説明

硬質フォーム材を作成する方法、及び減少した粘度を有する樹脂材料を作成する方法

硬質フォーム材を作成する方法であって:硬化可能な液体マトリックス材を提供するステップと;前記液体マトリックス材と複数のマイクロスフェアを混合するステップと;ナノ粒子を前記マトリックス材に加えるステップと;前記マトリックス材、前記マイクロスフェア、及び前記ナノ粒子を含む混合物を硬化させるステップと;を有する方法が示されている。ナノ粒子をマトリックス材に加えることによって、液体マトリックス材、及びマイクロスフェアを含む混合物の粘度をかなり減少させることができる。このことにより、マイクロスフェアを、体積割合で60%を超える非常に高い割合で含む混合物でさえ、扱うことができ、型に注入することができ、かつ/また、脱ガスをすることができる。したがって、低い単位体積重量、及び高い電気絶縁特性を有する硬質フォーム材を生成することができる。さらにまた、減少した粘度を有する液状材料を作成する方法が提案される。上記の方法は、液状材料を提供するステップと、ナノ粒子を液状材料に加えるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、例えば高電圧発生器の高圧絶縁材として使用することができる硬質フォーム材を作成する方法に関する。さらにまた、本発明は発明の方法によって作成される硬質フォーム材に関し、高電圧発生器がこの種の硬質フォーム材を使用するX線システムに関する。また、本発明は、減少した粘度(reduced viscosity)を有する液体樹脂材料を作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
新しいタイプのX線システムの高電圧発生器用のための電気的絶縁ハウジングは、いわゆるハイブリッド材料又はシンタクチックフォームで形成され得る。特許文献1(WO 03/074598)は、複数のマイクロスフェアを有するシンタクチックな硬質フォームを生成する方法を開示する。マイクロスフェアは、マイクロスフェアを囲むマトリックス材としてインプリメントされる。高密度にマイクロスフェアを包含させ、これによって、フォームに対して低い単位体積重量を達成し、フォームを生成するために、液体マトリックス材とマイクロスフェアとが容器内で混合される。この種の混合内のマイクロスフェアを緩和させるための時間の後、マイクロスフェアは、液体マトリックス材の表層に蓄積する。液体マトリックス材は、最後にマイクロスフェアを含むレイヤーが容器の底面に配置されるように、容器から部分的に取り除かれる。最後に、マイクロスフェアを回りに有するマトリックス材は、硬化し、軽い、安定した硬質フォーム材を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO03/074598
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気的に高度な絶縁材料であるため、このようなフォーム材は、例えば高電圧発生器内の絶縁の目的で用いることができる。これは、例えば、X線システムで使用され得る。この目的のために、液体マトリックス材とマイクロスフェアとを含む混合流体が、絶縁要素を作成するために型に入れられ、その後、この混合体は、例えば一定時間、高温の状態に置かれることにより、硬化する。その結果として生じる固体フォーム材は軽く、かつ、理論的には、マイクロスフェアの割合が高ければ高いほど、よりよい電気絶縁材となる。
【0005】
しかしながら、液体マトリックス材内のマイクロスフェアの量については、従来は、体積割合(vol.%)として、60ないし65%より高い数値にするべきでないと見られていた。なぜなら、マイクロスフェアの割合が高い液体マトリックス材の混合は、充填物の割合が高いため、粘性に関して悪い特性となる傾向があるからである。この種の高い粘性は、硬化プロセスの前に型に充填するときに、流動性が悪くなることがある。加えて、この種の高いマイクロスフェアの内容物は、最終的な混合流体のガスバブルや空洞を除くための脱ガス処理の障害となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の開示]
硬質フォーム材を作成する方法のための必要性が存在する。これによって、従来の方法の上述の課題の少なくとも幾つかは、少なくとも解決される。特に、マイクロスフェアが高い割合で含まれる液体マトリックス材を、例えば型に充填する際に容易に扱える硬質フォーム材を作成する方法の必要性が存在する。更に、従来の硬質フォーム材のマイクロスフェアの量を超える(例えば体積割合60%を超える)、マイクロスフェアを含む硬質フォーム材を作成する方法の必要性が存在する。さらにまた、硬質フォーム材を作成する方法の必要性が存在する。更に、硬質フォーム材を有する高電圧発生器、及びこの種の高電圧発生器を含むX線システムを作成するために、この種の方法で作成された硬質フォーム材の必要性が存在する。
【0007】
更にまた、減少した粘度(reduced viscosity)を有する液体樹脂材料の必要性が存在する。
【0008】
これらの必要性は、独立請求項の一つにより達成される。本発明の有利な実施例は、従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、硬質フォーム材を作成する方法が提案される。この方法は、硬質フォーム材を作成する方法であって:硬化可能な液体マトリックス材を提供するステップと;前記液体マトリックス材と複数のマイクロスフェアを混合するステップと;ナノ粒子を前記マトリックス材に加えるステップと;前記マトリックス材、前記マイクロスフェア、及び前記ナノ粒子を含む混合物を硬化させるステップと;を有する。
【0010】
本発明の別の態様によれば、減少した粘度を有する液状材料を作成する方法が提案される。この方法は、液状材料を提供するステップと、ナノ粒子を液状材料に加えるステップとを有する。それが例えば対象物をコーティングするめに使用され得るよう、液状材料は例えば樹脂又はニスであってもよい。
【0011】
この方法のステップは、上述の順序で実行され得ることに留意すべきである。すなわち、マトリックス材は、まずマイクロスフェアと混合され、そしてその後、この混合物にナノ粒子が加えられる。しかしながら、方法ステップを実行する他の順序についても、上記第1の発明に基づく方法の技術的範囲に属する。
【0012】
本発明の内容は、以下に記載する発見に基づいている。
【0013】
驚くべきことに、本願発明の発明者は、マイクロスフェアを、高い体積含有率で混合させた液体マトリックス材を含む混合物に特定の量のナノ粒子を加えることにより、全体の混合物の粘性をかなり(例えば3倍)減少させることができることを発見した。例えば、体積割合60%でマイクロスフェアが含まれる硬化性樹脂の混成は、12パスカル秒(Pas)の粘性を呈し得ることが観測された。加えて、体積割合5%ナノ粒子を足した場合、3倍、粘度が減少した。この場合、4パスカル秒となった。したがって、追加のナノ粒子が無い混合物は、流動特性の減少のために、硬質フォームコンポーネントを生成することは難しいが、ナノ粒子を加えることにより、流動特性は、非常に高くなり、生成された混合物は、硬質フォームの素材を形成するために型に容易に入れることができるようになった。
【0014】
さらにまた、上述のように生成されたフォーム材は、絶縁特性が向上していることが観測された。このような効果を有するアプローチを理解することによって、電気的絶縁特性が向上したモデルを考案した。これは、改善されたトリーイング(treeing)と呼ばれる。この場合、中空空間を含む材料に高圧を与えた場合、自由電子が加速され、かつ、隣接した分子上へ衝撃を与え得ることを意味し、これによって、材料は破損し得る。添加されたナノ粒子を含ませることによって、影響の前の電子の自由伝達の長さは減少し、これによって、劣化作用のある電子の運動エネルギーを減少させ、その破壊の効果を減少させる。したがって、絶縁特性は向上し得る。
【実施例】
【0015】
以下、本願発明の実施例の特長、詳細、及び効果を述べる。用語「硬質フォーム材」は、広義に解釈されなければならない。これは、「バブル」又はマイクロスフェアが含まれる硬化したマトリックス材を有する。その中で、「硬質」とは、フォームが不可逆的に破壊されない限り、変形することができないという意味において「完全に硬質に」という表現として解釈されてもよい。デュロプラスチッ材料のような固体の、固い硬化したマトリックス材が使用される場合、これが達成されうる。しかしながら、「硬質」の表現は、また、フォームが、不可逆的に破壊せずに、ある程度まで弾性力をもって変形することができる場合「半硬質」にも用いられる。これは、シリコンのように、硬化が行われた後も、弾性が残るマトリックス材であってもよい。
【0016】
液体マトリックス材は、通常の準備の状態では、液状であり、マイクロスフェアと混合することができ、その後、硬化させることができ、マイクロスフェアの混入した硬質又は半硬質のマトリックスが生成される。例えば、液体マトリックス材は、二つのコンポーネントの材料であり、第1のコンポーネントとしての樹脂(例えばエポキシ樹脂)と、第2のコンポーネントとしてのバインダ又は硬化剤を加えることによって、硬化させることができる。あるいは、液体マトリックス材は、例えば熱の形で例えばエネルギーを与えることによって硬化させることができる一つのコンポーネントからなる材料であってもよい。さらに別の方法として、液体マトリックス材は、マイクロスフェアと混合した後に、剛性マトリックスを生成するために重合によって硬化させることができるポリマーであってもよい。可能なマトリックス材の例としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂又は他のデュロプラスチック硬化材料が挙げられる。あるいは、シリコン又は熱可塑性物質がマトリックス材として用いられてもよい。
【0017】
用語としての「マイクロスフェア」は、本願明細書において広義に解釈されなければならない。マイクロスフェアは、ガス、液体及び/又は固体成分を含む中空球か又はこの種の材料から構成されてもよく、及び/又は、例えば材料に含まれる発泡フォーム剤による膨張によってできる中空空間を更に含んでもよい。「マイクロスフェア」は、球面形状を有していてもよく、あるいは、これに代えて、中空の他の形状であってもよい。マトリックス材中で、マイクロスフェアの高い密度を得るために、大きいマイクロスフェアと小さいマイクロスフェアとを含むマイクロスフェアの混合が用いられてもよい。大きいマイクロスフェア間の隙間に対応する小さいマイクロスフェアが入り込むように、マイクロスフェアの直径を選択してもよい。高圧絶縁材の硬質フォーム材の使用のために、直径略5−100μmのマイクロスフェアが特に適切であることが分かっている。そして、大きな直径のマイクロスフェアは、30から100μmの直径を有し、小さい直径マイクロスフェアは、5から30μmの範囲の直径を有してもよい。しかしながら、特に軽い単位体積重量が要求されるケースでは、例えば1000のμmまでの、より大きい直径のマイクロスフェアが使用されてもよい。
【0018】
マイクロスフェアは、ガラス、セラミック又はフェノール樹脂、アクリロニトリルコポリマー又は他のいかなる絶縁材(例えば熱可塑性あるいはデュロプラスチック塑性物質)から生成されてもよい。
【0019】
マイクロスフェアは、例えば六フッ化硫黄(SF)又はイソペンタン又はその他のガスを含んでもよい。ガスは、マイクロスフェアの大きさによって、高圧あるいは低圧の状況であり得る。これによって、高電圧の容量、及び/又は、外部からの圧力に対する剛性を向上させることができる。適用に応じて、少なくとも中空マイクロスフェアの部分を固体及び/又は液状材料を含む球体に交換することが有利であり得る。マイクロスフェアの生成の詳細は、従来技術として知られているため本願明細書では説明を省略する。液体マトリックス材に加えられるナノ粒子は、マイクロメートル・スケール以下の寸法を有するいかなる小さい粒子であってもよい。例えば、ナノ粒子は、1から500ナノメートル、好ましくは、5から100ナノメートルの間のサイズを有してもよい。ナノ粒子は、一、二又は三次元的構造の何れであってもよく、例えばナノチューブ、ナノプレート(nanoplates)、ナノボール(nanoballs)、ナノグレイン(nanograins)又は他のいかなる構造を有してもよい。ナノ粒子は、これらをマトリックス材に混合する前又はその後に、固まりとなったり、粘着してしまったりする傾向にならないよう、作成され扱われることを担保することが重要である。さもないと、固まりとして形成されたものは、ナノ粒子として振る舞うことができず、マイクロ粒子として振る舞うこととなり、同じナノ粒子の有利な効果を奏さなくなってしまう。
【0020】
二つのコンポーネントのマトリックス材に加えられるバインダは、最終的に固体のマトリックス材を形成するために、液体マトリックス材の硬化を開始させるか促進させる物質であってもよい。
【0021】
マトリックス材、マイクロスフェア、ナノ粒子、及び任意に、バインダを含む混合物については、作成される硬質フォーム要素の形状をしている対応する型に混合物が注入された後に硬化が実行されてもよい。硬化プロセスは、例えば外側からの熱の形で混合物にエネルギーを提供することによって、開始されあるいはサポートされてもよい。加えて、硬化は、付加的な化学物質の供給によって開始されてもよく、あるいは促進されてもよい。
【0022】
上述の物質、及び材料に加えて、硬質フォーム材を形成しているコンポーネントに、更なる物質を加えることができる。例えば、周知の含水(wetting)及び/又は分散(dispersing)添加物が、シキソトロピー(thixotropy)及び/又は物質的な混合物の粘性を制御するために導入されてもよい。さらにまた、粘着促進剤(adhesion promoter)が、マトリックス材に対するマイクロスフェアの粘着力を改善するために加えられてもよい。これによって、生成された絶縁硬質フォーム材の高い電圧安定性が更に増加し得る。ガラス又はセラミックからできたマイクロスフェアの場合には、ポリマー又は樹脂基体に対する粘着力は、シラン化によって増加することで約0.1〜0.3%増加する。マイクロスフェアがプラスチックでできている場合、高分子マトリックスに対する粘着力はプラスチック球体を炭酸カルシウムで被覆することによって改善され得る。
【0023】
本発明の一実施例によれば、ナノ粒子は、マイクロスフェアを加えた後のマトリックス材の量に対して、体積割合で0.5から20%の間で、好ましくは1から10%の間で、より好ましくは、3から6%の間、さらに、より好ましくは、4から5%の間の量が加えられる。加えられたナノ粒子のこの程度の量は、その結果として生じる混合物の粘性を都合よく減らすことができることが分かっている。体積割合1%未満のナノ粒子を加えることは実質的に粘性を減らすことにならない。なお、10%を超える添加は、他の不利な効果を生じることがある。
【0024】
本発明の他の実施例によれば、ナノ粒子は、以下のグループの少なくとも1つの材料を有する。すなわち、AlN(窒化アルミニウム)、Al(三酸化ジアルミニウム(dialuminium trioxide)、MgO(酸化マグネシウム)、SiC(炭化ケイ素)、SiO(二酸化ケイ素)、TiO(酸化チタン(IV))、ZnO(酸化亜鉛)、C(カーボン又はダイヤモンド)、シリコンナノパウダ、又はcloisite(登録商標)ナノクレイ(nanoclays)から少なくとも一つの材料を有する。この種の材料のナノ粒子は、マトリックス材、及びマイクロスフェアを含む混合物の粘性に対する有利な影響を示すことがわかった。
【0025】
詳細には、AlNナノ粒子は、100ナノメートル未満のサイズ、及び40,99の分子量(molar weight)を有し得る。Alナノ粒子は、n−パウダ(n−powder)、又は、重量比10%の水中での分散(dispersion)の形で提供することができる。ここで、分子は50ナノメートル未満のサイズ、及び101,96の分子量を有してもよい。MgOを含むナノ粒子は、50ナノメートル未満の粒径、及び40,3の分子量を有してもよい。SiCのナノ粒子は、100ナノメートル未満の粒径、及び40,1の分子量を有してもよい。SiOのナノ粒子は、球形あるいは多孔性でもよく、かつ、5−15ナノメートルの粒径で、ナノパウダとして、又は金属ベースに10−20ナノメートルの粒径を有し、いずれの場合においても、60,08の分子量を有するかたちで、提供されてもよい。TiOのナノ粒子は、ルチルとして提供されてもよく、かつ、10×40nm、及び79,87の分子量を有してもよい。ZnOでできているナノ粒子は、100ナノメートル未満の粒径、及び81,39の分子量を有してもよい。あるいは、ZnOが6%のAlによってドーピングされている場合には、粒径は50ナノメートルより小さくてもよい。Cでできているナノ粒子は、50ナノメートル未満の粒径、及び12,01の分子量を有してもよい。ナノ粒がダイヤモンド構造のCでできている場合、又は、金属ベースである場合、粒径は10ナノメートルより小さく、12,01の分子量であってもよい。シリコン・ナノ粒子から作られるナノ粒子は、100ナノメートル未満の粒径で、28,09の分子量を有してもよい。あるいは、ナノ粒子又はナノクレイ(nanoclays)は、非常に低い経費で提供することができるcloisite(登録商標)30Bで作ることもできる。
【0026】
本発明の他の実施例によれば、ナノ粒子は、乾燥粉末の形式のマトリックス材に加えられる。この種の乾燥粉末は液体マトリックス材に容易に混合することができる。そして、それは、かき混ぜることによって、任意にすでにマイクロスフェアを有する。
【0027】
本発明の他の実施例によれば、ナノ粒子は、ナノ粒子が含まれる溶媒を含む液溶体の形式で、マトリックス材に加えられる。この種の実施例は液体であるため、液体マトリックス材に容易に混ぜ合わせることができる。溶媒は、脱ガスによって例えば、その結果として生じる混合物から除去することができる。あるいは、これは、混合物のままでもよく、かつ最終的な硬質フォーム材に含まれ得る。ナノ粒子は、かき混ぜることによって、混合され、かつ溶媒内で分散し得る。あるいは、ナノ粒子は、最初は溶媒内で大きくなることができる。この種の溶液は、周知のソルゲル法によって例えば取得されてもよい。例えば、この種の、その場での(in−situ)成長によって、最大で体積割合40%のナノ粒子を提供することができる。ナノ粒子を含む溶液は、例えば硬化可能なマトリックス材の樹脂、あるいは、バインダの一つのコンポーネントとして、提供されてもよい。いずれにせよ、ナノ粒子は、マトリックス材の中で等しく分散し又は均一に分布しなければならず、その結果として生じる混合物の均質な粘性を担保する。ナノ粒子がより大きいクラスタとしてかたまりにならないことを担保しなければならない。
【0028】
本発明の他の実施例によれば、マイクロスフェアについては、マトリックス材の量と比較して、体積割合で60%を超え、より好適には65%を超え、さらに好適には70%を超える量がマトリックス材に混合される。マイクロスフェアの量は、90%まで上げてもよい。硬質フォーム材を生成する従来の方法では、マイクロスフェアの量がこのように高い場合、高い粘度となってしまい、たとえば、型に充填するためのハンドリングに適さなくなってしまう。これに対して、ナノ粒子を加えることによって、このような高濃度のマイクロスフェアであっても、その結果生じる混合物は、依然として、例えば型に入れるためのハンドリングが可能である。この種のマイクロスフェア・コンテンツを多く含み、その結果として生じる硬質フォーム材は、好適にも軽量であり、電気絶縁性を改善し得る。
【0029】
本発明の他の実施例によれば、本方法は、マトリックス材、マイクロスフェア、及びナノ粒子、さらに、バインダ及び/又は更なる添加物を少なくとも含む混合物の脱ガスのステップを更に有してもよい。脱ガスは、混合物を硬化させる前に、液体マトリックス材、及びマイクロスフェアを含む混合物内からバブル又はボイドを取り除くために重要であり得る。ナノ粒子を加えることによって混合物の粘性が減少するため、この種の脱ガスは添加されるナノ粒子を含まない先行技術の方法と比較してより早い速度で実行され得る。提案された方法で使用される液体(マトリックス)素材は、硬質フォーム材を作成することに特別に適していてもよい。例えば、その結果として生じる硬質フォーム材が高電圧発生器を絶縁するために使用され得るように、絶縁性が特に選択されてもよい。なお、また、例えば樹脂、ニス、コーティング、フィラー、などのような他の液状材料が使用されてもよい。この種の液状材料は、対象物のコーティング、塗装、充填、接着又はシールのために使用されてもよい。例えば、建築産業のための、例えば、木材の液体塗装製品は、木材製品の表面を被覆するために液状樹脂を使用し得る。木の製品の表面が多孔性であるため、液体木材塗装製品の粘性が改善することによって、木製品の孔への液体木材塗装製品の浸透を改善し、粘着力が強化され、おそらくこのことにより、剥離を防止し得る。
【0030】
上記した方法によって作成される硬質フォーム材に係る本発明の更なる態様によれば、この種の硬質フォーム材を含む高電圧発生器、及びこの種の高電圧発生器を備えるX線システムが提供される。実施例のうちの1つにおける上記の方法によって作成される硬質フォーム材は、非常に軽い単位体積重量0.5g/cmを有し、さらに、非常に良好な電気絶縁特性を有し得る。このことは、マトリックス材中でのマイクロスフェアの高い濃度、かつ更に、ナノ粒子の追加の結果としての減少した粘度によるによる有利な脱ガス特性に少なくとも依るところである。したがって、その結果として生じる硬質フォーム材は、例えば高電圧発生器又は高圧電源ユニット中の高圧絶縁材に使われうる。これは、据え付けあるいは可動可能(例えば回転可能)なものに用いられ得る。例えばX線のシステムである。例えば、硬化の前に、液体マトリックス材、マイクロスフェア、及びナノ粒子及び任意に、バインダを含む混合物は、成形材料として使用されてもよい。これは、凹部を有し、その中に高圧コンポーネントが設置され、周囲からの電気的絶縁を担保する。
【0031】
態様、及び本発明の実施例が、異なる主題に関して記載された点に留意しなければならない。特に、一部の実施例は、方法の請求項を参照して記載されており、他の実施例は、装置の請求項を参照して記載されている。しかしながら、当業者は、上述および以下の記載から、一つのタイプの主題に属する特長の組合せに加えて、異なる主題に関連する特長のいかなる組合せについても、明示的にそれを排除していない限り、行うことができる。特に、装置タイプの請求項の特長と、方法タイプの請求項の特長とを組み合わせることもできる。そして、それらの組合せも、本願明細書に開示されている事項であると認識するべきである。
【0032】
最後に、「有する」、「含む」等は、他の要素又はステップを排除しない。そして、「a」および「an」は、複数の要素を排除しない。また、異なる実施例に関連して記載されている要素は、結合されてもよい。また、請求項の参照符号は、請求項の範囲を制限するように解釈されてはならない点に留意すべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質フォーム材を作成する方法であって:
− 硬化可能な液体マトリックス材を提供するステップと;
− 前記液体マトリックス材と複数のマイクロスフェアを混合するステップと;
− ナノ粒子を前記マトリックス材に加えるステップと;
− 前記マトリックス材、前記マイクロスフェア、及び前記ナノ粒子を含む混合物を硬化させるステップと;
を有する方法。
【請求項2】
減少した粘度を有する液状材料を作成する方法であって:
− 液状材料を提供するステップと;
− ナノ粒子を前記液状材料に加えるステップと;
を有する方法。
【請求項3】
前記液体マトリックス材又は前記液状材料は、硬化可能な二成分系樹脂、硬化可能な一成分系樹脂、ポリマー、デュロプラスチック材料、熱可塑性材料又はシリコンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ナノ粒子は、前記マトリックス材の体積に対して体積割合で1から10%の間の量が加えられる、請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、1から500ナノメートルの間のサイズを有する、請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、AlN、Al、MgO、SiC、SiO、TiO2、ZnO、C、シリコンナノパウダ、及びナノクレイのグループから少なくとも一つの材料を含む、請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、乾燥粉末の形式で前記マトリックス材に加えられる、請求項1ないし6のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子は、ナノ粒子が含まれる溶媒を含む溶液の形式で、前記マトリックス材に加えられる、請求項1ないし7のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記溶液は、体積割合で40%未満のナノ粒子を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
マイクロスフェアは、前記マトリックス材の体積に対して、体積割合で60%を超える量の前記マトリックス材に混合される、請求項1ないし9のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも前記マトリックス材、前記マイクロスフェア、及び前記ナノ粒子を含む混合物から脱ガスするステップを更に有する、請求項1ないし10のうちいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1および請求項3ないし11のうち何れか1項記載の方法によって作成される硬質フォーム。
【請求項13】
請求項12に記載の硬質フォーム材を有する、特に回動X線システムのために用いられる高電圧発生器。
【請求項14】
請求項13に記載の高電圧発生器を備えるX線システム。
【請求項15】
対象の表面を被覆するための液状材料であって、請求項1および請求項3ないし11の何れか1項記載の方法によって作成される前記液状材料。

【公表番号】特表2011−525286(P2011−525286A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511151(P2011−511151)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052236
【国際公開番号】WO2009/144675
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】