説明

硬表面用液体洗浄剤組成物

【課題】浴室、トイレ、キッチンなどの硬表面に対して優れた洗浄力を有し、水道水と接触した場合においてもグラム陽性菌、グラム陰性菌に対する高い除菌力を有し、且つ保存安定性に優れた硬表面用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の硬表面用洗浄剤組成物は、(A)銀微粒子分散体と、(B)界面活性剤を含有し、前記(A)銀微粒子分散体が、アルコキシド基、スルフィド基、アミノ基から選ばれる少なくとも1種の還元能を有する官能基を分子内に有するハイパーブランチポリマー(HBP)と銀イオンを含む溶液(S−Ag)とが混合されることにより、前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に誘導された銀イオンが前記官能基により還元されて前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に多数の銀微粒子が形成されてなる銀微粒子内包型ハイパーブランチポリマー(HBP−Ag)の透明水溶液であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレや浴室における硬表面洗浄剤の分野において、優れた洗浄力と除菌力を両立できる硬表面用液体洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トイレや浴室における硬表面に対して優れた洗浄力と除菌力を両立できる組成物が求められている。
【0003】
従来の硬表面用液体洗浄剤組成物としては、例えば、特許文献1に、アニオン活性剤と亜鉛、多価カルボン酸の組み合わせが開示されており、特許文献2に、銀微粒子とアニオン活性剤との組み合わせが開示されている。しかし、いずれも組成物中でアニオン活性剤の対イオンが金属塩と対イオン交換してしまい除菌性能を十分に充たせるものではなかった。
【0004】
また、特許文献3には、有機化合物の金属塩と水溶性高分子の組み合わせが開示されている。しかし、この文献3に開示の組成物は使用方法が塗布・乾燥して使うものであり、洗浄力を発揮するものではない。
【0005】
また、特許文献4には、銀系無機抗菌剤の微粒子と分散剤の組み合わせが開示されている。しかし、この文献4に開示の組成物は、活性剤が配合されておらず、硬表面に付着した汚垢を十分に落とせないものであった。
【0006】
さらに、特許文献5には、過酸化水素などの過酸化物と金属/多座配位子錯体と界面活性剤の組み合わせが開示されている。しかし、この文献5に開示の組成物は、過酸化物と金属化合物が反応し効果が失活するため、洗浄力を発揮するためには配合直後に使用しなければならないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−131626号公報
【特許文献2】特開2000−178595号公報
【特許文献3】特開平11−107162号公報
【特許文献4】特開平6−247817号公報
【特許文献5】特開平9−132797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の硬表面用液体洗浄剤組成物においては、意外にも浴室、トイレ、キッチンなどの水周り場の硬表面に対して、優れた洗浄力と除菌力を両立して付与できる液体洗浄剤組成物が存在しなかった。
本発明者らの研究により、浴室、トイレ、キッチンなどの水周り場の硬表面は水道水で濡れている場合が多いこと、また、スポンジ製などの掃除用具が内部に水道水を含んだまま使われることが多いという掃除の実態が、優れた洗浄力と除菌力との両立を阻んでいることが解明された。
即ち、上記掃除の実態では、洗剤中に含まれている除菌力を有する金属イオンは、水道水に含まれている塩素と反応して失活するという問題が生じる。因みに、銀イオンと塩化物イオンとの反応速度は非常に速く、除菌試験の希釈に水道水を用いた場合は(残留塩素濃度は0.4mg/L)10分間の接触で、硫酸銀の除菌力はほぼ失活してしまうほどである。このような現象が、浴室、トイレ、キッチンなどの硬表面を掃除する場合に生じており、それが従来の硬表面用液体洗浄剤組成物が性能的に不十分である理由であることが知見された。
【0009】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、浴室、トイレ、キッチンなどの硬表面の皮脂、油汚れに対して優れた洗浄力を有するとともに、洗浄中に水道水と接触した場合においてもグラム陽性菌、グラム陰性菌に対する高い除菌力を有し、且つ保存安定性に優れた(沈殿物が発生しない)硬表面用液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、下記構成を採用した硬表面用液体洗浄剤組成物を提供する。
[1] (A)銀微粒子分散体と、(B)界面活性剤を含有する硬表面用液体洗浄剤組成物であって、前記(A)銀微粒子分散体が、アルコキシド基、スルフィド基、アミノ基から選ばれる少なくとも1種の還元能を有する官能基を分子内に有するハイパーブランチポリマー(HBP)と銀イオンを含む溶液(S−Ag)とが混合されることにより、前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に誘導された銀イオンが前記官能基により還元されて前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に多数の銀微粒子が形成されてなる銀微粒子内包型ハイパーブランチポリマー(HBP−Ag)であることを特徴とする硬表面用液体洗浄剤組成物。
[2] 前記ハイパーブランチポリマー(HBP)が、グリシジルエーテル化合物を塩基性触媒の存在下で付加重合させることにより得られるポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)の分子内に、アルコキシド基、スルフィド基、アミノ基から選ばれる少なくとも1種の還元能を有する官能基を付与させたものであることを特徴とする、上記[1]に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
[3] 前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内部に生成した銀微粒子の透過型電子顕微鏡観察に基づく平均粒径が、直径1nm以上100nm未満であることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
[4] 前記(A)銀微粒子分散体の含有量が、洗浄剤組成物全量に対して、10〜1000ppmであり、前記(B)界面活性剤の含有量が、洗浄剤組成物全量に対して、0.5〜15.0質量%であることを特徴とする、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる硬表面用液体洗浄剤組成物を構成する(A)銀微粒子分散体は、還元能を有する官能基を含む樹枝状ポリマー(ハイパーブランチポリマー(HBP))内部に誘導された銀イオンがポリマーの内部空間で前記官能基により還元されて銀微粒子となってハイパーブランチポリマー(HBP)内部に分散、保持されてなる銀微粒子内包型ハイパーブランチポリマー(HBP−Ag)の透明水溶液である。
本発明に用いる(A)銀微粒子分散体(HBP−Ag)は透明水溶液で得られ、凝集・沈殿を生じない、安定性に優れたものである。この銀微粒子内包型ハイパーブランチポリマー内に生成した銀微粒子は、ハイパーブランチポリマー(HBP)内にあるために水道水との直接接触が抑制され、銀微粒子が有する除菌力の失活が効果的に防止される。そして、ハイパーブランチポリマー(HBP)内の銀粒子から銀イオンが、徐放されて洗浄対象である硬表面上の菌を殺菌するものと推定される。しかしながら、(A)銀微粒子分散体が菌にどのように接触して、菌を死滅させるかの詳細なメカニズムは詳らかには分かっていない。
本発明にかかる硬表面用液体洗浄剤組成物の構成は、前記特定の銀微粒子分散体と、界面活性剤とを必須成分として有しており、これらの組み合わせにより、優れた洗浄力ならびに除菌力を発揮し、且つ、経時安定性にも優れた組成物を得ることができる。
【0012】
先にも述べたように、特許文献2に開示された銀微粒子とアニオン活性剤との組み合わせでは、組成物内でアニオン活性剤の対イオンが銀イオンと対イオン交換し、除菌力が失活してしまう不具合があった。
これに対して、本発明にかかる硬表面用液体洗浄剤組成物よれば、(B)成分である界面活性剤としてアニオン活性剤を含む場合でも、銀微粒子が有する殺菌力は失活せず、アニオン活性剤が持つ本来の洗浄性能を有効に発揮させることが可能である。
このように、洗浄剤組成物中に裸の銀イオンを含有させた従来の技術では、裸の銀イオンが水道水中の塩素と反応して水に不溶の塩が生成してしまい洗浄剤の除菌力が低下する不具合があったが、本発明の硬表面用液体洗浄剤組成物によれば、水道水に希釈してから用いる場合や、処理する硬表面が水道水で濡れている場合や、使用中に水道水で希釈される場合でも、除菌力を損なうことなく使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる硬表面用液体洗浄剤組成物は、(A)銀微粒子分散体と、(B)界面活性剤とを含有してなる。以下、これら2成分について、さらに任意に追加配合可能なその他の成分について、詳しく説明する。
【0014】
((A)銀微粒子分散体)
本発明に用いる(A)銀微粒子分散体は、アルコキシド基、スルフィド基、アミノ基から選ばれる少なくとも1種の還元能を有する官能基を分子内に有するハイパーブランチポリマー(HBP)と銀イオンを含む溶液(S−Ag)とが混合されることにより、前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に誘導された銀イオンが前記官能基により還元されて前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に多数の銀微粒子が形成されてなる銀微粒子内包型ハイパーブランチポリマー(HBP−Ag)である。
前記少なくとも1種の還元能を有する官能基を分子内に有する“ハイパーブランチポリマー(HBP)”であるハイパーブランチポリマー(HBP)は、後述のように、いわゆるハイパーブランチポリマー(HBP)に少なくとも1種の還元能を有する官能基を付与したものである。
したがって、以下に、まず、本発明に用いられるハイパーブランチポリマー(HBP)について説明し、つづいて、少なくとも1種の還元能を有する官能基を分子内に有するハイパーブランチポリマー(HBP)について説明する。
【0015】
(ハイパーブランチポリマー(HBP))
本発明に用いられる(A)成分である銀微粒子分散体のマトリックスであるハイパーブランチポリマー(HBP)とは、分子内に多数の分岐点を有するポリマーの総称で、デンドリマーと共にデンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類されている。従来の線状ポリマーとは物性面で異なる点が多数あり、一例を挙げると、表面多官能性、低粘度、非晶性など相違点がある。特に、表面多官能性ゆえに、ポリマー表面官能基にさらに別の化合物を縮合させることができる。
【0016】
本発明で用いるハイパーブランチポリマー(HBP)の重量平均分子量(Mw)は、500〜100,000であることが好ましく、6,000〜28,000であることがより好ましい。
ここで、ハイパーブランチポリマー(HBP)の重量平均分子量(Mw)は、0.5質量%の水溶液を調製し、温度40℃でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行って求めることができる。例えば、測定装置としてShodex社製の「RI−71(商品名)」を用い、移動溶媒としては水を用い、標準物質としてはポリエチレングリコールを使用することにより、求めることができる。後述の実施例においても、この条件で測定している。
【0017】
また、ハイパーブランチポリマー(HBP)の多分散度(Mw/Mn)は1〜10であるのが好ましく、1〜5であるのがさらに好ましい。なお、上記多分散度(Mw/Mn)の分母のMnは数平均分子量である。
【0018】
さらに、ハイパーブランチポリマー(HBP)の絶対分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、28,000〜154,000であることがより好ましい。
ここで、ハイパーブランチポリマー(HBP)の絶対分子量は、多角度光散乱検出器(MALLS; multi-angle laser light scattering)により測定することができる。
上記絶対分子量の測定条件は、例えば、前述のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定のラインにWyatt社製の多角度光散乱検出器(商品名「DAWN DSP−F」)を接続して行うことができる。
【0019】
本発明の(A)銀微粒子分散体におけるマトリックスとして用いられるハイパーブランチポリマー(HBP)は、上述の特性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、中でも用いて好ましいハイパーブランチポリマー(HBP)は、グリシジルエーテル基と水酸基を含む下記一般式(I):
【0020】
【化1】

(式(I)中、Xは分子中にヘテロ原子を有していてもよい置換アルカンを示し、グリシジルエーテル基および水酸基は置換アルカンXを構成する炭素のうち共通の炭素に結合していてもよいし、それぞれ異なる炭素に結合されていてもよく、mは2以上の整数を示し、nは1以上の整数を示し、m>n>0である。)で表される化合物
を含むグリシジルエーテル化合物(イ)を塩基性触媒(ロ)の存在下で付加重合させることにより得られる。
【0021】
グリシジルエーテル化合物(イ)を塩基性触媒(ロ)の存在下で付加重合させることにより得られる、ハイパーブランチ構造ポリマーの概略構造を下記式(1)に示す。
【0022】
【化2】

上記概略構造式(1)に示したポリマーは、ポリグリセロールグリシジルエーテル(GDGE)であり、いわゆるハイパーブランチポリマー(HBP)である。
【0023】
以下にハイパーブランチポリマー(HBP)の製造方法について、説明する。
(出発物質(イ))
ハイパーブランチポリマー(HBP)を得るための出発物質として、「水酸基と水酸基よりも多い数のグリシジルエーテル基を持つ化合物」を含むグリシジルエーテル化合物(イ)を用いる。係る出発物質(イ)に含まれる「水酸基と水酸基よりも多い数のグリシジルエーテル基を持つ化合物」として、上記一般式(I)で表される化合物(a)を用いる。 一般式(I)で表される化合物(a)は、1以上の水酸基と、該水酸基より多い数のグリシジルエーテル基とを含む化合物であり、2つ以上の反応性等価なグリシジルエーテル基をグリセロール骨格内に持つ化合物とも言い換えられる。
【0024】
上記一般式(I)中のXは置換アルカンを示す。本発明において「置換アルカン」とは、アルカンを構成する水素原子のうちの少なくとも一部または全部が置換基に置き換えられたものを意味する。上記一般式(I)の置換アルカンXは、アルカンを構成する水素原子の少なくとも一部又は全部がグリシジルエーテル基または水酸基との化学結合で置換されたアルカンである。
【0025】
上記置換アルカンを構成する炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることが特に好ましい。20を上回る場合、所望の分岐度を確保できないおそれがある。
【0026】
上記置換アルカンの構造は、直鎖状、分岐状および環状のいずれであってもよく、それらの2以上を含むものであってもよい。また、上記置換アルカンを構成する水素原子のうちグリシジルエーテル基や水酸基で置換されていない水素原子については、ハロゲン原子で置換されていてもよい。さらに、置換アルカンの一部に酸素原子や窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。すなわち、置換アルカンの一部に、例えば−C(=O)O−(エステル結合)、−C(=O)NH−(アミド結合)、−O−(エーテル結合)などの結合を有していてもよい。また、置換アルカンの一部が脱水素した形で、二重結合あるいは三重結合を有していてもよい。
【0027】
具体的に、上記置換アルカンを構成するアルカンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0028】
一般式(I)において、グリシジルエーテル基および水酸基の置換アルカンXへの結合部位は、特に限定されない。すなわち、各グリシジルエーテル基および水酸基が、置換アルカンXを構成する炭素のうち共通の炭素に結合していてもよいし、それぞれ異なる炭素に結合するものであってもよい。例えば、グリシジルエーテル基と水酸基とが交互に結合していてもよいし、それぞれが一部に偏在していてもよい。
【0029】
一般式(I)中のmとnは、それぞれ、一般式(I)で示される化合物(a)中のグリシジルエーテル基および水酸基の結合数を示す。mは2以上の整数である。mが大きい場合、多様な官能基に変換できるエポキシ基の残存数が増えるため、好ましい。ただし、エポキシ基の数が水酸基の数に比べて過剰に多い場合、反応が進まなくなるおそれがあるため、mの上限は10であることが好ましく、5がより好ましく、3がより一層好ましい。nは1以上の整数を示し、mとの間で、m>n>0の関係にある。すなわち、nはmよりも小さい整数である。
【0030】
一般式(I)で表される化合物(a)としては、グリセロール骨格を有する化合物であることが好ましい。グリセロール骨格とは、グリセリン(グリセロール)の3つの水酸基の水素が外れた骨格を意味する。なお、上記グリセリンはアルキル基等の置換基を持つ誘導体を含む意味である。グリセロール骨格は異なる3つの炭素原子に酸素原子が結合しているため、グリシジルエーテル基の反応性が等価という利点がある最小分子であり、分岐度の高いハイパーブランチポリマー(HBP)が得られる。また、グリセリンが油脂産業における余剰物質としてその素材展開を求められていることからも、一般式(I)で表される化合物(a)は、用いて好ましい化合物と言える。
【0031】
一般式(I)で表される化合物(a)の製造条件には、特に限定はなく、例えば、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンクエリスリトール、ソルビトール、庶糖、分解澱粉等の2つ以上の水酸基を持つ化合物とエピクロロヒドリンとにより誘導される化合物が挙げられる。
【0032】
上記誘導化合物として具体的に好ましい化合物名を挙げるならば、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロール−1−グリシジル−3−(プロピル−3−クロロ−2−グリシジルエーテル)エーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等である。
【0033】
上記ジグリセロールポリグリシジルエーテルとしては、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテルが好ましい。また、上記ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルとしては、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0034】
上記具体例の中でも、グリセロールジグリシジルエーテルが好ましい。グリセロールジグリシジルエーテルとしては、下記構造式(II)〜(IV)に示されるグリセロール−1,3−ジグリシジルエーテル(式(II))、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル(式(III))、および1−(2−オキシラニルメトキシ)−3−[2−クロロ−3−(2−オキシラニルメトキシ)プロポキシ]プロパン−2−オール(式(IV))を挙げることができ、これらの中でも、特に、構造式(II)に示すグリセロール−1,3−ジグリシジルエーテルが好ましい。これらの具体的グリセロールジグリシジルエーテルは、例えば、ナガセケムテックス社製のデナコールシリーズより入手できる。なお、このナガセケムテックス社製の製品は、構造式(II)〜(IV)に示されるジグリシジルエーテル化合物、すなわち、一般式(I)で表されるジグリシジルエーテル化合物(a)を含有するジグリシジルエーテル化合物であり、一般式(I)で表されるジグリシジルエーテル化合物(a)のみからなる化合物ではない。すなわち、上記市販品は、一般式(I)で表されるジグリシジルエーテル化合物(a)と他のグリシジルエーテル化合物との混合物である。
【0035】
【化3】

【0036】
【化4】

【0037】
【化5】

【0038】
また、本発明に用いる(A)銀微粒子分散体の保持主体(マトリックス)として用いるハイパーブランチポリマー(HBP)を得るための開環付加重合の出発物質(イ)には、上記の一般式(I)で表される化合物(a)の他に、上記一般式(I)で示される化合物(a)以外のグリシジルエーテル化合物を含んでいてもよい。
【0039】
(一般式(I)で示される化合物(a)以外のグリシジルエーテル化合物)
上記一般式(I)で示される化合物(a)以外のグリシジルエーテル化合物としては、下記一般式(I−2):
【0040】
【化6】

(式(I−2)中、Yは水酸基を含有しない置換基を示し、kは1以上の整数を示す。)で表される化合物(a2)、及び下記一般式(I−3):
【0041】
【化7】

(式(I−3)中、Zはエポキシ基を含有しない置換基を示し、lは1以上の整数を示す。)で表される化合物(a3)からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0042】
上記一般式(I−2)で表される化合物(a2)としては、特に限定はなく、例えば、1,2−エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、オキシラニルシクロヘキサン、グリシジルメチルエーテル、グリシジルエチルエーテル、グリシジルプロピルエーテル、グリシジルブチルエーテル、グリシジルペンチルエーテル、グリシジルヘキシルエーテル、グリシジルシクロヘキシルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、1,2:5,6−ジエポキシヘキサン、1,2:7,8−ジエポキシオクタン、が挙げられる。
【0043】
他のグリシジルエーテル化合物としては、例えば、上記以外のグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、庶糖、分解澱粉等の水酸基がグリシジルエーテル基で置換されたもの;脂肪族、芳香族、脂環族のグリシジルエーテル、グリシジルエステル、それらのEOPO(ethylene oxide and propylene oxide)付加体等が挙げられる。
【0044】
また、上記一般式(I−3)で表される化合物(a3)としては、特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、イソプロピルメチルフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、o−ヒドロキシアニソール、m−ヒドロキシアニソール、p−ヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシアニソール、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、o−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−メトキシフェノール、ヒドロキノン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、グリセリン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、が挙げられる。
【0045】
本発明に用いるハイパーブランチポリマー(HBP)を得るための開環重合が、一般式(I)で表される化合物(a)とそれ以外のグリシジルエーテル基を持つ化合物との混合物を用いて行われる場合、一般式(I)で表される化合物(a)が前記混合物全体の30質量%以上、より好ましくは、50質量%以上であることが高分岐度を保つためには、望ましい。
【0046】
本発明に用いられるハイパーブランチポリマー(HBP)を得るための出発物質(イ)として、一般式(I)で表される化合物(a)とそれ以外のグリシジルエーテル基を持つ化合物との混合物を用いて、ハイパーブランチポリマー(共重合体)を得る場合では、その混合割合を調節することにより、得られるハイパーブランチポリマーの分岐度を制御することができる。
【0047】
(塩基性触媒(ロ))
上記ハイパーブランチポリマー(HBP)を合成するには、上記一般式(I)で表される化合物(a)のみからなるグリシジルエーテル化合物(イ−1)、もしくは一般式(I)で表される化合物(a)を含むグリシジルエーテル化合物(イ−2)を出発物質(イ)として、この出発物質(イ)について、塩基性触媒(ロ)を使用した開環付加重合を行う。塩基性触媒(ロ)は水酸基に作用してエポキシ基と反応させるものであり、エポキシ基に直接作用するものではない。そのため最終的にエポキシ基を有するハイパーブランチポリマー(HBP)を得ることができる。
【0048】
塩基性触媒(ロ)としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、それらの水素化物、アルコキシド、水酸化物、アルキル化物、炭酸塩等を挙げることができる。このうち、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウム、カリウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が好ましい。
【0049】
上記ハイパーブランチポリマーの合成においては、一般式(I)で表される化合物(a)のみからなるグリシジルエーテル化合物(イ−1)、もしくは一般式(I)で表される化合物(a)を含むグリシジルエーテル化合物(イ−2)を出発物質(イ)として、この出発物質(イ)を塩基性触媒(ロ)の存在下で、付加重合(開環重合、開環付加重合ともいう。)させればよく、重合の際の条件については特に限定されない。
【0050】
使用する塩基性触媒(ロ)の配合量は、出発物質(イ)に対して、0.1〜30質量%であることが望ましく、1〜20質量%であることが好ましい。
【0051】
塩基性触媒(ロ)を導入する方法としては、反応槽に予め添加しておく方法、または連続的に反応槽に滴下する方法、または一定時間毎に分割して反応槽に滴下する方法等が挙げられる。
【0052】
開環付加重合は、溶媒の存在なしに進行するが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0053】
また、反応濃度[溶媒に対する一般式(I)で表される化合物(a)(出発物質(イ)の場合)の濃度、あるいは出発物質(イ)としてグリシジルエーテル基を有する他の化合物も同時に用いる場合、該化合物と上記一般式(I)で表される化合物(a)との合計の溶媒に対する濃度]は、1質量%〜100質量%(溶媒なし)、好ましくは、10質量%〜100質量%、より好ましくは、30質量%〜100質量%である。
【0054】
開環付加重合は、好ましくは、不活性ガス(Ar、Nなど)下にモノマー溶液と触媒を混合させる。この時、モノマー溶液は、一度に混合させても、反応系に滴下してもどちらでも良い。反応温度は、30℃〜180℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜160℃である。反応時間は0.5〜10時間、より好ましくは、1〜7時間として、重合を完結させる。
【0055】
付加重合における反応温度と反応時間の選択は、分岐度、分子量に影響する。本発明におけるエポキシ開環重合では、エポキシ基の開環により、まず、2級アルコキシドが選択的に調製し、その後、プロトン交換平衡により、1級アルコキシドへと変換される。活発なプロトン交換が、分岐度を向上させることから、迅速なプロトン交換を促し、高分岐重合体を得るためには、高温での反応(例えば、50℃以上、好ましくは80〜150℃)が望ましい。モノマーの消費が完了した後も反応温度が高い状態にあると、末端のエポキシ基が、系内の水分等によって、開環してしまう恐れがあるため、反応温度は、重合が終了した時点で速やかに室温まで低下させることが望ましい。
【0056】
重合終了後、重合物から触媒を、濾過、イオン交換、中和等によって、除去することができる。この際、必要に応じて、重合物を好適な溶媒、例えば、メタノールに溶解させる。また、引き続き、再沈によって重合物を精製しても良い。
【0057】
開環重合で得られたハイパーブランチポリマーのうち、例えば、グリセロール骨格を持つハイパーブランチポリマーは、調製物の13C−NMRを測定したところ、参考文献(Macromolecules 1999,32,4240−4246,Macromolecules 2000,33,8158−8166)に示されるように、分岐単位の三置換炭素原子に特異的な、79〜81ppmの共鳴を強く示すことから、多分岐体であることが確認できる。
【0058】
本発明において(A)銀微粒子分散体のマトリックスとして用いて好適なハイパーブランチポリマー(HBP)は、上述のように多分岐体であるので、その構造は、通常、球状である。球状構造であることの確認は、GPCで測定した重量平均分子量とMALLSで測定した絶対分子量との間が大きく異なるかどうかによって行うことができる(Frechet,M.et al.Am.Chem.Soc.1999,121,2313.;Sawamoto,et al.Macromolecules,2001,34,7629.)。
【0059】
すなわち、GPC(Shodex社製、商品名「RI−71」)測定の値及び多角度光散乱検出器:MALLS(Wyatt社製、商品名「DAWN DSP−F」)により得られる絶対分子量の値を用いて、GPC測定の値とMALLSの値との差異に応じて判断することができる。
【0060】
GPC測定の値とMALLSの値とが大きく異なる場合、球状のポリマーであると判断することができる。通常は、MALLSで測定した絶対分子量が、GPCで測定した重量平均分子量の2倍以上、好ましくは3倍以上であれば、球状構造と判断することができる。また、上限は特に規定されないが、通常は10倍以下である。
【0061】
上記重量平均分子量(Mw)および絶対分子量は、以下の測定条件によって、測定することができる。後述の実施例における測定値も、以下の測定条件によって得られたものである。
【0062】
(重量平均分子量(Mw)、絶対分子量の測定条件)
重量平均分子量と絶対分子量はゲル浸透クロマトグラフィーと多角度光散乱検出器を接続して同時に測定する。
【0063】
(測定装置)
オートサンプラー:Auto Sampler 23 (SIC システムインスツルメンツ製)
ポンプ:DS−4 (Shodex 製)
デガッサ:SD−8012 (Lab−Quatec 製)
オーブン:CO−8020 (東ソー製)
光散乱検出器(MALLS):MALLS:DAWN DSP−F(Wyatt 製)
RI検出器:RI−71 (Shodex 製)
【0064】
(溶離条件)
カラム:TSK−GEL GMPWXL + TSK−GEL G2500PWXL(東ソー製)
移動相:水/アセトニトリル=80/20 v/v(NaNO3:10mM)
カラム温度:40℃
流速:0.5 mL/min.
【0065】
(被験物質)
濃度:0.5%水溶液(分子量測定の前処理として、GLクロマトディスク13N(水系0.45μm(販売:ジーエルサイエンス(株))を透過させる。)
注入量:100 μL
【0066】
(検量線)
標準試料:PEG(分子量20,000、13,000、6,000、4,000、2,000、1,500、1,000、600、400)
【0067】
本発明において(A)銀微粒子分散体のマトリックスとして用いて好適なハイパーブランチポリマー(HBP)は、末端にエポキシ基を有し、分子内に水酸基を有する。末端とは、ポリマーを構成する分岐鎖の末端を意味する。分岐鎖には途中に−C(=O)O−(エステル結合)、−C(=O)NH−(アミド結合)、エーテル結合(−O−)などを含むアルカンから形成され、水酸基などの酸素を含む置換基を豊富に有している。
【0068】
(少なくとも1種の還元能を有する官能基を分子内に有するハイパーブランチポリマー(HBP))
本発明において、(A)銀微粒子分散体のマトリックスとして用いる上述のハイパーブランチポリマー(HBP)は、少なくとも1種の還元能を有する官能基を付与した状態で用いる。この少なくとも1種の還元能を有する官能基を付与したハイパーブランチポリマー(HBP)について以下に説明する。
【0069】
(還元能)
本発明で言う「還元能」とは、電子を付与して金属イオンを還元する性能をいう。金属イオンを還元した場合、金属単体粒子が生成する。
【0070】
(還元能を有する官能基)
また、本発明で言う「還元能を有する官能基」とは、銀イオンを還元する性能を有する官能基をいう。「還元能を有する官能基」は、銀イオンに電子を付与して還元し、自身は酸化される。
【0071】
(還元能を持つ官能基を有するハイパーブランチポリマー(HBP))
還元能を持つ官能基を有するハイパーブランチポリマー(HBP)は、以下(i)〜(iii)の3通りの方法により準備することができる。
【0072】
(i) ハイパーブランチポリマーとして合成された時点で既に「還元能を持つ部位」を有するハイパーブランチポリマーをそのまま使用する。このような自身が還元能を有するハイパーブランチポリマーとしては、主に「還元能を有する官能基」が水酸基であるものを挙げることができ、市販のものとしては、ポリエチレンイミン(関東化学社製)、ポリアミドアミンデンドリマー(シグマアルドリッチ社製)などが挙げられる。
【0073】
(ii) 自身は還元能を有さないハイパーブランチポリマーを原料とし、このハイパーブランチポリマーに、別途pH調整剤(NaOH等)を添加することで後天的に還元能を持つ官能基を付与する。
上記還元能を持つ官能基の付与方法としては、ハイパーブランチポリマー溶液にpH調整剤を添加してpH=10〜14になるように調節する方法が挙げられる。pH調整の結果、ハイパーブランチポリマーの末端水酸基がアルコキシド基に変換されることで、ハイパーブランチポリマー内に「還元能を有する官能基」が形成され、ハイパーブランチポリマー自身が還元能を有することになる。この場合のpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液等が用いられる。
【0074】
このように後天的に「還元能を有する官能基」を付与されたハイパーブランチポリマーも、本発明に用いる(A)銀微粒子分散体に使用可能である。かかるハイパーブランチポリマーとしては、市販品として、ダイセル化学工業社製の「ポリグリセリン−10(商品名)」および「ポリグリセリン−X(商品名)」、ハイパーポリマーズ社製の「PG−2(商品名)」、東栄産業株式会社製の「トップブレイン(商品名)」、シグマアルドリッチ社製の「超分岐2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸ポリエステル(商品名)」、パーストープ社製の「ボルトンH2003(商品名)」,「ボルトンH2004(商品名)」,「ボルトンH30(商品名)」,及び「ボルトンH40(商品名)」などが挙げられる。
【0075】
(iii) 自身は還元能を有さないハイパーブランチポリマーを原料とし、このハイパーブランチポリマーに、別途化合物を縮合させることで後天的に還元能を有する官能基を付与する。
【0076】
上記還元能を有する官能基の付与は、例えば、以下のようにして行うことができる。
アミノ基,スルフィド基等を導入するための化合物を、ハイパーブランチポリマーの反応部位(ヒドロキシ基、エポキシ基、イソシアネート基が例示できる)と縮合反応させることで、元来還元能を有する官能基を有さないハイパーブランチポリマーに還元能を有する官能基(NH−RやS−Rなど)を導入することができる。かかる反応の反応式を例示すると、以下のようである。
HBP−RG + R−NH → HBP−NH−R
HBP−RG + R−SH → HBP−S−R
(式中、HBPは元来還元能を持つ官能基を有さないハイパーブランチポリマー、RGはハイパーブランチポリマーの反応部位、Rは有機基を示す。)
【0077】
より具体的には、以下の化合物を縮合させることで、還元能を有する官能基(アミノ基、スルフィド基)を有するハイパーブランチポリマー(HBP)を合成することができる。
【0078】
(アミノ基)
アミノ基を導入するための化合物としては、特に限定はされず、3級アミン、2級アミン、1級アミン、その他の芳香族アミン類を使用することができる。
【0079】
上記3級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピロリジン、N−エチルピペリジン等が例示できる。
【0080】
上記2級アミンとしては、N−メチル−D−グルカミン、N−メチルアミノプロパンジオール、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、ピペリジン等が例示できる。
【0081】
上記1級アミンとしては、D−グルカミン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、t−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等が例示できる。
【0082】
上記その他の芳香族アミン類としては、アニリン、o,m,p−トルイジン、o,m,p−エチルアニリン、キシリジン、メシジン、o,m,p−クロロアニリン、クロロトルイジン、ジクロロアニリン、トリクロロアニリン、o,m,p−フルオロアニリン、o,m,p−ブロモアニリン、フルオロクロロアニリン、o,m,p−アミノフェノール、o,m,p−アミノチオフェノール、アニシジン、フェネチジン、o,m,p−アミノ安息香酸、アミノクロロフェノール、アミノベンゾニトリル、クレシジン、トルイジンスルホン酸、スルファニル酸、クロロトルイジンスルホン酸、アミノナフタレンスルホン酸、アミノベンゾトリフルオライド、アミノベンゼンスルホン酸、p−アミノアセトアニリド、ナフチルアミン、ナフチルアミンスルホン酸又はアミノナフトールスルホン酸、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−エチルトルイジン、ジフェニルアミン、ヒドロキシフェニルグリシン又はN−メチルアミノフェノールサルフェート、N,N−ジメチルアニリン、N−エチル−N−ヒドロキシエチルトルイジン、N,N−ジエチルトルイジン、N−ベンジル−N−エチルアニリン又はN,N−ジグリシジルアニリン、o,m,p−フェニレンジアミン、クロロ−p−フェニレンジアミン、クロロ−m−フェニレンジアミン、フルオロフェニレンジアミン、ジクロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、ジメチルフェニレンジアミン、クロロメチルフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、トルイレンジアミン等のフェニレンジアミン類、ベンジジン、o−トリジン、ダイアニシジン、ジクロロベンジジン等のベンジジン類、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジクロロジフェニルメタン、ジアミノジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等のジフェニルメタン類、ナフタレンジアミン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノスチルベンジスルホン酸、ジアミノフェノールジハイドロクロライド、ロイコジアミノアンスラキノン、アミノ−N,N−ジエチルアミノトルイジンハイドロクロライド又はアミノ−N−エチル−N−(β−メタンスルホンアミドエチル)−トルイジンサルフェートハイドレートが挙げられる。これらのうち、少なくとも一つ以上のアミノ基を分子内に有するものであればよい。
【0083】
(スルフィド基)
スルフィド基を導入するための化合物としては、特に限定はされず、チオール基含有化合物であるアルキルチオール類(例えば、α−チオグリセロール、メチルメルカプタン、エチルメルカプタンなど)、アリールチオール類(例えば、チオフェノール、チオナフトール、ベンジルメルカプタンなど)、アミノ酸又はその誘導体(例えば、システイン、グルタチオンなど)、ペプチド化合物(例えば、システイン残基を含むジペプチド化合物、トリペプチド化合物、テトラペプチド化合物、5以上のアミノ酸残基を含むオリゴペプチド化合物など)、又は蛋白質(例えば、メタロチオネインやシステイン残基が表面に配置された球状蛋白質など)などを挙げることができる。これらのうち、少なくとも一つ以上のスルフィド基を分子内に有するものであればよい。
【0084】
上述のように後天的に「還元能を有する官能基」を付与されたハイパーブランチポリマーも、本発明に係る金属粒子分散体に使用可能である。かかるハイパーブランチポリマーとしては、市販品として、上記(ii)で挙げた製品を挙げることができ、ポリ(グリセロール−1,3−ジグリシジルエーテル)誘導体も使用することができる。
【0085】
(銀イオン)
本発明に用いる(A)銀微粒子分散体に用いることのできる銀イオンの供給源としては、銀の硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナート塩、過塩素酸塩、有機酸塩などが挙げられる。
【0086】
(銀イオンを含む溶液(S−Ag)の溶媒)
上記銀イオンは溶液中に存在させるが、この溶液の溶媒としては、水、アルコール類などの極性溶媒が主に用いられるが、銀が溶解する溶媒であれば、非極性溶媒も使用可能である。上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールを挙げることができ、その他の極性溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アセトン、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等を挙げることができる。
【0087】
(保護基)
保護基とは、銀イオンが還元されて生成した銀微粒子の分散安定性を向上させる原子団をいう。保護基はハイパーブランチポリマーの末端官能基に保護基導入化合物を縮合させることで導入できる。
【0088】
(保護基導入化合物)
保護基としてハイパーブランチポリマーの末端官能基に縮合する化合物としては、例えば、ヒドロキシ基、ケトン基、アセチル基、アルデヒド基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、硝酸エステル基、リン酸エステル基、アミド基、チオアミド基、イミド基、アミジン基、アミノ基、シアノ基、オキシム基、チオール基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホン酸基、ウレア基、ウレタン基、ニトロ基、エーテル基等を挙げることができる。
【0089】
さらに具体的には、上記ヒドロキシ基としては、例えば、グリシドール、グリセリンが挙げられ、上記エーテル基としては、グリシドール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが挙げられ、上記カルボキシル基としては、クエン酸などのカルボン酸類、カルボン酸無水物類が挙げられる。
【0090】
なお、還元能を有する官能基としてアミノ基、スルフィド基などの保護基としての機能も併せ持つ官能基が既に付与されている場合には、特に保護基を導入する必要はない。
【0091】
((A)銀微粒子分散体の含有量)
(A)銀微粒子分散体の含有量は、除菌力、保存安定性の点から、洗浄剤組成物全量に対して、10.0〜1000ppmとすることが望ましく、さらに好ましくは50.0〜300ppmとすることが望ましい。この含有量が10.0ppm未満では十分な除菌力が得られず、また、1000ppmを超えると沈殿物が生じるなど安定性に問題がある。
【0092】
((A)銀微粒子分散体中の銀微粒子の粒径)
(A)銀微粒子分散体中の銀微粒子の粒径は、下記のようにして測定することができるが、還元能を有する官能基を持つハイパーブランチポリマー(HBP)内に導入される銀イオン量、ハイパーブランチポリマー(HBP)内部の微細な空間の構造、ハイパーブランチポリマー(HBP)内の官能基の種類や該官能基の修飾密度、還元反応を生じさせる温度、時間などのファクターによって、大きく異なってくるので、一義的に記載することはできない。
【0093】
((A)銀微粒子分散体中の銀微粒子の粒径の測定条件)
銀微粒子内包型ハイパーブランチポリマー(HBP−Ag)水溶液(サンプル)を、TEM観察用マイクログリッドに滴下し、3日間真空乾燥後、ポリマー中に生成している銀微粒子のTEM観察を行う。得られたTEM画像より、画像解析ソフトを用いて銀微粒子の粒径を測定する。粒径の測定はN=200で行う。また、その結果から標準偏差σを算出する。平均粒子径Rと標準偏差σから、以下の一般式:
分散度K=(標準偏差σ)/(平均粒径R)
を用いて分散度Kを定義し、それぞれのサンプルについて分散度Kを算出する。
【0094】
(TEM観察に用いる測定装置)
TEM:日立H−7600(日立ハイテクノロジー社製)
TEM観察用マイクログリッド:STEM−150 Cuグリッド,タイプB(普及品),カーボン補強済(応研商事社製)
画像解析ソフト:Scion Image(米国サイオンコーポレイション社製)
【0095】
((B)界面活性剤)
本発明に用いることのできる(B)界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、半極性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。また、これらは単一または2種以上混合してもかまわない。
【0096】
陰イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルフェノキシフェニルジスルホン酸塩、脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、エーテルカルボン酸塩、リン酸アルキル塩、リン酸アルキルポリオキシエチレン塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル塩、アルケニルコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルメチルタウリン塩等が挙げられる。また、これらは単一または2種以上混合してもかまわない。
【0097】
陰イオン性界面活性剤としては、好ましくはアルキル(C10〜14)ベンゼンスルホン酸塩、第2級アルカン(C14〜17)スルホン酸塩、アルキル(C12〜14)ポリオキシエチレン硫酸塩(EO平均付加モル数1〜5)、α-オレフィンスルホン酸塩(C12〜14)、アルキル(C10〜12)フェノキシフェニルジスルホン酸塩である。また、これらのアニオン性界面活性剤の対イオン(陽イオン) は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルカノールアミンイオン、アンモニウムイオン等であり、好ましくはナトリウムイオンである。
【0098】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン(C2〜C4)アルキルエーテル(EO平均付加モル数=3〜20)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(EO平均付加モル数=3〜20)、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ポリグリセリンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、脂肪酸アルカノールアミドなどが挙げられる。また、これらは単一または2種以上混合してもかまわない。
【0099】
ノニオン性界面活性剤としては、好ましくは炭素数12の直鎖アルコールのポリオキシエチレン付加物(EO平均付加モル数3〜20)、2−エチルヘキシルポリグリコキシドである。
【0100】
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルアミノプロピオン酸、脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸ジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン、N−アルキルアミノ酸などが挙げられる。好ましくはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタインである。これらは単一または2種以上の混合物でも良い。
【0101】
半極性を有する界面活性剤の具体例としては、例えば、アルキルアミンオキシド、アルキルアミドプロピルアミンオキシドなどが挙げられる。好ましくはn−ドデシルジメチルアミンオキシドである。
【0102】
陽イオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等である。これらカチオン界面活性剤の対イオン(陰イオン)は、ハロゲンイオンなどである。これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0103】
本発明に用いる(B)界面活性剤としては、皮脂汚れ、油汚れに対する洗浄力が良好であることから、アルキル(C10〜14)ベンゼンスルホン酸塩、第2級アルカン(C14〜17)スルホン酸塩、アルキル(C12〜14)ポリオキシエチレン硫酸塩(EO平均付加モル数1〜5)、α-オレフィンスルホン酸塩(C12〜14)、アルキル(C10〜12)フェノキシフェニルジスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(C2〜C4)アルキルエーテル(EO平均付加モル数=3〜20)、アルキルポリグリコシド、アルキルアミンオキシド、脂肪酸アミドプロピルベタイン、脂肪酸ジメチルアミノ酢酸ベタインがより好ましく、アルキル(C10〜14)ベンゼンスルホン酸塩、第2級アルカン(C14〜17)スルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(C2〜C4)アルキルエーテル(EO平均付加モル数=3〜20)がさらに好ましい。
【0104】
(B)界面活性剤としては、具体的には、アルキル(C12〜14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(ライオン株式会社製「ライポンLH−200」)、第2級アルカン(C14〜17)スルホン酸ナトリウム(クラリアントジャパン(株)製「HOSTAPUR SAS 30A」)、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C10)(ライオン株式会社製、商品名「リポランLB−440」)、ポリオキシエチレンアルキル(C12〜14)エーテル硫酸ナトリウム(EO平均付加モル数=3):(ライオン株式会社製「サンノールLMT-1430」)、アルキル(C10〜12)フェノキシフェニルジスルホン酸ナトリウム:(DOWFAX社製「DOWFAX2A1」)、ポリオキシエチレンアルキル(C12)エーテル(EO平均付加モル数=15):(ライオン化学(株)製「LAO−90」)、2−エチルヘキシルポリグリコシド(ライオンアクゾ(株)製「AG6202」)、n−ドデシルジメチルアミンオキシド(ライオンアクゾ(株)製「AX剤」)、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:三洋化成工業(株)製「レボンLD−36」、 ラウリン酸アミドプロピルベタイン:一方社油脂工業(株)製「エナジコールL−30B」が挙げられる。
【0105】
((B)界面活性剤の含有量)
本発明に用いる(B)界面活性剤の含有量は、洗浄力、保存安定性の点から、洗浄剤組成物全量に対して、0.5〜15.0質量%(以下、単に「%」という) 、更に好ましくは、1.0〜8.0%とすることが望ましい。この界面活性剤の含有量が0.5%未満では十分な洗浄力が得られず、また、15.0%超過では、沈殿物が生じるなど安定性に問題が発生する懸念が生じ、また洗浄力の向上も見られず不経済である。
【0106】
(その他の成分)
本発明の硬表面洗浄剤組成物には、上記(A)銀微粒子分散体および(B)界面活性剤以外に必要に応じて、任意に、通常添加される添加剤等を使用してもよい。このようなその他の成分としては、以下に例示する溶剤、香料や、その他公知の水溶性高分子、安定化剤、天然抽出物、色素などを挙げることができる。
【0107】
(溶剤)
本発明には、成分の溶解等の目的により、溶剤を適宜配合することができる。溶剤の具体例としては、水の他、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、アルキルグリセリルエーテル、フェノキシエタノール等が挙げられる。なかでも特に、成分の溶解効果の点から、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEMB)が好ましく選ばれる。その含有量は、組成物の全量を基準として1〜15%とするのが好ましい。1%未満では保存安定性が好ましくなく、15%以上では基剤臭が強く好ましくない。溶剤は、単独または2種以上を用いてもよい。
【0108】
(香料)
本発明には、賦香等の目的により、香料を適宜配合することができる。
香料成分は、特に限定するものではないが、具体例としては、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、芳香族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、水素化芳香族アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系芳香族ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物等々の合成香料および植物からの天然香料を挙げることができる。香料成分は、単独または2種以上を用いてもよく、通常複数が用いられる。
【実施例】
【0109】
以下に、本発明にかかる硬表面用液体洗浄剤組成物の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例により本発明が限定されるものではない。
【0110】
まず、以下の実施例および比較例で使用する各成分の調製方法を以下に示す。各成分の配合量(質量%)は純分換算値である。また、成分の重量平均分子量、絶対分子量は、先に説明した(重量平均分子量(Mw)、絶対分子量の測定条件)にしたがって求めた。また、銀微粒子の粒径は、先に説明した((A)銀微粒子分散体中の銀微粒子の粒径の測定条件)および(TEM観察に用いる測定装置)により求めた。
【0111】
((A)銀微粒子分散体)
(ポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)の合成)
攪拌機、環流冷却器および窒素導入管を取り付けた300mLの4つ口セパラブルフラスコに、グリセロールジグリシジルエーテル100g、炭酸カリウム15gを入れ、攪拌しながら、窒素導入管を介して4つ口セパラブルフラスコ内に窒素ガスを導入した。つづいて、窒素ガスが導入された4つ口セパラブルフラスコを、140℃のオイルバスで300分加温した。加温した後、反応混合物をメタノールに溶解させ、濾過により固形分を除去した後、溶媒を留去することで、粘性液体のポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)を得た。
【0112】
得られたポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)のGPCによる換算分子量(重量平均分子量)は6000、MALLSによる絶対分子量は28000であり、MALLSによる絶対分子量の値がGPCによる重量平均分子量の値の4.7倍であった。このGDGEは、先に説明した概略構造式(1)で表されるハイパーブランチポリマー(HBP)である。
【0113】
(還元能を持つ官能基としてアルコキシド基が付与されたハイパーブランチポリマー(HBP−1a)の合成)
ここで、合成する還元能を持つ官能基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1a)は、下記式(1a)に示すハイパーブランチポリマー(HBP−1a)を、先に記載したように、pH調整剤(NaOH等)を添加することで分子内水酸基をアルコキシド基に変換させたものである。なお、式(1a)において、GDGEは、先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテルである。
【0114】
【化8】

先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)100gに超純水100gを加え溶解した。ここへ1%硫酸20gを氷浴中でゆっくり滴下し、滴下終了後、1時間室温で攪拌した。この過程で、エポキシド基は開環し、水酸基に変換される。攪拌終了後、1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和し、pHを7付近に調整した。
【0115】
得られた反応液を透析膜へ移し、イオン交換水にて3日間透析を行った。透析後、イオン交換水をエバポレーターで留去し、式(1a)で示されるハイパーブランチポリマー(HBP−1a)を得た。次いで、ハイパーブランチポリマー(HBP−1a)の分子内に、還元能を持つアルコキシド基を付与するため、再度、(HBP−1a)を水溶液にし、そこへさらに苛性ソーダを加えてアルカリ性にすることで、還元能を持つアルコキシド基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1a)を得た。
【0116】
得られたハイパーブランチポリマー(HBP−1a)の還元能を有する官能基はアルコキシド基であり、また、GPCによる換算分子量(重量平均分子量)は7500、MALLSによる絶対分子量は31000であり、MALLSによる絶対分子量の値がGPCによる重量平均分子量の値の4.1倍であった。
【0117】
(還元能を持つ官能基としてアミノ基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1b)の合成)
ここで、合成する還元能を持つ官能基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1b)は、下記式(1b)に示すポリマーである。式(1b)において、GDGEは、先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテルである。
【0118】
【化9】

先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)20gをメタノール10gに溶解し、ジエチルアミン(還元能を有する官能基導入成分)3.6gを加え、65℃還流条件下18時間加熱攪拌をした。得られた反応物からエバポレーターにより溶媒留去し、透析膜へ移しイオン交換水にて3日間透析を行った。透析後、イオン交換水をエバポレーターで留去し、ジエチルアミノ−ハイパーブランチポリグリセリン(ハイパーブランチポリマー(HBP−1b)を得た。
【0119】
得られたハイパーブランチポリマー(HBP−1b)の還元能を有する官能基はアミノ基であり、また、GPCによる換算分子量(重量平均分子量)は13000、MALLSによる絶対分子量は49000であり、MALLSによる絶対分子量の値がGPCによる重量平均分子量の値の3.8倍であった。
【0120】
(還元能を持つ官能基としてスルフィド基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1c)の合成)
ここで、合成する還元能を持つ官能基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1c)は、下記式(1c)に示すハイパーブランチポリマーである。式(1c)において、GDGEは、先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテルである。
【0121】
【化10】

先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)20gをメタノール7.2gに溶解し、A液とした。また、αチオグリセロール(還元能を持つ部位導入成分+保護基形成成分)5.2gをカリウムメトキシド(28%メタノール溶液)1.2gに溶解し、アルゴン雰囲気にて常温常圧下、1時間攪拌し、これをB液とした。
【0122】
上記A液にB液をゆっくり滴下して添加し、65℃還流条件下18時間過熱攪拌をした。得られた反応物からエバポレーターにより溶媒留去し、透析膜へ移しイオン交換水にて3日間透析を行った。透析後、イオン交換水をエバポレーターで留去し、チオグリセロール−ハイパーブランチポリグリセリン(ハイパーブランチポリマー(HBP−1c)を得た。
【0123】
得られたハイパーブランチポリマー(HBP−1c)の還元能を有する官能基はスルフィド基であり、また、GPCによる換算分子量(重量平均分子量)は12000、MALLSによる絶対分子量は65000であり、MALLSによる絶対分子量の値がGPCによる重量平均分子量の値の5.4倍であった。
【0124】
(還元能を持つ官能基としてアミノ基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1d)の合成)
ここで、合成する還元能を持つ官能基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1d)は、下記式(1d)に示すハイパーブランチポリマーである。式(1d)において、GDGEは、先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテルである。
【0125】
【化11】

先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)10gをメタノール10gに溶解し、N−メチル−D−グルカミン(還元能を持つ部位導入成分+保護基形成成分)4.8g、テトラブチルアンモニウムブロミド(縮合触媒)0.16gを加え、65℃還流条件下18時間加熱攪拌をした。得られた反応物からエバポレーターにより溶媒留去し、透析膜へ移しイオン交換水にて3日間透析を行った。透析後、イオン交換水をエバポレーターで留去し、メチルグルカミン−ハイパーブランチポリグリセリン(ハイパーブランチポリマー(HBP−1d))を得た。
【0126】
得られたハイパーブランチポリマー(HBP−1d)の還元能を有する官能基はアミノ基であり、また、GPCによる換算分子量(重量平均分子量)は13000、MALLSによる絶対分子量は69000であり、MALLSによる絶対分子量の値がGPCによる重量平均分子量の値の5.3倍であった。
【0127】
(還元能を持つ官能基としてアミノ基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1e)の合成)
ここで、合成する還元能を持つ官能基を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1e)は、下記式(1e)に示すポリマーである。式(1e)において、GDGEは、先に示した構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテルである。
【0128】
【化12】

先に示した概略構造式(1)で表されるポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)30gをメタノール32mLに溶解し、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール(還元能を持つ部位導入成分+保護基形成成分)7.7g、テトラブチルアンモニウムブロミド(縮合触媒)0.47gを加え、65℃還流条件下18時間加熱攪拌をした。得られた反応物からエバポレーターにより溶媒留去し、透析膜へ移しイオン交換水にて3日間透析を行った。透析後、イオン交換水をエバポレーターで留去し、メチルアミノプロパンジオール−ハイパーブランチポリグリセリン(ハイパーブランチポリマー(HBP−1e))を得た。
【0129】
得られたハイパーブランチポリマー(HBP−1e)の還元能を有する官能基はアミノ基であり、また、GPCによる換算分子量(重量平均分子量)は22000、MALLSによる絶対分子量は154000であり、MALLSによる絶対分子量の値がGPCによる重量平均分子量の値の7.0倍であった。
【0130】
(銀微粒子分散体(A−1a)〜(A−1e)の合成)
前記還元能を有する官能基(アルコキシド基、アミノ基、スルフィド基)を有するハイパーブランチポリマー(HBP−1a)〜(HBP−1e)の各1質量%水溶液5mL(1aのみはアルカリ性)に硫酸銀水溶液(銀イオン濃度として0.1質量%)5mLを加え、室温で3時間攪拌し,銀微粒子分散(A−1a)〜(A−1e)の各水溶液を得た。
【0131】
こうして得た銀微粒子分散体溶液中の最終的な濃度は、銀粒子分散体(A−1b)の場合を例にすると、ハイパーブランチポリマー(HBP)の濃度が0.5質量%、銀微粒子の含有濃度が0.05質量%となる。すなわち、銀微粒子分散体溶液中の固形分(HBP+銀微粒子)の濃度は、0.55質量%、即ち5500ppmである。
この場合、すなわち、ハイパーブランチポリマー(HBP−1b)を例にすると、ハイパーブランチポリマー(HBP−1b)の還元能を有する官能基の濃度は、計算上5mM、銀イオンは4.6mMであり、反応機構としては(アミノ基1モル)対(銀イオン1モル)の酸化還元反応であるので、銀イオンはすべて還元されていると考えられる。同様に他のハイパーブランチポリマー(HBP−1a)、(HBP−1c)〜(HBP−1e)を用いた銀粒子分散体(A−1a)、(A−1c)〜(A−1e)においても、銀イオンは全て還元されていると考えられる。
【0132】
銀微粒子の生成については目視により、即ち、銀微粒子が生成したことに起因する表面プラズモン吸収に基づき、溶液が黄色に変化することで銀微粒子の生成を確認した。
【0133】
(銀粒子分散体(A−1a)〜(A−1e)中に生成した銀微粒子の平均粒径と分散度)
先に説明した測定装置および測定方法を用いて、銀粒子分散体(A−1a)〜(A−1e)中に生成した銀微粒子の平均粒径と分散度を求めた。その結果を以下に示す。
銀粒子分散体(A−1a)中の銀微粒子:平均粒径12nm、粒子分散度(K)0.29
銀粒子分散体(A−1b)中の銀微粒子:平均粒径16nm、粒子分散度(K)0.36
銀粒子分散体(A−1c)中の銀微粒子:平均粒径2nm、粒子分散度(K)0.29
銀粒子分散体(A−1d)中の銀微粒子:平均粒径4nm、粒子分散度(K)0.23
銀粒子分散体(A−1e)中の銀微粒子:平均粒径8nm、粒子分散度(K)0.28
【0134】
((B)界面活性剤)
(B)界面活性剤として、下記10種の界面活性剤(B1)〜(B10)を用意した。
(B1):アルキル(C12〜C14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(ライオン株式会社製「ライポンLH−200」)
(B2):第2級アルカン(C14〜C17)スルホン酸ナトリウム(クラリアントジャパン(株)製「HOSTAPUR SAS 30A」)
(B3):α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(C10)(ライオン(株)製、商品名「リポランLB−440」)
(B4):ポリオキシエチレンアルキル(C12〜C14)エーテル硫酸ナトリウム(EO平均付加モル数=3):(ライオン(株)製「サンノールLMT-1430」)
(B5):アルキル(C10〜12)フェノキシフェニルジスルホン酸ナトリウム:DOWFAX社製「DOWFAX2A1」)
(B6):ポリオキシエチレンアルキル(C12)エーテル(EO平均付加モル数=15):(ライオン化学(株)製「LAO−90」)
(B7):2−エチルヘキシルポリグリコシド(ライオンアクゾ(株)製「AG6202」)
(B8):ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:三洋化成工業(株)製「レボンLD−36」
(B9):ラウリン酸アミドプロピルベタイン:一方社油脂工業(株)製「エナジコールL−30B」
(B10):n−ドデシルジメチルアミンオキシド(ライオンアクゾ(株)製「AX剤」)
【0135】
(共通成分)
共通成分として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(シェルケミカルズジャパン(株)製「ブチルジオキシトール(BDG)95%」を用意した。
【0136】
(pH調整剤)
下記実施例及び比較例で調製する液体洗浄剤組成物のpHをすべて7.5に統一したが、その調整にpH調整剤として、硫酸(試薬)、水酸化ナトリウム(試薬)を用いた。使用量は微量である。
【0137】
(実施例1〜24)
上述の銀微粒子分散体(A−1a)〜(A−1e)と、界面活性剤(B1)〜(B10)、および共通成分(全ての例で配合量は10質量%に統一して使用した)を、水を溶剤として、下記(表1)〜(表6)に示す組成比にしたがって、24種の硬表面用液体洗浄剤組成物(実施例1〜24)を調製した。なお、各表中の銀微粒子分散体(A−1a)〜(A−1e)の配合量(ppm)は、配合した各銀微粒子分散体溶液中の固形分(HBP+銀微粒子)の液体洗浄剤全量に対する含有量である。
【0138】
(比較例1〜4)
銀微粒子分散体(B1)、硫酸銀(本発明の(B)成分の比較品)、および共通成分(全ての例で配合量は10質量%に統一して使用した)を、水を溶剤として、下記(表7)に示す組成比にしたがって、4種の硬表面用液体洗浄剤組成物(比較例1〜4)を調製した。
【0139】
上記実施例1〜24、および比較例1〜4で得られた各硬表面用液体洗浄剤組成物の性能(洗浄力、殺菌力、および安定性)を、下記各評価方法を用いて、評価した。評価結果は、下記(表1)〜(表7)に併記した。
【0140】
(洗浄力)
牛脂:大豆油=1:1に調整した汚垢1gをスライドガラスに付け、各例の液体洗浄剤組成物溶液50mLに含浸した際の洗浄力を目視により下記評価基準に従って評価した。
硬表面液体洗浄剤組成物における実際に必要な洗浄力から判断すると、下記評価基準の5点以上が合格である。
(評価基準)
除去率100% :10点
除去率90%以上100%未満: 9点
除去率80%以上90%未満 : 8点
除去率70%以上80%未満 : 7点
除去率60%以上70%未満 : 6点
除去率50%以上60%未満 : 5点
除去率40%以上50%未満 : 4点
除去率30%以上40%未満 : 3点
除去率20%以上30%未満 : 2点
除去率20%未満 : 1点
【0141】
(殺菌力)
下記方法に従って測定した。
(1)対照試料の調製
0.05%のポリソルベート(Tween80)を高圧蒸気滅菌したものを用いた。
(2)試験用菌液の調製
黄色ブドウ球菌、大腸菌をTSA(Triptic Soy Agar)培地に接種し、37℃、18〜20時間、前々培養する。次いで、この菌をTSA培地に接種して、37℃、18〜20時間、前培養した後、滅菌した1/2NB(Nutrient Broth)培地を用い、10CFU/mLになるように調製した。
(3)モデル汚れの作成
牛血清アルブミン(Cohn FractionV)を用いて、30 g/Lの濃度の牛血清アルブミン水溶液を調製する。この水溶液はろ過殺菌して試験に供する。牛血清アルブミン水溶液は試験の直前に調製し、試験日当日のみの使用とした。
(4)不活性化剤の調製
ポリペプトン、レシチン、ポリソルベートの混合物(「LP希釈液ダイゴ(商品名)」、日本製薬(株)製)30gを精製水1Lに加温溶解し、高圧蒸気滅菌したものを用いた。
(5)試験管の滅菌
180℃、1時間にて乾熱滅菌を行った。
(6)試験方法
(6-1)滅菌した試験管に、試験用菌液を0.1mL、モデル汚れ0.1mLを添加した。
(6-2)上記(6-1)の試験管に、評価試料または対照試料を0.8mL加え、さらに水道水を9mL加え、撹拌後静置した。
(6-3)10分静置後、撹拌して1mL採取し、不活性化剤が9mL入った滅菌試験管に添加して撹拌した。
(6-4)混釈培養法にて、上記(6-3)の試験管をTSA培地に塗布し、37℃、36〜48時間培養後、菌数を求めた。
(6-5)対照試料のLog菌数値から評価試料のLog菌数値を差し引き、除菌活性値を求めた。
なお、本実験で用いた水道水の残留塩素濃度は0.4mg/Lであり、DPD法(残留塩素測定器(SIBATA製))にて測定した。
得られた測定値に基づいて下記評価基準により評価した。実用的には、下記評価基準の「可」以上が合格である。
(評価基準)
除菌活性値6以上 :優
除菌活性値4以上6未満:良
除菌活性値2以上4未満:可
除菌活性値2未満 :不可
【0142】
(安定性)
50℃の恒温槽に1ヶ月間静置した後、目視にて下記評価基準に基づいて評価した。実用的には、下記評価基準の「可」以上が合格である。
(評価基準)
沈殿析出なし、変色なし :優
沈殿析出なし、わずかに変色あり :良
わずかに濁りあり、わずかに変色あり:可
沈殿析出あり :不可
【0143】
【表1】

上記(表1)に表示の実施例1〜5では、(A)成分として銀微粒子分散体A−1aを用い、その配合量を変化させている。この(表1)から分かるように、(A)成分の含有量(固形分濃度)が、洗浄剤組成物全量に対して10〜1000ppmの範囲内にあれば、洗浄力、除菌力、および保存安定性において、合格(可以上)範囲内の品質が得られることが分かる。
【0144】
【表2】

上記(表2)に表示の実施例6〜9では、(A)成分である銀微粒子分散体の種類を変化させている。この(表2)から分かるように、本発明に用いるハイパーブランチポリマー(HBP)の範囲内のものであれば、ハイパーブランチポリマー(HBP)の種類に関係なく、良好な特性の硬表面用液体洗浄剤組成物が得られることが分かる。
【0145】
【表3】

【0146】
【表4】

【0147】
【表5】

上記(表3)〜(表5)に表示の実施例10〜21では、(B)成分の種類と配合量を変化させている。これらの(表3)〜(表5)から分かるように、本発明に特有の(A)成分を用いることにより、組み合わせる界面活性剤の種類にかかわらず、良好な特性が得られることが分かる。また、これらの表から、(B)界面活性剤の内、より好ましい組み合わせとしては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが選択され得ることが分かる。
【0148】
【表6】

上記(表6)に表示の実施例22〜25では、(B)成分として界面活性剤B1を用い、その配合量を変化させている。この(表6)から分かるように、(B)成分の含有量(純分濃度)が、洗浄剤組成物全量に対して0.5〜15.0質量%の範囲内にあれば、洗浄力、除菌力、および保存安定性において、合格(可以上)範囲内の品質が得られることが分かる。
【0149】
【表7】

(表7)に示すように、比較例1は、実施例1の組成から(B)界面活性剤を除去した組成である。(A)銀微粒子分散体A−1aを有しているが、黄色ブドウ球菌および大腸菌に対する除菌力は界面活性剤による硬表面の洗浄作用と合わさって働かない、即ち、相乗的に効果を発揮できないため、除菌力が幾分低下している。比較例2および4は、(A)成分の比較品と(B)界面活性剤を有する構成であるが、本発明の必須成分である(A)銀微粒子分散体を用いていないため、除菌力において大きく劣る結果となっている。比較例3は、有効成分が(B)界面活性剤のみであるので、洗浄力はあるものの、除菌力がない結果となっている。
【産業上の利用可能性】
【0150】
以上のように、本発明にかかる硬表面用液体洗浄剤組成物は、浴室、トイレ、キッチンなどの硬表面の皮脂、油汚れに対して優れた洗浄力を有するとともに、洗浄中に水道水と接触した場合においてもグラム陽性菌、グラム陰性菌に対する高い除菌力を有し、且つ保存安定性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銀微粒子分散体と、(B)界面活性剤を含有する硬表面用液体洗浄剤組成物であって、前記(A)銀微粒子分散体が、アルコキシド基、スルフィド基、アミノ基から選ばれる少なくとも1種の還元能を有する官能基を分子内に有するハイパーブランチポリマー(HBP)と銀イオンを含む溶液(S−Ag)とが混合されることにより、前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に誘導された銀イオンが前記官能基により還元されて前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に多数の銀微粒子が形成されてなる銀微粒子内包型ハイパーブランチポリマー(HBP−Ag)の透明水溶液であることを特徴とする硬表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記ハイパーブランチポリマー(HBP)が、グリシジルエーテル化合物を塩基性触媒の存在下で付加重合させることにより得られるポリグリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)の分子内に、アルコキシド基、スルフィド基、アミノ基から選ばれる少なくとも1種の還元能を有する官能基を付与させたものであることを特徴とする請求項1に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記ハイパーブランチポリマー(HBP)内に生成する銀微粒子の透過型電子顕微鏡観察に基づく平均粒径が、直径1nm以上100nm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記(A)銀微粒子分散体の含有量が、洗浄剤組成物全量に対して、質量百万分率として10〜1000ppmであり、前記(B)界面活性剤の含有量が、洗浄剤組成物全量に対して、0.5〜15.0質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬表面用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2011−225722(P2011−225722A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97004(P2010−97004)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】