説明

硬質ポリウレタンフォーム組成物

【課題】作業環境等に優れ、かつ、難燃性に優れる硬質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)、発泡剤としての水(D)、整泡剤(E)、難燃剤(F)からなる水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物であって、ポリオール(B)が、活性水素含有化合物を重合開始剤として用い、酸触媒の存在化、下記一般式(1)で表される塩素化エポキシ化合物の開環重合を行うことにより得られる、1級および/又は2級の水酸基を有する塩素化ポリエーテルポリオール(b1)を含有すること、および、有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)とポリオール(B)を、イソシアネートインデックスが120〜400であること、を特徴とする水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水のみを発泡剤として用いた硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物、該組成物を用いた水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォームの製造方法、及び該製造方法により得られる水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォームに関するものである。
【0002】
本発明において、「硬質ポリイソシアヌレートフォーム」とは、イソシアヌレート基を有する硬質ポリウレタンフォームをいう。
【背景技術】
【0003】
硬質ポリイソシアヌレートフォームは、独立気泡構造を有し、気泡内にクロロフルオロカーボン類のガス、炭酸ガス等を含んでいるものが多く存在する。この様な硬質ポリイソシアヌレートフォームは、優れた断熱性能、低温寸法安定性、施工性等を有している。また、難燃性にも優れるため、冷蔵庫、冷凍庫、断熱パネル、船舶又は車両あるいは家屋等の断熱・難燃構造材として広範囲に利用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の硬質ポリイソシアヌレートフォームは、発泡剤としてクロロフルオロカーボン類が使用されてきたがオゾン層の破壊及び地球温暖化等の環境問題の原因物質として規制が実施されている。その中にはR−11(トリクロロフルオロメタン)も含まれる。そこでオゾン層を破壊しない、水を発泡剤として使用する技術の開発が検討されている。その中で、ポリオール成分としてポリエーテルポリオールを使用した硬質ポリイソシアヌレートフォームが知られているが、十分な難燃性が得られていなかった。
【0005】
前記問題点の難燃性を改善させる方法として、ポリオール成分にポリエステルポリオールを使用した硬質ポリイソシアヌレートフォームが開示されているが(特許文献1)、ポリエステルポリオールは、経時によりポリオール成分中で加水分解を起こし、酸が遊離する現象が起こることにより、反応性が低下し易い。
【0006】
また、塩素化ポリエーテルポリオールが難燃剤として期待できる材料であることから、塩素化ポリエーテルポリオールを用いたポリウレタン発泡体を製造する技術が開示されている(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、当該技術で開示されている発泡体は、蒸気圧が高くて揮発性が高いトルエンジイソシアネート(以下、TDIと略す)を使用しているため、生産場所における作業者の健康への影響が懸念される問題が指摘されている。また、TDIを使用した場合は、架橋点が少ない等の点から、得られる硬質ポリイソシアヌレートフォームの強度が不足する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−179766号公報
【特許文献2】特開2010−18793号公報
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明は、水発泡の硬質ポリイソシアヌレートフォームにおいて、(1)経時変化による反応性低下の防止、(2)難燃性の向上及び(3)環境負荷の低減、を目的とした硬質ポリイソシアヌレートフォーム用形成性組成物及びこれを用いて得られる硬質ポリイソシアヌレートフォームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的を達成すべく、鋭意検討した結果、イソシアネート成分として有機ポリフェニルメタンポリイソシアネートを、ポリオール成分として特定の構造的特徴を備えた塩素化ポリエーテルポリオールを用いることにより、上記課題を解決できるとの知見を得た。即ち、特定の構造的特徴を備えた塩素化ポリエーテルポリオールを必須として用いることで経時変化による反応性低下が発生せず、かつ、硬質ポリイソシアヌレートフォームの難燃性を改善できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)である。
(1)有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)、発泡剤としての水(D)、整泡剤(E)、難燃剤(F)からなる水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物であって、ポリオール(B)が、活性水素含有化合物を重合開始剤として用い、酸触媒の存在化、下記一般式(1)で表される塩素化エポキシ化合物の開環重合を行うことにより得られる、1級および/又は2級の水酸基を有する塩素化ポリエーテルポリオール(b1)を含有すること、および、 有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)とポリオール(B)を、イソシアネートインデックスが120〜400であること、を特徴とする水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物。
【化1】

(2)有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを35〜55質量%含有することを特徴とする、前記(1)に記載の水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物。
(3)有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)が、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体含有量が0.1〜15質量%の有機ポリフェニルメタンポリイソシアネートであることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物。
(4)前記(1)から(3)のいずれか1つに記載の水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物を用いることを特徴とする、水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
(5)前記(4)に記載の製造方法により得られることを特徴とする水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、水のみを発泡剤として用いるため地球環境の保護という観点から優れており、ポリフェニルメタンポリイソシアネートを使用するために作業環境にも優れ、かつ、難燃性にも優れる硬質ポリイソシアヌレートフォームを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に用いられるイソシアネート成分は、有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)である(以下、PMDIと略す)。アニリンとホルマリンとの縮合反応によって得られるポリフェニルメタンポリアミンを、ホスゲン化することによって得られる。そのためPMDIの組成は、縮合時の原料組成や反応条件によって基本的に決定される。本発明の該ポリイソシアネートは、ホスゲン化後の反応液又は、反応液から溶媒の除去又は、一部ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す)を留出分離した缶出液を意味し、反応条件、分離条件等の異なった数種の混合物であってもよい。当該有機ポリイソシアネートは、多核体と二核体からなり、多核体とは、ベンゼン核を3個以上有するもので、二核体とは、ベンゼン核を2個有するものである。また、二核体の中には、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体がある。なお、多核体、二核体、異性体等は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーによって得られる各ピークの面積百分率を基に検量線から求める。
【0014】
有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)を使用することにより、本願発明の効果を得ることができるが、取り扱いが容易な粘度という点で、有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)中の二核体含有量が35〜55質量%であることが好ましい。また、反応性が優れるといった点で、2,4’−MDIおよび2,2’−MDIの異性体含有量が15質量%以下であることが好ましく、商業生産上0.1質量%以下にすることが困難であることから、異性体含有量は0.1〜15質量%が好ましい。
【0015】
本願発明で用いられる有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)としては、イソシアネート基の一部をウレタンに変性したものの他、ウレア、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変性したものであってもよい。
【0016】
本発明に用いられる有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)には、整泡剤、触媒、難燃剤等を添加することができる。
【0017】
本発明の有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)には、他のポリイソシアネートを併用することができる。例えば、トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加TDI、水素添加MDI、水添キシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等がある。
【0018】
本願発明で使用するポリオール(B)は、塩素化ポリエーテルポリオールを必須成分とする。
【0019】
本発明に用いられる塩素化ポリエーテルポリオール(b1)は、活性水素含有化合物を重合開始剤として用い、酸触媒の存在化、下記一般式(1)で表される3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンを開環重合することにより得られる。
【化1】

【0020】
また、本発明の塩素化ポリエーテルポリオールは、通常一般的に知られているポリウレタン用ポリエーテルポリオールと同様に、分子中に水酸基を有する。本発明の塩素化ポリエーテルポリオールの水酸基の量は水酸基価(mgKOH/g)として算出できる。塩素化ポリエーテルポリオールの水酸基価に特に制限はなく、目的とする用途に応じて設定でき、ポリウレタン原料としては、フォーム強度の点で水酸基価50〜500(mgKOH/g)を有する塩素化ポリエーテルポリオールが好ましい。強度、寸法安定性、硬度や接着性の点から、この範囲が好ましい。なお、水酸基価はJIS K1557の方法に従って算出できる。
【0021】
この際の重合開始剤としては、一般的にヒドロキシ化合物、アミン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、燐酸やチオール化合物等の含活性水素化合物を挙げることができる。より具体的には、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、シュークローズ等のヒドロキシ化合物;エチレンジアミン等のアミン化合物、安息香酸、アジピン酸等のカルボン酸化合物;ビスフェノールA等のフェノール化合物;エタンジチオール、ブタンジチオール等のチオール化合物等を挙げることができる。上記した重合開始剤は、単独で又は数種類を混合して用いても良い。
【0022】
また、酸触媒としては、通常の酸触媒として知られているものを用いることが可能であ
る。例えば、硫酸、燐酸、塩酸等の鉱酸;三フッ化硼素、三塩化硼素等のハロゲン化硼素
化合物;塩化アルミニウム、臭化アルミニウム等のハロゲン化アルミニウム化合物;四フ
ッ化錫、四塩化錫等の錫化合物;フッ化アンチモン、塩化アンチモン等のアンチモン化合
物;塩化第二鉄等の鉄化合物;五フッ化燐等の燐化合物;塩化亜鉛等のハロゲン化亜鉛化
合物;四塩化チタン等のチタン化合物;塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物;塩化
ベリリウム等のベリリリウム化合物;トリフェニル硼素、トリ(t−ブチル)硼素、トリ
ス(ペンタフルオロフェニル)硼素、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチル硼素
、ビス(ペンタフルオロフェニル)フッ化硼素、ジ(t−ブチル)フッ化硼素、(ペンタ
フルオロフェニル)2フッ化硼素等の有機硼素化合物;トリエチルアルミニウム、トリフ
ェニルアルミニウム、ジフェニル−t−ブチルアルミニウム、トリス(ペンタフルオロフ
ェニル)アルミニウム、ビス(ペンタフルオロフェニル)−t−ブチルアルミニウム、ビ
ス(ペンタフルオロフェニル)フッ化アルミニウム、ジ(t−ブチル)フッ化アルミニウ
ム、(ペンタフルオロフェニル)2フッ化アルミニウム、(t−ブチル)2フッ化アルミ
ニウム等の有機アルミニウム化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物等を挙げることが
できる。
【0023】
また、酸触媒としてルイス酸を用いる場合、単独で使用しても良いし、種々の有機化合物との錯体として使用しても良い。ルイス酸と有機化合物の錯体としては、例えば、ジメチリエーテル錯体、ジエチルエーテル錯体、THF(テトラヒドロフラン)錯体等のエーテル錯体;酢酸錯体等のカルボン酸錯体;アルコール錯体;アミン錯体;フェノール錯体等が挙げられる。また、酸触媒は2種以上を併用しても良い。
【0024】
本発明で使用するポリオール(B)は、塩素化ポリエーテルポリオール(b1)単独、あるいはウレタン原料として使用される他のポリオールとの混合物であってもよい。混合可能は他のポリオールとしては、例えば、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオール類、ポリエーテルポリオール中でビニルモノマーをラジカル重合して得られるポリマーポリオール類、多価アルコール類と多価カルボン酸類との共縮合により得られるポリエステルポリオール類、多価アルコール類と多価カルボン酸類とアミノアルコール類との共縮合により得られるポリエステルアミドポリオール類、ラクトン類の開環重合により得られるポリラクトンポリオール類、多価アルコール類とカーボネート類の共縮合により得られるポリカーボネートポリオール類、アクリルポリオール類、ポリブタジエンポリオール及びその水素添加物類、ポリイソプレンポリオール及びその水素添加物類、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、大豆油やひまし油等の天然油系ポリオール類等を挙げることができる。
【0025】
本発明においては、ポリウレタンの分子構造として難燃性向上に寄与するイソシアヌレート結合を形成させる触媒の使用が必須である。例えば、酢酸カリウム,オクチル酸カリウム、4級アンモニウム塩が例示できる。下記の第3級アミン触媒にもイソシアヌレート結合をも促進させるものがある。イソシアヌレート触媒の具体例には、POLYCAT46(エアプロダクツ社製)、TOYOCAT TR−20(東ソー社製)が挙げられる。さらにイソシアヌレート化触媒とウレタン化触媒を併用することが好ましい。添加部数としては,ポリオール100重量部に対し、0.01〜15重量部である。
【0026】
本発明に用いられるウレタン化触媒としては,トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’,N’’−トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−トリアジン等の第3級アミン類,ジブチル錫ジラウレート,ジブチル錫ジアセテート等の金属系触媒がウレタン化触媒として例示される。なお,本発明のポリオール組成物は水を発泡剤として使用するので,有機錫系触媒は加水分解されるため,第3級アミンの使用が好ましい。
【0027】
本発明で使用できる整泡剤は,従来公知の有機ケイ素系界面活性剤が好ましく用いられる。例えば,東レ・ダウコーニングのSF2937F,SF2938F,SZ−1671,SZ−1642、SZ−1677等、エボニックデグサのB−8465,B−8462,B−8460等,モメンティブのL−6900,L−5420,L−5340等が挙げられる。これらの整泡剤は任意に混合して用いることができる。この使用量はポリオール100重量部に対し,0.01〜5重量部が好ましい。
【0028】
発泡剤としての水の使用は必須であり、本発明により得られる水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォームに所望される密度によって決定されるが、通常、ポリオール100重量部に対し、0.1〜10重量部であることが好ましく、3〜7重量部であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明に用いられる難燃剤としては、例えばトリエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート、トリクレジルホスフェート、塩素化パラフィン等が挙げられる。この難燃剤の使用量は、ポリオール100重量部に対して1〜100重量%が好ましい。
【0030】
本発明に用いられるその他の添加剤としては、例えば充填剤、可塑剤、粘度調整剤、着色剤、安定剤等が挙げられる。
【0031】
本発明の硬質ポリイソシアヌレートフォームの製造方法は、有機ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)、三量化触媒(C)、発泡剤としての水(D)、整泡剤(E)および難燃剤(F)からの、NCO基とポリオール成分中の活性水素基の当量比を、INDEX((NCO基/活性水素基)×100)=120〜400の範囲で使用する。ポリイソシアネート成分とポリオール成分を20〜30℃に保ち、一般にウレタンフォーム製造設備で使用されている低圧、又は高圧発泡機を使用して硬質ポリイソシアヌレートフォームを得る方法がある(機械発泡)。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分を20〜30℃に保ち、2000〜8000rpmで2〜10秒間攪拌、混合して直ちに成形型に流し込んで硬質ポリイソシアヌレートフォームを得る方法もある(ハンド発泡)。
【0032】
このようにして得られるポリオール成分は、貯蔵安定性に優れており、得られる硬質ポリイソシアヌレートフォームは、特に難燃性に優れており、住宅用断熱材等に応用することができる。
【実施例1】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。例における「部」及び「%」は、各々「重量部」及び「重量%」である。
【0034】
(塩素化ポリエーテルポリオールの合成例1)
撹拌翼、温度計、滴下ロート、窒素導入管を備えた5Lの4つ口フラスコを加熱乾燥し、窒素置換を行った後、重合開始剤としてプロピレングリコール103g(1.35mol)、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体4.9g、溶媒として塩化メチレン1198gを仕込み、内温を30とした。滴下ロートより3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン1107g(7.85mol)を8時間かけて添加した後、さらに30℃で2.5時間反応した。ガスクロマトグラフィーにより3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの転化率は100%であることを確認した。反応生成物の塩化メチレン溶液は、0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液1667gで洗浄後、静置分離により水相を除去した。水600gを用いて同様の洗浄操作を3回行った後、塩化メチレン相を濃縮乾燥することにより目的とする生成物を得た。H−NMRにより、生成物は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンが開環重合した塩素化ポリエーテルポリオールであることを確認した。また、水酸基価は127mgKOH/gであった。
【0035】
(塩素化ポリエーテルポリオールの合成例2)
撹拌翼、温度計、滴下ロート、窒素導入管を備えた5Lの4つ口フラスコを加熱乾燥し、窒素置換を行った後、重合開始剤としてプロピレングリコール320g(4.20mol)、酸触媒として三フッ化ホウ素エーテル錯体3.9g、溶媒として塩化メチレン880gを仕込み、内温を30とした。滴下ロートより3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタン883g(6.26mol)を3時間かけて添加した後、さらに30℃で6時間反応した。ガスクロマトグラフィーにより3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンの転化率は100%であることを確認した。反応生成物の塩化メチレン溶液は、0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液1330gで洗浄後、静置分離により水相を除去した。水600gを用いて同様の洗浄操作を3回行った後、塩化メチレン相を濃縮乾燥することにより目的とする生成物を得た。H−NMRにより、生成物は3,4−ジクロロ−1,2−エポキシブタンが開環重合した塩素化ポリエーテルポリオールであることを確認した。また、水酸基価は390mgKOH/gであった。
【0036】
(ポリオールプレミックス成分の調製)
表1に記載の配合比に従って、常温で攪拌・混合してポリオールプレミックス「OH1〜OH4」を調整した。
【0037】
【表1】

【0038】
使用原料を以下に記載する。
(イソシアネート成分)
MR−200:ポリメリックMDI(二核体40%、二核体中の4,4′ーMDI以外の異性体2%)NCO含量31%、粘度180mPa・s/25℃、商品名「ミリオネートMR−200」、日本ポリウレタン工業社製
(ポリオール成分)
ポリエステルポリオール1:芳香族系ポリエステルポリオール、商品名「ファントールJP−733(日立化成ポリマー社製)」
ポリエーテルポリオール1:芳香族系ポリエーテルポリオール、商品名「エクセノール−350AR(旭硝子社製)」
(難燃剤)
TCPP(トリスクロロプロピルフォスフェート):ファイロールPCF(ICL−IP JAPAN社製)
(整泡剤)
SZ−1677(東レ・ダウコーニング社製)
(触媒)
POLYCAT46(エアプロダクツ社製)、三量化触媒
TOYOCAT TR−20(東ソー社製)、三量化触媒
カオーライザー No.10(花王社製)、ウレタン化触媒
TOYOCAT DT(東ソー社製)、ウレタン化触媒
【0039】
実施例1〜2、比較例1〜2
(硬質ポリイソシアヌレートフォームの製造)
表2に示すイソシアネート成分及びポリオール成分を、NCO基/活性水素基の当量比INDEX=180で用い、それぞれを20℃±1℃に調整した後、2リットルのポリエチレン製ビーカーに秤量し、回転数5000rpmで攪拌ミキサーで2〜5秒間攪拌混合し、予め40℃に保温した250×250×250mmのアルミ製容器中ポリエチレン製の袋をセットした中でハンド発泡により自由発泡を行い、硬質ポリイソシアヌレートフォームを得た。表2からも明らかなように、実施例1、2の組成物は、反応性の経時変化が小さく、難燃性に優れた硬質ポリイソシアヌレートフォームの製造が可能である。
【0040】
【表2】

【0041】
<酸素指数試験方法(L.O.I)>
JIS K7201に準拠して、前記の方法により得られた硬質ポリイソシアヌレートフォームから150mm×10mm×10mmのサンプルを切り出し、酸素指数の評価を行った。結果を表2に示す。数値が大きいほど燃えにくいことを表す。
【0042】
<反応性試験(初期値)>
発泡速度の測定
表1に記載の原料を用意し、表1に記載されている配合比に基づいてポリオールプレミックスを調合した。イソシアネート成分とポリオールプレミックスを各々20℃に温調し、1時間貯蔵した後、合計重量が500gになるように2000mlのデスカップに秤量し、撹拌ミキサー(回転数7000rpm)で5秒間攪拌した。攪拌終了後、予め40℃に温調された内寸250×250×250(高さ)mmの上面開放型アルミ製モールドに直ちに注入し、自由発泡フォームの反応速度(クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム)およびFRDを測定した。
クリームタイム:混合液がクリーム状に白濁し発泡が始める時間
ゲルタイム:樹脂がゲル状になり樹脂を引き延ばすと糸を引くようになる時間
ライズタイム:樹脂の発泡が最高の高さに達するまでの時間
FRD:反応速度測定に用いたフォームのスキン層を切り落したコアフォームの密度
【0043】
<反応性試験(経時40℃×2週間)>
ポリオールプレミックスを40℃で2週間貯蔵した以外は、反応試験(初期値)と同様の方法で試験を行った。
【0044】
<コーンカロリー試験>
実施例、比較例にて作製した硬質ポリイソシアヌレートフォームパネルコアサンプルからスキン層を除去した後に100mm×100mm、厚さ25mmの評価サンプルを切り出し、ISO−5660に準拠し、放射熱強度50kW/m2 にて10分間加熱したときの最大発熱速度(発熱速度)、総発熱量および200kW/m2超過時間をコーンカロリメーター(アトラス社製「CONE2A」)を用いて測定した。200kW/m2超過時間とは、最大発熱速度が200kW/m2を継続して超えた時間をいう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)、発泡剤としての水(D)、整泡剤(E)、難燃剤(F)からなる水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物であって、
ポリオール(B)が、活性水素含有化合物を重合開始剤として用い、酸触媒の存在化、下記一般式(1)で表される塩素化エポキシ化合物の開環重合を行うことにより得られる、1級および/又は2級の水酸基を有する塩素化ポリエーテルポリオール(b1)を含有すること、
および、 有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)とポリオール(B)を、イソシアネートインデックスが120〜400であること、
を特徴とする水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物。
【化1】

【請求項2】
有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)が、ジフェニルメタンジイソシアネートを35〜55質量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物。
【請求項3】
有機ポリフェニルメタンポリイソシアネート(A)が、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートの異性体含有量が0.1〜15質量%の有機ポリフェニルメタンポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム形成用組成物を用いることを特徴とする、水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により得られることを特徴とする水発泡硬質ポリイソシアヌレートフォーム。

【公開番号】特開2013−23510(P2013−23510A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156783(P2011−156783)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】