説明

硬化性組成物

【課題】室温硬化が可能であり、被着体への接着性、及び耐熱性に優れた実用性の高い硬化性組成物を提供する。
【解決手段】加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(A)と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含有する硬化性組成物であって、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、メルカプタン連鎖移動剤を用いてラジカル重合により製造された重合体であり、かつ、(メタ)アクリル系共重合体(B)の硫黄成分量は5〜30mmol/100gであることを特徴とする硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温硬化可能な硬化性組成物に関するものである。更に詳しくは、被着体への接着性、及び耐熱性に優れ、接着剤、シーリング材、塗料及びコーティング剤等として好適な硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体とを含有する硬化性組成物は、接着剤やシーリング材として幅広く利用されている。例えば、特許文献1には、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン重合体と加水分解性シリル基を有するビニル系重合体を含有する硬化性組成物が開示されており、接着剤、粘着剤及び塗料等として利用できることが記載されている。また、特許文献2には、シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有し、分子鎖が実質的に(1)炭素数1〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位及び/又はメタクリル酸アルキルエステル単量体単位と、(2)炭素数10以上のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単量体単位とからなる共重合体、(B)シロキサン結合を形成することによって架橋しうる珪素含有官能基を有するオキシアルキレン重合体、並びに(C)硬化促進剤からなる硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−122541号公報
【特許文献2】特開昭63−112642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2のような硬化性組成物は、加熱による物性の低下が著しく、接着剤として使用した場合には、早期に剥がれが生じるという問題がある。また、特許文献2の硬化性組成物は、(メタ)アクリル系共重合体の原料の単量体が高価であるという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、透明性、被着体への接着性、及び耐熱性に優れた実用性の高い硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、メルカプタン連鎖移動剤を用いてラジカル重合により製造され、かつ、硫黄成分が特定量の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体を、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体に配合すると、優れた耐熱性を発現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(A)と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含有する硬化性組成物であって、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、メルカプタン連鎖移動剤を用いてラジカル重合により製造された重合体であり、かつ、(メタ)アクリル系共重合体(B)の硫黄成分量は5〜30mmol/100gであることを特徴とする硬化性組成物。
2.上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の数平均分子量が、2000〜10000であることを特徴とする上記1に記載の硬化性組成物。
3.上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記オキシアルキレン系重合体(A)と上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計100質量部に対して、5〜80質量部であることを特徴とする上記1又は2に記載の硬化性組成物。
4.更に、硫黄系酸化防止剤(C)を含有することを特徴する上記1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。
5.硬化性組成物の硫黄成分量が、2〜15mmol/100gであることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る硬化性組成物は、以上のように、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(A)と、メルカプタン連鎖移動剤を用いてラジカル重合により製造された重合体であり、かつ、硫黄成分が特定量の加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含有する。そのため、大気中の水分などにより室温硬化して、被着体への接着性、及び耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。耐熱性試験では、劣化を促進することにもなることから、優れた耐熱性とは、優れた耐久性も意味する。
また、本発明の硬化性組成物が、更に硫黄系酸化防止剤(C)を含有する場合は、硬化物の透明性を維持しつつ、より耐熱性及び耐久性に優れた硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に係る硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(A)と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含有する硬化性組成物であって、前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、メルカプタン連鎖移動剤を用いてラジカル重合により製造されたものであり、かつ、(メタ)アクリル系共重合体(B)の硫黄成分量は5〜30mmol/100gであることを特徴とする。加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(A)[以下、「成分(A)」ともいう]は、大気中などの水分によりシロキサン結合を形成し、架橋して硬化物となる分子内にシリル基を1個以上含有する有機重合体であって、硬化性組成物のベース樹脂となるものである。
【0009】
成分(A)のオキシアルキレン単位としては、以下のものが挙げられる。
−(CH2n−O−(nは1〜10の整数)
−CH2CH(CH3)−O−
−CH2CH(C25)−O−
−CH2C(CH32−O−
−CH2CH(CH=CH2)−O−
オキシアルキレン重合体中に上記の繰り返し単位を1種又は2種以上が含まれていてもよい。作業性に優れる点で、−CH2CH(CH3)−O−なるオキシアルキレン単位を有する化合物は好ましいものである。
【0010】
成分(A)のオキシアルキレン系重合体の重合方法としては、特に限定されるものではないが、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、フォスファゼンを用いた重合法等が挙げられる。複合金属シアン化物錯体触媒による重合法(米国特許第3278457号、米国特許第3278458号等参照)は、高分子量で分子量分布が狭いポリマーを得るのに適しており、硬化性組成物の粘度と硬化物の破断伸びのバランスが優れるため好ましい。
【0011】
成分(A)の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)によるポリスチレン換算分子量で2000〜50000であることが好ましい。重量平均分子量が2000未満では、硬化性組成物の柔軟性が不足する場合があり、重量平均分子量が50000を超えると組成物の粘度が高くなるため、硬化性組成物の塗工時に作業性が低下する場合がある。
【0012】
成分(A)に含有される加水分解性シリル基は、珪素原子に結合したヒドロキシル基又は加水分解性基を有し、硬化触媒による反応によってシロキサン結合を形成することにより架橋し得る基である。加水分解性シリル基としては、特に限定されないが、架橋し易く製造し易い点で下記一般式(1)のものが好ましい。
【0013】
【化1】

(式中、Rは炭化水素基を示し、好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基である。Xはハロゲン原子、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基より選ばれる反応性基であり、Xが複数存在する場合には、Xは同じ基であるか、あるいは相異なる基であってもよい。Xはアルコキシ基が好ましい。nは0、1又は2の整数である。)
【0014】
成分(A)のアルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、メチルジメトキシエトキシシリル基を有するものが好ましい。硬化速度と柔軟性のバランスからトリメトキシシリル基又はメチルジメトキシシリル基が特に好ましい。
また、1分子中のアルコキシシリル基の数は1〜4個が好ましく、より好ましくは1.5〜3個である。1個未満では硬化不十分になり、4個を超えると硬化物が硬くなるからである。
【0015】
成分(A)の具体例としては、カネカ社製の商品名「MSポリマーS202」、「MSポリマーS303」、「サイリルSAT200」、「サイリルSAT30」、旭硝子社製の商品名「エクセスターES−2410」、「エクセスターES−S2420]、「エクセスターES−3430]等が挙げられる。
【0016】
本発明に係る加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(B)[以下、「成分(B)」ともいう]は、メルカプタン連鎖移動剤を用いてラジカル重合により製造された重合体であり、かつ、その硫黄成分量が5〜30mmol/100gの重合体である。成分(B)は、硬化性組成物を構成するもう一つのベース樹脂であり、硬化物の力学物性を調整し、耐熱性などの耐久性を高める作用を有する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「アクリル又はメタクリル」を意味する。
【0017】
成分(B)の重合に用いる(メタ)アクリル系単量体としては、ラジカル重合性があれば特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。
【0018】
また、成分(B)及びこれを配合した組成物の物性を損なわない範囲で、その他のビニル系単量体を共重合することができる。具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。
上記(メタ)アクリル系単量体と、その他のビニル系単量体を共重合する場合は、(メタ)アクリル系単量体の割合が50質量%以上とすることが好ましい。
【0019】
成分(B)に含まれる加水分解性シリル基は、成分(A)と同じ官能基である。成分(B)に含まれる加水分解性シリル基の数の平均値f(Si)は、被着体への接着性及び硬化物の引張特性の観点から、好ましくは0.5〜3.0個、より好ましくは1.0〜2.8個、更に好ましくは1.5〜2.5個である。このf(Si)が小さすぎると、得られる硬化物の架橋密度が低下し、被着体への接着性が十分でない場合がある。一方、f(Si)が大きすぎると、架橋密度が大きくなりすぎて、脆く且つ耐衝撃性に劣る硬化物が形成される場合がある。尚、上記f(Si)の算出方法は、後述される。
【0020】
上記成分(B)に含まれる加水分解性シリル基の位置は、特に限定されず、重合体の側鎖及び/又は末端とすることができる。
上記加水分解性シリル基が、重合体の側鎖に存在する場合、この加水分解性シリル基を含む構造単位は、重合性不飽和結合及び加水分解性シリル基を有する化合物(以下、「加水分解性シリル基を有する重合性不飽和化合物」ともいう)に由来するものとすることができる。
【0021】
重合性不飽和結合及び加水分解性シリル基を有する化合物(加水分解性シリル基を有する重合性不飽和化合物)としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化2】

(式中、R3は、水素原子又はメチル基であり、R4は、それぞれ、独立に、炭素数1〜20の炭化水素基であり、Zは、直接結合、又は、−COOR6−(R6は、炭素数1〜6の2価のアルキレン基)、−CH264CH2CH2−、−CH2OCOC64COO(CH23−等の2価の有機基であり、Xは、それぞれ、独立に、ハロゲン原子、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、メルカプト基、アルケニルオキシ基及びアミノオキシ基より選ばれる反応性基であり、mは、0、1又は2である。)
【0023】
上記一般式(2)におけるR4が示す炭素数1〜20の炭化水素基は、好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜0のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基である。m=2のとき、複数のR4は、互いに同一であっても、異なってもよい。
また、m=0又は1のとき、複数のXは、互いに同一であっても、異なってもよい。
【0024】
上記一般式(2)で表される、加水分解性シリル基を有する重合性不飽和化合物としては、CH2=CHSi(CH3)(OCH32、CH2=CHSi(CH3)Cl2、CH2=CHSi(OCH33、CH2=CHSiCl3、CH2=CHCOO(CH22Si(CH3)(OCH32、CH2=CHCOO(CH22Si(OCH33、CH2=CHCOO(CH22Si(CH3)Cl2、CH2=CHCOO(CH22SiCl3、CH2=C(CH3)COO(CH22Si(CH3)(OCH32、CH2=C(CH3)COO(CH22Si(OCH33、CH2=C(CH3)COO(CH23Si(CH3)(OCH32、CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OCH33、CH2=C(CH3)COO(CH22Si(CH3)Cl2、CH2=C(CH3)COO(CH22SiCl3、CH2=CHCH2OC(O)−Ph−COO(CH23Si(CH3)(OCH32、CH2=CHCH2OC(O)−Ph−COO(CH23Si(OCH33、CH2=CHCH2OC(O)−Ph−COO(CH23Si(CH3)Cl2、CH2=CHCH2OC(O)−Ph−COO(CH23SiCl3等が挙げられる。尚、「Ph」はパラフェニレン基を意味する。
【0025】
また、上記加水分解性シリル基を重合体の末端に存在させるためには、リビング重合開始剤等の残基、反応性シリル基含有チオール化合物等を利用した方法が適用される。例えば、リビングラジカル重合を利用した重合体の製造方法としては、特開平11−130931号公報に開示される原子移動ラジカル重合(ATRP)法、特開2009−215472号公報に開示されるテルル金属を用いた開始剤を使用する方法、特表2006−503971号公報に開示される可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)法、特表平9−511786号公報に開示されるニトロキシドラジカルを利用した方法等により、(メタ)アクリル系共重合体を得た後、末端に加水分解性シリル基を導入する方法等が知られている。また、反応性シリル基含有チオール化合物を利用して、末端に加水分解性シリル基を有する重合体を製造する方法としては、特開2001−40037号公報に開示される方法、即ち、メタロセン化合物、及び、分子中に少なくとも1つの反応性シリル系単量体の存在下に、重合性(メタ)アクリル系単量体を重合する方法等が知られている。
【0026】
次に、本発明の硬化性組成物に含まれる成分(B)の製造方法について説明する。
成分(B)は、通常のラジカル重合によって得ることができ、溶液重合、塊状重合、分散重合いずれの方法でもよく、また、近年開発されたリビングラジカル重合法でもよい。反応プロセスは、バッチ式、セミバッチ式、連続重合のいずれの方法でも良い。しかし、もっとも好ましくは150〜350℃の高温連続重合方法により得られるものがよい。重合温度が150℃に満たない場合は、分岐反応が起こり分子量分布を広くし、分子量を下げるのに多量の開始剤を必要とし、また、除熱などの生産上の問題がおこることもある。他方350℃より高すぎると、分解反応が発生して重合液が着色したり、分子量が低下したりする。前記の温度範囲で重合することにより、分子量が適当、無着色で夾雑物の少ない共重合体を効率よく製造することができる。すなわち、当該重合方法によれば、極微量の重合開始剤を使用すればよく、純度の高い共重合体が得られる。一般的に重合体中に均一に架橋性官能基が導入されることが、硬化性や耐久性等の物性を保つ上で重要である。反応器に攪拌槽型反応器を用いれば組成分布(架橋性官能基の分布)や分子量分布の比較的狭い(メタ)アクリル酸エステル共重合体を得ることができるため好ましい。また、管状型反応器よりも連続攪拌槽型反応器を用いるプロセスが組成分布、分子量分布を狭くするのでより好ましい。
【0027】
高温連続重合法としては、特開昭57−502171号、特開昭59−6207号、特開昭60−215007号等に開示された公知の方法に従えば良い。例えば、加圧可能な反応機を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、各単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応機へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の重合液を抜き出す方法が挙げられる。また、単量体混合物には、メルカプタン連鎖移動剤や重合開始剤を配合することもできる。圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、前記反応温度を維持できる圧力であればよい。単量体混合物の滞留時間は、1〜60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が充分に反応しない恐れがあり、未反応単量体が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2〜40分である。
【0028】
成分(B)のラジカル重合の際にメルカプタン連鎖移動剤を使用し、成分(B)の硫黄成分量を特定の範囲とすることにより、成分(A)の熱分解を抑制することができる。その結果、成分(A)を配合した硬化性組成物の耐熱性が向上する。
上記メルカプタン連鎖移動剤として、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルモノメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルモノフェニルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルモノメトキシシラン、3−メルカプトプロピルモノメチルジエトキシシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、3−メルカプトブチルトリメトキシシラン、メルカプト酢酸、β―メルカプトプロピオン酸、β―メルカプトプロピオン酸メチル、β―メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、β―メルカプトプロピオン酸n−オクチル、β―メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、β―メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3―メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3―メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ、トリス[(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル]イソシアヌレート、キス(3―メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエタノール、チオフェノール、チオグリセロール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、1−オクタンチオール、ドデシルメルカプタン等を挙げることができる。これらの中で、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β―メルカプトプロピオン酸メチル、β―メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、β―メルカプトプロピオン酸n−オクチル、1−オクタンチオール、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノールが比較的低分子量であり少量で共重合体中に硫黄成分を導入できる点から好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
また、上記メルカプタン連鎖移動剤の使用量は、成分(B)の硫黄成分量が5〜30mmol/100gに入るように調整する。
なお、本発明における硫黄成分量は、次のようにして求めた値である。回収した揮発成分をガスクロマトグラフ(GC)より組成を求め、物質収支から共重合体の共重合組成を算出し硫黄成分量(mmol/100g)とした。
【0029】
上記単量体混合物に含まれる重合開始剤は、特に限定されず、従来、公知の重合開始剤であって、所定の重合温度においてラジカルを発生する重合開始剤を用いることができる。
上記重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物、無機過酸化物、レドックス型重合開始剤等が挙げられる。
【0030】
上記有機過酸化物としては、tert−アミル−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチル−tert−ヘキシルパーオキサイド、tert−アミル−tert−ヘキシルパーオキサイド、ジ(tert−ブチル)パーオキサイド、ジ(tert−アミル)パーオキサイド、ジ(tert−ヘキシル)パーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0031】
上記アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0032】
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
また、レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
【0033】
上記重合開始剤としては、開始剤ラジカルが水素原子の引き抜きを起こしにくい、有機過酸化物及びアゾ系化合物が好ましく、過酸化物が特に好ましい。また、この過酸化物としては、ジ(tert−ブチル)パーオキサイド、ジ(tert−アミル)パーオキサイド及びジ(tert−ヘキシル)パーオキサイドがより好ましく、ジ(tert−アミル)パーオキサイド及びジ(tert−ヘキシル)パーオキサイドが特に好ましい。上記重合開始剤として、過酸化物を用いることにより、生成した開始剤ラジカルによる共重合体からの水素原子の引き抜きを起こしにくく、得られる共重合体の分岐化や、ゲル化を抑制することができる。
上記重合開始剤の使用量は、単量体混合物に含まれる単量体成分100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部である。
【0034】
上記単量体混合物は、有機溶剤を含んでもよい。
上記有機溶剤としては、直鎖状若しくは分枝状の脂肪族炭化水素;脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;これら炭化水素における1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されてなるハロゲン置換化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソカルボン酸エステル;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明において、特に好ましい有機溶剤は、得られる共重合体の溶解性に優れ、且つ、水分を除去できる、オルソギ酸メチル及びオルソ酢酸メチルである。これらの化合物を用いると、湿気硬化性のシリル基を含有する高分子を製造するため、重合系内の水分をできるだけ少なくしないと重合中に架橋反応が生じ、分子量分布の広いポリマーとなるからである。オルソギ酸メチル及びオルソ酢酸メチルを使用すると、シリル基の架橋反応を生じさせることなく安定に重合することができる。また、反応系における水分をできるだけ少なくすることにより、単量体成分の重合中に架橋反応を抑制することができ、分子量分布の狭い共重合体を得ることができる。
上記有機溶剤の使用量は、単量体混合物に含まれる単量体成分100質量部に対して、通常、0〜100質量部である。
【0035】
成分(B)の硫黄成分量は、5〜30mmol/100gである必要があり、7〜28mmol/100gであることが好ましく、9〜26mmol/100gであることがより好ましい。当該硫黄成分が5mmol/100g未満では、硬化物の耐熱性が不十分な場合がある。一方、当該硫黄成分が30mmol/100gを超えると、得られる硬化物が黄色く着色する場合がある。
【0036】
成分(B)の数平均分子量(Mn)は、2,000〜10,000であり、好ましくは2,500〜8,000、より好ましくは3,000〜6,000である。前記範囲のMnを有する成分(B)を含む組成物を用いることにより、被着体への接着性、力学物性等に優れた硬化物を得ることができる。また、この範囲のMnを有する成分(B)を含む組成物は、後述する用途等に適用する際の好適な粘度を有する。尚、Mnが大きすぎる重合体を用いると、得られる組成物の粘度が高く、後述する用途等に適用する際の塗工性が低下する場合がある。一方、Mnが小さすぎる重合体を用いると、後述する用途等に適用する際、基材に対する接着性が低下する場合がある。
【0037】
また、上記成分(B)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から算出される多分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.1〜3.5、より好ましくは1.2〜3.0、更に好ましくは1.2〜2.5である。上記範囲の多分散度を有する成分(B)を含む組成物を用いることにより、優れた接着強度を得ることができる。また、この組成物は、後述する用途等に適用する際の好適な粘度を有する。
【0038】
成分(B)のガラス転移温度は、−30〜30℃であることが好ましく、−25〜25℃であることがより好ましい。ガラス転移点が前記範囲内であれば、被着体への接着性及び硬化物の引張特性に優れる硬化性組成物を得ることができる。
【0039】
硬化性組成物における成分(B)の含有量は、上記オキシアルキレン系重合体(A)と(メタ)アクリル系重合体(B)の合計100質量部に対して、5〜80質量部であることが好ましく、20〜60質量部であることがより好ましく、30〜50質量部であることが特に好ましい。成分(B)の含有量が5質量部未満では、耐熱性が不足する場合があり、80質量部を超えると、力学物性(破断伸び)が不足する場合がある。
【0040】
本発明に係る硬化性組成物は、更に硫黄系酸化防止剤(C)[以下、「成分(C)」ともいう]を含むことができる。本発明の硬化性組成物に、更に成分(C)を配合することにより、硬化物の透明性を維持しつつ、より耐熱性を向上させることができる。
成分(C)としては、例えば、ジラウリル−、ジミリスチル−、ジステアリル−などのジアルキルチオジプロピオネート、及びブチル−、オクチル−、ラウリル−、ステアリル−などのアルキルチオプロピオン酸の多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート)のエステル(例えば、ペンタエリスリトールテトララウリルチオプロピオネート)が挙げられる。
上記成分(C)の使用量は、硬化性組成物の硫黄成分量が、2〜15mmol/100gになるように調整することが好ましい。当該硫黄成分量が2mmol/100gに満たないと、硬化性組成物の耐熱性が十分でない場合がある。一方、当該硫黄成分量が15mmol/100gを超えると、配合物に濁りを生じる場合や、硬化物からブリードアウトする場合がある。
【0041】
本発明の硬化性組成物は、目的、用途等に応じて、更に、硬化促進剤、充填剤、可塑剤、硫黄系以外の酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、消泡剤、滑剤、耐候安定剤、光安定剤、熱安定剤、着色剤(顔料、染料等)、蛍光増白剤、粘着付与剤、垂れ防止剤、導電性付与剤、帯電防止剤、撥水剤、撥油剤、防腐剤、脱水剤等の添加剤や、有機溶剤等を含有したものとすることができる。
【0042】
上記硬化促進剤としては、有機錫化合物;有機チタン化合物;有機アルミニウム化合物;有機ジルコニウム化合物;有機鉄化合物;有機バナジウム化合物;アミン化合物;酸性リン酸エステル;酸性リン酸エステルとアミン化合物との反応物;飽和又は不飽和の多価カルボン酸及びその酸無水物;カルボン酸化合物とアミン化合物との反応物(塩等)等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記有機錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)等のジブチル錫ジカルボキシレート;オクチル酸錫、オレイン酸錫、ステアリン酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、バーサチック酸錫等の2価錫カルボン酸塩;ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド等のジアルキル錫のアルコキシド誘導体;ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート等のジアルキル錫の分子内配位性誘導体(キレート化合物);ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応生成物、等のジブチル錫オキサイド及びエステル化合物による反応生成物;ジブチル錫オキサイド及びシリケート化合物による反応生成物等が挙げられる。
【0044】
上記有機チタン化合物としては、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシルチタネート)等のチタンアルコキシド;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート等のキレート化合物;トリエタノールアミンチタネート等が挙げられる。
【0045】
上記有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート等のアルミニウムアルコキシド;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のキレート化合物等が挙げられる。
【0046】
上記有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトライソプロポキサイド、ジルコニウムテトラブトキサイド等のジルコニウムアルコキシド;ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート等のキレート化合物等が挙げられる。
【0047】
上記有機鉄化合物としては、2−エチルヘキサン酸鉄(2価)、2−エチルヘキサン酸鉄(3価)、ネオデカン酸鉄(2価)、ネオデカン酸鉄(3価)、オレイン酸鉄(2価)、オレイン酸鉄(3価)、ナフテン酸鉄(2価)、ナフテン酸鉄(3価)等のカルボン酸鉄塩が挙げられる。
【0048】
上記アミン化合物としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジブチルアミン−2−エチルヘキソエート、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)等が挙げられる。
【0049】
上記硬化促進剤としては、硬化性組成物の反応性の観点から、有機錫化合物が好ましい。
【0050】
本発明の硬化性組成物に含有される硬化促進剤の含有量は、上記成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。上記硬化促進剤の含有量が上記範囲にあると、硬化反応を効率よく進めることができ、被着体への接着性及び引張特性においてより優れた硬化物を得ることができる。
【0051】
上記充填剤としては、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、フュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、カオリン、硅藻土、ゼオライト、酸化チタン、生石灰、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスバルーン、シラスバルーン、サランバルーン、フェノールバルーン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の硬化性組成物が充填剤を含有する場合、その含有量は、上記成分(A)及び成分(B)を含む全ての重合体100質量部に対して、好ましくは20〜300質量部、より好ましくは30〜200質量部である。
【0052】
上記可塑剤としては、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、脂肪族一塩基酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、多価アルコールのエステル、エポキシ系可塑剤、高分子型可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
上記フタル酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジアミル、フタル酸ジ−n−ヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ(2−ブトキシエチル)、フタル酸ベンジル2−エチルヘキシル、フタル酸ベンジルn−ブチル、フタル酸ベンジルイソノニル、イソフタル酸ジメチル等が挙げられる。
【0054】
上記トリメリット酸エステルとしては、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリヘキシル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。
【0055】
上記ピロメリット酸エステルとしては、ピロメリット酸テトラブチル、ピロメリット酸テトラヘキシル、ピロメリット酸テトラ−n−オクチル、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル、ピロメリット酸テトラデシル等が挙げられる。
【0056】
上記脂肪族一塩基酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、オレイン酸メチル、オクタン酸メチル、オクタン酸ブチル、ドデカン酸メチル、ドデカン酸ブチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、リノール酸メチル、リノール酸ブチル、イソステアリン酸メチル、イソステアリン酸ブチル、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート等が挙げられる。
【0057】
上記脂肪族二塩基酸エステルとしては、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ−n−プロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジ(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ジ(ブチルジグリコール)、アジピン酸ヘプチルノニル、アゼライン酸ジメチル、アゼライン酸ジ−n−オクチル、アゼライン酸ジ(2−エチルヘキシル)、コハク酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジブチル、フマル酸ジ(2−エチルヘキシル)、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0058】
上記リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−n−アミル、リン酸トリフェニル、リン酸トリ−o−クレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸ジフェニル2−エチルヘキシル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリス(2−ブトキシエチル)、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0059】
上記多価アルコールのエステルとしては、ジエチレングリコールジアセチレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、グリセロールモノオレイエート、グリセロールトリブチレート、グリセロールトリアセテート、グリセリル−トリ(アセチルリシノレート)、トリエチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0060】
上記エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化植物油系可塑剤、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等が挙げられる。
上記エポキシ化植物油系可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等が挙げられる。
上記エポキシ化脂肪酸アルキルエステルとしては、エポキシステアリン酸メチル、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
その他、エポキシ化ポリブタジエン、トリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート、3−(2−キセノキシ)−1,2−エポキシプロパン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルジシクロヘキセンジエポキサイド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとエピクロルヒドリンの重縮合物等が挙げられる。
【0061】
上記高分子型可塑剤としては、液状ポリウレタン樹脂、ジカルボン酸とグリコールとから得られたポリエステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのエーテル化物あるいはエステル化物;スクロース等の糖類多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合した後、エーテル化又はエステル化して得られた糖類系ポリエーテル等のポリエーテル系可塑剤;ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン系可塑剤;上記成分(B)を除くポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
上記ポリ(メタ)アクリレートのうち、Mwが1,000〜7,000であり且つガラス転移温度が−30℃以下のポリ(メタ)アクリレートが、硬化物の耐久性を維持する上で特に好ましい。尚、このポリ(メタ)アクリレートは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、加水分解性シリル基、エポキシ基等を有していてもよい。また、上記ポリ(メタ)アクリレートとしては、東亞合成社製の「ARUFON UP1000」、「ARUFON UP1010」、「ARUFON UP1020」、「ARUFON UP1060」、「ARUFON UP1080」、「ARUFON UP1110」、「ARUFON UH2000」、「ARUFON UH2130」(以上、商品名。「ARUFON」は東亞合成株式会社の商標である)等を用いることができる。
上記可塑剤は、成分(B)の製造時に配合することも可能である。
【0063】
本発明の硬化性組成物が可塑剤を含有する場合、その含有量の上限は、上記成分(A)及び成分(B)を含む全ての重合体100質量部に対して、好ましくは150質量部、より好ましくは100質量部、更に好ましくは50質量部である。
【0064】
上記紫外線吸収剤としては、チバスペシャリティケミカルズ社製商品名「チヌビン571」、「チヌビン1130」、「チヌビン327」が例示される。光安定剤としては、同社製商品名「チヌビン292」、「チヌビン144」、「チヌビン123」、三共社製商品名「サノール770」が例示される。熱安定剤としては、チバスペシャリティケミカルズ社製商品名「イルガノックス1135」、「イルガノックス1520」、「イルガノックス1330」が例示される。紫外線吸収剤/光安定剤/熱安定剤の混合物;チバスペシャリティケミカルズ社製商品名「チヌビンB75」を使用しても良い。
【0065】
上記粘着付与剤としては、クマロン−インデン樹脂;クマロン樹脂に、ナフテン樹脂、フェノール樹脂、ロジン等を混合させてなるクマロン系樹脂;p−tert−ブチルフェノール−アセチレン樹脂;フェノール−ホルムアルデヒド樹脂;キシレン−フェノール樹脂;キシレン樹脂;テルペン樹脂;テルペン−フェノール樹脂等のテルペン系樹脂;合成ポリテルペン樹脂;芳香族炭化水素樹脂;脂肪族系炭化水素樹脂;脂肪族系環状炭化水素樹脂;水素添加炭化水素樹脂;ロジン;ロジンのペンタエリスリトール・エステル;ロジンのグリセロール・エステル;水素添加ロジン;水素添加したウッドレジン;水素添加ロジンのメチルエステル;水素添加ロジンのトリエチレングリコールエステル;水素添加ロジンのペンタエリスリトール・エステル;重合ロジン;重合ロジンのグリセロール・エステル;樹脂酸亜鉛;硬化ロジン;低分子量ポリスチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
本発明の硬化性組成物が粘着付与剤を含有する場合、その含有量の上限は、上記成分(A)及び成分(B)を含む全ての重合体100質量部に対して、好ましくは100質量部、より好ましくは50質量部、更に好ましくは30質量部である。
【0067】
上記脱水剤は、硬化性組成物を保存している間に水分を除去し、貯蔵安定性を維持するために用いるものであり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1,3−ジアミノイソプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
本発明の硬化性組成物が脱水剤を含有する場合、その含有量は、上記成分(A)及び成分(B)を含む全ての重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0069】
上記有機溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、これら炭化水素における1つ以上の水素原子がハロゲン原子に置換されてなるハロゲン置換化合物、環状エーテル、酢酸エステル、ケトン化合物、オルソカルボン酸エステル、アルコール等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
上記酢酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
上記ケトン化合物としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
上記オルソカルボン酸エステルとしては、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等が挙げられる。
上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
【0070】
本発明に係る硬化性組成物は、以上のような成分を含有するが、その製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、攪拌装置、遊星式攪拌装置等を用いて、混合することにより製造することができる。
【0071】
本発明の硬化性組成物の粘度は、E型粘度計を用いて、温度25℃で測定した場合、好ましくは5〜400Pa・s、より好ましくは10〜350Pa・sである。組成物の粘度が上記範囲にあると、組成物を扱う際の作業性に優れる。
【0072】
本発明の硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体と、加水分解性シリル基を有する特定の(メタ)アクリル系共重合体を含有することから、湿気硬化性に優れる。この組成物は、1液型とすることもできるし、2液型とすることもできるが、特に、1液型組成物として好適である。例えば、組成物を用いて、塗膜等とした後、大気中に暴露すると、水分の作用により、3次元的に網状組織を形成しつつ硬化して、ゴム状弾性を有する硬化物(固体皮膜)が得られる。また、この硬化物は、樹脂、ガラス、磁器、木材、金属等の被着材に対する接着性に優れ、硬化性、透明性、ゴム物性、貯蔵安定性、深部硬化性、速硬化性に優れる。従って、本発明の硬化性組成物は、硬化物のこのような性質を生かすべく、土木用、建築用、車両用、電気製品用、電子部品用等の接着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤及び目止め剤をはじめ、土木用又は建築用樹脂の被覆、木工塗装等のためのプライマー剤等として有用である。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0074】
1.評価方法
硬化性組成物及びそれに含まれる重合体成分等に係る評価方法は、以下の通りである。
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC−8120」、東ソー社製)を用いて、下記の条件によりMw及びMnを測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
<測定条件>
カラム:TSKgel SuperMultipore HZ−M 4本(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(2)(メタ)アクリル系共重合体(B)に含まれる加水分解性シリル基の平均数
加水分解性シリル基であるアルコキシシリル基の数(平均数)fは、共重合体の1H−NMR測定により得られたスペクトルにおける積分値から、下記式により算出した。
f(Si)={重合体中のアルコキシシリル基濃度[mol/kg]/(1,000/数平均分子量)}
(3)組成物の粘度
E型粘度計を用いて、温度25℃±0.5℃の条件で測定した。
(4)接着性
接着性評価のために、2枚のアルミ板(厚さ2mm、幅25mm、長さ50mm)を用いた。2枚のアルミ板の、板端から12.5mmまでの片側表面に、それぞれ、硬化性組成物を、バーコーターNo.50により塗布した(塗膜厚さ50μm)。その後、3分間放置し、塗膜面どうしを当接させて、アルミ板同士を接着し(面積25mm×12.5mm)、評価用試験体を作製した。
得られた試験体をクリップで挟んで圧着し、温度23℃及び湿度50%RHの条件で1日間養生し、更に、温度23℃及び湿度50%RHの条件で6日間養生した(合計7日間)。そして、この試験体について、東洋精機製作所社製引張試験機「テンシロン200」(型式名)を使用し、引張試験に供した。即ち、温度23℃、湿度50%RH及び引張速度5cm/分の条件下、引張りせん断接着強さ(単位:N/mm2)を測定した。この値を初期値とした。
(5)耐熱性
上記養生後の試験体を、150℃で6週間加熱し、1週間毎に引張りせん断接着強さを上記(4)と同じ方法で測定した。
(6)微小硬度
150℃耐熱引張りせん断接着強さ測定後の試験体について、フィッシャーインストルメンツ社製微小硬さ試験機「H100C X−Yp」(型式名)を使用し、温度23℃、湿度50%RH、平面圧子、荷重100mN/s、保持時間5.0s、の条件下、微小硬度(単位:N/mm2)を測定した。
2.(メタ)アクリル系共重合体(B)の製造
(1)合成例1
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を180℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という)60.0部と、アクリル酸2-エチルヘキシル(以下、「HA」という)25.5部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下、「SZ−6030」という)12.5部と、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(以下、「KBM−803」という)2.0部、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)10.0部と、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」という)3.0部と、オルソ酢酸メチル(以下、「MOA」という)2.0部と、ジ−tert−ヘキシルパーオキサイド(重合開始剤 以下「DTHP」という)0.75部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度180℃及び圧力0.7MPaに保持した。
その後、反応器に一定量の反応液が滞留するようにして、滞留時間をほぼ一定(約12分間)に維持させながら、単量体混合物の供給量に相当する量の反応液を、反応器に配設された排出口から連続的に抜き出し、回収した。尚、単量体混合物の供給開始から温度が安定し36分間反応を継続した時点を重合が安定した時点として、これを、「硬化性組成物に用いるメタクリル系共重合体を含有する反応液」の採取開始点とした。そして、上記条件にて重合を進め、「硬化性組成物に用いるメタクリル系共重合体を含有する反応液」の1.2kgを回収した。
次いで、「硬化性組成物に用いるメタクリル系共重合体を含有する反応液」を、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体1)を得た。
共重合体(重合体1)のMnは3,950、Mwは8,390、Mw/Mnは2.1であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は2.4、硫黄成分量は10.1mmol/100gであった。
(2)合成例2
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を175℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、MMA 60.0部と、HA 26部、SZ−6030 11部と、KBM−803 3.0部と、MEK 10.0部と、IPA 3.0部と、MOA 2.0部と、DTHP 0.35部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度175℃及び圧力0.7MPaに保持し合成例1に示す方法で反応液を回収し続け、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体2)を得た。
共重合体(重合体2)のMnは3,260、Mwは7,340、Mw/Mnは2.3であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は2.3、硫黄成分量は15.2mmol/100gであった。
(3)合成例3
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を178℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、MMA 60.0部と、HA 26.5部、SZ-6030 8.5部と、KBM−803 5.0部、MEK 10.0部と、IPA 3.0部と、MOA 2.0部と、DTHP 0.25部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度178℃及び圧力0.7MPaに保持し合成例1に示す方法で反応液を回収し続け、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体3)を得た。
共重合体(重合体3)のMnは2,700、Mwは5,120、Mw/Mnは1.9であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は1.6、硫黄成分量は25.3mmol/100gであった。
(4)合成例4
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を180℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、MMA 60.0部と、HA 23部、SZ-6030 15部と、ドデシルメルカプタン(以下、「DM」という) 2.0部、MEK 10.0部と、IPA 3.0部と、MOA 2.0部と、DTHP 0.75部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度180℃及び圧力0.7MPaに保持し合成例1に示す方法で反応液を回収し続け、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体4)を得た。
共重合体(重合体4)のMnは3,740、Mwは7,840、Mw/Mnは2.1であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は2.3、硫黄成分量は9.9mmol/100gであった。
(5)合成例5
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を177℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、MMA 60.0部と、HA 23部、SZ-6030 15部と、メルカプトプロピオン酸メチル(以下、「MPM」という) 2.0部、MEK 10.0部と、IPA 3.0部と、MOA 2.0部と、DTHP 0.25部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度177℃及び圧力0.7MPaに保持し合成例1に示す方法で反応液を回収し続け、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体5)を得た。
共重合体(重合体5)のMnは3,780、Mwは7,440、Mw/Mnは2.0であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は2.3、硫黄成分量は16.7mmol/100gであった。
(6)合成例6
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を180℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、MMA 45.0部と、メタクリル酸n−ブチル(以下、「BMA」という)24部、アクリル酸n−ブチル(以下、「BA」という)14部と、SZ-6030 15部と、DM 2.0部、MEK 10.0部と、IPA 3.0部と、MOA 2.0部と、DTHP 0.75部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度180℃及び圧力0.7MPaに保持し合成例1に示す方法で反応液を回収し続け、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体6)を得た。
共重合体(重合体6)のMnは3,980、Mwは8,020、Mw/Mnは2.0であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は2.4、硫黄成分量は9.9mmol/100gであった。
(7)合成例7
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を180℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、MMA 40.0部と、メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「EHMA」という)47部、SZ-6030 11部と、KBM−803 2.0部、MEK 10.0部と、IPA 3.0部と、MOA 2.0部と、DTHP 0.75部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度180℃及び圧力0.7MPaに保持し合成例1に示す方法で反応液を回収し続け、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体7)を得た。
共重合体(重合体7)のMnは3,940、Mwは7,230、Mw/Mnは1.8であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は2.1、硫黄成分量は10.1mmol/100gであった。
(8)合成例8
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を178℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、MMA 60.0部と、HA 25部、SZ-6030 15部と、MEK 10.0部と、IPA 3.0部と、MOA 2.0部と、DTHP 2.5部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度178℃及び圧力0.7MPaに保持し合成例1に示す方法で反応液を回収し続け、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体8)を得た。
共重合体(重合体8)のMnは3,800、Mwは7,540、Mw/Mnは2.0であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は2.3であった。
(9)合成例9
オイルジャケットを備えた内容積1Lの加圧式攪拌槽型反応器の温度を176℃に保ち、予め、原料タンクに収容された、MMA 45.0部と、BMA23部と、BA 22部と、SZ-6030 15部と、MEK 10.0部と、IPA 3.0部と、MOA 2.0部と、DTHP 2.5部とからなる単量体混合物を、供給速度48g/分の条件で、反応器に供給を開始し、攪拌しながら、同時に重合を行った。反応開始直後には、一旦、反応系の温度が低下し、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットを制御することにより、反応系を、温度176℃及び圧力0.7MPaに保持し合成例1に示す方法で反応液を回収し続け、薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発性成分を除去して、共重合体(重合体9)を得た。
共重合体(重合体9)のMnは3,570、Mwは7,840、Mw/Mnは2.0であった(表1参照)。また、この重合体の高分子鎖1本あたりのアルコキシシリル基の数f(Si)は2.2であった。
【0075】
【表1】

【0076】
なお、表1の成分は以下のものを示す。
MMA:メタクリル酸メチル
BMA:メタクリル酸n−ブチル
HA:アクリル酸2−エチルヘキシル
BA:アクリル酸n−ブチル
EHMA:メタクリル酸2−エチルヘキシル
SZ-6030:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
KBM-803:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製)
DM:ドデシルメルカプタン
MPM:メルカプトプロピオン酸メチル
MEK:メチルエチルケトン
MOA:オルソ酢酸メチル
IPA:イソプロピルアルコール
DTHP:ジ−tert−ヘキシルパーオキサイド
3.硬化性組成物の製造及び評価
[実施例1〜13及び比較例1〜6]
上記合成例で得られた各々の重合体[成分(B)]と、下記成分とを用いて、表2〜4に示す割合で、プラネタリーミキサーを用いて、温度60℃及び圧力10Torrの条件で1時間混合し、硬化性組成物を得た。各種の評価結果を表2〜4に示す。
なお、表2〜4の成分は以下のものを示す。
SAT-200:シリル官能基末端ポリプロピレンオキサイド(カネカ社製)
IRGANOX 245:3,6−ジオキサオクタメチレン=ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオナート](BASF社製)
IRGANOX PS-800:3,3−チオジプロピオン酸ジドデシル(BASF社製)
IRGANOX PS-802:3,3−チオジプロピオン酸ジオクタデシル(BASF社製)
AO-412S:2,2−ビス({[3−(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)−1,3−プロパンジイル=ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオナート](ADEKA社製)
Z-6610:3―アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
SZ-6300:ビニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
U220H:ジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成社製)
【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の硬化性組成物は、大気中に暴露すると、水分の作用により、3次元的に網状組織を形成し、硬化して、ゴム状弾性を有する固体に変化する。本発明の硬化性組成物は、土木用、建築用、車両用、電気製品用、電子部品用等の接着剤、シーリング剤、塗料、コーティング剤及び目止め剤をはじめ、土木用又は建築用樹脂の被覆、木工塗装等のためのプライマー剤等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(A)と、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含有する硬化性組成物であって、
前記(メタ)アクリル系共重合体(B)は、メルカプタン連鎖移動剤を用いてラジカル重合により製造された重合体であり、かつ、(メタ)アクリル系共重合体(B)の硫黄成分量は5〜30mmol/100gであることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の数平均分子量が、2000〜10000であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の含有量が、上記オキシアルキレン系重合体(A)と上記(メタ)アクリル系共重合体(B)の合計100質量部に対して、5〜80質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
更に、硫黄系酸化防止剤(C)を含有することを特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
硬化性組成物の硫黄成分量が、2〜15mmol/100gであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。

【公開番号】特開2012−72293(P2012−72293A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218720(P2010−218720)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】