説明

硬化性組成物

【課題】硬化速度を遅延させることなく接着性を維持し、コストを抑えつつ安定した塗膜の形成が可能な硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する重合体を1つ以上含む有機重合体と、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとを含むシランカップリング剤と、を含むことを特徴とする硬化性組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化速度を調整しつつ、接着性を維持するのに優れ、建築部材などの接着剤として用いることができる硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築部材のアルミサッシ等の塗料としてアクリル電着塗装が知られている。アクリル電着塗装はアクリル樹脂とメラミン樹脂の熱硬化反応により塗膜を形成する塗装方法である。塗膜の熱硬化には電気炉等が使用されているが、部材の形状、厚み等によっては設定時間内に部材全体の温度が均一にならずに部分的に低温で硬化する塗膜が生じる。この低温で硬化した塗膜は、アクリル樹脂とメラミン樹脂の比率が設定温度で硬化した塗膜とは異なり、接着剤等と接着し難い塗膜となり、接着剤と塗膜との接着力が低下することが知られている。
【0003】
接着し難い塗膜に対しても安定した接着を行うための方法として、接着剤としてイソシアネート系化合物、シランカップリング剤等を含めた硬化性組成物を用いることが有効であることが知られている。しかしながら、イソシアネート化合物は変成シリコーン樹脂の硬化触媒として使用される金属触媒、アミン系触媒類との混在が安定性の点から困難であった。
【0004】
また、シランカップリング剤の中では、アミノシラン類が有効であり、中でも分子中にアミノ基を2個有するジアミノシランが有効であることが知られていた。従来、例えば、反応性ケイ素基を有する有機重合体に、シランカップリング剤としてジメトキシシラン化合物を含む硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2、参照)。また、ジアミノシランの中でもアルコキシシリル基がジメトキシの構造であるジメトキシシランがシランカップリング剤として有効であることが見出されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−39568号公報
【特許文献2】特開2005−281638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、シランカップリング剤としてジメトキシシラン化合物を用いた場合、硬化性組成物の硬化速度が非常に遅くなる、という問題があった。
【0007】
そのため、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する組成物の硬化触媒として、例えばスズ触媒等の有機金属化合物、カルボン酸類、アミン類などの触媒を使用し、硬化速度を早めるようにしている。しかしながら、ジメトキシシランを使用した場合、樹脂組成物の硬化速度を早めるためには、多量の触媒量が必要となり、コストが高くなる、という問題があった。
【0008】
また、シランカップリング剤として用いられるアミノシラン類として、ジメトキシシラン化合物の他にトリメトキシシラン化合物が知られている。シランカップリング剤としてトリメトキシシラン化合物を用いた場合には、ジメトキシシラン化合物を用いた場合に比較し、硬化速度を早めることができる。
【0009】
しかしながら、シランカップリング剤としてトリメトキシシラン化合物を用いた場合、硬化性組成物の硬化速度を調整することは困難となり、硬化速度が早すぎるため、得られる硬化物の接着性が低下する、という問題があった。
【0010】
そのため、硬化速度を調整しつつ、高い接着性を維持することができると共に、コストの低減を図ることができる硬化性組成物が求められている。
【0011】
本発明は、前記問題に鑑み、硬化速度を調整しつつ、高い接着性を維持することができると共に、コストの低減を図ることができる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、次に示す(1)〜(5)である。
(1) シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する重合体を1つ以上含む有機重合体と、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとを含むシランカップリング剤と、
を含むことを特徴とする硬化性組成物。
(2) 前記有機重合体が、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体との何れか一方又は両方を含むことを特徴とする上記(1)に記載の硬化性組成物。
(3) 前記有機重合体100質量部に対して前記N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランと前記N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとの何れか一方又は両方が、6質量部以上20質量部以下配合されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の硬化性組成物。
(4) 前記N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの配合量が、1.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする上記(1)から(3)の何れか1つに記載の硬化性組成物。
(5) 前記N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが、前記N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランと等量又はそれ以上含むことを特徴とする上記(1)から(4)の何れか1つに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硬化速度を調整しつつ、高い接着性を維持することができると共に、コストの低減を図ることができる硬化性組成物を得ることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
本実施形態に係る硬化性組成物(以下、「本実施形態に係る組成物」という。)は、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有するポリオキシプロピレン系重合体と、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体組成物との何れか一方又は両方を含む有機重合体と、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとを含むシランカップリング剤と、を含むことを特徴とする。
【0016】
<有機重合体>
有機重合体は、シロキサン結合を形成することにより架橋しうるケイ素含有基、すなわち反応性ケイ素基を有する重合体を少なくとも1つ以上含むものである。反応性ケイ素基としては、例えば、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基などが挙げられる。特に、反応性ケイ素基としては、加水分解性ケイ素含有基であることが好ましい。有機重合体の主鎖骨格は特に制限はなく、各種の主鎖骨格を持つものを使用することができる。
【0017】
有機重合体(A)における重合体は、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体等のポリオキシアルキレン系重合体;ビニル変性ポリオキシアルキレン系重合体;(メタ)アクリル変性ポリオキシアルキレン系重合体;(メタ)アクリル系重合体;(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のモノマーをラジカル重合して得られるビニル系重合体;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとの縮合、または、ラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体;ポリイソブチレン系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリルおよび/またはスチレン等との共重合体、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル及びスチレン等との共重合体;これらのポリオレフィン系重合体に水素添加して得られる水添ポリオレフィン系重合体等の炭化水素系重合体;前記有機重合体中でのビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるナイロン6・6、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるナイロン6・10、ε−アミノウンデカン酸の縮重合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;たとえばビスフェノールAと塩化カルボニルより縮重合して製造されるポリカーボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体;等が挙げられる。前記重合体は、一般に変成シリコーン樹脂と呼ばれるものを挙げることができる。なお、上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
【0018】
上記主鎖骨格をもつ重合体のうち、ポリオキシアルキレン系重合体、炭化水素系重合体、ポリエステル系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリカーボネート系重合体等は入手や製造が容易であることから好ましい。なかでも、ポリオキシアルキレン系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、比較的ガラス転移温度が低く、得られる硬化物が耐寒性に優れることから特に好ましい。
【0019】
本実施形態においては、有機重合体(A)は、ポリオキシプロピレン系重合体としてポリオキシアルキレン系重合体と、(メタ)アクリル酸エステル系重合体組成物との何れか一方又は両方を含むものであることが好ましい。
【0020】
有機重合体(A)の数平均分子量は3,000〜50,000が好ましく、5,000〜30,000が更に好ましい。
【0021】
有機重合体(A)中に含有される加水分解性ケイ素含有基は、ケイ素原子に結合した1個〜3個のヒドロキシ基と加水分解性基との何れか一方又は両方を有し、湿気や架橋剤の存在下、必要に応じて触媒等を使用することにより縮合反応を起こしてシロキサン結合を形成することにより架橋しうるケイ素含有基である。加水分解性ケイ素含有基としては、例えば、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基が挙げられる。具体的には、下記式で例示される、アルコキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アシロキシシリル基、アミノシリル基、アミノオキシシリル基、オキシムシリル基、アミドシリル基等が好適に用いられる。
【0022】
【化1】

【0023】
特に、中でも取扱いが容易である観点から、加水分解性ケイ素含有基はアルコキシシリル基であることが好ましい。
【0024】
また、アルコキシシリル基のケイ素原子に結合するアルコキシ基は、特に限定されないが、原料の入手が容易などの観点から、メトキシ基、エトキシ基またはプロポキシ基が好適に挙げられる。
【0025】
アルコキシシリル基のケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基は、特に限定されず、例えば、水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数が20以下である、アルキル基、アルケニル基もしくはアリールアルキル基などが好適に挙げられる。
【0026】
有機重合体(A)が有する加水分解性ケイ素含有基の数は、1分子あたり少なくとも1個である。また、加水分解性ケイ素含有基の結合位置は、主鎖の末端であるのが好ましく、主鎖の末端のみであるのがより好ましい。また、主鎖の両末端にそれぞれ加水分解性シリル基を有するのが、接着性、耐候性の点から好ましい。
【0027】
このような有機重合体(A)としては、従来より公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、MSポリマー(S810、S203、S303、S943、いずれも鐘淵化学工業社製)が挙げられる。
【0028】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤は、接着性をより向上させるために添加されるものである。シランカップリング剤としては、例えば、下記一般式(1)で示されるようなアミノ基含有シラン類;γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等のイソシアネート基含有シラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン類;β−カルボキシエチルトリエトキシシラン、β−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−β−(カルボキシメチル)アミノエチル−y−アミノプロピルトリメトキシシラン等のカルボキシシラン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有シラン類;トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン含有シラン類;等を挙げることができる。また、これらを変性した誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステル等もシランカップリング剤として用いることができる。本実施形態では、シランカップリング剤のなかでもアミノシラン類が特に好ましい。これらシランカップリング剤は単独で用いられてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらシランカップリング剤の共重合体であるアルコキシシラン類を用いてもよい。
【0029】
【化2】

(式中、Yは−NH2基及び/又は−NH−結合を含有し得るアルキル基、アリール基、アルコキシアルキル基、シクロアルキル基であり、Zは炭素数が1〜6までのアルキル基を表す。なお、3個のZは同一であっても異なっていてもよい。nは1〜3の整数)
【0030】
上記アミノシラン類としては、具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルジエトキシメチルシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリエトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルメチルジメトキシシラン、N−ブチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、3(N−メチル−2−アミノ−1−メチル−1−エトキシ)−プロピルトリメトキシシラン、N−エチル−4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、N−エチル−4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、トリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シラン類などが挙げられる。市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KBM602」、「KBM603」、「KBM903」等が挙げられる。これらアミノシラン類は、通常、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよいが、本実施形態においては、ジメトキシシランおよびトリメトキシシランの両方を含むようにする。また、アミノシラン類と他のシランカップリング剤を併用してもよい。
【0031】
上記アミノシラン類はカルボニル化合物でブロックされていてもよく、該カルボニル化合物としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類や、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類が挙げられる。
【0032】
本実施形態においては、シランカップリング剤としてジメトキシシランおよびトリメトキシシランの両方を含むものであればよく、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとの両方を含むものであればよい。
【0033】
本実施形態に係る組成物にシランカップリング剤を添加することにより、各種被着体、すなわち、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛、銅、モルタルなどの無機基材や、塩ビ、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの有機基材に対して、より接着性を向上させることができる。
【0034】
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含むシランカップリング剤の含有量は、重合体100質量部に対して6質量部以上20質量部以下であるのが好ましく、より好ましくは6質量部以上15質量部以下であり、さらに好ましくは8質量部以上10質量部以下である。N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含むシランカップリング剤の含有量が少なすぎると、接着性が低下する。また、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含むシランカップリング剤の含有量が多すぎると、接着剤の硬化性が非常に速くなり、被着体界面との接着性が得にくくなったり、接着剤としての作業性を確保しにくくなる場合や、硬化物が脆くなる。そのため、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含むシランカップリング剤の含有量を上記範囲内とすることで、得られる組成物は、高い接着性を有することができる。
【0035】
また、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含むシランカップリング剤の配合量は、硬化性組成物中に1.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.8質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは2.3質量%以上3質量%以下である。N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含むシランカップリング剤の含有量を上記範囲内とすることで、得られる組成物は、高い接着性を有することができる。
【0036】
シランカップリング剤に含まれるN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランは、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランと等量又はそれ以上含むことが好ましい。具体的には、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとは、1対1以上9対1以下の範囲で含まれることが好ましい。
【0037】
このように、本実施形態に係る組成物は、重合体と、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとを含むシランカップリング剤である。重合体に、シランカップリング剤として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含めることにより、本実施形態に係る組成物を接着剤として用いた時、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとの相互作用により、硬化速度を調整し、硬化速度を速めても、高い接着性を維持することができる。また、ジメトキシシランの他に、トリメトキシシランを含めているため、用いる触媒量を抑えることができる。従って、本実施形態に係る組成物によれば、硬化速度を調整し、作業性を良好に確保しつつ、高い接着性を維持することができると共に、コストの低減を図ることができる。
【0038】
本実施形態に係る組成物は、上記の重合体と、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとを含むシランカップリング剤の他に、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、可塑剤、充填剤、反応性希釈剤、硬化触媒、チクソトロピー性付与剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、乾性油、接着性付与剤、分散剤、脱水剤、紫外線吸収剤、溶剤などが挙げられる。これらの中の2種類以上を含有してもよい。
【0039】
本実施形態に係る組成物の製造方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法で製造することができる。例えば、重合体と、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとを含むシランカップリング剤および必要に応じて可塑剤等のその他の成分を、室温で均質に混合することで得ることができる。
【0040】
本実施形態に係る組成物は硬化速度を調整し、作業性を良好に確保しつつ、高い接着性を維持するのに優れることから、本実施形態に係る組成物は、例えば、建築、自動車や車両(新幹線、電車)、土木、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材の接着剤として好適に用いることができる。本実施形態に係る組成物は、特にアルミサッシ等の電着塗装した建築部材などの建築用接着剤として好適に用いることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る組成物は上記のような接着剤のほかに、一般事務用、医療用、炭素繊維、電子材料用などの接着剤としても用いることができる。電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、光学部品接合用接着剤、光ディスク貼り合わせ用接着剤、プリント配線板実装用接着剤、ダイボンディング接着剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態に係る組成物は接着剤として用いる他に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般用途向けの物品にも用いることができる。例えば、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤、フラットパネルディスプレー用シール剤、繊維の結束剤等が挙げられる。封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI用などのポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用といったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などが挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0044】
<実施例1〜5、比較例1〜4>
表1に示す各成分を同表に示す添加量(質量部)で配合し、これらを均一に混合して、表1に示される各硬化性組成物を得た。各々の実施例、比較例における各成分の添加量(質量部)を表1に示す。
【0045】
上記のようにして得られた各硬化性組成物を用いて、各硬化性組成物の可使時間(タックフリータイム)、各硬化性組成物の硬化物の接着性を各々測定した。
【0046】
<タックフリータイム>
タックフリータイムは、得られた各硬化性組成物を被着体表面に塗布し、20℃、50%RH程度において硬化する時間を測定した。20℃程度におけるタックフリータイムが40分〜240分の範囲内であれば作業性は良好であると判断した。タックフリータイムの測定結果を表1に示す。
【0047】
<接着性>
得られた接着剤組成物を、予め下記塗装硬化温度で塗装を焼付け硬化させた被着体表面に厚さが5mm程度となるようにヒモ状に塗布し、20℃、50%RHで7日間硬化させ、硬化物を得た。接着性は、基板上に所定の硬化温度で硬化させた硬化物を50mm/分の引張速度で、90°の方向へ引張る、接着面の剥離試験を行い、剥離試験における破壊形態を目視で観察し、接着性を評価した。接着性の評価は、下記のように評価し、剥離状態が接着面のほぼ全面が凝集破壊(CF)であれば、接着性が良好であると判断した。なお、CFとは、接着剤が塗装表面に残り破壊した状態をいう。接着性の評価結果を表1に示す。
(塗装硬化温度)
170℃、180℃、190℃、220℃
(接着性の評価)
○:全体がCF(凝集破壊)
△:薄層破壊(接着剤が塗装表面に薄く残り凝集破壊)
×:界面破壊(塗装表面に接着剤が残らず剥離)
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示す各実施例および比較例の各成分の詳細は以下のとおりである。
・重合体1:(メタ)アクリル酸エステル系重合体(商品名:「SA100S」、カネカ社製)
・重合体2:ポリオキシプロピレン系重合体(商品名:「S−203」、カネカ社製)
・重合体3:ポリオキシプロピレン系重合体(商品名:「MA−440」、カネカ社製)
・シランカップリング剤1:N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:「KBM−602」、信越シリコーン社製)
・シランカップリング剤2:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:「KBM−603」、信越シリコーン社製)
・硬化触媒1:オクチル酸スズ(商品名:「ニッカオクチックスSn」、日本化学産業社製)
・硬化触媒2:オクチル酸(商品名:「オクチル酸」、日本化学産業社製)
・硬化触媒3:ジメチルミノプロピルアミン(商品名:「DMAPA」、三井化学ファイン社製)
・炭酸カルシウム1:商品名:「カルファイン200」、丸尾カルシウム社製
・炭酸カルシウム2:商品名:「スーパーS」、丸尾カルシウム社製
・安定剤:商品名:「TES28」、旭化成ワッカーシリコーン社製
・可塑剤:商品名:「脱水DINP」、新日本理化社製
【0050】
表1に示すように、比較例1はタックフリータイムが30分程度であり、表面の破壊状態は薄層破壊であった。比較例2、3はいずれも表面の破壊状態は凝集破壊であったが、比較例2はタックフリータイムが19時間であり、比較例3はタックフリータイムが19時間であった。比較例1は、シランカップリング剤としてトリメトキシシランしか含んでいないため、強度が十分な硬化物が得られず、表面の破壊状態が薄層破壊であったといえる。比較例2、3は、シランカップリング剤としてジメトキシシランしか含んでいないため、硬化するのに時間がかかったといえる。
【0051】
これに対し、実施例1〜6は、いずれもタックフリータイムが40分〜240分の範囲内であり、表面の破壊状態は凝集破壊であった。実施例1〜6は、いずれもシランカップリング剤としてジメトキシシランとトリメトキシシランとの両方を含んでいたため、タックフリータイムが所定の範囲内であり、表面の破壊状態は凝集破壊であったといえる。また、実施例1はシランカップリング剤として含まれるジメトキシシランとトリメトキシシランとのうち、ジメトキシシランがほとんどであったため、タックフリータイムが240分程度となったといえる。また、実施例2〜6はシランカップリング剤として含まれるジメトキシシランとトリメトキシシランとのうち、ジメトキシシランをトリメトキシシランより少し多いか、同等の割合であったため、タックフリータイムが40分〜60分程度となったといえる。
【0052】
よって、実施例1〜6の組成物は比較例1〜3の組成物に比べて組成物を硬化させる際、タックフリータイムを所定の範囲内とし、表面の破壊状態を接着剤の凝集破壊とすることができることから、塗料などを電着塗装した建築部材用の硬化性組成物としての信頼性を高めることができる。従って、本実施形態に係る組成物は、硬化速度を調整し、得られる硬化物は高い接着性を有するなど物性に優れることから、接着剤用として信頼性の高い硬化性組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する重合体を1つ以上含む有機重合体と、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランとN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとを含むシランカップリング剤と、
を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記有機重合体が、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有するポリオキシアルキレン系重合体と、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素含有基を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体との何れか一方又は両方を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記有機重合体100質量部に対して前記N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランと前記N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとの何れか一方又は両方が、6質量部以上20質量部以下配合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの配合量が、1.5質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが、前記N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランと等量又はそれ以上含むことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2012−246347(P2012−246347A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117300(P2011−117300)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】