説明

硬化性組成物

【課題】発光ダイオードを初めとする光学デバイスにおいて、良好な接着性、耐熱性、耐光性を有する樹脂層を与えるよう硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)アルケニル基を有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒からなる硬化性組成物であって、(A)成分としてジアリルモノメチルイソシアヌレートを必須成分として用いることにより、硬化物の耐熱・耐光性を大きく損なうことなく熱応力を効果的に低減させ、硬化物の反りを低減させたり接着性を向上させることが可能であることを見出し、上記目的を達成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた耐熱・耐光性を維持しつつ、熱応力を低減させることにより優れた接着性を与えるような硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料や光学材料分野における光や熱といった外部環境に対する信頼性での要求は年々高まる一方である。当該分野においては熱硬化性樹脂が古くから使用されてきており、なかでも特にエポキシ樹脂はその汎用性や各種基材に対する接着性の高さから広く使用されてきたが、例えば高輝度発光ダイオードやパワー半導体等の周辺材料としては長期耐熱性・耐光性の観点から不十分であった。こういった耐熱性・耐光性を満足する材料としては古くからガラスが知られているが加工性や基材に対する接着性が悪いという問題があった。このような問題を解決すべく、エポキシ樹脂等の有機高分子材料よりも耐熱・耐光性に優れ、ガラス等の無機高分子よりも加工性や接着性に優れる有機―無機ハイブリッド樹脂が幅広く利用されており、中でも炭素―炭素2重結合とヒドロシリル基の付加反応であるヒドロシリル化反応を用いた熱硬化性樹脂が提案されており(たとえば特許文献1、2、3)これらは優れた耐熱・耐光性、接着性を有している。しかしながら光学的透明性の観点からはいずれも充分でないことから、発光ダイオードや表示デバイス等の光学材料用途への適用は困難であった。これに対して有機成分としてイソシアヌル酸骨格を有する系(たとえば特許文献4)では上記特性を維持したまま高い透明性を有する熱硬化性樹脂を与える組成物が提案されているが、ガラス転移点が非常に高く、たとえば基板上に塗布した場合に熱応力の高さに起因する反りの発生や、接着性の低さが問題となっていた。このような問題に対して、分子骨格中に例えばグリシジル基等のエポキシ基を有する組成物が提案されている(たとえば特許文献5)が、接着性を発現させるためにエポキシ基を導入するが故に耐熱性や耐光性が悪化するというトレードオフの問題があった。ゆえに、優れた耐熱・耐光性、透明性を維持しつつ、熱応力を低減させることにより反りの抑制や優れた接着性を与えるような熱硬化性樹脂の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−277645号報
【特許文献2】特開平7−3030号報
【特許文献3】特開平9−302095号報
【特許文献4】WO02/053648
【特許文献5】特許第4216512号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる実情を鑑みてなされたものであり、アルケニル基を有する有機化合物として、ジアリルモノメチルイソシアヌレートを必須成分とすることで、硬化物の耐熱・耐光性を損なうことなく熱応力を低減させ、優れた接着性を発現可能な硬化性組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の化学構造を有するアルケニル成分を用いた硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物が耐熱性、耐光性、透明性、接着性に優れることを見出した。本発明の完成に至った。即ち本発明は以下の構成を有するものである。
【0006】
1)(A)アルケニル基を有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒からなる硬化性組成物であって、(A)成分としてジアリルモノメチルイソシアヌレートを必須成分とすることを特徴とする硬化性組成物。
【0007】
2)(A)成分が、エポキシ基を含有しないことを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0008】
3)(A)成分としてトリアリルイソシアヌレート及びジアリルモノメチルイソシアヌレートを併用することを特徴とする1)または2)に記載の硬化性組成物。
【0009】
4)(B)成分が、(B−1)アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物と(B−2)1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する鎖状及び/又は環状のオルガノハイドロジェンシロキサンとをヒドロシリル化反応させることにより得られる(B−3)有機変性シリコーン化合物であることを特徴とする1)〜3)いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0010】
5)前記(B−1)成分が、ポリブタジエン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンタジエン、ジビニルビフェニル、ビスフェノールAジアリレート、及びトリビニルシクロヘキサン、及び下記一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする1)〜4)いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0013】
6)前記(B−1)成分が、下記一般式(2)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表されることを特徴とする1)〜5)いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0016】
7)前記(B−1)成分が、トリアリルイソシアヌレートまたはジアリルモノメチルイソシアヌレートまたはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートであることを特徴とする4)〜6)いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0017】
8)前記(B−1)成分が、トリアリルイソシアヌレートまたはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートであることを特徴とする4)〜6)いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0018】
9)前記(B−2)成分が、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する環状及び/または鎖状のポリオルガノシロキサンであることを特徴とする4)に記載の硬化性組成物。
【0019】
10)前記(B−2)成分が、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する環状ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする9)に記載の硬化性組成物。
【0020】
11)1)〜10)いずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【0021】
12)前記硬化物が、周波数10Hzで測定した動的粘弾性測定において、150℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であることを特徴とするとする11)に記載の硬化物。
【0022】
13)11)または12)記載の硬化物を樹脂層として含むことを特徴とする光学デバイス。
【0023】
14)前記樹脂層が発光ダイオードの封止剤であることを特徴とする13)に記載の光学デバイス。
【0024】
15)前記樹脂層が発光ダイオードのチップコート剤であることを特徴とする13)または14)に記載の光学デバイス。
【0025】
16)前記樹脂層が発光ダイオードのダイボンド剤であることを特徴とする13)に記載の光学デバイス。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高い耐熱・光性を維持しつつ、熱応力を効果的に低減させ、接着性や低ソリ性を有する硬化物を与えるような硬化性組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0028】
<(A)アルケニル基を有する有機化合物>
本発明におけるアルケニル基を有する有機化合物とは1分子中にアルケニル基を少なくとも1個含有する有機化合物であれば特に限定はされない。有機化合物としては、ポリシロキサンー有機ブロックコポリマーやポリシロキサンー有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、Sハロゲンのみを含むものであることが好ましい。また、アルケニル基の結合位置は特に限定されず、骨格のどの位置に存在してもよい。
【0029】
(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド等が例示され、これらは単独で使用しても2種類以上を併用しても構わない。上記具体例のうち、例えば硬化性組成物を基材と硬化させた場合の基材との接着性の観点からイソシアヌル酸誘導体を用いることが好ましく、さらに、耐熱耐光性のバランスの観点からトリアリルイソシアヌレートあるいはジアリルモノメチルイソシアヌレートを用いることがより好ましく、熱応力を効果的に低減させる観点からジアリルモノメチルイソシアヌレートがさらに好ましい。
【0030】
また、(A)成分の骨格中にアルケニル基以外の官能基を有していても構わないが、(B)成分との相溶性との観点から、メチル基、エチル基、プロピル基等の直鎖上の脂肪族炭化水素系基をはじめとする極性の低い官能基であるほうが好ましい。極性の高いグリシジル基やカルボキシル基等を使用した場合、(B)成分との相溶性が悪くなり、透明な組成物が得られない可能性がある。
【0031】
また、これら(A)成分は単独で用いても、2種類以上を併用しても構わないが、硬化物の物性を制御する観点から、2種類以上を併用することが好ましく、上記と同様に基材との接着性の観点から2種のイソシアヌル酸誘導体を併用することがより好ましく、耐熱耐光性と接着性のバランスの観点からはトリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートを併用することがさらに好ましい。
【0032】
<(B)1分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物>
本発明における(B)成分とは、主に硬化剤として使用されるものであり、分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有するオルガノシロキサンであれば特に制限は無い。あえて例示するとすれば、オルガノハイドロジェンオルガノシロキサンや、アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物((B−1成分))と1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する鎖状及び/又は環状のオルガノハイドロジェンオルガノシロキサン((B−2成分))をヒドロシリル化反応させることによって得られる有機変性シリコーン化合物((B−3)成分)が挙げられる。ここで言うオルガノハイドロジェンオルガノシロキサンとは、ケイ素原子上に炭化水素基あるいは水素原子を有するシロキサン化合物を指す。これら(B)成分のうち、有機化合物である(A)成分との相溶性の観点からは有機変性シリコーン化合物(B−3)を用いることが好ましい。
【0033】
また、オルガノハイドロジェンオルガノシロキサンの具体的な構造を例示するとすれば、
【0034】
【化3】

【0035】
(3<m+n≦50、3<m、0≦n 、R としては主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素で1 個以上のフェニル基を含有してもよい。)
【0036】
【化4】

【0037】
(1<m+n≦50、1<m、0≦n、Rとしては主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素で1個以上のフェニル基を含有してもよい。)
【0038】
【化5】

【0039】
( 3≦m+n≦20、3<m≦19、0≦n<18、Rとしては主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素で1 個以上のフェニル基を含有してもよい。)などで示される鎖状、環状のものや、ヒドロシリル基を含有する多面体ポリシロキサン等が挙げられる。
【0040】
また上記(B−3)成分である有機変性シリコーンとしては、(B−1)成分と(B−2)成分の組み合わせにより種々のものを合成して使用することが可能である。(B−1)成分は、アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物であれば特に限定はしないが、具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ビスフェノールAのジアリルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、また、従来公知のエポキシ樹脂のグルシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0041】
(B−1)成分としては良好な特性を有する硬化物が得られるという観点からは複素環骨格を有する有機化合物であることが好ましい。複素環骨格を有する有機化合物とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に限定はなく、3以上であればよい。入手性からは10以下であることが好ましい。複素環の具体的な例としては、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピラロール系、オキサゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系がある。中でも、本発明の効果を高めることから、複素環としてはイソシアヌル酸誘導体が好ましく、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルメタクリレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートが好ましい例として挙げられ、さらに耐光性の観点からはトリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートがより好ましい例として挙げられる。
【0042】
本発明における(B−2)成分は一分子中に少なくとも2つのヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサン化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するもの等が使用できる。これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、シリコーン系硬化性組成物中における相溶性が良いという観点からは環状オルガノポリシロキサンが好ましい。ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。(B−2)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は58であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
【0043】
<(C)ヒドロシリル化触媒>
本発明における(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、特に制限は無く、任意のもの使用することができる。あえて例示するとすれば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カ−ボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Ptn(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt〔(MeViSiO)4〕m};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)3〕4、Pt〔P(OBu)3〕4}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)2、また、Ashbyらの
米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh3)3、RhCl3、Rh/Al3O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。(C)成分の触媒量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−1〜10−8molの範囲で用いるのが好ましく、10−2〜10−6molの範囲で用いるのがより好ましい。10−8mol未満である場合、ヒドロシリル化が充分に進行しない場合があり、10−1を超える量を用いた場合、組成物の貯蔵安定性が悪化する恐れがある。なお、これらの(C)成分は1種類のみを用いても構わないし、複数を併用しても問題ない。
【0044】
<硬化性組成物>
本発明における硬化性組成物とは、ヒドロシリル化反応によって硬化反応を起こすような硬化性組成物であって、アルケニル基を有する化合物とヒドロシリル基を有する化合物、さらにヒドロシリル化触媒を構成成分に含むものであれば特に限定はされず、種々の有機及び無機化合物を使用することができる。
【0045】
該組成物中における(A)成分、(B)成分の組成比としては特に限定はしないが、硬化反応を効率的に進行させるという観点からはモル比が0.5〜2.0の範囲内にあることが好ましく、0.7〜1.5の範囲内にあることがより好ましく、0.8〜1.3の範囲内にあることがさらに好ましい。(但し、モル比とは、((B)成分のヒドロシリル基のモル数)/((A)成分のアルケニル基とのモル数)を表す。)
モル比が0.5未満である場合、例えば組成物を硬化させた場合に系中に過剰なアルケニル基が残存することにより硬化物の耐熱性が問題となり場合があり、またモルg比が1.3を超える場合には系中に過剰なヒドロシリル基が残存することによって例えば長期耐熱試験中にヒドロシリル基同士の縮合反応が起こり、硬化物の特性が変化してしまう場合がある。
【0046】
また、該組成物の粘度は、ハンドリング性の観点から、2000cP以下であることが好ましく、1000cP以下であることが好ましく、500cP以下であることがさらに好ましい。粘度が2000cPを超える場合、例えば本発明における組成物をディスペンサーで塗布しようとする場合に、樹脂詰まりが起こりやすくなったり、均一に塗布することが困難となる可能性がある。
【0047】
<硬化遅延剤>
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが例示される。
【0048】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチンが好ましい。
【0049】
貯蔵安定性改良剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1molに対し、下限10−1モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
【0050】
<接着付与剤>
本発明における硬化性組成物に対して、被着体に対する接着性を向上させる目的で接着付与剤を添加剤として加えることができ、たとえばシランカップリング剤、ほう素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を使用することが可能である。
【0051】
前記、シランカップリング剤の例としては、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。前記官能基については、中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。
【0052】
具体的に例示すると、エポキシ官能基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0053】
また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0054】
前記、ほう素系カップリング剤の例としては、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sDE−ブチル、ほう酸トリ−tDrt−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0055】
前記、チタン系カップリング剤の例としては、テトラ(n−ブトキシ)チタン,テトラ(i−プロポキシ)チタン,テトラ(ステアロキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタン,i−プロポキシ(2−エチルヘキサンジオラート)チタン,ジ−i−プロポキシ−ジエチルアセトアセテートチタン,ヒドロキシ−ビス(ラクテト)チタン、i−プロピルトリイソステアロイルチタネート,i−プロピル−トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート,テトラ−i−プロピル)−ビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,i−プロピルトリオクタノイルチタネート,i−プロピルジメタクリル−i−ステアロイルチタネートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0056】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0057】
本発明における接着性付与剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して5重量部以下であることが好ましい。また、接着性付与剤の種類あるいは添加量によっては、ヒドロシリル化反応を阻害するものがあるため、ヒドロシリル化反応に対する影響を考慮しなければならない。
【0058】
<その他の添加剤>
本発明の硬化を損なわない範疇で、本発明における硬化性組成物を硬化してなる硬化物に対してタック性や密着性を付与する目的で添加剤を使用することができる。使用する添加剤の構造は特に限定はしないが、硬化物からのブリードを抑制する観点からはアルケニル基またはヒドロシリル基を有する化合物であって、ヒドロシリル化によって硬化の最中に(A)成分または(B)成分と化学結合を形成できる化合物を用いることが好ましい。上記アルケニル基を有する化合物としてはアルケニル基を有する例えば、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端メチルフェニルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチル(3、3、3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。上記の添加剤の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して5重量部以下であることが好ましい。また、添加剤の種類あるいは添加量によっては、ヒドロシリル化反応に対する影響を考慮しなければならない。
【0059】
<硬化性組成物を硬化してなる硬化物>
本発明における硬化物は、耐熱性、耐光性に優れるとともに、硬化後の効果収縮が小さいことから、各種基材に対する接着性にも優れ、該性質を利用することによって種々の光学デバイスの樹脂層として用いることができる。
【0060】
本発明における硬化物は、熱応力を低減する観点からガラス転移温度を150℃以下に有することが好ましく、145℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が150℃を超える場合、硬化時、あるいは高温環境下における熱応力が大きくなり、例えば基材上で硬化させた場合に反りが起こったり、基材に対する接着性が低下する恐れがある。また、本発明における硬化物は同様に熱応力を低減させる観点から150℃における貯蔵弾性率が500MPa以下であることが好ましく、200MPa以下であることがより好ましく、100MPa以下であることがさらに好ましい。貯蔵弾性率が500MPaを超える場合、熱応力が大きくなり、基材上で硬化させた場合に反りが起こったり、基材に対する接着性が低下する恐れがある。ガラス転移温度の測定方法に関しては種々のものを用いることができ、動的粘弾性測定、熱機械測定等が例示され、また貯蔵弾性率は動的粘弾性測定によって測定することができる。
【0061】
<光学デバイス>
本発明における硬化性組成物を樹脂層として種々の光学デバイスを作製できるが、これには発光ダイオード、各種受光素子、表示ディスプレイ、太陽電池等が例示されうる。
【0062】
本発明の組成物を用いて発光ダイオードを製造することができる。この場合、発光ダイオードは本発明における硬化性組成物によって発光素子を被覆することができる。
【0063】
この場合発光素子とは、特に限定なく従来公知の発光ダイオードに用いられる発光素子を用いることができる。このような発光素子としては、例えば、MOCVD法、HDVPE法、液相成長法といった各種方法によって、必要に応じてGaN、AlN等のバッファー層を設けた基板上に半導体材料を積層して作成したものが挙げられる。この場合の基板としては、各種材料を用いることができるが、例えばサファイヤ、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。これらのうち、結晶性の良好なGaNを容易に形成でき、工業的利用価値が高いという観点からは、サファイヤを用いることが好ましい。
【0064】
積層される半導体材料としては、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。これらのうち、高輝度が得られるという観点からは、窒化物系化合物半導体(Inx GayAlz N)が好ましい。このような材料には付活剤等を含んでいてもよい。
【0065】
発光素子の構造としては、MIS接合、pn接合、PIN接合を有するホモ接合、ヘテロ接合やダブルへテロ構造等が挙げられる。また、単一あるいは多重量子井戸構造とすることもできる。
【0066】
発光素子はパッシベーション層を設けていてもよいし、設けなくてもよい。
【0067】
発光素子には従来知られている方法によって電極を形成することができる。
【0068】
発光素子上の電極は種々の方法でリード端子等と電気接続できる。電気接続部材としては、発光素子の電極とのオーミック性機械的接続性等が良いものが好ましいく、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウムやそれらの合金等を用いたボンディングワイヤーが挙げられる。また、銀、カーボン等の導電性フィラーを樹脂で充填した導電性接着剤等を用いることもできる。これらのうち、作業性が良好であるという観点からは、アルミニウム線或いは金線を用いることが好ましい。
【0069】
上記のようにして発光素子が得られるが、本発明の発光ダイオードにおいては発光素子の光度としては垂直方向の光度が1cd以上であれば任意のものを用いることができるが、垂直方向の光度が2cd以上の発光素子を用いた場合により本発明の効果が顕著であり、3cd以上の発光素子を用いた場合にさらに本発明の効果が顕著である。
【0070】
発光素子の発光出力としては特に限定なく任意のものを用いることができるが、20mAにおいて1mW以上の発光素子を用いた場合に本発明の効果が顕著であり、20mAにおいて4mW以上の発光素子を用いた場合により本発明の効果が顕著であり、20mAにおいて5mW以上の発光素子を用いた場合にさらに本発明の効果が顕著である。
【0071】
発光素子の発光波長は紫外域から赤外域まで種々のものを用いることができるが、主発光ピーク波長が550nm以下のものを用いた場合に特に本発明の効果が顕著である。
【0072】
用いる発光素子は一種類で単色発光させても良いし、複数用いて単色或いは多色発光させても良い。
【0073】
本発明の発光ダイオードに用いられるリード端子としては、ボンディングワイヤー等の電気接続部材との密着性、電気伝導性等が良好なものが好ましく、リード端子の電気抵抗としては、300μΩ-cm以下が好ましく、より好ましくは3μΩ-cm以下である。これらのリード端子材料としては、例えば、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅や、これらに銀、ニッケル等をメッキしたもの等が挙げられる。これらのリード端子は良好な光の広がりを得るために適宜光沢度を調整してもよい。
【0074】
本発明の発光ダイオードは上記したような組成物によって発光素子を被覆することによって製造することができるが、この場合被覆とは、上記発光素子を直接封止するものに限らず、間接的に被覆する場合も含む。具体的には、発光素子を本発明の組成物で直接従来用いられる種々の方法で封止してもよいし、従来用いられるエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂等の封止樹脂やガラスで発光素子を封止した後に、その上あるいは周囲を本発明の組成物で被覆してもよい。また、発光素子を本発明の組成物で封止した後、従来用いられるエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂等でモールディングしてもよい。以上のような方法によって屈折率や比重の差によりレンズ効果等の種々の効果をもたせることも可能である。
【0075】
封止の方法としても各種方法を適用することができる。例えば、底部に発光素子を配置させたカップ、キャビティ、パッケージ凹部等に液状の組成物をディスペンサーその他の方法にて注入して加熱等により硬化させてもよいし、固体状あるいは高粘度液状の組成物を加熱する等して流動させ同様にパッケージ凹部等に注入してさらに加熱する等して硬化させてもよい。この場合のパッケージは種々の材料を用いて作成することができ、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド樹脂等を挙げることができる。また、モールド型枠中に組成物をあらかじめ注入し、そこに発光素子が固定されたリードフレーム等を浸漬した後硬化させる方法も適用することができるし、発光素子を挿入した型枠中にディスペンサーによる注入、トランスファー成形、射出成形等により組成物による封止層を成形、硬化させてもよい。さらに、単に液状または流動状態とした組成物を発光素子状に滴下あるいはコーティングして硬化させてもよい。あるいは、発光素子上に孔版印刷、スクリーン印刷、あるいはマスクを介して塗布すること等により硬化性樹脂を成形させて硬化させることもできる。その他、あらかじめ板状、あるいはレンズ形状等に部分硬化あるいは硬化させた組成物を発光素子上に固定する方法によってもよい。さらには、発光素子をリード端子やパッケージに固定するダイボンド剤として用いることもできるし、発光素子上のパッシベーション膜として用いることもできる。また、パッケージ基板として用いることもできる。
【0076】
被覆部分の形状も特に限定されず種々の形状をとることができる。例えば、レンズ形状、板状、薄膜状、特開平6−244458記載の形状等が挙げられる。これらの形状は組成物を成形硬化させることによって形成してもよいし、組成物を硬化した後に後加工により形成してもよい。
【0077】
本発明の発光ダイオードは、種々のタイプとすることができ、例えば、ランプタイプ、SMDタイプ、チップタイプ等いずれのタイプでもよい。SMDタイプ、チップタイプのパッケージ基板としては、種々のものが用いられ、例えば、エポキシ樹脂、BTレジン、セラミック等が挙げられる。
【0078】
その他、本発明の発光ダイオードには従来公知の種々の方式が適用できる。例えば、発光素子背面に光を反射あるいは集光する層を設ける方式、封止樹脂の黄変に対応して補色着色部を底部に形成させる方式、主発光ピークより短波長の光を吸収する薄膜を発光素子上に設ける方式、発光素子を軟質あるいは液状の封止材で封止した後周囲を硬質材料でモールディングする方式、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を出す蛍光体を含む材料で発光素子を封止した後周囲をモールディングする方式、蛍光体を含む材料をあらかじめ成形してから発光素子とともにモールドする方式、特開平6−244458に記載のとおりモールディング材を特殊形状として発光効率を高める方式、輝度むらを低減させるためにパッケージを2段状の凹部とする方式、発光ダイオードを貫通孔に挿入して固定する方式、発光素子表面に主発光波長より短い波長の光を吸収する薄膜を形成する方式、発光素子をはんだバンプ等を用いたフリップチップ接続等によってリード部材等と接続して基板方向から光を取出す方式、等を挙げることができる。
【0079】
本発明の発光ダイオードは従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、例えばバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【実施例】
【0080】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0081】
(接着性試験1:クロスカット法)
本発明における組成物を10cm×10cmのガラス基板上に3cc塗布し、バーコーターを用いて膜厚40〜60μmになるように塗膜し、対流式オーブンにて150℃、1時間養生させることにより試験用塗膜物を得た。得られた塗膜物を使用してJIS5600−5−6準拠にてクロスカット試験を行い同規格の判定基準に従い、接着性を分類0〜5までの6段階にて評価を行った。
【0082】
(接着性試験2:ダイシェア試験法)
配合後の液状組成物を、厚さ100μmのアプリケーターで膜状に伸ばし、ここに2mm角のガラス製ダイを接触させ、ダイの片面に該液状組成物を付着させた後、ガラスエポキシ製およびアルミニウム製平板それぞれにのせて、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間の条件で段階的に熱硬化(接着)させた試験片を作成した。この試験片を用いて、デイジ社製万能ボンドテスター2400を用い、ガラスエポキシ製平板とガラス製ダイ間の接着強度を評価した。10kgfのロードセルを用い、試験スピードは83μm/secで実施した。測定はn=5で行い、最大値と最小値を除いた3つの平均値を採用した。アルミニウム製平板とガラス製ダイ間の接着強度も同様に実施した。
【0083】
(動的粘弾性測定)
硬化性組成物を3mm厚みのシリコーンゴム製スペーサーを2枚のガラス基板ではさみ込んで作製した型に流し込み、60℃/6時間、70℃/1時間、80℃/1時間、120℃/1時間、150℃/1時間で段階的に加熱を行って測定用硬化物(3mm厚)を作成した。作成した測定用硬化物の動的粘弾性を、UBM社製動的粘弾性測定装置ReogelE4000を用い、測定温度−50℃〜200℃、昇温速度4℃毎分、歪み4μメートル、周波数10Hz、チャック間25mm、引張モードで測定し、25℃及び150℃での貯蔵弾性率を計測するとともに、損失正接が極大を示す温度をガラス転移温度(以下Tgと称する)を計測した。
【0084】
(耐熱性試験1:長期耐熱試験)
上記の動的粘弾性測定と同様の条件で3mm厚の硬化物を作製後、対流式オーブンにて120℃、100時間養生した後、硬化物の着色の有無を目視で判断し、全く着色していない場合は◎、表面がやや着色している場合は○、全体的に着色している場合は△、着色が酷く透明性が失われている場合は×と評価した。
【0085】
(耐熱性試験2:はんだ試験)
上記の動的粘弾性測定と同様の条件で3mm厚の硬化物を作製後、260℃に加熱された半田浴に10秒間浸け、すぐに20℃の水浴に移して10秒間浸ける操作を、5回繰り返した後、硬化物の着色の有無を目視で判断し、全く着色していない場合は◎、表面がやや着色している場合は○、全体的に着色している場合は△、着色が酷く透明性が失われている場合は×と評価した。
【0086】
(耐光性試験)
スガ試験機(株)社製、メタリングウェザーメーター(形式M6T)を用いた。ブラックパネル温度120℃、放射照度0.53kW/m2で、積算放射照度50MJ/m2まで照射後、照射前後の外観の変化の有無を観察し、変化が無い場合は○、着色等の変化があった場合は×と評価した。
【0087】
(合成例1)
5Lの二口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート200g、及びトルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。1−エチニル−1−シクロヘキサノール2.95mgを加えた後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物724gを得た。H−NMRより、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(以下変性体Aと称する)であることがわかった。このようにして得られた変性体Aを実施例2、3、4及び比較例1、2における(B)成分として用いた。
【0088】
(合成例2)
5Lのセパラブルフラスコにトルエン1.38kg、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.36kgを加えて、内温が100℃になるように加熱した。そこに、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート300g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.36mL、トルエン300gの混合物を滴下した。30minで滴下を終了した。滴下中、内温が109℃まで上昇した。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと反応したもの(以下変性体Bと称する)であることがわかった。このようにして得られた変性体Bを実施例1及び比較例3における(B)成分として用いた。
【0089】
(実施例1〜3および比較例1〜3)
表1に示す配合比にて各成分を配合することにより、硬化性シリコーン組成部物を得、各種評価用の硬化物を所定の硬化条件によって得、各評価を実施した。
【0090】
各評価結果を表2にまとめた。表2より、実施例1〜4は耐熱耐光性を損なうことなく優れた接着性を示すことが分かるが、比較例1は熱応力の低減が不十分なため接着性が悪く、また比較例2は熱応力の低減により接着性には優れるものの(A)成分としてエポキシ基を含有しているため耐光性が不十分であり、比較例4は比較例2に比してさらに多くのエポキシ基が(A)成分に含まれるため耐熱性、耐光性が不十分であることが分かる。以上より、本発明における硬化性組成物は各種基材に対する接着性を損なうことなく、耐熱耐光性に優れる硬化物を与えることがわかる。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルケニル基を有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒からなる硬化性組成物であって、(A)成分としてジアリルモノメチルイソシアヌレートを必須成分とすることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
(A)成分が、エポキシ基を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
(A)成分としてトリアリルイソシアヌレート及びジアリルモノメチルイソシアヌレートを併用することを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
(B)成分が、(B−1)アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物と(B−2)1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する鎖状及び/又は環状のオルガノハイドロジェンシロキサンとをヒドロシリル化反応させることにより得られる(B−3)有機変性シリコーン化合物であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記(B−1)成分が、ポリブタジエン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンタジエン、ジビニルビフェニル、ビスフェノールAジアリレート、及びトリビニルシクロヘキサン、及び下記一般式(1)
【化1】

(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記(B−1)成分が、下記一般式(2)
【化2】

(式中R1、R2、R3はいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表されることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記(B−1)成分が、トリアリルイソシアヌレートまたはジアリルモノメチルイソシアヌレートまたはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項4〜6いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記(B−1)成分が、トリアリルイソシアヌレートまたはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項4〜6いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記(B−2)成分が、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する環状及び/または鎖状のポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記(B−2)成分が、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する環状ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項9に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項12】
前記硬化物が、周波数10Hzで測定した動的粘弾性測定において、150℃における貯蔵弾性率が100MPa以下であることを特徴とするとする請求項11に記載の硬化物。
【請求項13】
請求項11または12記載の硬化物を樹脂層として含むことを特徴とする光学デバイス。
【請求項14】
前記樹脂層が発光ダイオードの封止剤であることを特徴とする請求項13に記載の光学デバイス。
【請求項15】
前記樹脂層が発光ダイオードのチップコート剤であることを特徴とする請求項13または14に記載の光学デバイス。
【請求項16】
前記樹脂層が発光ダイオードのダイボンド剤であることを特徴とする請求項13に記載の光学デバイス。

【公開番号】特開2012−233117(P2012−233117A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103779(P2011−103779)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】