説明

硬質クロムメッキとしてのクロム層の析出方法、電気メッキ浴槽、および硬質クロム表面層

本発明は、摩耗または腐食に対する保護のための、および/または、装飾的な目的のための、硬質クロムメッキとしてのクロム層の析出方法、さらに、このタイプのクロム層を析出可能とする電気メッキ浴槽に関する。
また、本発明は、それにより形成される硬質クロム表面層に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩耗または腐食に対する保護のための、および/または、装飾的な目的のための、硬質クロムメッキとしてのクロム層の析出方法、さらに、このタイプのクロム層を析出可能とする電気メッキ浴槽に関する。
また、本発明は、それにより形成される硬質クロム表面層に関する。
【背景技術】
【0002】
厚いクロムメッキを形成するための従来技術から、今日までに知られるようになった工業的方法では、析出したクロムが6価の状態で含まれている電解液が、事実上独占的に使用されている。
【0003】
電解液によるクロムの析出が始まって以来、有毒な6価クロムの電解液を3価クロムの電解液に置き換える努力がなされてきた。
人体に入った6価クロム化合物が深刻な健康問題を引き起こす可能性があるという事から、6価クロム化合物を3価クロム化合物に置き換える試みが始まっている。
健康面および環境的に危険な面に加えて、さらに6価クロムに汚染された排水を廃棄するために高額な費用も発生する。
【0004】
光沢のあるクロム処理のために3価クロムを含む溶液から金属クロムを得る装飾的な(3μm 未満の)薄いクロム層の析出と、摩耗及び腐食保護層としての(5μm より)厚いクロム層の析出との間には、一般に差異が生じるに違いない。
すでに、この話題を扱う、装飾的なクロムメッキに関する非常に多くの方法および特許が存在している。
これらの方法によって、薄い高光沢のクロム層が形成される。
【0005】
しかしながら、これらの方法は、5μm以上の層厚に対しては、限られた意味で唯一の適した方法となっている。
ここ数年の間に、工業的なクロム処理を、6価クロムを含む工程から3価クロムに基づく工程に置き換えるための、非常に多くの試みがあった。
【0006】
3価クロムに基づいたクロム層の析出のための電気メッキ浴槽が、GB 1 602 404により公知となっている。
この場合には、陰極液と陽極液との分離が、カチオン交換膜によって達成される。
電気メッキ中の析出電圧の上昇を避けることができるように、ここでは析出電圧を下げるためのアニオンが陰極液に加えられる。
【0007】
しかしながら、広く知られた6価クロムを含む電解液による硬質クロムメッキが工業的な利用において置き換え可能となったことによっては、今日まで開発中の方法についての成功は無かった。
【0008】
これは以下の点に起因すると考えられる。
すなわち、
1. 公知の方法により析出したクロム層は、5μm か、それ以上の層厚の硬質クロム処理についての、知られている条件には対応していない。
2. これらの浴槽により析出可能な層の硬さは、少なくとも800HVか、それ以上に要求された層の硬さには達し得ない。
3. 析出可能とする層の再現性に関して、従来の浴槽は、6価クロムを含む電解液について知られた品質を継承しない。
5μm より厚い層厚になると、クロム層には沢山の亀裂が生じ、下層の物質から剥がれ落ちる。
【0009】
すでに知られている3価クロムに基づくクロム処理用の電解液に関する、これらの制約は、陰極における化学反応と、陽極における3価クロムの6価クロムへの酸化と、による急激なpH値の変化によって生じる。
【0010】
すでに知られている進展において、ダイアフラム或いはカチオン交換膜による陽極空間と陰極空間との分離が行なわれている。
陽極での3価クロムイオンの酸化は、この膜によって妨げられる。
【0011】
電流の輸送はHイオンによって確保される。
水素が陰極液の空間内で生成された結果として、この輸送は上昇したpH値を一斉に均一にする役目を果たす。
析出したクロムと陰極液の中に残っているラジカルカチオン塩との協働により、結果として、陰極液中では、例えばアンモニアのような塩基の添加によって補われるべきpH値は減少する。
【0012】
一般に、アンモニアの添加によって、そのとき溶解し難い水酸化クロムが沈殿するので、pH値が電解液中で局所的に大きく上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これから始めるように、再現性のあるクロム層の析出を可能とし、層が腐食または摩耗から保護するための十分な厚さと強固な硬さとを有するものとする方法を提供するのが本発明の目的であった。
これにより、本方法が、広い応用分野を有しており、かつ、原理的には装飾的な層の析出にも適するものとすることを目的としている。
【0014】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法、請求項13の特徴を有する電気メッキ浴槽および請求項26の特徴を有する硬質クロム表面層によって達成される。
さらに、独立の請求項による有益な展開が示される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る方法によって、摩耗または腐食に対する保護のための硬質クロムメッキとしての、および/または、装飾的なクロムメッキとしてのクロム層を析出する方法が提供される。
【0016】
本方法では、陰極として接続され、かつ、少なくとも1種類の3価クロム塩と2価クロムイオンを安定化させる少なくとも1種類の化合物とからなる、陰極液中に浸された該当該当部分がベースになっている。
ブレンステッド酸からなる陽極液が一緒に使用される。
陰極液と陽極液とは、アニオン交換膜とも呼ばれるアニオン選択膜によって隔てられている。
【0017】
本発明において、所定のpH値からのpH値の偏差を継続的に監視するために、少なくとも1つの測定装置が使用されるのが一層本質的である。
所定のpH値に関しては、最適なクロムの析出を達成するように使用した3価クロム塩の働きにより決まる。
【0018】
さらに、本発明に係る方法では、pH値が所定値に調整可能となるように、酸または塩基の自動的な添加が達成されるような制御装置が使用される。
【0019】
本発明に係る方法は、アニオン交換膜による陰極空間と陽極空間との分離によって特徴付けられている。
陽極液と陰極液との混合は、アニオン交換膜によって妨げられる。
結果として3価クロムイオンは陽極側に通過することがないので、陽極での3価クロムイオンの6価クロムイオンへの酸化が防止可能となる。
【0020】
さらに、陽極の交換膜を使用することによって、一般にカチオン錯体として存在する3価クロムイオンが膜を通して浸透するのも防止できる。
【0021】
陽極液は、メッキが全くなされない場合や僅かに広がっただけでは、クロムイオンによって汚染される。
陽極液中の6価クロムイオンの濃縮は、還元型としてのシュウ酸の陽極液への添加によって完全に防止することができる。
【0022】
ヘキサシアノ鉄酸塩のような物質の陽極液への添加、あるいは、GB 1 602 404中に記載されているようなチオシアン酸ナトリウムの陽極液への添加を完全に省くことができる。
【0023】
3価クロムを含む電解液から金属クロム層へのクロム析出するための析出機構の解説では、上記の析出が、3価クロムから2価クロムへの工程を経由して、さらに金属クロムに拡大して適用されることが前提となっている。
2価クロムは、3価クロムを形成するように空気中で非常に急速に酸化されるので、このカチオンを安定化させなければならない。
これは、好ましくは、アミノ酸または尿素を添加することによって達成できる。
【0024】
また一方で、2価クロムの酸化を防止するために、さらに不活性気体雰囲気の下で、電気メッキを実行することも可能である。
【0025】
陰極での水素生成の結果として、そして、膜を通してのイオンの輸送の結果として、クロム層の析出中にpH値が上昇するので、クロム析出の間の一定の条件は、電気メッキ浴槽の、pH値に関する継続的な監視によってのみ確保できる。
これは、好ましくは、pH計測セルを通って流れる陰極液を絶え間のなく循環させることによって達成される。
仮に、結果としてpH値の上昇が生じるならば、そのときは、その後、制御装置により、電解液中で酸を測定することができる。
【0026】
ある望ましい改良によって、絶え間のないメッキ工程において、酸は、陽極液から除去され、その後、陰極液中で測定される。
さらに、これに関しては、酸を、外部の酸用の容器を経由して陰極液に加えることができる。
【0027】
これに加えて、電気メッキ浴槽の温度を、さらにpH値によって制御するのが好ましい。
これは、温度計測セルを使用して監視され、それから冷却装置あるいは加熱装置によって所定値に調整することができる。
【0028】
硫酸アンモニウムクロム、硫酸カリウムクロム、塩化クロム、硫酸クロムからなるグループから、ある化合物が3価クロム塩として選択されるか、または、その混合物が使用されるのが好ましい。
3価クロム塩の濃度に関しては、好ましくは0.1mol/l から陰極液中の塩または塩の混合物の溶解度限界までとされている。
【0029】
2価クロムイオンを安定化させる化合物として、アミノ酸、尿素の誘導体、脂肪族、芳香族−脂肪族が混合した化合物、脂環式または芳香族アミンおよび/またはアミドが使用されるのが好ましい。
これらの化合物の濃度に関しては、好ましくは、陰極液に対して0.5mol/l から3mol/l 、さらに好ましくは、は0.5mol/l から1.2mol/l までとされている。
【0030】
さらに、ある望ましい改良によって、陰極液のpH値を中和するための中和物質が陰極液に加えられる。
これに関しては、ホウ酸/ホウ酸塩、クエン酸/クエン酸塩、アルミニウム3+/硫酸アルミニウム、シュウ酸/シュウ酸塩および/または酒石酸/酒石酸塩系からなるグループから選択されるのが好ましい。
【0031】
さらに、好ましくは、陰極液に、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジイソヘキシル、硫酸2−エチルヘキシル、スルホコハク酸ジイソブチル、スルホコハク酸ジイソアミル、および/または、スルホコハク酸イソデシルのようなアニオン性および中性界面活性剤からなるグループから選択された湿潤剤を加えることができる。
【0032】
さらに、本発明に係る電気メッキ浴槽によって、摩耗または腐食に対する保護のための硬質クロムメッキとしての、および/または、装飾的なクロムメッキとしてのクロム層の析出がなされる。
【0033】
電気メッキ浴槽は、少なくとも1種類の3価クロム塩および2価クロムイオンを安定化する少なくとも1種類の化合物からなる陰極液と、さらにプロトン酸からなる陽極液とが主成分となっている。
陰極液と陽極液とは、これまで通り、アニオン選択膜によって隔てられている。
【0034】
さらに、電気メッキ浴槽は、所定のpH値からのpH値の偏差を継続的に監視するための測定装置と、さらにpH値を所定値に調整するための少なくとも1つの制御装置と、を有している。
これは、これまで通り、酸または塩基の自動的な添加によって達成される。
【0035】
陽極は、寸法安定陽極(DSA)、すなわち上述の作業条件の下では溶解しない陽極とするのが好ましい。
本発明に係る寸法安定陽極としては、混合酸化物によりメッキされた、および/または、白金メッキされた、黒鉛、または、鉛合金、またはチタンからなる陽極とするのが好ましい。
メッキされたか、あるいは白金メッキされた陽極に関しては、一般にチタンにより形成されている。
【0036】
さらに、本発明によって、本発明に係る方法によって製造できる硬質クロム表面層が提供される。
【0037】
これらのクロム層は、その表面がEN ISO 6507に対応する少なくとも800HVのヴィッカース硬度を有するように、少なくとも5μmの厚さを有している。
クロム層の厚さは10μm より厚い方がよい。
電流密度によって、高光沢、或いは、つや消しのクロム層も析出可能である。
もちろん、その表面層は、装飾的な目的も果たすことができる。
【0038】
〔 例 〕
発明に係る実験材料は、後のものを、ここに示されている具体的な実施例に制限したくない、後に続く例について一層詳しく説明するためのものである。
〈比較例1〉
Atotech社のTrichrome(登録商標)電解液により析出されたクロム層 (図1参照)
槽の温度 : 30℃
電流密度 : 8 A/dm
析出時間 : 25分
(上記の製造会社の仕様書による。)
【0039】
《例1》
グリシン中の硫酸アンモニウムクロムによるメッキ (図2参照)
[陰極液および陽極液の構成]
陰極液 :
・ 硫酸アンモニウムクロム 400 g/l (これにより、クロムは10.6重量%に一致)
・ ホウ酸 40 g/l
・ グリシン 80 g/l
・ ラウリル硫酸ナトリウム 0.5 g/l
陽極液 :
・ HSO水溶液 30%
【0040】
[陰極液の準備]
(N. Rempfer,H-W Lerner,M. Bolte,Acta Cryst. (2004),E60,i80-i81に従って製造可能)
硫酸アンモニウムクロムは、80℃の脱イオン水を添加して、2時間加熱された。
その硫酸アンモニウムクロム溶液を40℃まで冷却した後で、ホウ酸とグリシンとが電解液に加えられた。
その後、アンモニアの添加による最初のメッキの前に、pH値が2.25のpH値に調整された。
使用されたpH測定器は40℃に調整された。
陽極液(30%の硫酸)と陰極液(硫酸アンモニウムクロムバッチ)とがアニオン交換膜によって隔てられているメッキセルの中で、電気メッキによるクロムの析出が生じた。
析出中の浴槽の温度は40℃±2℃であった。
選択されたpH値はpH2.2とpH2.3との間であった。
試験中には白金メッキされたチタンが陽極として使用された。
直径1cm、長さ10cmの円筒状の回転体がメッキされた。
試験片は鋼鉄で作られていた。
メッキ前に、試験片は、アルカリ溶液の中で、60℃で5分間、陰極脱脂され、次に脱イオン水中で、1 A/dm の電流密度で30秒間ゆすがれ、そして、メッキの前に5%の硫酸中に直接、30秒間浸されていた。
メッキ中、円筒状の試験片は50 回/分で回転された。
陰極の電流密度として、15 A/dm がセットされた。
陰極液のpH値は、陽極液を測定することによって、2時間のメッキ中、2.25に維持された。
【0041】
[結果] (図3参照)
・ 光学顕微鏡(Zeiss社製Axioplan)を使用して測定された層厚は52.8μm
・ 微小硬さ試験機(Anton Paar社製 MH−T4)で測定された硬度は833HV
(テスト負荷 50p,10s,5p/s)
【0042】
《例2》
ジエタノールアミン中の硫酸アンモニウムクロムによるメッキ
例1と同様、ジエタノールアミンがグリシンの代わりに使用された。
電解液のバッチおよび前処理されたサンプルは例1のものに対応している。
ジエタノールアミン1.1mol/l がグリシンの代わりに錯体形成体として使用される。
この試験中、pH値がpH2.3からpH2.5までに維持された。
【0043】
[結果]
・ 光学顕微鏡(Zeiss社製Axioplan)を使用して測定された層厚は58.5μm
・ 微小硬さ試験機(Anton Paar社製 MH−T4)で測定された硬度は855HV
(テスト負荷 50p,10s,5p/s)
【0044】
《例3》
硫酸クロムによるメッキ
例1と同様の試験、硫酸アンモニウムクロムの代わりに、40 gCr/l の濃度の3価クロムが使用された。
【0045】
[結果] (図5参照)
・ 光学顕微鏡(Zeiss社製Axioplan)を使用して測定された層厚は39.8μm
・ 微小硬さ試験機(Anton Paar社製 MH−T4)で測定された硬度は901HV
(テスト負荷 50p,10s,5p/s)
【0046】
《例4》
塩化クロムによるメッキ
陰極液 :
・ 塩化クロム 1 mol/l
・ 硫酸アルミニウム 40 g/l
・ グリシン 80 g/l
・ ラウリル硫酸ナトリウム 0.5 g/l
陽極液 :
・ HSO水溶液 30%
電解液のバッチおよび前処理されたサンプルは請求項1に係る方法に対応している。
ホウ酸の代わりに硫酸アルミニウムが中和物質として使用される。
さらに、ラウリル硫酸ナトリウムが湿潤剤として陰極液に加えられる。
【0047】
[結果] (図6参照)
・ 光学顕微鏡(Zeiss社製Axioplan)を使用して測定された層厚は10.8μm
・ 微小硬さ試験機(Anton Paar社製 MH−T4)で測定された硬度は862HV
(テスト負荷 50p,10s,5p/s)
【0048】
《例5》
尿素中の硫酸アンモニウムクロムによるメッキ
例1と同様、尿素がグリシンの代わりに使用された。
電解液のバッチおよび前処理されたサンプルは例1と一致している。
尿素2mol/l がグリシンの代わりに錯体形成体として使用された。
この試験中は、pH値がpH2.3からpH2.5に維持された。
【0049】
[結果] (図7参照)
・ 光学顕微鏡(Zeiss社製Axioplan)を使用して測定された層厚は28μm
・ 微小硬さ試験機(Anton Paar社製 MH−T4)で測定された硬度は780HV
(テスト負荷 50p,10s,5p/s)
【0050】
《例6》
アラニン中の硫酸アンモニウムクロムによるメッキ
例1と同様、アラニンがグリシンの代わりに使用された。
電解液のバッチおよび前処理されたサンプルは例1と一致している。
錯体形成体としてのグリシンの代わりに、アラニン1mol/l が使用された。
この試験中は、pH値がpH2.3からpH2.5に維持された。
【0051】
[結果] (図8参照)
・ 光学顕微鏡(Zeiss社製Axioplan)を使用して測定された層厚は59.5μm
・ 微小硬さ試験機(Anton Paar社製 MH−T4)で測定された硬度は760HV
(テスト負荷 50p,10s,5p/s)
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来の3価クロム電解液によるクロム層
【図2】試験プラントの図
【図3】グリシン浴槽によるサンプル
【図4】ジエタノールアミン電解液によるサンプル
【図5】グリシン硫酸クロム電解液によるサンプル
【図6】グリシン塩化クロム電解液によるサンプル
【図7】尿素電解液によるサンプル
【図8】アラニン電解液によるサンプル
【発明を実施するための形態】
【0053】
図2は、本発明の工程の図を示している。
【0054】
電力および制御ユニット1は電解液の後述の変数を監視し、そして、プラントの対応する部分を、制御信号を送信することによって制御する。
− 電解液の温度
− 電解液のpH
− 電解液の再循環(recirculation)
− 陽極液の再循環
− メッキされる該当部分を電気メッキするための電流
【0055】
塩基用のポンプ2を使用することによって、pHが減少した場合に、pHを増加させる液体から選択された塩基、例えば、アンモニアが電解液に加えられる。
この塩基は、容器3に保管されている。
ポンプ2は、電力および制御ユニット1から制御信号を受信する。
酸用のポンプ4の使用によって、液体がpHを減少させる陽極液に加えられる。
pHを減少させる液体としては、希釈された硫酸が好ましい。
ポンプ4は、電力および制御ユニット1から制御信号を受信する。
pH測定器5は、計測セル6内のpHプローブからの信号を増幅し、そして、信号は電力および制御ユニット1に送られる。
ポンプ7は、容器14から取り出された、きれいな電解液を計測セル6に供給する。
計測を終えた後に、電解液は、容器14に再循環される。
陽極膜9は、アニオン交換膜に封入された陽極である。
封入された陽極は、希釈された硫酸が循環されて、内側が洗浄される。
硫酸は、陽極液ポンプ10によって、容器8から陽極膜9まで輸送される。
硫酸は、陽極で酸素の排出を引き起こす働きをする陽極膜の第2オリフィスまで続く。
さらに、電解液ポンプ11は、電解液を、フィルタユニット12を通して容器から継続的に輸送し、そして、循環させて容器14に戻す。
この工程13において、メッキされる該当部分は、その中央に示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗または腐食に対する保護のための硬質クロムメッキとしての、および/または、装飾的なクロムメッキとしての、クロム層の析出方法であって、
該当部分は陰極として接続され、かつ、少なくとも1種の3価クロム塩と2価クロムイオンを安定化させる少なくとも1種の化合物とからなる陰極液中に浸され、
陰極液と陽極液とがアニオン選択膜によって隔てられた状態で、ブレンステッド酸からなる陽極液が使用され、
そして、さらに、少なくとも1つの測定装置によって、所定のpH値からのpH値の偏差が継続的に監視され、
そして、少なくとも1つの制御装置によって、酸または塩基の自動的添加により前記pH値が前記所定値に調整されることを特徴とするクロム層の析出方法。
【請求項2】
前記pH値を調整するために、前記酸が前記陰極液の後で測定されるように、前記酸が前記制御装置によって前記陽極液から除去されることを特徴とする請求項1に記載のクロム層の析出方法。
【請求項3】
電気メッキ浴槽の所定値からの温度の偏差が温度測定装置によって継続的に監視され、
そして、加熱、および/または、冷却装置によって前記電気メッキ浴槽の温度が前記所定値に調整されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクロム層の析出方法。
【請求項4】
前記3価クロム塩が、硫酸アンモニウムクロム、硫酸カリウムクロム、塩化クロム、硫酸クロム、および、その混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項5】
前記3価クロム塩が、0.1mol/l から前記塩の溶解度限界までの濃度の前記陰極液中で使用されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項6】
2価クロムイオンを安定化させる化合物が、アミノ酸、尿素、脂肪族、芳香族−脂肪族、脂環式または芳香族アミン、および/または、アミドからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項7】
前記2価クロムイオンを安定化させる化合物が、0.5mol/l から3mol/l までの、好ましくは、0.5mol/l から1.2mol/l までの濃度の前記陰極液中で使用されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項8】
前記陰極液のpH値を中和するための中和物質が陰極液に添加されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項9】
前記中和物質が、ホウ酸/ホウ酸塩、クエン酸/クエン酸塩、アルミニウム3+/硫酸アルミニウム、シュウ酸/シュウ酸塩、および/または、酒石酸/酒石酸塩系からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1ないし請求項8のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項10】
湿潤剤が、前記陰極液の他に加えられることを特徴とする請求項1ないし請求項9のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項11】
前記湿潤剤が、好ましくは、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジイソヘキシル、硫酸2−エチルヘキシル、スルホコハク酸ジイソブチル、スルホコハク酸ジイソアミル、および/または、スルホコハク酸イソデシルのようなアニオン性、および/または、中性界面活性剤からなるグループから選択された湿潤剤から選択されることを特徴とする請求項1ないし請求項10のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項12】
前記陽極液が硫酸を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項11のうち何れか1項に記載のクロム層の析出方法。
【請求項13】
摩耗または腐食に対する保護のための硬質クロムメッキとしての、および/または、装飾的なクロムメッキとしての、メッキクロム層の析出のための電気メッキ浴槽であって、
少なくとも1種類の3価クロム塩と2価クロムイオンを安定化させる少なくとも1種類の化合物とからなる陰極液と、
陰極液と陽極液とがアニオン選択膜によって隔てられた状態で、プロトン酸からなる陽極液と、
さらに、所定のpH値からのpH値の偏差を継続的に監視するための少なくとも1つの測定装置と、
酸または塩基を自動的に添加することによって前記pH値を所定値に調整するための少なくとも1つの制御装置と、
を有する電気メッキ浴槽。
【請求項14】
前記陽極液から酸を除去するための前記制御装置が前記陽極液と接触し、かつ、前記陰極液中の酸の測定のために前記陰極液と接触することを特徴とする請求項13に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項15】
前記3価クロム塩が、硫酸アンモニウムクロム、硫酸カリウムクロム、塩化クロム、硫酸クロム、および、その混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項13または請求項14に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項16】
前記陰極液中の前記少なくとも1種類の3価クロム塩の濃度が、前記塩の0.1molから前記溶解度限界までであることを特徴とする請求項13ないし請求項15のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項17】
2価クロムイオンを安定化させる前記化合物が、アミノ酸、尿素、脂肪族、脂環式、または、芳香族アミン、および/または、アミドからなるグループから選択されることを特徴とする請求項13ないし請求項16のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項18】
2価クロムイオンを安定化させる前記化合物が、0.5mol/l から3mol/l までの、好ましくは0.5mol/l から1.2mol/l までの濃度で前記陰極液中に存在していることを特徴とする請求項13ないし請求項17のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項19】
前記陰極液が前記陰極液のpH値を中性にするための中和物質を含むことを特徴とする請求項13ないし請求項18のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項20】
前記中和物質が、ホウ酸/ホウ酸塩、クエン酸/クエン酸塩、酒石酸/酒石酸塩、アルミニウム/硫酸アルミニウ系からなるグループから選択されることを特徴とする請求項13ないし請求項19のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項21】
前記陰極液が、さらに湿潤剤を含むことを特徴とする請求項13ないし請求項20のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項22】
前記湿潤剤が、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、スルホコハク酸ジイソヘキシル、硫酸2−エチルヘキシル、スルホコハク酸ジイソブチル、スルホコハク酸ジイソアミル、および/または、スルホコハク酸イソデシルのようなアニオン性、および/または、中性界面活性剤から選択されることを特徴とする請求項13ないし請求項21のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項23】
前記陽極液が硫酸を含むことを特徴とする請求項13ないし請求項22のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項24】
前記電気メッキ浴槽が寸法安定陽極(DSA)を有することを特徴とする請求項13ないし請求項23のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項25】
前記寸法安定陽極(DSA)が、黒鉛、または、鉛合金からなる陽極、混合酸化物によってメッキされた陽極、および/または、白金メッキされた陽極からなるグループから選択されることを特徴とする請求項13ないし請求項24のうち何れか1項に記載の電気メッキ浴槽。
【請求項26】
請求項1ないし請求項12のうち何れか1項に記載の方法によって形成可能とされることを特徴とする硬質クロム表面層。
【請求項27】
前記クロム層の厚さが少なくとも5μmであり、かつ、前記該当部分の表面層が少なくとも800HVのEN ISO 6507に準じたヴィッカース硬度を有することを特徴とする請求項26に記載の硬質クロム表面層。
【請求項28】
前記クロム層の厚さが、少なくとも10μmであることを特徴とする請求項26に記載の硬質クロム表面層。
【請求項29】
前記表面層が装飾的な目的のための役割を果たし、かつ、5μmより薄い層厚を有していることを特徴とする請求項26に記載の硬質クロム表面層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−545669(P2009−545669A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522168(P2009−522168)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006783
【国際公開番号】WO2008/014987
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(504174917)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト・ツァー・フォデラング・デル・アンゲワンテン・フォーシュング・エー.ファウ. (26)
【Fターム(参考)】