説明

硬貨収納装置

【課題】軽量かつ簡易な構成でセキュリティを確保することのできる硬貨収納装置を提供する。
【解決手段】貨幣取扱装置の硬貨出口部12に嵌合する入口部2と、該入口部に接続部を介して接続した袋状部1を備え、更に前記入口部は、貨幣取扱装置の出口部に設けたフック13に係合するフック掛け部6、前記入口部に形成される開口を閉塞するシャッタ4、前記フック掛け部におけるフックの係合を開放する開放レバー15、および開放レバーを開放状態にロックする開放レバーロック機構15a,15bを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨収納装置に係り、特に、ATM等の貨幣取扱装置において受領した硬貨を収納し、運搬可能な硬貨収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM、入金機等の一般的に知られる貨幣処理装置は、貨幣計数処理部および貨幣収納部を備える。貨幣収納部には、通常、貨幣を格納し回収するため、紙幣および硬貨毎に個別の収納ボックスが備えられる。この種の収納ボックスは貨幣処理装置に対して着脱可能であり、取り外した収納ボックスは、収納した貨幣を管理センタあるいは銀行等に回収するために係員によって搬送される。
【0003】
このため、このような収納ボックスは、ボックス非装着時におけるセキュリティを確保することが重要であり、例えば、搬送時に外力が加わっても変形、故障しない強度が要求される。また、回収時に係員が収納硬貨に直接アクセスできないようにすることも重要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、搬送時に加わる外力により変形あるいは故障しない程度の構造とするためには、前記ボックス自体の重量が大きくなる。また、搬送時や保管時の取扱に困難が生じる。すなわち、堅固なボックス形状とすると、運搬あるいは保管時に広いスペースを必要とする。一方、柔軟な袋状の収納本体部を持つ硬貨収納装置を用いる場合は、簡単な工具を用いることにより、硬貨入口部から内部硬貨を簡単に取り出すことができ、セキュリティの確保に問題がある。
【0005】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、軽量かつ簡易な構成でセキュリティを確保することのできる硬貨収納装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0007】
貨幣取扱装置の硬貨出口部に嵌合する入口部と、該入口部に接続部を介して接続した袋状部を備え、更に前記入口部は、貨幣取扱装置の出口部に設けたフックに係合するフック掛け部、前記入口部に形成される開口を閉塞するシャッタ、前記フック掛け部におけるフックの係合を開放する開放レバー、および開放レバーを開放状態にロックする開放レバーロック機構を備えた。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上の構成を備えるため、軽量かつ簡易な構成でセキュリティを確保することのできる硬貨収納装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、最良の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る硬貨収納装置の外観図である。図に示すように、収納本体部1は、柔軟な袋状(例えばバッグ状)体であり、収納した硬貨の重さに耐えうる強さを有する例えば布のような素材で形成されている。袋状の収納本体部1の上部には入口部2を形成し、この入口部2は、貨幣取扱装置(図示せず)の硬貨出口部に嵌め込むのに適合した形状、寸法を有する。なお、図1は、硬貨収納装置を貨幣取扱装置から取り外した状態を示している。
【0010】
図2は、硬貨収納装置の入口部2を拡大して示す断面図であり、図2(a)はこの硬貨収納装置を貨幣取扱装置11に装着した状態、つまり入口部2を貨幣取扱装置11の硬貨出口部12の外周に嵌め込んでセットした状態を示す。また、図2(b)は硬貨収納装置を貨幣取扱装置11に装着していない状態(取り外した状態)を示す。
【0011】
入口部2は、シャッタ4および解放レバー15の機構部を内蔵しており、該機構部は板金や樹脂などで作られた剛性を持つ構造であり、柔軟な袋構造の収納本体部1とは接続部16において縫い込みや鋲打ちにより一体化されている。
【0012】
シャッタ4の上部は支点を備え、解放レバー15を矢印方向に動かすのと連動してシャッタ4は、図2(b)に示すように入口部2の開口部を閉じる構造となっている。解放レバー15には、レバーロック機構15a、15bが付属しており、シャッタ4が入口部2の開口部を閉じた位置でロックするようになっている。
【0013】
図2(a)に示すように、貨幣取扱装置11の硬貨出口部12は、下向きに突出した四角柱状であり、硬貨収納装置を貨幣取扱装置11に装着する場合は、この硬貨出口部12の外周に硬貨収納装置の入口部2を嵌め込む。硬貨出口部12の内部には上部に支点を持つフック13が設けられており、フック13に対応して、硬貨収納装置の入口部2の所定箇所にはフック掛け用の孔6が設けられている。
【0014】
図2cは硬貨収納装置を貨幣取扱装置11に装着する様子を説明する図である。フック13は、バネ(図示せず)などにより 図2(c−1)に示す位置に戻す力が作用している。図2(c−1)に示すように、硬貨収納装置の入口部2を硬貨出口部12の外周に沿って嵌め込むように上部へ押し上げると、上部に支点を持つフック13は、フック13の先端部の傾斜にそって矢印方向に駆動され、図2(c−2)に示す位置まで移動する。さらに入口部2を押し上げると、入口部2の孔6にフック13が掛かり、図2(c−3)に示すように入口部2が硬貨出口部12の所定位置にセットされる。
【0015】
このように、硬貨収納装置を、貨幣取扱装置11の硬貨出口部12の所定位置にセットするための位置決め構造は、フック13およびフック掛け用の孔6のみであるため、極めて簡単かつ低コストで構成できる。なお、発光部14aおよび受光部14bからなる光センサ、あるいはその他の簡易なセンサなどにより、貨幣取扱装置11の出口部12にセットされた硬貨収納装置の入口部2の存在を検知してセット確認信号を電気的に発生し、このセット確認信号を貨幣取扱装置11の制御装置に供給するようにしても良い。
【0016】
図3は硬貨収納装置を貨幣取扱装置11から取り外す様子を説明する図である。硬貨収納装置を貨幣取扱装置11から取り外して回収する際には、解放レバー15を図3(d−1)に示す矢印方向に押し込む。すると入口部2のシャッタ4およびフック13が解放レバー15に押され、図2(d−1)に示すように入口部2の孔6からフック13が外れる。このため、図2(d−2)に示すように入口部2を下方に引くと、図2(d−3)に示すように入口部2を出口部12から取り外すことができる。
【0017】
また、解放レバー15を押し込み、フック13を入口部2の孔6から外す過程において、シャッタ4も解放レバー15におされて、図2(d−1)に示すように入口部2の開口部を閉じる構造となっている。解放レバー15には、レバーロック機構15a、15bが付属しており、シャッタ4が入口部2の開口部を閉じた位置でロックするようになっている。 したがって、解放レバー15を押し込み、フック13を入口部2の孔6から外す過程において、フック13が外れるより前に解放レバー15がロックされるようレバーロック機構15a、15bを配置しておくことにより、入口部2を貨幣取扱装置11から外した場合には、確実にシャッタ4が閉じロックする構造とすることができる。これにより非装着時のセキュリティーの確保と搬送中に硬貨収納装置内部の硬貨が外部へ飛び出すことを防止することができる。
【0018】
図1に示すように、硬貨収納装置の袋状の収納本体部1の上部には、搬送用の持ち手7が縫い付けられている。また、収納本体部1の側面にはレシートホルダ8が設けられており、回収処理に際して必要なレシートあるいは伝票類を差し込むことができる。また、収納本体部1の他の側面には、内部の硬貨を排出するためのジッパー式開閉口9が設けられている。
【0019】
通常、開閉口9は閉じており錠10により施錠されている。係員は、持ち手7を持ってこの硬貨収納装置を持ち運び、車両等に搭載して金銭管理センターあるいは銀行等の所定の目的地まで運搬する。目的地において硬貨収納装置から硬貨を排出するときには、錠10を開錠してジッパー式開閉口9を開き、そこから排出する。
【0020】
最後にジッパー式開閉口9の開口部から手を挿入して、図2(e)に示すようにレバーロック機構15bのロックを外してシャッタ4を開口させる。これにより貨幣取扱装置11の出口部12に硬貨収納装置をセットすることが可能となる。
【0021】
なお、硬貨収納装置から硬貨を排出するための構造は、ジッパー式開閉口9に限らず、他の構成とすることができる。また、収納本体部1の材質は、適当な強度と柔軟性と軽量さを持つものであれば、布製に限らず、他の材質を用いることができる。
【0022】
図4は、本発明の他の実施形態を説明する図である。図において、21は硬貨収納装置の入口部、121は貨幣取扱装置の硬貨出口部、41は入口部21に設けたシャッタ、123は硬貨出口部121に形成した硬貨排出口である。なお、硬貨出口部121は嵌合用の凹部122を備え、該凹部に硬貨収納装置の入口部21を摺動せしめて嵌合することにより硬貨収納装置の入口部を貨幣取扱装置の硬貨出口部にセットすることができる。この場合、シャッタ41は貨類収納装置の入口部21を貨幣取扱装置の硬貨出口部121にセットしたときおよびジッパー式開閉口9の開口部から手を挿入して操作したときのみに開放するように設定しておくと良い。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、収納本体部は柔軟な材質で袋状に形成しているため軽量化を図ることができ、回収時の係員による搬送作業が簡単になる。また、ボックスのような固定されたスペースを必要とされることなく、柔軟に変形するので、運搬時の車両搭載スペースを縮小することができる。さらに収納本体部の内部が空の場合には、小さく折りたためるため、搬送車両や保管場所のスペースを小さくすることができる。さらに、入口部を閉鎖するシャッタを備え、装着から非装着に移る過程で前記入口部を自動的に閉じ、さらに非装着時においては、入口部のシャッタがロックするようになっている。このため非装着時のセキュリティを確保することができる。したがって、柔軟な袋構造でありながらセキュリィティを確保することのできる硬貨収納装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る硬貨収納装置の外観図である。
【図2】硬貨収納装置の入口部2を拡大して示す断面図である。
【図3】硬貨収納装置を貨幣取扱装置硬貨出口部に装着する様子を説明する図である。
【図4】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
1 収納本体部
2,21 入口部
4,41 シャッタ
6 フック掛け用の孔
7 持ち手
8 レシートホルダ
9 開閉口
10 錠
11 貨幣取扱装置
12,121 貨幣取扱装置の硬貨出口部
13 フック
14a 発光部
14b 受光部
15 解放レバー
15a レバーロック機構
15b レバーロック機構
16 接続部
122 嵌合用凹部
123 硬貨排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣取扱装置の硬貨出口部に嵌合する入口部と、該入口部に接続部を介して接続した袋状部を備え、
更に前記入口部は、貨幣取扱装置の出口部に設けたフックに係合するフック掛け部、前記入口部に形成される開口を閉塞するシャッタ、前記フック掛け部におけるフックの係合を開放する開放レバー、および開放レバーを開放状態にロックする開放レバーロック機構を備えたことを特徴とする硬貨収納装置。
【請求項2】
貨幣取扱装置の硬貨出口部に嵌合する入口部と、該入口部に接続部を介して接続した袋状部を備え、
更に前記入口部は、貨幣取扱装置の出口部に設けたフックに係合するフック掛け部、前記入口部に形成される開口を閉塞するシャッタ、前記フック掛け部におけるフックの係合を開放するとともに前記シャッタを閉鎖状態に駆動する開放レバー、および開放レバーを開放状態にロックする開放レバーロック機構を備えたことを特徴とする硬貨収納装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の硬貨収納装置において、
前記袋状部は、入口部以外で袋状部を開閉するジッパーおよび該ジッパーを閉鎖位置に施錠する錠を備えたことを特徴とする硬貨収納装置。
【請求項4】
請求項2記載の硬貨収納装置において、
前記開放レバーは、前記フック掛け部におけるフックの係合を開放する前に前記シャッタを閉鎖状態に駆動することを特徴とする硬貨収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−128407(P2007−128407A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322143(P2005−322143)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】