説明

硬化性組成物

【課題】熱源表面の凹凸構造等に由来する加熱ムラの影響を抑制する。
【解決手段】熱硬化性樹脂と溶剤からなる硬化性組成物であって、溶剤揮発前の組成物粘度と揮発後の組成物粘度の関係が、(溶剤揮発後の組成物粘度(cP))/(溶剤揮発前の組成物粘度(cP))≧60を満たし、かつ前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を、中心波長450nm、パワー密度30W/cm2の光を500時間照射する耐アブレーション試験に供されとき、耐アブレーション指数=試験後の硬化物膜厚(μm)/試験前の硬化物膜厚(μm)で定義される耐アブレーション指数が90%以上であることを満たす硬化物を与えることを特徴とする硬化性組成物を用いることにより、例えばスピンコート等で塗膜・ベークしようとした場合、ホットプレート等の熱源表面の凹凸構造に起因するような加熱ムラによって発生する塗膜物表面の厚みムラを抑制することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱源の装置構造等に由来する加熱ムラに影響されることなく平滑な塗膜物を得ることのできる硬化性組成物に関する
【背景技術】
【0002】
有機高分子薄膜の作製方法としては一般的にスピンコート法やバーコート法をはじめとする種々の塗膜工程を経た後、ベーク工程において溶媒を揮発させたり、熱硬化性樹脂の場合は硬化反応を行なうことが広く知られている。当該ベーク工程においてはホットプレート型のベークユニットを用いることが一般的であり、ヒータ、温度検出センサを組み込んだホットプレート上に基板を乗せ、温度検出センサ出力信号に基づいて温度制御部によりヒータの温度を制御してウェハを所定の温度で加温することによりベーク処理を行う。従来よりウェハをホットプレート上に直接置く方式(いわゆるコンタクトベーク)が一般的に多く用いられていたが、この方式では、ウェハの裏面がホットプレート表面と密着するためにウェハ裏面へのゴミの付着が問題となっている。このため、最近ではウェハとホットプレートを密着させずに0.1〜0.2mm程度のすきまを設けてベーク処理を行ういわゆるプロキシミティピンが設置されており、その上にウェハを乗せてベーク処理を行う方式となっている。(特許文献1)しかしながらプロキシミティをはじめとする凹凸構造をベークユニットに導入した場合、基板熱の伝わり方が熱伝導ではなく熱伝達になるため、水平位置によって加熱度合いに差異が生じ易く、薄膜表面にムラが生じたり、熱伝導により加熱されるプロキシミティ部と熱伝達で加熱されるその他の部位とで膜厚差が生じる問題(以下加熱ムラと称する)があった。一方で既存のホットプレート型ベークユニットにおいてプロキシミティを導入することはホットプレート部位全体の設備更新を行う必要があり、コスト的にも障壁が高いため、ベークユニットの構造に依存せず、常に加熱ムラを抑制可能な樹脂組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2882180号公報
【発明の概要】
【0004】
加熱ムラを抑制する硬化性組成物
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる実情を鑑みてなされたものであり、当該成分を含む組成物を使用した薄膜が、ベーク工程においてベークユニットの凹凸構造に影響されず安定的に平滑な塗膜物を与える硬化性組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の硬化性組成物が、ベークユニットの凹凸構造に影響されず安定的に平滑な塗膜物を与えることを見出し、さらに当該組成物を製膜・ベイクして得られる硬化物が優れた耐アブレーション性を有することを見出し、本発明の完成に至った。即ち本発明は以下の構成を有するものである。
【0007】
1)熱硬化性樹脂と溶剤からなる硬化性組成物であって、溶剤揮発前の組成物粘度と揮発後の組成物粘度の関係が、(溶剤揮発後の組成物粘度(cP))/(溶剤揮発前の組成物粘度(cP))≧60を満たし、かつ前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を、中心波長450nm、パワー
密度30W/cm2の光を500時間照射する耐アブレーション試験に供されとき、耐アブレーション指数=試験後の硬化物膜厚(μm)/試験前の硬化物膜厚(μm)で定義される耐アブレーション指数が90%以上であることを満たす硬化物を与えることを特徴とする硬化性組成物。
【0008】
2)前記硬化性組成物が、有機成分と無機成分からなるハイブリッド型組成物であることを特徴とする1)に記載の硬化性組成物。
【0009】
3)前記硬化性組成物が
(A)アルケニル基を有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)希釈溶剤
からなるハイブリッド型組成物であることを特徴とする1)〜2)に記載の硬化性組成物。
【0010】
4)(B)成分の粘度が5000cP以上であることを特徴とする3)に記載の硬化性組成物。
【0011】
5)(B)成分が、(B−1)アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物と(B−2)1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する鎖状及び/又は環状のオルガノハイドロジェンシロキサンとをヒドロシリル化反応させることにより得られる(B−3)有機変性シリコーン化合物であることを特徴とする3)〜4)いずれか1項に記載の硬化性組成物
6)前記(B−1)成分が、ポリブタジエン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンタジエン、ジビニルビフェニル、ビスフェノールAジアリレート、及びトリビニルシクロヘキサン、及び下記一般式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中R、R、Rはいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする5)に記載の硬化性組成物。
【0014】
7)前記(B−1)成分が、下記一般式(2)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中R、R、Rはいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表されることを特徴とする5)〜6)いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0017】
8)前記(B−2)成分が、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する環状ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする5)〜7)いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0018】
9)(A)成分がジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする3)〜8)いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0019】
10)1)〜9)いずれか1項に記載の硬化性組成物を基板上に塗膜し、ベークして得られる硬化物。
【発明の効果】
【0020】
本発明の硬化性組成物を用いることにより、基板あるいは加熱熱源の凹凸構造による加熱ムラを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0022】
<硬化性組成物>
本発明における硬化性組成物とは熱硬化性樹脂と希釈溶剤からなる組成物である。熱硬化性樹脂としては、任意の加熱方法によって硬化反応が起こる樹脂であれば特に限定はなく、エポキシ樹脂、シリコーン系樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、フェノール樹脂等が例示され、これらは単独で用いても2種以上を併用しても構わない。このうち、例えば硬化性組成物を固めて得られる硬化物の熱的・光的信頼性の観点からエポキシ樹脂またはシリコーン樹脂、ポリイミド樹脂を用いることが好ましく、電気的信頼性の観点からはシリコーン系樹脂を用いることがより好ましい。
【0023】
また、希釈溶剤としては熱硬化性樹脂と相溶する溶剤であれば特に限定されず、炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、ヒドロキシ系溶剤等が例示され、これらは単独で用いても構わないし2種以上を併用しても構わない。このうち、たとえば硬化性組成物を電子デバイス用材料として使用した場合の汎用性の観点からは炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を用いることが好ましい。
【0024】
また、本発明における硬化性組成物の粘度(溶媒揮発前の組成物粘度)は組成物粘度が10〜100cPの範囲内となるように熱硬化性樹脂を希釈溶剤で希釈することが好ましく、10〜75cPの範囲内となるように希釈することがより好ましく、10〜50cPの範囲内となるように希釈することがさらに好ましい。組成物粘度が100cPを越える場合、例えば本発明における硬化性組成物をスピンコートによって製膜する場合に、膜厚10μm以下の薄膜を作成することが困難になる可能性があり、また10cp未満であった場合、自動吐出が困難になる等、製膜プロセス上の不具合が生じる可能性がある。
【0025】
<溶剤揮発>
本発明における溶剤揮発とは、硬化性組成物中の溶剤を加熱あるいは乾燥させることによって硬化性組成物中から溶剤を除去するプロセスを示す。ただし、溶剤は完全に除去される必要はなく、溶剤が組成物中に残存していても問題はないが、除去が不充分である場合、本発明の効果が充分に発揮されない可能性があるため注意を要する。この場合、溶剤の揮発速度を上昇させる目的で硬化性組成物を基板上に塗膜して溶剤を除去することが好ましく、さらには塗膜の手段としてスピンコート法またはバーコート法を用いることがより好ましく、スピンコートを用いることがさらに好ましい。また、溶剤を除去する手段としては加熱、乾燥のいずれの方法をとることが可能であるが、効率的に溶剤を除去する観点から加熱による除去が好ましい。加熱によって溶剤を除去する場合の加熱条件としては70℃±2℃に加熱されたホットプレート上で行うことが例示される。
【0026】
加熱温度が60℃未満である場合、溶剤の揮発速度が遅くなり、例えば本発明における硬化性組成物を製膜・ベークして硬化物を得るために要する時間が長くなる可能性があり、また100℃を超える場合は硬化性組成物がゲル化点を超え、後工程に支障をきたす可能性がある。この場合のゲル化点とは硬化性組成物の流動性が完全に失われる点を示し、任意の方法により測定することが可能であるが、典型的な測定方法として粘弾性測定による硬化性組成物の貯蔵弾性率が損失弾性率を上回る点として求めることが例示される。
【0027】
<溶剤揮発前後の粘度測定>
本発明における硬化性組成物は、たとえばスピンコート法によって製膜する場合における自動吐出プロセスへの適合性と、加熱ムラ抑制のバランスの観点から、溶剤揮発前後での組成物粘度の関係が(溶剤揮発後の組成物粘度(cP))/(溶剤揮発前の組成物粘度(cP))≧60であることが好ましく、(溶剤揮発後の組成物粘度(cP))/(溶剤揮発前の組成物粘度(cP))≧150であることが好ましく、(溶剤揮発後の組成物粘度(cP))/(溶剤揮発前の組成物粘度(cP))≧200以上であることがさらに好ましい。
【0028】
この場合、硬化物の溶剤揮発前の組成物粘度とは、硬化性組成物を塗布する直前の組成物粘度を示し、溶剤揮発後の組成物粘度とは、硬化性組成物中の溶剤を上述の溶剤揮発プロセスにより除去したものの粘度を示す。
本発明における組成物の溶剤揮発後の粘度は、加熱ムラを抑制する観点から2000cP〜30000cpの範囲内であることが好ましく、10000cp〜30000cpの範囲内であることが好ましく、20000cp〜30000cpの範囲内であることがさらに好ましい。溶剤揮発後の粘度が30000cpを越える場合、例えば薄膜を作製しようとした場合に大量の希釈溶剤が必要となるためにコストの観点から好ましくない。
【0029】
<硬化性組成物を基板上に塗膜し、ベークして得られる硬化物>
本発明における硬化性組成物を基板上に塗膜し、ベークして得られる硬化物とは、本発明における硬化性組成物を任意の方法によって塗膜したものをベーク処理を行うことによって得られる硬化物であれば特に限定はされない。また、塗膜方法には種々の方法が適用可能であり、スピンコート法、バーコート法、スリットコート法、キャスト法等が挙げられる。このうち特に電子デバイスの作製の観点からはスピンコート法あるいはスリットコート法が好ましく、操作の簡便性の観点からはスピンコート法がより好ましい。この場合の製膜膜厚としては、任意の膜厚のものを作製すれば良いが、より効果的に溶剤を除去させる観点から50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
また、得られた塗膜物のベーク方法としては種々の方法が適用可能であり、オーブンを使用する方法、ホットプレートを使用する方法が挙げられるが、得られる硬化物の膜厚均一性の観点からはホットプレートを使用する方法が好ましい。
【0031】
<耐アブレーション>
本発明における耐アブレーションとは、硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物に対し、任意の光源から発せられる光を照射した場合の硬化物の耐性を示す。ここでいう耐性とは任意の測定方法が適用可能であり、試験前後の光線透過率変化、硬化物を透過する光のパワー変化率、硬化物表面の膜厚変化および形状変化等が例示される。また硬化物に照射される光源の種類については特に限定はしないが、光学系の簡便性の観点から好ましくはレーザーダイオードまたはSLDを用いることが好ましく、レーザーダイオードを用いることがより好ましい。また光源の波長域については特に限定はしないが、実用性の観点からその中心波長が380nm800nmの範囲内にあることが好ましく、400nm〜500nmの範囲内にあることがより好ましく、405nm〜460nmの範囲内にあることがさらに好ましい。また、硬化物に照射される光のパワー密度については、本発明における硬化物の耐アブレーション性をより顕著に示す観点から30W/cm2以上であることが好ましく、50W/cm2以上であることが好ましく、100W/cm2以上であることがさらに好ましい。
【0032】
<耐アブレーション試験>
以下に本発明における耐アブレーション試験について定義する。まず、100℃になるように調整したサンプルホルダーに硬化物を固定し、例えばレーザーダイオード(中心波長450nm、規格出力1W)を当該硬化物表面に対して垂直になるように光学系を組み、パワー密度が硬化物表面において30W/cm2となるように集光レンズを用いて光学系を調整する。サンプルとしては上述の製膜・ベーク方法によって得られる硬化物を用いればよく、膜厚としては10±1μmの範囲内のものを使用する。このようにしてサンプルを固定した後、サンプルに対して光を500時間照射することにより耐アブレーション試験を行う。試験前後の硬化物の膜厚を測定し、下記式により定義される耐アブレーション指数を算出する。
【0033】
耐アブレーション指数(%)=試験後の硬化物膜厚(μm)/試験前の硬化物膜厚(μm)×100
膜厚の測定方法としては特に限定はしないが、接触式段差計、光学式膜厚測定機などが挙げられる。
【0034】
本発明における硬化物は、たとえば高い光密度を有する光を光源とするディスプレイの周辺材料に使用する場合の信頼性確保の観点から上記の耐アブレーション指数が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましい。
【0035】
<ハイブリッド型組成物>
本発明におけるハイブリッド型組成物とは、有機骨格と無機骨格の両方を含有する組成物を示す。有機骨格としては、たとえばエポキシ化合物、ユリア化合物、プロピレン化合物、フェノール化合物、キシレン化合物、メラミン化合物、ポリエステル化合物、アルキド化合物、ビニリデン化合物、フラン化合物、ウレタン化合物、フェニレンエーテル化合物、ポリカーボネート化合物、アクリル化合物、アミド化合物、イミド化合物、ビニル化合物、カルボン酸化合物、フッ素化合物、ナイロン化合物、スチロール化合物、ノルボルネン系化合物等が例示される。また無機骨格としてはシリコーン化合物、シラン化合物等が例示される。これらは単独で用いても構わないし2種以上を併用しても構わない。これらのうち、たとえば硬化性組成物を効果してなる硬化物の耐アブレーション性の観点からは有機骨格としてエポキシ化合物、ユリア化合物、イミド化合物、フッ素化合物、脂環化合物を使用することが好ましく、エポキシ化合物、ユリア化合物を用いることがさらに好ましい。また、同様の観点から無機骨格としてはシリコーン化合物を用いることが好ましい。
【0036】
また、本発明におけるハイブリッド型硬化性組成物は、該ハイブリッド型硬化性組成物を固めてなる硬化物の耐アブレーション性を確保する観点から、光によって熱的に分解・揮発し得る官能基を含まない成分を用いることが好ましい。光によって熱的に分解・揮発し得る官能基とは、光を照射することによって分解し、アルコールやエーテル、二酸化炭素、アミン、水等の揮発性物質を生ずる官能基を示し、アルコキシ基、エーテル基、カーボネート基、アミノ基等が例示される。
【0037】
<(A)アルケニル基を有する有機化合物>
本発明におけるアルケニル基を有する有機化合物とは1分子中にアルケニル基を少なくとも1個含有する有機化合物であれば特に限定はされない。有機化合物としては、ポリシロキサンー有機ブロックコポリマーやポリシロキサンー有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、Sハロゲンのみを含むものであることが好ましい。また、アルケニル基の結合位置は特に限定されず、骨格のどの位置に存在してもよい。(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートをはじめとする公知のアクリル系モノマー類等が例示され、これらは単独で使用しても2種類以上を併用しても構わない。上記具体例のうち、例えば硬化性組成物を基板上に製膜・ベークさせた場合の基板との接着性の観点からイソシアヌル酸誘導体を用いることが好ましく、さらに、耐熱耐光性のバランスの観点からトリアリルイソシアヌレートあるいはジアリルモノメチルイソシアヌレートを用いることがより好ましい。
【0038】
<(B)1分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物>
本発明における(B)成分とは、主に硬化剤として使用されるものであり、分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有するオルガノシロキサンであれば特に制限は無い。あえて例示するとすれば、オルガノハイドロジェンオルガノシロキサンや、アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物((B−1成分))と1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する鎖状及び/又は環状のオルガノハイドロジェンオルガノシロキサン((B−2成分))をヒドロシリル化反応させることによって得られる有機変性シリコーン化合物((B−3)成分)が挙げられる。ここで言うオルガノハイドロジェンオルガノシロキサンとは、ケイ素原子上に炭化水素基あるいは水素原子を有するシロキサン化合物を指す。
【0039】
これら(B)成分のうち、有機化合物である(A)成分との相溶性の観点からは有機変性シリコーン化合物(B−3)を用いることが好ましい。
また、オルガノハイドロジェンオルガノシロキサンの具体的な構造を例示するとすれば、
【0040】
【化3】

【0041】
( 3< m + n ≦ 5 0 、3 < m 、0 ≦ n 、R としては主鎖の炭素数が2 〜 2 0 の炭化水素で1 個以上のフェニル基を含有してもよい。)
【0042】
【化4】

【0043】
( 1< m + n ≦ 5 0 、1 < m 、0 ≦ n 、R としては主鎖の炭素数が2 〜 2 0 の炭化水素で1 個以上のフェニル基を含有してもよい。)
【0044】
【化5】

【0045】
( 3 ≦ m + n ≦ 2 0 、3 < m ≦ 1 9 、0 ≦ n < 1 8 、R としては主鎖の炭素数が2 〜 2 0の炭化水素で1 個以上のフェニル基を含有してもよい。)などで示される鎖状、環状のものや、ヒドロシリル基を含有する多面体ポリシロキサン等が挙げられる。
【0046】
また上記(B−3)成分である有機変性シリコーンとしては、(B−1)成分と(B−2)成分の組み合わせにより種々のものを合成して使用することが可能である。(B−1)成分は、アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物であれば特に限定はしないが、具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ビスフェノールAのジアリルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンをはじめとするビニルノルボルネン化合物。や、従来公知のエポキシ樹脂のグルシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0047】
(B−1)成分としては良好な特性を有する硬化物が得られるという観点からは複素環骨格を有する有機化合物であることが好ましい。複素環骨格を有する有機化合物とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に限定はなく、3以上であればよい。入手性からは10以下であることが好ましい。複素環の具体的な例としては、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピラロール系、オキサゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系がある。中でも、本発明の効果を高めることから、複素環としてはイソシアヌル酸誘導体が好ましく、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルメタクリレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートが好ましい例として挙げられ、さらに耐光性の観点からはトリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレートがより好ましい例として挙げられる。
【0048】
本発明における(B−2)成分は一分子中に少なくとも2つのヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサン化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するもの等が使用できる。これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、シリコーン系硬化性組成物中における相溶性が良いという観点からは環状オルガノポリシロキサンが好ましい。ヒドロシリル基を含有する環状シロキサンとしては、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。(B−2)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は58であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
【0049】
また、(B)成分の粘度としては例えば硬化性組成物を製膜・ベークしようとした場合の加熱ムラ抑制の観点からその粘度が2500cP以上であることが好ましく、10000cP以上であることがより好ましく、50000cP以上であることがさらに好ましい。また、同様の観点から(B)成分の分子量は、その重量平均分子量が3000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましく、5000以上であることがさらに好ましい。重量平均分子量の測定方法としては例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による測定が例示される。
【0050】
また、(B−3)成分の製造方法としては特に種々の製法を用いることができるが、(B)成分の粘度を制御する観点から(B−1)成分に対し過剰量の(B−2)成分の存在下、(B−1)成分を滴下することが好ましく、(B−1)成分と極微量のヒドロシリル化触媒を予め混合しておくことがより好ましい。この場合、(B−2)成分のヒドロシリル基のモル数を(B−1)成分のアルケニル基のモル数で除することで算出されるヒドロシリル/アルケニル比が8以下となるような混合比で混合することが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。ヒドロシリル/アルケニル比が8を超える場合、(B)成分の粘度を効率的に上昇させることができない場合がある。また(B−3)成分の製造に使用される反応溶媒としては、反応を高温で迅速に実施できる観点から芳香族系炭化水素を用いることが好ましく、トルエンを使用することがより好ましい。また、反応温度としては100〜120℃の間で行うことが好ましい。
【0051】
<(C)ヒドロシリル化触媒>
本発明における(C)成分であるヒドロシリル化触媒については、特に制限は無く、任意のもの使用することができる。あえて例示するとすれば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カ−ボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Ptn(ViMeSiOSiMeVi)n、Pt〔(MeViSiO)};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh、Pt(PBu};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)〕4、Pt〔P(OBu)}(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは整数を表す)、Pt(acac)、また、Ashbyらの
米国特許第3159601号及び米国特許第3159662号、明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号、明細書中に記載された白金アルコラ−ト触媒も挙げられる。また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、等が挙げられる。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)2等が好ましい。(C)成分の触媒量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−1〜10−8molの範囲で用いるのが好ましく、10−2〜10−6molの範囲で用いるのがより好ましい。10−1mol未満である場合、ヒドロシリル化が充分に進行しない場合があり、10−8を超える量を用いた場合、組成物の貯蔵安定性が悪化する恐れがある。なお、これらの(C)成分は1種類のみを用いても構わないし、複数を併用しても問題ない。
【0052】
<硬化遅延剤>
本発明の硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが例示される。
【0053】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチンが好ましい。
【0054】
貯蔵安定性改良剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1molに対し、下限10−1モル、上限10モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
【0055】
<接着付与剤>
本発明における硬化性組成物に対して、被着体に対する接着性を向上させる目的で接着付与剤を添加剤として加えることができ、たとえばシランカップリング剤、ほう素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を使用することが可能である。
【0056】
前記、シランカップリング剤の例としては、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。前記官能基については、中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。
【0057】
具体的に例示すると、エポキシ官能基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0058】
また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0059】
前記、ほう素系カップリング剤の例としては、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sDE−ブチル、ほう酸トリ−tDrt−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0060】
前記、チタン系カップリング剤の例としては、テトラ(n−ブトキシ)チタン,テトラ(i−プロポキシ)チタン,テトラ(ステアロキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタン,i−プロポキシ(2−エチルヘキサンジオラート)チタン,ジ−i−プロポキシ−ジエチルアセトアセテートチタン,ヒドロキシ−ビス(ラクテト)チタン、i−プロピルトリイソステアロイルチタネート,i−プロピル−トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート,テトラ−i−プロピル)−ビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,i−プロピルトリオクタノイルチタネート,i−プロピルジメタクリル−i−ステアロイルチタネートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0061】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0062】
本発明における接着性付与剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して5重量部以下であることが好ましい。また、接着性付与剤の種類あるいは添加量によっては、ヒドロシリル化反応を阻害するものがあるため、ヒドロシリル化反応に対する影響を考慮しなければならない。
【実施例】
【0063】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0064】
(溶剤揮発前の組成物)
全ての組成物はスピンコートに適した粘度範囲である30±5cPとなるように希釈溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて希釈を行ってから各種試験に使用した。
【0065】
(粘度測定)
溶剤の揮発前後の硬化性組成物の粘度、及び(B)成分の粘度はE型粘度計(東機産業社製、型番TV−20)により測定温度23℃で測定した。
なお、溶剤揮発後の粘度は、硬化性組成物をガラス基板上にバーコート法(基板とバーのギャップが50μm)により塗膜面積が50cm以上となるように塗膜物を作成した後、塗膜物を70℃に加熱されたホットプレート上に移送し、5分間加熱することによって溶剤を蒸発させたものをスパチュラによって掻き出し、サンプル管に収集したものを測定サンプルとして使用した。
【0066】
(加熱ムラ試験)
各硬化性組成物を3inchガラス基板上に以下に示すスピンコート法にて塗膜した。
硬化性組成物の滴下量:1.5cc
スピン条件:硬化物の膜厚が10±1μmとなるように回転数を調製した。
次に、高さ100mm×幅100mm×厚み5mmのステンレス板に、中央部から対角線上に外周に向かって30mmの位置に直径5mmの穴を各対角線方向に4つずつ空けることによって得られる加熱ムラ評価治具を作製し、当該評価治具を加熱されたホットプレート上に10分以上放置し、評価治具の表面温度が70℃となるように温度調節を行ったのち、この上に上記の塗膜物を樹脂面が上となるように静置し、15分間ベーク処理を行い仮硬化を行った。次に仮硬化を行った塗膜物を160℃に加熱されたホットプレート上に移送し、5分間ベーク処理を行うことにより本硬化を行い硬化物を得た。このようにして得られた硬化物の、評価治具に設けられた4つの穴上でベーク処理された部位を斜光目視で観察し、穴上の部位とその他の部位で表面に加熱ムラが生じていないか下記の通り判定した。
ムラが全く確認できない場合:○
ムラがわずかに確認される場合:△
ムラが明確に確認される場合:×
【0067】
(耐アブレーション試験用硬化物の作成)
各硬化性組成物を3inchガラス基板上に以下に示すスピンコート法にて塗膜した。
硬化性組成物の滴下量:1.5cc
スピン条件:硬化物の膜厚が10±1μmとなるように回転数を調製した。
【0068】
得られた塗膜物を160℃に加熱されたホットプレート上に移送し、5分間ベークを行い、硬化を行った。さらに硬化後の硬化物をイナートオーブン(KOYO−LINDBERG社製イナートオーブン、型番INH−15CD)中で窒素雰囲下(窒素流量=20mL/分)180℃で1時間熱処理することにより耐アブレーション試験用硬化物を得た。
【0069】
(耐アブレーション試験)
以下に本発明における耐アブレーション試験を実施した。まず、100℃になるように調整したサンプルホルダーに硬化物を固定し、レーザーダイオード(中心波長450nm、規格出力1W)を当該硬化物表面に対して垂直になるように光学系を組み、パワー密度が硬化物表面において30W/cmとなるように集光レンズを用いて光学系を調整した。サンプルとしては上述の製膜・ベーク方法によって得られる硬化物を用いればよく、膜厚としては10±1μmの範囲内のものを使用した。このようにしてサンプルを固定した後、サンプルに対して光を500時間照射することにより耐アブレーション試験を行った。試験前後の硬化物の膜厚を測定し、下記一般式により定義される耐アブレーション指数を算出した。
耐アブレーション指数(%)=試験後の硬化物膜厚(μm)/試験前の硬化物膜厚(μm)×100
【0070】
(合成例1)
1Lのナスフラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン284g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン182gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート70g、及びトルエン101g及び白金ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液(白金として0.03wt%含有)3.98gの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。その後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物200gを得た。H−NMRより、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(以下変性体Aと称する)であることがわかった(25℃における粘度:336000cP、重量平均分子量10974)。このようにして得られた変性体Aを実施例1に使用した。
【0071】
(合成例2)
1Lのナスフラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン290g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン188gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート65g、及びトルエン95g及び白金ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液(白金として0.03wt%含有)3.70gの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。その後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物208gを得た。H−NMRより、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(以下変性体Bと称する)であることがわかった(25℃における粘度:160000cP、重量平均分子量5133)。このようにして得られた変性体Bを実施例2に使用した。
【0072】
(合成例3)
1Lのナスフラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン296g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン195gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート60g、及びトルエン86g及び白金ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液(白金として0.03wt%含有)3.41gの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。その後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物198gを得た。H−NMRより、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(以下変性体Cと称する)であることがわかった(25℃における粘度:140000cP、重量平均分子量4424)。このようにして得られた変性体Cを実施例3に使用した。
【0073】
(合成例4)
1Lのナスフラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン230g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン261gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート60g、及びトルエン86g及び白金ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液(白金として0.03wt%含有)3.41gの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。その後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物210gを得た。H−NMRより、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(以下変性体Dと称する)であることがわかった(25℃における粘度:110000cP、重量平均分子量3211)このようにして得られた変性体Dを実施例4に使用した。
【0074】
(合成例5)
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた 500mlの4つ口フラスコに、トルエン80gおよび1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン115.2(0.48モル)を加え、オイルバスを用いて117℃に加熱した。これに、5質量%の白金金属を担持したカーボン粉末0.05g添加し、攪拌しながらビニルノルボルネン(商品名:V0062、東京化成社製;5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンとのほぼ等モル量の異性体混合物)48g(0.4モル)を16分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに125℃で加熱しながら攪拌を16時間行った後、室温まで冷却した。その後、白金金属担持カーボンをろ過して除去し、トルエンを減圧留去して、無色透明なオイル状の変性体E(25℃における粘度:2500cP、重量平均分子量3011)150gを得、これを実施例5に使用した。
【0075】
(合成例6)
5Lの二口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱攪拌した。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート200g、及びトルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した。1−エチニル−1−シクロヘキサノール2.95mgを加えた後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、生成物724gを得た。H−NMRより、このものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのヒドロシリル基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(以下変性体Fと称する)であることがわかった25℃における粘度:2000cP、重量平均分子量1300)。このようにして得られた変性体F(を比較例1に使用した。
【0076】
(実施例1〜4、及び比較例1)
上述の合成例にて得られた各変性体を使用して表1に示すとおり配合を行い、硬化性組成物を調製し、上述の各種試験を実施した。
【0077】
(実施例5)
(A)成分としてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学製、商品名NKエステルA−DCP)38重量部、(B)成分として合成例5で得られた変性体E50重量部、またその他の成分としてViMeSiO(MeSiO)SiMeVi(Viはビニル基を表す)2重量部、白金−ビニルシロキサン錯体:白金金属原子として、(A)成分と(B)成分との合計量に対して質量基準で20ppm、添加剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(旭電化社製、商品名:カスタブLA77Y)を(A)成分と(B)成分との合計に対して質量基準で500ppm、添加剤として1−(2−トリメトキシシリルエチル)−3−(3−グリシドキシプロピル)−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン10重量部、及び1−エチニルシクロヘキサノール0.03重量部を混合し、組成物を得た。当該組成物50重量部に対して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを50重量部加えることで硬化性組成物を得、上述の各種試験を実施した。
【0078】
(比較例2)
(A)成分である三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQV−7、ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部、(B)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−5、ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を57.9重量部と、同じく(B)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.5モル/kg)を5.9重量部配合した。
【0079】
その後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.0重量部、ほう酸トリメチル1.0重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノールの1%キシレン溶液0.0011重量部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの1%キシレン溶液0.0010重量部、(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.0062重量部を加えた後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート53.8gを加え希釈することによって硬化性組成物を得、上述の各種試験を実施した。
【0080】
(比較例3)
攪拌装置、温度計、コンデンサー、空気と窒素の混合ガス導入管を備えたフラスコに、ネオペンチルグリコールのエチレンオキシド2モル付加物(以下、「NPG−2EO」と略す。)192g、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略す。)400g、ジブチルスズオキシド(以下、「DBTO」と略す。)3.84g及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、「4H−TEMPO」と略す。)19.2mgを入れて攪拌し、110℃に昇温した。反応によって生成するメタノールのみを留去し、6時間かけてエステル交換反応を行った。得られた反応液からMMAを留去し、ネオペンチルグリコールへのエチレンオキシド2モル付加物のジメタクリレートを得た。これを化合物(M−1)とした。このようにして得られたM−1を87.5重量部、MMAを12.5重量部、重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン0.2重量部、シリコーン系離型剤であるBYK−307を0.5重量部混合し、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20重量部を加え、硬化性組成物を得た。この組成物を調整する際には、まず、各成分を95℃にて充分に加熱混合し、均一な溶液とした後、常温まで冷却することにより、各成分が良好に相溶した透明な組成物を調整し、上述の各種試験を実施した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
各試験結果を表2にまとめた。表2より、実施例1〜4は溶剤揮発前後の粘度差が非常に大きく、加熱ムラが抑制されている一方で比較例1では当該粘度差が充分に高くないため加熱ムラが発生している。また実施例1〜4では硬化物が優れた耐アブレーション指数を示す一方で比較例2は高パワー密度の光により硬化物がアブレーションを起こし照射部位の膜厚が変化していることがわかる。
【0084】
以上より本発明における硬化性組成物は加熱ムラを抑制し、かつ得られる硬化物が高いアブレーション耐性を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と溶剤からなる硬化性組成物であって、溶剤揮発前の組成物粘度と揮発後の組成物粘度の関係が、(溶剤揮発後の組成物粘度(cP))/(溶剤揮発前の組成物粘度(cP))≧60を満たし、かつ前記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物を、中心波長450nm、パワー密度30W/cmの光を500時間照射する耐アブレーション試験に供されとき、耐アブレーション指数=試験後の硬化物膜厚(μm)/試験前の硬化物膜厚(μm)で定義される耐アブレーション指数が90%以上であることを満たす硬化物を与えることを特徴とする硬化性組成物。

【請求項2】
前記硬化性組成物が、有機成分と無機成分からなるハイブリッド型組成物であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。

【請求項3】
前記硬化性組成物が
(A)アルケニル基を有する有機化合物、
(B)1分子中に少なくとも3つ以上のヒドロシリル基を有する化合物、
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)希釈溶剤
からなるハイブリッド型組成物であることを特徴とする請求項1〜2に記載の硬化性組成物。

【請求項4】
(B)成分の粘度が2500cP以上であることを特徴とする請求項3に記載の硬化性組成物。

【請求項5】
(B)成分が、(B−1)アルケニル基を少なくとも2つ有する有機化合物と(B−2)1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する鎖状及び/又は環状のオルガノハイドロジェンシロキサンとをヒドロシリル化反応させることにより得られる(B−3)有機変性シリコーン化合物であることを特徴とする請求項3〜4いずれか1項に記載の硬化性組成物

【請求項6】
前記(B−1)成分が、ポリブタジエン、ビニルシクロヘキサン、シクロペンタジエン、ジビニルビフェニル、ビスフェノールAジアリレート、及びトリビニルシクロヘキサン、及び下記一般式(1)
【化1】


(式中R、R、Rはいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表される有機化合物からなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項5に記載の硬化性組成物。

【請求項7】
前記(B−1)成分が、下記一般式(2)
【化2】


(式中R、R、Rはいずれも有機基であり、これらのうち少なくとも2つはアルケニル基である)で表されることを特徴とする請求項5〜6いずれか1項に記載の硬化性組成物。

【請求項8】
前記(B−2)成分が、1分子中に少なくともヒドロシリル基を2つ有する環状ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項5〜7いずれか1項に記載の硬化性組成物。

【請求項9】
(A)成分がジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、モノアリルジメチルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイドからなる群より選択される少なくとも一つの化合物であることを特徴とする請求項3〜8いずれか1項に記載の硬化性組成物。

【請求項10】
請求項1〜9いずれか1項に記載の硬化性組成物を基板上に塗膜し、ベークして得られる硬化物。




【公開番号】特開2013−53219(P2013−53219A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192008(P2011−192008)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】