説明

硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物および硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】低密度であって、かつ優れた断熱性能を備え、戸建て住宅などの建築物用の断熱材として有用な硬質ポリウレタンフォームを製造するための原料となる、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物および硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリオール化合物、発泡剤である水を含有し、ポリイソシアネート成分と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜8000であって、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(A)と、分子量が250未満であるショートグリコール(B)と、を含有するポリオール化合物を使用し、ポリオール化合物100重量部に対して、水を20〜100重量部含有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤として水を含有する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、および低密度かつ優れた断熱性能を備える硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、戸建て住宅などの建築物の断熱材として、グラスウールが広く使用されている。グラスウールは、その断熱性能は必ずしも十分ではないが、安価であることが広く使用される理由であると考えられる。一方、硬質ポリウレタンフォームは、その断熱性能はグラスウールよりも優れる反面、価格が高価なために、グラスウールほど広く使用されていない。
【0003】
硬質ポリウレタンフォームの価格を下げる方法として、フォームの断熱性能を維持しつつ、その密度を低密度化することが考えられる。下記特許文献1では、数平均分子量が2000〜9000であるポリオキシアルキレンポリエーテルポリオールおよび数平均分子量が250〜750であるポリオキシアルキレンポリエーテルポリオールからなるポリオール組成物を原料とし、吹き付け工法によって、コア密度が2kg/m以上20kg/m以下である低密度硬質ポリウレタンフォームを製造する点が記載されている。しかしながら、かかる文献に記載のポリオール組成物を原料とした場合、セル荒れ(フォームの外観不良)、脆性(フォームのバサつき)などを考慮すると、フォームの低密度化には限界がある。また、かかる文献に記載の硬質ポリウレタンフォームは、吹き付け用途を想定しているため、低復元率であることが重要であり、フォームの柔軟性に劣る。
【0004】
下記特許文献2では、平均官能基数2.5〜4、水酸基価200〜300mgKOH/gのポリエーテルポリオールと、平均官能基数4〜6、水酸基価400〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオールと、平均官能基数2.5〜3.5、水酸基価20〜60mgKOH/gのポリエーテルポリオールと、ポリオール組成物を原料とし、連続スラブ発泡によって、コア密度が5kg/m以上14kg/m以下である低密度硬質ポリウレタンフォームを製造する点が記載されている。しかしながら、かかる文献に記載の硬質ポリウレタンフォームでも、セル荒れ(フォームの外観不良)、脆性(フォームのバサつき)などを考慮すると、やはりフォームの低密度化には限界がある。
【0005】
下記特許文献3では、(a) 官能基数2〜3.5、水酸基価28〜90mgKOH/gおよびポリオキシエチレン単位含有量が5重量%以下であるポリオキシアルキレンポリオール、 (b) 官能基数3〜6および水酸基価150〜500mgKOH/gであるポリオキシアルキレンポリオール、および(c) 官能基数2〜3および水酸基価450〜840mgKOH/gであるポリオールの混合物と、上記ポリオールの混合物100重量部に対して、発泡剤としての水6〜12重量部とを用いた連続気泡硬質ポリウレタンフオームの製造方法が記載されている。しかしながら、かかる製造方法では、フォーム強度の面からフォーム密度の下限を定めており、フォームの低密度化に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−293868号公報
【特許文献2】特許第4079254号公報
【特許文献3】特開平06−25375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低密度であって、かつ優れた断熱性能を備え、戸建て住宅などの建築物用の断熱材として有用な硬質ポリウレタンフォームを製造するための原料となる、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物および硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、ポリオール化合物、発泡剤である水を含有し、ポリイソシアネート成分と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、前記ポリオール化合物が、平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜8000であって、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(A)と、分子量が250未満であるショートグリコール(B)と、を含有し、前記ポリオール化合物100重量部に対して、前記水を20〜100重量部含有することを特徴とする。
【0009】
上記硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、発泡剤としての水を20〜100重量部含有する。このため、かかるポリオール組成物を原料として使用した場合、低密度の硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0010】
ところで、ポリオール化合物として高分子量のポリエーテルポリオールのみを含有する場合であって、ポリオール組成物中の水の配合量を増やすと、フォームの発泡段階で樹脂強度が不十分となり、フォーム内の発泡ガス抜けが多く発生し、フォームの収縮が発生し易くなる。その結果、フォームの低密度化が不十分となる傾向がある。しかしながら、上記硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物では、高分子量のポリエーテルポリオール(A)と共に分子量が250未満であるショートグリコール(B)を含有するため、フォームの発泡初期段階で増粘速度(樹脂化速度)が早くなる。これにより、高分子量のポリエーテルポリオール(A)に起因して、フォームの復元率が高まると共に、低分子量のショートグリコール(B)に起因して、フォームの発泡初期から樹脂強度が高まる。その結果、低密度であって、かつ柔軟性に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0011】
さらに、ポリオール組成物中に高分子量のポリエーテルポリオール(A)と低分子量のショートグリコール(B)とを含有するため、フォームを低密度化しても、フォームのセル径が小さくなる。その結果、フォームのセル荒れ(フォームの外観不良)を防止し、かつフォームのバサつきを抑えて脆性を小さくすることができる。
【0012】
上記硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、前記ポリオール化合物100重量部中、前記ポリエーテルポリオール(A)を10〜80重量部含有し、前記ショートグリコール(B)を10〜60重量部含有することが好ましい。かかる構成によれば、フォームの樹脂強度を高めつつ、フォームの復元率を高め、かつフォームのセル径を小さくすることができる。その結果、硬質ポリウレタンフォームを低密度化しつつ、脆性および柔軟性をさらにバランス良く向上することができる。
【0013】
上記硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物において、前記ポリオール化合物が、さらに平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜5000であって、プロピレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(C)を含有することが好ましい。ポリオール化合物として、プロピレンオキサイドの重合体である高分子量ポリエーテルポリオール(C)を含有する場合、フォームの発泡段階末期でフォームのセル膜が破れ、連続気泡硬質ポリウレタンフォームに成り易い。その結果、フォームの収縮などを抑えつつ、より確実にフォームを低密度化することができる。
【0014】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール化合物、発泡剤である水を含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合、反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、前記ポリオール化合物が、平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜8000であって、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(A)と、分子量が250未満であるショートグリコール(B)と、を含有し、前記ポリオール化合物100重量部に対して、前記水を20〜100重量部含有することを特徴とする。
【0015】
上記硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、前記ポリオール化合物100重量部中、前記ポリエーテルポリオール(A)を10〜80重量部含有し、前記ショートグリコール(B)を10〜60重量部含有することが好ましい。
【0016】
また、上記硬質ポリウレタンフォームの製造方法において、前記ポリオール化合物が、さらに平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜5000であって、プロピレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(C)を含有することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、ポリオール化合物として、平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜8000であって、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(A)と、分子量が250未満であるショートグリコール(B)と、を含有する。
【0018】
ポリエーテルポリオール(A)は、2〜4個の活性水素原子を有する開始剤に、アルキレンオキサイドを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールである。開始剤としては、具体的には例えば、脂肪族多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどの4官能アルコール類、脂肪族アミン(例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミンなどのアルキレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、芳香族アミン(例えば、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミンなど)などが挙げられ、これらはそれぞれ1種単独で用いても2種以上併用してもよい。開始剤として、脂肪族アルコールを用いることが好ましく、トリオール類を用いることがより好ましく、グリセリンを用いることが特に好ましい。また、ポリエーテルポリオール(A)は、平均官能基数が2〜4であり、2.5〜3.5であることがより好ましい。さらに、ポリエーテルポリオール(A)は重量平均分子量が3000〜5000であることがより好ましい。
【0019】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイドなどが挙げられる。これらの中でも、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを併用して、前記開始剤に開環付加重合させることが好ましい。その際、エチレンオキサイドの比率((エチレンオキサイド)/(エチレンオキサイド+プロピレンオキサイド))を5%〜30%とすることが好ましい。
【0020】
ポリエーテルポリオール(A)の水酸基価は、20〜100mgKOH/gであることが好ましく、30〜60mgKOH/gであることがより好ましい。この水酸基価が20mgKOH/g未満であると、ポリイソシアネート成分に対するポリオール組成物の粘度比が高くなり、混合時の攪拌不良につながる。逆に、100mgKOH/gを超えると、得られたポリウレタンフォームに適度な靱性を付与することが難しくなる。水酸基価は、JIS K1557−1:2007に準拠して測定される値である。
【0021】
分子量が250未満であるショートグリコール(B)は、例えばエチレングリコール(分子量62)、プロピレングリコール(分子量76)、ジエチレングリコール(分子量106)、ジプロピレングリコール(分子量134)、1,4−ブタンジオール(分子量90)、1,3−ブタンジオール(分子量90)、1,6−ヘキサンジオール(分子量118)、グリセリン(分子量92)、トリプロピレングリコール(分子量192)などが挙げられる。これらの中でも、フォームの樹脂強度をより確実に高めるためには、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびグリセリンが好ましく、ジエチレングリコールが特に好ましい。ショートグリコール(B)の分子量は、62〜200であることが好ましく、90〜150であることがより好ましい。
【0022】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物では、ポリオール化合物として、さらに平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜5000であって、プロピレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(C)を含有することが好ましい。ポリエーテルポリオール(C)は、2〜4個の活性水素原子を有する開始剤に、プロピレンオキサイドのみを開環付加重合させて得られたポリオキシアルキレンポリオールである。開始剤としては、上述した脂肪族多価アルコール、脂肪族アミン、芳香族アミンなどが挙げられ、特に限定されない。開始剤として、特に好ましくはグリセリンである。
【0023】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物では、低密度化しつつ断熱性能に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造するために、ポリオール化合物100重量部中、ポリエーテルポリオール(A)を10〜80重量部含有し、ショートグリコール(B)を10〜60重量部含有することが好ましく、ポリエーテルポリオール(A)を15〜70重量部含有し、ショートグリコール(B)を10〜50重量部含有することがより好ましい。また、ポリエーテルポリオール(C)を含有する場合、ポリエーテルポリオール(A)を10〜30重量部含有し、ショートグリコール(B)を10〜60重量部含有し、かつポリエーテルポリオール(C)30〜70重量部含有することが好ましく、ポリエーテルポリオール(A)を15〜25重量部含有し、ショートグリコール(B)を10〜50重量部含有し、かつポリエーテルポリオール(C)40〜60重量部含有することがより好ましい。
【0024】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物には、発泡剤として水が配合される。発泡剤は水単独であることが好ましく、その配合量は、ポリオール化合物100重量部に対して20〜100重量部であり、より好ましくは30〜90重量部であり、さらに好ましくは40〜80重量部である。このように水を多量に配合することで、ポリウレタンフォームの低密度化を図ることができる。
【0025】
本発明に係るポリオール組成物には、通常、難燃剤、触媒、および整泡剤が更に配合される。また、着色剤や酸化防止剤など、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物に配合される各種添加剤を更に配合してもよい。
【0026】
難燃剤としては、有機リン酸エステル類、ハロゲン含有化合物、水酸化アルミニウムなどの金属化合物が挙げられ、特に、有機リン酸エステル類がポリオール組成物の粘度低下効果を有するので好ましい。有機リン酸エステルとしては、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステルなどが挙げられる。具体的には、トリス(クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP、大八化学製)、トリブトキシエチルホスフェート(TBEP)、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェートなどが挙げられる。難燃剤の配合量は、ポリオール化合物100重量部に対して10〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは15〜40重量部である。特に、ポリオール組成物中、前記ポリエーテルポリオール(A)および前記ショートグリコール(B)に加えて、ポリオール化合物100重量部に対して難燃剤を20重量部以上含有すると、フォームの脆性悪化を防止することができるため好ましい。
【0027】
触媒としては、ウレタン化反応を促進する触媒であれば特に限定されないが、好ましくは、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基と反応することができる反応性のアミン触媒を用いることである。そのような反応性のアミン触媒としては、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−2−ヒドロキシプロピレンジアミン、N−ヒドロキシエチルモルホリン、N−メチル−N−ヒドロキシエチルピペラジン、N,N−ジメチルプロピレンジアミンなどが挙げられる。
【0028】
なお、通常の第3級アミン触媒を用いることもでき、そのような第3級アミン触媒としては、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ジアザビシクロウンデセン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンなどが挙げられる。
【0029】
触媒の配合量は、ポリオール化合物100重量部に対して2〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは3〜8重量部である。
【0030】
整泡剤としては、公知の硬質ポリウレタンフォーム用の整泡剤の中から、例えば、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの重合体であるポリオキシアルキレングリコールとポリジメチルシロキサンとのグラフト共重合体が挙げられ、ポリオキシアルキレン中のオキシエチレン基含有率が70〜100モル%のシリコーン整泡剤が好ましく用いられ、具体的には、SH−193、SZ−1671、SF−2937F、SF−2938F(東レダウコーニングシリコーン社製)、B−8465、B−8467、B−8481(エボニックデグサジャパン社製)、L−6900(モメンティブ社製)などが挙げられる。整泡剤の配合量は、ポリオール化合物100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましい。
【0031】
上記ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート成分としては、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系などの各種ポリイソシアネート化合物を用いることができる。好ましくは、取扱の容易さ、反応の速さ、得られるポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、および低コストであることなどから、液状ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることである。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)(44V−10,44V−20など(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業製)などが挙げられる。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよく、併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0032】
本発明に係る硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール化合物、発泡剤である水を含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合、反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、ポリオール化合物が、平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜8000であって、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(A)と、分子量が250未満であるショートグリコール(B)と、を含有し、ポリオール化合物100重量部に対して、水を20〜100重量部含有することを特徴とする。かかる製造方法において、前記ポリオール化合物100重量部中、前記ポリエーテルポリオール(A)を10〜80重量部含有し、前記ショートグリコール(B)を10〜60重量部含有することが好ましく、前記ポリオール化合物が、さらに平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜5000であって、プロピレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(C)を含有することがより好ましい。
【0033】
上記製造方法において、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合、反応させる際のイソシアネート指数(NCO Index)は30〜100であることが好ましく、より好ましくは40〜70である。イソシアネート指数を前記範囲内とすることにより、フォームの低密度化を図った場合でも、脆性の悪化を防止することができる。ここで、イソシアネート指数とは、ポリオール組成物に含まれる全ての活性水素基(発泡剤としての水を2官能活性水素化合物として計算)に対するポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比を百分率で表したもの(活性水素基100当量に対するイソシアネート基の当量比)を意味する。
【0034】
また、該製造方法により得られる硬質ポリウレタンフォームの密度は、20kg/m以下であることが好ましく、より好ましくは15kg/m以下であり、更に好ましくは10kg/m以下である。かかるフォーム密度は、例えば、発泡剤としての水の量を、20〜100重量部(対ポリオール化合物100重量部)に調整することにより、上記範囲内に設定することができる。ここで、フォーム密度は、JIS K7222に準拠して測定される値である。
【0035】
また、該製造方法により得られる硬質ポリウレタンフォームは、独立気泡率が15%以下であることが好ましく、より好ましくは0〜10%である。このように連通化率を高くすることにより、硬質ポリウレタンフォームとしての優れた寸法安定性を確保することができる。ここで、独立気泡率は、ASTM D2856に準拠して測定される値である。
【0036】
また、該製造方法により得られる硬質ポリウレタンフォームは、熱伝導率λが、λ≦0.04W/m・Kであることが好ましい。この場合、低密度化された硬質ポリウレタンフォームであっても、十分な断熱性能を発揮することができる。ここで、熱伝導率は、JIS A1412−2に準拠して測定される値である。
【0037】
上記硬質ポリウレタンフォームの製造方法では、連続ラインにて連続的に製造しても良く、あるいはバッチ方式にて製造しても良い。また、建築物の構成基材にスプレーにより吹き付け施工するスプレー法、建築基材により形成された空隙にポリオール組成物とポリイソシアネート成分の混合物を注入する注入法などが挙げられ、特に限定されない。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
(ポリオール組成物の調製)
下記表1に記載した配合にてポリオール組成物を調製した。表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
【0040】
(1)ポリオール化合物
ポリエーテルポリオール(A)−1;商品名「エクセノール−820」(旭硝子社製)、開始剤をグリセリンとして、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを付加重合して得られたポリエーテルポリオール(重量平均分子量4900、水酸基価(OHV)=34mgKOH/g)
ポリエーテルポリオール(A)−2;商品名「エクセノール−230」(旭硝子社製)、開始剤をグリセリンとして、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを付加重合して得られたポリエーテルポリオール(重量平均分子量3000、水酸基価(OHV)=56mgKOH/g)
ポリエーテルポリオール(A)−3;商品名「エクセノール−851」(旭硝子社製)、開始剤をグリセリンとして、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを付加重合して得られたポリエーテルポリオール(重量平均分子量7000、水酸基価(OHV)=25mgKOH/g)
ショートグリコール(B)−1;ジエチレングリコール(DEG)(分子量106、水酸基価(OHV)=1058mgKOH/g、ナカライテスク社製)
ショートグリコール(B)−2;グリセリン(Gly)(分子量92、水酸基価(OHV)=1829mgKOH/g、ナカライテスク社製)
ポリエーテルポリオール(C);商品名「T−3000S」(三井化学社製)、開始剤をグリセリンとして、プロピレンオキサイドのみを付加重合して得られたポリエーテルポリオール(重量平均分子量3000、水酸基価=56mgKOH/g)
【0041】
(2)難燃剤:商品名「TMCPP」(大八化学社製)
(3)整泡剤;シリコーン系ノニオン界面活性剤、商品名「SF−2938F」(東レダウコーニングシリコーン社製)
(4)触媒
触媒−1;第3級アミン触媒、商品名「TOYOCAT−ET」(東ソー社製)
触媒−2;N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、商品名「カオーNo.26」(花王社製)
【0042】
(ラボ評価)
調製した各ポリオール組成物(実施例1〜6、比較例1)を、常法に従い、ポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを作製した。ポリイソシアネート成分としては、c−MDI(住化バイエルウレタン社製「スミジュール44V−10」、NCO%:31%)を用い、イソシアネート指数(NCO Index)は表1に記載した通りとした。下記の評価を行い、結果を表1に示した。
【0043】
[重量平均分子量]
重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準ポリスチレンにより換算した。
GPC装置:島津製作所製、LC−10A
カラム:Polymer Laboratories社製、(PLgel、5μm、500Å)、(PLgel、5μm、100Å)、及び(PLgel、5μm、50Å)の3つのカラムを連結して使用
流量:1.0ml/min
濃度:1.0g/l
注入量:40μl
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
【0044】
[フォーム密度]
フォーム密度についてはJIS K 7222 に準拠し求めた。
【0045】
[熱伝導率]
JIS A9526(建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォーム)に基づき、JIS A1412−2(熱絶縁材の熱抵抗および熱伝導率の測定方法−第2部:熱流計法)(HFM法)に準拠して、熱伝導率を測定した。
【0046】
[フォーム外観]
製造後の硬質ポリウレタンフォームのコア部分の外観を目視にて評価した。フォームのセル径が細かく、発泡状態が特に良好であって、脆性が非常に小さいものを「○」、フォームのセル径が粗く、発泡状態が悪く、脆性が大きいものを「×」とした。
【0047】
【表1】

【0048】
表1の結果から、実施例1〜6に係るポリオール組成物を原料として製造された硬質ポリウレタンフォームは、低密度であって、脆性が小さく、かつ優れた断熱性能を備えることがわかる。一方、比較例1に係るポリオール組成物を原料として製造された硬質ポリウレタンフォームは、フォーム内の発泡ガス抜けが多く発生した。さらに、セル荒れが発生し、脆性が大きかった。
【0049】
次に、実施例1に係るポリオール組成物を原料として製造された硬質ポリウレタンフォームから5cm角のフォームサンプルを製造し、これをT方向(フォームセルの発泡方向に平行)およびW方向(フォームセルの発泡方向に垂直)に90%形状になるまで圧縮し(10%圧縮し)、その復元率を測定した。結果は、T方向で99.0%形状、W方向で98.2%形状にまで復元した。したがって、本発明に係る硬質ポリウレタンフォームは、復元率が高く、柔軟性に優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、発泡剤である水を含有し、ポリイソシアネート成分と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するための硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物であって、
前記ポリオール化合物が、平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜8000であって、アルキレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(A)と、分子量が250未満であるショートグリコール(B)と、を含有し、
前記ポリオール化合物100重量部に対して、前記水を20〜100重量部含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物100重量部中、前記ポリエーテルポリオール(A)を10〜80重量部含有し、前記ショートグリコール(B)を10〜60重量部含有する請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
前記ポリオール化合物が、さらに平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜5000であって、プロピレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(C)を含有する請求項1または2に記載の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項4】
ポリオール化合物、発泡剤である水を含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合、反応させる硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリオール化合物が、平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜8000であって、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(A)と、分子量が250未満であるショートグリコール(B)と、を含有し、
前記ポリオール化合物100重量部に対して、前記水を20〜100重量部含有することを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール化合物100重量部中、前記ポリエーテルポリオール(A)を10〜80重量部含有し、前記ショートグリコール(B)を10〜60重量部含有する請求項4に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール化合物が、さらに平均官能基数が2〜4、重量平均分子量が3000〜5000であって、プロピレンオキサイドの重合体であるポリエーテルポリオール(C)を含有する請求項4または5に記載の硬質ポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2013−36022(P2013−36022A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21043(P2012−21043)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】