説明

硬貨入出金機構及び自動取引機

【課題】硬貨に最適な振動を付与する構造を簡素化して低コスト化を図り、しかも拡縮する羽根車を用いることにより硬貨に振動を効率よく伝達させて硬貨を受皿の底面まで確実に滑り落とすことができる信頼性の高い硬貨入出金機構及び自動取引機を提供する。
【解決手段】凹形保持壁の一部に独立して形成され、該独立した一保持壁の硬貨非接触面側に備えられた揺動支持部により該一保持壁を揺動自由に支持した揺動壁と、前記揺動壁と対向する位置に回転軸を設置し、該回転軸上に備えられ、該回転軸の回転に伴って生じる遠心力で該回転軸を中心に収縮した状態から略放射状態に広がる1枚以上の柔軟な羽を備えた羽根車と、前記回転軸を回転させて前記羽根車を回転させる駆動機構とを備え、前記羽根車の羽先が回転中に前記揺動壁を間欠的に叩く位置に該羽根車を配置して硬貨入出金機構を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、現金自動取引装置や券売機等に内蔵されるような硬貨入出金機構に関し、さらに詳しくは一括硬貨処理を必要とする際に用いられる硬貨入出金機構及び自動取引機に関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨入出金機構の構成例として硬貨受入口に凹形の回転ドラムを備え、この回転駆動する際に駆動ギアに一定以上の負荷が加わると、回転支軸上に備えたレバーが前記硬貨受入口の回転ドラムを反回転方向に押し戻す負荷が加わり、この押し戻そうとする動きにより回転ドラムを振動させ、回転ドラム内の硬貨に振動を与えている。この振動により残留するおそれのある硬貨を確実に放出するようにした硬貨処理装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、放出口を開閉する放出口シャッタの開閉に連動して加振する加振手段を構成し、この加振手段によって補充硬貨収納部内の硬貨に振動を与えて硬貨が下方に滑り落ちるようにしている。これにより、補充硬貨収納部内の硬貨を放出口に下降傾斜させて硬貨の残留を防止するようにした循環式硬貨入出金機が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−320112号公報
【特許文献2】特開2006−209345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらは一度に複数枚の硬貨を投入させ、また一度に複数枚の硬貨を払い出させる一括硬貨処理を可能とした入出金口を備えている。この入出金口は複数枚の硬貨の一括取り出しに適した半円形状の受皿を内部底面に有している。そして、入出金口に投入された複数枚の硬貨や払い出すための複数枚の硬貨を受皿の底面に集め、これらの硬貨を受皿の凹部底面に集めた状態で検知手段により硬貨の有無を検知する構成を有している。これにより、入金処理時に硬貨取り込み不良で残留した硬貨、あるいは出金処理時にエンドユーザが取り忘れた硬貨の残留を検知している。
【0006】
しかし、硬貨を受皿の底面に集めることは硬貨が自重により受皿の表面を滑り落ちることを期待したものであり、受皿の傾斜角度が緩やかな場合や受皿の表面が硬貨粉などで汚れ、摩擦力が大きくなった場合には硬貨が滑り落ちてこないことがある。また、傷が付いた引っ掛かりやすい硬貨、変形した硬貨、濡れた硬貨などが投入された場合は、受皿表面との間に摩擦力が変わり、滑り落ちてこないことがある。
【0007】
このため、受皿を振動させることや、受皿自体を叩いて硬貨を滑り落とさせる構成となっているが、受皿全体を振動させるため振動機構自体が複雑な構成となり、また高価となっていた。この種の振動発生構造は、もともと振動し難い固定物を振動させることから接触度合いによっては大きな衝撃を与えてしまい必要以上の強振動や高騒音を発生させたり、僅かの衝撃しか与えられない接触不良を発生させたりすることがあった。
【0008】
したがって、振動される側と振動を付与する側との位置関係を高精度に設定する必要があり、このために振動付与設定に際しては機器毎の寸法誤差に応じた位置調整が必要になることから位置調整が難しく熟練を要していた。例えば、外周に凹凸面を備えた回転体や偏心回転体の回転により振動対象物となる回転ドラムや受皿を叩くことが考えられるが、これらは位置関係を高精度に設定する必要があり、取り付けが難しくなる。特に、回転体が停止した際に、その停止位置によっては回転体の外周面凸部が対向する振動対象物に強接触した位置で回転停止することがあり、その場合は回転抵抗が大きくなって回転不能になるおそれがある。
【0009】
また、1円硬貨や500円硬貨など重量の異なる金種別硬貨に応じた振動量に設定変更するような場合には、その都度、高精度の位置調整を要して手間がかかり所望の振動量に容易に切り替えられない問題を有していた。
【0010】
そこでこの発明は、振動付与構造を簡素化し、しかも拡縮する羽根車の接触作用により硬貨に最適な振動を効率よく伝達させることができる信頼性の高い硬貨入出金機構及び自動取引機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、入出金口から投入された入金硬貨と入出金口から払い出す出金硬貨を一時的に保持する凹形状の保持空間を備え、該保持空間とその下方の装置内部とを通じさせる底面開口部を備えた凹形保持壁と、前記凹形保持壁の底面開口部を閉じる閉鎖位置と該閉鎖位置より退避して前記底面開口部を開放させる退避位置とに移動する受皿とを備え、前記受皿を前記閉鎖位置に移動させたとき、前記保持空間内から硬貨が落下するのを規制し、前記受皿を前記退避位置へと移動させたとき、前記保持空間内の硬貨を前記底面開口部から落下させて装置内部に取り込む硬貨入出金機構であって、前記凹形保持壁の一部に独立して形成され、該独立した一保持壁の硬貨非接触面側に備えられた揺動支持部により該一保持壁を揺動自由に支持した揺動壁と、前記揺動壁と対向する位置に回転軸を設置し、該回転軸上に備えられ、該回転軸の回転に伴って生じる遠心力で該回転軸を中心に収縮した状態から略放射状態に広がる1枚以上の柔軟な羽を備えた羽根車と、前記回転軸を回転させて前記羽根車を回転させる駆動機構とを備え、前記羽根車の羽先が回転中に前記揺動壁を間欠的に叩く位置に該羽根車を配置して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、硬貨に最適な振動を付与する構造を簡素化して低コスト化を図り、しかも拡縮する羽根車を用いることにより硬貨に振動を効率よく伝達させて硬貨を受皿の底面まで確実に滑り落とすことができる信頼性の高い硬貨入出金機構及び自動取引機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】硬貨入出金機構を備えた現金自動取引装置の概略斜視図。
【図2】硬貨入出金機構の概略構成図。
【図3】受皿振動機構を備えた入出口部の概略図。
【図4】羽根車の非回転状態を示す拡大説明図。
【図5】羽根車が回転した際に羽先が振動板レバーに当った振動付与状態を示す拡大説明図。
【図6】羽根車が回転した際に羽先が振動板レバーに当っていない振動無付与状態を示す拡大説明図。
【図7】硬貨入出金機構の制御ブロック図。
【図8】金種別硬貨に応じた羽根車の回転速度を示す図表。
【図9】取引経過時間別に応じた羽根車の回転速度を示す図表。
【図10】受皿振動機構を入出金口内の手前側と奥側とに備えた概略構成図。
【図11】受皿振動機構を入出金口内の手前側に備えた概略構成図。
【図12】中空羽根を用いた羽根車の一例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図面は銀行などの金融機関に設置されて入金取引や出金取引を行う現金自動取引装置(ATM)に内部構成される硬貨入出金機構を示している。
【0016】
図1はATMの概略斜視図を示している。このATMは本体部1と、紙幣入出金機構10と、硬貨入出金機構11と、カード明細票機構12と、通帳機構13と、操作画面6及びATMの各種の取引や処理を制御するメイン制御部15と、上位のホストコンピュータと通信する図示しない回線接続部とを備えて構成されている。
【0017】
利用者が取引する際は、カード挿入口4に磁気カード等の取引カードを挿入して本人確認を行い、利用者が入力操作する操作画面6で入金・出金といった取引種別を選択する。
ここで利用者が入金取引を選択した場合は、紙幣投入口2に入金される紙幣が投入される。また、硬貨投入口3に入金される硬貨が投入される。
【0018】
紙幣入出金機構10では紙幣投入口2に投入された紙幣を受け付けて識別と計数を行い一時収納する。硬貨入出金機構11では硬貨投入口3に投入された硬貨を受け付けて識別と計数を行い一時収納する。利用者は取引利用した紙幣・硬貨の取引種別に応じた計数結果の確認を操作画面6に表示された表示情報を見て確認操作を行い。取引が成立すると、紙幣入出金機構10、硬貨入出金機構11は一時収納している現金を装置内の収納部に保管する。
【0019】
また、利用者が出金取引を選択した場合は、メイン制御部15が利用者の出金要請した金額に相当する紙幣・硬貨の金種別に応じた所定枚数を払い出すことを紙幣入出金機構10、硬貨入出金機構11に指示する。紙幣入出金機構10ではメイン制御部15から指示された所定枚数だけ紙幣収納部から紙幣を繰出して紙幣投入口2に払い出す。同様に、硬貨入出金機構11ではメイン制御部15から指示された所定枚数だけ硬貨収納部から硬貨を繰出して硬貨投入口3に払い出す。また、入金・出金の取引において、利用者が通帳挿入口5に通帳を挿入すると、通帳機構13は利用者が取引した取引内容を通帳に記帳した後、利用者に返却する。
【0020】
次に、硬貨入出金機構11の内部構造を図2を参照して説明する。
硬貨入出金機構11は、シャッタ部301、入出口部302、繰出し部303、判別部304、振分け搬送部305、一時保留部306、上部繰出し搬送部307、金種別収納部308、下部繰出し搬送部309、硬貨カセット310、一括収納部311、リジェクト搬送部312、リジェクト回収箱313及び硬貨制御部71(図7参照)によって構成される。
【0021】
シャッタ部301は利用者が入金取引する硬貨投入時と利用者が出金取引する硬貨払出し時の硬貨を受け渡す際に開き、それ以外では閉った状態で密閉性を確保している。入出口部302は複数枚の硬貨を受皿330に集積させて利用者へ受け渡す。また、利用者が投入した複数枚の硬貨を受皿330に受け入れさせた後、受皿330を回転し、その真下の繰出し部303へと落下させて入金硬貨を一括して取り込む。繰出し部303は繰出しベルト331の上面に硬貨を集積した状態で繰出しベルト331を駆動し、逆転ローラ332で硬貨を1枚ずつ分離して繰出し、判別部304へと搬送する。判別部304は繰出し部303から1枚ずつ搬送されてきた硬貨の真偽・金種を判別し、振分け搬送部305へ搬送する。
【0022】
振分け搬送部305は判別部304の判別結果に応じて硬貨を一時保留部306、金種別収納部308、リジェクト搬送部312に振り分ける。
一時保留部306は判別部305で正常と判別した硬貨を一時的に収納し、返却要請など必要に応じて上部繰出し搬送部307に一括して送り出す。
【0023】
金種別収納部308は金種別に区画された収納部であり、これらに金種別に硬貨を整列させて収納する。また、硬貨制御部71(図7参照)の繰出し指示に基づいて該金種別収納部308から金種別に所定枚数だけ1枚ずつ繰出し、上部繰出し搬送部307に搬送する。上部繰出し搬送部307では複数枚の硬貨を1枚ずつ分離して入出口部302に搬送して受け渡す。
【0024】
一括収納部311は金種別収納部308に硬貨が収納しきれなくなった場合にその余剰硬貨を、金種を分けず該一括収納部311に一括して収納する。また、金種別収納部308の硬貨収納枚数不足などに応じて一括収納部311に収納している硬貨を下部繰出し搬送部309を介して金種別収納部308へと送り出す。
【0025】
硬貨カセット310は係員により硬貨入出金機構11に着脱され、硬貨入出金機構11への硬貨装填用として備えられている。この硬貨カセット310に収納している硬貨を金種別収納部308に収納させる際は、下部繰出し搬送部309、上部繰出し搬送部307を介して入出口部302に導き、これより入金経路となる繰出し部303、判別部304、振分け搬送部305を経由させて金種別収納部308へと導くようにしている。また、係員が硬貨入出金機構11内の硬貨を回収する際は、金種別収納部308と一括収納部311に収納している硬貨を該硬貨カセット310に収納させて回収するようにしている。
【0026】
下部繰出し搬送部309は一括収納部311と硬貨カセット310から送り出された硬貨を1枚ずつ分離して上部繰出し搬送部307へ搬送する役目を有している。
【0027】
リジェクト搬送部312は判別部304で判別不良や正常でないと判定された硬貨があった場合は、その硬貨を振分け搬送部305から上部繰出し搬送部307へ搬送して入出口部302に返却するようにしている。
【0028】
次に、硬貨入出金機構11の主な硬貨処理動作について説明する。
入金取引では、利用者により金種混合した複数枚の硬貨が入出口部302に投入される。入出口部302では受皿330を回転させて集積した硬貨をその下方の繰出し部303へ落下させて受け渡す。
【0029】
繰出し部303は繰出しベルト331を回転させ、逆転ローラ332にて硬貨を1枚ずつ繰出させて全ての硬貨を判別部304へ搬送する。判別部304では1枚ずつ搬送されてきた硬貨の真偽・金種を判定し、判別した真硬貨を後段の振分け搬送部305に搬送する。
【0030】
振分け搬送部305は判別部304の判別結果に従い、正常と判別した硬貨を一時保留部306へ搬送し、正常でないと判別した硬貨をリジェクト搬送部312へ搬送する。正常でないと判別した硬貨はリジェクト搬送部312を通り、上部繰出し搬送部307により硬貨を入出口部302へと搬送して利用者に返却する。このような判別結果に基づく処理動作を投入された全ての硬貨に対して行い、受け付けた適正硬貨の計数結果をメイン制御部15に送信する。これにより、メイン制御部15は入金計数結果を操作画面6に表示し、この入金計数結果を利用者が見て操作画面6に確認操作を行うと、その入金硬貨の収納動作を実行して一入金取引が終了する。
【0031】
前記一時保留部306で一時保留した硬貨に対しては、該硬貨を一括して上部繰出し搬送部307へ受け渡した後、この上部繰出し搬送部307より硬貨を1枚ずつ繰出して入出口部302へと搬送する。この入出口部302では上部繰出し搬送部307から送られてきた硬貨を集積せず、直接その下方に落下させて繰出し部303に受け渡す。
【0032】
繰出し部303では繰出しベルト331を回転して硬貨を1枚ずつ判別部304へ搬送し、判別部304で真偽・金種の判別を行い、この判別部304の判別結果に応じて正常と判別した硬貨を振分け搬送部305が振分けて金種別収納部308の各金種収納部へと受け渡す。
【0033】
このような処理動作を繰り返して一時保留部306に一時保留していた硬貨を全て金種別に分けて収納する。また、利用者が操作画面6により返却操作を行った場合は、一時保留部306の硬貨を入出口部302に送り、利用者に返却する。一方、正常でないと判別された硬貨はリジェクト搬送部312を通り、リジェクト回収箱313に搬送される。
【0034】
出金取引では、利用者が操作画面6に入力した出金要請金額に対し、その金額に応じた各金種の硬貨枚数だけ金種別収納部308から繰出し、上部繰出し搬送部307へ搬送した後、上部繰出し搬送部307から硬貨を1枚ずつ繰出し入出口部302へと搬送する。そして、指定された金額の硬貨を全て入出口部302に搬送して集積させると、その全枚数の硬貨を利用者に取り出させるようにシャッタ部301を開け、入出口部302に集積されている硬貨の取り出しが許容される。そして、利用者により出金された硬貨が取り出されたことを確認し、入出金口シャッタを閉じることで一出金取引が終了する。
【0035】
次に、硬貨入出金機構11の硬貨装填処理と硬貨回収処理について説明する。
硬貨入出金機構11への硬貨の収納処理は、多数枚の硬貨を入れた硬貨カセット310を硬貨入出金機構11に装填する。この硬貨カセット310から硬貨の搬送供給を開始する。まず、該硬貨カセット310から硬貨を下部繰出し搬送部309に1枚ずつ送り出して受け渡した後、該下部繰出し搬送部309から硬貨を1枚ずつ上方の上部繰出し搬送部307へと搬送する。
【0036】
上部繰出し搬送部307では1枚ずつ送られてきた硬貨を入出口部302へ搬送し、該入出口部302に導かれた硬貨を繰出し部303から判別部304へと送り出す。
【0037】
判別部304では硬貨の真偽・金種を判別した後、その判別した硬貨を振分け搬送路305へ搬送する。この振分け搬送部305では前段の判別部304の判別結果に従い判別された硬貨を金種別収納部308に導いて金種別に収納させて装填完了するようにしている。
【0038】
逆に、硬貨入出金機構11の内部から硬貨を回収する際は、金種別収納部308に収納している全硬貨を繰出して上部繰出し搬送部307へと搬送する。上部繰出し搬送部307ではこれより硬貨を1枚ずつ繰出して入出口部302に導き、入出口部302から繰出し部303、判別部304へと搬送した後、振分け搬送部305の始端側から硬貨をリジェクト搬送部312へと導き、このリジェクト搬送部312から図示しない搬送路を通過させて硬貨カセット310に導いて全ての硬貨を回収するようにしている。
【0039】
次に、硬貨入出金機構11の入出口部302の構成を図3〜図6を参照して説明する。
図3は入出口部302の要部拡大図を示し、図4は受皿振動機構340の羽根車103が回転停止した状態を示す要部拡大図を示し、図5は羽根車103の叩き作用を受けて振動板100が右回りに回転した状態を示す要部拡大図を示し、図6は羽根車103の叩き作用を受けて振動板100が左回りに回転した状態を示す要部拡大図を示している。
【0040】
入出口部302は、凹形保持壁320と、受皿330と、硬貨検知センサSと、受皿振動機構340とを備えて構成される。
【0041】
凹形保持壁320は、利用者が上方から硬貨を出し入れ操作可能な凹形状を有している。そして、この凹形保持壁320は上方がシャッタ部301で開閉される入出金口301a(図2参照)と連通する大径の開口部を有し、この入出金口301aから投入された入金硬貨と該入出金口301aから抜き取られる出金硬貨を集積する凹形状の保持空間321を備えている。該保持空間321の底面中央部には硬貨を落下させる底面開口部322を開口しており、この底面開口部322から硬貨を落下させてその下方に通じる装置内部の繰出し部303へと取り込むようにしている。
【0042】
また、凹形保持壁320は、取引利用時に利用者の奥側、つまり利用者側から遠い操作位置となる前記保持空間321の後部保持壁324(図3では右側)の一部に揺動壁として揺動自由に支持された振動板100を備えている。
【0043】
一方、後部保持壁324以外の周囲の保持壁、特に取引利用時に利用者の手前側となる前部保持壁323(図3では左側)は上部側から下部側にかけて断面凹形状に湾曲させて傾斜させた円弧壁であり、この円弧壁内面に沿って硬貨が滑り落ちるようにしている。また、凹形保持壁320の保持空間321から複数枚の硬貨を片手で掴んで取り出す際に、硬貨を掴んだときの指先の動きや前部保持壁323の内面との接触性を考慮した円弧形の取り出し易い円弧壁を有している。
【0044】
このように、凹形保持壁320は該凹形保持壁320の軸心を中心とする環状に形成され、後部保持壁324に対しては、その中間高さ位置の一部を切欠いて上部繰出し搬送部307から搬送されてきた硬貨を凹形保持壁320内に受け入れるための接続口325を開口している。さらに、凹形保持壁320の底面開口部322を後述する受皿330によって開閉する構成としている。
【0045】
上述の受皿330は、前記凹形保持壁320の保持空間321内で上方位置Uと下方位置Dとの間で回転し、受皿330が前記保持空間321の下方位置Dに回転移動したとき該受皿330が前記底面開口部322を閉鎖し、受皿330が前記保持空間321の上方位置Uに回転移動したとき(図3に想像線で示す)、該受皿330がそれまで閉鎖していた前記底面開口部322を開放するように構成されている。
【0046】
これにより、受皿330が下方の閉鎖位置で回転停止したときは、底面開口部322を閉じて凹形保持壁320内に集積されている硬貨を落下規制した状態を保つ。これに対し、受皿330が下方の閉鎖位置より反転して上方の退避位置で回転停止したときは、底面開口部322が開放されて凹形保持壁320内の硬貨を底面開口部322より落下させて下方の装置内部に取り込むようにしている。
【0047】
つまり、この受皿330は上下位置に180度ずつ回転して停止し、この受皿330の上下の回転停止位置により硬貨の出入れに対処するように構成している。この際、受皿330は回転式だと軸心を中心に回転するため動きが安定し、受皿330の回転領域内で回転運動し、コンパクトな構造となる。また、異物等が挟まり難い隙間のない構成にできる。
【0048】
また、受皿330は凹形保持壁320内で回転することからその曲率に沿った円弧形状に形成され、下方位置Dで回転停止した時は硬貨の集積に適した凹状態となって待機される。そして、この円弧形状の受皿330の上面に硬貨が集積される。
【0049】
硬貨検知センサSは、凹形保持壁320内の硬貨の有無を検知するセンサであって、凹形保持壁320内で最も低い位置となる受皿330の凹状上面に硬貨が滑り落ちて集積されることから該受皿330の円弧形上面に沿って複数の光電検知型のセンサを配置して構成している。
【0050】
そして、前部保持壁323、後部保持壁324及び振動板100の斜面に沿って滑り落ちてきた硬貨は受皿330の上面に集積される。この集積された硬貨が硬貨検知センサSによって検知される。図3では1枚の硬貨Cを3個のセンサが検知している状態を示す。
【0051】
受皿振動機構340は、振動板100と、回動支軸101と、レバー部102と、羽根車103と、戻しバネ104と、振動量規制部105a,105bとを備えて構成される。
【0052】
振動板100は、凹形保持壁320における上述した中間高さ位置の接続口325と底面開口部322との間の後部保持壁324に配置される。この際、振動板100は後部保持壁324の一部を切欠いた円形または角形の空間に、同形状の一保持壁を独立して配置したものである。この振動板100は、図4に示すように、該振動板100の硬貨非接触面側となる下面側中央部が、図示しない他部材に支持された回動支軸101に回動自由に軸支されている。この回動支軸101は揺動支持部として設けられ、この回動支軸101を中心に振動板100は硬貨接触面側となる上面側に向けて振動発生用に正回転と逆回転とに僅かの回転量で回転自由に軸支されている。
【0053】
さらに、振動板100の下面側中央部には該振動板100の傾斜方向と直角に延びるU字形のレバー部102を突出させている。このレバー部102が後述する羽根車103が回転した際の回転接触時の叩き作用を受けて振動する構成としている。このレバー部102は羽根車103との接触性を考慮して、斜め下向きに十分に長く傾斜突出させたり、回転接触が得られ易い広幅に設けたり、あるいは他部品を付設して羽根車103との接触が適切に得られる形状にするとよい。
【0054】
また、振動板100は下面側中央部が回動支軸101により軸支されているため、該振動板100は両端部が最も回動量が大きくなり、中央部が最も回動量が少なくなる。このため、振動板100の中央部でも硬貨が滑り落ち易いように該振動板100の中央部を斜め上向きに緩やかな円弧形に突出させた形状を有している。これにより、振動板100の上面側中央部であっても硬貨が滑り落ち易くなる。したがって、振動板100の上面はどの位置であっても硬貨が滑り落ち易い形状を有している。
【0055】
戻しバネ104は、小さなコイルバネ等で構成することができる。この戻しバネ104の上端を振動板100の下部側下面に接続し、下端を図示しない他部材に接続して振動板100の下部側を硬貨非接触面(下面)側に引っ張った状態に付勢している。この付勢方向は後述する羽根車103の回転接触作用を受け付ける方向と逆向きとなり、該振動板100を元の位置に戻す役目を有している。
【0056】
振動量規制部105a,105bは、振動板100の振動量を規制するため、振動板100の上下端部にそれぞれ対向して備えている。まず、振動板100の上部に対しては、その上部の下面側近傍位置に上振動量規制部105aを対設させて構成している。
【0057】
これにより、振動板100は回動支軸101を支点に回動した際に振動板100の上部側下面が上振動量規制部105aに当接する。このときに振動板100は上部側が下向きに回転したときの回転量が規制される。
【0058】
また、振動板100の下部に対しては、該下端部と対向する後部保持壁324の対向位置に形成された下振動量規制部105bを対設させて構成している。これにより、振動板100は回動支軸101を支点に回動した際に振動板100の下端部が下振動量規制部105bに当接する。このときに振動板100は下部側が下向きに回転したときの回転量が規制される。
【0059】
この結果、振動板100は回動支軸101を中心に回転した際、振動板100の上下両端部は上振動量規制部105aと下振動量規制部105bにより上下部が僅かの回動量で交互に回転規制されるため、振動板100の回動量の範囲が交互に小さく繰り返されることになり微振動を発生させる。
【0060】
また、振動板100は戻しバネ104により該振動板100の下部側を斜め下向き付勢し、常に振動板100の下端部を後部保持壁324の下振動量規制部105bに押し付けて静止させるようにしている。このため、振動板100は初期振動基準位置に支持されるように保っている。
【0061】
羽根車103は、振動板100の上部下面側と対向する位置に設置された回転軸106上に備えられる。回転軸106は他部材に軸支されて備えられ、図5に示すように該回転軸106の回転に伴って生じる遠心力で該回転軸106を中心に収縮した状態から略放射状態に広がる周方向に等分配設された3枚の柔軟な羽103aを備えて構成される。
【0062】
回転軸106は、羽根車駆動モータM3(図7参照)の回転駆動力を減速装置で減速して回転させる図示しない駆動機構により、羽根車103を所望の速度で回転させる。この羽根車駆動モータM3の出力制御により、羽根車103を任意に回転または停止させることができる。また、回転軸106は前記回動支軸101と平行して設置され、該回転軸106上の羽根車103が回転停止した状態では図4に示すように、羽103aが回転軸106上に収縮して畳まれた縮小状態にあるが、回転すると図5及び図6に示すように、羽103aは遠心力により広がった状態で回転を続けることになる。この際、羽根車103の3枚の羽先が回転中にレバー部102の先端部分を間欠的に叩く位置に該羽根車103を配置して構成している。
【0063】
つまり、羽根車103の羽103aは回転停止した時に回転軸106に沿って収縮した小径の状態となる。そして、羽根車103が回転した時のみ羽103aが放射状に広がった大径の状態となる。したがって、羽根車103は回転時と停止時によって径方向に大きく変化することになり、羽根車103の回転が停止した際は小径状態のため羽103aは振動板100に接触しない。このため、羽根車103は羽103aが径方向に変化する変化量に応じた十分な取り付け間隔を備えて取り付けることが可能になる。したがって、羽根車103の取付位置の設定に高精度の制約を受けなくなり、羽根車103を容易に取り付けることができる。
【0064】
さらに、羽根車103はゴム材等の柔軟性を有する材質を用いるのが適している。これにより、羽根車103が振動板100を叩いた際の衝撃音を吸収して静音性が得られる。つまり、羽根車103が振動板100を叩いて衝撃を与えた際に、羽103aが振動板100に多く当たっても撓んで柔らかく接し、少なく当たっても軽く一定の衝撃力を振動板100に与えて振動を発生させることができる。さらに、羽根車103は中心の回転軸106の一点を支点に回転するため動きが安定し、小型で小スペースに配置でき、しかも微細な振動を回転して連続的に発生させるための構造がシンプルなため安価に構成できる。
【0065】
また、羽根車103は硬貨送りする搬送駆動系とは別に独立した羽根車専用の羽根車駆動モータM3を配置して構成できるため、搬送駆動系と干渉せずに取り扱うことができる。例えば、硬貨詰りや内部点検等で係員処理する際に、係員操作されるユニットの開放時に構造が分離されているため、取り扱い易くなる。さらに、羽根車103は簡素な構造で振動板100に振動を直接付与することができ、この振動により硬貨を凹形保持壁320の底面まで確実に滑り落とさせることができる。
【0066】
特に、羽根車103が振動板100を叩く際、図5に示すように、羽根車103の回転に伴って広がった羽103aがレバー部102の下端側を叩き始める。この場合、レバー部102と一体化して固定された振動板100が戻しバネ104の付勢力に抗して下振動量規制部105bの規制位置から離れるように右回転しようとする。このとき、振動板100の上部下面は上振動量規制部105aに当接して回転規制される。
【0067】
その後、さらに羽根車103が回転し、該羽根車の羽103aが叩いたレバー部102と離れることによって、図6に示すように、振動板100は戻しバネ104の付勢力により元の位置に戻ろうとする。このとき、振動板100は左回転し始める。このような振動板100の右回転と左回転とが、羽根車103の羽103aの叩き動作毎に繰り返されるため振動板100に振動が発生する。この振動の発生に基づいて入出口部302内の硬貨の残留を防止するようにしている。
【0068】
図7は硬貨入出金機構11に備えられる入出口部302の制御回路ブロック図を示し、CPU71はROM72に格納された硬貨入出金プログラムに沿って硬貨検知センサS、操作画面6、羽根車回転速度調整部74、入出金口シャッタ駆動モータM1、受皿駆動モータM2、羽根車駆動モータM3等を制御し、その制御データをRAM73で読出し可能に記憶する。
【0069】
前記CPU71は検知手段として備えられた硬貨検知センサSの検知信号に基づいて硬貨の受入れ、取出し状態及び硬貨の有無等を検知確認する。また、CPU71は硬貨検知センサSの検知信号に基づいて硬貨以外の異物誤投入されたことを検知したとき、誤投入情報を操作画面6、あるいは音声案内部を介して案内出力する。
【0070】
さらに、CPU71は凹形保持壁320内において、硬貨検知センサSが出金硬貨の抜き取りを検知した後に、羽根車103を回転させて振動を発生させる。これにより、凹形保持壁320内における未取り出し硬貨の有無を未取り出し確認手段としての制御機能を有するメイン制御部15で確認して管理するようにしている。
【0071】
また、CPU71は凹形保持壁320内において、図示しない受皿検知センサが受皿330の上方位置に退避させたことを検知した後に、羽根車103を回転させて振動を発生させる。これにより、凹形保持壁320内における入金硬貨の未取り込みの有無を未取り込み確認手段としての制御機能を有するメイン制御部15で確認して管理するようにしている。
【0072】
CPU71は、入出金取引の処理手順に基づき、入出金口シャッタ駆動モータM1を駆動して入出金口301aを開閉する。また、CPU71の制御信号に基づき、受皿駆動モータM2を駆動して受皿330を閉鎖位置と開放位置とに移動させる。さらに、CPU71は羽根車回転速度調整部74からの調整信号に基づいて羽根車駆動モータM3の出力を設定された回転速度に可変制御するように構成している。
【0073】
例えば、図8に示すように入金または出金取引される際に羽根車駆動モータM3を駆動して取引される金種別硬貨に応じた振動を振動板100に与えて凹形保持壁320内で入出金される全ての硬貨を確実に受皿330上に滑り落とすように設定することができる。これらの硬貨は金種によって重量が異なり、金種別に固有振動数が異なる。したがって、金種別に応じた固有振動数を考慮して金種別に応じた振動を与えることで最適な取込条件に設定することができる。
【0074】
具体的には国内硬貨の場合は、1円硬貨(1グラム)のように軽量の場合は、軽量硬貨に与える最適な振動となるように羽根車駆動モータM3の周波数を調整して羽根車103の回転速度を低速に設定する。これにより、振動板100に1円硬貨を滑り落とさせるのに最も適した微振動を与えることができる。
【0075】
5円,10円,50円,100円硬貨(3.7〜4.8グラム)のように中程度の重さの場合は、中量硬貨に与える最適な振動となるように羽根車駆動モータM3の周波数を調整して羽根車103の回転速度を中速に設定する。これにより、振動板100に中量硬貨を滑り落とさせるのに最も適した低振動を与えることができる。
【0076】
500円硬貨(7グラム)のように重量のある場合は、重量硬貨に与える最適な振動となるように羽根車駆動モータM3の周波数を調整して羽根車103の回転速度を高速に設定する。これにより、振動板100に重量硬貨を滑り落とさせるのに最も適した高振動を与えることができる。
【0077】
さらに、図9に示すように、羽根車103を回転させた際、ゴム材の羽根車103が回転して金属材の振動板100を叩くため、羽根車特有の拡縮する性質と、弾性的に当接する性質とから衝撃音は小さく、静音で回転し、耳障りな音を発生させない。したがって、利用者が取引している間は羽根車103を確実に静音が得られる低速に回転させて硬貨を入出金処理し、利用者が取引終了して離れた場合は羽根車103を高速回転させて高速取り込み処理を実行するとよい。これにより、取引中は極力耳障りな叩き音を抑えた状態で運用することができる。
【0078】
次に、受皿振動機構340の動作を図4〜図6を参照して説明する。
図4は羽根車103が停止した状態を表し、振動板100は戻しバネ104の付勢力により矢印X方向に引っ張られ、該振動板100の下端部は後部保持壁324の下振動量規制部105bに押し付けられて静止している。この振動板100の振動が待機された状態で羽根車103が回転すると、羽103aが遠心力により次第に広がり、やがて図5のように振動板100のレバー部102を叩く大径状態となり、羽103aがレバー部102に当たる。その当たった時の衝撃力により振動板100は図中矢印Y方向に右回転するが、後部保持壁324の上振動量規制部105aにより振動板100は回転が規制されて回転動作を停止する。
【0079】
その後、羽根車103の羽103aが図6のように振動板100のレバー部102から離れると、振動板100は戻しバネ104の付勢力により図中矢印X方向に左回転し、再び後部保持壁324の下振動量規制部105bに押し付けられた状態に静止する。
【0080】
さらに、次の羽103aがレバー部102に当たると、振動板100は再び矢印Y方向(図5)に右回転する。このような振動板100の右回転と左回転との回転動作を繰り返すことで振動板100は振動する。
【0081】
この振動により振動板100の上面に接した硬貨Cは跳ね上がり、また傾く。このときの振動により硬貨は振動板100の表面を滑り落ちる。また、振動板100の表面が硬貨粉や埃などにより該振動板100の表面の摩擦係数が変化したとしても、硬貨は確実に振動板100の表面を滑り落ちて受皿330に導かれる。そして、受皿330上に滑り落ちた硬貨は硬貨検知センサSにより検知される。
【0082】
さらに、受皿振動機構340の振動発生タイミングについて説明する。
CPU71はメイン制御部15より所定金額の出金指示を受けると、硬貨入出金機構11において、CPU71は出金要請された金額の硬貨を受皿330に集積させたあと、シャッタ部301を開き、取引利用者(エンドユーザ)による出金硬貨の抜き取りを待つ。硬貨検知センサSが硬貨の抜き取りを検知すると、受皿振動機構340を所定時間駆動し、硬貨が残留していた場合にはその残留硬貨を受皿330に滑り落とさせる。滑り落ちた硬貨を硬貨検知センサSが検知した際は、エンドユーザに硬貨の取り残しがあることを知らせ、エンドユーザに残留硬貨の抜き取りを促す。
【0083】
受皿振動機構340を所定時間駆動しても、硬貨検知センサSが硬貨の残留を検知しなかった場合は残留硬貨がないと判断して出金動作を終了する。また、シャッタ部301を開いてエンドユーザによる硬貨の抜き取りを待っている最中に受皿振動機構340を動作させて残留硬貨が生じないように配慮しても構わない。
【0084】
また、CPU71はメイン制御部15より入金処理の指示を受けると、硬貨入出金機構11はシャッタ部301を開き、エンドユーザにより硬貨が投入されるのを待つ。硬貨が投入されるとシャッタ部301を閉じた後、受皿330を反転させて底面開口部322を開放し、底面開口部322から硬貨を下方の繰出し部303に落下させる。その後、受皿330を再び回転させて底面開口部322を閉じた元の位置に戻る。
【0085】
この際、CPU71は受皿振動機構340を所定時間動作させ、硬貨が残留していた場合は、その残留硬貨を受皿330に落下させる。そして、硬貨検知センサSが残留硬貨の存在を検知すると、CPU71は受皿330を再び反転させて繰出し部303に残留硬貨を落下させる。
【0086】
受皿振動機構340を所定時間動作しても硬貨検知センサSが硬貨の残留を検知しなかった場合は残留した硬貨がないと判断し、硬貨を全て一時保留部306に収納して入金動作を終了する。
【0087】
また、受皿330を開く動作の途中で受皿振動機構340を動作させ、複数枚の硬貨に振動を与え、集積された硬貨をほぐすことで硬貨の落下を促すようにすることも可能である。さらに、入金処理時にエンドユーザの硬貨投入待ちの後にメイン制御部15から入金処理再開の指示を受けたが、硬貨検知センサSが硬貨を検知できなかった場合は受皿振動機構340を所定時間動作させて硬貨検知センサSが硬貨を検知できなければ、確実に硬貨が投入されていないと判断して入金動作を終了する。硬貨検知センサSが硬貨を検知した場合には入金硬貨が投入されたと判断して入金処理を行う。
【0088】
以上説明した如く、硬貨処理時には受皿振動機構340を所定時間動作させて確実に硬貨が残留していないことを確認する。さらに、受皿振動機構340の設置場所は図3〜図6に示したように後部保持壁324側に設置した例を示したが、これに限らず他の設置場所に配置して構成することも可能である。
【0089】
例えば、図10に示すように、後部保持壁324に受皿振動機構340を設けるだけでなく、これと同機能を有する受皿振動機構341を前部保持壁323に設けて凹形保持壁320内の前後の位置で硬貨に振動を与えるように配置することもできる。この場合は、凹形保持壁320内における振動付与領域が増えて、より確実に残留硬貨の発生を防止することができる。
【0090】
また、図11に示すように、前部保持壁323側だけに受皿振動機構341を配置して、前部保持壁323側のみで振動を付与するように構成してもよい。
【0091】
さらに、振動板100の回動支点101は振動板100の中心付近に限らず、振動板100の端部側に設けてもよい。
【0092】
また、振動板100は、正回転と逆回転とを繰り返すことで振動を発生させる回転式に限らず、振動板100の回転軸106を振動方向にスライド式に移動可能に支持して揺動させることで振動板100に振動を発生させる構成としてもよい。
【0093】
さらに、受皿330は底面開口部322を開閉できる位置に移動させる構造であればよく、回転式に限らず、左右方向に移動させて底面開口部322をスライド式に開閉するようにしてもよい。
【0094】
また、羽根車103の大きさは、回転停止状態では羽103aがそれぞれ収縮してレバー部102とは非接触に対向した状態で待機しており、羽根車103が回転した際に広がった羽103aがレバー部102に当たる位置であれば、どのような距離関係であっても構わない。このため、羽根車103の配設位置は高精度の取り付けを要せず、取付時に高精度に設定するような制約を受けないため、取り付けが容易となる。また、羽103aがレバー部102ではなく直接振動板100に回転接触するように構成することもできる。
【0095】
また、羽根車103の回転速度は上述した羽根車駆動モータM3の周波数を変えることによって任意に変えることができ、回転速度を変えることで振動板100の振動周波数を任意に設定変更できる。したがって、外貨なども含めて金種別の硬貨に応じた最適な振動を与えて各々の硬貨の処理速度を高めることもできる。
【0096】
さらに、羽根車103の羽103aの枚数は1枚以上であれば枚数を問わない。特に、ゴム材等で形成される羽103aは柔軟で長くとれるため、この羽103aの形状によって様々な振動発生パターンを得ることができる。つまり、この羽根車103による振動発生動作は、羽103aの数、羽103aの重さ、羽103aの形状などを変更することにより所望の振動を発生させることが可能である。
【0097】
図12は耐久性と静音性を高めた羽根車103の一例を示している。この羽根車103は、中空の2枚羽103aを用い、さらに羽103aの先端側を広幅に、しかも厚肉にして構成している。これにより、回転接触する羽103aの先端側は十分な強度が得られるため耐久性が高まる。また、羽自体を中空に形成することにより、弾性に富み羽自体の衝撃を変形して吸収し易い形状となるので保護機能と同時に静音性が得られる。また、回転速度だけでなく、各羽103aの形状や重さで振動力の発生を加減することができる。
【0098】
上述のように、振動板100に振動を与える羽根車103は、回転停止した状態では、羽103aが収縮して畳まれた縮小状態にある。そして、羽根車103が回転すると、羽103aは遠心力により径方向に広がった状態となり、羽根車103の羽103aが径方向に対向するレバー部102を間欠的に叩いて振動板100に振動を付与する構成である。
【0099】
特に、羽根車103は回転時と停止時によって羽103aが径方向に大きく変化し、その変化量に応じた自由な取り付け間隔を選択することが可能になる。このため、羽根車103の取付位置の設定に高精度の制約を受けなくなり、羽根車103を容易に取り付けることが可能になる。また、羽根車103はゴム材等の柔軟性を有する材質を用いるので叩いても衝撃音は小さく静音性が得られる。このため、取引中に耳障りな音を発生させることがない。さらに、羽根車103は径方向スペースを有効に活用した回転構造のため小型で小スペースに配置でき、しかも微細な振動を安定して発生させるための構造をシンプルに得られるため安価に構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
硬貨やコインを一括して出入れ処理する自動取引機の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…本体部
11…硬貨入出金機構
15…メイン制御部
100…振動板
101…回動支軸
103…羽根車
103a…羽
301a…入出金口
302…入出口部
320…凹形保持壁
322…底面開口部
330…受皿
340,341…受皿振動機構
M…羽根車駆動モータ
S…硬貨検知センサ
U…上方位置
D…下方位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出金口から投入された入金硬貨と入出金口から払い出す出金硬貨を一時的に保持する凹形状の保持空間を備え、該保持空間とその下方の装置内部とを通じさせる底面開口部を備えた凹形保持壁と、
前記凹形保持壁の底面開口部を閉じる閉鎖位置と該閉鎖位置より退避して前記底面開口部を開放させる退避位置とに移動する受皿とを備え、
前記受皿を前記閉鎖位置に移動させたとき、前記保持空間内から硬貨が落下するのを規制し、前記受皿を前記退避位置へと移動させたとき、前記保持空間内の硬貨を前記底面開口部から落下させて装置内部に取り込む硬貨入出金機構であって、
前記凹形保持壁の一部に独立して形成され、該独立した一保持壁の硬貨非接触面側に備えられた揺動支持部により該一保持壁を揺動自由に支持した揺動壁と、
前記揺動壁と対向する位置に回転軸を設置し、該回転軸上に備えられ、該回転軸の回転に伴って生じる遠心力で該回転軸を中心に収縮した状態から略放射状態に広がる1枚以上の柔軟な羽を備えた羽根車と、
前記回転軸を回転させて前記羽根車を回転させる駆動機構とを備え、
前記羽根車の羽先が回転中に前記揺動壁を間欠的に叩く位置に該羽根車を配置して構成した
硬貨入出金機構。
【請求項2】
前記受皿を、
前記凹形保持壁の保持空間内で回転し、
前記保持空間の下方位置に回転移動したとき前記底面開口部を閉鎖し、
前記保持空間の上方位置に回転移動したとき前記底面開口部を開放する構成とした
請求項1に記載の硬貨入出金機構。
【請求項3】
前記揺動壁を、
硬貨接触面側に向けて正逆転自由に軸支して揺動する構成とした
請求項1または2に記載の硬貨入出金機構。
【請求項4】
利用者側から遠い操作位置となる前記保持空間の奥側に前記揺動壁を配置した
請求項1〜3の何れか1項に記載の硬貨入出金機構。
【請求項5】
前記出金硬貨が抜き取られたことを検知する検知手段を備え、
前記検知手段が出金硬貨の抜き取りを検知した後に、前記羽根車を回転させて前記凹形保持壁内における未取り出し硬貨の有無を確認する未取り出し確認手段を備えた
請求項1〜4の何れか1項に記載の硬貨入出金機構。
【請求項6】
前記受皿を退避位置に移動させたことを検知する検知手段を備え、前記検知手段が前記受皿を退避位置に移動させたことを検知した後に、前記羽根車を回転させて前記凹形保持壁内における入金硬貨の未取り込みの有無を確認する未取り込み確認手段を備えた
請求項1〜4の何れか1項に記載の硬貨入出金機構。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の硬貨入出金機構を備えた自動取引機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−174118(P2012−174118A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37232(P2011−37232)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】