説明

硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】ポリオールに対する発泡剤の溶解性を向上させた硬質発泡合成樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤、整泡剤、触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、前記発泡剤として水および二酸化炭素を用い、前記ポリオール組成物が、下記ポリオール(A)を50質%以上含有するポリオール組成物を用いる。ポリオール(A)とは平均官能基数が2〜5、水酸基価が300〜760mgKOH/g、芳香環を有しておらず、かつポリオール(A)を構成するオキシアルキレン基中、炭素数が3以上のオキシアルキレン基の含有量が90質量%以上のポリオキシアルキレンポリオールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一で微細なセル構造を有し、断熱性が良好な、硬質ポリウレタンフォーム、硬質ウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームおよび硬質ポリウレアフォーム等の硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。特に、ポリオールに対する発泡剤の溶解性を向上させた硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールとポリイソシアネートとを発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造することは広く行われている。このうち発泡剤に関して、従来用いられてきた塩素化フッ素化炭素化合物(クロロフルオロカーボン化合物、CClF等のいわゆるCFC化合物)および塩素化フッ素化炭化水素化合物(ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、CClFCH等のいわゆるHCFC化合物)は、環境保護の観点から使用が規制されている。
【0003】
これらの規制対象発泡剤に代わる発泡剤としては、ハイドロフルオロカーボン(以下、HFC化合物ともいう)、ハイドロフルオロエーテル(以下、HFE化合物ともいう)、シクロペンタン等の炭化水素化合物がある。
しかし、HFC化合物は地球温暖化係数が高いため、その使用量を削減することが望ましく、使用量の削減のために、発泡剤として水を使用する技術が検討されてきた。水はポリイソシアネート化合物と反応することによって炭酸ガスを生成するため単独で使用する場合もある。さらに、水と空気、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスを併用することも行われている。不活性ガスを超臨界状態に近づけると、不活性ガスの溶解性が向上し、発泡の場が低粘度になり、微細なセル構造のフォームが得られることが知られており、不活性ガスを用いる場合、炭酸ガス等を液化状態、超臨界、亜臨界状態のいずれかの状態で用いることが行われている(特許文献1〜5参照)。
【0004】
たとえば特許文献1には、亜臨界流体、超臨界流体または液体状態の二酸化炭素を発泡剤として使用することにより数μm/個〜数十μm/個程度の超微細な気泡を有するフォームを形成できることが記載されている。
また特許文献2には、超臨界流体または亜臨界流体の使用は、気体に類似した高拡散係数により物質の溶解性を高め、物性向上に有効な多官能、高分子化合物の選択性向上が図られると同時に、各種化合物に対して不活性であることが記載されている。また物質の溶解性が高まることにより、スプレー原液およびスプレー混合液の粘度が低下するため、これら2液の混合性が向上し、優れたフォーム特性、かつ良好なスプレーパターンによる施工性の向上に寄与することが記載されている。
特許文献4には、超臨界状態、亜臨界状態または液体状態の二酸化炭素の使用は、これらの冷却効果により、ポリウレタンフォーム中のセル核が安定に形成されると同時に、揮発性発泡剤の多くがフォームセル中に残存し、躯体に発泡されたフォームセルサイズの微細化、フォームの平滑性、気泡の安定性に役立つことが記載されている。またセルサイズが微細であることにより、より強靭で軽量のポリウレタンフォームが得られることが記載されている。
なお、マイクロセルラープラスチックの発泡成形方法としても、高温かつ高圧に保持された不活性ガスを減圧することで、内部エネルギー(ギブズの自由エネルギー)の急激な変化が起こり、相分離が発生し、結果として多くの気泡を生じることとなり、良好な発泡特性を示すことが知られている。
【特許文献1】特開2002−20444号公報
【特許文献2】特開2002−47326号公報
【特許文献3】特開2002−47325号公報
【特許文献4】特開2002−327439号公報
【特許文献5】特開2004−107376号公報
【0005】
しかし、発泡剤として水および不活性ガス等を使用して得られる発泡合成樹脂は、発泡剤として従来のCFC化合物やHCFC化合物およびHFC化合物を使用して得られる発泡合成樹脂と比較すると、物性の低下が見られる。
特に水だけで発泡させると、水がポリイソシアネート化合物と反応する際に生成する尿素結合による影響から、基材等との接着性が低下する欠点がある。
【0006】
また、発泡剤として不活性ガスを液化状態、超臨界、亜臨界状態のいずれかの状態で用いる方法では、ポリオールに対する不活性ガスの溶解性が一定以上なければ発泡剤として系内に取り込まれず、発泡効果が発現されにくい。その結果、均一で微細なセルが得られないため、断熱性能が向上されにくい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、不活性ガスのポリオール組成物等に対する溶解性を改善することにより、均一で微細なセル構造を有する、断熱性の良好な硬質発泡合成樹脂を得ることができる製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤として水および二酸化炭素を用い、整泡剤、触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、前記ポリオール組成物が、下記ポリオール(A)を50質量%以上含有することを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(A):平均官能基数が2〜5、水酸基価が300〜760mgKOH/g、芳香環を有しておらず、かつポリオール(A)を構成するオキシアルキレン基中、炭素数が3以上であるオキシアルキレン基の含有量が90質量%以上であるポリオキシアルキレンポリオール。
[2] 前記ポリオール組成物100質量部に対して、式1で示される含フッ素化合物を0.1〜30質量部加えて反応させる[1]に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
−O−(Z−O)−R・・・式1
(式1中、Rは炭素数2〜27の含フッ素有機基、nは1〜100の整数である。Zは結合手間直鎖部分の炭素数2〜4のアルキレン基であって、nが2〜100である場合の式中のZは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは水素原子、炭素数が1〜18のアルキル基、または炭素数が1〜18のアシル基である。)
[3] 発泡剤の水を、ポリオール組成物100質量部に対して2〜10質量部使用する[1]または[2]に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡剤中の二酸化炭素のポリオール組成物等に対する溶解性が改良される結果、均一で微細なセル構造を有する断熱性の良好な硬質発泡合成樹脂が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の硬質発泡合成樹脂の製造方法においては、ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤に水および二酸化炭素を用い、整泡剤および触媒の存在下で反応させる。
以下これらの各成分の詳細について説明する。
【0011】
<ポリオール組成物>
本発明のポリオール組成物はポリオール(A)を含有する。さらにポリオール(A)以外の任意のポリオール(B)を含んでもよい。
【0012】
(ポリオール(A))
ポリオール(A)は、平均官能基数が2〜5、水酸基価が300〜760mgKOH/g、芳香環を有しておらず、かつポリオール(A)を構成するオキシアルキレン基中、炭素数が3以上のオキシアルキレン基の含有量が90質量%以上であるポリオキシアルキレンポリオールである。
ポリオール(A)としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、ポリオキシアルキレンポリオールとは、ポリオール製造触媒の存在下、開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリオールである。
【0013】
なお、官能基数とは、ポリイソシアネート化合物と反応するポリオールの官能基(水酸基)の数を意味し、ポリオキシアルキレンポリオール(ポリエーテルポリオール)においては、それを製造するのに使用した開始剤の活性水素数に等しい。
また、芳香環とは、芳香族性を持つ炭素を骨格とする環であり、具体的にはベンゼン環が挙げられる。
【0014】
ポリオール(A)の製造に用いる開始剤としては、以下に記した平均官能基数が2〜5のアミン化合物又は多価アルコール等を用いる。アミン化合物開始剤としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のアルキルアミン類;N−(2−アミノエチル)ピペラジン等の脂環族アミン類等が、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、ジグリセリン等が挙げられる。
アミン化合物開始剤のうち、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたはエチレンジアミンが特に好ましい。
また、多価アルコール開始剤では、グリセリン、ペンタエリストールが好ましく、グリセリンが最も好ましい。
また、前記アミン化合物または多価アルコール等と、平均官能基数6〜8の糖類、たとえばソルビトールや砂糖とを混合し、平均官能基数を2〜5とした開始剤を用いてもよい。
【0015】
ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシド中に占める、炭素数が3以上であるアルキレンオキシドは90質量%以上であり、95質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。炭素数が3以上のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドと、1,2−エポキシブタンおよび2,3−エポキシブタンを総称するブチレンオキシドが好ましく、特にプロピレンオキシドが好ましい。
【0016】
ポリオール(A)の製造には炭素数2のアルキレンオキシド、つまりはエチレンオキシドを併用してもよい。
すなわち、ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドは、プロピレンオキシド単独あるいはプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの併用が好ましい。プロピレンオキシドとエチレンオキシドは、混合してから反応させてもよく、順次反応させてもよいが、ポリオール(A)においては、プロピレンオキシドを反応させた後にエチレンオキシドを反応させることが好ましい。
【0017】
ポリオール(A)の水酸基価は300〜760mgKOH/gであり、350〜500mgKOH/gが好ましい。水酸基価が300mgKOH/g以上であると、硬質発泡合成樹脂が製造直後に収縮しにくく、また水酸基価が760mgKOH/g以下であるとポリオールと前記発泡剤との溶解性が良いため、充分な発泡効果が得られ好ましい。
【0018】
(ポリオール(B))
硬質発泡合成樹脂の物性を向上させる目的で、ポリオール(A)以外のポリオール(B)を任意の成分として併用してもよい。ポリオール(B)としては、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、多価アルコール類および多価フェノール類が挙げられる。このうちポリエーテルポリオール類およびポリエステルポリオール類が好ましく、ポリエーテルポリオール類が特に好ましい。得られる硬質発泡合成樹脂の断熱性の点からポリエーテルポリオール類のうち芳香族アミン系ポリエーテルポリオールが特に好ましい。ポリオール(B)の官能基数は2〜6、水酸基価は100〜800mgKOH/gが好ましく、200〜500mgKOH/gがより好ましい。
【0019】
またポリオール(B)として、ポリマー微粒子が安定に分散しているポリオール(いわゆるポリマー分散ポリオール)を用いてもよい。ポリマー微粒子として付加重合系ポリマーまたは縮重合系ポリマー微粒子を用いることができる。付加重合系ポリマーは、たとえば、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等のモノマーを単独で重合するかまたは2種以上を共重合して得られる。また、縮重合系ポリマーとしては、たとえば、ポリエステル、ポリウレア、ポリウレタン、メラミン等が挙げられる。ポリオール組成物中にポリマー微粒子を存在させることにより、製造される硬質発泡合成樹脂の収縮が防止できる。この効果は特に、より低密度の硬質発泡合成樹脂製造の際に有用である。
【0020】
<含フッ素化合物>
硬質発泡合成樹脂の製造の際には、上述したポリオール組成物に、下式1で示される含フッ素化合物を加えて反応させるのが好ましい。
−O−(Z−O)−R・・・式1
は炭素数2〜27の含フッ素有機基である。含フッ素有機基としては、炭素数2〜27のポリフルオロアルキル基または該ポリフルオロアルキル基の炭素−炭素結合間に酸素原子または窒素原子を含む基(以下、これらの基をRf0と記す。)が好ましい。Rf0基としては炭素数2〜27のポリフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0021】
f0基は酸素原子または窒素原子を有してもよい炭素数1〜22のポリフルオロアルキル基(以下、RfB基と記す。)(B部分)と直鎖または分岐アルキレン基(C部分)から成り立っている。RfB基はアルキル基中の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換された基または該基の炭素−炭素結合間に酸素原子または窒素原子を含む基であり、前者が好ましい。RfB基の炭素数は1〜16が好ましく、特に4〜16が好ましく、とりわけ6〜14が好ましい。RfB基中のフッ素原子の数は、(RfB基のフッ素原子数)/(RfB基に対応する同一炭素数のアルキル基中の水素原子数)×100(%)で表現する場合に、60%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。また、RfB基は、直鎖構造または分岐構造が好ましく、特に直鎖構造が好ましい。分岐構造である場合には、分岐部分が炭素数1〜3程度の短鎖であり、かつRfB基の末端部分に存在しているのが好ましい。
【0022】
前記RfB基はパーフルオロアルキル基または該基の炭素−炭素結合間に酸素原子または窒素原子を含む基(以下、これらをRFB基と記す。)でもよく、パーフルオロアルキル基が好ましい。また、直鎖構造のものが好ましい。RFB基は水素原子の実質的に全てがフッ素原子に置換された基である。RFB基の炭素数は1〜16が好ましく、6〜14が特に好ましい。すなわちRFB基は、F(CF−(mは1〜16の整数)で表される直鎖構造の基が好ましい。mは4〜16が好ましく、6〜14が特に好ましい。直鎖構造のRFB基はCIを添加剤としたテトラフルオロエチレンのテロマー化で得られる。また分岐構造のRFB基はテトラフルオロエチレンやヘキサフルオロプロピレンなどのフッ素含有モノマーをKF、CsF等の触媒でオリゴマー化することで得られる。酸素原子を含むRFB基はヘキサフルオロプロピレンオキシドの開環重合などにより得られる。 含フッ素化合物は、RfB基の炭素数が異なる2種以上の化合物の混合物であってもよい。特に、RfB基の炭素数が6〜14の含フッ素化合物を主成分とし、RfB基の平均炭素数が8〜10である混合物が好ましい。
【0023】
f0基におけるC部分は、炭素数1〜5の直鎖または分岐アルキレン基である。C部分の炭素数は、2〜4であることが好ましく、さらに3または4が好ましく、3のアルキレン基であるのがもっとも好ましい。C部分が炭素数3のアルキレン基である場合の含フッ素化合物は、化学的な安定性および耐熱性に優れた化合物である。C部分としてはたとえば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基[−CHCH(CH)−]、ブチレン基[−CH(CH)CHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CH(CH)CH(CH)−]等が挙げられる。
【0024】
式1におけるnは1〜100の整数であり、2〜50が好ましく、2〜15が特に好ましい。本発明の含フッ素化合物は、nが異なる2種以上の化合物の混合物であってもよく、その場合においても、nの平均値は1〜50の範囲にあるのが好ましく、さらに2〜30、特に2〜15の範囲にあるのが好ましい。
【0025】
式1におけるZは、結合手間直鎖部分の炭素数2〜4のアルキレン基であり、該アルキレン基の水素原子は、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基等に置換されていてもよい。ただし、結合手間直鎖部分の炭素数とは、結合手を有する炭素原子を両端に有する、その2つの炭素原子を含む直鎖構造部分の炭素数である。
Zとしては、エチレン基、プロピレン基、1,2−ブチレン基、2,3−ブチレン基、テトラメチレン基、−CH(C)CH−、−CH(CHOR)CH−等が挙げられる。ただし、Rは炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Rとしてはメチル基、ブチル基、または2−エチルヘキシル基が好ましい。Zは炭素数2〜4のアルキレン基であり、エチレン基、プロピレン基、またはテトラメチレン基が特に好ましい。式1中のnが2〜100である場合、Zはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。異なっている場合には、Zが2種または3種であるのが好ましく、特に2種であるのが好ましい。含フッ素化合物中のZは1種または2種存在するのが好ましく、特にエチレン基とプロピレン基の2種が存在することが好ましい。
【0026】
式1中の(Z−O)部分は、後述する環状エーテルを開環付加反応させることによって形成させる構造であるのが好ましく、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシ(1,2−ブチレン)、オキシ(2,3−ブチレン)、オキシ(イソブチレン)、オキシ(トリメチレン)、オキシ(1または2−メチルトリメチレン)、オキシ(フェノキシメチルエチレン)、オキシ(テトラメチレン)、オキシ(フェニルエチレン)、オキシ(アルコキシエチレン)等が挙げられ、これらから選ばれる1種以上が2個以上連なった構造でもよい。該うち、式1中の(Z−O)部分は、オキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基が好ましく、特にポリオキシアルキレン基が好ましく、とりわけ、ポリオキシエチレン基またはポリオキシプロピレン基が好ましい。さらに、式1中の(Z−O)部分は、1個以上のオキシエチレン基と1個以上のオキシプロピレン基とが、ブロック状またはランダム状に連なった構造であるのが好ましい。
【0027】
(Z−O)部分を形成する際に用いる環状エーテルとしては、環内に1個の酸素原子を有する3〜5員の環状エーテル基を含む化合物が好ましく、特に3員環状エーテル基を1個有する化合物(モノエポキシド)が好ましい。さらに、環状エーテルとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキシドが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、オキセタン、メチルオキセタン、フェニルグリシジルエーテル、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、およびアルキルグリシジルエーテル等が挙げられる。アルキルグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、(2−エチルヘキシル)グリシジルエーテル等が挙げられる。特にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびテトラヒドロフランが好ましい。なお、テトラヒドロフランが開環して形成されるZはテトラメチレン基である。環状エーテルは1種以上を使用し、2種以上を用いるのが好ましい。2種以上の環状エーテルを用いる場合は、2種以上の環状エーテルの混合物を同時に反応に用いてもよく、2種以上の環状エーテルを順次反応に用いてもよい。
【0028】
式1におけるRは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または炭素数1〜18のアシル基である。アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基が好ましい。アシル基としては、炭素数1〜10のアシル基が好ましく、特に炭素数1〜6のアシル基が好ましい。Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0029】
式1で表される含フッ素化合物としては、Rが水素原子であり、nが2〜50であり、かつZが炭素数2〜4のアルキレン基である場合が好ましい。さらに、式1で表される含フッ素化合物としては、式1aで表される化合物が好ましい。
【0030】
−O−(CHCHO)・[CHCH(CH)O]−H・・・式1a
ただし、式1a中の記号は、以下の意味を示し、(CHCHO)と[CHCH(CH)O]の連なり方は順序を問わず、ブロックであってもよく、ランダムであってもよいが、ブロックであるのが好ましい。
:式1における意味と同じ意味である。
k、m:それぞれ独立に、1〜99であり、k+mは2〜100である。
【0031】
k、mはそれぞれ独立に、1〜30が好ましく、2〜10が特に好ましい。k+mは2〜60が好ましく、4〜20が特に好ましい。またk≧mが好ましい。
【0032】
式1で表される含フッ素化合物の具体例としては下記化合物が挙げられ、それぞれ単独で用いても2種以上を組み合わせても使用できるが、これらに限定されない。
17O(CO)10H、C17O(CO)・(CO)H、C17O(CO)13H、C17O(CO)・(CO)10H、C17O(CO)10H、C17O(CO)・(CO)H、C17O(CO)13H、C17O(CO)・(CO)10H、C17O(CO)10H、C17O(CO)・(CO)H、C17O(CO)13H、C17O(CO)・(CO)10H、C17O[CH(C)CHO]・[CH(CHOCH)CHO]H、C17O(CO)・(CO)CH、C17O(CO)・(CO)COC1837
【0033】
ただし、式1中のRfB基に該当する部分は直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよいが、直鎖構造が好ましい。また、2種以上のオキシアルキレン基を含むポリオキシアルキレン鎖が存在する場合には、それらの連なり方はブロックであってよく、もランダムであってもよい。(CO)部分は、オキシプロピレン基を示し、[CH(CH)CHO]または[CHCH(CH)O]であることを示す。また(CO)部分は、テトラヒドロフランの開環物である(CHCHCHCHO)であることを示す。
【0034】
式1で表される含フッ素化合物は、式2で表される含フッ素ヒドロキシ化合物に、環状エーテルを開環付加反応させて合成するのが好ましい。
−OH・・・式2
(式2中、Rは、式1における意味と同じである。)
【0035】
たとえば、式2のR中のRfB基がRFB基であり、C部分の炭素数が1である場合の含フッ素ヒドロキシ化合物(RFBCHOH)の合成方法としては、前記テロマー化で得たパーフルオロアルキルヨウ素(RFBI)にエチレンを付加しアルカリ処理してパーフルオロアルキルエチレン(RFBCH=CH)とし、つぎにパーフルオロアルキルエチレンを酸化してパーフルオロアルカンカルボン酸(RFBCOOH)とし、さらにパーフルオロアルカンカルボン酸をNaBHなどで還元して得る方法が挙げられる。
【0036】
式2のR中のRfB基がRFB基であり、C部分の炭素数が2である場合の含フッ素ヒドロキシ化合物[RFB(CHOH]の合成方法としては、上記RFBIにエチレンを挿入してRFB(CHIとした後、末端ヨウ素原子を水酸基と置換する方法が挙げられる。
式2のR中のRfB基がRFB基であり、C部分の炭素数が3である場合の含フッ素ヒドロキシ化合物[RFB(CHOH]の合成方法としては、上記RFBIにアリルアルコールを付加してRFBCHCHICHOHとしたのち、ヨウ素原子を還元剤で水素原子に置換する方法が挙げられる。
式2のR中のRfB基がRFB基であり、C部分の炭素数が4ある場合の含フッ素ヒドロキシ化合物[RFB(CHOH]の合成方法としては、上記RFBIに3−ブテン−1−オールを付加して[RFBCHCHI(CHOH]としたのち、ヨウ素原子を還元剤で水素原子に置換して得る方法が挙げられる。
また、C部分の炭素数が4である場合の含フッ素ヒドロキシ化合物[RFB(CHOH]の異性体である、RfBCHCHCH(OH)CHの合成方法としては、上記RFBCH=CHを、多量のエタノール溶媒中で所定のラジカル開始剤を加えて加熱しながら撹拌し、ラジカル付加反応にてエタノールを付加して得る方法などが挙げられる。
C部分の炭素数が5である場合の含フッ素ヒドロキシ化合物[RFB(CHOH]の合成方法としては、上記RFBIに4−ペンテン−1−オールを付加して[RFBCHCHI(CHOH]としたのち、ヨウ素原子を還元剤で水素に置換する方法などが挙げられる。
【0037】
つぎに、上記の方法で得た含フッ素ヒドロキシ化合物(式2)に、環状エーテルを開環付加反応させる。環状エーテルを2種以上開環付加反応させる場合には、それらを混合して反応させてもよく、順次反応させてもよい。環状エーテルは1種のみを用いる場合、2種以上を用いる場合とも、一括で仕込んでもよく、徐々に反応系に加えてもよい。含フッ素ヒドロキシ化合物(式2)の仕込量は、環状エーテル化合物の付加量によって異なるが、反応器の撹拌条件等を考慮し、反応器の内容量の1/10以上を仕込むのが好ましい。特に容積効率を考えると、環状エーテルを付加した後に容積率で80〜95%になっていることが望ましい。
【0038】
開環付加反応は、触媒の存在下に実施するのが好ましい。触媒としては、アルカリ金属触媒、酸触媒、金属錯体触媒が挙げられ、特に、酸触媒、金属錯体触媒が好ましい。アルカリ金属触媒としては、KOH、NaOH、CsOH、NaBH/NaI/Iからなる三元触媒等が挙げられ、酸触媒としては、BFが挙げられ、金属錯体触媒としては亜鉛ヘキサシアノコバルテートのエーテルおよび/またはアルコール錯体触媒等の複合金属シアン化物錯体が挙げられる。
【0039】
開環付加反応は、強アルカリ条件下で実施すると、R部分でHFが脱離する副反応が起こる場合があるので、アルカリ金属触媒を用いる場合には、温和なアルカリ触媒であるNaBH/NaI/Iからなる三元触媒を用いるのが好ましい。また、酸触媒を用いる場合には、触媒の酸性が強すぎると、R部分でHFが脱離する副反応が起こる場合があるので、この脱HF反応を抑えるために、必要に応じて希釈溶媒を用いるのが好ましい。希釈溶媒としては、グライム、ジグライム、トリグライム、およびメチル−tert−ブチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
環状エーテルの開環付加反応の反応温度は、−20〜180℃が好ましく、特に0〜130℃が好ましい。希釈溶媒を用いる場合で、該希釈溶媒が低沸点の希釈溶媒である場合には、内部の圧力の上昇を考慮して、(溶媒の沸点+20℃)よりも低い温度で反応させるのが好ましい。
【0040】
含フッ素ヒドロキシ化合物(式2)に、環状エーテルを開環付加反応させて得た化合物は、末端が水酸基(Rは水素原子)である場合の含フッ素化合物(式1)であり、末端の水酸基を変性(たとえば、エステル化またはアルキル化等)することにより、種々の特性を調節できる。エステル化は、有機カルボン酸、有機カルボン酸エステルまたは有機カルボン酸無水物を反応させることにより実施するのが好ましい。有機カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、2−エチルヘキサン酸(オクチル酸)、3,5,5−トリメチルヘキサン酸(イソノナン酸)、オレイン酸、またはステアリン酸などの1価カルボン酸が挙げられ、有機カルボン酸エステルとしては、前記1価カルボン酸と低沸点アルコールとのエステル等が挙げられ、有機カルボン酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、無水n−酪酸などの1価カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0041】
エステル化は、上記の有機カルボン酸、有機カルボン酸エステルまたは有機カルボン酸無水物を、末端が水酸基(Rは水素原子)である場合の含フッ素化合物(式1)に加え、無触媒または触媒の存在下に加熱しながら撹拌したのち、脱水、脱アルコール、または未反応の酸を除去することにより実施するのが好ましい。触媒としては、パラトルエンスルホン酸や硫酸等の微量酸触媒、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒が好ましい。アルキル化は、強アルカリ条件でモノハロアルキルと反応させる方法、ジアルキル硫酸を用いる方法等があるが、HFの脱離反応を抑制できる点で、アルキル硫酸等のアルキル化剤を用いる反応が好ましい。
【0042】
上記の種々の反応で得た含フッ素化合物(式1)は、必要に応じて、硫酸、リン酸等を用いた酸処理や、合成珪酸マグネシウム、活性白土、活性炭等を用いた吸着処理等により精製して高純度としておくのが好ましい。
【0043】
<各成分の組成>
上述した各成分の具体的な組成範囲としては以下のとおりである。
ポリオール(A)の使用量はポリオール組成物全量に対して50質量%以上である。さらには60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。ポリオール(A)の使用量がポリオール組成物全量に対して50質量%以上であると、前記発泡剤のポリオール組成物に対する溶解性が良好となり、発泡性を維持し、断熱性良好な硬質発泡合成樹脂が得られる。
【0044】
また、ポリオール(B)を併用する場合、その使用量は、ポリオール組成物全量に対して50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
さらに、前記式1の含フッ素化合物を加える場合、ポリオール組成物100質量部に対する式1の含フッ素化合物の添加量は、0.1〜30質量部が好ましく、0.1〜25質量部がより好ましく、0.1〜20質量部がさらに好ましい。
【0045】
本発明において、各成分の特に好ましい組成は、ポリオール組成物全量に対して、ポリオール(A)が80〜100質量%、および任意にポリオール(B)が0〜20質量%、さらにポリオール組成物100質量部に対して、含フッ素化合物が0.1〜25質量部である。
また、ポリオール組成物全体の平均水酸基価は100〜800mgKOH/gが好ましく、200〜600mgKOH/gがより好ましい。
【0046】
各成分の組成を以上の割合とすることにより、ポリオール組成物や、該ポリオール組成物に含フッ素化合物を加えた組成物に対する、発泡剤としての二酸化炭素の溶解度を向上させ、得られる硬質発泡合成樹脂の密度を低減することかでき、かつ良好な断熱性を得ることができる。
【0047】
<ポリイソシアネート化合物>
ポリイソシアネート化合物としては、通常硬質発泡合成樹脂の製造に用いられるポリイソシアネートであればよく特に制限はなく、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系および脂肪族系等のポリイソシアネート、それら2種類以上の混合物ならびにそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネート、それらのプレポリマー型変性体、イソシアヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。該うち、MDI変性体、クルードMDI変性体、またはそれらの1種を主成分とする芳香族系ポリイソシアネートの混合物が好ましい。
【0048】
ポリイソシアネート化合物の使用量は、イソシアネートインデックスで80〜150が好ましい。イソシアネートインデックスは、ポリオール組成物およびその他の活性水素化合物の活性水素の合計当量に対するイソシアネート基の数の割合を100倍して表現される値である。さらに触媒としてウレタン化触媒を主に用いるウレタン処方においては、イソシアネートインデックスで90〜140がより好ましく、90〜130が特に好ましい。
また触媒としてイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を主に用いるイソシアヌレート処方においては、ポリイソシアネート化合物の使用量はイソシアネートインデックスで、150〜300が好ましく、180〜250がより好ましい。本発明においては硬質発泡合成樹脂と基材や面材との接着性等の観点からウレタン処方を採用することが好ましく、前記イソシアネートインデックスは80〜150が好ましい。
【0049】
<発泡剤>
発泡剤としては水および二酸化炭素を用いる。水はポリイソシアネート化合物と反応して炭酸ガスを発生する。二酸化炭素は超臨界状態、亜臨界状態または液体状態で用いることが好ましい。
ここで、本発明において、「亜臨界状態の二酸化炭素」とは、圧力が二酸化炭素の臨界圧以上でありかつ温度が臨界温度未満である液体状態の二酸化炭素、圧力が二酸化炭素の臨界圧未満でありかつ温度が臨界温度以上である液体状態の二酸化炭素、または、温度および圧力が共に臨界点未満であるがこれに近い状態、具体的には、温度が20℃以上でありかつ圧力が5MPa以上の二酸化炭素を示す。また、「液体状態の二酸化炭素」とは上記亜臨界状態以外の液体状態の二酸化炭素を示す。
発泡剤としての水は、ポリオール組成物100質量部に対して、2〜10質量部が好ましく、2〜7質量部がより好ましい。水の使用量が2質量部以上であると、密度の低い硬質発泡合成樹脂が得られる。また、使用量が10質量部以下であると、水とポリオール組成物との相溶性が良くなる。さらに超臨界状態、亜臨界状態または液体状態の二酸化炭素の使用量は、ポリオール組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
発泡剤として水および二酸化炭素を用い、さらに本発明における特定のポリオール組成物を用いると発泡効果が発現し、密度の低い硬質発泡合成樹脂が得られる。
【0050】
<整泡剤>
本発明においては良好な気泡を形成するため整泡剤を用いる。整泡剤としてはたとえば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。整泡剤の使用量は、適宜選定する必要があるが、ポリオール組成物100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
【0051】
<触媒>
本発明の触媒としては、ウレタン化反応を促進する触媒であれば特に制限はない。ウレタン化触媒としては、樹脂化触媒、泡化触媒が挙げられ、たとえば、アミン系触媒、金属化合物触媒が挙げられる。アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。また、金属化合物触媒としてはジブチルスズジラウレート等が挙げられる。さらにイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を併用してもよく、その場合は酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩等が用いられる。また硬質発泡合成樹脂の製造方法としてスプレー発泡を採用する場合には、反応を短時間で完結させるために、2−エチルヘキサン酸鉛等の有機金属触媒を併用することが好ましい。
【0052】
<その他の配合剤>
本発明においては、必要に応じて任意の配合剤を用いてもよい。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0053】
<製造手順>
本発明は、ポリオール組成物、またはこれに含フッ素化合物を加えたものと、ポリイソシアネート化合物とを発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させる硬質発泡合成樹脂の製造方法である。製造の際は予め、これらの原料の中で、ポリイソシアネート化合物以外の一部または全部とポリオール組成物との混合物(以下、ポリオールシステム液という。)にしておくことが好ましい。特に発泡剤は、ポリオールシステム液に予め配合しておいてもよく、ポリオールシステム液にポリイソシアネート化合物を混合した後に配合してもよいが、ポリオールシステム液に予め配合しておくことが好ましい。また、発泡剤としての水および二酸化炭素は、ポリオールシステム液あるいは、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合物に、同時に加えてもよく、別々のタイミングで加えてもよいが、同時に加えることが好ましい。
【0054】
<製造方法>
本発明における硬質発泡合成樹脂の形成方法は、高圧発泡装置、低圧発泡装置、スプレー装置などのいずれでも使用できる。高圧発泡装置、低圧発泡装置を用いる場合では、発泡剤をポリオールシステム液に配合して、種々の金型内に注入後、発泡硬化させて、硬質発泡合成樹脂を製造する。
スプレー装置による形成方法としては、大きく分けてエアスプレー法とエアレススプレー法がある。ここでスプレー法とは、発泡剤を含むポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とを吹き付けながら反応させる発泡方法である。このうち特に配合液をミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー法が好ましい。
【0055】
<作用>
本発明の製造方法により得られる硬質発泡合成樹脂は、ポリオール組成物等に対する、水および二酸化炭素からなる発泡剤の溶解性が向上される結果、硬質発泡合成樹脂の密度を低減でき、かつ均一で微細なセルが形成され、断熱性に優れた硬質発泡合成樹脂が得られる。
【0056】
本発明により得られる硬質発泡合成樹脂は、発泡剤を比較的多量に用いることができ軽量化が可能である。すなわち本発明は、密度が15〜50kg/m、特に15〜40kg/mの比較的軽量な硬質発泡合成樹脂の製造に好適である。
【0057】
また、本発明により得られる硬質発泡合成樹脂は断熱性能が良好である。具体的には24℃において熱伝導率(Kf)が23mW/mK以下、特に22mW/mK以下となる硬質発泡合成樹脂が得られる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、例1〜8および23〜30に実施例を、例9〜22および31〜33は比較例を表す。実施例および比較例中のポリオール組成物の組成の数値は質量部を示す。
また、表1〜3中の略称は以下のものを示す。ただし、以下の説明において、エチレンオキシドはEOと、プロピレンオキシドはPOと、オキシエチレン基含有量はEO基含有量と、オキシプロピレン基はPO基とそれぞれ省略して示す。
【0059】
<ポリオール組成物>
(ポリオールA)
ポリオールA1:モノエタノールアミンを開始剤としてPOのみを付加させて得られた、水酸基価が350mgKOH/gのポリエーテルポリオール、官能基数3。
【0060】
ポリオールA2:エチレンジアミンを開始剤としてPOのみを付加させて得られた、水酸基価が500mgKOH/gのポリエーテルポリオール、官能基数4。
【0061】
ポリオールA3:シュークロースとグリセリンの混合物(質量比で1.24:1)を開始剤としてPOのみを付加させて得られた、水酸基価が375mgKOH/gのポリエーテルポリオール、平均官能基数4.3。
【0062】
ポリオールA4:ペンタエリスリトールを開始剤としてPOのみを付加させて得られた、水酸基価が410mgKOH/gのポリエーテルポリオール、官能基数4。
【0063】
ポリオールA5:エチレンジアミンを開始剤としてPOのみを付加させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール、官能基数4。
【0064】
ポリオールA6:グリセリンを開始剤としてPOのみを付加させて得られた、水酸基価が430mgKOH/gのポリエーテルポリオール、官能基数3。
【0065】
(ポリオールB)
ポリオールB1:トリレンジアミンを開始剤としてEO、PO、EOをこの順で付加させて得られた、水酸基価が350mgKOH/g、EO基とPO基の総量に対してEO基含有量が33質量%、PO基含有量が67質量%のポリエーテルポリオール、官能基数4。
【0066】
ポリオールB2:ソルビトールを開始剤としてPOおよびEOをこの順で付加させて得られた、水酸基価が450mgKOH/g、EO基とPO基の総量に対してEO基含有量が18質量%、PO基含有量が82質量%のポリエーテルポリオール、官能基数6。
【0067】
ポリオールB3:アミノエチルピペラジンを開始剤としてEOのみを付加させて得られた、水酸基価が350mgKOH/g、EO基含有量が100質量%のポリエーテルポリオール、官能基数3。
【0068】
(含フッ素化合物)
含フッ素化合物:炭素数12の含フッ素ヒドロキシ化合物C17CHCHCH(CH)OHに複合金属シアン化物錯体触媒(亜鉛ヘキサシアノコバルテート/グライム錯体触媒)を用いて、POおよびEOの質量比30対70の混合物を開環付加重合させ平均分子量800とし、PO基とEO基がランダム状に連なった構造のもの。(前記式1において、n=約6.5の化合物に相当する。また、前記式1aにおいて、k=1.6(平均)、m=4.9(平均)の化合物に相当する。)
【0069】
<二酸化炭素の溶解性試験>
表1に示す組成にて、例1〜11に相当する各試料を調整した。
試料の7gを、温度80℃に保温し、14mLの耐圧ガラス窓を持つ可視化可能な容器に充填し、密閉した。その後、容器のガス供給ラインからポンプにて液化二酸化炭素を添加し、18MPaまで昇圧を行い、二酸化炭素が超臨界状態に達した状態での、試料に対する二酸化炭素の溶解状態を観察した。
なお、前記容器内部にはマグネットスターラーが装備してあり、適当な撹拌を継続しながら観察を行った。
【0070】
試料に対する超臨界状態の二酸化炭素の溶解性を溶解性指数にて、表1に表記した。ただし、溶解性指数とは次のとおりである。
液化二酸化炭素を前記容器に充填する前の試料(ポリオール組成物等)の界面は、耐圧ガラス窓のほぼ中央に位置する。液化二酸化炭素を充填した後、容器内の圧力を上げていくと、二酸化炭素は超臨界状態に達するが、試料と超臨界状態の二酸化炭素が良好な溶解性を示せば、両者間に界面は発生しない。溶解性が乏しい場合は界面上昇が少なく、ほぼ中央付近に界面が存在する。また、溶解性が良好であるほど、その界面は上部に推移する。界面の発生位置を以下のように分類し、溶解性指数とした。
溶解性指数5:界面が容器の中央に存在し、溶解性が乏しい状態
溶解性指数6:界面が容器の下部から6割程度高さの位置に存在し、溶解性がやや乏しい状態
溶解性指数7:界面が容器の下部から7割程度高さの位置に存在し、溶解性がやや良好な状態
溶解性指数8:界面が容器の下部から8割程度高さの位置に存在し、溶解性が良好な状態
溶解性指数9:界面が容器の下部から9割程度高さの位置に存在し、溶解性が溶解性指数8より良好な状態
溶解性指数10:界面が容器内に存在せず、溶解性が特に良好な状態
【0071】
【表1】

【0072】
表1より、比較例9〜11では、試料に対する超臨界状態の二酸化炭素の溶解性が悪い(溶解性指数5)が、実施例1〜8では、高い溶解性(溶解性指数7以上)を示した。比較例の場合、ポリオール組成物中に含まれるポリオール(A)は50質量部未満であるが、実施例の場合では、ポリオール(A)を50質量部以上含むポリオール組成物を用いており、特にポリオール組成物100質量部中にポリオール(A)を80質量部以上含む場合や、含フッ素化合物をポリオール組成物100質量部に対して25質量部以下加えた場合の試料が最も高い溶解性を示した。
【0073】
<発泡評価>
(硬質ウレタンフォームの製造例1)
表2に示す配合のポリオールを用いて、合計が100質量部となるポリオール組成物に、含フッ素化合物を表2に示す配合量(質量部)加え、さらに触媒としてN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン(商品名:TOYOCAT−MR、東ソー社製)を表2に示す配合量(質量部)、整泡剤としてシリコーン整泡剤(商品名:SZ−1677、日本ユニカー社製)を3質量部、難燃剤としてトリス(2−クロロプロピル)ホスフェート(商品名:TMCPP、大八化学社製)を10質量部、および、発泡剤として水を4質量部調合し、ポリオールシステム液とした。
【0074】
前記ポリオールシステム液に対して、ポリイソシアネート化合物としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(商品名:MR−200、日本ポリウレタン工業社製)を、イソシアネートインデックスが110となる量用いた。前記ポリオールシステム液と該ポリイソシアネート化合物とを20℃に保温し、回転数3000回転/分で5秒間撹拌し、縦200mm×横200mm×高さ200mmの、上部開放の木製の箱内に投入し、硬質ポリウレタンフォームを製造した。
【0075】
製造した硬質ポリウレタンフォームの反応性、コア密度、熱伝導率を調べ、表2に表記した。ただし、各評価法は次のとおりである。
【0076】
反応性:ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合開始時刻を0秒とし、混合液が泡立ちを始めるまでの時間をクリームタイム(秒)、発泡途中のフォームに針金等の細い棒を差し込み引き上げる時に糸引きが発生するまでの時間をゲルタイム(秒)、発泡体表面にべとつきがなくなるまでの時間をタックフリータイム(秒)とし、二酸化炭素の溶解性を確認した。
【0077】
密度:得られた硬質ポリウレタンフォームを、縦190mm×横190mm×厚み25mmに切断し、重量と体積から密度(単位:kg/m)を算出した。
【0078】
断熱性:JIS A1412に準拠し、密度を算出した硬質ポリウレタンフォームを用いて、熱伝導率(単位:mW/m・K)を24℃で測定した。使用した機器はオートラムダHC−047型(英弘精機(株)製)である。
【0079】
【表2】

【0080】
(硬質ポリウレタンフォームの製造例2)
前記製造例1に示したポリオールシステム液を、予め用意した耐圧ボンベ内に仕込み、50℃になるように調整した。別途用意した耐圧ボンベ内に、イソシアネート化合物を仕込み、20℃になるように調整した。さらに発泡剤として、50℃、12MPaに保持した超臨界状態の二酸化炭素を、ポリオールシステム液が仕込まれた低圧ボンベの出口側で加えながら、ポリオールシステム液とイソシアネート化合物とを同時に吐出させることで衝突混合させた混合液を、縦200mm×横200mm×高さ200mmの、上部開放の木製の箱内に投入し、硬質ポリウレタンフォームを製造した。ポリオールシステム液とイソシアネート化合物の吐出には、窒素背圧を使用した。発泡剤としての超臨界状態の二酸化炭素の添加量は前記ポリオールシステム液全質量部に対し5質量部とした。
【0081】
製造例2で製造した硬質ポリウレタンフォームの反応性、コア密度、熱伝導率を調べ、表3に表記した。ただし、各評価法は表2と同様である。
【0082】
なお、表1の例1〜11で用いた各試料(ポリオール組成物および含フッ素化合物)は、表2の例12〜22、および表3の例23〜33にそれぞれ対応しており、同じ組成である。
【0083】
【表3】

【0084】
ポリオール(A)をポリオール組成物全量に対して50質量%以上含むポリオール組成物、および含フッ素化合物等を用いて製造した表3の実施例23〜30は、同じ組成で製造した表2の比較例12〜19と比べ、反応性を示す各タイムが遅くなった。特に、ポリオール組成物および含フッ素化合物の組成を、表1で超臨界状態の二酸化炭素への高い溶解性を示した試料(実施例5〜8)と同じ組成で製造した場合は、各タイムが著しく遅くなった(実施例27〜30)。これは、ポリイソシアネート化合物と反応しない超臨界状態の二酸化炭素が充分ポリオールシステム液に溶解していることを示している。
また、コア密度と熱伝導率が小さくなっていることから、超臨界状態の二酸化炭素が発泡効果を発現し、断熱性の向上と低密度化に寄与していることが確認できた。
【0085】
一方、ポリオール(A)がポリオール組成物全量に対して50質量%未満のポリオール組成物を用いた表2の比較例20〜22と、同じポリオール組成物を用いた表3の比較例31〜33において、各々反応性を示す各タイムはほとんど変化がなかった。これは、超臨界状態の二酸化炭素がポリオールシステム液に充分に溶解していないことを示している。
また、コア密度と熱伝導率にもほとんど変化がなかったことから、超臨界状態の二酸化炭素は発泡効果を発現していないことが確認できた。これは、超臨界状態の二酸化炭素がポリオールシステム液に充分に溶解していないことによると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の製造方法によって得られた硬質発泡合成樹脂は、ポリオール組成物等に対する発泡剤の溶解性が向上したことにより、優れた断熱性を持つことから、均一で微細なセル構造を有する断熱材等に用いられる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール組成物とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤と整泡剤と触媒との存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、発泡剤として水および二酸化炭素を用い、前記ポリオール組成物が、下記ポリオール(A)を50質量%以上含有することを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(A):平均官能基数が2〜5、水酸基価が300〜760mgKOH/g、芳香環を有しておらず、かつポリオール(A)を構成するオキシアルキレン基中、炭素数が3以上のオキシアルキレン基の含有量が90質量%以上であるポリオキシアルキレンポリオール。
【請求項2】
前記ポリオール組成物100質量部に対して、式1で示される含フッ素化合物を0.1〜30質量部加えて反応させる請求項1に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
−O−(Z−O)−R・・・式1
(式1中、Rは炭素数2〜27の含フッ素有機基、nは1〜100の整数である。Zは結合手間直鎖部分の炭素数が2〜4のアルキレン基であって、nが2〜100である場合の式中のZは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは水素原子、炭素数が1〜18のアルキル基、または炭素数が1〜18のアシル基である。)
【請求項3】
発泡剤の水を、ポリオール組成物100質量部に対して2〜10質量部使用する請求項1または2に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2008−88413(P2008−88413A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216974(P2007−216974)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】