び、モジュラス等の物性が良好となる理由から好ましい。
ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した数平均分子量(ポリスチレン換算)であり、測定にはテトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒として用いるのが好ましい。
【0027】
本発明においては、以上で説明するもののうち、後述する硬化触媒(C)に対する相溶性が良好となる理由から、主鎖がアルキレンオキシド単量体単位を含む重合体および/またはアクリル重合体であるのが好ましく、速硬化性を有し、また、ウレタン等と比較して発泡が起きない理由から、末端または側鎖に少なくとも1個のアルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等)を有しているのが好ましい。
【0028】
また、本発明においては、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)として、カネカ社製のMSポリマーやサイリル、エピオン、旭硝子社製のエクセスター等の市販品を用いることができる。
【0029】
<(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)>
本発明の硬化性組成物が含有する(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)は、平均粒子径が0.01〜1μmの架橋された(メタ)アクリル系のポリマー微粒子であり、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子を50質量%以上含有するものである。
ここで、「平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法により算出される値であり、本発明においては、ナノ粒子系部分測定装置(SALD−7100、島津製作所社製)を用いて測定された50%体積累積径(D50)をいう。
また、「架橋された」とは、tert−ブチルアクリレートが有するアクリロイルオキシ基および/またはメタクリロイルオキシ基(以下、単に「(メタ)アクリロイルオキシ基」という。)同士が反応して分子鎖を鎖状に伸ばした状態をいう。
また、「50質量%以上含有する」とは、tert−ブチルアクリレートとtert−ブチルアクリレート以外のアクリレート(以下、「他のアクリレート」という。)とが共重合した微粒子(平均粒子径が0.01〜1μmの微粒子に限る。以下、本段落において同様。)を含有する場合については、全単量体におけるtert−ブチルアクリレートの質量割合(仕込み比)をいい、他のアクリレートが単独ないし共重合した微粒子を併用する場合については、当該微粒子の質量とtert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子の質量(共重合である場合は仕込み比)との比率をいう。
【0030】
本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)としては、tert−ブチルアクリレートが単独重合した微粒子を用いる態様であってもよいが、上述した質量%を満たすものであれば、tert−ブチルアクリレートと他のアクリレートとが共重合した微粒子を用いる態様であってもよく、tert−ブチルアクリレートが単独ないし共重合した微粒子とともに、他のアクリレートが単独ないし共重合した微粒子を併用する態様であってもよい。
【0031】
ここで、他のアクリレートとしては、具体的には、例えば、メチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−エチルへキシルカルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H,−オクタフルオロペンチルメタアクリレート、フェノールアクリレート、パラクミルフェノールアクリレート、ノニルフェノールアクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、これらのエチレンオキサイド変成体またはプロピレンオキサイド変成体等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、接着性がより良好となる理由から、他のアクリレートとしてはイソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタアクリレートを用いるのが好ましく、具体的には、tert−ブチルアクリレートを単独重合させた微粒子とイソボルニルアクリレート等を単独重合させた微粒子とを併用するのが好ましい。
【0032】
また、本発明においては、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)に対して単分散性を有し、凝集を抑制することができる理由から、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)の平均粒子径は、0.01〜1μmであるのが好ましく、0.01〜0.3μmであるのがより好ましい。
同様に、本発明においてはtert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子が上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)の屈折率と近い屈折率を有している理由から、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子の含有率は、70質量%以上であるのが好ましく、80質量%以上であるのがより好ましい。
【0033】
上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)の調製方法は特に限定されず、例えば、ラジカル重合法等により、上述したアクリレートを水系溶媒(主に水)中で懸濁重合ないし無乳化剤(ソープフリー)乳化重合させることにより調製することができる。
ここで、上記重合は、上述したアクリレートとともに、ラジカル開始剤、架橋剤等を水系溶媒中で混合させ、室温下で反応させることにより進行させることができる。
上記ラジカル開始剤としては、具体的には、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、レドックス開始剤(過酸化水素、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウムなどの過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄などの還元剤の組み合わせ)等が挙げられる。
また、上記架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルエチル、エチレングリコールジメタクリレート、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、ポリ(ジメチルシロキサン)ジアクリレート等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)を特定量含有することにより、本発明の硬化性組成物の透明性と接着性が良好となる。
これは、透明性については、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)の屈折率が上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)の屈折率と近い値を有しているためと考えられ、接着性については、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)が上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)の特性を損なうことがないためであると考えられる。
【0035】
また、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)の含有量は、透明性と接着性がより良好となる理由から、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して1〜20質量部であるのが好ましく、2〜15質量部であるのがより好ましく、4〜10質量部であるのが更に好ましい。
【0036】
<硬化触媒(C)>
本発明の硬化性組成物が含有する硬化触媒(C)は、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)の硬化触媒(主に縮合触媒)であれば特に限定されない。
【0037】
上記硬化触媒(C)としては、具体的には、例えば、オクタン酸亜鉛、オクタン酸鉄、オクタン酸マンガン、オクタン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉄、ブタン酸スズ、カプリル酸スズ、オレイン酸スズなどのカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジオクチルスズジラウレート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、酸化ジブチルスズとフタル酸エステルとの反応生成物、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズ(トリエトキシシロキシ)、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズシリケートなどの有機スズ化合物;ジブチルスズジアセチルアセトナートなどのスズキレート化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ−2−エチルヘキシルオキシチタン、テトライソプロペニルオキシチタンなどのチタン酸エステル;ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、1,3−プロパンジオキシチタンビス(アセチルアセトナート)、1,3−プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタントリス(アセチルアセトナート)などのチタンキレート化合物;テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムステアレートなどのジルコニウムアルコキシド;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)などのジルコニウムキレート化合物;トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウムなどのアルミニウムアルコキシド;ジイソプロポキシアルミニウム(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)などのアルミニウムキレート化合物;ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミンなどの第1級アミン;ジブチルアミンなどの第2級アミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、キシリレンジアミンなどのポリアミン;トリエチレンジアミン、モルホリン、N−メチルホルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセンなどの環状アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール化合物;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのアミノフェノール化合物;これらのアミン化合物のカルボン酸塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセタートなどの第4級アンモニウム塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量アミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
これらのうち、保存中および取り扱い中に揮発しにくい理由から、金属化合物が好ましく、中でも微量の配合で優れた触媒能が得られる理由から、アミン化合物とカルボン酸金属塩、有機スズ化合物、スズキレート化合物およびチタン酸エステルが好ましい。
【0039】
本発明においては、上記硬化触媒(C)の含有量は、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。
硬化触媒(C)の含有量がこの範囲であると、硬化触媒の作用を十分に発揮でき、他の成分との相溶性に関しても問題がなく、硬化時に局所的な発熱や発泡が生じることもない。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記各種成分以外に、必要に応じて各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、可塑剤、軟化剤、チクソトロピー性付与剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤等が挙げられる。
【0041】
充填剤としては、各種形状のものを使用することができる。例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック等の有機または無機充填剤;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物、脂肪酸エステルウレタン化合物処理物;樹脂バルーンが挙げられる。
【0042】
可塑剤または軟化剤としては、例えば、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル等の脂肪族エステル類;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル等のリン酸エステル類;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤類;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類等のポリエステル系可塑剤;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン;パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等の石油系軟化剤等が挙げられる。
【0043】
チクソトロピー性付与剤(揺変剤)としては、例えば、乾式シリカ、ホワイトカーボン、水素添加ひまし油、炭酸カルシウム、テフロン(登録商標)、有機アマイドワックス、ステアリン酸カルシウム、有機ベントナイト、特開2003−171121号公報に記載の炭酸カルシウム等が挙げられる。
顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料が挙げられる。
【0044】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、フェノール系化合物、アミン系化合物、硫黄系化合物、リン系化合物が挙げられる。
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0045】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
上記の各添加剤は適宜、組み合わせて用いることができる。
【0046】
上記のような各成分から本発明の硬化性組成物を製造する方法は、特に限定されないが、上記架橋性シリル基含有有機重合体(A)、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)および上記硬化触媒(C)ならびに所望により含有してもよい各種添加剤を混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に混練し、均一に分散させる方法が挙げられる。
なお、本発明においては、上記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)を上述した懸濁重合ないし乳化重合により調製した場合、重合後に水系溶媒を除去したものを用いる。
【0047】
本発明の硬化性組成物は、湿気硬化型であり、1成分形の組成物として使用することができる。また、必要に応じて、硬化剤(上述した硬化触媒(C))以外を主剤とし、使用前に、主剤(A液)と硬化剤(B液)とを常法に従って混合して用いる2成分形の組成物として使用することもできる。
本発明の硬化性組成物は、湿気にさらすと、架橋性シリル基の加水分解により、硬化反応が進行する。また、適宜水分を供給して、硬化反応を進行させることもできる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
<(メタ)アクリル系ポリマー微粒子B1の調製>
水200mL中に、(メタ)アクリレート単量体としてtert−ブチルアクリレート(東京化成工業社製の試薬)10.10g、レドックス開始剤としてペルオキソ二硫酸カリウム(関東化学社製の試薬)0.58gおよび亜硫酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製の試薬)0.39g、ならびに、架橋剤としてジビニルベンゼン(東京化成工業社製の試薬)0.52gを配合し、室温で24時間激しく撹拌することで懸濁重合を行った。
撹拌終了後、遠心分離によって水と白色粉末固体を分離し、水を除去することで、内部で架橋が進行した白色の微粒子粉末(以下、「微粒子B1」という。)を得た。
【0050】
<(メタ)アクリル系ポリマー微粒子B2の調製>
(メタ)アクリレート単量体としてイソボニルアクリレート(東京化成工業社製の試薬)9.90gを用いた以外は、微粒子B1と同様の方法により、白色の微粒子粉末(以下、「微粒子B2」という。)を得た。
【0051】
<(メタ)アクリル系ポリマー微粒子B3の調製>
(メタ)アクリレート単量体としてジシクロペンタニルアクリレート(東京化成工業社製の試薬)9.89gを用いた以外は、微粒子B1と同様の方法により、白色の微粒子粉末(以下、「微粒子B3」という。)を得た。
【0052】
<(メタ)アクリル系ポリマー微粒子B4の調製>
(メタ)アクリレート単量体としてメチルメタクリレート(ライトエステルM、共栄社化学社製)10.05gを用いた以外は、微粒子B1と同様の方法により、白色の微粒子粉末(以下、「微粒子B4」という。)を得た。
【0053】
<(メタ)アクリル系ポリマー微粒子B5の調製>
(メタ)アクリレート単量体としてtert−ブチルアクリレート(東京化成工業社製の試薬)7.98gおよびイソボニルアクリレート(東京化成工業社製の試薬)2.01gを併用した以外は、微粒子B1と同様の方法により、白色の微粒子粉末(以下、「微粒子B5」という。)を得た。
【0054】
<(メタ)アクリル系ポリマー微粒子X1の調製>
架橋剤を用いなかった以外は、微粒子B1と同様の方法により、白色の微粒子粉末(以下、「微粒子X1」という。)を得た。
【0055】
<ポリスチレン微粒子X2の調製>
(メタ)アクリレート単量体に代えてスチレン(東京化成工業社製の試薬)10.07gを用い、架橋剤を用いなかった以外は、微粒子B1と同様の方法により、白色の微粒子粉末(以下、「微粒子X2」という。)を得た。
【0056】
得られた各微粒子の平均粒子径(D50)をナノ粒子系部分測定装置(SALD−7100、島津製作所社製)を用いて測定した。その結果を各微粒子を構成する単量体とともに下記第1表に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
(実施例1〜5、比較例1〜5)
ボールミルに、下記第2表に示す架橋性シリル基含有有機重合体(A)等を下記第2表中に示す組成比となるように添加し、これらを混合することにより硬化性組成物を調製した。
調製した各硬化性組成物について、以下に示す方法により透明性および接着性を評価した。これらの結果を下記第2表に示す。
【0059】
<透明性>
調製した各硬化性組成物をポリカーボネート製の透明基板(厚さ3mm)上に厚さが3mmとなるように塗布し、試験片を作製した。
試験片の全光透過率(%)をUV−Vis(村上色彩技術研究所社製、HM−150)を用いて測定した。
その結果、全透過率が80%以上のものを透明性に優れるものとして「○」と評価し、全透過率が70%以上80%未満のものを透過性にやや劣るものとして「△」と評価し、全透過率が70%未満のものを透過性に劣るものとして「×」と評価した。
【0060】
<接着性>
鋼板(長さ150mm×幅15mm×厚さ1mm)2枚を用い試験片を作製した。具体的には、接着面積が10mm×25mm、接着層厚さが0.3mmとなるように、得られた硬化性組成物を一方の鋼板の片面に塗布した後、直ちに他方の鋼板を重ね合わせて密着させ、23℃、50%相対湿度、7日間という条件で硬化させた。
硬化後の試験片について、JIS A1439:2010に準じてオートグラフ(型番:AGS−10Kng、島津製作所社製)を用いて引張速度10mm/minで引張試験を行い、せん断強度(MPa)を測定した。
その結果、せん断強度が3.5MPaよりも高ければ、接着性に優れていると評価できる。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
上記第2表に示される各成分は、以下のとおりである。
・重合体A1:トリメトキシシリル基を有するポリプロピレングリコールと1分子中に0.5〜1.0個の架橋性シリル基を有するアクリル重合体とのブレンド品(サイリルMA451、カネカ社製)
・微粒子B1〜B5:上記で合成した各微粒子
・微粒子X1およびX2:上記で合成した各微粒子
・硬化触媒C1:ジブチル錫ジラウレート(品番:ネオスタンS−1、構造式:Sn(C8172(OSi(OEt)32、日東化成社製)
【0064】
第1表および第2表に示すように、有機微粒子を含有しない比較例1の硬化性組成物は、透明性に優れるものの接着性に劣ることが分かった。
また、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子が50質量%以上含有していない比較例2および3の硬化性組成物は、微粒子B2ないしB3の添加により白濁し、透明性に劣り、接着性の改善効果も十分ではないことが分かった。
また、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子を50質量%以上含有する場合であっても、平均粒子径が大きな(メタ)アクリル系ポリマー微粒子を用いた比較例4の硬化性組成物は、透明性がやや劣り、接着性にも劣ることが分かった。
また、(メタ)アクリル系ポリマーに該当しない微粒子を用いた比較例5の硬化性組成物は、透明性および接着性がいずれも劣ることが分かった。
【0065】
これに対し、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子が50質量%以上含有する実施例1〜5の硬化性組成物は、いずれも透明性および接着性に優れることが分かった。
特に、イソボルニルアクリレートを重合して得られる微粒子を併用する実施例2の硬化性組成物は、接着性がより良好となることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性シリル基含有有機重合体(A)と、
平均粒子径が0.01〜1μmの架橋された(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)と、
硬化触媒(C)とを含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)が、tert−ブチルアクリレートを重合して得られる微粒子を50質量%以上含有する硬化性組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系ポリマー微粒子(B)の含有量が、前記架橋性シリル基含有有機重合体(A)100質量部に対して1〜20質量部である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記架橋性シリル基含有有機重合体(A)が、主鎖がアルキレンオキシド単量体単位を含む重合体および/またはアクリル重合体である請求項1または2に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2012−126773(P2012−126773A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277805(P2010−277805)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】