説明

硬化性組成物

【課題】 本発明の目的は塗布性、透明性が高く、平坦性、加工性を有する貼り合せ基板を提供することにある。
【解決手段】 23℃における溶液粘度が5Pa・s以下である、下記(A)から(D)を必須成分とする組成物を、厚み1mm未満の第一の基板と厚み1mm未満の第二の基板の間に挟だ後に光照射及び80℃以上の熱を加えることにより硬化させた硬化性樹脂組成物層を形成させたものであり、その硬化性樹脂組成物層の23℃での引張貯蔵弾性率が1700MPa以上、かつ100℃での引張貯蔵弾性率が70MPa以下である貼り合わせ基板。
(A)一分子中に炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する化合物
(B)鎖状および/または環状ポリシロキサン骨格を含有し、一分子中にSiH基を少なくとも1個と、エポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個を有する化合物
(C)光カチオン重合開始剤
(D)熱ヒドロシリル化触媒

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布性、透明性が高く、平坦性、加工性を有する貼り合せ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサー等の光半導体デバイスでは、半導体素子の微細化、高集積化に伴い、半導体素子が形成されている基板、たとえばシリコン基板を薄くして、他の基板と貼り合わせてプロセスを行なう方法が採用されている。例えば表面にCMOS等の光半導体デバイスを形成したシリコンの半導体基板を、貼り合わせ用の封止材を介してガラス基板に貼り合わせたものが例示される。これらの光半導体デバイスはウェハレベルで作成することができ、貼り合わせた基板は、個片化された後プリント配板などに実装される。
【0003】
ここで、貼り合わせに用いられる封止材としては、デバイスとして使用するための高透明性や、反りがなく平坦に封止することが求められている。さらに、ウェハレベル貼り合わせた封止後に行なうダイシングなどの加工性が高いことも求められている。
【0004】
特許文献1ではCMOSイメージセンサー封止材料としてオルガノシロキサンを含有する感光性樹脂組成物が記載されている。しかし、特許文献1に記載の感光性樹脂組成物では透明性が十分でなく、硬化後の封止材料の硬度も低く、加工性も改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−270027
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は塗布性、透明性が高く、平坦性、加工性を有する貼り合せ基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、本発明は、以下の構成を有するものである。
即ち本発明は、以下の構成をなす。
【0008】
1).23℃における溶液粘度が5Pa・s以下である、下記(A)から(D)を必須成分とする組成物を、厚み1mm未満である第一の基板と厚み1mm未満である第二の基板の間に挟みこんだ後に光照射及び80℃以上の熱を加えることにより硬化させた硬化性樹脂組成物層を形成させたものであり、その硬化性樹脂組成物層の23℃での引張貯蔵弾性率が1700MPa以上、かつ100℃での引張貯蔵弾性率が70MPa以下であることを特徴とする貼り合わせ基板。
(A)一分子中に炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する化合物
(B)鎖状および/または環状ポリシロキサン骨格を含有し、一分子中にSiH基を少なくとも1個と、エポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個を有する化合物
(C)光カチオン重合開始剤
(D)熱ヒドロシリル化触媒
2).(A)成分の分子量が2000以下であることを特徴とする1)に記載の貼り合わせ基板。
【0009】
3).さらに(E)成分として一分子中に炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を含有することを特徴とする1)〜2)のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【0010】
4).組成物に含有される炭素−炭素二重結合が1.0〜2.7mmol/g、エポキシ基および/またはオキセタニル基が1.0〜2.4mmol/gでありかつ、(E)成分由来の炭素−炭素二重結合が0.01〜1.8mmol/gの範囲に含まれる量であることを特徴とする3)に記載の貼り合わせ基板。
【0011】
5).組成物中にイソシアヌル酸環構造が含有されることを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【0012】
6).(B)成分が、下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物を使用する、1)〜5)のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物
(β)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物
(γ)1分子中に、エポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物
7).(B)成分に含有されるエポキシ基および/またはオキセタニル基の少なくとも1個が脂環式エポキシ基、オキセタニル基、グリシジル基であることを特徴とする1)〜6)のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【0013】
8).(C)成分がオニウム塩であることを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【0014】
9).さらに(F)成分として増感剤を含有することを特徴とする1)〜8)のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【0015】
10).基板がシリコン基板および/または、ガラス基板から選ばれることを特徴とする1)〜9)のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【0016】
11).1)〜10)のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板をダイシング加工した部品を組み込んだ半導体製品。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、塗布性、透明性が高く、平坦性、加工性を有する貼り合せ基板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に記載する。
((A)成分)
(A)成分は1分子中に炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する化合物であれば特に限定されない。(A)成分に含まれる化合物は単一でも複数でも良い。
(A)成分に含まれる炭素−炭素二重結合としては特に制限されないが、下記一般式(I)で示される炭素−炭素二重結合が反応性の点から好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表す。)また、原料の入手の容易さからは、Rは水素原子であることがより好ましい。
硬化物の耐熱性が高いという点からは一般式(II)が好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】
(式中Rは水素原子あるいはメチル基を表し、それぞれのRは同一でも異なっていても良い。)また、原料の入手の容易さからは、Rは水素原子であることがより好ましい。
【0023】
炭素−炭素二重結合は置換基を介して(A)成分の骨格部分に共有結合していても良く、置換基としては、構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲンから選ばれる原子のみを含むものが好ましい。置換基の例としては、次のものが挙げられる。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
また、これらの置換基の2つ以上が共有結合によりつながって置換基を構成していてもよい。
【0027】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、下記に示すものが挙げられる。
【0028】
【化5】

【0029】
耐熱性をより向上し得るという観点から、(A)成分1gあたりに含有される炭素−炭素二重結合は1mmol以上であるのが好ましく、2mmol以上であるのがさらに好ましく、3mmol以上であるのが特に好ましい。
【0030】
力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性、充填性が良好であるという観点からは、(A)成分は分子量が2000未満のものが好ましく、1500未満のものがより好ましく、1000未満のものがさらに好ましい。(A)成分の分子量は、市販の質量分析計を用いて測定することができる。
【0031】
良好な作業性を得るためには、(A)成分は23℃における粘度が100Pa・s未満のものが好ましく、50Pa・s未満のものがより好ましく、30Pa・s未満のものがさらに好ましい。ここでの粘度はE型粘度計によって測定した値を指す。
【0032】
(A)成分としては、着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
耐熱性の観点からは、(A)成分としては下記一般式(III)で表されるイソシアヌル酸骨格を含有する化合物がさらに好ましい。
【0033】
【化6】

【0034】
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0035】
上記一般式(III)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜30の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜20の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
【0036】
上記のような一般式(III)で表される化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノメチルイソシアヌレート、ジアリルモノフェニルイソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0037】
耐光性が高いという観点からは、(A)成分としては脂環式化合物が好ましい。具体的には、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン、ジビニルアダマンタンなどが挙げられる。
屈折率が高いという観点からは、(A)成分としては芳香族化合物が好ましい。具体的には、下記一般式(IV)で表されるジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマーや、ビスフェノールAジアリルエーテルや、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホン、フェノールノボラック樹脂等の芳香環含有エポキシ樹脂に結合するグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置換したものが好ましい。
【0038】
【化7】

【0039】
(式中、Rは炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)
上記一般式(IV)のRとしては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、
【0040】
【化8】

【0041】
のように複数の芳香環をもつことが好ましい。
【0042】
((B)成分)
(B)成分は鎖状および/または環状オルガノシロキサン骨格を含有し、1分子中にSiH基を少なくとも1個と、エポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個を有する化合物である。(B)成分に含まれる化合物は単一でも複数でも良い。
上記鎖状オルガノシロキサン化合物としては、たとえば、下記一般式(V):
【0043】
【化9】

【0044】
(式中、それぞれのRは、水素あるいは炭素数1〜50の一価の有機基で表される置換基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよいが、少なくとも1個は水素であり、さらに少なくとも1個はエポキシ基および/またはオキセタニル基含有する置換基である。nは0〜1000の数を表す。)で表わされる化合物が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、一般式(V)におけるRが、炭素数0〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数0〜15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数0〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいRの例としては、水素基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、シクロヘキサニルオキシド等が挙げられる。
【0045】
上記環状オルガノシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(VI):
【0046】
【化10】

【0047】
(式中、Rは水素あるいは炭素数1〜20の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよいが、少なくとも1個は水素であり、さらに少なくとも1個はエポキシ基および/またはオキセタニル基含有する置換基である。nは2〜10の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。なお、上記一般式(VI)におけるRは、C、H、Oから構成される炭素数0〜20の有機基であることが好ましく、炭素数0〜10の炭化水素基であることがより好ましい。Rは入手性、耐熱性の観点よりは特にメチル基であるものが好ましく、硬化物の屈折率が高くなるという観点よりは特にフェニル基であるものが好ましい。また、nは3〜10の数であることが好ましい。
【0048】
本発明の硬化性組成物中の樹脂骨格に含まれるシロキサン成分含有量は組成物の総量100重量部に対して50重量部以下であることが好ましく、48重量%であることがより好ましく、45重量%以下であることが特に好ましい。シロキサン成分が50重量%より多い場合、硬化させたときの硬度が十分でなく、光学材料として使用できない場合がある。ここでシロキサン成分とは、−Si−O−のように、珪素原子と酸素原子が直接結合した単位、すなわち1個の珪素原子と1個の酸素原子により構成される単位を表す。珪素原子上の他の置換基は、本発明のシロキサン成分には含まれない。
【0049】
(B)成分は1分子中にSiH基を少なくとも1個含有すればよいが、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは5個以上である。1分子中に含有されるSiH基が2個以上であれば、架橋密度が高くなり耐熱性に優れ、硬度が高い硬化物が得られる。
【0050】
(B)成分に含有されるエポキシ基および/またはオキセタニル基は特に限定されないが、安定性の観点より、脂環式エポキシ基やグリシジル基やオキセタニル基が好ましい。光カチオン重合性に優れる観点からは、脂環式エポキシ基が好ましく、硬化物の靭性が向上するという観点からは、オキセタニル基が好ましい。
【0051】
(B)成分は1分子中にエポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個含有すればよいが、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは5個以上である。1分子中に含有されるエポキシ基および/またはオキセタニル基が2個以上であれば、架橋密度が高くなり耐熱性に優れ、硬度が高い硬化物が得られる。
【0052】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、硬化性組成物の流動性をより制御しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の上限は100000、より好ましくは10000、さらに好ましくは5000である。また、揮発性の観点から、好ましい分子量の下限は50であり、より好ましくは80、さらに好ましくは100である。
【0053】
(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物、
(β)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物、(γ)1分子中にエポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物
を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましい。
【0054】
((α)成分)
ここで(α)成分は、上述した(A)成分である、1分子中に炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する化合物と同じもの(α1)を用いることができる。(α1)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり機械的強度の強い硬化物となりやすい。
【0055】
(α)成分としては、後述する(E)成分である1分子中に炭素−炭素二重結合を1個有する化合物(α2)も用いることができる。(α2)成分を用いると得られる硬化物が低弾性となり、応力を低減しやすい。
【0056】
その他、1分子中に炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有するオルガノシロキサン化合物(α3)も用いることができる。(α3)成分を用いると、得られる硬化物の耐光性が高くなる。
(α3)成分の具体例としては、テトラメチルジビニルジシロキサン、ヘキサメチルトリビニルトリシロキサン、SiH基を含有する環状シロキサンの例示でSiH基の水素原子をビニル基、アリル基等のアルケニル基に置換したものなどが例示され、具体的に1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサン等の化合物が挙げられる。
(α)成分に含まれる化合物は単一でも複数でも良い。
【0057】
((β)成分)
(β)成分は、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物であれば特に限定されず、具体的な例としては(B)成分で説明した骨格を持ち、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するものが挙げられる。
【0058】
((γ)成分)
(γ)成分は、1分子中にエポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物であれば特に限定されない。(γ)成分に含まれる化合物は単一でも複数でも良い。
(γ)成分に含有されるエポキシ基および/またはオキセタニル基は特に限定されないが、安定性の観点より、脂環式エポキシ基やグリシジル基やオキセタニル基が好ましい。光カチオン重合性に優れる観点からは、脂環式エポキシ基が好ましく、硬化物の靭性が向上するという観点からは、オキセタニル基が好ましい。
【0059】
(γ)成分の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、アリルオキセタニルエーテル、ビニルオキセタニルエーテル等が挙げられる。
【0060】
(予備反応)
(α)、(β)、(γ)成分から(B)成分である化合物を得るための反応について説明する。
【0061】
(α)成分と(β)成分と(γ)成分の混合比率は、1分子中に2個以上SiH基が残る範囲であれば、特に限定されないが、(α)成分と(γ)成分中に含有される炭素−炭素二重結合のモル数の和(X)と、(β)成分中のSiH基のモル数(Y)との比は、1≦Y/X≦30であることが好ましく、更に1≦Y/X≦10であることが好ましい。1>Y/Xの場合は、組成物中に未反応アルケニル基が残るため着色の原因となり、また30<Y/Xの場合には、大量の(β)成分を使用するため、製造コストが高くなる観点より好ましくない。
【0062】
また、(α)成分および(γ)成分の割合については、(α)成分の炭素−炭素二重結合のモル数をA1、化合物(γ)の炭素−炭素二重結合のモル数をA2とした場合、A1+A2=1として、0.01≦A1≦0.99、0.01≦A2<0.99の範囲で適宜選択することができる。
【0063】
ヒドロシリル化させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば後述する(D)成分を用いることができる。
【0064】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10−10モル、より好ましくは10−8モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−3モルである。
【0065】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
【0066】
反応の順序、方法としては種々挙げられるが、合成工程が簡便であると言う観点からは、(α)成分、(β)成分および(γ)成分を1ポットでヒドロシリル化反応させ、最後に未反応の化合物を除去する方法が好ましく、低分子量体を含有しにくいと言う観点からは、(α)成分と(β)成分とをヒドロシリル化反応させた後、(γ)成分を加えてヒドロシリル化反応させる方法が好ましい。
【0067】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜2MPaである。
【0068】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0069】
(α)成分、(β)成分、(γ)成分をヒドロシリル化反応させた後に、溶媒及び/又は未反応の化合物を除去してもよい。除去する方法としては、例えば、減圧脱揮が挙げられる。減圧脱揮する場合、低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは100℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0070】
(α)成分、(β)成分、(γ)成分をヒドロシリル化反応させて得られた(B)成分を保存する際、貯蔵安定性を向上させるためには窒素、アルゴンの様な不活性ガス雰囲気下、10℃以下での保存が好ましく、0℃以下の保存が特に好ましく、−10℃以下の保存がさらに好ましい。
【0071】
((C)成分)
(C)成分は光カチオン重合開始剤であり、活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生する、光カチオン重合開始剤であれば、特に限定されず使用できる。(C)成分に含まれる光カチオン重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0072】
(C)成分として具体的には、米国特許第3379653号に記載されたような金属フルオロ硼素錯塩及び三弗化硼素錯化合物;米国特許第3586616号に記載されたようなビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩;米国特許第3708296号に記載されたようなアリールジアゾニウム化合物;米国特許第4058400号に記載されたようなVIa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4069055号に記載されたようなVa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4068091号に記載されたようなIIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート;米国特許第4139655号に記載されたようなチオピリリウム塩;米国特許第4161478号に記載されたようなMF6陰イオン(ここでMは燐、アンチモン及び砒素から選択される)の形のVIa元素;米国特許第4231951号に記載されたようなアリールスルホニウム錯塩;米国特許第4256828号に記載されたような芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩;W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、ポリマー・ケミストリー版」、第22巻、1789頁(1984年)に記載されたようなビス [4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル] スルフィド−ビスヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等);陰イオンがB(Cである芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩;ジアゾメタン化合物;スルホン酸錯塩;トリアジン化合物などが例示される。
【0073】
入手性の観点からは、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム又はヨードニウム塩並びにII族、V族及びVI族元素のオニウム塩が好ましい。これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社)、UVE−1014及びUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック社)、KI−85(デグッサ社)、SP−152及びSP−172(ADEKA社)並びにサンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)、WPI113及びWPI116(和光純薬工業社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)として商品として入手できる。
【0074】
反応性の観点からは吸収波長の最大ピークが300〜450nmの範囲に含まれる光カチオン重合剤が好ましい。吸収波長の最大ピークが300〜450nmの範囲であると、例えばガラスを通して光を照射する際でも、良好な反応性が得られる。
【0075】
光カチオン重合開始剤の添加量は、十分な硬化性を有し、かつ化性組成物の耐熱耐光性を確保するためには、硬化性組成物に含有されるエポキシ基および/またはオキセタニル基1molに対して、好ましくは10−8〜10−1mol、より好ましくは10−7〜10−2molである。
【0076】
((D)成分)
(D)成分の熱ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO));白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh4、Pt(PBu);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;白金−炭化水素複合体(例えばアシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体);白金アルコラート触媒(例えばラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒)等が挙げられる。さらに、塩化白金−オレフィン複合体(例えばモディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体)も本発明において有用である。
【0077】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
【0078】
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0079】
(D)成分の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるためには、成分(B)のSiH基1molに対して、好ましくは10−8〜10−1mol、より好ましくは10−7〜10−2molである。
【0080】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒としては、例えば、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0081】
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1molに対して、好ましくは10−2〜10mol、より好ましくは10−1〜10molである。
【0082】
本発明の貼り合わせ基板において、第一の基板と第二の基板の間に挟みこまれる(A)成分から(D)成分からなる硬化性組成物の粘度は0.01〜5Pa・sであるのが好ましく、0.03〜3Pa・sであるのがより好ましく、0.05〜2Pa・sであるのがさらに好ましい。粘度がこの範囲に含まれることで、硬化性組成物をコーティングや塗布するときの作業性が向上し、基板と基板の間における硬化性組成物層の膜厚みの均一性および平坦性が向上する傾向にある。
また、本発明の貼り合わせ基板において、第一の基板と第二の基板の間に挟みこまれる (A)成分から(D)成分からなる硬化性組成物を光及び熱を用いて硬化させた樹脂組成物の成形体は、動的粘弾性測定の引張モードにおける貯蔵弾性率が、23℃において1700MPa以上、かつ100℃での貯蔵弾性率が70MPa以下であることが、貼り合わせ基板における平坦性の点において、良好な傾向がある。
【0083】
本発明の貼り合わせ基板とは、通常半導体基板として用いられるものであれば公知のものを用いることができるが、特に厚み1mm未満であるシリコン基板および/またはガラス基板から選ばれることが好ましい。特にシリコン基板とガラス基板の間に(A)成分から(D)成分からなる硬化性組成物を挟み込み硬化させた貼り合わせ基板は、例えばCMOSセンサー等の光半導体デバイスに用いることができる。
【0084】
本発明の貼り合わせ基板は、更に平坦性や樹脂組成物層の膜厚均一性を高める目的で、(E)成分を添加することができる。以下に(E)成分について説明する。
【0085】
((E)成分)
(E)成分は1分子中に炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば有機化合物や、シリコーン化合物、有機化合物とシリコーン化合物を変性した化合物が例示される。(E)成分を含有すると、本発明の組成物を用いて基板を貼り合わせた際に、平坦な貼り合わせ基板を得られるという利点がある。(E)成分に含まれる化合物は単一でも複数でも良い。
【0086】
(E)成分に含まれる炭素−炭素二重結合としては特に制限されないが、上記(A)成分で説明したものと同様のものを用いることができる。
耐熱性をより向上し得るという観点から、(E)成分1gあたりに含有される炭素−炭素二重結合は1mmol以上であるのが好ましく、1.5mmol以上であるのがさらに好ましく、2mmol以上であるのが特に好ましい。
【0087】
力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性、充填性が良好であるという観点からは、(E)成分は分子量が2000未満のものが好ましく、1500未満のものがより好ましく、1000未満のものがさらに好ましい。
【0088】
良好な作業性を得るためには、(E)成分は室温で液体であるのが好ましく、23℃における粘度が50Pa・s未満のものが好ましく、30Pa・s未満のものがより好ましく、10Pa・s未満のものがさらに好ましい。ここでの粘度はE型粘度計によって測定した値を指す。
【0089】
(E)成分としては、着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
【0090】
弾性率、硬度が高いという観点からは、(E)成分の添加量としては、組成物に含有される(E)成分由来の炭素−炭素二重結合が1.8mmol/g以下であることが好ましく、1.5mmol/g以下であることがさらに好ましく、1.3mmol/g以下であることが特に好ましい。ここで、組成物に含有される(E)成分由来の炭素−炭素二重結合の量は、内標を用いて組成物のH−NMRを測定し、ビニル基由来のプロトン数を比較したり、モノマー構造から計算したビニル基量や内標を用いてモノマーのH−NMRを測定して求めたビニル基量を用いて配合部数から計算したりすることで求めることができる。
【0091】
硬化物の脆さの観点からは、(E)成分としては有機化合物であることが好ましい。好ましい有機化合物の例としては、(A)成分で説明したものが挙げられる。
【0092】
硬化物の耐光性の観点からは、(E)成分としてはケイ素含有化合物であることが好ましい。具体的には、トリメチルビニルシラン、アリルトリメチルシラン、ジフェニルメチルビニルシラン、アリルジフェニルメチルシランなどが挙げられる。
【0093】
硬化物の屈折率が高くなるという観点からは、(E)成分としては芳香族で置換されたケイ素含有化合物が好ましい。
【0094】
((F)成分)
(F)成分は増感剤である。(F)成分を含有すると、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)と言われるような高波長の光に感度を持たせることができ、光の感度が向上する。(F)成分は、上記光カチオン重合開始剤と併用して使用し、硬化性の調整を行うことができる。(F)成分に含まれる化合物は単一でも複数でも良い。
【0095】
(F)成分としては、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げることができる。
アントラセン系化合物の具体例としては、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン、9,10−ジフェニル−2, 6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられ、特に入手しやすい観点より、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10 −ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0096】
また硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、硬化性組成物との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
【0097】
チオキサントン系の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
【0098】
(F)成分の添加量としては樹脂100重量部に対して0.5部以下、好ましくは0.3部以下、さらに好ましくは0.2部以下であるのが好ましい。添加量が0.5部より多いと、耐熱性が低下する恐れがある。
【0099】
(その他添加剤)
(貯蔵安定剤)
本発明の硬化性組成物の貯蔵安定性を改良する目的で貯蔵安定剤を添加するのが好ましい。貯蔵安定剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが例示される。
【0100】
これらの貯蔵安定剤のうち、貯蔵安定性が良好で原料入手性がよいという観点からは、1−エチニルシクロヘキサノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、ジメチルマレートが好ましい。
【0101】
貯蔵安定剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1molに対し、10−1〜10モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜100モルの範囲である。
【0102】
(老化防止剤)
本発明の硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0103】
ヒンダードフェノール系老化防止剤としては、BASF社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0104】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0105】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0106】
(反応性希釈剤)
本発明の硬化性組成物には、作業性、反応性、接着性、硬化物強度の調整のために適宜、反応性希釈剤を添加する事ができる。添加する化合物には、硬化反応形式によって選択して特に限定無く使用することが可能であり、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アルコキシシラン化合物、(メタ)アクリレート化合物など重合基を有する化合物を使用する。
【0107】
エポキシ化合物およびオキセタン化合物の具体例としては、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シクロヘキシルエポキシ基含有オルガノシロキサン(環状、鎖状)、グリシジル基含有オルガノシロキサン(環状、鎖状)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,4−ビス{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル}ベンゼン、ビス{1−エチル(3−オキセタニル)}メチルエーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルへキシロキシメチル)オキセタン等を挙げることができる。
【0108】
アルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物、メチルトリメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物、ジメチルジメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物等が挙げることができる。
【0109】
(メタ)アクリレート化合物の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸変性アリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名:デナコールアクリレートDA111)、ウレタン(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール系(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、 (メタ)アクリレート基含有オルガノシロキサン等が挙げられる。
【0110】
反応性希釈剤の添加量としては種々設定できるが、変性オルガノシロキサン化合物100重量部に対して、好ましい添加量は1〜50重量部、より好ましくは3〜25重量部である。添加量が少ないと添加効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0111】
(接着性改良剤)
本発明の硬化性組成物には、接着性改良剤を添加することもできる。接着性改良剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0112】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0113】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0114】
シランカップリング剤の添加量としては種々設定できるが、変性オルガノシロキサン化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化性や硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0115】
本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、カルボン酸類及び/または酸無水物類を用いることができ、接着性の向上及び/又は安定化が可能である。このようなカルボン酸類、酸無水物類としては特に限定されないが、
2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
【0116】
これらのカルボン酸類および/または酸無水物類のうち、得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、好ましいカルボン酸類および/または酸無水物類としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびそれらの単独あるいは複合酸無水物等が挙げられる。
【0117】
カルボン酸類および/または酸無水物類を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の範囲は0.1〜50重量部、より好ましくは1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0118】
また、これらのカルボン酸類および/または酸無水物類は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0119】
(ラジカル禁止剤)
本発明の硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0120】
本発明の硬化性組成物には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、赤外線吸収剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、消泡剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0121】
(硬化性組成物の調整方法および硬化方法)
硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製しても良く、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。全成分を混合した後、反応制御条件や官能基の反応性の差の利用により組成物中の官能基の一部のみを反応させてもよい。物性改良の目的で熱可塑性樹脂等の添加剤を使用する場合は、これらの添加剤と硬化触媒である白金化合物を予め混合して貯蔵しておき、硬化直前にそれぞれの所定量を混合して調製してもよい。
【0122】
接着層の硬度、弾性率が高く、平坦な貼り合わせ基板が得られるという観点からは、本発明の硬化性組成物に含有される炭素−炭素二重結合が1.0〜2.7mmol/gの範囲に含まれる量であるのが好ましく、1.2〜2.6mmol/gの範囲に含まれる量であるのがさらに好ましく、1.5〜2.5mmol/gの範囲に含まれる量であるのが特に好ましい。硬化性組成物に含有される炭素−炭素二重結合の量は、内標を用いて組成物のH−NMRを測定し、ビニル基由来のプロトン数を比較したり、モノマー構造から計算したビニル基量や内標を用いてモノマーのH−NMRを測定して求めたビニル基量を用いて配合部数から計算したりすることで求めることができる。
【0123】
接着層の弾性率が高く、平坦な貼り合わせ基板が得られるという観点からは、本発明の硬化性組成物に含有されるエポキシ基および/またはオキセタニル基が1.0〜2.4mmol/gの範囲に含まれる量であるのが好ましく、1.2〜2.4mmol/gの範囲に含まれる量であるのがさらに好ましく、1.5〜2.4mmol/gの範囲に含まれる量であるのが特に好ましい。硬化性組成物に含有されるエポキシ基および/またはオキセタニル基の量は、内標を用いて組成物のH−NMRを測定し、ビニル基由来のプロトン数を比較したり、モノマー構造から計算したビニル基量や内標を用いてモノマーのH−NMRを測定して求めたビニル基量を用いて配合部数から計算したりすることで求めることができる。
【0124】
本発明の硬化性組成物の使用方法は、特に限定されるものではなくスピンコートやスリットコートによるコーティング、ディスペンスによるポッティング等を用いて使用することができる。また基板の状態に合わせ適宜、溶剤による粘度調整、界面活性剤による表面張力調整を行っても良い。
【0125】
また本発明の樹脂組成物は、光照射工程及び加熱工程により架橋反応を進行させて硬化物とする。光硬化させるための光源としては、使用する重合開始剤や増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200〜450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどを使用できる。 露光量は特に制限されないが、好ましい露光量の範囲は1〜5000mJ/cm、より好ましくは1〜1000mJ/cmである。露光量が少ないと硬化しない。露光量が多いと急硬化のために変色することがある。好ましい硬化時間の範囲は3〜120秒、より好ましくは10〜60秒である。
【0126】
光照射後の加熱工程における加熱温度は特に特に限定されるものではないが、周辺の耐熱性の低い部材への影響が小さいという観点よりは、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。また、反応時間の観点からは50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。
【0127】
加熱工程は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
【0128】
加熱工程時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【実施例】
【0129】
以下に本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0130】
(合成例1)
500mL四つ口フラスコにトルエン200g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン95gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート27.64g、トルエン27.64g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)1.73gの混合液を滴下した。滴下終了後、H−NMRでアリル基起因のピークが消失したことを確認した後、ビニルシクロヘキセンオキシド67.15gおよびトルエン67.15gの混合液を加えた。添加後H−NMRでビニル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、「反応物A」を得た。
【0131】
反応物Aは、H−NMRにより1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部とトリアリルイソシアヌレートのアリル基およびビニルシクロヘキセンオキシドのビニル基が反応したもの(混合物であるが、主成分として下記式で表される構造の化合物を含有する)であることがわかった。また、1,2−ジブロモエタンを内部標準に用いてH−NMRにより含有されるエポキシ基量は3.3mmol/gであることがわかった。
【0132】
【化11】

【0133】
(比較合成例2)
2Lオートクレーブに1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン650g、トルエン600gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温105℃で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート90g、トルエン110g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として0.03wt%含有)3.5gの混合溶液を10回に分けて分割添加した。滴下終了から6時間加熱撹拌した後、H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。冷却により反応を終了した。
【0134】
トルエン及び未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを60℃で2時間、80℃で2時間減圧脱揮し、「反応物B」を得た。H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部とトリアリルイソシアヌレートのアリル基が反応したもの(混合物であるが、主成分として下記式で表される構造の化合物を含有する)であることがわかった。
【0135】
【化12】

【0136】
(比較合成例3)
1000mL四つ口フラスコにジオキサン60g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン30gを入れ、気相部を窒素置換した後、内温60℃で加熱、撹拌した。ジビニルテトラメチルジシロキサン14g、ジオキサン133.5g、白金ビニルシロキサン錯体のジオキサン溶液(白金として0.1wt%含有)0.42gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃まで昇温し、H−NMRでビニル基起因のピークが消失したことを確認した後、ビニルシクロヘキセンオキシド43.5g、ジオキサン144g、白金ビニルシロキサン錯体のジオキサン溶液(白金として0.1wt%含有)0.96gの混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、H−NMRでSiH基起因のピークが消失したことを確認し、冷却により反応を終了した。ジオキサンを減圧留去し、「反応物C」を得た。H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部とジビニルテトラメチルジシロキサンのビニル基およびビニルシクロヘキセンオキシドのビニル基が反応したもの(混合物であるが、主成分として下記式で表される構造の化合物を含有する)であることがわかった。p−キシレンを内部標準に用いてH−NMRにより含有されるエポキシ基量を求めたところ4.1mmol/gであることがわかった。
【0137】
【化13】

【0138】
(測定、試験)
(粘度)
東京計器株株式会社製E型粘度計で、EHD型1°34‘×R24のコーンを用い、23℃の粘度を測定した。
【0139】
(反り)
8インチで厚み0.5mmのシリコン基板上に硬化性組成物を2g塗布し、上から8インチで厚み0.75mmのガラス基板を貼り合わせた。樹脂が基板上にぬれ広がった後、積算光量500J/cmでUVを照射した。その後、60℃から150℃まで10℃/時間で昇温し、150℃で1時間、さらに180℃0.5時間空気中で加熱し、貼り合わせ基板を得た。
【0140】
得られた貼り合わせ基板を水平な台の上に置き、縁から厚みの異なる隙間ゲージを挿入した。挿入できた隙間ゲージのうち最も厚みの厚いものを反りとし、以下の基準で評価し、記載した。
【0141】
○:(反り)≦500μm
△:500μm<(反り)≦1000μm
×:1000μm<(反り)
(ショア硬度)
硬化物をJIS K6253により、タイプDデュロ−メータによって硬さを測定した。
【0142】
(弾性率)
アイティー計測制御株式会社製動的粘弾性装置DVA−200を用い、測定温度−20〜200℃、昇温速度5℃/分、歪み0.1%、周波数10Hz、チャック間距離20mm、引張りモードで測定し、23℃と100℃での貯蔵弾性率の値を記載した。
【0143】
(透過率)
得られた硬化物(1mm厚)の光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定し、450nmにおける透過率の値を記載した。
【0144】
(官能基量の測定)
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた。合成例での反応追跡は、反応液を重クロロホルムで1%程度まで希釈したものをNMR用チューブに加えて測定し、未反応SiH基のピークまたは未反応炭素−炭素二重結合基由来のメチレン基のピークと、反応炭素−炭素二重結合基由来のメチレン基のピークから求めた。合成例の官能基量は、ジブロモエタンまたはp−キシレン換算での炭素−炭素二重結合基価(mmol/g)、エポキシ量(mmol/g)、を求めた。
樹脂組成物に含有される官能基量は各成分の官能基量を求め、配合部数より計算した。
【0145】
(実施例1)
表1に示される配合組成(配合量は重量部である)で硬化性組成物(Z−1)を調製した。ここで、白金ビニルシクロヘキサン錯体は3wt%トルエン溶液を使用した。また、BBI−103はミドリ化学社のジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート化合物であり、50wt%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液に、9,10−ジプロポキシアントラセンは25wt%ジエチレングリコールジメチルエーテル溶液に調整して使用した。得られた組成物(Z−1)について、2枚のガラス板に1mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに流し込んだ後、積算光量500J/cmでUVを照射した。その後、熱風循環式乾燥機にて、60℃から150℃まで10℃/時間で昇温し、150℃で1時間空気中にて加熱を行った。冷却後、ガラスからはずし、さらに180℃/0.5時間空気中で加熱し、評価用硬化物を得た。この硬化物は、ショア硬度、弾性率、透過性評価に用いた。次に、同じく組成物(Z−1)について、8インチで厚み0.5mmのシリコン基板上に組成物(Z−1)を2g塗布し、上から8インチで厚み0.75mmのガラス基板を貼り合わせた。樹脂が基板上にぬれ広がった後、積算光量500J/cmでUVを照射した。その後、熱風循環式乾燥機にて、60℃から150℃まで10℃/時間で昇温し、150℃で1時間、さらに180℃0.5時間空気中で加熱し、貼り合わせ基板を得た。この貼り合わせ基板について、反り評価を実施した。
【0146】
【表1】

【0147】
(実施例2、比較例1〜2)
実施例1と同様に、表1に示される配合組成に従い、硬化性組成物を調製し、評価用硬化物と貼り合わせ基板を作成し、評価を行った。
【0148】
(比較例3)
比較合成例2で得られた「反応物B」60部、トリアリルイソシアヌレート40部、A−187(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、エポキシシリコーン)白金ビニルシクロヘキサン錯体の3wt%トルエン溶液0.1部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.1部を混合して撹拌し、組成物を得た。その後、実施例1と同様に硬化性組成物を調製し、評価用硬化物と貼り合わせ基板を作成し、評価を行った。
【0149】
(比較例4)
比較合成例3で得られた「反応物C」76.7部に、OXT−212(東亞合成(株)製、オキセタン化合物)10部、KBM303(信越化学(株)製、エポキシシリコーン化合物)10部、Irgacure250(BASF製、光カチオン重合開始剤)2.6部、Irgacure127(BASF製、増感剤)0.7部を混合して撹拌し、組成物を得た。その後、実施例1と同様に硬化性組成物を調製し、評価用硬化物と貼り合わせ基板を作成し、評価を行った。
【0150】
(比較例5)
実施例1で得られた硬化性組成物(Z−1)について、40℃に設定した熱風循環式オーブンにて、粘度が20Pa.sになるように粘度を調整した(Z−2)。粘度調整後の硬化性組成物(Z−2)について、8インチで厚み0.5mmのシリコン基板上に組成物(Z−2)を2g塗布し、上から8インチで厚み0.75mmのガラス基板を貼り合わせたが、1時間以上経過しても、樹脂が基板上にぬれ広がらず貼り合わせ基板を作成することができなかった。
【0151】
(比較例6)
実施例1で得られた硬化性組成物(Z−1)について、8インチで厚み0.5mmのシリコン基板上に組成物(Z−1)を2g塗布し、上から8インチで厚み0.75mmのガラス基板を貼り合わせた。樹脂が基板上にぬれ広がった後、UV照射を行わずに、熱風循環式乾燥機にて、60℃から150℃まで10℃/時間で昇温し、150℃で1時間、さらに180℃0.5時間空気中で加熱し、貼り合わせ基板を得た。この貼り合わせ基板について、反り評価を実施した。
【0152】
【表2】

【0153】
表2に示されるように、本発明の特徴を有する硬化性組成物を用いると、塗布性、透過率が高く、平坦性に優れ、接着層の弾性率、硬度が高く、加工性に優れる貼り合わせ基板を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
23℃における溶液粘度が5Pa・s以下である、下記(A)から(D)を必須成分とする組成物を、厚み1mm未満である第一の基板と厚み1mm未満である第二の基板の間に挟みこんだ後に光照射及び80℃以上の熱を加えることにより硬化させた硬化性樹脂組成物層を形成させたものであり、その硬化性樹脂組成物層の23℃での引張貯蔵弾性率が1700MPa以上、かつ100℃での引張貯蔵弾性率が70MPa以下であることを特徴とする貼り合わせ基板。
(A)一分子中に炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する化合物
(B)鎖状および/または環状ポリシロキサン骨格を含有し、一分子中にSiH基を少なくとも1個と、エポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個を有する化合物
(C)光カチオン重合開始剤
(D)熱ヒドロシリル化触媒
【請求項2】
(A)成分の分子量が2000以下であることを特徴とする請求項1に記載の貼り合わせ基板。
【請求項3】
さらに(E)成分として一分子中に炭素−炭素二重結合を1個有する化合物を含有することを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【請求項4】
組成物に含有される炭素−炭素二重結合が1.0〜2.7mmol/g、エポキシ基および/またはオキセタニル基が1.0〜2.4mmol/gでありかつ、(E)成分由来の炭素−炭素二重結合が0.01〜1.8mmol/gの範囲に含まれる量であることを特徴とする請求項3に記載の貼り合わせ基板。
【請求項5】
組成物中にイソシアヌル酸環構造が含有されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【請求項6】
(B)成分が、下記化合物(α)〜(γ)のヒドロシリル化反応生成物を使用する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
(α)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物
(β)1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物
(γ)1分子中に、エポキシ基および/またはオキセタニル基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物
【請求項7】
(B)成分に含有されるエポキシ基および/またはオキセタニル基の少なくとも1個が脂環式エポキシ基、オキセタニル基、グリシジル基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【請求項8】
(C)成分がオニウム塩であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【請求項9】
さらに(F)成分として増感剤を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【請求項10】
基板がシリコン基板および/または、ガラス基板から選ばれることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の貼り合わせ基板をダイシング加工した部品を組み込んだ半導体製品。

【公開番号】特開2013−71984(P2013−71984A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211362(P2011−211362)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】