説明

硬化性複合体組成物及びその硬化物

【課題】低色分散、高光線透過率といった優れた光学特性、耐熱性、硬度、及び加工性を有し、加えてリフロー条件のような厳しい実装条件下での成形品形状の耐熱保持性が改善された硬化性複合体組成物とその硬化物を提供する。
【解決手段】(A)成分:側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の反応性の(メタ)アクリレート基を有し、末端に2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)由来の構造単位を有し、単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)、アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)と上記(c)、(d)から得られる共重合体、(B)成分:不飽和二重結合を有する官能基を1つ以上有するモノマー、および(C)成分:平均粒子径が1〜100nmであるシリカ微粒子を含有する硬化性複合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低色分散、高光線透過率といった優れた光学特性、耐熱性、硬度、及び、加工性を有し、加えてリフロー条件のような厳しい実装条件下での成形品形状の耐熱保持性が改善された硬化性複合体組成物とその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性の樹脂組成物は、例えば、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等として有用であり、また、塗料や接着剤の材料としても用いられるものである。更に、無機基材と組み合わせてハイブリッド部材とすると、熱膨張率を低下させることができるだけでなく、無機物質と樹脂との屈折率を合わせることで樹脂組成物及びその硬化物の外観を制御し、透明性を発現させることもできることから、電気・電子部品材料や光学用途における材料として特に有用である。例えば、デジタルカメラモジュールは携帯電話に搭載されるなど小型化が進み、低コスト化も求められている。さらに、新規用途として車載用カメラや宅配業者向けバーコード読み取り機等のニーズが高まっている。これら用途に適用する際、製造時のハンダリフロー時に成形品形状が変化しない様、形状保持の耐熱性が求められているばかりではなく、実使用時に於いて、夏季の高温暴露等を考慮し、長時間の耐熱性、低吸水性などの高い信頼性が要求されている。
【0003】
このような技術要求に対して、特許文献1には(a)有機溶剤に分散されたコロイダルシリカ、(b)脂環式ポリエポキシ化合物及び(c)金属キレート化合物を必須成分として含有し、且つ(a)成分と(b)成分の配合割合が固形分比で(a)成分5〜85重量%及び(b)成分95〜15重量%であり、そして(c)成分が(a)成分及び(b)成分の固形分の合計100重量部当たり0.01〜30重量部含有する有機溶剤系熱硬化性組成物が開示されている。また、特許文献2〜4にはエポキシ樹脂および無機酸化物粒子を少なくとも含んでなる組成物を硬化させることにより成型したエポキシ樹脂成型体であって、該成型体中に平均粒径が50nm以下の無機酸化物粒子が分散しているエポキシ樹脂成形体が開示されている。これらの文献に於いて開示されている技術によって得られた材料は、280℃以上の温度のリフロー時の過酷な熱履歴を受けた場合には、耐熱変色が不足しており、熱履歴を受けた後の光学特性を向上させる必要があった。
【0004】
一方、特許文献5には2官能の縮合した多環の脂環式構造を有する少なくとも1種以上の(メタ)アクリレート(a)、平均粒子径が1〜100nmであるシリカ微粒子(b)が有機溶媒に分散されたコロイダルシリカを含む組成物の有機溶媒を除去して得られる複合体組成物において、シリカ微粒子(b)の含有量が30〜90重量%である複合体組成物を架橋させてなる成形硬化物が開示されている。しかし、当該文献の技術に従って得られる成形硬化物は光学レンズまたはプリズムといった高精度の形状のものを連続成形するのに必要な成形性を有するものではなかった。
【0005】
さらに、特許文献6には特定の構造の異種重合性単量体から誘導される繰返し構造単位を有するビニル系重合体と、平均粒子径が1nm〜100nmの酸化ジルコニウム粒子とを含有する光学材料用硬化性樹脂組成物が開示されている。
ここでは、無機微粒子として、平均粒子径が1nm〜100nmの酸化ジルコニウム粒子を用いている。このような材料を撮像系の光学レンズとして使用する場合、高分散の材料となってしまうため、光のにじみを小さくし、高いアッベ数の材料とするために、光学特性を向上する必要があった。また、高温のリフロー時の過酷な熱履歴を受けた場合には、形状維持に関する耐熱性が不足しており、熱履歴を受けた後の光学特性を向上させる必要があった。
【0006】
これらの文献で開示されている技術に従って製造される硬化性複合体組成物を使用した場合、先進の光学レンズ・プリズム用途分野で求められる低吸水性、成形性、耐熱性、高透明性といった特性バランスを兼ね備え、加えて、高度の耐熱性、形状精度、耐熱形状保持安定性等の基本性能を備えたものであって、高い光学特性を持ち、種々の光学部材を連続成形するのに好適に適用であるような硬化性複合体組成物は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2865741号公報
【特許文献2】特開2004−250521号公報
【特許文献3】特開2008−133439号公報
【特許文献4】特開2008−156625号公報
【特許文献5】特許4008246号公報
【特許文献6】特開2009−92598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低色分散、高光線透過率といった優れた光学特性、耐熱性、硬度、及び、加工性を有し、加えてリフロー条件のような厳しい実装条件下での成形品形状の耐熱保持性が改善された硬化性複合体組成物とその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)成分:脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)、アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)、2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)と、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)を含む成分を共重合して得られる共重合体であって、側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の反応性の(メタ)アクリレート基を有し、末端に2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)由来の構造単位を有する共重合体であり、重量平均分子量が2000〜20000であり、更にトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶である可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体、
(B)成分:不飽和二重結合を有する官能基を1つ以上有し、分子量が1000以下のるモノマー、および
(C)成分:平均粒子径が1〜100nmであるシリカ微粒子、
を含有する複合体組成物であり、(A)成分及び(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が2〜83wt%、(B)成分の配合量が83〜2wt%、(C)成分の配合量が15〜90wt%であることを特徴とする硬化性複合体組成物である。
【0010】
前記(A)成分における2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)の導入量が、下記式(1)で表わされるモル分率Mdとして、0.02〜0.35であることが好ましい。また、前記(A)成分における2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の反応性の(メタ)アクリレート基の側鎖への導入量が、下記式(2)で表わされるモル分率Mc1として、0.05〜0.5であることが好ましい。
d=(d)/[(a)+(b)+(c)+(d)] (1)
c1=(c1)/[(a)+(b)+(c)] (2)
ここで、(a)、(b)、(c)及び(d)は、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)に由来する構造単位、アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)に由来する構造単位、2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)に由来する構造単位、及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)に由来する構造単位のモル数を示す。また、(c1)は、側鎖に2官能(メタ)アクリレート基を含有する構造単位(c1)のモル数を示す。なお、上記モル数は、可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の一定重量当たりのモル数(例えば、モル/100g)として計算される。
【0011】
前記脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、及びジシクロペンタニルメタクリレートからなる群から選ばれる一種以上の脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。
【0012】
前記アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)としては、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び部分的にエトキシ化された2−トビロキシメタクリレートからなる群から選ばれる単官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。
【0013】
前記2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)としては、1,4−ブタンジールジアクリレート、1,6−ヘキサンジールジアクリレート、1,9−ノナンジオルジアクリレート及びジメチロールトリシクロデカンジアクリレートからなる群から選ばれる一種以上の2官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。
【0014】
前記B成分の不飽和二重結合を有する官能基を1つ以上有する分子量が1000以下のモノマーとしては、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル及び2官能(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる一種以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。
【0015】
本発明の硬化性複合体組成物は、更に(D)成分として光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明は上記の硬化性複合体組成物を硬化させて得られることを特徴とする硬化物である。更に、本発明は上記の硬化物から形成されてなることを特徴とする光学材料である。光学材料としては、光学プラスチックレンズまたはプリズムが好ましく挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、低色分散、高光線透過率といった優れた光学特性、耐熱性、硬度、及び、加工性を有し、加えてリフロー条件のような厳しい実装条件下での成形品形状の耐熱保持性が改善された硬化性複合体組成物とその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の硬化性複合体組成物について詳しく説明する。本発明の硬化性複合体組成物は、(A)成分、(B)成分および(C)成分を必須成分として含むので、必須成分から説明する。
【0019】
本発明の(A)成分である可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、共重合体と略称することがある。)は脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)、アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)及び2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)を含む単量体と、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)を存在させ、共重合して得られる共重合体であって、側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の反応性の(メタ)アクリレート基を有し、更に、末端に2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)由来の構造単位を有する可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。ここで、可溶性とはトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶であることを意味する。可溶性の試験は合成例に示す条件でなされる。なお、単官能(メタ)アクリル酸エステルは、分子中に存在するエチレン性二重結合の数が1つであり、2官能(メタ)アクリル酸エステルは、分子中存在するエチレン性二重結合の数が2つであり、多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、分子中存在するエチレン性二重結合の数が2つ以上であると理解される。また、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)を(a)成分、アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)を(b)成分、2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)を(c)成分、及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)を(d)成分又はDMPともいう。ここで、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)が、アルコール性水酸基を有する場合、又はアルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)が脂環式構造を有する場合は、いずれも(a)成分であると同時に(b)成分であると理解される。なお、(a)成分はアルコール性水酸基を有しないことが好ましく、(b)成分は脂環式構造を有しないことが好ましい。
【0020】
上記共重合体は、単官能(メタ)アクリル酸エステル及び2官能(メタ)アクリル酸エステルを共重合して得られるものであるので、分岐構造又は架橋構造を有するが、かかる構造の存在量は可溶性を示す程度に制限される。したがって、2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の未反応の(メタ)アクリル基を含有する構造単位(c1)を側鎖に有する共重合体となっている。この未反応の(メタ)アクリル基はペンダント(メタ)アクリル基ともいい、これは重合性を示すため、更なる重合処理により重合し、溶剤不溶の樹脂硬化物を与えることができる。
【0021】
また、共重合体は、(d)成分に由来する構造単位を末端に有する。共重合体の末端に、この構造単位を導入することによって、離型性などの成形加工性が向上した硬化物が得られるようになる。
【0022】
共重合体は、(a)成分に由来する構造単位、(b)成分に由来する単位、(c)成分に由来する構造単位、及び(d)成分に由来する構造単位を有する。ここで、(c)成分に由来する構造単位には、2つの(メタ)アクリル酸エステルに含まれる重合性二重結合(ビニル基という)の両方が、重合に関与して分岐構造又は架橋構造を形成する構造単位(c2)と、1つのビニル基だけが重合に関与し、他のビニル基は反応せずに残る未反応の(メタ)アクリル基を含有する構造単位(c1)がある。(d)成分であるDMPは、連鎖移動剤として作用して分子量の増大を防止し、共重合体の末端に存在する。
【0023】
共重合体への(d)成分の導入量としては、下記式(1)で表わされるモル分率Mdとして、0.02〜0.35、好ましくは0.03〜0.30、特に好ましくは0.05〜0.15である。
d=(d)/[(a)+(b)+(c)+(d)] (1)
ここで、(a)、(b)、(c)及び(d)は、(a)、(b)、(c)及び(d)の各成分に由来する構造単位のモル数又はモル比を示す。共重合体の末端に(d)成分由来の構造単位を上記範囲に導入することによって、離型性及び低吸水性を向上させることができる。
【0024】
2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)は、共重合体を分岐又は架橋させると共に、ペンダントビニル基を生じさせ、この共重合体に硬化性を与え、硬化時に耐熱性を発現させるための架橋成分として重要な役割を果たす。
【0025】
2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリル酸エステルを用いることができるが、これらに制限されるものではない。
【0026】
2官能(メタ)アクリル酸エステルの好適な具体例としては、コスト、重合制御の容易さ及び得られたポリマーの耐熱性の点でシクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートが好ましく用いられる。
【0027】
共重合体は、側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の反応性の(メタ)アクリレート基を含有する構造単位(c1)を有するが、式(2)で表わされる構造単位(c1)のモル分率Mc1が、0.05以上0.4以下であることがよく、好ましくは0.1〜0.3である。
c1=(c1)/[(a)+(b)+(c)] (2)
ここで、式中の(c1)は、(メタ)アクリレート基を含有する構造単位(c1)のモル数を示す。上記モル分率を満足することによって、光や熱での硬化性に富み、硬化後の耐熱性及び機械的特性に優れた成形品を得ることができる。
【0028】
脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)は、共重合体の溶剤可溶性、低吸水性、耐熱性、光学特性及び加工性を改善するために重要である。このような脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレートからなる群から選ばれる一種以上の脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができるが、これらに制限されるものではない。これら成分から誘導される構造単位が脂環式構造を有する共重合体中に導入されることによって、重合体のゲル化を防ぎ、溶媒への溶解性を高めることができるばかりではなく、共重合体の低色分散性などの光学特性、低吸水性、耐熱性を改善することができる。
【0029】
好ましい脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、下記式(a1)で表わされる化合物が挙げられる。
A−R−C−(R’)n (a1)
ここで、Aは(メタ)アクリロキシ基であり、Rは単結合又は炭素数1〜10のアルキレン基又はポリアルキレンオキサイド基であり、Cは脂肪族環であり、R’は脂肪族環に置換する炭素数1〜10のアルキル基であり、nは0〜5である。
【0030】
他の好ましい脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、下記式(a2)で表わされる化合物が挙げられる。
【化1】

ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数6〜15の脂環式構造を含む炭化水素基を表し、R3は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、mは0〜10の整数を表す。
【0031】
好適な具体例としては、コスト、ゲル化防止及び得られたポリマーの成形加工性の点でイソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレートからなる群から選ばれる一種以上の脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0032】
アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)は、共重合体の湿熱条件のような厳しい実使用条件下での無機材料との密着性を改善するために重要である。このようなアルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、部分的にエトキシ化された2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び部分的にエトキシ化された2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。これらアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0033】
好ましいアルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)としては、下記式(b1)で表わされる化合物が挙げられる。
【化2】

ここで、R1は水素原子またはメチル基を表し、R4は水酸基を一つ有する炭素数2〜4の炭化水素基を表す。
【0034】
アルコール性水酸基を含有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)は共重合体中の(a)成分、(b)成分及び(c)成分のモル分率とアルコール性水酸基を含有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の構造単位のモル分率とが(3)式で表されるMbが0.05以上、0.60以下であることがよく、好ましくは0.1〜0.3である。
b=(b)/[(a)+(b)+(c)] (3)
ここで、式中の(a)、(b)及び(c)は、(a)、(b)及び(c)の各成分に由来する構造単位のモル数を示す。上記モル分率を満足することによって、湿熱条件のような厳しい実使用条件下での光学特性と無機材料との密着性を改善できるバランスの良好な共重合体を得ることができる。
【0035】
DMPは、連鎖移動剤として機能し、共重合体の分子量を制御する。共重合体の分子量は重量平均分子量Mwとして、2000〜20000の範囲であり、好ましくは3000〜10000の範囲である。比較的低分子量の共重合体を使用することにより樹脂硬化物の成形性及び離型性を高める。
【0036】
さらに、共重合体の溶剤可溶性及び加工性を改善する目的で(e)成分として、脂環式構造及び水酸基を持たない単官能の(メタ)アクリル酸エステルを添加することが可能である。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート等が挙げられるが、好ましくは、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートである。これら(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよいが、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、及びn−ブチルアクリレートからなる群から選ばれる一種以上の(メタ)アクリル酸エステルであることが最も好ましい。
【0037】
また、これらのその他の単量体成分(e)に由来する構造単位は、単量体成分(a)由来の構造単位、単量体成分(b)由来の構造単位及び単量体成分(c)由来の構造単位の総量に対して30モル%未満の範囲内とすることがよい。
【0038】
また、別の観点からは、可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(a)成分由来の構造単位20〜55モル%、(b)成分由来の構造単位20〜35モル%、及び(c)成分由来の構造単位60〜10モル%、好ましくは50〜12モル%、より好ましくは40〜15モル%を含むことがよい。上記モル%は、(a)、(b)及び(c)成分由来の構造単位の合計を100モル%として計算される。2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の構造単位が10モル%に満たないと、硬化物の耐熱性が不足するので好ましくなく、また、この構造単位が60モル%を越えると、成形加工性が低下し、成形物の強度が著しく低下するので好ましくない。
また、その他の単量体(e)成分に由来する構造単位は、(a)成分と(b)成分由来の構造単位の総量に対して30モル%未満の範囲内とすることがよい。
【0039】
(A)成分として使用する共重合体の製造方法としては特に限定されないが、DMP、単官能アクリル酸エステル芳香族化合物及び2官能(メタ)アクリル酸エステルを所望の含有量となるように調整し、必要に応じてラジカル重合開始剤及び溶剤を使用し20〜200℃の温度で重合させることで製造され、例えば、スチームストリッピング法、貧溶媒での析出などの通常用いられる方法で回収される。
【0040】
次に、(B)成分について説明する。
(B)成分として、不飽和二重結合を有する官能基を1つ以上有する(メタ)アクリレ−トモノマー(以下、(メタ)アクリレ−トモノマーと略称することがある。)が使用される。(メタ)アクリレ−トモノマーは、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するものであり、1種又は2種以上が使用される。これらの(B)成分として用いられる(メタ)アクリレートは(A)成分と併用することによって、硬化性を落とさずに組成物の粘度を調整することが可能となるとともに、相乗的に、耐熱性に加えて、低色分散、高光線透過率といった光学特性が同時に向上する。
【0041】
(メタ)アクリレ−トモノマーは、分子量が1000以下のモノマーであるが、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのような分子量分布を有するモノマーであることもでき、この場合のMwは1000以下である。有利には、分子量分布を有しない化合物からなるモノマー又はその混合物である。
【0042】
上記(メタ)アクリレ−トモノマーとしては、(A)成分と共重合可能なものがよく、例えば、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)が好ましく使用されるが、その他に例えば、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフロフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルポリエトキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2ーヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のモノマー類を挙げることができる。特に好ましくは、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0043】
次に、(C)成分について説明する。
本発明の(C)成分として使用される平均粒子径が1〜100nmであるシリカ微粒子(d)としては、ケイ素を含有する金属酸化物でかつ平均粒径が1〜100nmの範囲のものであれば、特に制限されるものではない。シリカ微粒子としては、乾燥された粉末状のシリカ微粒子、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を使用することができる。分散性の点で、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いることが好ましい。有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いる場合の有機溶媒としては、複合体組成物中に使用する有機成分が溶解するものを用いることが好ましく、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類が挙げられる。脱溶媒のしやすさから、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ、シリカゾル、シリカ微粒子を用いることが好ましく、さらに好ましくは、イソプロピルアルコールに分散されたコロイダルシリカである。特に、イソプロピルアルコールに分散されたコロイダルシリカを用いた場合は、脱溶媒後の粘度が他の溶剤系に比べて低く、粘度が低い複合体組成物を安定して作製するのに適している。これらの有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)、シリカ微粒子は、要求される特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されたものであっても良く、有機溶媒に分散させるために、界面活性剤等の分散剤を使用しているものであっても良い。
【0044】
シリカ微粒子の平均粒径は、1〜100nmが好ましく、透明性と流動性とのバランスの点で、さらに好ましくは1〜50nm、より好ましくは5〜50nm、最も好ましくは5〜40nmである。1nm未満であれば、作製した複合体組成物の粘度が極端に増大するため、シリカ微粒子の充填量が制限されるとともに分散性が悪化し、十分な透明性、線膨張係数を得ることができない。また、100nmを越えると透明性が著しく悪化する恐れがあるので好ましくない。
【0045】
ここで、シリカ微粒子の平均粒子径は窒素吸着法(BET法)により求めた比表面積S(m2/g)からD(nm)=2720/Sの式で計算される。
【0046】
波長400〜500nmの光線透過率を低下させないために、1次粒径が200nm以上のシリカ微粒子が5%以下の割合で存在するシリカ微粒子を用いることが好ましく、その割合が0%であることがより好ましい。シリカ微粒子の充填量を上げるために、平均粒径が異なるシリカ微粒子を混合して用いても良い。また、シリカ微粒子として、特開平7−48117号公報に示されるような多孔質シリカゾルや、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等とケイ素の複合金属酸化物を用いても良い。
【0047】
硬化性複合体組成物中のシリカ微粒子の含有量は15〜90wt%が好ましく、線膨張係数と軽量化のバランスの点で、さらに好ましくは25〜80wt%、より好ましくは、25〜70wt%、最も好ましくは、30〜70wt%である。この範囲であれば、流動性、分散性が良好であるため、製造が容易であり、十分な強度、低い線膨張係数を持つ成形品を製造することができる。
【0048】
本発明の硬化性複合体組成物は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を必須成分とするが、その含有割合は、次のとおりである。複合体組成物において、(A)成分及び(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が2〜83wt%、(B)成分の配合量が83〜2wt%、(C)成分の配合量が15〜90wt%である。より好ましくは、(A)成分の配合量が5〜75wt%、(B)成分の配合量が80〜10wt%、(C)成分の配合量が15〜80wt%である。最も好ましくは、(A)成分の配合量が10〜65wt%、(B)成分の配合量が75〜15wt%、(C)成分の配合量が15〜70wt%である。
【0049】
本発明の硬化性複合体組成物は、(D)成分として重合開始剤、好ましくは光重合開始剤を含むことがよい。本発明の硬化性樹脂組成物は、熱重合であっても成形、硬化が可能であるが、レンズ等の光学材料を成形、硬化する場合は、厳密に形状制御可能な光硬化が有利であり、そのため光重合開始剤を加えることが好ましくなる。
【0050】
(D)成分として使用される光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0051】
これらは、単独又は2種以上の混合物として使用でき、更にはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0052】
一方、(D)成分として使用される熱重合開始剤としては、例えばシクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類;クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類;tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系重合開始剤並びに2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン2,2'−アゾビスメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系重合開始剤を挙げることができる。
【0053】
これらの重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、(A)成分を含む重合性成分の合計量100重量部に基いて、0.01〜25重量部であることが好ましく、0.05〜20重量部の範囲内であることがさらに望ましい。0.1〜15重量部の範囲内であることが最も好ましい。
【0054】
本発明の硬化性複合体組成物が、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む場合、その好ましい含有割合は、次のとおりである。(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対し、5〜250重量部、好ましくは20〜100重量部である。(C)成分の配合量は、(B)成分と(A)成分の配合量の合計100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは1.0〜5重量部である。
【0055】
別の観点からは、硬化性複合体組成物中に、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の合計100wt%に対して(D)成分:0.1〜10wt%を含有することがよい。(A)成分、(B)成分及び(D)成分の合計に対して(D)成分の配合比率が上記の範囲内にあることによって、相乗的に離型性や硬化性に見られる成形性と、耐熱性及び光学特性との特性バランスが改善される。また、(D)成分が少な過ぎると硬化不足を生じやすく、耐熱性や耐光性が低下し、多すぎると機械的強度が低下したり、耐熱性が低下したりする。なお、硬化性複合体組成物中に有機溶剤及びフィラーを含む場合は、上記含有量は、これらを除外して計算される。
【0056】
本発明の硬化性複合体組成物中には、複合体組成物作製時に重合反応が進行し、粘度が上昇することを防ぐ目的で、重合禁止剤を含有させても良い。また、本発明の硬化性複合体組成物中には、吸水率を低減させる目的で、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の疎水化処理剤を含有させても良い。
本発明の硬化性複合体組成物中には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用することができる。この場合、吸水性を低減させたり、さらに線膨張係数を低減させる等の目的も兼ねて、脂環式構造やカルド骨格を有するオリゴマーやポリマーを使用することが好ましい。
また、本発明の硬化性複合体組成物中には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を含んでいても良い。
【0057】
本発明の硬化性複合体組成物を製造する方法としては、例えば、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)とその他の配合物を混合し、必要に応じて、撹拌しながら減圧することにより有機溶媒を除去する方法、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)とその他の配合物を混合し、必要に応じて、脱溶媒した後、キャストし、さらに脱溶媒させる方法、分散能力の高い混合装置を用いて乾燥した粉末状のシリカ微粒子を分散させる方法などが挙げられる。分散能力が高い装置としては、例えば、特殊機化工業(株)製のフィルミックスや種々のビーズミル等が挙げられる。分散能力が高い装置を使用するときは、混合又は混練中に、反応が急速に進まないように、温度が上昇しすぎないよう注意する必要がある。硬化性複合体組成物を作製するときの、組成物の温度は、30〜100℃に保つことが好ましく、脱溶媒スピードとのバランスで、さらに好ましくは35〜70℃、最も好ましくは、35〜60℃である。温度を上げすぎると、流動性が極端に低下したり、ゲル状になってしまい、シート化できなくなる。また、分散能力が高い装置を使用する場合は、装置の摩耗等による不純物の混入に注意する必要がある。有機溶媒に分散したコロイダルシリカを用いる場合、この有機溶媒を硬化性複合体組成物中に残存させても良い。有機溶媒を含有させる場合、熱処理等の後処理工程を設け、最終的に例えば光学フィルム・シート状の本発明の硬化性複合体組成物からなるコーティング層から有機溶媒を脱離させればよい。有機溶媒の硬化性複合体組成物中における含有量は、架橋工程や熱処理等によって揮発成分を除去する工程で、発泡する、シートにうねりが発生する、着色するなどの問題を回避するためには、硬化性複合体組成物の0〜10wt%が好ましく、さらに好ましくは、0〜5wt%であり、最も好ましくは、0〜3wt%である。
【0058】
本発明の硬化性複合体組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化物を得ることができる。ここで、活性エネルギー線を照射して硬化する場合に用いられる光源の具体例としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、複写用高圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、あるいは走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等を挙げることができる。また、本発明の硬化性複合体組成物を紫外線照射により硬化する場合、硬化に必要な紫外線照射量は300〜20000mJ/cm2程度でよい。なお、硬化性複合体組成物を十分に硬化するために、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で紫外線等の活性エネルギー線を照射することが望ましい。
【0059】
また、本発明の硬化性複合体組成物は、加熱することによっても硬化物を得ることができる。硬化温度としては、70〜200℃が好ましい。より好ましくは、80〜180℃である。硬化時間としては、1分〜15時間が好ましい。より好ましくは、3分〜10時間である。
【0060】
活性エネルギー線による硬化及び/又は熱重合による架橋後に高温で熱処理する場合は、その熱処理工程の中に、線膨張係数を低減する等の目的で、窒素雰囲気下又は真空状態で、150℃〜300℃、1〜24時間の熱処理工程を含ませることが好ましい。
【0061】
更に、本発明の硬化性複合体組成物は、必要に応じ、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、充填剤等の添加剤を併用することができる。
【0062】
本発明の硬化性複合体組成物の硬化物は、常法に従い、紫外線、可視光レーザー等の活性エネルギー線を照射することにより得ることができる。紫外線を使用する場合、低圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯等を用いて照射する。特に、光源としては350〜450nmにエネルギー強度が強いランプが好ましい。
【0063】
紫外線等の活性エネルギー線もしくは熱により硬化させて得られる本発明の硬化性複合体組成物の硬化物の屈折率は、25℃で1.45以上であることが好ましく、より好ましくは25℃で1.48以上である。特に本発明の光学材料用樹脂組成物で光学レンズを作製する場合、硬化物の屈折率が25℃で1.45未満であると充分なレンズモジュールをコンパクトなサイズにできないという問題が生じることがある。
また、硬化物のアッベ数(光の波長によってその屈折率を変える性質を規定する物質固有の数値)は40.0以上であることが好ましく、より好ましくは45.0以上である。硬化物のアッベ数が40.0未満であると色収差が大きく色のにじみが生じるため好ましくない。
【0064】
本発明の硬化性複合体組成物を成形、硬化して得られる複合体硬化物は、レンズやプリズム等の光学材料として優れる。とりわけ非球面レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、眼鏡レンズ、等の光学プラスチックレンズ、並びに、光学フィルム用コーティング材料や光学接着材料として有用である。そして、本発明の硬化性複合体組成物より得られる光学レンズは、撮像装置に有利に使用される。また、硬化性複合体組成物又は複合体硬化物はその他にも、光ディスク、光ファイバー、光導波路等のオプトエレクトロニクス向け用途、印刷インキ、塗料、クリアーコート剤、ツヤニス等にも使用できる。
また、本発明の硬化性複合体組成物を接着剤として使用することもでき、これが硬化して生じる硬化物を接着層として有する物品としては、例えば、携帯電話、携帯ゲーム機、デジタルカメラ等がある。
【0065】
本発明の硬化性複合体組成物を用いて偏光フィルムと保護板を貼り合わせる際は、例えば、活性エネルギー線透過性に優れている無アルカリガラス製や石英ガラス製等の保護板に制限されず、紫外線吸収の大きいアクリル板、ポリカーボネート等の保護板でも、該組成物の良好な反応硬化性のため使用可能である。
【0066】
本発明の硬化性複合体組成物は、偏光フィルム等の基材に、ロールコーター、スピンコーター、スクリーン印刷法等の塗工装置を用いて接着剤膜厚が1〜100μmとなるように塗布し、保護板を貼り合わせ、紫外線を保護板の上から照射して硬化することにより接着させることができる。
【実施例】
【0067】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の各物性の測定は以下に示す方法により試料調製及び測定を行った。
【0068】
1)ポリマーの分子量及び分子量分布
可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。共重合体の分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
【0069】
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM−LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析と、元素分析により決定した。溶媒としてクロロホルム−d1を使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。
【0070】
3)可溶性試験
25℃の各種有機溶媒(トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン及びクロロホルム)100mlに対し、共重合体1gを加え、マグネチックスターラーを用いて30分攪拌した後に目視で溶解性を確認した。上記有機溶媒のいずれにも全部が溶解し、ゲルの生成は認められない場合を、溶解性:○とした。
【0071】
4)物性測定用試験片の作成
幅50mm、長さ50mm、厚み1.0mmの2枚のガラス板の間を0.2〜1.0mmの隙問を開けて外周をポリイミドテープで巻き固定したガラス型に、硬化性組成物を注入し、1)このガラス型の片面から前述の高圧水銀ランプにより、5秒問紫外線を照射する、或いは、2)このガラス型を窒素ガス気流下のイナートガスオーブンに入れ、180℃で1時間加熱することによって硬化させた。ガラス型から硬化した樹脂板を脱型して各種物性測定に使用した。
【0072】
5)屈折率の測定
アッベ屈折率計(アタゴ(株)製)で589nmにおける屈折率及びアッベ数を測定した。
【0073】
6)色相(YI);厚さ1.0mmの平板を色彩色差計(商品名「MODEL TC-8600」、東京電色(株)製」で測定し、そのYI値を示した。
7)Haze(濁り度)及び全光線透過率
0.2mm厚のテストピースを作製し、サンプルのHaze(濁り度)と全光線透過率を、積分球式光線透過率測定装置(日本電色社製、SZ−Σ90)を用い測定した。
【0074】
8)離型性:硬化した樹脂を型より離型させた時の難易度により評価した。
○・・・・型からの離型性が良好
△・・・・離型がやや困難
×・・・・離型が困難或は型のこりがある
9)型再現性:硬化した樹脂層の表面形状と型の表面形状を観察した。
○・・・・再現性良好
△・・・・硬化の条件(光、熱)によっては再現性が良好
×・・・・再現性が不良
【0075】
10)バリ、モレ:硬化した樹脂を金型より離型させた時に、成形品の製品部分以外に生じたバリの大きさ及び型のクリアランスへの樹脂の洩れこみの度合により評価した。
○・・・・バリの生成量が0.05mm未満、型クリアランスへの樹脂の洩れこみが1.0mm未満。
△・・・・バリの生成量が0.05mm以上、0.2mm未満。型クリアランスへの樹脂の洩れこみが1.0mm以上、3.0mm未満。
×・・・・バリの生成量が0.2mm以上、型クリアランスへの樹脂の洩れこみが3.0mm以上。
【0076】
11)リフロー耐熱性:1mm厚の平行平板をテストピースとして、分光測色計CM-3700d(コニカミノルタ社製)にて波長:400nmの分光透過率を測定した。測定タイミングは、190℃60分でのポストキュアを行った耐熱試験前と、エアーオーブン中、260℃、8分間の耐熱試験後とした。
【0077】
12)吸水率
1mm厚の平行平板をテストピースとして、60℃で24時間真空乾燥したテストサンプルの重さをWoとし、それを±0.1mgまで測定可能な秤で秤量し、温度:85℃、相対湿度:85%の恒温恒湿槽内で1週間、加湿を行った。加湿後、テストサンプルについた水気をふき取り、サンプルを±0.1mgまで測定可能な秤で秤量し、Wとした。下記の式で吸水率を算出した。同じテストサンプルを3つ準備し、同様に試験を行った。
Wo/W×100=吸水率
【0078】
13)耐ヒートサイクル性
157mWの超高圧水銀灯を用い3000mJのエネルギーで、無アルカリガラス(厚さ;0.7mm)と2mm厚のアクリル板を25μmの厚みで接着させたサンプルを、1サイクル、−35℃で30分、85℃で30分の条件で100サイクル行った後、2枚の基板の剥離の様子を観察し、剥離無しを○、剥離有りを×で評価した。
【0079】
14)耐湿性
157mWの超高圧水銀灯を用い3000mJのエネルギーで、無アルカリガラス(厚さ;0.7mm)と2mm厚のアクリル板を25μmの厚みで接着させたサンプルを、60℃、90%RHに100時間放置した後の2枚の基板の剥離の様子を観察し、剥離無しを○、剥離有りを×で評価した。
【0080】
15)形状維持耐熱性
硬化させ、ポストキュアを行った複合体硬化物層の球面レンズの表面形状(形状1)と、280℃のハンダリフロー炉を3回通したあとの複合体硬化物層の球面レンズの表面形状(形状2)を三鷹光機株式会社製非接触三次元形状測定装置で測定し、形状1と形状2の差の最大値を形状維持耐熱性として算出した。
【0081】
合成例1
ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート3.2モル(926.5ml)、イソボルニルメタクリレート8.0モル(1814.1ml)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート4.8モル(645.5ml)、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン4.8モル(1145.9ml)、トルエン2400mlを10.0Lの反応器内に投入し、90℃で240mmolの過酸化ベンゾイルを添加し、6時間反応させた。重合反応を冷却により停止させた後、室温で反応混合液を大量のヘキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をヘキサンで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体A1392.6g(収率:40.5wt%)を得た。
【0082】
得られた共重合体AのMwは8950、Mnは3470、Mw/Mnは2.58であった。13C−NMR、1H−NMR分析及び元素分析を行うことにより、共重合体Aは、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート由来の構造単位を合計18.2モル%、イソボルニルメタクリレート由来の構造単位を合計51.1モル%、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート由来の構造単位を30.7モル%含有していた。また、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン由来の構造の末端基は、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの総量に対し、8.3モル%存在していた。さらにペンダントアクリレートの割合は12.10モル%であった。
共重合体Aはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Aのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0083】
合成例2
1,4−ブタンジオールジアクリレート4.8モル(950.4g)、ジシクロペンタニルメタクリレート6.4モル(922.7g)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート4.8モル(692.2g)、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン4.8モル(1135g)、トルエン2400mlを10.0Lの反応器内に投入し、90℃で240mmolの過酸化ベンゾイルを添加し、6時間反応させた。重合反応を冷却により停止させた後、室温で反応混合液を大量のヘキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をヘキサンで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体Bを得た。
【0084】
得られた共重合体BのMwは12500、Mnは3640、Mw/Mnは3.43であった。13C−NMR、1H−NMR分析及び元素分析を行うことにより、共重合体Bは、1,4−ブタンジオールジアクリレート由来の構造単位を合計27.8モル%、ジシクロペンタニルメタクリレート由来の構造単位を合計27.8モル%、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート由来の構造単位を41.6モル%含有していた。また、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン由来の構造の末端基は、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの総量に対し、10.1モル%存在していた。さらにペンダントアクリレートの割合は20.4モル%であった。
共重合体Bはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Bのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0085】
合成例3
1,4−ブタンジオールジアクリレート5モル(990g)、ジシクロペンタニルメタクリレート1モル(144.2g)、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート4モル(576.8g)、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン5モル(1182g)、トルエン2400mlを10.0Lの反応器内に投入し、90℃で240mmolの過酸化ベンゾイルを添加し、6時間反応させた。重合反応を冷却により停止させた後、室温で反応混合液を大量のヘキサンに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をヘキサンで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体Cを得た。
【0086】
得られた共重合体CのMwは9230、Mnは3210、Mw/Mnは2.88であった。13C−NMR、1H−NMR分析及び元素分析を行うことにより、共重合体Cは、1,4−ブタンジオールジアクリレート由来の構造単位を合計45.6モル%、ジシクロペンタニルメタクリレート由来の構造単位を合計12.3モル%、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート由来の構造単位を42.1モル%含有していた。また、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン由来の構造の末端基は、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート及び、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの総量に対し、14.6モル%存在していた。さらにペンダントアクリレートの割合は32.6モル%であった。
共重合体Cはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Cのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0087】
合成例4〜15及び合成例16〜20
合成例1と同様の方法を用いて、アクリレート類の種類及び使用量を表1〜2に示す配合で変化させ各種共重合体を合成した。なお、合成例16〜20は比較のための合成例である。結果を表1〜2にまとめて示す。
【0088】
実施例1〜25及び比較例1〜8
表3〜5に示す割合で合成例で合成した各種共重合体と、(メタ)アクリレート類、シリカ微粒子及び重合開始剤等の添加剤を混合し硬化性組成物を得た。次に、この硬化性樹脂組成物を、上記の各種試験方法により硬化し性能評価を行った。性能評価結果を表3〜5に示す。
【0089】
表中の記号の説明
IBOMA;イソボルニルメタクリレート
DCPM;ジシクロペンタニルメタクリレート
DCPA;ジシクロペンタニルアクリレート
HOP;2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
HO;2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CD570;部分エトキシ化2−ヒドロキシエチルメタクリレート
DMTCD;ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート
14BDDA;1,4−ブタンジオールジアクリレート
MMA;メチルメタクリレート
DCP−A;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(共栄社化学株式会社製)
M−600A;2−ヒドロキシ−3−フエノキシプロピルアクリレート(エポキシエステルM−600A:共栄社化学株式会社製)
3EG−A;トリエチレングリコールジアクリレート(ライトアクリレート3EG−A:共栄社化学株式会社製)
FA−513AS;ジシクロペンタニルアクリレ−ト(日立化成工業株式会社製)
FA−129AS;ノナンジオールジアクリレート(日立化成工業株式会社製)
SR205;トリエチレングリコールジメタクリレート(Sartomer-SR205:Sartomer社製)
EG;エチレングリコールジメタクリレ−ト(ライトエステルEG;共栄社化学株式会社製)
MEK−SD;メチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ(シリカ含量30重量%、平均粒子径10〜20nm、スノーテックMEK−SD−(1);日産化学株式会社製)
MEK−ST−MS;メチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ(シリカ含量35wt%、平均粒径17〜23nm、MEK溶媒、スノーテックスMEK−ST−MS;日産化学株式会社製)
MEK−ST−L;メチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ(シリカ含量30wt%、平均粒径40〜50nm、MEK溶媒、スノーテックスMEK−ST−L;日産化学株式会社製)
SC1050;メチルエチルケトン分散型コロイダルシリカ(平均粒径0.2〜0.3μm、MEK溶媒、シリカ含量65wt%、SC1050−MMA;株式会社アドマテックス製)
AO−60;酸化防止剤(アデカスタブAO−60;株式会社アデカ製)
パーブチルO;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、(日本油脂株式会社製)
イルガキュア184;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
【0090】
表1〜2において、成分(a)〜(c)の数字は使用量(モル)を示し、カッコ内の数字はアクリレート類中のモル%であり、DMPの数字は使用量(モル)を示し、カッコ内の数字はアクリレート類の総量に対するモル%である。なお、その他のモノマー成分としてMMAを使用する場合は、これをアクリレート類として計算する。また、各成分の含有量は共重合体に存在する各成分に由来する構造単位の存在比(モル比)であるが、それぞれ、上記式(1)〜(5)で計算される。なお、その他のモノマー成分としてMMAを使用する場合は、これをアクリレート類に由来する構造単位として計算する。
また、表3〜5において、(C)成分のシリカの重量は溶剤分を除いた固形分重量である。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)、アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)、2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)と、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)を含む成分を共重合して得られる共重合体であって、側鎖に2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の反応性の(メタ)アクリレート基を有し、末端に2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)由来の構造単位を有する共重合体であり、重量平均分子量が2000〜20000であり、更にトルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン又はクロロホルムに可溶である可溶性多官能(メタ)アクリル酸エステル共重合体、
(B)成分:不飽和二重結合を有する官能基を1つ以上有し、分子量が1000以下のモノマー、および
(C)成分:平均粒子径が1〜100nmであるシリカ微粒子、
を含有する複合体組成物であり、(A)成分及び(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が2〜83wt%、(B)成分の配合量が83〜2wt%、(C)成分の配合量が15〜90wt%であることを特徴とする硬化性複合体組成物。
【請求項2】
前記(A)成分における2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)の導入量が、下記式(1)で表わされるモル分率Mdとして、0.02〜0.35である請求項1に記載の硬化性複合体組成物。
d=(d)/[(a)+(b)+(c)+(d)] (1)
ここで、(a)、(b)、(c)及び(d)は、それぞれ脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)に由来する構造単位、アルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)に由来する構造単位、2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)に由来する構造単位、及び2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(d)に由来する構造単位のモル数を示す。
【請求項3】
前記(A)成分における2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)由来の反応性の(メタ)アクリレート基の側鎖への導入量が、下記式(2)で表わされるモル分率Mc1として、0.05〜0.5であることを特徴とする請求項2に記載の硬化性複合体組成物。
c1=(c1)/[(a)+(b)+(c)] (2)
ここで、式中の(c1)は、側鎖に2官能(メタ)アクリレート基を含有する構造単位(c1)のモル数を示す。
【請求項4】
前記(A)成分における脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(a)が、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、及びジシクロペンタニルメタクリレートからなる群から選ばれる一種以上の脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性複合体組成物。
【請求項5】
前記(A)成分におけるアルコール性水酸基を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル(b)が、2−ヒドロキシプロピル(メタ)クリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレート、部分的にエトキシ化された2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び部分的にエトキシ化された2−ヒドロキシエチル(メタ)クリレートからなる群から選ばれる単官能(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性複合体組成物。
【請求項6】
前記(A)成分における2官能(メタ)アクリル酸エステル(c)が、1,4−ブタンジールジアクリレート、1,6−ヘキサンジールジアクリレート、1,9−ノナンジオルジアクリレート及びジメチロールトリシクロデカンジアクリレートからなる群から選ばれる一種以上の2官能(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性複合体組成物。
【請求項7】
前記B成分における分子量が1000以下のモノマーが、脂環式構造を有する単官能(メタ)アクリル酸エステル及び2官能(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる一種以上の(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の硬化性複合体組成物。
【請求項8】
更に、(D)成分として光重合開始剤を含むことを特徴とする1〜7のいずれかに記載の硬化性複合体組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性複合体組成物を硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物から形成されてなることを特徴とする光学材料。
【請求項11】
光学材料が、光学プラスチックレンズまたはプリズムである請求項10に記載の光学材料。

【公開番号】特開2012−62398(P2012−62398A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207672(P2010−207672)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】