説明

硬化物の製造方法および硬化物

【課題】硬化性に優れた硬化物の提供。
【解決手段】(A)窒素カチオンを有するオニウム塩と(B)硬化性化合物を含有する組成物にプラズマを照射することを含む、硬化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物の製造方法に関する。さらに、該硬化物の製造方法により製造された硬化物に関する。
また、オニウム塩を用いたプラズマ重合開始剤に関する。また、オニウム塩にプラズマを照射してラジカル、酸および塩基の少なくとも一種を発生させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機硬化膜は、光学材料、電気材料等、種々の用途に利用されている。有機硬化膜は、一般的には、重合性モノマーまたは架橋基を有するポリマーと、重合開始剤とを含有する重合性組成物を光照射することにより、重合架橋してポリマーの網目構造を構築することにより形成される。しかし、重合性モノマーの不安定性(腐食性、保存時の重合進行)、原料である重合性組成物の取り扱い性、重合開始剤を共存させた状態での保存ができない等、従来の有機硬化膜形成については、種々の問題があった。特に、光重合開始剤を含む重合性組成物は、保存時の光に対する安定性が問題となる。しかし、重合性組成物の販売者と、硬化膜の製造者が異なる場合等、重合性組成物を調整後、直ぐに、硬化させることは現実的ではないケースも多い。
一方、特許文献1には、硬化性組成物にプラズマ照射することが記載されている。特許文献1では、プラズマ照射を利用して、紫外線が届かない3次元基材へ硬化膜を形成することに成功している。しかしながら、特許文献1においても、硬化性組成物の光安定性の問題が残る。
また、特許文献2には、カチオンを含む酸発生剤組成物が記載されている。しかしながら、特許文献2でも光を照射することにより酸を発生させていることから、組成物の光安定性の問題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−523803号公報
【特許文献2】特開2005−239877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は従来技術の問題点を解決することを目的としたものであって、硬化反応開始剤を用いなくても高い重合性を維持でき、かつ、保存安定性に優れた硬化性組成物を用いた硬化物の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる状況のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、本願発明者は光照射以外の方法によって、ラジカル、酸および塩基の少なくとも1種を発生させ、これによって、硬化反応を開始させることを検討した。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>〜<15>により上記課題を解決した。
<1>(A)窒素カチオンを有するオニウム塩と(B)硬化性化合物を含有する組成物にプラズマを照射することを含む、硬化物の製造方法。
<2>(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩およびアルキルイミダゾリウム塩から選択される少なくとも1種である<1>に記載の硬化物の製造方法。
<3>(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される部分構造を有する、<1>または<2>に記載の硬化物の方法。
【化1】

(上記一般式(1)〜(3)中、R11、R21、R31、およびR41は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。R11、R21、R31、およびR41の2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。R51、R71、およびR81は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。R61およびR91は、ぞれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、または、ハロゲン原子を示す。nは0〜3の整数を示す。nが2以上の場合、R61は、互いに結合して、環を形成してもよい。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R91は、互いに結合して、環を形成してもよい。X-は、Cl-、Br-、I-、R1−SO3-、NO3-、R1−COO-、AlO2-、ClO4-、B(C654-、R1−O-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-(但し、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基である。)を表し、R11〜R91は、2価の有機基を介してR1と化学結合を形成してもよい。)
<4>(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(4)で表される、<1>または<2>に記載の硬化物の製造方法。
【化2】

(一般式(4)中、R72、R82、およびR92は、それぞれ、炭素数4以下のアルキル基を表し、
-は、R1−SO3-、ClO4-、B(C654-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-を示す。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R92は、互いに結合して、環を形成してもよい。)
<5>(A)窒素カチオンを有するオニウム塩がイオン液体である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
<6>(B)硬化性化合物がカチオン重合性モノマーおよびラジカル重合性モノマーの少なくとも一方を含む、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
<7>支持体上に、(A)窒素カチオンを有するオニウム塩、(B)硬化性化合物及び(C)溶剤を含有する組成物を適用して膜を形成すること、及び
該膜にプラズマを照射して、(A)窒素カチオンを有するオニウム塩を分解させ、(B)硬化性化合物をラジカルまたはカチオン重合により硬化させること、
を含む<1>〜<6>のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
<8>前記支持体が、高分子フィルムである、<7>に記載の硬化物の製造方法。
<9>プラズマが、低温大気圧プラズマである、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
<10>前記硬化物が膜状である、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
<11><1>〜<10>のいずれか1項に記載の方法により製造される硬化物。
<12><1>〜<10>のいずれか1項に記載の方法により製造される硬化膜。
<13>窒素カチオンを有するオニウム塩にプラズマを照射し、該オニウム塩を分解させてラジカル、酸、および塩基の少なくとも1種を発生させて反応を開始させる方法。
<14>窒素カチオンを有するオニウム塩を含む、プラズマ酸発生剤。
<15>(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される部分構造を有する、<14>に記載のプラズマ酸発生剤。
【化3】

(上記一般式(1)〜(3)中、R11、R21、R31、およびR41は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。R11、R21、R31、およびR41の2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。R51、R71、およびR81は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。R61およびR91は、ぞれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、または、ハロゲン原子を示す。nは0〜3の整数を示す。nが2以上の場合、R61は、互いに結合して、環を形成してもよい。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R91は、互いに結合して、環を形成してもよい。X-は、Cl-、Br-、I-、R1−SO3-、NO3-、R1−COO-、AlO2-、ClO4-、B(C654-、R1−O-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-(但し、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基である。)を表し、R11〜R91は、2価の有機基を介してR1と化学結合を形成してもよい。)
<16>窒素カチオンを有するオニウム塩を含む、プラズマ重合開始剤。
<17>(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される部分構造を有する、<16>に記載のプラズマ重合開始剤。
【化4】

(上記一般式(1)〜(3)中、R11、R21、R31、およびR41は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。R11、R21、R31、およびR41の2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。R51、R71、およびR81は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。R61およびR91は、ぞれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、または、ハロゲン原子を示す。nは0〜3の整数を示す。nが2以上の場合、R61は、互いに結合して、環を形成してもよい。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R91は、互いに結合して、環を形成してもよい。X-は、Cl-、Br-、I-、R1−SO3-、NO3-、R1−COO-、AlO2-、ClO4-、B(C654-、R1−O-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-(但し、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基である。)を表し、R11〜R91は、2価の有機基を介してR1と化学結合を形成してもよい。)
【発明の効果】
【0006】
本発明における窒素カチオンを有するオニウム塩は、光や熱に対して極めて安定であり、プラズマによって速やかに分解し、酸やラジカルを発生するためこれらトリガーとした硬化性化合物のカチオン重合、ラジカル重合、酸架橋反応が進行し分子量が増大し、光重合開始剤等の光硬化反応開始剤を用いずに、高い硬化度を達成することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書中、「硬化膜」及び「膜」の用語は、自己支持性のある膜、及び支持体上に形成される層及び被膜のいずれも含む意味で用いられる。
本発明における硬化反応開始剤とは、光の照射によって、硬化反応を開始させる化合物をいう。
本発明におけるプラズマ酸発剤とは、プラズマを照射することにより、酸を発生する化合物をいう。
本発明におけるプラズマ重合開始剤とは、プラズマを照射することにより、重合性化合物の重合を開始させる化合物をいう。
【0008】
本発明は、(A)窒素カチオンを有するオニウム塩と(B)硬化性化合物を含有する組成物にプラズマを照射することを含む、硬化物の製造方法を開示する。
従来、硬化性化合物を含む組成物の硬化には、例えば、硬化性化合物がラジカル重合性化合物である場合、光ラジカル重合開始剤が、硬化性化合物がカチオン重合性化合物である場合、光カチオン重合開始剤が採用されていた。しかしながら、これらの光重合開始剤は、光安定性に弱いという問題があった。そのため、硬化性組成物を一定期間(例えば、10日以上)、白色灯や黄色灯下で保存した場合、硬化性化合物の一部の重合が開始してしまうという問題があった。本発明における窒素カチオンを有するオニウム塩は、光や熱に対して極めて安定であり、かつ有機物への溶解性が高いため、白色灯や黄色灯での保存安定性(分解や析出抑制)に優れる。
本発明では、高エネルギーおよび高還元性を有するプラズマによって速やかに分解し、酸やラジカルを発生するためこれらトリガーとした硬化性化合物のカチオン重合、ラジカル重合または酸架橋反応が進行し、分子量が増大し、高い硬化度を得ることに成功したものである。
【0009】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0010】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩
本発明で用いる窒素カチオンを有するオニウム塩は、いわゆる、プラズマ開始剤の役割を果たす。
窒素カチオンを有するオニウム塩は、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩およびアルキルイミダゾリウム塩から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルキルピリジニウム塩およびアルキルイミダゾリウム塩から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、アルキルイミダゾリウム塩であることがさらに好ましい。分解後のイミダゾールは弱塩基であって発生する酸を中和しないため、プラズマ酸発生剤としての機能をより維持しやすい。
オニウム塩はイオン液体(融点100℃以下)であることが、室温保管時の結晶析出抑制の観点で好ましい。
アルカリ難溶性樹脂の酸分解に伴う極性変換に使用するには、アニオンは、Cl-、Br-、I-、R1−SO3-、NO3-、R1−COO-、AlO2-、ClO4-、B(C654-、R1−O-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-(但し、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基である。)が好ましく、R1−SO3-、ClO4-、B(C654-、PF6-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-がより好ましい。酸強度の観点からR1はフルオロアルキル基であることが好ましく、フルオロメチル基であることがより好ましい。
特に、硬化反応が、ラジカル重合およびカチオン重合の場合、アニオンは、ルイス酸(PF6-、BF4-、SbF4-、BPh4-など)が好ましい。
また、硬化反応が酸架橋の場合、アニオンは、ルイス酸よりもブレンステッド酸を用いることが好ましく、特に強酸であるスルホン酸が好適に用いられる。また、アニオンは、ブレンステッド酸(R1SO3-など)が好ましい。R1は、上記と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0011】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩は、が下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される部分構造を有することが好ましく、一般式(3)で表される部分構造を有することがより好ましい。
【化5】

(上記一般式(1)〜(3)中、R11、R21、R31、およびR41は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。R11、R21、R31、およびR41の2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。R51、R71、およびR81は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。R61およびR91は、ぞれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、または、ハロゲン原子を示す。nは0〜3の整数を示す。nが2以上の場合、R61は、互いに結合して、環を形成してもよい。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R91は、互いに結合して、環を形成してもよい。X-は、Cl-、Br-、I-、R1−SO3-、NO3-、R1−COO-、AlO2-、ClO4-、B(C654-、R1−O-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-(但し、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基である。)を表し、R11〜R91は、2価の有機基を介してR1と化学結合を形成してもよい。)
11、R21、R31、およびR41が有していてもよい置換基としては、フェニル基、アセチルカルボニル基、ビニル基、アニオンまたはカチオンを含む基が好ましい。カチオンとしては、窒素カチオンが好ましく、アニオンとしては、X-で表されるアニオンが好ましい。
11、R21、R31、およびR41は、無置換のアルキル基が好ましく、炭素数1〜10の無置換のアルキル基がより好ましく、炭素数2〜4の無置換のアルキル基がさらに好ましい。
51、R71、およびR81が有していてもよい置換基としては、R11、R21、R31、およびR41が有していてもよい置換基と同義であり好ましい範囲も同義である。
51、R71、およびR81は、それぞれ、炭素数1〜10の無置換のアルキル基が好ましく、炭素数2〜4の無置換のアルキル基がさらに好ましい。R61およびR91が有していてもよい置換基としては、R11、R21、R31、およびR41が有していてもよい置換基と同義であり好ましい範囲も同義である。
61およびR91は、ぞれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、炭素数1〜10の無置換のアルキル基がより好ましく、炭素数2〜4の無置換のアルキル基がさらに好ましい。X-は、上述のアニオンと同じ範囲が好ましい。
【0012】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(4)で表されることがより好ましい。
【化6】

(一般式(4)中、R72、R82、およびR92は、それぞれ、炭素数4以下のアルキル基を表し、
-は、R1−SO3-、ClO4-、B(C654-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-を示す。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R92は、互いに結合して、環を形成してもよい。)
72、R82、およびR92およびY-の好ましい範囲は、それぞれ、上記一般式(3)のR71、R81、およびR91およびY-と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0013】
さらに、従来公知の光重合開始剤や光酸発生剤等は白色灯下での保存安定性を劣化させたり、塗布膜の光や熱に対する安定性が劣化するため、本発明で用いる組成物は、光重合開始剤や光酸発生剤を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、本発明の効果に影響を与える範囲内で含まないことをいい、例えば、0.1重量%以下であることが挙げられる。
【0014】
イオン液体としては東京化成工業(株)社から市販されているイミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩を使用することができる。例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロトリフルオロメチルボレート、1−エチル−3メチルイミダゾリウムハイドロジェンスルフェート、1−エチル−3メチルイミダゾリウムエチルスルフェート、1−エチル−3メチルイミダゾリウム2−(2−メトキシエトキシ)エチルスルフェート、1−エチル−3メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3メチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−3メチルイミダゾリウムテトラクロロフェレート、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムヨージド、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムトリフルオロトリフルオロメチルボレート、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3メチルイミダゾリウムテトラクロロフェレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロリド、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムブロミド、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムポリエチレングリコールヘキサデシルエーテルスルフェートコーテッドリパーゼ、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムクロリド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチルピリジニウムクロリド、1−エチルピリジニウムブロミド、1−ブチルピリジニウムクロリド、1−ブチルピリジニウムブロミド、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムクロリド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムブロミド、1−エチル−3−メチルピリジニウムエチルスルフェート、1−エチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−(ヒドロキシメチル)ピリジニウムエチルスルフェート、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、アミルトリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが挙げられる。
【0015】
以下に、本発明で用いる(A)窒素カチオンを有するオニウム塩を例示するが、本発明がこれらに限られるものではないことは言うまでもない。
【化7】

【0016】
【化8】

【0017】
【化9】

【0018】
【化10】

【0019】
【化11】

【0020】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩は、本発明で用いる樹脂組成物中に、溶剤を除く全成分の0.5〜20重量%の割合で含まれることが好ましく、1〜10重量%の割合で含まれることがより好ましい。
硬化反応が、ラジカル重合の場合、オニウム塩がより効率よく分解しラジカルが発生することが硬化度の観点から好ましい。ラジカル発生量としては、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩の順に大きくなる。従って、ラジカル重合の場合、(A)窒素カチオンを有するオニウム塩は、ピリジニウム塩およびイミダゾリウム塩が好ましく、イミダゾリウム塩がさらに好ましい。
【0021】
(B)硬化性化合物
本発明における硬化性化合物は、上記(A)窒素カチオンを有するオニウム塩にプラズマ照射することによって、硬化反応が開始する化合物である限り、その種類等は特に定めるものではなく、重合反応、縮合反応等を使用できる。重合反応の場合には従来公知のラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物を使用することができる。縮合反応の場合には、従来公知の酸架橋性化合物を使用できる。
窒素カチオンを有するオニウム塩によってラジカル重合反応、カチオン重合反応、酸架橋反応が起こる推定メカニズムについて説明する。
本発明の窒素カチオンを有するオニウム塩にプラズマを照射すると、プラズマが有する電子等の強い還元作用によってオニウム塩が1電子還元され励起状態を形成し、窒素カチオンに隣接する炭素原子がホモリティックに脱離しラジカル炭素を形成する。一方それによって得られた窒素ラジカルカチオンは、系中の活性水素をラジカル的に引き抜き、カウンターアニオンX-にプロトン供与することで、対応する酸HXを形成する。
このメカニズム中に生成するラジカルによってラジカル重合が進行する。また生成する酸HXによってカチオン重合と酸架橋反応が進行する。
窒素カチオンを有するオニウム塩がプラズマによって励起状態を形成した後の後続反応については、光励起可能なスルホニウム塩やヨードニウム塩と同様の機構が起こりうる。
以下、これらについて詳細に説明する。
【0022】
ラジカル重合性化合物
本発明に用いられるラジカル重合性化合物は、窒素カチオンのプラズマ照射によりラジカル重合反応を引き起こし硬化する化合物であれば特に制限はない。
本発明に用いることができるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。末端エチレン性不飽和結合は、1分子中に2〜10個含まれることが好ましい。これらの化合物は、モノマーに加え、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものを含む。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0023】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。これらのうち、ペンタエリスリトールトリアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートと混合物なども好ましく用いられる。
【0024】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0025】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0026】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334、特開昭57−196231号公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0027】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0028】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0029】
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、一般式(A)中、R4及びR5は、それぞれ、H又はCH3を示す。)
【0030】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感度スピードに優れた組成物を得ることができる。
【0031】
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0032】
重合性化合物は市販品を用いてもよく、本発明に使用される市販品としては、例えば、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(山陽国策パルプ社製)、UA−7200」(新中村化学社製、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(共栄社製)などが挙げられる。
また、重合性化合物として、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適に用いられる。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物類は、前記多官能アルコールの一部のヒドロキシ基を(メタ)アクリレート化し、残ったヒドロキシ基に酸無水物を付加反応させてカルボキシ基とするなどの方法で得られる。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシ基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシ基含有5官能アクリレートを含むTO−1382などが挙げられる。
【0033】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、組成物の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化物(特に、硬化膜)の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
【0034】
本発明で用いる硬化性組成物におけるラジカル重合性化合物の含有量は、該組成物の全固形分に対し10〜99質量%が好ましく、20〜97質量%がより好ましく、50〜95質量%が更に好ましい。ラジカル重合性化合物は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
カチオン重合性化合物
本発明に用いられるカチオン重合性化合物は、窒素カチオンのプラズマ照射によりカチオン重合反応を引き起こし硬化する化合物であれば特に制限はない。
本発明で用いるカチオン重合性化合物としては、光カチオン重合性化合物として知られる各種公知のカチオン重合性化合物を使用することができる。カチオン重合性化合物としては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、同2001−40068号、同2001−55507号、同2001−310938号、同2001−310937号、同2001−220526号などの各公報に記載されている、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
【0036】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド、芳香族エポキシドなどが挙げられる。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0037】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく挙げられる。
【0038】
脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等が挙げられる。その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルに代表されるポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0039】
エポキシ化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0040】
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0041】
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0042】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0043】
ビニルエーテル化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
具体的には、単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0044】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル 、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0045】
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0046】
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
オキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後の組成物と支持体等との高い密着性を得ることができる。
【0047】
分子内に1〜2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(1)〜(3)で示される化合物等が挙げられる。
【0048】
【化12】

【0049】
上記一般式(1)〜(3)中、Ra1は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基、又はチエニル基を表す。分子内に2つのRa1が存在する場合、それらは同じであっても異なるものであってもよい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、フルオロアルキル基としては、これらアルキル基の水素のいずれかがフッ素原子で置換されたものが好ましく挙げられる。
【0050】
上記一般式(1)中、Ra2は、水素原子、炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数2〜6個のアルケニル基、芳香環を有する基、炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等が挙げられる。芳香環を有する基としては、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。アルキルカルボニル基としては、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基等が挙げられる。アルキコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
N−アルキルカルバモイル基としては、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0051】
上記一般式(2)中、Ra3は、線状又は分枝状アルキレン基、線状又は分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、線状又は分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基又はカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基、又は、以下に示す基を表す。アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。ポリ(アルキレンオキシ)基としては、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等が挙げられる。不飽和炭化水素基としては、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
【0052】
【化13】

【0053】
上記多価基において、Ra4は、水素原子、炭素数1〜4個のアルキル基、炭素数1〜4個のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基を表す。
a5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、又は、C(CH32を表す。
Ra6は、炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基を表し、nは0〜2000の整数である。
a7は炭素数1〜4個のアルキル基、アリール基、又は、下記構造を有する1価の基を表す。
【0054】
【化14】

【0055】
上記一価の基において、Ra8は炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基であり、mは0〜100の整数である。
【0056】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0057】
【化15】

【0058】
一般式(4)において、Ra1は、前記一般式(1)におけるRa1と同義である。また、Ra9は多価連結基であり、例えば、下記A〜Cで示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記Dで示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記Eで示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0059】
【化16】

【0060】
上記Aにおいて、Ra10は、メチル基、エチル基、又はプロピル基を表す。また、上記Dにおいて、pは1〜10の整数である。
【0061】
また、本発明に好適に使用しうるオキセタン化合物の別の態様として、側鎖にオキセタン環を有する下記一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
【0062】
【化17】

【0063】
一般式(5)において、Ra1は、前記一般式(1)におけるRa1と同義であり、Ra8は、前記一般式(4)におけるRa8と同義である。Ra11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0064】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217号公報、段落番号〔0021〕〜〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
本発明で使用するオキセタン化合物のなかでも、組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1個有する化合物を使用することが好ましい。
【0065】
本発明における組成物中のカチオン重合性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対し、10〜99質量%が適当であり、好ましくは20〜97質量%、更に好ましくは50〜95質量%の範囲である。
【0066】
酸架橋性化合物
本発明で用いることができる酸架橋性化合物とは、酸により架橋する架橋剤(以下、適宜「酸架橋剤」又は単に「架橋剤」と称する。)である。架橋剤は、単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
本発明に好ましく用いられる架橋剤としては、以下に示す(i)〜(iv)の架橋剤が挙げられる。
(i)アルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換された化合物
(ii)ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基またはメチロール基と結合する窒素原子を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
(iv)一般式(5)で表されるフェノール誘導体として後述する化合物
以下、これらの架橋剤について詳細に説明する。
【0068】
<(i)アルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換された化合物>
(i)アルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換された化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基、又はアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物及び複素環化合物が挙げられる。またメチル化メラミン樹脂やメチル化尿素樹脂も挙げることができる。
【0069】
ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物及び複素環化合物のなかでは、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する化合物を好ましい例として挙げることができる。アルコキシメチル基の場合はアルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物であることが好ましい。特に好ましい例としては、下記一般式(1)〜(4)で表される化合物を挙げることができる。
【0070】
【化18】

【0071】
【化19】

【0072】
一般式(1)〜(4)中、L1〜L8は、それぞれ独立に、メトキシメチル、エトキシメチル等のように炭素数18以下のアルコキシ基で置換されたヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を示す。
【0073】
一般式(1)〜(4)で表される化合物がより好ましい。これらの架橋剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
<(ii)ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基またはメチロール基と結合する窒素原子を有する化合物>
(ii)N−ヒドロキシメチル基又はN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、欧州特許(以下、EP−Aと記載する)第0,133,216号明細書、西独国特許第3,634,671号明細書、同第3,711,264号明細書に開示された単量体及びオリゴマー、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物並びに尿素−ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられる。
【0075】
また、酸架橋剤としては特開2010−210851号公報に記載のメチロール基および/またはアルコキシメチル基と結合する窒素原子を有する化合物としては、例えば、メラミン、グリコールウリル、尿素、アルキレン尿素、ベンゾグアナミンなどのアミノ基含有化合物にホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒドとアルコールを反応させ、該アミノ基の水素原子をメチロール基またはアルコキシメチル基で置換した化合物が挙げられる。また、これらの化合物のメチロール基同士が自己縮合してなるオリゴマーであってもよい。なお、これらを2種以上含有してもよい。
【0076】
上記のアミノ基含有化合物のうち、メラミンを用いたものをメラミン系架橋剤、グリコールウリルを用いたものをグリコールウリル系架橋剤、尿素を用いたものを尿素系架橋剤、アルキレン尿素を用いたものをアルキレン尿素系架橋剤、ベンゾグアナミンを用いたものをベンゾグアナミン系架橋剤という。
【0077】
メラミン系架橋剤の具体例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミンなどが挙げられる。
【0078】
グリコールウリル系架橋剤の具体例としては、例えばモノ,ジ,トリおよび/またはテトラヒドロキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリおよび/またはテトラメトキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリおよび/またはテトラエトキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリおよび/またはテトラプロポキシメチル化グリコールウリル、モノ,ジ,トリおよび/またはテトラブトキシメチル化グリコールウリルなどが挙げられる。
【0079】
尿素系架橋剤の具体例としては、ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、ビスブトキシメチル尿素などが挙げられる。
【0080】
アルキレン尿素系架橋剤の具体例としては、モノおよび/またはジヒドロキシメチル化エチレン尿素、モノおよび/またはジメトキシメチル化エチレン尿素、モノおよび/またはジエトキシメチル化エチレン尿素、モノおよび/またはジプロポキシメチル化エチレン尿素、モノおよび/またはジブトキシメチル化エチレン尿素などのエチレン尿素系架橋剤、モノおよび/またはジヒドロキシメチル化プロピレン尿素、モノおよび/またはジメトキシメチル化プロピレン尿素、モノおよび/またはジエトキシメチル化プロピレン尿素、モノおよび/またはジプロポキシメチル化プロピレン尿素、モノおよび/またはジブトキシメチル化プロピレン尿素などのプロピレン尿素系架橋剤、1,3−ジ(メトキシメチル)4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0081】
ベンゾグアナミン系架橋剤の具体例としては、例えばモノ,ジ,トリおよび/またはテトラヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、モノ,ジ,トリおよび/またはテトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、モノ,ジ,トリおよび/またはテトラエトキシメチル化ベンゾグアナミン、モノ,ジ,トリおよび/またはテトラプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、モノ,ジ,トリおよび/またはテトラブトキシメチル化ベンゾグアナミンなどが挙げられる。
【0082】
<(iii)エポキシ化合物>
(iii)エポキシ化合物としては、一つ以上のエポキシ基を含む、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー状のエポキシ化合物を挙げることができる。例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエピクロルヒドリンとの反応生成物等が挙げられる。その他、米国特許第4,026,705号明細書、英国特許第1,539,192号明細書に記載され、使用されているエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0083】
<(iv)一般式(5)で表されるフェノール誘導体>
本発明における架橋剤としては、下記一般式(5)で表されるフェノール誘導体も好ましい。
【0084】
【化20】

【0085】
一般式(5)中、Ar1は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を示す。原料の入手性から、芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環が好ましい。また、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数12個以下の炭化水素基、炭素数12個以下のアルコキシ基、炭素数12個以下のアルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基、又はトリフルオロメチル基等が挙げられる。感度が高いという理由で、Ar1としては、置換基を有していないベンゼン環若しくはナフタレン環、又は、ハロゲン原子、炭素数6個以下の炭化水素基、炭素数6個以下のアルコキシ基、炭素数6個以下のアルキルチオ基若しくはニトロ基等を置換基として有するベンゼン環又はナフタレン環が特に好ましい。
【0086】
一般式(5)中、R1及びR2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。合成が容易であるという理由から、R1及びR2は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0087】
一般式(5)中、R3は、水素原子又は炭素数12個以下の炭化水素基を示す。感度が高いという理由で、R3は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、又はベンジル基等の炭素数7個以下の炭化水素基であることが好ましい。
【0088】
一般式(5)中、mは、2〜4の整数を示し、2であることが好ましい。
一般式(5)中、nは、1〜3の整数を示し、1であることが好ましい。
【0089】
上記一般式(5)で表されるフェノール誘導体は、特開平11−254850号公報に記載の方法に準じて合成することができる。
【0090】
架橋剤の配合量は、本発明で用いる組成物の全固形分中、10〜99質量%、好ましくは20〜97質量%である。
【0091】
溶剤
本発明における組成物は、通常、溶剤を含有する。溶剤は、各成分の溶解性や塗布性を満足すれば、基本的には特に制限はない。溶剤としては、1種又は2種以上の有機溶媒が使用できる。また、溶剤として、水、及び水と1種以上の有機溶媒との混合溶媒を用いることもできる。
【0092】
前記溶剤の例には、特開2008−32803号公報の段落番号〔0187〕に記載の各種溶剤が含まれる。具体的には、溶剤として使用可能な有機溶媒の例には、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキルエステル類(例:オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(具体的には、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等が挙げられる。))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等(具体的には、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等(具体的には、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(具体的には、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等が挙げられる。)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル類が含まれる。
【0093】
また、溶剤として使用可能な有機溶媒の例には、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエーテル類が含まれる。
【0094】
さらにまた、溶剤として使用可能な有機溶媒の例には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類が含まれる。
また、溶剤として使用可能な有機溶媒の例には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が含まれる。
【0095】
これらの有機溶媒は、各成分の溶解性、塗布面状の改良などの観点から、2種以上を混合してもよい。この場合、特に好ましくは、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶媒である。
【0096】
また、前記組成物中における溶剤の含有量としては、塗布性の観点から、組成物中の全固形分濃度が5〜80質量%になる量とすることが好ましく、5質量%〜60質量%になる量がより好ましく、10質量%〜50質量%になる量が更に好ましい。
【0097】
界面活性剤
本発明に用いる組成物は、塗布性をより向上させる観点から、1種以上の界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などのいずれの界面活性剤も使用することができる。また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0098】
特に、前記組成物がフッ素系界面活性剤を含有していると、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。フッ素系界面活性剤を含有する前記組成物からなる塗布液を用いて膜形成する態様では、支持体の被塗布面と該塗布液との界面張力が低下し、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、前記態様では、少量の液量で数nm〜数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜を形成できるので、薄膜の形成においてより有効である。
【0099】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%であるのが好ましく、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、前記組成物中における溶解性も良好である。
【0100】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。
【0101】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1等が挙げられる。
【0102】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0103】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0104】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
【0105】
本発明において、前記組成物は、界面活性剤を含んでいても含んでいなくてもよいが、含む場合、界面活性剤の含有量は、前記組成物の全固形分質量に対して、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0106】
バインダー
本発明で用いる組成物はバインダーを含んでいても良い、本発明に使用可能なバインダーについては特に制限はなく、併用する硬化性化合物の種類に応じて、適する種類を選択することができる。分子量1000〜1,000,000程度のポリマーが好ましく、具体的には、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ビニロン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、フッ素化ポリエチレン、フッ素化ポリプロピレン、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ブタジエンゴム、シリコンゴム、シリコンオイル、セルロース等を用いることができる。2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、前記組成物は、バインダーを含んでいても含んでいなくてもよいが、含む場合、界面活性剤の含有量は、前記組成物の全固形分質量に対して、10〜90質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
【0107】
本発明に利用する組成物は、常温で、一般的な熱重合や光重合が進行しないのが、保存安定性の点で好ましい。60℃で、一般的な熱重合や光重合が進行しないのが同観点でより好ましい。
なお、重合進行の有無は、60℃に設定したサーモセルコに入れ、1ヶ月間保管した後、GPC測定し、分子量変化を観察することで確認できる。分子量変化が認められなければ、重合の進行はなく、分子量変化が5%以上であると、重合進行があるといえる。
【0108】
硬化膜の製造方法
本発明の製造方法では、上記組成物を、支持体の表面に塗布して、膜を形成する。一般的な塗布方法により行うことができ、例えば、スピンコート法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法により実施できる。また、インクジェットを利用してもよい。用途に応じて、ストライプや格子等のパターン状に塗布してもよい。また、前記重合性組成物を浸漬液として調製し、支持体を該液に浸漬して、膜を形成してもよい。なお、塗布後に加熱して、溶剤を除去してもよい。加熱温度は使用する溶剤の沸点に応じて決定することができる。
【0109】
支持体については、形状、材料等いずれの観点でも特に制限はない。管状体、平面状、又は帯状のいずれの形態であってもよい。また、多孔質体等、細孔を有する支持体であってもよく、該細孔の内面に膜を形成してもよい。また、有機材料、無機材料、及びこれらのハイブリッド材料からなるいずれの支持体も用いることができる。本発明では、高分子フィルムが好ましい。本発明の方法では、重合反応進行のために過度な高温に晒す必要はないので、有機高分子からなる支持体を用いる態様で特に有用である。また、支持体の膜を形成する面は、平面及び曲面のいずれであってもよく、また微細な凹凸のある面であってもよい。具体的には、前記膜を形成する支持体の例には、フィルム、基板、シートの他、濾紙、メンブランフィルター、樹脂製チューブ、織物、綿、フェルト、及び羽毛等も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
次に、形成された膜にプラズマ照射して、硬化性化合物の硬化反応を開始及び進行させる。大気圧近傍の条件下で生成された低温大気圧プラズマを利用するのが好ましい。例えば、非平衡プラズマジェット、交流パルス放電による低温プラズマなどを用いることができ、いずれも大気圧近傍の条件下で生成されたプラズマを用いるのが好ましい。
【0111】
プラズマ照射には、種々の大気圧プラズマ装置を用いることができる。例えば、誘電体で覆われた電極間に大気圧近傍の圧力の不活性気体を通じつつ間欠放電を行うことにより低温プラズマを発生させることができる装置等が好ましく、いずれの装置も用いることができ、使用目的等に応じて種々の変型例を選択できる。より具体的には、特開2008−60115公報において、基盤プラズマ処理に用いられる装置、特開2004−228136公報に記載の常圧プラズマ装置、特開2006−21972公報、特開2007−188690公報、及び国際公開WO2005/062338、WO2007/024134、WO2007/145513などの明細書に記載のプラズマ装置などが挙げられる。また、大気圧プラズマ装置は市販品としても入手可能であり、例えば、アリオス(株)のATMP−1000、株式会社ハイデン研究所の大気圧プラズマ装置、(株)魁半導体のS5000型大気圧低温プラズマジェット装置、(株)ウェルのMyPL100、ILP−1500 、積水化学工業(株)のRD550 など、現在上市されている大気圧プラズマ装置もまた好適に使用しうる。しかし、プラズマの不均一な集中(ストリーマ)を避けて膜へのダメージを軽減するために、例えば、WO/2005/062338およびWO2007/024134の各明細書に記載された、放電部への通電をパルス制御素子経由で行なうなどの電気回路の工夫をした装置を用いることが好ましい。
なお、本発明における「大気圧プラズマ」における「大気圧近傍の圧力」とは、70kPa以上130kPa以下の範囲を指し、好ましくは90kPa以上110kPa以下の範囲である。
【0112】
大気圧プラズマの生成時に用いられる放電ガスとしては、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、ヘリウム、及びアルゴンのいずれかのガス、又はこれらの2種以上の混合ガスを利用することができる。不活性気体であるHe及びAr等の希ガス、あるいは窒素ガス(N2)を用いることが好ましく、Ar又はHeの希ガスが特に好ましい。膜表面へのプラズマを適用することにより速やかに重合反応が開始し、進行する。なお、プラズマ照射による重合では、プラズマに含まれる活性種(例えばラジカル)が膜表面に付着し、表面から重合(例えばラジカル重合)が開始する。
【0113】
なお、プラズマ処理はバッチ方式でも、他の工程とつなげてインライン方式で行ってもよい。
【0114】
膜表面へのダメージを抑制するという観点からは、プラズマ作用部位と放電部位とを離すこと、または、放電回路の工夫によりプラズマの局所的集中(ストリーマ)の発生を抑制して、均一なプラズマを発生させること、が有効であり、特に後者は、大面積にわたる均一なプラズマ処理ができる点で好ましい。前者としては、放電により生じたプラズマを不活性気体の気流により膜表面まで搬送して接触させる方式が好ましく、特にいわゆるプラズマジェット方式が好ましい。この場合プラズマを含む不活性ガスを搬送する経路(導通管)は、ガラス、磁器、有機高分子などの誘電体であることが好ましい。後者としては、WO/2005/062338およびWO2007/024134号明細書に記載の、パルス制御素子経由で誘電体により覆われた電極に通電することによりストリーマが抑制された均一なグロープラズマを発生させる方式が好ましい。
【0115】
プラズマを含む不活性ガスの供給ノズルから膜表面までの距離は0.01mm〜100mmであることが好ましく、1mm〜20mmであることがより好ましい。
不活性ガスによる搬送方式の場合でも、WO2009/096785号明細書に記載の方式と同様にインライン方式でプラズマを膜表面に適用しうる。即ち、塗布法により有機薄膜形成用の膜を形成し、塗布工程の川下側に不活性ガスとプラズマとを表面に適用しうる吹き出しノズルなどを設けることで、連続的に有機薄膜の形成が可能となる。
不活性気体を用いるプラズマ発生方式の場合、プラズマが直接膜中に存在するプラズマ重合性化合物に直接働きかけることで重合、硬化反応が効率よく開始、進行するために、通常は、酸素阻害抑制を目的として不活性ガス雰囲気の閉鎖系環境を必要とする重合反応を、開放系で行っても、酸素阻害の影響を受け難く良好な硬化性を達成しうるという利点を有する。
【0116】
なお、重合反応時における酸素由来の化学種の取り込みを減少させるといった観点からは、プラズマ処理を施す領域に、不活性気体を十分に供給するか、その領域を不活性ガスで充満させてもよい。このような不活性ガスによるプラズマの搬送を行う際には、プラズマ点灯以前からプラズマ発生部位に不活性ガスを流しておき、プラズマ消灯後にも不活性ガスを流し続けることが好ましい。
【0117】
プラズマ処理後の不活性ガスについては、プラズマの寿命が短時間であることから、特段の処理を行わず排気してもよいが、処理領域の近傍に吸気口を設けて処理済みの不活性ガスを回収してもよい。
【0118】
プラズマ照射時の温度は、プラズマ照射される膜中の材料の特性に応じて任意の温度を選択できるが、大気圧低温プラズマを照射することによってもたらされる温度上昇が小さいほうが、ダメージを軽減できるので好ましい。前記プラズマ適用領域をプラズマ発生装置から離間させることで、その効果がより向上する。
【0119】
前記方法において、大気圧低温プラズマを選択して照射することで、プラズマからの熱エネルギーの供給を軽減でき、膜の温度上昇を抑制することができる。プラズマ照射されることによる膜の温度上昇は、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、20℃以下が特に好ましい。
プラズマ照射時の温度は、プラズマ照射される膜中の材料の耐え得る温度以下であることが好ましく、一般的には、−196℃以上150℃未満が好ましく、−21℃以上100℃以下がより好ましい。特に好ましくは、環境温度雰囲気下である室温(25℃)近傍である。
【0120】
前記方法により、支持体の表面の少なくとも一部に硬化膜が形成される。形成される硬化膜の厚みについては特に制限はないが、プラズマを利用する本発明の方法は、薄膜の形成に有利であり、具体的には、本発明の方法により製造される硬化膜の厚みは1〜500nmであるのが好ましく、1〜200nmであるのがより好ましく、1〜100nmであるのがさらに好ましい。
【0121】
本発明の製造方法により製造される硬化物や硬化膜は、光学材料、電気材料、医療材料、エレクトロニクス材料、航空宇宙材料、ガスバリア材料等、種々の用途に利用することができる。特に、硬化度が高く、耐熱性及び耐湿性等の耐久性に優れることから、ガスバリア材料等に有用である。
【実施例】
【0122】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0123】
窒素カチオンを有するオニウム塩を含有するプラズマ硬化性組成物の調製
(1)実施例1
下記に示す成分量の成分を混合し、混合液を0.1μmのテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して、実施例1のプラズマ反応性塗布液を調液した。
・(A)窒素カチオンを有するオニウム塩(例示化合物A−1) 5質量部
・(B)硬化性化合物(デナコールEX−614B(ナガセケムテックス(株))(B−1))
95質量部
・界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル) 0.1重量部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME) 900質量部
【0124】
(2)実施例2〜17及び比較例1〜4
下記表に示す組成に変更して、実施例1と同様にして、塗布液をそれぞれ調製した。
【0125】
(3)プラズマ処理による硬化膜の作成
(3−1)実施例1〜1及び比較例1〜3
(塗布膜の形成)
上記で得られた各塗布液を、PET基板上にスピンコート法でそれぞれ塗布し、その後、ホットプレート上で、60℃で1分間加熱してプラズマ反応性塗布膜を得た。
【0126】
(プラズマ処理)
塗布膜に、株式会社魁半導体製、S5000型大気圧低温プラズマジェット装置(放電ガス:窒素)を用いて低温N2プラズマを30秒間照射し、重合反応を進行させて、硬化させ、膜厚500nmのプラズマ重合膜を形成した。
但し、実施例18では、N2プラズマに変えて、S5000型大気圧低温プラズマジェット装置(放電ガス:アルゴン)を走査してArプラズマを照射した。
【0127】
(3−2)比較例4
上記と同様にして、厚さ500nmの塗布膜を形成し、大気圧プラズマの代わりにUVランプとしてUV LIGHT SOURCE EX250(HOYA−SCHOTT社製)を用い、UV照射量:1J/cm2となるように照射した。
【0128】
4.性能評価
各塗布組成物及び各膜について、以下の評価をそれぞれ行った。
(1)保存安定性 −白色灯、加熱試験−
上記で調製した各塗布組成物を、白色灯下で60℃に設定したサーモセルコに入れ、1ヶ月間保管した。光、熱に不安定なオニウム塩はこの段階で分解し、酸やラジカルが発生してしまうことで、共存する硬化性化合物が高分子量化してしまい好ましくない。この溶液をGPC測定し、分子量変化を観察した。評価は下記基準に基づいて行った。
○:分子量変化が認められない。
△:分子量変化が5%未満であった。
×:分子量変化が5%以上であった。
【0129】
(2)保存安定性 −黄色灯、冷蔵試験−
上記で調製した各塗布組成物を、黄色灯下で0℃に設定したサーモセルコに入れ、1ヶ月間保管した。溶剤溶解性の低いオニウム塩はこの段階で結晶が析出したり溶液が白濁するため、均一な組成物が得られず好ましくない。この溶液を目視で観察した。評価は下記基準に基づいて行った。
◎:結晶析出や白濁が全く認められない。
○:白濁がわずかに認められる。
△:白濁が顕著に認められる。
×:白濁と同時に結晶析出が認められる。
【0130】
(3)硬化度
形成した各硬化膜について、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に60秒間浸漬させ、膜の重量変化を測定した。重量変化が小さいものほど硬化度が高く望ましい。
10段階で評価し、「10」重量変化がほとんど認められず、「9」から「2」は、この順番で重量変化が大きく認められ、「1」は重量変化が最も大きい。
【0131】
【表1】

【0132】
【化21】

【0133】
上記表における化合物は下記のとおりである。
(B−1)デナコールEX−614B(ナガセケムテックス(株)社製)
(B−2)A−DPH(新中村化学(株)社製)
(B−3)ニカラックMX−270(三和ケミカル(株)社製)
(A’−1)ビス(p−tert−ブチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(TCI(株)社製)
(A’−2)トリス(p−トリル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(TCI(株)社製)
【0134】
上記表から明らかな通り、窒素カチオンを有するオニウム塩にプラズマを照射し、硬化性組成物の重合を開始させることが可能になった。特に、一般式(3)で表される窒素カチオンを有するオニウム塩を用いることにより、黄色灯下での保存安定性がより向上することが分かった。
また、ラジカル重合性化合物を用いた場合に、保存安定性が特に向上することが分かった(実施例8〜13と比較例3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩と
(B)硬化性化合物
を含有する組成物にプラズマを照射することを含む、硬化物の製造方法。
【請求項2】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩およびアルキルイミダゾリウム塩から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の硬化物の製造方法。
【請求項3】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される部分構造を有する、請求項1または2に記載の硬化物の方法。
【化1】

(上記一般式(1)〜(3)中、R11、R21、R31、およびR41は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。R11、R21、R31、およびR41の2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。R51、R71、およびR81は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。R61およびR91は、ぞれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、または、ハロゲン原子を示す。nは0〜3の整数を示す。nが2以上の場合、R61は、互いに結合して、環を形成してもよい。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R91は、互いに結合して、環を形成してもよい。X-は、Cl-、Br-、I-、R1−SO3-、NO3-、R1−COO-、AlO2-、ClO4-、B(C654-、R1−O-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-(但し、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基である。)を表し、R11〜R91は、2価の有機基を介してR1と化学結合を形成してもよい。)
【請求項4】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(4)で表される、請求項1または2に記載の硬化物の製造方法。
【化2】

(一般式(4)中、R72、R82、およびR92は、それぞれ、炭素数4以下のアルキル基を表し、
-は、R1−SO3-、ClO4-、B(C654-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-を示す。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R92は、互いに結合して、環を形成してもよい。)
【請求項5】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩がイオン液体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項6】
(B)硬化性化合物がカチオン重合性モノマーおよびラジカル重合性モノマーの少なくとも一方を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項7】
支持体上に、(A)窒素カチオンを有するオニウム塩、(B)硬化性化合物及び(C)溶剤を含有する組成物を適用して膜を形成すること、及び
該膜にプラズマを照射して、(A)窒素カチオンを有するオニウム塩を分解させ、(B)硬化性化合物をラジカルまたはカチオン重合により硬化させること、
を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項8】
前記支持体が、高分子フィルムである、請求項7に記載の硬化物の製造方法。
【請求項9】
プラズマが、低温大気圧プラズマである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項10】
前記硬化物が膜状である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造される硬化物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造される硬化膜。
【請求項13】
窒素カチオンを有するオニウム塩にプラズマを照射し、該オニウム塩を分解させてラジカル、酸、および塩基の少なくとも1種を発生させて反応を開始させる方法。
【請求項14】
窒素カチオンを有するオニウム塩を含む、プラズマ酸発生剤。
【請求項15】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される部分構造を有する、請求項14に記載のプラズマ酸発生剤。
【化3】

(上記一般式(1)〜(3)中、R11、R21、R31、およびR41は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。R11、R21、R31、およびR41の2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。R51、R71、およびR81は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。R61およびR91は、ぞれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、または、ハロゲン原子を示す。nは0〜3の整数を示す。nが2以上の場合、R61は、互いに結合して、環を形成してもよい。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R91は、互いに結合して、環を形成してもよい。X-は、Cl-、Br-、I-、R1−SO3-、NO3-、R1−COO-、AlO2-、ClO4-、B(C654-、R1−O-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-(但し、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基である。)を表し、R11〜R91は、2価の有機基を介してR1と化学結合を形成してもよい。)
【請求項16】
窒素カチオンを有するオニウム塩を含む、プラズマ重合開始剤。
【請求項17】
(A)窒素カチオンを有するオニウム塩が下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される部分構造を有する、請求項16に記載のプラズマ重合開始剤。
【化4】

(上記一般式(1)〜(3)中、R11、R21、R31、およびR41は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を示す。R11、R21、R31、およびR41の2つは、互いに結合して、環を形成してもよい。R51、R71、およびR81は、それぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。R61およびR91は、ぞれぞれ、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基、または、ハロゲン原子を示す。nは0〜3の整数を示す。nが2以上の場合、R61は、互いに結合して、環を形成してもよい。mは0〜3の整数を示す。mが2以上の場合、R91は、互いに結合して、環を形成してもよい。X-は、Cl-、Br-、I-、R1−SO3-、NO3-、R1−COO-、AlO2-、ClO4-、B(C654-、R1−O-、PF6-、BF4-、SbF6-、GaF6-またはAsF6-(但し、R1は置換基を有していてもよいアルキル基、または、置換基を有していてもよいアリール基である。)を表し、R11〜R91は、2価の有機基を介してR1と化学結合を形成してもよい。)

【公開番号】特開2013−91741(P2013−91741A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235668(P2011−235668)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】