説明

硬化無機物建材、自然石、人造石、及びセラミックの表面処理用のハイドロフォビンの使用方法

【課題】少なくとも1種の汚れ忌避性及び/又は、疎水性(hydrophobicizing)及び/又は、保存効果を得ることができる表面を処理するための新たな技術を提供すること
【解決手段】硬化無機物建材、自然石、人造石、及びセラミックの表面処理用のハイドロフォビンの使用方法と、表面を処理する方法であって、その表面を少なくとも1種のハイドロフォビンと接触させる工程を含み、その表面が硬質無機建材、自然石、人造石又は、セラミックスから成る群から選択される材料の表面を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化無機物建材、自然石、人造石、又はセラミックの表面処理用のハイドロフォビンの使用方法、及び、ハイドロフォビンを含有する被覆物を有するような表面及び硬化無機物建材、自然石、人造石、又はセラミックで形成される表面を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内及び、屋外用の両方の表面を被覆物で被覆することで、表面の耐性及び外観を改善することが知られている。そのような被覆によって、例えば、表面の保存状態の維持、湿潤の除去、汚れの防止又は、洗浄の促進がもたらされる。
【0003】
その被覆は、EP−A933388に記載されているように、例えば、ロータス効果により刺激される永久的な被覆である。
【0004】
また、その被覆は、一時的な被覆でも良い。このような一時的な汚れ忌避効果は、例えば、表面が洗浄される過程で使用される洗剤配合物(cleanser formulation)中の物質によって達成され得る。それらは、例えば、タイル用の洗剤でも良い。
【0005】
WO03/002620には、硬質表面、例えば、高純度石敷又は、ステンレス製表面用の汚れ解除ポリマーとして、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルレートを使用する方法が記載されている。記載された配合物は、0.1から5質量%のポリマーを含む。
【0006】
DE−A10061897には、親水性でケイ酸塩を含む粒子を含有する洗浄用成分が開示されている。この粒子は、汚れの再付着を減少させるとともに汚れの分離を改善する。その粒子が、洗浄される物質の表面に取り込まれる。従って、その粒子は、表面の性質に作用する。
【0007】
ハイドロフォビンは、フィラメント状の菌類、例えば、Schizophylum commue(スエヒロタケ)の特徴を示すおよそ100から150のアミノ酸の低分子タンパク質である。それらは、一般的に8個のシステイン単位を有する。
【0008】
ハイドロフォビンは、界面における顕著な親和力を有し、従って、表面の被覆に有用である。例えば、テフロン(登録商標)は、親水性の表面を得るためにハイドロフォビンで被覆することが可能である。
【0009】
ハイドロフォビンを、天然源から単離することができる。しかし、化学的及び/又は、バイオテクノロジー的な製造方法によって天然に発生しないハイドロフォビンを合成することも可能である。本出願人によるDE102005007480.4には、自然に発生しないハイドロフォビンを製造する方法が開示されている。
【0010】
様々な用途に対してハイドロフォビンを使用する方法を提案する先行技術がある。
【0011】
WO96/41882には、疎水性表面に親水性特性を付与し、親水性基体に防水性を改善し、水中油型乳剤又は、油中水乳剤を製造して乳化剤(emulgators)、増粘剤又は界面活性剤としてハイドロフォビンを使用する方法が提案されている。更に、例えば、軟膏又はクリームの製造等の薬物応用及び、肌の保護又はシャンプーやコンディショナーの製造等の化粧品への応用が提案されている。
【0012】
EP−A1252516には、窓、コンタクトレンズ、バイオセンサー、医療装置、分析用容器、貯蔵庫、船体、固体粒子又は、乗用車のフレームや車体について、ハイドロフォビンを含有する溶液で30から80℃で被覆することが開示されている。
【0013】
WO03/53383には、化粧用途への応用としてケラチン材料を処理するハイドロフォビンの使用方法が開示されている。
【0014】
WO03/10331には、ハイドロフォビンで被覆されたセンサー(例えば、電荷測定)が開示されている。このセンサーは、例えば、電気活性物質、抗体、又は酵素等の物質が、さらに非共有結合で結合している。
【0015】
【特許文献1】EP−A933388
【特許文献2】WO03/002620
【特許文献3】DE−A10061897
【特許文献4】DE102005007480.4
【特許文献5】WO96/41882
【特許文献6】EP−A1252516
【特許文献7】WO03/53383
【特許文献8】WO03/10331
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
引用された文献において、硬質建材、自然石、人造石又はセラミックを扱う表面を記載したものはない。
【0017】
本発明の目的は、少なくとも1種の汚れ忌避性及び/又は、疎水性(hydrophobicizing)及び/又は、保存効果を得ることができる上記表面を処理するための新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的が、硬質無機建材、自然石、人造石又はセラミックから成る群から選択される材料の表面を処理するためのハイドロフォビンを使用することにより達成されることを発見した。
【0019】
本発明の2番目の側面として、表面を処理するための方法が提供される。この方法においては、上記表面を少なくとも1種のハイドロフォビンと接触させる工程を含む。また、上記表面が硬質無機建材、自然石、人造石又は、セラミックスから成る群から選択される材料の表面を含む。
【0020】
本発明の3番目の側面として、少なくとも1種のハイドロフォビンで被覆された表面が提供される。この表面は、硬質無機建材、自然石、人造石又は、セラミックから成る群から選択される材料を含む。
【0021】
驚くべきことに、ハイドロフォビンの量が極端に少ない場合であっても、汚れ忌避性及び/又は、疎水性及び/又は、硬質無機建材、自然石、人造石又はセラミックの表面の処理剤(treatment)の保存には十分であることを発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の詳細な説明を以下に示す。
【0023】
本発明によれば、少なくとも1種のハイドロフォビンを、硬質無機建材、自然石、人造石又はセラミックから成る群から選択される材料の表面を処理するために使用する。複数種の異なるハイドロフォビンの混合物を使用しても良い。
【0024】
ここで使用される“ハイドロフォビン”という用語は、以下の一般構造式(I)のポリペプチドでなければならない。
【0025】
【化1】

【0026】
Xは、20種の天然アミノ酸(フェニルアラニン,ロイシン,セリン,チロシン,システイン,トリプトファン,プロリン,ヒスチジン,グルタミン,アルギニン,イソロイシン,メチオニン,スレオニン,アスパラギン,リジン,バリン,アラニン,アスパラギン酸,グルタミン酸,グリシン)の何れかでも良い。それぞれのXは、同一又は異なっていても良い。Xに隣接する指数は、各場合におけるアミノ酸の数を示しており、Cは、システイン、アラニン、セリン、グリシン、メチオニン又は、スレオニンを示す。このCにより識別される少なくとも4つのアミノ酸は、システインである。そして、指数n及びmは、0から500の間、好ましくは、15から300の間の独立な自然数である。
【0027】
更に、化学式(I)は、被覆されていないガラス繊維に接触させる水滴によって形成される接触角と比較して、水滴の接触角を少なくとも20°、好ましくは、少なくとも25°、より好ましくは、少なくとも30°、最も好ましくは、少なくとも35°増加させる性質(ガラス繊維表面の被覆の後)を有する。なお、それぞれの測定は、室温で行う。
【0028】
1からC8で示されるアミノ酸は、好ましくは、システインである。しかし、それらを同様の大きさの他のアミノ酸、好ましくは、アラニン、セリン、スレオニン、メチオニン又はグリシンに置換されても良い。しかしながら、少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも6つ、特に好ましくは少なくとも7つのC1からC8の位置は、システインでなければならない。本発明にしたがうタンパク質中のシステインは、還元型を示しても又は、相互にジスルフィド架橋を形成していても良い。分子内にC−C架橋が形成されることが特に好ましく、特に、分子内に少なくとも1個、好ましくは、2個、より好ましくは3個、最も好ましくは、4個のジスルフィド結合が含まれる。上述のようにシステインを同様の大きさのアミノ酸と置換した場合、そのCの位置が、互いに分子間ジスルフィド架橋を形成できるように対交換を伴うことが有利である。
【0029】
システイン、セリン、アラニン、グリシン、メチオニン又はスレオニンを、Xで表される位置に使用する場合、それに応じて、一般式における個々のCの位置の番号が変化する。
【0030】
一般式(II)のハイドロフォビンを使用することが好ましい。
【0031】
【化2】

【0032】
X、C及び、Xに隣接する指数を、それぞれ上述のように定義する。指数n及びmは、0から300の数を表す。そしてさらに、タンパク質を上述の接触角の変化によって識別する。
【0033】
一般式(III)のハイドロフォビンを使用することが好ましい。
【0034】
【化3】

【0035】
X、C及び、Xに隣接する指数を、それぞれ上述のように定義する。指数n及びmは、0から200の数を表す。そしてさらに、タンパク質を上述の接触角の変化によって識別し、さらに、Cで表される少なくとも6つのアミノ酸は、システインである。特に好ましくは、Cで表される全てのアミノ酸が、システインである。
【0036】
n及びXm残基は、自然にハイドロフォビンに結合する可能性のあるペプチド配列でよい。しかしながら、残りのXn及びXmの一方又は、両方が、自然にハイドロフォビンに結合しないペプチド配列でもよい。また、これは、ハイドロフォビン中に自然に発生しないペプチド配列によって延長されている残りのXn及び/又はXmを含む。
【0037】
n及び/又はXmが、ハイドロフォビン中で自然に発生しないペプチド配列である場合、その配列の長さは、一般的に少なくとも20個のアミノ酸分、好ましくは、少なくとも35個のアミノ酸分、より好ましくは、少なくとも50個のアミノ酸分、最も好ましくは、少なくとも100個のアミノ酸分である。ハイドロフォビンに自然に結合しないこの種の残り残基は、以下で融合パートナー部分(fusion partner portion)としても言及されている。これは、タンパク質が1種のハイドロフォビン部分及び、自然にはこの形態において共に生じない融合パートナー部分から成るという事実を明確にすることが意図されている。上記タンパク質は、融合タンパク質として言及される。
【0038】
融合パートナー部分は、多数のタンパク質から選択される。複数の融合パートナー部分が、1種のハイドロフォビン部分に結合する。例えば、この融合パートナー部分が、ハイドロフォビンのアミノの末端(Xn)又は、炭素末端(Xm)に結合することも可能である。しかし、例えば、本発明にしたがい使用される1つの部位(Xn又はXm)に2つの融合パートナー部分を結合させることも可能である。
【0039】
特に好適な融合パートナー部分は、大腸菌又は枯草菌に特に含まれる微生物中に天然発生するポリペプチドである。そのような融合パートナーの例は、yaad配列(SEQ ID NO:15及び16)、yaae配列(SEQ ID NO:17及び18)及び、チオレドキシンである。また。上記配列の断片または誘導体で、その配列の一部分のみ、好ましくは70〜99%およびさらに好ましくは80〜98%を含む、または上記の配列と比較して特定のアミノ酸またはヌクレオチドが改変されたものが非常に適している。
【0040】
更に、例えば、グリコシル化、アセチル化又は、グルタルアルデヒド等を用いた他の化学的架橋によって、本発明において使用されるタンパク質をポリペプチド配列中において修飾しても良い。
【0041】
本発明にしたがい使用されるタンパク質の1つの特性は、表面がタンパク質で被覆された際の表面特性の変化である。その表面特性の変化を、タンパク質による表面被覆の前後に水滴の接触角を測定し、その2つの測定の間の差を測定することによって実験的に決定しても良い。
【0042】
当業者であれば、原則として接触角の測定方法を知っている。接触角を測定するための正確な実験条件は、実験部位に記載されている。そこで記載される実験条件の下では、本発明にしたがうタンパク質は、水滴の接触角がガラス表面上で少なくとも20°、好ましくは、少なくとも25°、より好ましくは、少なくとも30°増加するという特性を有している。
【0043】
今まで知られているハイドロフォビン類のハイドロフォビンの部分における極性及び非極性アミノ酸の位置は、保存され、結果として、特徴的な疎水性の曲線(plot)が得られる。生物学的特性及び、疎水性における差異により、今までに知られており、2つのクラスI及びII(Wessels他、Ann. Rev. Phytopathol., 1994, 32, 413-437)に分類されているハイドロフォビンに導かれる。
【0044】
作成されたクラスIのハイドロフォビンの膜は、高温で硫酸ドデシルナトリウム(SDS)の水溶液中で1質量%であっても不溶である。そして、その膜を、高濃度のトリフルオロ酢酸又はギ酸を用いて再分離することのみ可能である。一方、作成されたクラスIIのハイドロフォビンの構造は、より安定でない。それらをちょうど60質量%のエタノール又は1質量%のSDSを用いて再び溶解することが可能である(室温で)。
【0045】
アミノ酸の配列の比較により、システインC3とシステインC4間の領域が、クラスIのハイドロフォビン類の場合よりもクラスIIのハイドロフォビン類の場合に短くなるということが明らかになる。更に、クラスIIのハイドロフォビンは、クラスIの場合よりもアミノ酸の電荷が高い。
【0046】
本発明を具体化するための特に好ましいハイドロフォビンは、dewA、rodA、hypB、sc3、basf1、basf2の種のものであり、これらは、構造的に下で羅列される配列で特徴付けられる。また、それらは、唯一の部分又は、誘導体でも良い。互いに同一又は異なる構造の複数のハイドロフォビン、好ましくは2、3のハイドロフォビンを、対応する適切なポリペプチド配列(自然にハイドロフォビンに結合しない)に結合することも可能である。
【0047】
更に、SEQ ID NO:20、22、24で示されるポリペプチド配列有する融合タンパク質及び、それをコードする核酸配列、特に、SEQ ID NO:19、21、23にしたがう配列が、本発明の実現に特に適切である。また、特に好ましい実施形態では、SEQ ID NO:22、22又は24で示されるポリペプチド配列から開始し、少なくとも1個〜10個以下、好ましくは5個、より好ましくは、全てのアミノ酸の5%の置換、挿入又は削除が生じ、開始タンパク脂質の生物学的特性の少なくとも50%をまだ有しているタンパク質を含む。そして、タンパク質は、まだ、出発タンパク質の少なくとも50%の生物学的特性を有する。ここでは、本発明にしたがい使用されるタンパク質の生物学的特性は、接触角度の少なくとも20°の上述の変化を意味するものとして理解される。
【0048】
本発明にしたがって使用されるポリペプチドを、よく知られているペプチド合成の技術、例えば、メリフィールド固相合成によって化学的に製造することができる。
【0049】
天然に生じるハイドロフォビンを、適切な方法を用いて天然源から単離することも可能である。(例として、Woesten et. Al., Eur. J Cell Bio. 63, 122-129(1994)又は、WO96/41882参照)
天然に生じない融合タンパク質を、好ましくは、遺伝子工学的手法によって製造する。その手法では、融合パートナーをコードする1個の核酸配列、特にDNA配列及び、ハイドロフォビン部分をコードする1個の核酸配列、特にDNA配列を結合することで、結合した核酸配列の遺伝子発現により所望のタンパク質が宿主生物中に発生する。このような方法は、本出願人の先行出願であるDE102005007480.4に開示されている。
【0050】
上述の製造の方法のための適切な宿主又は生産生物は、原核生物(古細菌を含む)又は、真核生物、特に好塩菌を含む細菌、メタノコックス、糸状菌、昆虫細胞、植物細胞及び、哺乳類細胞、より好ましくは、Escherichia coil、Bacillus subtilis、Bacillus megaterium、Aspergillus oryzea、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Pichia pastoris、Pseudomonas spec.、lactobacilli、Hansenula polymorpha、Trichoderma reesei、SF9(又、関連する細胞)等を含む。
【0051】
本発明の使用されるコンストラクト(constructs)の表現のために、規定される核酸配列の遺伝子制御の下、本発明にしたがい使用されるポリペプチド用にコードする核酸配列、及び、少なくとも1つの表現構造を含むベクターをハイドロフォビンの製造のために使用しても良い。
【0052】
使用されるコンストラクトは、好ましくは、特有のコード配列の5’上流にプロモータ及び、特有のコード配列の3’下流にターミネーター配列、さらに、必要に応じて、コード配列にそれぞれ有効に連結される慣例的な調節因子を含む。
【0053】
「有効な連結」とは、プロモータ、コード配列、ターミネーター、及び、必要に応じて、コード配列を発現することにおいてそれぞれ機能を果たすことのできるような調節因子の配列の配置について言及する。
【0054】
有効に連結した配列の例としては、標的配列及び、また、エンハンサー、ポリアデニル化信号等である。更に、調節因子は、選択可能なマーカー、増幅信号、複製起点等を含む。好適な規定配列は、例えば、Goeddel、Gene Expression、Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990)に記載されている。
【0055】
これら制御配列に加えて、これら配列の天然の制御因子が、実際の構造的な遺伝子の上流にまだ存在しても良く、必要に応じて、その天然の制御因子のスイッチを切り、遺伝子の発現を強めるように遺伝子的に修正されても良い。
【0056】
好ましいコンストラクトにおいては、プロモータと機能的に連結し、核酸配列の発言を高めることができる1種類以上の上記エンハンサー配列を含むことが有利である。さらなる制御因子またはターミネーターの様なさらに有利な配列をDNA配列の3’末端に導入しても良い。核酸はコンストラクトに1個以上の複製として含まれていても良い。さらにコンストラクトには、必要に応じてそのコンストラクトを選択する目的で、抗生物質耐性または補完的栄養要求性遺伝子の様なマーカーを追加して含ませても良い。
【0057】
本発明の方法に有利な制御配列は、プロモータでは例えば、cos、tac、trp、tet、trp−tet、lpp、lac、lpp−lac、laclq−T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(rhaPBAD)SP6、lambda−PRまたはimlambda−Pプロモータであり、これらのプロモータはグラム陰性細菌に有利に使用される。更に、有利な制御配列は、例えばグラム陰性細菌のプロモータamy及び、SP02、酵母又はカビのプロモータADC1、MFalpha、AC、P−60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHである。制御用に人工的なプロモータを使用することも可能である。
【0058】
宿主生物における核酸コンストラクトを発現するため、その宿主において遺伝子を最適に発現させるベクター、例えばプラスミドまたはファージに挿入するのが有利である。さらに、ベクターにはプラスミドおよびファージと同様に、それ自体知られている他の全てのベクター、即ち、例えば、SV40、CMV、バクロウィルス、アデノウィルス等のウィルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミドおよび直鎖又は環状DNA、及びアグロバクテリウムシステムが含まれる。
【0059】
これらのベクターはその宿主生物または染色体において独立して複製されても良い。これらのベクターは本発明のさらなる形態を構成する。適切なプラスミドの例としては、E.coilにおけるpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223−3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN−III”3−B1、tgt11又はpBdCl、StreptomycesにおけるpIJ101、pIJ364、pIJ702又はpIJ361、BacillusにおけるpUB110、pC194又はpBD214、CorynebacteriumにおけるpSA77又はpAJ667、カビにおけるpALS1、pIL2又はpBB116、酵母における2alpha、pAG−1、YEp6、YEp13又はpEMBLYe23、又は、植物におけるpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004又はpDH51が挙げられる。上記プラスミドは可能なプラスミドの小規模な選択を構成する。別のプラスミドとしてそれ自体知られており、例えば、書籍Cloning Vector(Eds. Pouwels P.H. et al. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN0444 904018)に記載されている。
【0060】
他の遺伝子を発現するため、核酸コンストラクトはさらに宿主生物及び遺伝子又は遺伝子群の選択により最適な発現となるように発現を強める3’及び/又は5’−末端の制御配列を含むことが有利である。
【0061】
これらの制御配列はその遺伝子及びタンパク質の発現を特異的にすることを目的としている。宿主生物によっては、これは例えば、遺伝子誘導後にのみ発現されるか、過剰発現される、又は直ちに発現されるか、過剰発現されることを意味する。
【0062】
好ましくは、誘導され、確実に影響が与えられ、結果として制御配列又は因子により強められた遺伝子の発現である。従って、制御因子はプロモータ及び/又はエンハンサーの様な協力な転写シグナルを使用することにより、転写レベルを有利に強めても良い。しかしながら、この他に、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の安定性を改良することにより、翻訳を強めることも可能である。
【0063】
ベクターのさらなる形態において、核酸コンストラクト又は核酸を含むベクターが直鎖DNAの形態で微生物へ有利に誘導され、異種又は相同的な遺伝子の組み換えにより宿主生物のゲノムに組み込まれても良い。この直鎖DNAはプラスミドの様な直鎖化した(linearized)ベクター又は、単に核酸コンストラクト又は核酸で構成されていても良い。
【0064】
宿主生物中の異種の遺伝子の最適な発現のためには、その生物に利用される特異的なコドン使用頻度にしたがって、核酸配列を組み替えることが有利である。コドン使用頻度は問題となる生物の他の既知遺伝子のコンピュータ解析により容易に測定できる。発現カセットは適切なプロモータを目的のタンパク質にコードする適切なヌクレオチド配列及び、ターミネータ又はポリアデニル化信号と融合することにより作成する。例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsh and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor,NY(1989)及び、Ausubel,F.M.他、Curent Protocols in Molecular Biology,Greene Publising Assoc.及び、Wiley Interscience(1987)に記載されているような一般的な遺伝子組み換え及びクローニング技術は、本目的のため使用される。
【0065】
適切な宿主生物において発現させるため、組み換え核酸コンストラクト又は遺伝子コンストラクトを宿主において遺伝子の最適な発現を提供する宿主特異的ベクターに挿入する。ベクターはそれ自体知られており、例えば「Cloning Vectors」(Pouwels P.H.他 Eds,Elsevier,Amsterdam−New York−Oxford,1985)から選択しても良い。
【0066】
ベクターによって、例えば少なくとも1個のベクターが変換され、本発明により用いられるポリペプチドの生産に使用される組み換え微生物を作成することができる。上記組み換えコンストラクトは適切な宿主系への導入及び発現において有利である。これに関して、当業者に知られた通常のクローニング及びトランスフェクション法、例えば共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポーション、レトロウィルスによるトランスフェクション等を、特に発現系において上記核酸を発現させるために使用することが好ましい。適切な表現系は例えば、Curent Protocols in Molecular Biology, F.Ausubel他、Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Apring Harbor,NY,1989に記載されている。
【0067】
相同的に遺伝子組み換えされた微生物も作成することができる。この目的のため、本発明により使用される遺伝子または目的のタンパク質をコードする配列であって、必要に応じて、少なくとも1個のアミノ酸の削除、アミノ酸の付加又はアミノ酸の置換が、例えば機能的に崩壊した配列(ノックアウトベクター)を修正するために導入された配列の少なくとも一部分を含むベクターが作成される。導入された配列は、例えば、関連微生物から相同体(homolog)であっても良く、または哺乳類、酵母又は昆虫資源から得られるものでも良い。その代わりに、相同的遺伝子組み換えの場合に変位されるか、又は改変され、それでもその遺伝子が機能的タンパク質をコードするような方法で設計されても良い(例えば、上流の制御領域が、内在タンパク質の発現がそれにより変化されるような方法で改変されても良い)。本発明により使用される遺伝子の改変される部分は相同的遺伝子組み換えベクター中にある。相同的遺伝子組み換えに適切なベクターの構築は、例えば、Thomas,K.R.およびCapecchi,M.R.(1987)Cell 51:503に記載されている。
【0068】
本発明により使用される核酸又は核酸コンストラクトに適切な組み換え宿主生物には、原則として全ての原核又は真核生物が使用できる。細菌、カビ、又は酵母のような微生物を宿主生物として使用することが有利である。グラム陽性又はグラム陰性細菌、好ましくはエントロバクテリア科、シュードモナス科、リゾビウム科、ストレプトマイセス科又はノカルジア科であり、特に好ましくは、細菌の属として、Esherichia属、Pseudomonas属、Streptomyces属、Nocardia属、Burkholderia属、Salmonella属、Agrobacterium属、又は、Rhodococcus属を使用することが有利である。
【0069】
融合タンパク質の製造方法に使用される生物は宿主生物に応じて、当業者に知られた方法で生育又は培養される。微生物の場合は、通常は糖類の形態の炭素源、通常は酵母エキスのような有機窒素源又は硫酸アンモニウムのような塩の形態の窒素源、鉄塩、マンガン塩およびマグネシウム塩のような微量元素、及び必要に応じてビタミン類を含む液体培地にて0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃の温度で、酸素を供給しながら培養するのが通常である。これに関連して、栄養培地のpHは一定の値に保たれても良い、即ち、培養中制御しても、しなくても良い。培養をバッチ法、セミバッチ法又は連続的に行っても良い。栄養培地を発酵の開始時に最初に導入するか、またはその後に半連続又は連続法で供給しても良い。実施例に記載されている方法により、酵素を生物から単離しても、又は、粗抽出液として反応にしようしても良い。
【0070】
また、ポリペプチド又は、その機能的に整理活性のある断片を組み替えにより作成する方法としては。ポリペプチドを生産する微生物の培養、必要に応じて、ポリペプチドの発現の導入及び培養物からのポリペプチドの単離によることが適切である。ポリペプチドはまた必要であればこの方法により工業的スケールで生産しても良い。組み換え微生物既知の方法で培養または発酵しても良い。例えば、細菌はTB培地又はLB培地により、20℃〜40℃の温度、pH6から9で増殖させても良い。適切な培養条件は、例えば、T.Manistis、E.F.Fritsch及びJ.Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Harbor、NY(1988)に詳細に記載されている。
【0071】
ポリペプチドが培養培地へ分泌されない場合、それから細胞を破壊し、既知のタンパク質の単離方法により溶解物から生産物を得ることができる。その細胞は必要に応じて高周波数の超音波処理法、フレンチプレッシャー又は有機溶剤の作用、ホモジナイザー法又は2種類以上の上記方法の組み合わせにより、破壊することができる。
【0072】
ポリペプチドは分子篩クロマトグラフィ(ゲルろ過)や、Q−Sepharoseクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ及び疎水性クロマトグラフィの様な既知のクロマトグラフィ法を使用して、及び限外ろ過法、結晶化法、塩析法、透析法及びネイティブゲル電気泳動法等のその他の慣例的な方法をしようして精製することができる。適切な方法は例えば、Cooper、F.G.、Biochemische Arbeitsmethoden、Verlag Walter de Gruyter、Berlin、New york又は、Scopes、R.、Protein Purification、Springer Verlag、New york、Heidelberg、Berlinに記載されている。
【0073】
相補的DNA(cDNA)を特定のヌクレオチド配列により伸長し、それにより例えば精製を簡略化するように目的の改変ポリペプチド又は融合タンパク質をコードするベクター系又はオリゴヌクレオチドを使用することによって、組み換えタンパク質を単離することが有利である。この種の適切な修飾の例としては、ヘキサ−ヒスチジンアンカーとして知られる修飾法等のアンカーとして作用する「タグ(tag)」又は、抗体により抗原として認識できるエピトープがある(例えば、Harlow,E and Lane,D.,1988,Antibodies:A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor(N.Y.)Pressに記載されている)。その他の適切な「タグ」には、例えば、HA、カルモジュリン−BD、GST、MBD、キチン−BD、ストレプトアビジン−BD−アビ−タグ、フラッグ−タグ、T7などが挙げられる。これらのアンカーを、高分子充填材であって、例えばクロマトグラフィカラムに重点されたものなどの固体支持体にタンパク質を付着させるために使用しても良い。相当する精製手順は業務用アフィニティタグ供給業者から入手することができる。
【0074】
上記のように精製されたタンパク質は直接、融合タンパク質として、或いは、融合パートナー部分を開裂及び除去した後に、純粋なハイドロフォビンとして使用することができる。
【0075】
融合パートナー部分の除去を行う場合には、融合タンパク質においてハイドロフォビン及び融合パートナー部分の間に潜在的な開裂部位(プロテアーゼの特異的な認識部位)を組み込むことが望ましい。開裂部位には、特に、直ちに生命情報工学的な手法により測定されたハイドロフォビン部分、融合パートナー部分のどちらにも存在しないペプチド配列が含まれる。特に、例えば、メチオニンのシアン化臭素による開裂又は、Xa因子、エンテロキナーゼ開裂、トロンビン、TEV(タバコエッチウィルスプロテアーゼ)開裂を伴うプロテアーゼ媒介による開裂が適切である。
【0076】
本発明によれば、ハイドロフォビンで処理される表面は、硬質無機建材、自然石、人造石又はセラミックから成る群から選択される材料の表面を含む。そのような表面は、特に、屋外、屋内の両方の建築構造部門で見られる。
【0077】
本発明の目的のための硬質無機建材は、無機建材と水を本質的に混合し、その後、化学的及び/又は物理的反応によって硬化することで得られる石状の塊である。開始材料は、空気中及び水中において油圧で硬化する建材、又は、空気中でのみ硬化する空気硬化建材である。更に、建材は、例えば、蒸気硬化建材でも良い。
【0078】
上述の硬化建材の例として、特に、コンクリート又はモルタルを含む。そのコンクリート又はモルタルは、ポルトランドセメント、アルミナセメント又は、Puzzolanセメント、及び、それらと砂、砂利又は水と同様の拡張材料との混合物等のセメントから得られる。また、それらは、既知のように、例えば、例えば、コンクリート流動化材等の無機及び/又は有機の補助材を含む。更に、硬化建材の例として、石膏、石灰又は、内部の塗布及び外部の塗布用の下塗り材(renders)がある。
【0079】
自然石は、砂岩、花こう岩、片麻岩、粘板岩、石灰又は大理石等の天然の石を含む。この種の石は、異形の砕石として使用されるだけでなく、成形された構造要素、例えば、建築用石材、窓の下枠、階段、胸壁、戸口の側柱、表面用の厚板、床厚板、屋根厚板、装飾要素、又は彫刻の形態で使用される。
【0080】
人造石は、自然石と同様に使用される構造要素を含むが、自然源から来るものではなく、一般的に工業的に製造される。例としては、タイル、レンガ、ケイ灰レンガ、コンクリートブロック、通気コンクリートブロック又は、塊状粘土である。
【0081】
「セラミック」という用語は、原則として、当業者に知られている。セラミックは、非金属無機物で形成されるとともに、高温作業によって通常に使用できる物品の総称である。
【0082】
セラミックは、原料混合物中で少なくとも20質量%である粘土セラミック、及び、粘土鉱物を含まないか又は、少しの粘土鉱物を含むファインセラミック(specialty ceramic)材料でも良い。セラミックは、微細又は粗いものでも良く、極性のある又は高密度のものでも良い。原則として知られているであろうが、セラミック材料は、光沢を有していても良い。その光沢は、無色又は着色していても良い。
【0083】
粘土セラミック材料の例として、石造壁のレンガ又はその硬質レンガ、土管、シャモットレンガ、屋根瓦、陶器製品、粘土岩商品、石灰石商品、長石商品、せっ器、硬質陶器製品、軟質陶器製品又は、タイル等の構造セラミック製品が含まれる。また、この構造セラミック製品は、光沢を有していても良い。
【0084】
更に、関連するセラミックが、例えば、Buechner他、“Industrielle Anorganische Chemie”、VCH Verlag、Weinheim、New York 1986の431から476ページに詳細に記載されている。
【0085】
その表面は、数種の材料により作成されても良い。1つの例は、セラミックタイル及び、タイルモルタルで作成された表面を含むタイル張りの壁である。また、その表面は、数種類の材料、例えば、埋め込まれた金属の部分を含む。
【0086】
実質上、ハイドロフォビンを、それが本発明の方法により、上述の表面を処理するために使用される場合に、使用することができる。しかしながら、好ましくは、ハイドロフォビンは、少なくとも1種の適切な溶媒中で配合物又は組成物として使用される。
【0087】
本発明を具体化するためのハイドロフォビンの選択は、制限されない。1種又は複数種のハイドロフォビンを使用することが可能である。当業者は、適切な選択をするであろう。例えば、yaas−Xa−dewA−his(SEQ ID NO:19)又は、yaad−Xa−rodA−his(SEQ ID NO:21)等の融合タンパク質を使用することが可能である。この場合において、yaad融合パートナーは、短縮された状態でも良い。
【0088】
配合物用の溶媒は、水及び/又は有機溶媒を含む。溶媒混合物を使用しても良い。溶媒の特性は、例えば、ハイドロフォビンに依存し、処理される表面の特性及びその使用に依存し、当業者により適切に選択される。
【0089】
溶媒は、好ましくは、水又は、水及び水混和性の有機溶媒の混合物を含む。そのような有機溶媒には、例えば、水混和性の一価又は多価アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパンノール、i−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールが含まれる。エーテルアルコール類でも良い。例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルの様な(ポリ)エチレンまたは(ポリ)プロピレングリコール類のものアルキルエーテルが含まれる。水溶性及び有機溶媒の特性及び使用量は、当業者により選択される。
【0090】
本発明により使用される組成物を製造するために、合成された状態で、単離された状態で、及び/又は精製された状態で水性ハイドロフォビン溶液を使用することが好ましい。これらはその純度に応じて、まだ合成工程における補助剤の残りを含む。しかし、ハイドロフォビンを初めに物質として、例えば、凍結乾燥により単離し、第2次工程で配合物とすることもできる。
【0091】
配合物中のハイドロフォビンの量は、表面の特性及び/又は設計した使用方法によって、当業者により達成される。しかし、比較的少量であっても、防汚効果、すなわち、表面特性の変化を達成するのに十分である。配合物の全ての成分の総量に基づいて0.0001〜1質量%の量で十分であることが、本発明に関わらず、明らかであり、従って、本発明はこの範囲に限定される。その量は、好ましくは、0.0005質量%から0.5質量%の範囲、及び、より好ましくは、0.001〜0.1質量%の範囲である。
【0092】
更に、配合物は、随意的に、混合材料及び/又は、助剤等の他の組成物を含んでも良い。そのような組成物の例は、特に界面活性剤、例えば、アニオン性、非イオン性、両性及び/又はカチオン性の界面活性剤である。更に、混合剤材料の例として、例えば、カルボン酸又はアンモニア等の酸又は塩基、緩衝液系、重合物、SiO2又はケイ素等の無機物の粒子、染料又は殺生物剤が含まれる。
【0093】
本発明によれば、表面は、それをハイドロフォビン又は、少なくとも1種のハイドロフォビン及び少なくとも1種の溶媒を含む組成物に接触させることによって処理される。
【0094】
その接触は、例えば、噴霧、ブラッシング又はローリング、又は、製品全体を配合物に浸漬することで行われても良い。後者は当然、設置されていない製品にのみ適用できる。処理時間は、当業者によって決定され、数秒から数時間かけても良い。処理の後、余分な処理溶液を除去するために、例えば水で表面をすすいでも良い。
【0095】
上記処理は、表面の洗浄と組み合わせて行われても良い。これは、少なくとも1種のハイドロフォビン、少なくとも1種の界面活性剤及び、少なくとも1種の溶液を含む洗浄組成物を用いて行われる。
【0096】
その処理は、室温より低い温度、室温又は、高い温度、例えば、20から100℃、好ましくは20から60℃で行われても良い。
【0097】
組成物を用いた処理の後、処理された表面を乾燥させる。処理された表面の乾燥は、室温で自然に乾燥させることができ、又は、高温で乾燥させることもできる。
【0098】
その処理及び必要に応じて表面の乾燥に続いて、高い温度、例えば、20〜120℃以下の温度で、表面の熱による後処理を行っても良い。熱による後処理は、乾燥と組み合わせて行うことができる。熱による後処理温度は、30から100℃の範囲、より好ましくは、40から80℃の範囲、及び、例えば、50から70℃の範囲であることが好ましい。その処理時間は当業者により決定され、例えば1分から10時間とすることができる。熱による後処理は、処理の性質に依って、例えば、赤外線照射装置を用いて表面を照射するか、又は、暖空気流で吹きつけることにより行うことができる。
【0099】
本発明の方法は、少なくとも1種のハイドロフォビンを含む被覆物を有する硬質無機建材、自然石、人造石又は、セラミックスから成る群から選択される表面を提供する。一般的にその被覆物は、表面上にハイドロフォビンの少なくとも1つの分子層を有する。
【0100】
本発明の処理は、少なくとも汚れ除去及び/又は、疎水性及び/又は、保存効果を有する。一般的な場合、少なくとも2つの利点、特に、疎水性及び汚れ除去の組み合わせが得られる。ハイドロフォビンは、少量であっても明らかな効果を有する。一般的な場合、処理によって、ちょうど0.01質量%のハイドロフォビンを含む組成物で処理しても、表面上で効果的な変化が導かれるであろう。
【0101】
汚れ除去効果は、例えば、水ですすいだ処理されていない表面の汚れの剥離性とハイドロフォビンで処理した表面を比較する等の原則的に知られた方法で決定される。疎水性の程度は、接触角を測定することにより、知られている方法で決定される。
【0102】
本発明の処理は、例えば、タイル等のセラミック表面に特に有用である。この場合、汚れ除去及び疎水性の両方が得られる。これは、特にバスルームなどの湿った部屋に対して、極めて優位である。
【0103】
本発明を以下の実施例により説明する。
【0104】
パートA
本発明により使用させるハイドロフォビンの作成及び試験
【実施例1】
【0105】
yaad−His6/yaaE−His6のクローニングの予備実験
ポリメラーゼ連鎖反応をオリゴヌクレオチドHa1570およびHa1571(Ha1572/Ha1573)を用いて行った。鋳型DNAは、Bacillus subtilis細菌のゲノムのDNAを使用した。得られたPCR断片は、Bacillus subtilisのyaaD/yaaE遺伝子およびそれらの末端でいずれの場合も、それぞれNcolおよびBglll制限酵素の開裂部分のコード配列を含んでいた。PCR断片を精製し、制限エンドヌクレアーゼNcolおよびBglllで切断した。このDNA断片を挿入物として使用し、予め制限エンドヌクレアーゼNcolおよびBglllで直鎖化したベクターpQE60(Qiagen社)にクローニングした。そして、得られたベクターpQE60YAAD#2/pQE60YaaE#5はそれぞれ、YAAD::His6およびYAAE::HIS6から成るタンパク質の発現に使用される。
【0106】
【表1】

【実施例2】
【0107】
yaadハイドロフォビンDewA−His6のクローニング
ポリメラーゼ連鎖反応をオリゴヌクレオチドKaM416及びKaM417を用いて行った。鋳型DNAは、Aspergillus nidulansカビのゲノムDNAを使用した。得られたPCR断片はハイドロフォビン遺伝子dewA及びN末端のXa因子プロテアナーゼ開裂部位のコード配列を含んでいた。PCR断片を精製し、制限エンドヌクレアーゼBamHIで切断した。このDNA断片を挿入物として使用し、予め制限エンドヌクレアーゼBglllで直鎖化したベクターpQE60YAAD#2にクローニングした。
【0108】
そして、得られたベクター#508は、YAAD::Xa::dewA::HIS6から成るタンパク質の発現に使用される。
【0109】
【表2】

【実施例3】
【0110】
yaadハイドロフォビンRodA−His6のクローニング
プラスミド#513をプラスミド#508と同様に、オリゴヌクレオチドKaM434及びKaM435を使用してクローニングした。
【0111】
【表3】

【実施例4】
【0112】
yaadハイドロフォビンBASF1−His6のクローニング
プラスミド#507をプラスミド#508と同様に、オリゴヌクレオチドKaM417及びKaM418を使用してクローニングした。鋳型DNAには、人工的に合成したDNA配列であるハイドロフォビンBASF1(別表参照)
【0113】
【表4】

【実施例5】
【0114】
yaadハイドロフォビンBASF2−His6のクローニング
プラスミド#506をプラスミド#508と同様に、オリゴヌクレオチドKaM417及びKam418を使用してクローニングした。鋳型DNAは人工的に合成したDNA配列であるハイドロフォビンBASF2(別表参照)を用いた。
【0115】
【表5】

【実施例6】
【0116】
yaadハイドロフォビンSC3−His6のクローニング
プラスミド#526をプラスミド#508と同様に、オリゴヌクレオチドKaM464およびKam465を使用してクローニングした。鋳型DNAは、スエヒロタケ(Schyzophyllum commune)の相補的DNA(別表参照)を用いた。
【0117】
【表6】

【実施例7】
【0118】
組み換えE.coil:yaadハイドロフォビンDewA−His6株の培養
yaadハイドロフォビンDewA−His6を発現するE.coil株を15mlグライナー試験管中の3mlLB液体培地に接種した。37℃、200rpmで振とう培養した。それぞれの場合に2本のバッフル付き1Lエルレンマイヤーフラスコ中の250mlLB培地(+100μg/mlアンピシリン)に前培養の培養液1mlを接種し、37℃、180rpmで9時間振とう培養した。20Lファーメンター中の13.5LのLB培地(+100μg/mlアンピシリン)に前培養(水に対して測定したOD600nm1:10)の0.5Lを接種した。140mlの100mMIPTGをOD600nmが〜3.5の時点で添加した。3時間後、ファンメンターを10℃に冷却し、培養地を遠心分離により除去した。細胞沈殿物を次の精製工程で使用する。
【実施例8】
【0119】
組み換えハイドロフォビンの融合タンパク質の精製
(C−末端His6タグをプロセッシングするハイドロフォビン融合タンパク質の精製)
100gの細胞沈殿物(100〜500mgのハイドロフォビン含有)を50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)にて総容量200mlになるようにして、再懸濁した。懸濁液を、Ultraturrax typeT25(Janke and Kunkel;IKA−Labortechnik社製)で10分間処理し、次いで核酸を分解する目的で、50単位のベンゾナーゼ(Merck,Darmstadt社;オーダーNo.1.01697.0001)で室温にて1時間反応させた。細胞が破壊される前に、ガラスカートリッジ(P1)を使用してろ過を行った。細胞の破壊及び残存したゲノムのDNAをせん断する目的で、1500barで高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M−110EH;Microfluidizer社)で2回処理した。ホモジネートを遠心分離(Sovall RC−5B, GSAローター,250ml遠心ビーカー、4℃、60分、12000rpm、23000g)し、上清を氷冷し、沈殿物を100mlリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)で再懸濁した。遠心分離及び再懸濁を3回繰り返して、3回目に1%SDSを含むリン酸緩衝液を用いた。再懸濁後、溶液を1時間攪拌し、続いて最後の遠心分離(Sovall RC−5B, GSAローター,250ml遠心ビーカー、4℃、60分、12000rpm、23000g)を行った。SDS―PAGE分析によると、ハイドロフォビンは最後の遠心分離後の上清に存在している(図1)。本実験は、ハイドロフォビンがE.coilの細胞内におそらく封入体(including bodies)の形態で存在していることを示す。50mlのハイドロフォビンを含有する上清を50mMTris−Cl緩衝液(pH8.0)で平衡化した50mlのnickel−Sepharose High Performance17−5268−02カラム(Amersham社)にかけた。カラムを50mMTris−Cl緩衝液(pH8.0)で洗浄し、続いて200mMイミダゾールを含む50mMTris−Cl緩衝液(pH8.0)で溶出した。イミダゾールを除く目的で、溶液を50mMTris−Cl緩衝液(pH8.0)で透析した。
【0120】
図1は、製造されたハイドロフォビンの精製を示す。
【0121】
レーン1:nickel−Sepharoseカラムにかけた溶液
レーン2:透過液=洗浄工程の溶出液
レーン3〜5:溶出画分のOD280nm検出ピーク
図1のハイドロフォビンは分子量約53kDを有する。何本かのより小さい分子量のバンドはハイドロフォビンの分解産物を示す。
【実施例9】
【0122】
性能実験;ガラス状の水滴の接触角を変化することによるハイドロフォビンの特性解析
基質:
ガラス(窓ガラス、Sueddeutshe Glass、Mannheim、Germany):
ハイドロフォビン濃縮物:100μg/ml、
50mM酢酸ナトリウム(pH4.0)+0.1質量%Tween20中でガラススライドを1晩(温度80℃)培養し、
続いて、ハイドロフォビン被覆されたガラススライドを蒸留水中で洗浄し、
続いて、1質量%n−ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液において80℃で10分間培養し、
蒸留水で蒸留したもの。
【0123】
そのサンプルを(室温で)空気乾燥し、室温で5μlの水滴の接触角(度数)を測定する。
【0124】
接触角の測定は、Dataphysics Contact Angle System OCA 15+、Software SCA 20.2.0.(200年11月)により測定した。測定は、メーカー使用説明書にしたがって行った。
【0125】
未処理のガラスは接触角が30±5°であり、実施例8の機能的なハイドロフォビン(yaad−dewA−His6)により被覆したものは接触角が75±5°であった。
【0126】
パートB
セラミック表面の汚れ除去被覆用のハイドロフォビンの使用
使用される溶液
性能試験は、実施例8にしたがって製造された融合タンパク質yaad−Xa−dewA−his(SEQ ID NO:19)の水溶液を用いて行った。溶液中のハイドロフォビンの濃度:100μg/ml(0.01質量%)
使用されるセラミック表面
光沢があり白色で10cm×15cmのセラミックタイル(Novocker社製)をエタノールと水で拭いたもの。
【0127】
使用される汚れ
上記試験を、IKW ballast soil(Seifen、Fette、Oele、Wachse(SOEFW)−Journal、Volume 124、14/98、page 1029)を使用して行った。
【0128】
処理方法
2gの上記100μg/mlの濃度のハイドロフォビン水溶液を1個のタイルへ滴下し(1.3μmハイドロフォビン/cm2)、表面を完全にカバーするように布で丁寧に広げた。その後、そのタイルを24時間空気乾燥した。
【0129】
続いて、そのタイルを水で洗い流し、水が入ったガラスビーカー内で3×10分漬け洗いした。各回の洗いごとに水を入れ替えた。その後、タイルを立てかけて空気乾燥した。
【0130】
接触角の測定及び汚れ除去効果
処理されたタイルについて水滴に対する接触角を測定したところ56°(10回の測定値の平均)であった。対して、未処理のタイルの接触角は、20°であった。従って、そのタイルは、明らかに疎水化されていた。
【0131】
処理されたタイル及び、対照として未処理のタイルに、50、100及び200μgのIKW ballast soilを、スポイトを使用してスポットし、室温にて1時間乾燥した。
【0132】
その後、タイルを各回500mlの水で、3回洗い流した。未処理の表面からは汚れが剥がれ落ちなかったが、ハイドロフォビンで前処理されたタイルでは、部分的に汚れの剥離が観察された。
【0133】
従って、ハイドロフォビンによる前処理は、タイルの表面の汚れの付着を減少させるとともに、セラミック表面の疎水性を導く。
【0134】
配列名のDNAへの割り当て及び、配列表におけるポリペプチド配列
【0135】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】製造されたハイドロフォビンの精製を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質無機建材、自然石、人造石又はセラミックから成る群から選択される材料の表面を処理するためのハイドロフォビンの使用方法
【請求項2】
前記処理を、少なくとも1種のハイドロフォビンとともに溶媒を含む配合物を使用して行うことを特徴とする請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
表面を処理する方法であって、
前記表面を少なくとも1種のハイドロフォビンと接触させる工程を含み、
前記表面が硬質無機建材、自然石、人造石又は、セラミックスから成る群から選択される材料の表面を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
前記処理を、少なくとも1種のハイドロフォビンとともに溶媒を含む配合物を使用して行うことを特徴とする請求項3に記載の使用方法。
【請求項5】
前記溶媒は、水を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記配合物中のハイドロフォビンの量が、前記配合物の全成分の合計を基準として0.0001質量%から1質量%であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のハイドロフォビンで被覆された表面であって、
硬質無機建材、自然石、人造石又は、セラミックから成る群から選択される材料の表面を含むことを特徴とする表面。
【請求項8】
汚れ忌避性を有することを特徴とする請求項7に記載の表面。
【請求項9】
疎水性を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の表面。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−534419(P2008−534419A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503499(P2008−503499)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061092
【国際公開番号】WO2006/103230
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】