説明

硬質リンカ―を有するエネルギ―転移色素

【課題】ドナー蛍光体とアクセプター蛍光体の配向が、エネルギーがドナー蛍光体とアクセプター蛍光体の間で有効に転移されるようなものであるようなエネルギー転移蛍光色素。
【解決手段】アルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環及び6員環又は縮合環構造からなる群から選ばれた官能基であって、キサンテン環構造を有し、第一波長の光を吸収し、応答して励起エネルギーを放出することができるドナー色素を含む第一置換基及びドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができるアクセプター色素を含む第二置換基を有する官能基を含む化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光色素、更に詳しくは、エネルギー転移蛍光色素及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプル中の成分を標識し、検出するための種々の蛍光色素が開発されていた。一般に、蛍光色素は高い量子収量及び大きい吸光係数を有することが好ましく、その結果、色素は少量の検出される成分を検出するのに使用し得る。また、蛍光色素は大きいストークスシフト(即ち、色素が最大吸光度を有する波長と色素が最大発光を有する波長の差)を有することが好ましく、その結果、蛍光発光が色素を励起するのに使用された光源から容易に区別される。開発された蛍光色素の一つのクラスはエネルギー転移蛍光色素である。一般に、エネルギー転移蛍光色素はドナー蛍光体とアクセプター蛍光体とを含む。これらの色素において、ドナー蛍光体とアクセプター蛍光体が互いに接近して、かつ互いに対し適当な配向で位置される場合、ドナー蛍光体からのエネルギー放出がアクセプター蛍光体により吸収され、アクセプター蛍光体に蛍光を発するようにさせる。それ故、励起されたドナー蛍光体はドナー蛍光体の励起エネルギーを有効に吸収し、そのエネルギーをアクセプター蛍光体に有効に転移することができることが重要である。種々のエネルギー転移蛍光色素が文献に記載されていた。例えば、米国特許第4,996,143号及びWO 95/21266は、ドナー蛍光体とアクセプター蛍光体がオリゴヌクレオチド鎖により結合されているエネルギー転移蛍光色素を記載している。Leeら,Nucleic Acids Research 20:102471−2483(1992)はフルオレセインの4’−アミノメチル置換基により4’−アミノメチル−5−カルボキシフルオレセインに結合された5−カルボキシローダミンを含むエネルギー転移蛍光色素を記載している。
【0003】
幾つかの診断アッセイ及び分析アッセイが開発されており、これらは蛍光色素を使用するサンプル中の多種成分の検出、例えば、フローサイトメトリー(Lanierら,J.Immunol.132 151−156(1984))、染色体分析(Grayら,Chromosoma 739−37(1979))、及びDNA配列決定を伴う。これらのアッセイについて、2種以上のスペクトル的に分解可能な蛍光色素の組を同時に使用することが望ましく、その結果、一種より多い標的物質がサンプル中で同時に検出し得る。多種色素を使用するサンプル中の多種成分の同時検出はサンプル中の個々の成分を連続的に検出するのに必要とされる時間を短縮する。多重遺伝子座DNAプローブアッセイの場合、多種のスペクトル的に分解可能な蛍光色素の使用は必要とされる反応管の数を減少し、それにより実験プロトコルを簡素化し、用途特異性キットの製造を促進する。自動化DNA配列決定の場合、多種のスペクトル的に分解可能な蛍光色素の使用は単一レーン中の4つの塩基の全ての分析を可能にし、それにより単色方法よりも処理量を増大し、レーン内の電気泳動移動度変化と関連する不確定要素を排除する。Connellら,Biotechniques 5 342−348(1987)、Proberら,Science 238 336−341(1987)、Smithら,Nature 321 674−679(1986)、及びAnsorgeら,Nucleic Acids Research 154593−4602(1989)。
【0004】
特に、電気泳動分離及び酵素による処理を必要とする分析、例えば、DNA配列決定について、サンプル中の多種の標的物質を同時に検出するための蛍光色素の組を得ることと関連した幾つかの難点がある。例えば、その組中の夫々の色素はその他の色素からスペクトル的に分解可能である必要がある。発光スペクトルがスペクトル的に分解される色素の収集を見出すことは困難である。何となれば、有機蛍光色素に典型的な発光バンド半幅は約
40−80ナノメーター(nm)であり、利用可能なスペクトルの幅が励起光源により制限されるからである。色素の組に関して本明細書に使用される“スペクトル的分解”という用語は、色素の蛍光発光バンドが充分に異なり、即ち、充分に重ならないこと、夫々色素が結合される試薬、例えば、ポリヌクレオチドが通常の光検出系を使用して、例えば、米国特許第4,230,558号、同第4,811,218号、またはWheelessら,pgs.21−76,Flow Cytometry:Instrumentationand Data Analysis(Academic Press,New York,1985)により記載された系に例示されるような、バンドパスフィルター及び光電子増倍管の組、電荷カップリング装置及びスペクトログラフ等の系を使用して夫々の色素により生じた蛍光シグナルに基いて区別し得ることを意味する。
【0005】
また、夫々の色素の蛍光シグナルは、夫々の成分が充分な感度で検出し得るように充分に強いものである必要がある。例えば、DNA配列決定の場合、増大されたサンプル装填は低い蛍光効率の保証とはなり得ない(Pringleら,DNA CoreFacilities Newsletter,1 15−21(1988))。色素により生じた蛍光シグナルは、色素がその吸光度最大で励起される時に一般に最大である。それ故、夫々の色素はほぼその吸光度最大で励起されることが好ましい。色素の組の使用と関連する更に別の難点は、色素が一般に同じ吸光度最大を有しないことである。同じ吸光度最大を有しない色素の組が使用される場合、夫々の色素をその吸光度最大で励起するのに多光源を用意することと関連する高コストと、夫々の色素がその吸光度最大で励起されないことから生じる低感度の間に取決めが生じられる。上記の難点に加えて、色素の電荷、分子サイズ、及び配座がフラグメントの電気泳動移動度に悪影響してはならない。また、蛍光色素はフラグメントを生じ、または操作するのに使用される化学、例えば、DNA合成溶媒及び試薬、緩衝液、ポリメラーゼ酵素、リガーゼ酵素等と適合性である必要がある。特に4色DNA配列決定の領域において、多色用途のために色素の組を開発する際の多くの束縛のために、蛍光色素の少ない組のみが開発されていた。Connellら,Biotechniques 5 342−348(1987)、Proberら,Science 238 336−341(1987)及びSmithら,Nature 321 674−679(1986)。
【0006】
多色用途に有益であることがわかった蛍光色素の一つのクラスはローダミン色素、例えば、テトラメチルローダミン(TAMRA)、ローダミンX(ROX)、ローダミン6G(R6G)、ローダミン110(R110)等である。米国特許第5,366,860号。ローダミン色素は蛍光色素に関して特に魅力的である。何となれば、(1)ローダミンは典型的にはフルオレセインより光安定性であり、(2)ローダミン標識ジデオキシヌクレオチドが熱安定性ポリメラーゼ酵素に良好な基質であり、かつ(3)ローダミン色素の発光スペクトルがフルオレセインの赤色(高い波長)に対し顕著であるからである。特に多重検出方法の状況において、現在入手し得るローダミン色素に関連する一つの欠点はローダミン色素の比較的広い発光スペクトルである。この広い発光スペクトルはスペクトル上近い色素間のスペクトル分解を制限し、このような色素組み合わせの多成分分析を困難にする。現在入手し得るローダミン色素に関連する第二の欠点は、それらの吸収スペクトルが現在入手し得るソリッドステート周波数二倍グリーンダイオードレーザー、例えば、約532nmで発光ラインを有するネオジムソリッドステートYAGレーザーの波長に適合しないことである。このようなレーザーを使用することは、それらのコンパクトなサイズ、長い有効寿命、及び出力の効率の良い使用のために非常に有利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エネルギー転移蛍光色素は、それらをサンプル中の多種標的物質の同時検出、例えば、DNA配列決定における使用に魅力的にする幾つかの特徴を有する。例えば、単色ドナー
蛍光体は、夫々の色素が共通の波長で強い吸収を有するようにエネルギー転移蛍光色素の組中で使用し得る。その時、アクセプター蛍光体をエネルギー転移色素中で変化することにより、スペクトル的に分解可能な蛍光発光を有する一連のエネルギー転移色素が発生し得る。また、エネルギー転移蛍光色素は非エネルギー転移蛍光色素よりも大きい有効なストークスシフトを与える。これは、エネルギー転移蛍光色素に関するストークスシフトがドナー蛍光体が光を最大に吸収する波長とアクセプター蛍光体が光を最大に放出する波長の差に基いているからである。一般に、大きなストークスシフトを有する蛍光色素に対する要望が存する。蛍光色素を使用するアッセイの感度は、蛍光色素により生じた蛍光シグナルの強さに依存する。それ故、強い蛍光シグナルを有する蛍光色素に対する要望が存する。エネルギー転移蛍光色素に関して、これらの色素の蛍光シグナル強さは、如何に有効にアクセプター蛍光体がドナー蛍光体のエネルギー放出を吸収するかに依存する。これは、順に、アクセプター蛍光体へのドナー蛍光体の近接及びアクセプター蛍光体に対するドナー蛍光体の配向を含む種々の変数に依存する。それ故、ドナー蛍光体とアクセプター蛍光体の配向が、エネルギーがドナー蛍光体とアクセプター蛍光体の間で有効に転移されるようなものであるようなエネルギー転移蛍光色素に対する要望が存する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
項目1 第一波長の光を吸収し、応答して励起エネルギーを放出することができるドナー色素;ドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができるアクセプター色素;及びドナー色素より放出された励起エネルギーをアクセプター色素が実質的にすべて吸収するようにドナー色素をアクセプター色素に結合するリンカーであって、アルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環及び6員環または縮合環構造からなる群から選ばれた置換基を含むリンカーを含むエネルギー転移色素。
項目2 構造式
【化AA】


(式中、Y及びYは夫々独立にヒドロキシル、酸素、イミニウム及びアミンからなる群から選ばれ、R11〜R13及びR15〜R17は夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、フェニル、置換フェニル、隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる)を有する項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目3 エネルギー転移色素が構造式
【化AB】


(式中、Y’及びY’は夫々独立にヒドロキシル、酸素、イミニウム及びアミンからなる群から選ばれ、R11’〜R16’は夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、フェニル、置換フェニル、隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、X’〜X’はドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができるアクセプター色素に相当するように選ばれ、かつX’及びX’の一つはリンカーを含む)を有する項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目4 エネルギー転移色素が構造式
【化AC】


(式中、Y、Y’、Y及びY’は夫々独立にヒドロキシル、酸素、イミニウム及びアミンからなる群から選ばれ、R11〜R13、R15〜R17及びR11’〜R16’は夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、フェニル、置換フェニル、隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、X’〜X’は夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、Y、Y、R11〜R13及びR15〜R17は第一波長の光を吸収し、応答して励起エネルギーを放出することができるドナー色素に相当するように選ばれ、Y’、Y’、R11’〜R16’及びX’〜X’はドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができるアクセプター色素に相当するように選ばれ、かつX’及びX’の一つはリンカーを含む)を有する項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目5 構造式
【化AD】


(式中、Y、Y’、Y及びY’は夫々独立にヒドロキシル、酸素、イミニウム及びアミンからなる群から選ばれ、R11〜R16及びR11’〜R16’は夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、フェニル、置換フェニル、隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、X〜X及びX’〜X’は夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、Y、Y、R11〜R16及びX〜Xは第一波長の光を吸収し、応答して励起エネルギーを放出することができるドナー色素に相当するように選ばれ、Y’、Y’、R11’〜R16’及びX’〜X’はドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができるアクセプター色素に相当するように選ばれ、かつX及びXの一つ並びにX’及びX’の一つは一緒にされてリンカーを形成する)を有する項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目6 リンカー置換基がシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、フラン、チオフラン、ピロール、イソピロール、イソアゾール、ピラゾール、イソイミダゾール、ピラン、ピロン、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、プラジンオキサジン、インデン、ベンゾフラン、チオナフテン、インドール及びナフタレンからなる群から選ばれた5員環または6員環を含む項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目7 アクセプター色素がキサンテン色素、シアニン色素、フタロシアニン色素及びスクアライン色素からなる群から選ばれた色素のクラスの一員である項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目8 ドナー色素が色素のキサンテンクラスの一員である項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目9 アクセプター色素がキサンテン色素、シアニン色素、フタロシアニン色素及びスクアライン色素からなる群から選ばれた色素のクラスの一員である項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目10 ドナー色素がフルオレセイン色素、ローダミン色素及び非対称ベンゾキサンテン色素からなる群から選ばれた色素のクラスの一員である項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目11 アクセプター色素がキサンテン色素、シアニン色素、フタロシアニン色素及びスクアライン色素からなる群から選ばれた色素のクラスの一員である項目10に記載のエネルギー転移色素。
項目12 ドナー色素がカルボキシフルオレセイン、4,7−ジクロロフルオレセイン色素、非対称ベンゾキサンテン色素、ローダミン、4,7−ジクロロローダミン色素、カルボキシローダミン、N,N,N’,N’−テトラメチルカルボキシローダミン、カルボキシR110、及びカルボキシR6Gからなる群から選ばれる項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目13 アクセプター色素が4,7−ジクロロフルオレセイン色素、非対称ベンゾキサンテン色素、ローダミン、4,7−ジクロロローダミン色素、カルボキシローダミン、N,N,N’,N’−テトラメチルカルボキシローダミン、カルボキシR110、カルボキシR6G、カルボキシ−X−ローダミン及びCy5 からなる群から選ばれる項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目14 アクセプター色素がDR110−2、DR6G−2、DTMR及びDROXからなる群から選ばれる項目1に記載のエネルギー転移色素。
項目15 エネルギー転移蛍光色素に結合されるように修飾された、ヌクレオシド、ヌクレオシドモノホスフェート、ヌクレオシドジホスフェート、ヌクレオシドトリホスフェート、オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類縁体からなる群から選ばれた試薬と、試薬に結合された項目1〜14のいずれか1項に記載のエネルギー転移蛍光色素とを含む蛍光標識された試薬。
項目16 試薬がデオキシヌクレオシド、デオキシヌクレオシドモノホスフェート、デオキシヌクレオシドジホスフェート及びデオキシヌクレオシドトリホスフェートからなる群から選ばれる項目15に記載の蛍光標識された試薬。
項目17 デオキシヌクレオチドがデオキシシトシン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、及びデオキシチミジンからなる群から選ばれる項目16に記載の蛍光標識された試薬。
項目18 試薬がジデオキシヌクレオシド、ジデオキシヌクレオシドモノホスフェート、ジデオキシヌクレオシドジホスフェート及びジデオキシヌクレオシドトリホスフェートからなる群から選ばれる項目15に記載の蛍光標識された試薬。
項目19 ジデオキシヌクレオチドがジデオキシシトシン、ジデオキシアデノシン、ジデオキシグアノシン、及びジデオキシチミジンからなる群から選ばれる項目18に記載の蛍光標識された試薬。
項目20 試薬がオリゴヌクレオチドである項目15に記載の蛍光標識された試薬。
項目21 オリゴヌクレオチドがポリメラーゼを使用することにより延長可能である3’末端を有する項目15に記載の蛍光標識された試薬。
項目22 核酸配列をデオキシヌクレオシドトリホスフェート、少なくとも一種のジデオキシヌクレオシドトリホスフェート及びDNAポリメラーゼの存在下で蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプライマーとハイブリッドを形成することにより延長された標識されたプライマーの混合物を生成し(そのDNAポリメラーゼは、プライマーの延長を終止するジデオキシヌクレオシドトリホスフェートがとり込まれるまでデオキシヌクレオシドトリホスフェートでプライマーを延長する)、延長されたプライマーの混合物を分離し、そして生成された延長されたプライマーの混合物を蛍光測定することにより核酸配列の配列を決定することを含む核酸配列の配列決定方法であって、蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプライマーが配列決定され、ポリメラーゼにより延長可能な3’末端を有する核酸配列の一部に相補性のオリゴヌクレオチド配列と、オリゴヌクレオチドに結合された項目1〜14のいずれか1項に記載のエネルギー転移蛍光色素とを含む該方法。
項目23 核酸配列をデオキシヌクレオシドトリホスフェート、少なくとも一種の蛍光標識されたジデオキシヌクレオシドトリホスフェート及びDNAポリメラーゼの存在下でプライマーとハイブリッドを形成することにより延長されたプライマーの混合物を生成し(そのDNAポリメラーゼは、プライマーの延長を終止する蛍光標識されたジデオキシヌ
クレオシドトリホスフェートが延長されたプライマーにとり込まれるまでデオキシヌクレオシドトリホスフェートでプライマーを延長する)、延長されたプライマーの混合物を分離し、そして延長されたプライマーの分離された混合物に結合された蛍光標識されたジデオキシヌクレオチドを検出することにより核酸配列の配列を決定することを含む核酸配列の配列決定方法であって、蛍光標識されたジデオキシヌクレオシドトリホスフェートがジデオキシヌクレオシドトリホスフェートと、オリゴヌクレオチドに結合された項目1〜14のいずれか1項に記載のエネルギー転移蛍光色素とを含む該方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、ドナー蛍光体とアクセプター蛍光体の配向が、エネルギーがドナー蛍光体とアクセプター蛍光体の間で有効に転移されるようなものであるようなエネルギー転移蛍光色素が提供された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明はドナー色素をエネルギー転移蛍光色素中でアクセプター色素に結合するためのリンカーに関する。また、本発明は増強された蛍光を有するエネルギー転移蛍光色素に関する。また、本発明は本発明のエネルギー転移色素を含む試薬、色素及び試薬の使用方法、並びに色素及び試薬が含まれるキットに関する。ドナー色素をエネルギー転移蛍光色素中でアクセプター色素に結合するための本発明の一つのリンカーは、以下に説明されるような一般構造式R21C(O)R2228(式中、R21はドナー色素に結合されたC1−5アルキルであり、C(O)はカボニル基であり、Z1はNH、硫黄または酸素であり、R22はアルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環または6員環または縮合環構造であってもよいカルボニル炭素に結合された置換基であり、かつR28はリンカーをアクセプター色素に結合する官能基を含む)を有する。
【化23】



リンカー中に使用されるR28基は、R22基をアクセプター色素に結合するのに使用し得る当業界で知られているあらゆる基であってもよい。典型的には、R28基はアクセプター色素のベンゼン環またはその他の芳香族環構造に結合されるであろう。それ故、R28はアクセプター色素のベンゼン環またはその他の芳香族環構造に親電子官能基、例えば、カルボン酸、酸ハライド、スルホン酸、エステル、アルデヒド、チオ、ジスルフィド、イソチオシアネート、イソシアネート、スルホニルハライド、マレイミド、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ハロアセチル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジドニトロフェニル、及びアジドを形成することにより形成されることが好ましい。その時、R22基は、アクセプター色素の親電子剤を求核体、例えば、アミノ、ヒドロキシルまたはスルフヒドリル求核体と反応させることにより、R22基へのドナー色素の結合の前または後にアクセプター色素に付加し得る。
【0011】
例えば、以下に説明される実施態様において、リンカーは一般構造式R21C(O)R2229C(O)(式中、R21及びR22は上記のとおりであり、Z及びZは夫々独立にNH、硫黄または酸素であり、R29はC1−5アルキルであり、末端カルボニル基はアクセプター色素の環構造に結合されている)を有する。Z2が窒素である変化において、C(O)R2229サブユニットはアミノ酸サブユニットを形成する。
【0012】
【化24】


【0013】
この実施態様において、リンカーは活性化カルボニル基(NHSエステル)とアミン基、ヒドロキシル基またはチオール基の反応により生成されてもよい。R22基をアクセプター色素に結合するための多種のその他のメカニズムが考えられ、本発明の範囲内に入ることが意図されていることが注目される。リンカー中でR22として使用し得る5員環または6員環の特別な例として、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、フラン、チオフラン、ピロール、イソピロール、イソアゾール、ピラゾール、イソイミダゾール、ピラン、ピロン、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、プラジン及びオキサジンが挙げられるが、これらに限定されない。縮合環構造の例として、インデン、ベンゾフラン、チオナフテン、インドール及びナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。このリンカーの好ましい実施態様は、以下に示されるように、R21及びR29がメチレンであり、Z及びZがNHであり、かつR22がベンゼンである場合である。
【0014】
【化25】


【0015】
本発明のエネルギー転移蛍光色素の一つのクラスは4’環位置に下記のキサンテン環構造を有するドナー色素を含む。
【0016】
【化26】


【0017】
式中、Y及びYは別々にされてヒドロキシル、酸素、イミニウムまたはアミンであり、イミニウム及びアミンは三級のイミニウムまたはアミンであることが好ましい。R11−R17は本発明のエネルギー転移色素と適合性であるあらゆる置換基であってもよく、R11−R17は色素のスペクトル特性及び移動度特性を変化するために広く変化されてもよいことが注目される。この実施態様によれば、エネルギー転移色素はまたドナー色
素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発するアクセプター色素を含む。また、エネルギー転移色素はドナー色素をアクセプター色素に結合するリンカーを含む。エネルギー転移色素のこの実施態様の一つの変化において、リンカーは上記のように一般構造式R21C(O)R2228(式中、R21はキサンテンドナー色素の4’位に結合されたC1−5アルキルであり、C(O)はカルボニル基であり、ZはNH、硫黄または酸素であり、R22はアルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環もしくは6員環または縮合環構造であってもよいカルボニル炭素に結合された置換基であり、かつR28はリンカーをアクセプター色素に結合する官能基を含む)を有する。エネルギー転移色素のこの実施態様の更に別の変化において、リンカーは上記のように一般構造式R21C(O)R2229C(O)(式中、R21及びR22は上記のとおりであり、Z及びZは夫々独立にNH、硫黄または酸素であり、R29はC1−5アルキルであり、末端カルボニル基はアクセプター色素の環構造に結合れている)を有する。Zが窒素である変化において、−C(O)R2229−はアミノ酸サブユニットを形成する。エネルギー転移色素のこの実施態様の更に別の好ましい変化において、リンカーは以下に示されるように、R21及びR29がメチレンであり、Z及びZがNHであり、かつR22がベンゼンである場合である。
【0018】
【化27】


【0019】
ドナー色素は必要によりR17がフェニルまたは置換フェニルである色素のクラスの一員であってもよい。Yがヒドロキシルであり、かつYが酸素であり、かつR17がフェニルまたは置換フェニルである場合、その色素は色素のフルオレセインクラスの一員である。Yがアミンであり、かつYがイミニウムであり、かつR17がフェニルまたは置換フェニルである場合、その色素は色素のローダミンクラスの一員である。更にこの実施態様によれば、アクセプター色素は必要により色素のキサンテンクラス、シアニンクラス、フタロシアニンクラス及びスクアラインクラスの一員であってもよい。別の実施態様において、エネルギー転移蛍光色素は一般構造式
【0020】
【化28】


【0021】
を有するドナー色素及びアクセプター色素を有する。式中、Y及びYは別々にされてヒドロキシル、酸素、イミニウムまたはアミンであり、イミニウム及びアミンは三級のイミニウムまたはアミンであることが好ましく、かつR11−R16は本発明のエネルギー転移色素と適合性であるあらゆる置換基である。この実施態様によれば、以下に説明されるように、リンカーがドナー色素及びアクセプター色素の夫々のX置換基及びX置換基の一つ、好ましくはドナー色素及びアクセプター色素のX置換基に結合される。この実施態様において、リンカーは短く、かつ/または硬質であることが好ましい。何となれば、これがドナー色素とアクセプター色素の間のエネルギーの転移を増進することがわかったからである。
【0022】
【化29】


【0023】
別の実施態様において、エネルギー転移蛍光色素は色素のキサンテンクラスの一員であるドナー色素、ドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができる色素のキサンテンクラス、シアニンクラス、フタロシアニンクラス及びスクアラインクラスの一員であるアクセプター色素、及びドナー色素をアクセプター色素に結合するリンカーを含む。この実施態様によれば、アクセプターは約600nmより大きく、またはドナー色素の吸光度最大よりも少なくとも約100nm大きい発光最大を有する。上記の新規なエネルギー転移蛍光色素に加えて、本発明はまたエネルギー転移蛍光色素を含む蛍光試薬に関する。一般に、これらの試薬は、本発明のエネルギー転移色素が結合でき、エネルギー転移色素の蛍光に基いて試薬の存在を検出するのに使用し得るあらゆる分子または物質を含む。一実施態様において、エネルギー転移蛍光色素で標識された、ヌクレオシドまたはモノ−、ジ−もしくはトリホスフェートヌクレオチドを含む蛍光試薬が提供される。ヌクレオチドは、例えば、色素標識オリゴヌクレオチドの調製に使用し得るデオキシヌクレオチドであってもよい。また、ヌクレオチドは、例えば、色素ターミネーター配列決定に使用し得るジデオキシヌクレオシドであってもよい。別の実施態様において、蛍光試薬はエネルギー転移蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドを含む。これらの試薬は、例えば、色素プライマー配列決定に使用し得る。
【0024】
また、本発明は本発明のエネルギー転移色素及び試薬を使用する方法に関する。一実施態様において、その方法は本発明のエネルギー転移色素で標識された一連の異なるサイズのオリゴヌクレオチドを生成し、サイズに基いて一連の標識されたオリゴヌクレオチドを分離し、エネルギー転移色素の蛍光に基いて分離された標識されたオリゴヌクレオチドを検出することを含む。この方法の一実施態様において、延長された標識されたプライマー
の混合物がデオキシヌクレオチドトリホスフェート、及び少なくとも一種の色素標識されたジデオキシヌクレオチドトリホスフェート及びDNAポリメラーゼの存在下で核酸配列をオリゴヌクレオチドプライマーとハイブリッドを形成することにより生成される。DNAポリメラーゼは、プライマーの延長を終止するジデオキシヌクレオチドトリホスフェートがとり込まれるまでプライマーをデオキシヌクレオチドトリホスフェートで延長するのに利用できる。一旦終止されると、延長されたプライマーの混合物が分離され、ジデオキシヌクレオシドの色素の蛍光に基いて検出される。この実施態様の変化において、4種の異なる蛍光標識されたジデオキシヌクレオチドトリホスフェート、即ち、蛍光標識されたジデオキシシトシントリホスフェート、蛍光標識されたジデオキシアデノシントリホスフェート、蛍光標識されたジデオキシグアノシントリホスフェート、及び蛍光標識されたジデオキシチミジントリホスフェートが使用される。この方法の別の実施態様において、オリゴヌクレオチドプライマーはデオキシヌクレオシドトリホスフェートとは反対に蛍光標識される。また、本発明は本発明の色素及び試薬を使用してDNA配列決定を行うための色素及び試薬を含むキットに関する。
【0025】
I.本発明のエネルギー転移色素リンカー
本発明はドナー色素をエネルギー転移蛍光色素中でアクセプター色素に結合するための新規なリンカーに関する。また、本発明はこれらのリンカーを含むエネルギー転移蛍光色素に関する。これらのリンカーはエネルギー転移色素中でドナー色素とアクセプター色素の間のエネルギーの有効な転移を増進することがわかった。ドナー色素をエネルギー転移蛍光色素中でアクセプター色素に結合するための本発明の一つのリンカーは以下に説明されるような一般構造式R21C(O)R2228(式中、R21はドナー色素に結合されたC1−5アルキルであり、C(O)はカルボニル基であり、ZはNH、硫黄または酸素であり、R22はアルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環及び6員環またはカルボニル炭素に結合されている縮合環構造を含む置換基であり、かつR28はリンカーをアクセプター色素に結合する官能基を含む)を有する。
【0026】
【化30】


【0027】
このリンカーの一実施態様において、以下に説明されるように、リンカーは一般構造式R21C(O)R2229C(O)(式中、R21及びR22は上記のとおであり、Z及びZは夫々独立にNH、硫黄または酸素であり、R29はC1−5アルキルであり、末端カルボニル基はアクセプター色素の環構造に結合されている)を有する。Z2が窒素である変化において、C(O)R2229サブユニットはアミノ酸サブユニットを形成する。
【0028】
【化31】


【0029】
リンカー中でR22として使用し得る5員環または6員環の特別な例として、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、フラン、チオフラン、ピロール、イソピロール、イソアゾール、ピラゾール、イソイミダゾール、ピラン、ピロン、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、プラジン及びオキサジンが挙げられるが、これらに限定されない。縮合環構造の例として、インデン、ベンゾフラン、チオナフテン、インドール及びナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。このリンカーの好ましい実施態様は、以下に示されるように、R21及びR29がメチレンであり、Z及びZがNHであり、かつR22がベンゼンである場合である。
【0030】
【化32】


【0031】
表3は本発明のリンカー中に使用し得るリンカーの−C(O)R22−サブユニットの例を示す。
II. 本発明のエネルギー転移色素
一般に、本発明のエネルギー転移色素は第一波長の光を吸収し、応答して励起エネルギーを放出するドナー色素、ドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができるアクセプター色素、及びドナー色素をアクセプター色素に結合するリンカーを含む。本明細書に示された分子構造の全てに関して、これらの分子構造は示された正確な電子構造を含むだけでなく、その全ての共鳴構造及びプロトン化状態を含むことが意図されている。本発明のエネルギー転移蛍光色素の一つのクラスは色素のキサンテンクラスの一員であるドナー色素、アクセプター色素及び節Iに記載されたリンカーのグループの一員であるリンカーを含む。本明細書に使用されるキサンテン色素は一般構造式
【0032】
【化33】


【0033】
を有する全ての分子を含む。式中、Y及びYは別々にされてヒドロキシル、酸素、イミニウムまたはアミンであり、イミニウム及びアミンは三級のイミニウムまたはアミンであることが好ましい。Yがヒドロキシルであり、かつYが酸素であり、かつR17がフェニルまたは置換フェニルである場合、その色素は色素のフルオレセインクラスの一員である。Yがアミンである、かつYがイミニウムであり、かつR17がフェニルまたは置換フェニルである場合、その色素は色素のローダミンクラスの一員である。R11−R17は本発明のエネルギー転移色素と適合性であるあらゆる置換基であってもよく、R11−R17は色素のスペクトル特性及び移動度特性を変化するために広く変化されても
よいことが注目される。環構造中に示された番号はキサンテン環構造の4’位を示す。リンカーがキサンテン環構造の4’位に結合されている本発明のエネルギー転移色素について、R14サブユニットがリンカーに相当する。R11−R17置換基の例として、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、フェニル、置換フェニル、隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様において、R15及びR16は一緒にされて置換または未置換ベンゼン環を形成する。キサンテン色素のこのクラスは本明細書中非対称ベンゾキサンテン色素と称され、ScottC.Bensonらにより1996年4月1日に出願された米国特許出願第08/626,085号(発明の名称:非対称ベンゾキサンテン色素)に記載されており、この特許が参考として本明細書に含まれる。別の実施態様において、R17は一般式
【0034】
【化34】


【0035】
を有するフェニルまたは置換フェニルである。フェニル環の置換基X−Xとして、水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施態様において、ドナー色素は、本明細書中4,7−ジクロロローダミン色素と称される、Yがアミンであり、Yがイミニウムであり、かつX及びXが塩素である色素のクラスの一員である。色素の4,7−ジクロロローダミンクラス内に入る色素及びそれらの合成が本明細書並びに1996年6月27日に出願された米国特許出願第08/672,196号(発明の名称発明の名称:4,7−ジクロロローダミン色素)に記載されており、この特許が参考として本明細書に含まれる。
【0036】
ここで使用されるアルキルは直鎖及び分岐炭化水素部分、即ち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、tert−ペンチル等を表す。置換アルキルはヒドロキシ、アミノ、チオ、シアノ、ニトロ、スルホ、等を含むが、これらに限定されない種々の置換基のいずれか一つで置換されたアルキル部分を表す。ハロアルキルは一つ以上のハロゲン原子置換基、通常フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを有する置換アルキルを表す。アルケンは炭素−炭素結合の一つ以上が二重結合であり、かつ非二重結合炭素がアルキルまたは置換アルキルである炭化水素を表す。アルキンは炭素の一つ以上が三重結合で結合されており、非三重結合炭素がアルキル部分または置換アルキル部分である炭化水素を表す。スルホネートは3個の酸素原子に結合された硫黄原子を含む部分(そのモノ−及びジ−塩を含む)、例えば、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、ジナトリウムスルホネート、等を表す。アミノは2個の水素原子、アルキル部分、またはこれらのあらゆる組み合わせに結合された窒素原子を含む部分を表す。アミドは酸素原子に二重結合され、アミノ部分に単結合された炭素原子を含む部分を表す。ニトリルは窒素原子に三重結合された炭素原子を含む部分を表す。アルコキシは酸素原子に単結合されたアルキル部分を含む部分を表す。アリー
ルは単一または多数のフェニルまたは置換フェニル、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル等を表す。
【0037】
11〜R17はまた夫々独立にエネルギー転移色素を試薬、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチドに結合するのに使用し得る結合部分であってもよい。結合部分の例として、相補官能基が常にアミンである場合、イソチオシアネート、スルホニルクロリド、4,6−ジクロロトリアジニルアミン、スクシンイミジルエステル、またはその他の活性カルボキシレートが挙げられる。相補官能基が常にスルフヒドリルである場合、結合基はマレイミド、ハロアセチル、またはヨードアセトアミドであることが好ましい。R.Haugland,Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular probes,Inc.(1992)を参照のこと。特に好ましい実施態様において、図1に示されるように、結合基はアミノヘキシル−オリゴマーと反応させられて色素標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを生成し得るドナー色素またはアクセプター色素のいずれかのカルボキシル基から生成された活性化NHSエステルである。この実施態様のエネルギー転移蛍光色素はまたドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができるアクセプター色素、及びドナー色素をアクセプター色素に結合するリンカーを含む。エネルギー転移色素の第一クラスにおいて、リンカーは節Iに記載されたリンカーのクラスの一員であり、キサンテン環構造の4’位でドナー色素に結合される。この第一クラスのエネルギー転移色素はアクセプター蛍光体それ自体及び同じドナー−アクセプター対を有するエネルギー転移蛍光色素(この場合、ドナー−アクセプター対の間の結合が異なる)と比較して増強された蛍光強さを示す。また、本発明は、ドナー色素及びアクセプター色素が夫々一般構造式
【0038】
【化35】


【0039】
(式中、Y、Y、R11〜R16及びX〜Xは先に特定されたとおりである)を有するエネルギー転移蛍光色素の第二クラスに関する。色素のこのクラスの中で、リンカーはドナー色素及びアクセプター色素の夫々のX置換基及びX置換基の一つによりドナー色素及びアクセプター色素に結合される。
【0040】
【化36】


【0041】
色素のこのクラスの好ましい実施態様において、リンカーはドナー色素及びアクセプター色素の夫々のX置換基によりドナー色素及びアクセプター色素に結合される。色素のこのクラスの中で、リンカーは短く、かつ/または硬質であることが好ましい。何となれば、これがドナー色素とアクセプター色素の間のエネルギーの転移を増進することがわかったからである。また、本発明は、アクセプター色素が色素の4,7−ジクロロローダミンクラスの一員であるエネルギー転移蛍光色素の第三クラスに関するものであり、即ち、その色素は一般構造式
【0042】
【化37】


【0043】
を有する。式中、R〜Rは夫々独立に水素、アルキル、またはRとR、RとR、RとR、RとRが一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせであり、R〜R10は夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、スルホン、アミノ、アンモニウム、アミ
ド、ニトリル、アルコキシ、フェニル、もしくは置換フェニル、または隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせであり、X、X及びXは夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、スルホン、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、もしくはアルコキシ、または隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせであり、X及びXは塩素である。R〜R10、X及びXに関して、RとR、RとR、RとR、RとR、及びXとXは夫々独立に一緒にされて5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。環構造中に示された番号(4’、5、6)はローダミン環構造の4’、5、6の環の位置を示す。本明細書に説明されるように、4’及び5の環の位置はドナー蛍光体をアクセプター蛍光体に結合する本発明のエネルギー転移色素中に使用されたリンカーの結合に好ましい部位である。4’、5、6の環の位置はまたエネルギー転移色素への生物分子、例えば、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの結合に好ましい部位である。
【0044】
エネルギー転移色素のこのクラス中のドナー色素は励起エネルギーを放出するあらゆる色素を含んでいてもよく、その4,7−ジクロロローダミン色素がエネルギーを吸収し、応答してエネルギー放出を生じることができる。一実施態様において、ドナー色素は、4,7−ジクロロローダミンアクセプター色素がキサンテン色素の4’環位に結合されているリンカーによりドナー色素に結合される4’環位でキサンテン環構造を有する。リンカーは4,7−ジクロロローダミンアクセプター色素の5環位または6環位に結合されることが好ましい。色素のこの第三クラス(即ち、4,7−ジクロロローダミンがアクセプター色素である場合)のエネルギー転移色素はその他のローダミン色素に較べて比較的狭い放出スペクトルを有するという利点を与える。この狭い放出スペクトルはこれらの色素の組により得られるスペクトル分解を増進し、それによりこれらの色素を使用する多成分分析を促進する。また、本発明はエネルギー転移蛍光色素の第四クラスに関するものであり、この場合、ドナー色素が色素のキサンテンクラスの一員であり、アクセプター色素が色素のキサンテンクラス、シアニンクラス、フタロシアニンクラス及びスクアラインクラスの一員であり、アクセプターが約600nmより大きい放出最大を有し、かつ/または好ましくはドナー色素の吸光度最大よりも少なくとも約100nm大きい放出最大を有する。色素のこのクラスの中で、ドナーは色素のフルオレセインクラスの一員であることが好ましい。本発明のエネルギー転移色素の第四クラスは、ドナーの吸収びアクセプターの放出の差により測定して、大きいストークスシフトを通常示す。加えて、これらの色素は、最小のドナー蛍光が観察される点で有効なエネルギー転移を示す。本発明のエネルギー転移色素の第四クラスが本明細書に更に詳しく記載される。
【0045】
【化38】


【0046】
【化39】


【0047】
【化40】


【0048】
A.エネルギー転移色素の第一クラス 上記のように、本発明のエネルギー転移色素の第一クラスは色素のキサンテンクラスの一員であり、それ故4’環位でキサンテン環構造を有するドナー色素を含む。色素のこのクラス中で、アクセプター色素はドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができる色素である。この実施態様によれば、ドナーは色素のフルオレセインクラス、ローダミンクラスまたは非対称ベンゾキサンテンクラスの一員であってもよく、これらの色素の夫々は色素の更に広いキサンテンクラスの員である。これらのキサンテン色素の一般構造式が以下に示される。これらの色素に関して説明された置換基は色素のこれらの異なるクラスに含まれてもよい多種の置換基から選ばれてもよい。何となれば、一般のキサンテン環構造、フルオレセイン環構造、ローダミン環構造、及び非対称環ベンゾキサンテン構造を有する全ての色素が本発明の範囲内に入ることが意図されているからである。
【0049】
【化41】


【0050】
この実施態様のエネルギー転移蛍光色素中に使用し得るアクセプター色素のクラスの例として、キサンテン色素、シアニン色素、フタロシアニン色素及びスクアライン色素が挙げられるが、これらに限定されない。これらの色素の一般構造式が表1Aに示される。これらの色素について説明された置換基は色素のこれらの異なるクラスに含まれてもよい多種の置換基から選ばれてもよい。何となれば、一般のキサンテン環構造、フルオレセイン環構造、ローダミン環構造、非対称ベンゾキサンテン環構造、シアニン環構造、フタロシアニン環構造及びスクアライン環構造を有する全ての色素が本発明の範囲内に入ることが意図されているからである。この実施態様に使用し得るドナー色素の例として、フルオレセイン、カルボキシフルオレセインの異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、カルボキシ−HEXの異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、NAN、Cl−FLAN、TET、JOE、ZOE、ローダミン、カルボキシローダミンの異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、カルボキシR110の異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、カルボキシR6Gの異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、4.7−ジクロロフルオレセイン(米国特許第5,188,934 号を参照のこと)、4.7−ジクロロローダミン(1996年6月27日に出願された米国特許出願第08/672,196号を参照のこと)、非対称ベンゾキサンテン色素(1996年4月1日に出願された米国特許出願第08/626,085号を参照のこと)、及びN,N,N’,N’−テトラメチル−カルボキシローダミン(TMARA)の異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
この実施例に使用し得るアクセプター色素の例として、カルボキシフルオレセインの異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、4.7−ジクロロフルオレセイン、4.7−ジクロロローダミン、フルオレセイン、非対称ベンゾキサンテン色素、カルボキシ−HEXの異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、NAN、Cl−FLAN、TET、JOE、ZOE、ローダミン、カルボキシローダミンの異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、カルボキシR110の異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、カルボキシR6Gの異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、N,N,N’,N’−テトラメチル−カルボキシローダミン(TMARA)の異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)の異性体(例えば、5カルボキシ及び6カルボキシ)及びCy5が挙げられるが、これらに限定されない。これらの色素の構造式が表2に示される。本発明のエネルギー転移色素の第一クラスにおいて、リンカーはキサンテン環構造の4’位でドナー色素に結合される。一
実施態様において、リンカーは以下に示されるような一般構造式R21C(O)R2228(式中、R21はドナーキサンテン色素の4’環位に結合されているC1−5アルキルであり、Z1はNH、硫黄または酸素であり、C(O)はカルボニル基であり、R22はアルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環及び6員環またはカルボニル炭素に結合されている縮合環構造を含む置換基であり、かつR28はリンカーをアクセプター色素に結合する官能基である)を有する。
【0052】
【化42】


【0053】
22中に使用し得る5員環または6員環の例として、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、フラン、チオフラン、ピロール、イソピロール、イソアゾール、ピラゾール、イソイミダゾール、ピラン、ピロン、ベンゼン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、プラジン及びオキサジンが挙げられるが、これらに限定されない。縮合環構造の例として、インデン、ベンゾフラン、チオナフテン、インドール及びナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。この実施態様の一つの変化において、以下に示されるように、リンカーは一般構造式R21C(O)R2229C(O)(式中、R21はドナーキサンテン色素の4’環位に結合されているC1−5アルキルであり、Z及びZは夫々独立にNH、硫黄または酸素であり、C(O)はカルボニル基であり、R22はアルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環及び6員環またはカルボニル炭素に結合されている縮合環構造を含む置換基であり、R29はC1−5アルキルであり、末端カルボニル基はアクセプター色素の環構造に結合されている)を有する。
【0054】
【化43】


【0055】
このリンカーの好ましい実施態様は、以下に示されるように、R21及びR29がメチレンであり、Z及びZがNHであり、かつR22がベンゼンである場合である。
【0056】
【化44】


【0057】
【化45】


【0058】
【化46】


【0059】
【化47】


【0060】
実施例4及び図2に示されるように、先に特定されたようなドナー、アクセプター及びリンカーを含む、5−TMR−B−CFの如きエネルギー転移色素は、アクセプターそれ自体並びにドナー−アクセプター対の間のリンカーが異なる場合の同じドナー−アクセプター対を有するエネルギー転移蛍光色素に較べて増強された蛍光を示す。理論により縛られないで、観察された増強された蛍光強さはリンカーの比較的硬質なR22部分により得られ、維持されるドナー色素とアクセプター色素の間の改良されたエネルギー転移配向のためであると考えられる。その結果として、本発明のエネルギー転移蛍光色素はアクセプター蛍光体それ自体並びにドナー−アクセプター対の間のリンカーが異なる場合の同じドナー−アクセプター対を有するエネルギー転移蛍光色素に較べて増強された蛍光強さを示す。これらの色素の増強された蛍光強さは色素スタッキングを低下するのに利用できる8M尿素の存在下で特に明らかである。この実施態様の一つの変化において、アクセプターは一般構造式
【0061】
【化48】


【0062】
(式中、Y、Y、R11〜R16及びX〜Xは先に特定されたとおりである)を有する色素のキサンテンクラスの一員である。この変化によれば、上記リンカーの如きリンカーはアクセプターキサンテン色素のXまたはX置換基を介してアクセプターキサンテン色素に結合されることが好ましい。以下に示されるような好ましい実施態様において、リンカーはアクセプターキサンテン色素のX置換基に結合される。
【0063】
【化49】


【0064】
表4は本発明のこの実施態様の上記エネルギー転移色素の例を示す。表4中に示された色素は5−カルボキシフルオレセインドナー色素及びTAMRAアクセプター色素を含むが、多種のその他のキサンテン色素がドナー色素として容易に置換し得ることが理解されるべきであることが注目される。また、多種のその他のキサンテン色素、並びにシアニン色素、フタロシアニン色素及びアクアライン色素が上記されたTAMRAアクセプター色素に代えて容易に置換し得ることが理解されるべきであり、ドナー色素及びアクセプター色素に関するこれらの変化の全てが本発明の範囲内に入る。
【0065】
【化50】


【0066】
【化51】


【0067】
B.エネルギー転移色素の第二クラス
本発明はまたドナー色素及びアクセプター色素が一般構造式
【0068】
【化52】


【0069】
(式中、Y、Y、R11〜R16及びX〜Xは先に特定されたとおりである)を有する色素のキサンテンクラスの員である、以下に示されるようなエネルギー転移蛍光色
素の第二クラスに関する。この実施態様によれば、リンカーは以下に示されるようにドナー色素及びアクセプター色素の両方のXまたはX置換基に結合される。
【0070】
【化53】


【0071】
この実施態様において、リンカーは短く、かつ/または硬質であることが好ましい。何となれば、これがドナー色素とアクセプター色素の間のエネルギーの転移を増進することがわかったからである。例えば、この実施態様の一つの変化において、リンカーは長さが9原子未満であるドナーをアクセプターに結合する主鎖を有することが好ましい。この実施態様の別の変化において、リンカーはリンカーに或る程度の構造上の剛性を与える官能基、例えば、アルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環及び6員環または縮合環構造を含む。更に別の変化において、リンカーは一般式R25C(O)またはR25C(O)R26C(O)(式中、R25はドナー色素に結合されており、C(O)はカルボニ基であり、末端カルボニル基はアクセプター色素に結合されており、R25及びR26は夫々C1−4アルキルの群から選ばれ、かつZ及びZは夫々独立にNH、OまたはSである)を有する。この実施態様に使用し得るドナー色素及びアクセプター色素の例として、フルオレセイン、5または6カルボキシフルオレセイン、5または6カルボキシ−HEX、NAN、Cl−FLAN、TET、JOE、ZOE、4.7−ジクロロフルオレセイン、非対称ベンゾキサンテン色素、ローダミン、5または6カルボキシローダミン、5または6カルボキシ−R110、5または6カルボキシ−R6G、N,N,N’,N’−テトラメチル(5または6)−カルボキシローダミン(TAMRA)、5または6カルボキシ−X−ローダミン(ROX)及び4.7−ジクロロローダミンが挙げられるが、これらに限定されない。これらの色素の構造式が表2に示される。
【0072】
この実施態様の別の変化において、リンカーはR27C(O)基(式中、R27はドナー色素に結合されたC1−5アルキルであり、Z5はNH、硫黄または酸素であり、かつC(O)はアクセプター色素に結合されたカルボニル基である)を含む。表5は本発明のエネルギー転移色素の第二クラスの例を示す。表5に示された色素は5−アミノメチル
フルオレセインドナー色素を含むが、多種のその他のキサンテン色素がドナー色素として容易に置換し得ることが理解されるべきであることが注目される。また、多種のその他のキサンテン色素、並びにシアニン色素、フタロシアニン色素及びアクアライン色素が上記されたTAMRAアクセプター色素に代えて容易に置換し得ることが理解されるべきであり、ドナー色素及びアクセプター色素に関するこれらの変化の全てが本発明の範囲内に入る。
【0073】
【化54】


【0074】
【化55】


【0075】
【化56】


【0076】
C.エネルギー転移色素の第三クラス
エネルギー転移蛍光色素の第三クラスはアクセプター色素としての4.7−ジクロロローダミン色素及びドナー色素としての4.7−ジクロロローダミン色素が吸収することができる放出を生じる色素を含む。これらの色素はアクセプター色素単独に較べて増強された蛍光強さを示す。加えて、4.7−ジクロロローダミン色素はその他のローダミン色素よりも狭い発光スペクトルを示し、これが多成分分析におけるそれらの使用を促進する。好ましい実施態様において、これらのエネルギー転移色素は色素の第一クラス及び第二クラスに記載の色素を含み、この場合、アクセプターは4.7−ジクロロローダミン色素である。
1.4.7−ジクロロローダミン色素
4.7−ジクロロローダミン色素化合物は一般構造式
【0077】
【化57】


【0078】
を有する。式中、R〜Rは夫々独立に水素、アルキル、またはRとR、RとR、RとR、RとRが一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせであり、R〜R10は夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、スルホン、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、フェニルもしくは置換フェニル、または隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせであり、X、X及びXは夫々独立に水素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、アルキル、アルケン、アルキン、スルホネート、スルホン、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、もしくはアルコキシ、または隣接置換基が一緒にされて環を形成する場合、及びこれらの組み合わせであり、かつX及びXは塩素である。
【0079】
色素の4.7−ジクロロローダミンクラスの中に入る色素及びそれらの合成が“4.7−ジクロロローダミン色素”という発明の名称の1996年6月27日に出願された米国特許出願第08/672,196号に記載されており、その特許が参考として本明細書に含まれる。R〜Rに関して、アルキル置換基は約1〜8個の炭素原子を含んでもよく(即ち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、tert−ペンチル等)、直鎖炭化水素部分及び分岐炭化水素部分であってもよい。好ましい実施態様において、R〜Rは夫々独立に水素、メチル、またはエチルであり、更に好ましくは水素またはメチルである。R〜R10に関して、アルキル置換基、アルケン置換基、アルキン置換基及びアルコキシ置換基は好ましくは約1〜8個の炭素原子を含んでもよく(即ち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、tert−ペンチル等)、直鎖炭化水素部分及び分岐炭化水素部分であってもよい。R〜R10に関して、RとR、RとR、RとR、RとRは夫々独立に一緒にされて5員環、6員環、または7員環を形成してもよい。
【0080】
一実施態様において、R及びRはベンゾであり、かつ/またはR及びR10はベンゾである。好ましい実施態様において、R〜R10は夫々独立に水素、メチル、またはエチルであり、更に好ましくは水素またはメチルである。X、X及びXに関して、Xは好ましくはカルボキシレートであり、かつX及びXの一つは4.7−ジクロロローダミンアクセプター色素をドナー色素に結合し、またはヌクレオチドもしくはオリゴ
ヌクレオチドをエネルギー転移色素に結合するのに使用される置換基を含んでいてもよい。4’環位にあるR8置換基はまたアクセプターをドナー色素またはヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチドの如き生物分子に結合するのに使用し得る。本明細書中DR110−2と称される、本発明に使用し得る一つの特に好ましいアクセプター色素において、R〜R10は別々にされて水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びX4の一方は結合基(L)であり、他方は水素である。DR110−2の構造が以下に示される。
【0081】
【化58】


【0082】
本明細書中DR6G−2と称される、本発明に使用し得る第二の特に好ましいアクセプター色素において、R及びRの一方はエチルであり、他方は水素であり、R及びRの一方はエチルであり、他方は水素であり、R及びRは別々にされてメチルであり、R、R、R、及びR10は水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり、他方は水素である。DR6G−2の構造が以下に示される。
【0083】
【化59】


【0084】
本明細書中DTMRと称される、本発明に使用し得る第三の特に好ましいアクセプター色素において、R〜Rは別々にされて水素であり、Y〜Yは別々にされてメチルであり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり、他方は水素である。DTMRの構造が以下に示される。
【0085】
【化60】


【0086】
本明細書中DROXと称される、本発明に使用し得る第四の特に好ましいアクセプター色素において、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R及びRは水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり、他方は水素である。DROXの構造が以下に示される。
【0087】
【化61】


【0088】
図3及び4は本発明のエネルギー転移色素中に使用し得る4,7−ジクロロローダミン色素の幾つかの付加的な好ましい実施態様を示す。化合物3A−Aにおいて、R及びRの一方はエチルであり、他方は水素であり、R及びRは別々にされて水素であり、Rはメチルであり、R及びR〜R10は別々にされて水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり、他方は水素である。化合物3A−Bにおいて、R及びRの一方はエチルであり、他方は水素であり、R及びRは別々にされてメチルであり、Rはメチルであり、R及びR〜R10は別々にされて水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり、他方は水素である。化合物3A−Cにおいて、R及びR は別々にされてメチルであり、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R5、R、R、及びR10は別々にされて水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり、他方は水素である。化合物3B−Dにおいて、R及びRは別々にされて水素であり、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R、R、R、及びR10は別々にされて水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり
、他方は水素である。化合物3B−Eにおいて、R及びRの一方はエチルであり、他方は水素であり、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、R及びRは一緒にされて6員環を形成し、Rはメチルであり、R、R及びR10は別々にされて水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり、他方は水素である。化合物3B−Fにおいて、R及びRは別々にされて水素であり、R及びRは別々にされてメチルであり、R〜R10は別々にされて水素であり、Xはカルボキシレートであり、X及びXの一方は結合基であり、他方は水素である。
【0089】
図5及び6は本発明のエネルギー転移色素中に使用される4,7−ジクロロローダミン色素の調製の好ましい一般化された合成スキームを示す。夫々の図に示された可変置換基は先に定義されたとおりである。図5は置換基Xがカルボキシレート以外であり得る一般化された合成を示す。図中、X’はXの前駆体である部分を示す。図5に示された方法において、2当量の3−アミノフェノール誘導体4A−A/4A−B、例えば、3−ジメチルアミノフェノールが1当量のジクロロベンゼン誘導体4A−C、例えば、4−カルボキシ−3,6ジクロロ−2−スルホ安息香酸環状酸無水物(即ち、4cのX’部分が一緒にされて−CO−O−SO2−である)と反応させられる。
【0090】
次いで反応体が強酸、例えば、ポリリン酸または硫酸中で180℃で12時間加熱される。粗色素4A−Dが水への添加により沈殿され、遠心分離により単離される。対称生成物を生成するために、反応体4A−A及び4A−Bの置換基は同じであるが、非対称生成物を生成するために、置換基は異なる。図6は置換基Xがカルボキシレートである一般化された合成を示す。図6の方法において、2当量の3−アミノフェノール誘導体4B−A/4B−B、例えば、3−ジメチルアミノフェノールが1当量の無水フタル酸誘導体4B−E、例えば、3,6−ジクロロ無水トリメリット酸と反応させられる。次いで反応体が強酸、例えば、ポリリン酸または硫酸中で180℃で12時間加熱される。粗色素4B−Dが水への添加により沈殿され、遠心分離により単離される。対称生成物を生成するために、反応体4B−A及び4B−Bの置換基は同じであるが、非対称生成物を生成するために、置換基は異なる。
2.アクセプターとしての4,7−ジクロロローダミンを含むエネルギー転移色素
一般に、本発明のエネルギー転移色素は第一波長の光を吸収し、応答して励起エネルギーを放出するドナー色素、ドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長の蛍光を発することができる4,7−ジクロロローダミンアクセプター色素、及びドナー色素をアクセプター色素に形成するリンカーを含む。4,7−ジクロロローダミン色素をアクセプター色素として使用する色素のこのクラスの好ましい例が表1に示される。色素のこのクラス中に使用し得るアクセプター色素の例として、先に説明されたようなDR110−2、DR6G−2、DTMR、DROX、並びに図3及び4に示された色素が挙げられるが、これらに限定されない。これらのエネルギー転移蛍光色素の一つのサブクラスは、アクセプター色素が4,7−ジクロロローダミン色素である本発明の色素の第一クラスの色素である。これらの色素の一般構造式が以下に示される。
【0091】
【化62】


【0092】
表4は4,7−ジクロロローダミンがアクセプター色素として使用される色素の第一クラスに属するエネルギー転移色素の例を示す。表4に示された色素は5−カルボキシフルオレセインドナー色素及びアクセプター色素としての5または6カルボキシDTMRを含むが、多種のその他のキサンテン色素がドナー色素として容易に置換でき、多種のその他の4,7−ジクロロローダミン色素がDTMRアクセプター色素に代えて容易に置換し得ることが理解されるべきであることが注目され、ドナー色素及びアクセプター色素に関するこれらの変化の全てが本発明の範囲内に入ることが意図されている。これらのエネルギー転移蛍光色素の別のサブクラスは、アクセプター色素が4,7−ジクロロローダミン色素である本発明の色素の第二クラスの色素である。ドナーキサンテン色素及びアクセプター4,7−ジクロロローダミン色素がドナー色素及びアクセプター色素の5環位または6環位で互いに結合されるこれらの色素の一般構造式が以下に示される。
【0093】
【化63】

【0094】
上記のように、この実施態様において、ドナーをアクセプター色素に結合するリンカーは短く、かつ/または硬質であることが好ましい。何となれば、これがドナー色素とアクセプター色素の間のエネルギーの転移を増進することがわかったからである。先に示された置換基ラベルは、その他の色素に関して特定された置換基の同じグループに相当する。表5は4,7−ジクロロローダミンがアクセプター色素として使用される本発明のエネルギー転移色素の第二クラスの例を示す。表5に示された色素は5−アミノメチルフルオレセインドナー色素を含むが、多種のその他のキサンテン色素がドナー色素として容易に置換し得ることが理解されるべきであることが注目される。また、多種のその他の4,7−ジクロロローダミン色素が表5に示された色素に代えて容易に置換し得ることが理解されるべきである。何となれば、上記されたように、ドナー色素及びアクセプター色素に関するこれらの変化の全てが本発明の範囲内に入ることが意図されているからである。
D.エネルギー転移色素の第四クラス
本発明はまたドナー色素が色素のキサンテンクラスの一員であり、かつアクセプター色素が色素のキサンテンクラス、シアニンクラス、フタロシアニンクラスまたはスクアラインクラスの一員であるエネルギー転移蛍光色素の第四クラスに関する。エネルギー転移色素のこのクラス中で、ドナーは色素のフルオレセインクラスの一員であり、かつアクセプター色素が約600nmより大きい発光最大及び/またはドナー色素の吸光度最大よりも少なくとも約100nm 大きい発光最大を有することが好ましい。
【0095】
本発明の色素の第四クラスは、ドナーの吸光度とアクセプターの発光の差により測定して、大きいストークスシフトを通常示す。加えて、これらの色素は、最小ドナー蛍光が観察される点で有効なエネルギー転移を示す。重要なことに、アクセプター色素の吸収スペクトルがドナー色素の発光スペクトルと重ならないとしても、エネルギーはこのクラスに属する色素の幾つかにおいてドナーからアクセプターに転移される。この実施態様に使用し得るアクセプター色素の例として、5−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)及びCy5が挙げられるが、これらに限定されない。この実施態様のエネルギー転移色素はまたドナーをアクセプターに結合するリンカーを含む。ドナーをアクセプター色素に結合するのに使用されるリンカーは色素の第一クラス及び第二クラスのあらゆるリンカーであってもよい。しかしながら、別のリンカーが色素のこのクラス中に使用されてもよいことが予知される。
【0096】
色素のこのクラスの一実施態様において、リンカーはドナー色素のキサンテン環構造の4’位に結合される。リンカーは上記の一般構造式R21C(O)R2228(式中、R21はドナーキサンテン色素の4’環位に結合されているC1−5アルキルであり、Z1はNH、硫黄または酸素であり、C(O)はカルボニル基であり、R22はアルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環及び6員環またはカルボニル炭素に結合されている縮合環構造を含む置換基であり、かつR28はリンカーをアクセプター色素に結合する官能基である)を有することが好ましい。アクセプター色素が色素のキサンテンクラスの一員である場合、リンカーはキサンテン環構造の5位でアクセプターに結合されることが好ましい。表6は本発明の上記のエネルギー転移色素の例を示す。表6に示された色素は5−カルボキシフルオレセインドナー色素を含むが、多種のその他のキサンテン色素がドナー色素として容易に置換し得ることが理解されるべきであることが注目される。また、多種のその他のキサンテン色素、並びにシアニン色素、フタロシアニン色素及びスクアライン色素が上記された5−カルボキシROX及びCy5 アクセプター色素に代えて容易に置換し得ることが理解されるべきである。ドナー色素及びアクセプター色素に関するこれらの変化の全てが本発明の範囲内に入る。この実施態様のエネルギー転移色素は、これらの色素を4色素DNA配列決定において小さいストークスシフトを有する色素との使用に特に良く適しているようにする大きいストークスシフトを
通常示す。例えば、図7及び8は互いにスペクトル的に分解可能である4色素の2組を示す。図7中、5ROX−CFは上記色素の第四クラスの範囲内に入る色素である。一方、図8は両方とも上記色素の第四クラスの範囲内に入る5ROX−CF 及びCy5−CFを含む。
【0097】
図8に示された5ROX−CF 及びCy5−CFの発光スペクトルからわかるように、ドナー色素(5−カルボキシフルオレセイン、520nm)からの非常に小さい蛍光がこれらの色素中で観察される。これはドナー色素(フルオレセイン)の発光最大とアクセプター色素(ROX、590nm、Cy5、640nm)の吸光度最大の大きな差に鑑みて予期しない結果である。
【0098】
【化64】


【0099】
II. 本発明のエネルギー転移色素を含む試薬
また、本発明は本発明のエネルギー転移蛍光色素を含む蛍光試薬に関する。節IIIに詳しく記載されるように、これらの試薬はサンプル中の成分の存在を検出するための多種の方法に使用し得る。本発明の蛍光試薬は、本発明のエネルギー転移色素が結合されて、エネルギー転移色素の蛍光に基いて試薬の存在を検出するのに使用し得るあらゆる分子または物質を含む。本発明の色素が試薬を生成するのに結合し得る分子及び物質の型として、タンパク質、ポリペプチド、多糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、
オリゴヌクレオチド類縁体(例えば、ペプチド核酸)、脂質、固体担体、有機ポリマー及び無機ポリマー、並びにこれらの組み合わせ及び群がり、例えば、染色体、核、生細胞、例えば、バクテリア、その他の微生物、哺乳類細胞、及び組織が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の試薬の好ましいクラスはヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド類縁体(これらは本発明のエネルギー転移色素を含むように修飾されていた)である。ヌクレオチド試薬及びヌクレオシド試薬に関する用途の例として、酵素合成により生成されたオリゴヌクレオチド標識、例えば、PCR増幅の状況で使用されるヌクレオシドトリホスフェート、サンガー型オリゴヌクレオチド配列決定、及びnick翻訳反応が挙げられるが、これらに限定されない。オリゴヌクレオチド試薬に関する用途の例として、DNA配列決定プライマー、PCRプライマー、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ等としての使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
試薬の一つの特別な実施態様は標識されたヌクレオシド(NTP)、例えば、本発明のエネルギー転移蛍光色素で標識された、シトシン、アデノシン、グアノシン、及びチミジンである。これらの試薬はオリゴヌクレオチド合成を伴う多種の方法に使用し得る。別の関連実施態様は標識されたヌクレオチド、例えば、モノ−、ジ−及びトリホスフェートヌクレオシドホスフェートエステルである。これらの試薬として、特に、本発明のエネルギー転移蛍光色素で標識された、デオキシヌクレオシドトリホスフェート(dNTP)、例えば、デオキシシトシントリホスフェート、デオキシアデノシントリホスフェート、デオキシグアノシントリホスフェート、及びデオキシチミジントリホスフェートが挙げられる。これらの試薬は、例えば、色素標識されたオリゴヌクレオチドの調製においてポリメラーゼ基質として使用し得る。また、これらの試薬として、本発明のエネルギー転移蛍光色素で標識された、ジデオキシヌクレオシドトリホスフェート(ddNTP)、例えば、ジデオキシシトシントリホスフェート、ジデオキシアデノシントリホスフェート、ジデオキシグアノシントリホスフェート、及びジデオキシチミジントリホスフェートが挙げられる。これらの試薬は、例えば、色素終止配列決定に使用し得る。
【0101】
試薬の別の実施態様は本発明のエネルギー転移蛍光色素を含むオリゴヌクレオチドである。これらの試薬は、例えば、色素プライマー配列決定に使用し得る。本明細書に使用される“ヌクレオシド”は、例えば、Kornberg及びBaker,DNAReplication,第二編(Freeman,San Francisco,1992)に記載されたような2’−デオキシ形態及び2’−ヒドロキシル形態を含む、1’位でペントースに結合された、プリン、デアザプリン、またはピリミジンヌクレオシド塩基、例えば、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、デアザアデニン、デアザグアノシン等からなる化合物を表す。本明細書に使用される“ヌクレオチド”という用語はヌクレオチドのホスフェートエステル、例えば、モノ、ジ及びトリホスフェートエステルを表し、エステル化の最も普通の部位はペントースのC−5位に結合されたヒドロキシル基である。ヌクレオチドに関する“類縁体”として、例えば、Scheit,Nucleotide Analogs(JohnWiley,New York,1980)により一般に記載された、修飾塩基部分及び/または修飾糖部分を有する合成ヌクレオシドが挙げられる。“標識されたヌクレオシド”及び“標識されたヌクレオチド”という用語は結合によりエネルギー転移色素に共有結合されているヌクレオシド及びヌクレオチドを表す。
【0102】
本明細書に使用される“オリゴヌクレオチド”という用語は、二本鎖及び一本鎖のデオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、これらのα−アノマー形態等を含む、天然または修飾ヌクレオシドモノマーの線状ポリマーを表す。通常、ヌクレオシドモノマーはホスホジエステル結合により結合されており、本明細書に使用される場合、“ホスホジエステル結合”は、会合された対イオン、例えば、H、NH4、Na等を含む(このような対イオンが存在する場合)、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノ
エート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホルアミデート等を含む、ホスホジエステル結合またはこれらの類縁体を表す。オリゴヌクレオチドはサイズが少ないモノマー単位、例えば、8−40から数千のモノマー単位までの範囲である。オリゴヌクレオチドが文字の配列、例えば、“ATGCCTG”により表される時はいつも、特にことわらない限り、ヌクレオチドが左から右に5’→3’の順序であり、“A”はデオキシアデノシンを表し、“C”はデオキシシチジンを表し、“G”はデオキシグアノシンを表し、また“T”はチミジンを表すことが理解されるであろう。ヌクレオシド標識は、既知の結合、結合基、及び関連相補性官能基を使用して多数の既知のヌクレオシド標識技術のいずれかを使用して行い得る。色素及びヌクレオシドを結合する結合は(i)オリゴヌクレオチド合成条件に安定であり、(ii)オリゴヌクレオチド−標的ハイブリダイゼーションに干渉せず、(iii)関係する酵素、例えば、ポリメラーゼ、リガーゼ等と適合性であり、かつ(iv)色素の蛍光を消光しないものであるべきである。
【0103】
色素はピリミジン塩基の5−炭素及び7−デアザプリン塩基の7−炭素に共有結合されることが好ましい。本発明に使用し得る幾つかの好適な塩基標識操作が、例えば、Gibsonら,Nucleic Acids Research,15 6455−6467(1987)、Gebeyehuら,Nucleic Acids Research,15 4513−4535(1987)、Haralambidisら,Nucleic Acids Research,15 4856−4876(1987)、Nelsonら,Nucleosides and Nucleotides,5(3)233−241(1986)、Bergstromら,JACS,111 374−375(1989)、米国特許第4,855,225号、同第5,231,191号、及び同第5,449,767号に報告されており、これらの夫々が参考として本明細書に含まれる。結合はアセチレンアミド結合またはアルケンアミド結合であることが好ましく、色素とヌクレオチド塩基の結合は色素の活性化N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルをヌクレオチドのアルキニルアミノ−、アルキニルエトキシアミノ−またはアルケニルアミノ−誘導体化塩基と反応させることにより形成される。得られる結合はプロパルギル−1−エトキシアミド(3−(アミノ)エトキシ−1−プロピニル)、3−(カルボキシ)アミノ−1−プロピニルまたは3−アミノ−1−プロピン−1−イルであることが更に好ましい。本発明の色素をヌクレオシド塩基に結合するのに好ましい幾つかの結合が以下に示される。


【0104】
【化65】

【0105】
(式中、R及びRは別々にされてH、アルキル、保護基または蛍光色素である)アルキニルアミノ−誘導体化ヌクレオシドの合成がHobbs らの欧州特許出願第87305844.0号、及びHobbsら,J.Org.Chem.,54 3420(1989)により教示されており、これが参考として本明細書に含まれる。簡単に言えば、アルキニルアミノ−誘導体化ヌクレオチドが、適当なハロジデオキシヌクレオシド(通常、Hobbsら(先に引用した)により教示されたような5−ヨードピリミジン及び7−ヨード−7−デアザプリンジデオキシヌクレオシド)及びCu(I)をフラスコに入れ、アルゴンでフラッシして空気を除去し、乾燥DMFを添加し、続いてアルキニルアミン、トリエチルアミン及びPd(0)を添加することにより生成される。その反応混合物は数時間にわたって、または薄層クロマトグラフィーがハロジデオキシヌクレオシドの消費を示すまで、攪拌し得る。保護されていないアルキニルアミンが使用される場合、アルキニルアミノ−ヌクレオシドは、反応混合物を濃縮し、カップリング反応で生じたヒドロハライドを中和するために水酸化アンモニウムを含む溶離溶媒を使用してシリカゲルによるクロマトグラフィーにかけることにより単離し得る。保護されたアルキニルアミンが使用される場合、メタノール/塩化メチレンが反応混合物に添加でき、続いて強塩基性陰イオン交換樹脂の重炭酸塩形態が添加し得る。次いでスラリーが約45分間にわたって攪拌され、濾過され、樹脂が追加のメタノール/塩化メチレンですすがれる。合わせた濾液が濃縮され、メタノール−塩化メチレン勾配を使用してシリカゲルによるフラッシュクロマトグラフィーにより精製し得る。トリホスフェートが通常の技術により得られる。
【0106】
本発明のエネルギー転移色素で標識されたオリゴヌクレオチドの合成は、既知の結合、結合基、及び関連相補性官能基を使用する多数の既知のオリゴヌクレオチド標識技術のいずれかを使用して行い得る。例えば、標識されたオリゴヌクレオチドは、例えば、DNAポリメラーゼまたはリガーゼを使用して酵素合成でき(例えば、Stryer,Biochemistry,24章,W.H.Freeman and Company(1981))、または化学合成、例えば、ホスホルアミジト方法、ホスファイト−トリエステル方法等(例えば、Gait,Oligonucleotide Synthesis,IRL Press(1990))により合成し得る。標識は酵素合成中に標識されたヌクレオシドトリホスフェートモノマーを使用して導入されてもよく、または化学合成中に標識された非ヌクレオチドまたはヌクレオチドホスホルアミジトを使用して導入されてもよく、または合成後に導入されてもよい。一般に、標識されたオリゴヌクレオチドが酵素合成を使用してつくられる場合、下記の操作が使用し得る。鋳型DNAが変性され、オリゴヌクレオチドプライマーが鋳型DNAにアニールされる。デオキシヌクレオシドトリホスフェートの混合物がdGTP、dATP、dCTP、及びdTTPを含む反応液に添加され、デオキシヌクレオチドの一種の少なくとも一部が上記の本発明の色素化合物で標識される。次に、ポリメラーゼ酵素がポリメラーゼ酵素が活性である条件下で添加される。標識されたポリヌクレオチドがポリメラーゼストランド合成中に標識されたデオキシヌクレオチドのとり込みにより生成される。別の酵素合成方法において、2種のプライマー、即ち、+ストランドに相補性の一種のプライマー及び標的の−ストランドに相補性の別のプライマーが一種に代えて使用され、ポリメラーゼは熱安定性ポリメラーゼであり、反応温度が変性温度と延長温度の間でサイクルされ、それによりPCR、例えば、PCR Protocols,Innisら編集,Academic Press(1990)により標的配列の標識された補体を指数的に合成する。
【0107】
一般に、標識されたオリゴヌクレオチドが化学合成を使用してつくられる場合、ホスホルアミジト方法が使用されることが好ましい。ホスホルアミジト化合物及びポリヌクレオチド合成のホスホルアミジト方法は、有効かつ迅速なカップリング並びに出発物質の安定性のためにオリゴヌクレオチドを合成するのに好ましい。その合成は固体担体に結合され
た成長するオリゴヌクレオチド鎖で行われ、その結果、液相中にある過剰の試薬が濾過により容易に除去でき、それによりサイクル間の精製工程の必要をなくす。ヌクレオシド及びオリゴヌクレオチドを標識する際のホスホルアミジト試薬の実用性に鑑みて、本発明はまた本発明のエネルギー転移色素を含むホスホルアミジト化合物に関する。ホスホルアミジト方法によりオリゴヌクレオチドを生成するのに使用される化学の詳細な説明がCaruthersらの米国特許第4,458,066 号、Caruthers らの米国特許第4,415,732 号、Caruthersら,GeneticEngineering,4 1−17(1982)、Users Manual Model 392及び394 PolynucleotideSynthesizers,6−1〜6−22頁、Applied Biosystems,Part No.901237(1991)に示されており、これらの夫々が参考としてそのまま含まれる。
【0108】
以下に、ホスホルアミジト方法を使用する典型的なオリゴヌクレオチド合成サイクルの工程を簡単に記載する。まず、保護されたヌクレオチドモノマーを含む固体担体を酸、例えば、トリクロロ酢酸で処理して5’−ヒドロキシル保護基を除去し、その後のカップリング反応のためにヒドロキシルを遊離する。次いで保護されたホスホルアミジトヌクレオシドモノマー及び弱酸、例えば、テトラゾールをその反応に同時に添加することにより活性化中間体を生成する。弱酸はホスホルアミジトの窒素をプロトン化して反応性中間体を生成する。ヌクレオシド添加は30秒以内に完結する。次に、ヌクレオシド付加を受けなかったポリヌクレオチド鎖を終端するキャッピング工程を行う。キャッピングは無水酢酸及び1−メチルイミダゾールを用いて行われることが好ましい。次いでヌクレオチド内結合を、好ましい酸化剤としてヨウ素を使用し、酸素ドナーとして水を使用する酸化によりホスファイトから更に安定なホスホトリエステルに変換する。酸化後、ヒドロキシル保護基をプロトン酸、例えば、トリクロロ酢酸またはジクロロ酢酸で除去し、鎖伸長が完結するまでそのサイクルを繰り返す。合成後、塩基、例えば、水酸化アンモニウムまたはt−ブチルアミンを使用してポリヌクレオチド鎖を担体から開裂する。また、開裂反応はホスフェート保護基、例えば、シアノエチルを除去する。最後に、塩基のエキソ環アミンの保護基及び色素のヒドロキシル保護基を、そのポリヌクレオチド溶液を高温、例えば、55℃で塩基中で処理することにより除去する。
【0109】
ホスホルアミジトヌクレオシドモノマーのいずれかは色素標識されたホスホルアミジトであってもよい。ヌクレオチドの5’− 末端位置が標識される場合、本発明の標識された非ヌクレオチドホスホルアミジトが最終縮合工程中に使用し得る。オリゴヌクレオチドの内部位置が標識される場合、本発明の標識されたヌクレオチドホスホルアミジトが縮合工程のいずれか中に使用し得る。それらの合成に続いて、オリゴヌクレオチドは5’末端を含む幾つかの位置で標識し得る。Oligonucleotidesand Analogs,Eckstein編集,8 章,IRL Press(1991)及びOrgelら,Nucleic Acids Research11(18)6513(1983)、米国特許第5,118,800 号を参照のこと。これらの文献の夫々が参考として含まれる。オリゴヌクレオチドはまたそれらのホスホジエステル主鎖(OligonucleotidesandAnalogs,Eckstein 編集,9 章)または3’末端(Nelson,Nucleic Acids Research 20(23)6253−6259、及び米国特許第5,401,837 号及び同第5,141,813
号)で標識されてもよく、両方の特許が参考として本明細書に含まれる。オリゴヌクレオチド標識操作の総説について、R.HauglandExcited States of Biopolymers,Steiner 編集,Plenum Press,NY(1983)を参照のこと。一つの好ましい合成後の化学標識方法において、オリゴヌクレオチドは以下のようにして標識される。約1当量の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド及び約3当量のn−ヒドロキシスクシンイミドを乾燥酢酸エチル中で室温で3時間反応させることにより、カルボキシ結合基を含む色素をn−ヒドロキシスクシンイミド
エステルに変換する。反応混合物を5%のHClで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、固体に濃縮し、これをDMSO中に再度懸濁させる。次いでDMSO色素原液をpH9.4の0.25Mの重炭酸塩/炭酸塩緩衝液中のアミノヘキシル誘導体化オリゴヌクレオチドに過剰(10−20x)に添加し、6時間反応させる(例えば、米国特許第4,757,141号)。色素標識されたオリゴヌクレオチドをサイズ排除クロマトグラフィーカラム中の通過により未反応色素から分離し、緩衝液、例えば、0.1モルのトリエチルアミンアセテート(TEAA)で溶離する。粗標識オリゴヌクレオチドを含むフラクションを勾配溶離を使用して逆相HPLCにより更に精製する。
【0110】
III.本発明の色素及び試薬を使用する方法
本発明のエネルギー転移色素及び試薬は、サンプル中の成分を色素を含む試薬で標識することによりサンプル中の成分を検出する多種の方法に使用し得る。特に、本発明のエネルギー転移色素及び試薬は、分離技術及び蛍光検出技術を組み合わせる方法、特に多種の空間上重なる分析物の同時検出を必要とする方法における使用に良く適している。例えば、色素及び試薬は生化学的分離操作、例えば、電気泳動にかけられたオリゴヌクレオチドのクラスを検出するのに特に良く適しており、この場合、同様の物理化学的性質、例えば、サイズ、配座、電荷、疎水性等を有する標的物質の一連のバンドまたはスポットが線形配列または平面配列で存在する。本明細書に使用される“バンド”という用語は同様または同一の物理化学的性質に基く分析物の空間上のグルーピングまたは凝集を含む。通常バンドは電気泳動による色素−オリゴヌクレオチド接合体の分離において生じる。オリゴヌクレオチドのクラスは種々の状況で生じ得る。本明細書中“フラグメント分析”方法または“遺伝子分析”方法と称される方法の好ましいカテゴリーにおいて、標識されたオリゴヌクレオチドフラグメントは、例えば、結合またはポリメラーゼ誘導プライマー延長により、標識されたプライマーまたはヌクレオチドを使用する鋳型誘導酵素合成により生成される。フラグメントはサイズ依存性分離方法、例えば、電気泳動またはクロマトグラフィーにかけられ、分離されたフラグメントが分離に続いて、例えば、レーザー誘導蛍光により検出される。特に好ましい実施態様において、オリゴヌクレオチドの多種のクラスが同時に分離され、異なるクラスがスペクトル的に分解可能な標識により区別される。
【0111】
一つのこのようなフラグメント分析方法は増幅されたフラグメント長さ多形性検出(AmpFLP)であり、増幅されたフラグメント長さ多形性、即ち、PCR により増幅される制限フラグメント長さ多形性に基いている。種々のサイズのこれらの増幅されたフラグメントはファミリー中の変異体遺伝子を追跡するための結合されたマーカーとして利用できる。増幅されたフラグメントが染色体に関して変異体遺伝子に近似している程、連鎖相関関係が高い。多くの遺伝子疾患の遺伝子は同定されていなかったので、これらの連鎖マーカーは疾患のリスクまたは起源を評価することを助けるのに利用できる。AmpFLP技術において、ポリヌクレオチドは標識されたオリゴヌクレオチドPCRプライマーを使用することにより、または標識されたヌクレオチドトリホスフェートをPCR で使用することにより標識し得る。別のフラグメント分析方法はnick翻訳である。nick翻訳は二本鎖DNA分子中の未標識ヌクレオチドトリホスフェートを標識されたヌクレオチドトリホスフェートで置換する反応を伴う。遊離3’−ヒドロキシル基がデオキシリボヌクレアーゼI(DNAaseI)処理により生じた“nck”により未標識DNA内に生成される。次いでDNAポリメラーゼIはnickの3’−ヒドロキシル末端への標識されたヌクレオチドの付加を触媒する。同時に、この酵素の5’to3’−エキソヌクレアーゼ活性がnickの5’−ホスホリル末端からヌクレオチド単位を排除する。遊離3’−OH基を有する新しいヌクレオチドが初期の切除されたヌクレオチドの位置にとり込まれ、nickが3’方向に一つのヌクレオチド単位だけシフトされる。この3’シフトが既存の未標識ヌクレオチドの除去によりDNAへの新しい標識されたヌクレオチドの連続的付加をもたらすであろう。次いでnick翻訳されたポリヌクレオチドが分離方法、例えば、電気泳動を使用して分析される。
【0112】
別の例示のフラグメント分析方法は可変数のタンデムリピート、またはVNTRに基いている。VNTRは特別な配列の隣接多重コピーを含む二本鎖DNAの領域であり、反復単位の数が可変である。VNTR遺伝子座の例はpYNZ22、pMCT118、及びApo Bである。VNTR方法のサブセットはミクロサテライトリピート、または短いタンデムリピート(STR)、即ち、短い(2−4塩基)反復配列を特徴とするDNAのタンデムリピートの検出に基く方法である。ヒトにおける最も多い点在された反復DNAファミリーの一つは(dC−dA)n−(dG−dT)nジヌクレオチドリピートファミリー(また(CA)nジヌクレオチドリピートファミリーと称される)である。これらはヒトゲノム中の50,000〜100,000程度の多い(CA)nリピート領域であると考えられ、典型的にはブロック当たり15〜30のリピートを有する。これらのリピートの多くは長さが多形性であり、それ故、有益な遺伝子マーカーとして利用できる。VNTR方法またはSTR方法において、標識は色素標識されたPCR プライマーを使用することによりポリヌクレオチドフラグメントに導入されることが好ましい。別の例示のフラグメント分析方法はDNA配列決定である。一般に、DNA配列決定はオリゴヌクレオチドプライマーの延長/終止反応を伴う。プライマーを延長するのに使用されるデオキシヌクレオシドトリホスフェート(dNTP)が反応混合物中に含まれる。また、延長されたプライマーにとり込まれた時に、プライマーの更なる延長を阻止する少なくとも一種のジデオキシヌクレオシドトリホスフェート(ddNTP)が反応混合物中に含まれる。延長反応が停止された後、異なるヌクレオシドの位置決めを測定するために、生成される異なる終止生成物が分離され、分析される。
【0113】
蛍光DNA配列決定は一般に二つのカテゴリー、“色素プライマー配列決定”と“色素ターミネーター配列決定”に分けられる。色素プライマー配列決定において、蛍光色素は延長されるプライマーにとり込まれる。次いで4つの別々の延長/終止反応が平行して行われ、夫々の延長反応は延長反応を終止するための異なるジデオキシヌクレオシドトリホスフェート(ddNTP)を含む。終止後に、反応生成物がゲル電気泳動により分離され、分析される。例えば、Ansorgeら,Nucleic Acids Res. 154593−4602(1987)を参照のこと。色素プライマー配列決定の一つの変化において、異なるプライマーが4つの別々の延長/終止反応に使用され、夫々のプライマーが異なるスペクトル的に分解可能な色素を含む。終止後に、4つの延長/終止反応からの反応生成物が溜められ、電気泳動により分離され、単一レーン中で検出される。例えば、Smithら,Nature 321 674−679(1986)を参照のこと。こうして、色素プライマー配列決定のこの変化において、スペクトル的に分解可能な色素の組を含むプライマーを使用することにより、一つより多い延長/終止反応からの生成物が同時に検出し得る。色素ターミネーター配列決定において、蛍光色素はジデオキシヌクレオシドトリホスフェートの夫々に結合される。次いで延長/終止反応が行われ、この場合、プライマーは、標識されたジデオキシヌクレオシドトリホスフェートが延長されたプライマーにとり込まれてプライマーの更なる延長を阻止するまで、デオキシヌクレオシドトリホスフェートを使用して延長される。一旦終止されると、夫々のジデオキシヌクレオシドトリホスフェートに関する反応生成物が分離され、検出される。一実施態様において、別々の延長/終止反応が4種のジデオキシヌクレオシドトリホスフェートの夫々について行われる。別の実施態様において、単一の延長/終止反応が行われ、これは4種のジデオキシヌクレオシドトリホスフェートを含み、夫々が異なるスペクトル的に分解可能な蛍光色素で標識されている。
【0114】
こうして、本発明の一局面によれば、本発明の一種以上のオリゴヌクレオチド試薬を使用して色素プライマー配列決定を行う方法が提供される。この方法によれば、延長された標識されたプライマーの混合物が核酸配列をデオキシヌクレオシドトリホスフェート、少なくとも一種のジデオキシヌクレオシドトリホスフェート及びDNAポリメラーゼの存在下
で蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプライマーとハイブリッドを形成することにより生成される。蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプライマーは配列決定される核酸配列の一部に相補性のオリゴヌクレオチド配列と、オリゴヌクレオチドに結合されたエネルギー転移蛍光色素とを含む。その方法によれば、DNAポリメラーゼは、ジデオキシヌクレオシドトリホスフェートがとり込まれて、これがプライマーの延長を終止するまで、デオキシヌクレオシドトリホスフェートでプライマーを延長する。終止後、延長されたプライマーの混合物が分離される。次いで核酸の配列が、生成された延長されたプライマーの混合物を蛍光検出することにより測定される。この方法の更に別の実施態様において、4つの色素プライマー配列決定反応が行われ、夫々のプライマー配列決定反応が異なる蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプライマーと異なるジデオキシヌクレオシドトリホスフェート(ddATP、ddCTP、ddGTP 及びddTTP)を含む。4つの色素プライマー配列決定反応が行われた後、延長されたプライマーの得られる混合物が溜められてもよい。次いで延長されたプライマーの混合物が、例えば、電気泳動により分離され、核酸配列の配列を決定するために4種の異なる蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプライマーの夫々からの蛍光シグナルが検出される。
【0115】
本発明の更に別の局面によれば、本発明のエネルギー転移色素で標識された一種以上のジデオキシヌクレオシドトリホスフェートを使用して色素ターミネーター配列決定を行う方法が提供される。この方法によれば、延長されたプライマーの混合物が、核酸配列をデオキシヌクレオシドトリホスフェート、少なくとも一種の蛍光標識されたジデオキシヌクレオチドトリホスフェート及びDNAポリメラーゼの存在下でオリゴヌクレオチドプライマーとハイブリッドを形成することにより生成される。蛍光標識されたジデオキシヌクレオチドトリホスフェートは本発明のエネルギー転移蛍光色素で標識されたジデオキシヌクレオシドトリホスフェートを含む。この方法によれば、DNAポリメラーゼは、標識されたジデオキシヌクレオシドトリホスフェートが延長されたプライマーにとり込まれるまでプライマーをデオキシヌクレオシドトリホスフェートで延長する。終止後、延長されたプライマーの混合物が分離される。次いで核酸配列の配列が延長されたプライマーに結合された蛍光標識されたジデオキシヌクレオシドトリホスフェートを検出することにより決定される。この方法の更に別の実施態様において、延長されたプライマーの混合物を生成する工程が、核酸配列を4種の異なる蛍光標識されたジデオキシヌクレオシドトリホスフェート、即ち、蛍光標識されたジデオキシシトシントリホスフェート、蛍光標識されたジデオキシアデノシントリホスフェート、蛍光標識されたジデオキシグアノシントリホスフェート、及び蛍光標識されたジデオキシチミジントリホスフェートとハイブリッドを形成することを含む。
【0116】
上記フラグメント分析方法の夫々において、標識されたオリゴヌクレオチドは電気泳動操作により分離されることが好ましい。例えば、先に引用されたGould及びMatthews、Rickwood及びHames,編集,Gel Electrophoresis of Nucleic Acids; A Practical Approach,(IRL PressLimitted,London,1981)、またはOsterman,Methods of Protein and Nucleic AcidResearch,1 巻 Springer−Verlag,Berlin,1984)を参照のこと。電気泳動マトリックスの型は約2〜20重量%の濃度(重量対容積)を有する架橋または未架橋ポリアクリルアミドである。ポリアクリルアミド濃度は約4〜8%であることが更に好ましい。好ましくは特にDNA配列決定の状況下で、電気泳動マトリックスはストランド分離剤または変性剤、例えば、尿素、ホルムアルデヒド等を含む。このようなマトリックスをつくるための詳細な操作がManiatisら,“98%のホルムアルデヒドまたは7M尿素を含むポリアクリルアミドゲル中の低分子量DNA及びRNAの分別”,MethodsinEnzymology,65 299−305(1980)、Maniatisら,“ポリアクリルアミドゲル電気泳動による小さい二本鎖
及び一本鎖DNA分子の鎖長測定”,Biochemistry,143787−3794(1975)、Maniatisら,分子クローニング:実験マニュアル(Cold Spring HarborLaboratory,New York,1982),179−185頁、及びABI PRISM(登録商標)377 DNA SequencerUser’s Manual,Rev.A,1995年1月,2 章(p/n 903433,The Perkin−Elmer Corporation,Foster
City,CA)により示されており、これらの夫々が参考として含まれる。特別な分離に使用される最適のポリマー濃度、pH、温度、変性剤の濃度等は、分離すべき核酸のサイズ範囲、それらの塩基組成(それらが一本鎖または二本鎖であるかを問わない)、及び情報が電気泳動により探究されるクラスの性質を含む、多くの因子に依存する。それ故、本発明の適用は特別な分離の条件を最適化するために通常の予備試験を必要とし得る。例えば、約20〜300塩基の範囲のサイズを有するオリゴヌクレオチドが以下のマトリックス中で本発明に従って分離され、検出された。トリス−ボレートEDTA緩衝液、pH8.3 中で生成された、19部対1部のアクリルアミド対ビス−アクリルアミドからつくられた6%のポリアクリルアミド。
【0117】
電気泳動分離後、色素−オリゴヌクレオチド接合体が色素標識されたポリヌクレオチドからの蛍光放出を測定することにより検出される。このような検出を行うために、標識されたポリヌクレオチドが通常の手段、例えば、強力水銀蒸気ランプ、レーザー等により照射される。照射手段は488〜550nm の波長の照射ビームを有するレーザーであることが好ましい。色素−ポリヌクレオチドはアルゴンイオンレーザーにより生じたレーザー光、特にアルゴンイオンレーザーの488及び514nm の放出線、またはネオジムソリッドステートYAG レーザーの532 放出線により照射されることが更に好ましい。これらの線で同時にレーザーとして使える幾つかのアルゴンイオンレーザーが市販されており、例えば、Cyonics,Ltd(Sunnyvale,Calif.)のモデル2001等が市販されている。次いで蛍光が感光性検出器、例えば、光電子増倍管、充電されたカップリング装置等により検出される。
【0118】
IV. エネルギー転移色素を含むキット
また、本発明はエネルギー転移蛍光色素及び/または試薬の組み合わせを有するキットに関する。一実施態様において、キットは本発明の少なくとも2種のスペクトル的に分解可能なエネルギー転移色素を含む。このキットにおいて、エネルギー転移色素は、単一光源が色素を励起するのに必要とされるように同じドナー色素を含むことが好ましい。別の実施態様において、キットはジデオキシシトシントリホスフェート、ジデオキシアデノシントリホスフェート、ジデオキシグアノシントリホスフェート、及びジデオキシチミジントリホスフェートを含み、夫々のジデオキシヌクレオチドトリホスフェートが本発明のエネルギー転移色素で標識される。一実施態様において、夫々のエネルギー転移色素はその他のジデオキシヌクレオチドトリホスフェートに結合されたその他のエネルギー転移色素からスペクトル的に分解可能である。このキットにおいて、エネルギー転移色素は同じ第一キサンテン色素を含むことが好ましい。更に別の実施態様において、キットは少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを含み、夫々のオリゴヌクレオチドが本発明のエネルギー転移色素を含む。一実施態様において、夫々のオリゴヌクレオチドはその他のオリゴヌクレオチドに結合されたエネルギー転移色素からスペクトル的に分解可能であるエネルギー転移色素を含む。別の実施態様において、キットは少なくとも4種のオリゴヌクレオチドを含み、これらが夫々スペクトル的に分解可能であるエネルギー転移色素を含む。エネルギー転移蛍光色素及びDNA配列決定におけるそれらの使用が以下の実施例により説明される。上記の目的及び利点以外の目的及び利点がこれらの実施例から明らかになるであろう。
【実施例】
【0119】
1.5TMR−B−CF の合成
【0120】
【化66】


【0121】
5−TMR NHS 及び4’−アミノメチル−5−カルボキシフルオレセインから実施例1A−Cに記載された反応順序に従って5TMR−B−CFを合成した。次いで5TMR−B−CFを1Dに記載された反応順序に従って5TMR−B−CF−NHSに変換し、その結果、色素をヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドプライマーにカップリングすることができた。
A.5−TMR−Bの合成
【0122】
【化67】


【0123】
4−アミノメチル安息香酸(3mg、19μモル)、5−TMR NHS(5mg、9μモル)及びトリエチルアミン(20μL)の混合物を1.5mLのエッペンドルフ管中でジメチルホルムアミド(DMF、200μL)中に懸濁させた。その混合物を10分間にわたって60℃に加熱した。反応の進行をジクロロメタン、メタノール及び酢酸の400/30/10混合物で溶離してシリカゲルによる薄層クロマトグラフィー(TLC)により監視した。不溶性4−アミノメチル安息香酸を遠心分離により分離し、DMF溶液を5%のHCl(1mL)にデカントした。不溶性5TMR−Bを遠心分離により分離し、5%のHCl(2x1mL)で洗浄し、真空遠心分離機中で乾燥させた。生成物をDMF(200 μL)に溶解し、5TMR−B−NHSを調製するのに使用した。
B.5−TMR−B−NHSの合成
【0124】
【化68】


【0125】
DMF(125μL)中の5TMR−Bの溶液、ジイソプロピルエチルアミン(10μL)及びジスクシンイミジルカーボネート(10mg)を1.5mLのエッペンドルフ管中で合わせ、60℃に加熱した。反応の進行をジクロロメタン、メタノール及び酢酸の600/60/16混合物で溶離してシリカゲルによるTLCにより監視した。5分後、反応は完結したことが明らかであった。その溶液を塩化メチレン(3mL)中で希釈し、250mMの炭酸塩/重炭酸緩衝液(pH9、4x1mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真遠心分離機で濃縮、乾燥させた。固体をDMF(100μL)に溶解した。アリコートをpH9 の緩衝液中で希釈し、552nm における吸光度を測定することにより収率を測定した。50,000cm−1M−1の吸光率を使用して、5TMR−B−NHSの濃度は4.8mMであった。5TMR NHSからの収率は8%であった。
C.5−TMR−B−CFの合成
【0126】
【化69】


【0127】
5TMR−B−NHSの溶液(250 μL のDMF 中1μモル)を1.5mLのエッペンドルフ管中で4’−アミノメチル−5−カルボキシフルオレセインの溶液(CF、100μLのDMSO中2.2μモル)及びトリエチルアミン(20μL)と合わせた。15%〜35%のアセトニトリル対0.1Mのトリエチルアンモニウムアセテートの勾配溶離によりC8逆相カラムを使用するHPLCにより反応を監視した。HPLC分析は、
5TMR−B−NHSが消費され、過剰の未反応のCFを残したことを示した。反応を5%のHCl(1mL)で希釈し、生成物を遠心分離により分離し、未反応のCFを水相中に残した。固体を5%のHCl(4x1mL)で洗浄し、真空遠心分離機中で乾燥させ、DMF(300μL)に吸収させた。収率は定量的であった。
D.5−TMR−B−CF−NHSの合成
【0128】
【化70】


【0129】
5TMR−B−CF の溶液(100μLのDMF中0.6μモル)、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(DEC、2mg)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(4mg)を1.5mLのエッペンドルフ管中で合わせた。その混合物を素早く音波処理し、60℃に加熱した。反応をジクロロメタン、メタノール及び酢酸の600/60/16混合物で溶離してシリカゲルによるTLCにより監視した。反応は30分間で完結し、5%のHClで希釈した。生成物を遠心分離により分離し、真空遠心分離機中で乾燥させた。活性化色素をDMF(20μL)に溶解した。
2.5ROX−CFの合成
【0130】
【化71】


【0131】
5ROX NHSの溶液(100μLのDMSO中2μモル)をCF(100μLのDMSO中2μモル)及びトリエチルアミン(10μL)と混合した。20%〜40%のアセトニトリル対0.1MのTEAAの勾配溶離によりC8逆相カラムによるHPLCにより
反応を追跡した。反応液を5%のHCl(1mL)中で希釈し、生成物を遠心分離により回収し、5%のHCl(1x1mL)で洗浄し、真空遠心分離機中で乾燥させた。生成物をDMF(200μL)に吸収させた。
3.Cy5の合成
【0132】
【化72】


【0133】
CFの溶液(20μLのCMSO中0.4μモル)及びトリエチルアミン(2μL)をモノCy5 NHS(約0.3 μモル)に添加した。10%〜30%のアセトニトリル対0.1MのTEAAの勾配溶離を使用してC8逆相カラムによるHPLCにより反応を追跡した。反応液を5%のHCl(1mL)中で希釈し、生成物を遠心分離により回収し、5%のHCl(1x1mL)で洗浄し、真空遠心分離機中で乾燥させた。生成物をDMF(100μL)に吸収させた。
4.エネルギー転移色素の蛍光強さの比較
以下の実施例は本発明の一連のエネルギー転移色素の蛍光放出強さを比較する。5TMR、6TMR−CF、5TMR−gly−CF、5TMR−CF、5TMR−B−CF、5TMR−gly−5AMF、5TMR−5AMF及び5TMR−lys−5FAMの色素溶液を1xTBE/8M尿素中で測定した。夫々の色素溶液は560nmで0.1の光学密度を有し、488nmで励起された。
【0134】
【化73】


【0135】
これらの色素の夫々の構造を表7に示す。図2はこれらの色素の夫々の相対蛍光の棒グラフを示す。図2からわかるように、リンカーが5環位でアクセプターに結合されているエネルギー転移色素(5TMR−CF及び5TMR−B−CF)は、アクセプター色素それ自体またはアクセプター色素が6環位で結合されている場合(6TMR−CF)よりもかなり強い蛍光を示すことがわかった。また、図2からわかるように、リンカーが式R1XC(O)R(式中、Rはベンゼンである)を有するエネルギー転移色素(5TMR−B−CF)は、リンカーが式−CH2NHCO−(5TMR−CF)または−CH2NHCOCH2NHCO−(5TMR−gMF)を有する色素と比較してかなり増強された蛍光を有することがわかった。また、図2からわかるように、リンカーが5環位でドナー及びアクセプターの両方に結合されているエネルギー転移色素(5TMR−5AMF及び5TMR−gly−5AMF)はかなりの蛍光を有することがわかった。重要なことに、リシンリンカーの使用はドナーとアクセプターの間の認められるエネルギー転移をもたらさないことがわかった。
【0136】
5.エネルギー転移色素を使用する色素プライマー配列決定
この実施例において、5TMR−CF標識されたオリゴヌクレオチド及び5TMR−B−CF標識されたオリゴヌクレオチドの相対的明度を比較するために色素プライマー配列決定をM13(配列番号1)について行った。この実施例において、色素プライマー配列決定をABIPRISM(登録商標)377 DNA Sequencer User’s Manual,Rev.B,1995年1月,2章(p/n 402114,The
Perkin−Elmer Corporation,Foster City,CA)に従って行った。5TMR−CF 及び5TMR−B−CFの夫々をM13−21プライマー(配列番号2)の5’末端に結合した。夫々のプライマーの等モル溶液をM13(配列番号1)と混合し、単一ジデオキシヌクレオチド混合物(ddA/dNTP)及びTaqFSで配列決定した。5TMR−CF標識されたプライマー及び5TMR−B−CF
標識されたプライマーを使用して検出されたオリゴヌクレオチドの得られる混合物のプロットを図9に示す。図9からわかるように、5TMR−B−CFで標識されたオリゴヌクレオチドは5TMR−CF で標識されたオリゴヌクレオチドよりも明るい。また、図9からわかるように、5TMR−B−CFで標識されたオリゴヌクレオチドの移動度は5TMR−CFで標識されたオリゴヌクレオチドよりも約1ヌクレオチド遅かった。
【0137】
6.4種の色素を使用する色素プライマー配列決定
実施例5に記載されたM13−21プライマー(配列番号2)に結合された4種の色素の組を使用して、色素プライマー配列決定をM13(配列番号1)について行った。図10は配列決定から生成された色素標識されたオリゴヌクレオチドの4色プロットである。シトシンに関するピークは5−カルボキシ−R110の蛍光に相当する。アデノシンに関するピークは5−カルボキシ−R6Gの蛍光に相当する。グアノシンに関するピークはTMR−B−CFの蛍光に相当する。チミジンに関するピークはROX−CFの蛍光に相当する。図10からわかるように、色素標識されたオリゴヌクレオチドの夫々がかなりの蛍光強さを示す。加えて、異なる色素標識されたオリゴヌクレオチドは、一連のピークの良好な分解が得られる程に充分に同様の移動度を示す。
7.6−CFB−DTMR−2−NHSの合成
【0138】
【化74】

【0139】
実施例1A−Bに記載された反応順序に従って6−CFB−DTMR−2をDTMR−2及び6−CFB から合成した。次いで6−CFB−DTMR−2を1Cに記載された反応順序に従って6−CFB−DTMR−2−NHSに変換し、その結果、色素をヌクレオシド、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドプライマーにカップリングすることができた。
A.DTMR−2−NHSの合成
【0140】
【化75】


【0141】
DMF 中のDTMR−2の溶液、N−ヒドロキシスクシンイミド及び1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩をエッペンドルフ管中で合わせ、60℃に加熱した。反応の進行をシリカゲルによるTLCにより監視した。反応が完結したことが明らかになった後、その溶液を塩化メチレン中で希釈し、250 mMの炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(pH9、4x1mL)で洗浄し、次いでHCl溶液(5%、1x1mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、真空遠心分離機で濃縮、乾燥せた。
B.6−CF−B−DTMR−2の合成
【0142】
【化76】


【0143】
ジメチルスルホキシド中の6−CFB の溶液(100μL、11mM)をジメチルホ
ルムアミド中のDTMR−2スクシドイミジルエステルの溶液(100μL、22mM)及びトリエチルアミン(20μL)と合わせた。その反応液を塩酸(5%、1mL)の溶液に添加し、固体を遠心分離により分離した。赤色固体を炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(250mM、pH9、100μL)に溶解し、希HClで再度沈殿させた。固体を真空遠心分離機中で乾燥させ、ジメチルホルムアミド(200μL)に溶解した。色素溶液の濃度を、アリコートを40%のアセトニトリル/0.1Mのトリエチルアンモニウムアセテート緩衝液(pH7)中で希釈することにより測定した。フルオレセインについて80,000cm−1m−1の吸光率を仮定して、6−CF−B−DTMR−2溶液は4mM(収率70%)であることがわかった。
C.6−CF−B−DTMR−NHSの合成
【0144】
【化77】


【0145】
ジメチルホルムアミド中の6−CF−B−DTMR−2の溶液(200μL、4mM)にN−ヒドロキシスクシンイミド(10mg)及び1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(5μg)を添加した。追加のN−ヒドロキシスクシンイミド(10mg)を添加した。反応の進行を600:60:16の混合物中のジクロロメタン:メタノール:酢酸で溶離してシリカゲルによる薄層クロマトグラフィーにより監視した。反応が完結した時、希HCl(5%、1mL)を添加し、生成物を遠心分離により分離した。固体を真空遠心分離機中で乾燥させ、ジメチルホルムアミド(100μL)に溶解した。色素溶液の濃度を、アリコートを40%のアセトニトリル/0.1Mのトリエチルアンモニウムアセテート緩衝液(pH7)中で希釈することにより測定した。フルオレセインについて80,000cm−1m−1の吸光率を仮定して、6−CF−B−DTMR−NHS 溶液は5.4mM(収率68%)であることがわかった。
【0146】
8.色素の蛍光強さの比較 以下の実施例は相当するアクセプター色素に対する本発明の一連のエネルギー転移色素の蛍光放出強さを比較する。この実施例によれば、夫々の色素を5’末端でアミノヘキシル結合により21プライマー配列(5’−TGTAAAACGACGGCCAGT)(配列番号1)に結合した。180,000cm−1M−1の吸光率を仮定して、オリゴヌクレオチドを260nmにおける吸光度に基いて定量した。スペクトルを488nm励起により8M尿素、1Xトリス/ボレート/EDTA(TBE)緩衝液中0.4μMのプライマー濃度で得た。図11A は5−CFB−DR110−2
及びDR110−2 の重なったスペクトルを示す。図11B は5−CFB−DR6G−2及びDR6G−2の重なったスペクトルを示す。図12Cは6−CFB−DTMR−2及びDTMR−2の重なったスペクトルを示す。図12Dは6−CFB−DROX−2及びDROX−2の重なったスペクトルを示す。これらの色素の構造を表1に示す。図11A〜図12D からわかるように、エネルギー転移色素はアクセプター色素それ自体よりもかなり強い蛍光を示すことがわかった。図13は4種の色素標識されたオリゴヌクレオチドの基準化された蛍光放出スペクトルを示す。スペクトルを488nm励起により8M尿素、1Xトリス/ボレート/EDTA(TBE)緩衝液中0.4μMのプライマー濃度で得た。図13に示された色素は5−CFB−DR110−2、5−CFB−DR6G−2、6−CFB−DTMR−2、及び6−CFB−DROX−2を含む。図13からわかるように、全ての4種のエネルギー転移色素は互いに対し良く分解される。
【0147】
9.エネルギー転移色素を使用する色素プライマー配列決定
この実施例において、5−CF−TMR−2標識されたプライマー、5−CF−B−TMR−2標識されたプライマー、6−CF−B−DTMR−2標識されたプライマー及びDTMR−2標識されたプライマーを使用して、色素プライマー配列決定をM13(配列番号2)について行った。この実施例において、色素プライマー配列決定をABIPRISM(登録商標)377 DNA Sequencer User’s Manual,Rev.B,1995年1月,2 章(p/n 402114,ThePerkin−Elmer Corporation,Foster City,CA)に従って行った。色素をM13−21プライマー(配列番号3)の5’末端に結合した。夫々のプライマーの等モル溶液をM13(配列番号2)と混合し、単一ジデオキシヌクレオチド混合(ddA/dNTP)及びTaqFSで配列決定した。5−CF−TMR−2標識されたプライマー及び5−CF−B−TMR−2標識されたプライマーを使用して検出されたオリゴヌクレオチドの得られる混合物のプロットを図14に示す。この図からわかるように、5−CF−B−TMR−2は5−CF−TMR−2よりもかなり強いシグナルを示し、5−CF−B−TMR−2中に使用されたリンカーにより与えられた蛍光増強を示す。6−CF−B−DTMR−2標識されたプライマー及びDTMR−2標識されたプライマーを使用して検出されたオリゴヌクレオチドの得られる混合物のプロットを図15に示す。この図からわかるように、6−CF−B−DTMR−2はDTMR−2よりもかなり強いシグナルを示し、そのエネルギー転移色素により与えられた蛍光増強を示す。
【0148】
10. 4種の色素を使用する色素プライマー配列決定
実施例5に記載されたM13−21プライマー(配列番号3)に結合された4種の色素の組を使用して、色素プライマー配列決定をM13(配列番号2)について行った。図16及び17は配列決定から生成された色素標識されたオリゴヌクレオチドの4色プロットである。シトシンに関するピークは5−CFB−DR110−2の蛍光に相当する。アデノシンに関するピークは6−CFB−DR6g−2の蛍光に相当する。グアノシンに関するピークは5−CFB−DTMR−2の蛍光に相当する。チミジンに関するピークは5−CFB−DROX−2の蛍光に相当する。図16及び17からわかるように、色素標識されたオリゴヌクレオチドの夫々がかなりの蛍光強さを示す。加えて、異なる色素標識されたオリゴヌクレオチドは、一連のピークの良好な分解が得られる程に充分に同様の移動度を示す。本発明の好ましい実施態様の以上の記載は説明及び記載の目的で示された。排他的であること、または本発明を開示された正確な形態に限定することは意図されていない。明らかに、多くの改良及び変化が当業者に明らかであり、本発明の範囲内に入ることが意図されている。
【0149】
(配列表)
【数AA】



【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】活性化されたN−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステル(これは次いでアミノヘキシル−オリゴマーと反応させられて色素標識されたオリゴヌクレオチドプライマーを生成する)へのエネルギー転移色素のカルボキシ置換基の修飾を示す。
【図2】本発明の一連のエネルギー転移色素の蛍光放出強さをその他のエネルギー転移色素及びアクセプター色素単独と比較する。
【図3】本発明のエネルギー転移色素中に使用し得る4,7−ジクロロローダミン色素化合物の幾つかの特に好ましい実施態様を示す。
【図4】本発明のエネルギー転移色素中に使用し得る4,7−ジクロロローダミン色素化合物の幾つかの特に好ましい実施態様を示す。
【図5】本発明の4,7−ジクロロローダミン色素(置換基X がカルボキシレート以外であり得る)の調製の好ましい一般化された合成スキームを示す。
【図6】本発明の4,7−ジクロロローダミン色素(置換基Xがカルボキシレートである)の調製の好ましい一般化された合成スキームを示す。
【図7】互いにスペクトル的に分解可能である4種の色素(3−カルボキシ−R110、5−カルボキシ−R6G、5TMR−B−CF 及び5ROX−CF)の組を示す。
【図8】互いにスペクトル的に分解可能である4種の色素(3−カルボキシ−R110、5−カルボキシ−R6G、5ROX−CF 及びCy5−CF)の組を示す。
【図9】5TMR−CF 標識されたプライマー及び5TMR−B−CF 標識されたプライマーを使用する色素プライマー配列決定中に生成された標識されたオリゴヌクレオチドの混合物のプロットである。
【図10】3−カルボキシ−R110、5−カルボキシ−R6G、5TMR−CF 及び5TMR−B−CF を含む4色素の組を使用する色素プライマー配列決定の4色プロットである。
【図11】6−CFB−DR110−2 及びDR110−2 の重なったスペクトル並びに5−CFB−DR6G−2及びDR6G−2の重なったスペクトルを示す。
【図12】6−CFB−DTMR−2及びDTMR−2の重なったスペクトル並びに6−CFB−DROX−2及びDROX−2の重なったスペクトルを示す。
【図13】互いにスペクトル的に分解可能である4種の色素(5−CFB−DR110−2、5CFB−DR6G−2、6−CFB−DTMR−2、及び6−CFB−DROX−2)の組を示す。
【図14】6−CFB−DTMR−2標識されたプライマー及びDTMR−2標識されたプライマーを使用する色素プライマー配列決定中に生成された標識されたオリゴヌクレオチドの混合物のプロットである。
【図15】5−CF−TMR−2標識されたプライマー及び5−CF−B−TMR−2標識されたプライマーを使用する色素プライマー配列決定中に生成された標識されたオリゴヌクレオチドの混合物のプロットである。
【図16】5−CFB−DR110−2、6−CFB−DR6g−2、5−CFB−DTMR−2、及び5−CFB−DROX−2を含む4種の色素の組を使用する色素プライマー配列決定の4色プロットである。
【図17】5−CFB−DR110−2、6−CFB−DR6g−2、5−CFB−DTMR−2、及び5−CFB−DROX−2を含む4種の色素の組を使用する色素プライマー配列決定の4色プロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケン、ジエン、アルキン、少なくとも一つの不飽和結合を有する5員環及び6員環又は縮合環構造からなる群から選ばれた官能基であって、キサンテン環構造を有し、第一波長の光を吸収し、応答して励起エネルギーを放出することができるドナー色素を含む第一置換基及びドナー色素により放出された励起エネルギーを吸収し、応答して第二波長で蛍光を発することができるアクセプター色素を含む第二置換基を有する官能基を含む化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−46685(P2009−46685A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241854(P2008−241854)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【分割の表示】特願2003−288285(P2003−288285)の分割
【原出願日】平成9年5月6日(1997.5.6)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】