説明

硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】発泡剤としてハイドロフルオロエーテル類を用いて、良好な特性を有する硬質フォームが得られるようにする。
【解決手段】ポリオール(A)30〜70質量%、ポリマー粒子0.002〜30質量%を含み、平均水酸基数2〜8、平均水酸基価100〜800mgKOH/gのポリオール組成物(P)と、ポリイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する。発泡剤はC−O−C(a、bは1〜5、a+bは2〜6、c、dは0〜10、c+d≧1、e、fは0〜10、e+f≧2、c+d<e+f)で表されるハイドロフルオロエーテル類を含む。ポリオール(A)は活性水素原子数が4〜12の芳香族アミンを開始剤としアルキレンオキシド(エチレンオキシド含有量0〜60質量%)を開環付加重合させて得られる、水酸基価100〜800mgKOH/gのポリエーテルポリオール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール等の活性水素化合物とポリイソシアネート化合物とを整泡剤、触媒および発泡剤の存在下で反応させて、硬質ポリウレタンフォーム、硬質ウレタン変性ポリイソシアヌレートフォームまたは硬質ポリウレアフォーム等の硬質発泡合成樹脂(以下総称して、硬質フォームという。)を製造することは広く行われている。
【0003】
発泡剤に関しては、従来用いられてきた塩素化フッ素化炭素化合物(クロロフルオロカーボン化合物、CClF等のいわゆるCFC類)および塩素化フッ素化炭化水素化合物(ハイドロクロロフルオロカーボン化合物、CClFCH等のいわゆるHCFC類は、環境保護(オゾン層保護)の観点から使用が規制されているため、これらに代わる発泡剤が求められてきた。
【0004】
上記問題の解決策として、水素化フッ素化炭化水素化合物(CHFCHCF、CHCFCHCF等のハイドロフルオロカーボン(HFC)類)が用いられている。しかしながら、該HFC類はオゾン層破壊係数(ODP)がゼロであるが、高い地球温暖化係数(GWP)を有するため、さらなる代替発泡剤が求められている。その候補物質の1つとしてハイドロフルオロエーテル(HFE)類が提唱されている。
【0005】
下記、特許文献1、2には、大気中に放出された場合にもオゾン層を破壊しない発泡剤として、1,1,2,2−テトラフルオロメチルエーテル等のハイドロフルオロエーテル類を用いて硬質フォームを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−23259号公報
【特許文献2】特開2009−13248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1、2では、発泡剤であるハイドロフルオロエーテル類(以降HFEと記載することもある)と組み合わせて用いるポリオールについての検討はなされておらず、必ずしも特性が良好な硬質フォームが得られるわけでない。特に近年求められるフォームの軽量化については検討がなされていない。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、発泡剤としてハイドロフルオロエーテル類を用いて、良好な特性を有する硬質フォームが得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の[1]〜[10]である。
[1]ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法であって、
前記ポリオール組成物(P)が下記ポリオール(A)を30〜70質量%、ポリマー粒子を0.002〜30質量%含み、該ポリオール組成物(P)の平均水酸基数が2〜8、平均水酸基価が100〜800mgKOH/gであり、前記発泡剤が下式(I)で表されるハイドロフルオロエーテル類(I)
−O−C …(I)
(式中、a、bはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、a+bは2〜6であり、c、dはそれぞれ独立に0または1〜10の整数であり、c+d≧1であり、e、fはそれぞれ独立に0または1〜10の整数であり、e+f≧2であり、c+d<e+fである。)を含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(A):活性水素原子数が4〜12の芳香族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールであって、該アルキレンオキシドの全量中におけるエチレンオキシドの含有量が0〜60質量%であり、水酸基価が100〜800mgKOH/gである、ポリエーテルポリオール。
【0009】
[2]前記ポリマー粒子が重合性不飽和基を有するモノマーを重合させて得られるポリマー粒子である、[1]に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[3]前記ポリオール組成物(P)が、下記ポリオール(B)を1〜50質量%含む、[1]または[2]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(B):活性水素原子数が5〜12の多価アルコールを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールであって、該アルキレンオキシドの全量中におけるエチレンオキシドの含有量が0〜20質量%であり、水酸基価が100〜800mgKOH/gである、ポリエーテルポリオール。
[4]前記ポリオール組成物(P)が、下記ポリオール(C)を10〜40質量%含む、[1]〜[3]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(C):活性水素原子数が2〜4の脂肪族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールであって、該アルキレンオキシドの全量中におけるエチレンオキシドの含有量が0〜50質量%であり、水酸基価が100〜800mgKOH/gである、ポリエーテルポリオール。
[5]前記ポリオール組成物(P)が、下記ポリオール(D)を10〜60質量%含む、[1]〜[4]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(D):芳香族化合物を含むモノマー混合物を重縮合して製造された、平均水酸基数が2〜3、水酸基価が100〜500mgKOH/gである、ポリエステルポリオール。
[6]前記ポリオール組成物(P)がポリマー分散ポリオール(W)を含む、[1]〜[5]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【0010】
[7]前記ハイドロフルオロエーテル類(I)が、1,1,2,2−テトラフルオロメチルエーテル(HFE−254pc)を含む、[1]〜[6]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[8]前記ハイドロフルオロエーテル類(I)が、前記HFE−254pcと、該HFE−254pcよりも沸点が低い不燃性のハイドロフルオロエーテル類(I)を含む、[7]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[9]前記ハイドロフルオロエーテル類(I)が、前記HFE−254pcと、該HFE−254pcよりも沸点が高い不燃性のハイドロフルオロエーテル類(I)を含む、[7]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
[10]前記製造方法が注入法である、[1]〜[9]の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発泡剤としてハイドロフルオロエーテル類を用いて、良好な特性、特に軽量化した場合でも寸法安定性が良好な硬質フォームを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書における「ポリオール組成物(P)」とは、ポリイソシアネート化合物との反応に用いるポリオール(ポリマー分散ポリオールを含む)の全部の混合物である。
本明細書における「ポリオールシステム液」とは、ポリイソシアネート化合物と反応させる相手の液であり、ポリオール組成物(P)のほかに発泡剤、整泡剤、触媒等、必要に応じた配合剤を含む液である。
本明細書における「マンニッヒ縮合物」とは、一般にアニリン、フェノール類等の芳香族化合物と、アルデヒド類と、アミン類とを縮合反応させて得られる化合物を意味する。
本発明における「ポリマー分散ポリオール」とは、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオール等のベースポリオール(W’)中で、重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させてポリマー粒子を形成することによって得られるもので、該ベースポリオール(W’)中に該ポリマー粒子を分散させたポリオール(W)である。
【0013】
[ポリオール(A)]
本発明におけるポリオール組成物(P)は、ポリオール(A)を含む。
ポリオール(A)は、芳香族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。ポリオール(A)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
開始剤である芳香族アミンは、活性水素原子数が4〜12の、芳香環を有するアミン類である。その具体例としては、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、マンニッヒ縮合物等が挙げられる。
マンニッヒ縮合物は、フェノール、ノニルフェノール等のフェノール類;ホルムアルデヒド等のアルデヒド類;および、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類を反応させて得られる化合物が好ましい。マンニッヒ縮合物の分子量は、200〜10,000程度が好ましい。
これらの開始剤のうち、低い熱伝導率が得られる点から、トリレンジアミンが特に好ましい。トリレンジアミンとしては、o−トリレンジアミン、m−トリレンジアミンが好ましい。
【0015】
ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド(以下、EOともいう。)および/またはプロピレンオキシド(以下、POともいう。)を用いることが好ましい。そのほかにブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、スチレンオキシド等を併用してもよい。EOおよび/またはPOを使用する場合、以下のいずれの方法を用いてもよい。(1)EOを単独で開環付加重合する方法。(2)POを単独で開環付加重合する方法。(3)POとEOの混合物を開環付加重合する方法。(4)上記(1)〜(3)の方法を任意に組み合わせて開環付加重合する方法。
硬質フォームに良好な物性を付与するためには、(1)と(2)の組合せまたは、(2)の方法によることが好ましい。(1)と(2)を組み合わせる場合、(1)−(2)−(1)の順で開環付加重合を行うことがより好ましい。
ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドの全量中における、エチレンオキシドの含有量(全EO含有量)は0〜60質量%が好ましく、0〜45質量%がより好ましく、0〜30質量%が特に好ましい。上記範囲の上限値以下であると、適度な反応性を有するため成形性が良好となる。
開始剤の活性水素原子にアルキレンオキシドを反応させることにより、アルキレンオキシドが開環付加してオキシアルキレン基を有するポリオールが生成する。活性水素原子に1分子のアルキレンオキシドが開環付加することによりヒドロキシアルキル基が生成し、また、その水酸基に引き続きアルキレンオキシドが開環付加し、この反応が繰り返されてオキシアルキレン基の連鎖が生成する。アルキレンオキシドがEOの場合は、オキシエチレン基が連鎖し、アルキレンオキシドがPOの場合は、オキシプロピレン基が連鎖する。
上記(1)−(2)−(1)の順で開環付加重合を行う場合、EO、POの順に付加した後に開環付加重合させるEOの量(末端のEO含有量)は、ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドの全量中1〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が特に好ましい。上記範囲の上限値以下であるとポリオール(A)の粘度が高くなりすぎず、下限値以上であると、ポリオール(A)の反応性が向上する。(1)−(2)−(1)の順で開環付加重合を行って得られるポリオール(A)は、開始剤にオキシエチレン基が連鎖し、続いてオキシプロピレン基が連鎖し、末端にオキシエチレン基が連鎖したポリオールである。
【0016】
ポリオール(A)の水酸基数は4〜12であり、4〜10が好ましく、4〜8が特に好ましい。ポリオール(A)の水酸基数が上記範囲の下限値以上であると硬質フォームの収縮が抑制されやすく、上限値以下であると粘度が適度な範囲となり、取り扱いが容易である。
ポリオール(A)の水酸基価は100〜800mgKOH/gであり、200〜600mgKOH/gが好ましく、300〜500mgKOH/gが特に好ましい。ポリオール(A)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると硬質フォームの圧縮強さが向上し、独立気泡率も向上して熱伝導率も良好となる。上記範囲の上限値以下であると硬質フォームの脆性が抑えられる。
ポリオール組成物(P)におけるポリオール(A)の含有量は、30〜70質量%であり、30〜60質量%が好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。ポリオール(A)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると独泡率が向上して良好な熱伝導率が得られる。上記範囲の上限値以下であるとポリオールシステム液の粘度が高くなりすぎず取り扱いが容易である。
特に注入法の場合、ポリオール(A)の含有量が上記範囲の上限値以下であるとセル荒れが発生しにくい。
【0017】
[ポリオール(B)]
ポリオール(B)は活性水素原子数が5〜12の多価アルコールを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。
ポリオール組成物(P)は、ポリオール(A)のほかにポリオール(B)を含むことが好ましい。ポリオール(B)は硬質フォームの圧縮強さの向上および良好な寸法安定性に寄与する。またポリオール(A)のほかにポリオール(B)を用いることによりポリオール組成物(P)の粘度が高くなりすぎるのを防止することもできる。
ポリオール(B)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
開始剤である、活性水素原子数が5〜12の多価アルコールとして糖類を用いることが好ましい。該糖類の具体例としてはフルクトース、ソルビトール、シュークロース等が挙げられる。このうちソルビトールまたはシュークロースが好ましい。
ポリオール(B)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が例示できる。少なくとも、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドを含むことが好ましく、少なくともプロピレンオキシドを含むことが特に好ましい。
ポリオール(B)の製造に用いるアルキレンオキシドは、プロピレンオキシド単独の使用、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの併用が好ましい。併用する場合、エチレンオキシドとプロピレンオキシドは、混合してから反応させても、順次反応させてもよい。
ポリオール(B)の製造に用いるアルキレンオキシドの全量中における、エチレンオキシドの含有量(全EO含有量)は0〜20質量%であり、0〜10質量%が好ましく、0質量%、すなわちPO単独が特に好ましい。エチレンオキシドの含有量が上記範囲の上限値以下であると反応性の制御が容易である。
【0019】
ポリオール(B)の水酸基数は5〜12であり、5〜10が好ましく、5〜8が特に好ましい。ポリオール(B)の水酸基数が上記範囲の下限値以上であると硬質フォームの収縮が抑制されやすく、上限値以下であると粘度が適度な範囲となり、取り扱いが容易である。
ポリオール(B)の水酸基価は100〜800mgKOH/gであり、200〜600mgKOH/gが好ましく、300〜500mgKOH/gが特に好ましい。ポリオール(B)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、硬質フォームの収縮が抑制でき、寸法安定性が良好となる。上記範囲の上限値以下であると、硬質ポリウレタンフォームの脆性が抑制できる。
ポリオール組成物(P)におけるポリオール(B)の含有量は、1〜50質量%が好ましく、2〜45質量%がより好ましく、5〜45質量%が特に好ましい。ポリオール(B)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると、硬質フォームの圧縮強さが向上し、また、収縮が良好に抑制されて、良好な寸法安定性が得られやすい。上記範囲の上限値以下であると硬質フォームの成形時において良好な硬化特性(キュアー性)が確保されやすい。
【0020】
[ポリオール(C)]
ポリオール(C)は、脂肪族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールである。
ポリオール組成物(P)は、ポリオール(A)のほかにポリオール(C)を含むことが好ましい。ポリオール(C)は成形性および反応性の向上に寄与する。また、ポリオール(A)のほかにポリオール(C)を用いることによりポリオール組成物(P)の粘度が高くなりすぎるのを防止することもできる。
ポリオール(C)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
開始剤である脂肪族アミンは、活性水素原子数が2〜4の脂肪族アミンである。具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のアルキルアミン類が挙げられる。これらのうち、エチレンジアミン、モノエタノールアミンまたはジエタノールアミンが好ましい。
ポリオール(C)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が例示できる。プロピレンオキシド単独の使用、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの併用が好ましい。併用する場合、エチレンオキシドとプロピレンオキシドは、混合してから反応させても、順次反応させてもよい。
ポリオール(C)の製造に用いるアルキレンオキシドの全量中における、エチレンオキシドの含有量(全EO含有量)は0〜50質量%であり、0〜48質量%が好ましく、0〜45質量%がより好ましく、0質量%、すなわちPO単独が特に好ましい。エチレンオキシドの含有量が上記範囲の上限値以下であると発泡時の反応性を制御しやすく、良好な成形性を確保できる。
【0022】
ポリオール(C)の水酸基数は2〜4である。ポリオール(C)の水酸基数が上記範囲の上限値以下であると粘度が適度な範囲となり、取り扱いが容易である。
ポリオール(C)の水酸基価は100〜800mgKOH/gであり、200〜600mgKOH/gが好ましく、300〜500mgKOH/gが特に好ましい。ポリオール(C)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、硬質ポリウレタンフォームの圧縮強度が向上し、収縮も抑制され、良好な寸法安定性となる。上記範囲の上限値以下であると、粘度が高くなりすぎず取り扱いが容易である。
ポリオール組成物(P)におけるポリオール(C)の含有量は、10〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。ポリオール(C)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると、キュアー性が良好となり、脱型する際の作業性が向上しやすい。上記範囲の上限値以下であると、発泡時の反応性の制御がしやすい。
【0023】
[ポリオール(D)]
ポリオール(D)は、芳香族化合物を含むモノマー混合物を重縮合して製造されたポリエステルポリオールである。
ポリオール組成物(P)は、必要に応じてポリオール(D)を含有してもよい。ポリオール(D)は難燃性の向上に寄与する。
ポリオール(D)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
ポリオール(D)の製造に用いるモノマー混合物は、ジカルボン酸化合物と多価アルコールとを含み、該ジカルボン酸化合物および多価アルコールの一方または両方が、芳香環を有する化合物を含むことが好ましい。
特にポリオール(D)が、芳香環を有するジカルボン酸と、芳香環を有しない多価アルコールとを重縮合反応させて得られる芳香族ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。
芳香環を有するジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等が挙げられる。耐熱性が向上する点でテレフタル酸がより好ましい。
芳香環を有しない多価アルコールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、ネオペンチルグリコール等のジオール化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール化合物が挙げられる。ポリオール(D)の粘度を低くでき、かつ、良好な難燃性向上効果が得られやすい点で、エチレングリコールまたはジエチレングリコールがより好ましく、ジエチレングリコールが特に好ましい。
【0025】
ポリオール(D)の平均水酸基数は2〜3であり、2であることが好ましい。該平均水酸基数が3以下であると粘度を低く抑えることができ、取り扱いが容易である。
ポリオール(D)の水酸基価は100〜500mgKOH/gであり、150〜350mgKOH/gが好ましく、180〜300mgKOH/gが特に好ましい。ポリオール(D)の水酸基価が上記範囲の下限値以上であると硬質フォームの収縮が抑制されやすく、上記範囲の上限値以下であると硬質フォームの脆性が抑制されて良好な物性が得られやすい。
ポリオール組成物(P)におけるポリオール(D)の含有量は、10〜60質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が特に好ましい。ポリオール(D)の含有量が、上記範囲の下限値以上であると難燃性の向上効果が充分に得られやすい。上記範囲の上限値以下であると硬質フォームの収縮が抑制され、良好な寸法安定性が得られやすい。
【0026】
[ポリマー分散ポリオール(W)]
ポリオール組成物(P)はポリマー粒子を含有する。具体的には、ベースポリオール(W’)中にポリマー粒子が分散しているポリマー分散ポリオール(W)を調製し、該ポリマー分散ポリオール(W)をポリオール組成物(P)に含有させることが好ましい。
ポリオール組成物(P)中にポリマー粒子を存在させることにより、硬質フォームの収縮を抑制して、寸法安定性を向上させることができる。この効果は、より低密度の硬質ウレタンフォームを製造する際に、特に有用である。ポリマー分散ポリオール(W)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ポリオール組成物(P)全体におけるポリマー粒子の含有量は0.002〜30質量%が好ましく、0.02〜20質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。上記範囲内であると、断熱性能を維持しながら、得られる硬質フォームの収縮を効果的に抑制できる。また、常温の貯蔵安定性および高温の貯蔵安定性が良好となる。
ポリマー分散ポリオール(W)の平均水酸基価は100〜800mgKOH/gが好ましく、150〜800mgKOH/gがより好ましい。本明細書におけるポリマー分散ポリオール(W)の平均水酸基価とは、ベースポリオール(W’)中にポリマー粒子が分散しているポリオールについて平均水酸基価を測定して得られる値であり、通常は、ベースポリオール(W’)の平均水酸基価よりも低くなる。
ポリマー分散ポリオール(W)の平均水酸基価が上記範囲の下限値以上であると、他のポリオールとの相溶性が良好であり、上記範囲の上限値以下であると、ポリマー粒子の分散安定性が良好である。
【0028】
ポリマー分散ポリオール(W)は、必要に応じて溶媒の存在下、ベースポリオール(W’)中で重合性不飽和基を有するモノマーを重合させてポリマー粒子を析出させる方法で製造される。
ポリマー粒子の形成に用いられる、重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、通常、重合性不飽和結合を1個有するモノマーが使用されるが、これに限らない。
該モノマーの具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2,4−ジシアノブテン−1等のシアノ基含有モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸またはそれらのアルキルエステルやアクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、その他のジエン系モノマー;マレイン酸ジエステル、イタコン酸ジエステル等の不飽和脂肪酸エステル類;塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;およびこれら以外のオレフィン、ハロゲン化オレフィンなどがある。
好ましくはアクリロニトリル20〜90質量%と他のモノマー10〜80質量%の組み合わせであり、他のモノマーとして好ましいのはスチレン、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、または酢酸ビニルである。これら他のモノマーは2種以上併用してもよい。
【0029】
また、上記に挙げたモノマーのほかに、該重合性不飽和基を有するモノマーの一部または全部として、含フッ素アクリレートまたは含フッ素メタクリレート(以下、「含フッ素モノマー」ということがある。)を用いることも好ましい。該含フッ素モノマーを用いることにより、ベースポリオール(W’)中でのポリマー粒子の分散安定性がより良好となる。また、ポリマー分散ポリオール(W)と他のポリオールとの相溶性が高まって、硬質フォームにおける寸法安定性の向上、断熱性能の向上が期待できる。
含フッ素モノマーの好適なものとしては、下記式(1)で表されるモノマーが挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
式(1)中において、Rは、炭素数1〜18のポリフルオロアルキル基である。Rにおいて、炭素数は1〜18であり、1〜10が好ましく、3〜8がより好ましい。
は、アルキル基中のフッ素原子の割合(アルキル基中の水素原子がフッ素原子に置換されている個数の割合)が、80%以上であることが好ましく、全部の水素原子がフッ素原子で置換されていることが特に好ましい。炭素数が18以下であると、硬質フォーム製造における発泡時、フォームの安定性が良好となり好ましい。
Rは、水素原子またはメチル基である。
Zは、フッ素原子を含まない2価の連結基であり、炭化水素基が好ましく、たとえばアルキレン基、アリーレン基が挙げられ、アルキレン基がより好ましい。該アルキレン基は、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基が特に好ましく、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。なお、式(1)におけるZとRはRの炭素数が少なくなるように区切る。
前記式(1)で表されるモノマーの具体例として、下記式(1−1)〜(1−3)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
前記含フッ素モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
含フッ素モノマーを用いる場合、その使用量は、重合性不飽和基を有する全モノマーに対し、10〜100質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
特に、前記式(1)で表されるモノマーを用いる場合は、重合性不飽和基を有する全モノマー中において20〜100質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることが最も好ましい。
該式(1)で表されるモノマーの割合が、20質量%以上、特に30質量%以上であると、硬質フォームとした際に良好な断熱性能が得られやすい。
【0036】
含フッ素モノマーを用いる場合、上記に挙げた重合性不飽和結合を有するモノマーのほかに、マクロモノマーを併用してもよい。「マクロモノマー」とは、片末端にラジカル重合性不飽和基を有する低分子量のポリマーまたはオリゴマーのことをいう。
【0037】
ポリマー粒子の形成に用いられる、重合性不飽和結合を有するモノマーの合計の使用量は特に限定されないが、ポリマー分散ポリオール(W)中におけるポリマー粒子の含有量が1〜50質量%、より好ましくは2〜45質量%、特に好ましくは10〜30質量%となる量であることが好ましい。
【0038】
重合性不飽和結合を有するモノマーの重合は、遊離基を生成して重合を開始させる重合開始剤が好適に用いられる。該重合開始剤の具体例としては2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、アセチルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過硫酸塩等が挙げられる。特にAMBNが好ましい。
【0039】
ベースポリオール(W’)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等が挙げられる。特にポリエーテルポリオールのみからなるか、またはポリエーテルポリオールを主成分として、少量のポリエステルポリオールや末端に水酸基を有する炭化水素系ポリマー等を併用することが好ましい。
該ポリエーテルポリオールとしては、例えば多価アルコール、多価フェノール等のポリヒドロキシ化合物やアミン類等の開始剤にアルキレンオキシド等の環状エーテルを付加して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。ベースポリオール(W’)として用いるポリエーテルポリオールは、前記ポリオール(A)〜(D)のいずれかと同じであってもよい。
【0040】
ベースポリオール(W’)のうちの5質量%以上が、下記ポリエーテルポリオール(X)であることが好ましい。該ポリエーテルポリオール(X)は、水酸基価が84mgKOH/g以下であり、かつポリエーテルポリオール(X)全体に対するオキシエチレン基含有量が40質量%以上であるものをいう。
ポリエーテルポリオール(X)は、開始剤として多価アルコールを使用し、エチレンオキシドまたはエチレンオキシドと他の環状エーテルを付加して得られるものが好ましい。
多価アルコールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等が好ましい。他の環状エーテルとしてはプロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドが特に好ましい。
ポリエーテルポリオール(X)において、水酸基価の上限は84mgKOH/g以下が好ましく、67mgKOH/g以下が好ましく、60mgKOH/g以下が特に好ましい。上記上限であると、ポリマー粒子が安定に分散したポリマー分散ポリオール(W)が得られやすい。水酸基価の下限は5mgKOH/g以上が好ましく、8mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましく、30mgKOH/g以上が特に好ましい。上記下限であると、ポリマー粒子の分散安定性が良好になる。
ポリエーテルポリオール(X)において、ポリエーテルポリオール(X)全体に対するオキシエチレン基含有量の下限は、40質量%以上であり、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上が特に好ましい。上記下限であると、ポリマー分散ポリオール(W)におけるポリマー粒子の分散が安定しやすい。オキシエチレン基含有量の上限は、100質量%、すなわち開始剤にエチレンオキシドのみを付加させたポリエーテルポリオール(X)であってもよい。ポリマー粒子の分散安定性の点からは、該オキシエチレン基含有量が90質量%以下であることがより好ましい。
ベースポリオール(W’)のうちのポリエーテルポリオール(X)の含有量の下限は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上が特に好ましい。上記下限であると、分散性のよいポリマー分散ポリオール(W)が得られやすい。ポリエーテルポリオール(X)の含有量の上限は特にないが、ポリマー分散ポリオール(W)全体の水酸基価が上記の好ましい範囲となるように設定することが好ましい。
【0041】
ベースポリオール(W’)は、上記ポリエーテルポリオール(X)の5〜90質量%と、水酸基価が400〜850mgKOH/gであるポリオール(Y)の10〜95質量%との混合物であることが好ましく、ポリエーテルポリオール(X)の30〜80質量%と、前記ポリオール(Y)の20〜70質量%との混合物であることがより好ましい。
ポリオール(Y)の水酸基価は400〜800mgKOH/gがより好ましい。
【0042】
ポリエーテルポリオール(Y)は、上記ベースポリオール(W’)として挙げたポリエーテルポリオールのうち、水酸基価が上記の範囲であるものを用いることができる。そのうち、開始剤として多価アルコールまたはアミン類を用い、プロピレンオキシドを付加して得られるものが好ましい。ポリエーテルポリオール(Y)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
ポリオール組成物(P)がポリマー分散ポリオール(W)を含有する場合、その含有量は、ポリオール組成物(P)全体におけるポリマー粒子の含有量が上記の好ましい範囲となるように設定される。例えばポリオール組成物(P)全体におけるポリマー分散ポリオール(W)の含有量は0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜30質量%がより好ましく、0.1〜20質量%が特に好ましい。
【0044】
[その他のポリオール(E)]
ポリオール組成物(P)に、ポリオール(A)、ポリオール(B)、ポリオール(C)、ポリオール(D)、またはポリマー分散ポリオール(W)のいずれにも属さない、その他のポリオール(E)を含有させてもよい。
その他のポリオール(E)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等が例示できる。ポリオール(E)の水酸基価は5〜1,000mgKOH/gが好ましく、10〜800mgKOH/gがより好ましく、20〜700mgKOH/gが特に好ましい。
ポリオール組成物(P)におけるポリオール(E)の含有量は30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0045】
<ポリオール組成物(P)>
ポリオール組成物(P)は、ポリオール(A)と、ポリマー粒子を含み、さらにポリオール(B)、ポリオール(C)、ポリオール(D)から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。任意にその他ポリオール(E)を含んでもよい。ポリマー粒子はポリマー分散ポリオール(W)由来であることが好ましい。
ポリオール組成物(P)全体としての平均水酸基数は2〜8であり、2.5〜7.5が好ましい。該平均水酸基数が上記範囲の下限値以上であると硬質フォームの圧縮強度が向上し、収縮も抑制できるため寸法安定性が良好となり、上限値以下であると発泡、成形時の急激な増粘挙動が抑制され、流動性、成形性が良好となる。
ポリオール組成物(P)全体としての平均水酸基価は100〜800mgKOH/gであり、200〜700mgKOH/gが好ましく、300〜600mgKOH/gが特に好ましい。該平均水酸基価が上記範囲の下限値以上であると硬質フォームの収縮が抑制され、寸法安定性が良好となり、上限値以下であると硬質フォームの脆性が抑制される。
【0046】
ポリオール組成物(P)の好ましい組み合わせを以下に示す。
(組み合わせ1)
ポリオール(A)の30〜50質量%と、ポリオール(B)の5〜45質量%と、ポリオール(C)の10〜20質量%と、ポリマー分散ポリオール(W)とからなり、ポリマー粒子の含有量が0.01〜20質量%。
(組み合わせ4)
ポリオール(A)の30〜50質量%と、ポリオール(B)の5〜45質量%と、ポリオール(C)の10〜30質量%と、ポリオール(D)の10〜60質量%と、ポリマー分散ポリオール(W)とからなり、ポリマー粒子の含有量が0.01〜20質量%。
【0047】
<ポリイソシアネート化合物>
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2以上有する、芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(通称:クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等のポリイソシアネートまたはこれらのプレポリマー型変性体、イソシアヌレート、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。このうち、クルードMDI、またはその変性体が好ましく、クルードMDIの変性体が特に好ましい。ポリイソシアネート化合物は1種でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ポリイソシアネート化合物の使用量は、ポリオールシステム液中に存在する、ポリオール組成物(P)およびその他の活性水素化合物の活性水素原子の合計数に対するイソシアネート基の数の100倍で表して(以下、この100倍で表した数値を「イソシアネート指数」という)、50〜400が好ましい。
特に、触媒としてウレタン化触媒を主に用いるウレタン処方の場合、ポリイソシアネート化合物の使用量は、前記イソシアネート指数で50〜170が好ましく、70〜150が特に好ましい。
また、触媒としてイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を主に用いるイソシアヌレート処方の場合、ポリイソシアネート化合物の使用量は、前記イソシアネート指数で110〜400が好ましく、150〜350がより好ましく、180〜300が特に好ましい。
【0048】
<発泡剤>
本発明では、発泡剤として、少なくとも上式(I)で表されるハイドロフルオロエーテル類(I)(以下、HFE類(I)ということもある。)の1種以上を用いる。すなわち、発泡剤は少なくともHFE類(I)を含む。
発泡剤は常温(20℃)で液体であることが必要である。したがって、発泡剤の融点は10℃以下が好ましく、0℃以下がより好ましい。また発泡剤の沸点は15〜80℃が好ましく、15〜60℃がより好ましい。該沸点が上記範囲の下限値以上であると取り扱いが容易であり、上記範囲の上限値以下であると発泡効率が良い。
上式(I)において、a、bはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、1〜4が好ましい。HFE類(I)の炭素原子数を表す(a+b)の値は2〜6であり、3〜5が好ましく、3または4がより好ましい。
c、dはそれぞれ独立に0または1〜10の整数であり、0または1〜3の整数が好ましい。HFE類(I)の水素原子数を表すc+dは1以上であり、1〜4が好ましい。
e、fはそれぞれ独立に0または1〜10の整数であり、0または1〜9の整数が好ましい。HFE類(I)のフッ素原子数を表すe+fは2以上であり、5〜9が好ましい。
HFE類(I)において、水素原子数(c+d)よりも、フッ素原子数(e+f)の方が多い。
HFE類(I)は公知の方法で製造可能であり、市販品からも入手できる。
【0049】
HFE類(I)のうち、少なくとも1,1,2,2−テトラフルオロエチルメチルエーテル(本明細書では、HFE−254pcということもある。)を、発泡剤として用いることが好ましい。
HFE−254pcは可燃性であるため、不燃性の発泡剤と混合し、不燃性の発泡剤混合物として用いることが好ましい。
不燃性の発泡剤としては、下記のHFE−254pcよりも沸点が低い不燃性のHFE類(I)、またはHFE−254pcよりも沸点が高い不燃性のHFE類(I)が挙げられる。HFE−254pcの沸点は37℃である。
【0050】
HFE−245pcよりも沸点が低い不燃性のHFE類(I)としては、
CFCHFOCF(HFE−227me)、CFCHFOCHF(HFE−236me)、CFCHOCF(HFE−236mf)、CHFCFOCHF(HFE−236pc)、CFCFOCH(HFE−245mc)、CFCHOCHF(HFE−245mf)、CFCFCFOCH(HFE−247mcc)、CFCFOCHCF(338mc−f)、または(CFCFOCH(HFE−347mmy)が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
HFE−245pcと、これより沸点が低い不燃性のHFE類(I)との混合割合は、混合物が良好な不燃性を示すように調整することが好ましい。例えばHFE−245pcが1〜70質量%、沸点が低い不燃性のHFE類(I)が30〜99質量%が好ましい。
【0051】
HFE−245pcよりも沸点が高い不燃性のHFE類(I)としては、
CHFCFOCHF(HFE−245pc)、CHFCFOCHF(HFE−245qc)、CFCFCHOCHF(HFE−347mcf)、CFCHFCFOCH(HFE−356mec)、CHFCFCFOCH(HFE−356pcc)、CHFCFCHOCHF(HFE−356pcf)、CHFCFOCHCF(HFE−347pc−f)、CFCHOCHCF(HFE−356mf−f)、CHFCFOCHCF(HFE−356qc−f)、(CFCHOCH(HFE−356mmz)、COCH(HFE−7100)が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
HFE−245pcと、これより沸点が高い不燃性のHFE類(I)との混合割合は、混合物が良好な不燃性を示すように調整することが好ましい。例えばHFE−245pcが1〜50質量%、沸点が高い不燃性のHFE類(I)が50〜99質量%が好ましい。
【0052】
またHFE−254pcと、HFE類(I)以外の不燃性のフッ素系化合物を混合して不燃性の発泡剤混合物として用いることもできる。
不燃性のフッ素系化合物としては1,1,1,3,3−ペンタフルオロエタン(HFC−245fa)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)等のHFC類;1,1,1,3−テトラフルオロプロペン、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペン、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン等の分子中に二重結合を有するオレフィンハイドロフルオロカーボン類が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上述のHFE類(I)、またはHFE類(I)以外の不燃性のフッ素系化合物のほかに、公知の発泡剤を、本発明の効果を損なわない範囲で使用してもよい。公知の発泡剤としては水が挙げられる。公知の発泡剤の使用量は、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して1〜25質量部が好ましい。公知の発泡剤としての水の使用量は、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して1〜25質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部が特に好ましい。
本発明において、発泡剤の主成分がHFE類(I)であることが好ましく、具体的には発泡剤全体の50〜100質量%がHFE類(I)であることが好ましい。
発泡剤としてのHFE類(I)の使用量は、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して1〜50質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましく、5〜40質量部が特に好ましい。
上記ハイドロフルオロエーテル類(I)に加え、その他発泡剤としてハイドロフルオロカーボン類(HFC類)を併用する場合、HFC類の使用量は、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましく、1〜20質量部が特に好ましい。
【0053】
<触媒>
触媒として、ウレタン化反応を促進するウレタン化触媒、および/またはイソシアネート基の三量化反応を促進させる三量化反応促進触媒が用いられる。ウレタン化触媒としては第3級アミンが好ましい。三量化反応促進触媒としては、錫塩、鉛塩および水銀塩を除く金属塩、および/または第4級アンモニウム塩が好ましい。イソシアヌレート処方の場合、ウレタン化触媒と三量化反応促進触媒の併用が好ましく、第3級アミンと、前記金属塩および/または第4級アンモニウム塩とを併用することがより好ましい。
【0054】
第3級アミンとしては、例えばN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N−メチル−N−(N,N−ジメチルアミノエチル)エタノールアミン等の第3級アミン化合物が挙げられる。
【0055】
錫塩、鉛塩および水銀塩を除く金属塩としては、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ビスマス等のカルボン酸金属塩等が好ましい。
【0056】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物;水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物;テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類;N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の第3級アミンと炭酸ジエステル類とを反応して得られる4級アンモニウム炭酸塩を、2−エチルヘキサン酸とアニオン交換反応させることで得られる4級アンモニウム化合物等が挙げられる。
触媒の使用量は、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して、触媒の合計量が0.1〜20質量部であることが好ましい。
触媒の使用量を調節することで、ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物、発泡剤、整泡剤の混合の開始時から目視で反応が開始するまでの時間(クリームタイム)、反応開始後から発泡が進行し、樹脂化の挙動を示すまでの時間(ゲルタイム)、発泡が終了するまでの時間(ライズタイム)を調整することができる。
【0057】
<整泡剤>
本発明においては良好な気泡を形成するため整泡剤を用いる。整泡剤としては例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。これらは市販品を使用できる。整泡剤の使用量は適宜選定できるが、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0058】
<その他の配合剤>
本発明では、上述したポリオール組成物(P)、ポリイソシアネート化合物、触媒、発泡剤、整泡剤の他に、公知の配合剤を使用できる。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;難燃剤、可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。その他の配合剤の使用量は適宜選定できるが、ポリオール組成物(P)の100質量部に対して0.1〜30質量部が好ましい。
【0059】
<硬質フォームの製造方法>
本発明の硬質フォームの製造方法は、ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法である。
特に、金型等の枠内に硬質フォーム原料を注入して発泡させる、いわゆる注入法に本発明を適用すると、注入点付近においてもセル荒れが発生しにくい、という効果が得られる点で好ましい。
【0060】
注入法は、例えば高圧発泡装置または低圧発泡装置を用いる方法で行うことができる。高圧発泡装置または低圧発泡装置を用いる場合、上記発泡剤をポリオールシステム液に配合して、種々の金型内に注入後、発泡硬化させて硬質フォームを製造する。発泡剤は、ポリオールシステム液にあらかじめ配合しておいても、発泡装置で発泡する際に配合してもよい。ここで原料系にあらかじめ配合するとは、ポリオールシステム液のみに配合する、または、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物の両方に配合することを意味する。
注入法を用いて製造できる物品としては、電気冷蔵庫等の冷凍機器、冷凍・冷蔵車用パネル等が挙げられる。
【0061】
また本発明は、連続ボード成形法またはスプレー法による硬質フォームの製造にも適用可能である。
連続ボード成形法とは、2枚の面材間に硬質フォーム原料を供給して発泡させることにより、これらの面材の間に硬質フォームが挟まれた積層体を製造する方法であり、建築用途の断熱材の製造等に用いられる。
スプレー法とは、硬質フォームをスプレーで吹き付け施工する方法である。スプレー法は、大きく分けてエアスプレー法とエアレススプレー法がある。このうち特に配合液をミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー法が好ましい。スプレー法を用いて製造できる物品としては、建築用途の断熱材が挙げられる。
【0062】
本発明によれば、発泡剤としてHFE類(I)を用いて、良好な特性を有する硬質フォームが得られる。
具体的に、硬質フォームにあっては、低密度化した場合にも、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が良好であること、成形性が良好であること、寸法安定性が良好であることが望ましい。本発明によれば、これらの特性の全部が良好である硬質フォームを得ることができる。また本発明によれば、ポリオールシステム液の高温貯蔵安定性が良好となる。
また、HFE類は、従来用いられてきたCFC類、HCFC類およびHFC類に比較してODPおよびGWPが格段に低い。また、発泡剤としてHFE類を用いて得られる硬質フォームは、発泡剤として水のみ(発泡ガスは炭酸ガス)を用いて得られる硬質フォームに比べて、セル内のガスの熱伝導率が低い。したがって本発明によれば、高性能かつ低環境負荷の断熱材用硬質フォームを得ることができる。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
ポリオールの水酸基価は、JIS K 1557(1970年版)に準拠して測定した値である。
以下の例で用いた各原料は以下の通りである。
[ポリオール(A)]
ポリオールA1:m−トリレンジアミンにEOを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でPO、EOの順にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は25質量%である。また、末端のEO含有量は3質量%である。
ポリオールA2:m−トリレンジアミンにEOを開環付加重合した後、水酸化カリウム触媒存在下でPO、EOの順にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られた、水酸基価が350mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は25質量%である。また、末端のEO含有量は11質量%である。
ポリオールA3:m−トリレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価350mgKOH/のポリエーテルポリオール。
ポリオールA4:ノニルフェノール、ジエタノールアミンおよびホルムアルデヒドを1モル/2.2モル/1.5モルの比率で縮合させたマンニッヒ縮合物に、アルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価470mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
[ポリオール(B)]
ポリオールB1:ソルビトールにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が500mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールB2:ソルビトールにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が385mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールB3:シュークロースとグリセリンの混合物(質量比2:1)にアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価450mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0064】
[ポリオール(C)]
ポリオールC1:エチレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールC2:モノエタノールアミンにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価が500mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールC3:エチレンジアミンにアルキレンオキシドとしてPOを開環付加重合させ、続いて水酸化カリウム触媒存在下でEOを開環重合させて得られた、水酸基価が450mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は41質量%である。
[ポリオール(D)]
ポリオールD1:ジエチレングリコールとテレフタル酸とを重縮合して得られた、平均水酸基数が2、水酸基価が250mgKOH/gのポリエステルポリオール(製品名:Terol 563、オキシド社製)。
[その他のポリオール(E)]
ポリオールE1:グリセリンにアルキレンオキシドとしてPOを開環付加重合させ、水酸化カリウム触媒存在下でEOを開環付加重合させて得られた、水酸基価56mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は13質量%である。
ポリオールE2:グリセリンにアルキレンオキシドとしてPOを開環付加重合させ、水酸化カリウム触媒存在下でEOを開環付加重合させて得られた水酸基価56mgKOH/gのポリエーテルポリオール。EOとPOの合計のうち、EOの含有量(全EO含有量)は20質量%である。
ポリオールE3:ペンタエリスリトールにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価410mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールE4:ジプロピレングリコールにアルキレンオキシドとしてPOのみを開環付加重合させて得られた、水酸基価450mgKOH/のポリエーテルポリオール。
[ポリマー分散ポリオール(W)]
ポリマー分散ポリオール(W)として、下記表1に示す配合で、下記製造例の方法により製造したポリマー分散ポリオールW1〜W4を用いた。表1における配合比の単位は「質量部」である。
[重合性不飽和結合を有するモノマー]
ポリマー粒子を形成するための重合性不飽和結合を有するモノマーとしては、アクリロニトリル(AN)、酢酸ビニル(Vac)、メタクリル酸メチル(MMA)、前記式(1−1)で表わされるポリフルオロアルキルメタクリレート(FMA)を用いた。
【0065】
[マクロモノマー]
マクロモノマーとして以下の2種を用いた。
・マクロモノマーM1:下記のポリオールG、トリレンジイソシアネート(商品名:T−80、日本ポリウレタン工業社製)および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(純正化学社製)を、ポリオールG/トリレンジイソシアネート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=1/1/1のモル比率となるように仕込み、60℃で1時間反応させた後さらに80℃で6時間反応させることで得られた、水酸基価40mgKOH/gの重合性不飽和基を有するマクロモノマー。
・マクロモノマーM2:下記のポリオールF、トリレンジイソシアネート(商品名:T−80、日本ポリウレタン工業社製)および2−ヒドロキシエチルメタクリレート(純正化学社製)を、ポリオールF/トリレンジイソシアネート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=1/1/1のモル比率となるように仕込み、60℃で1時間反応させた後さらに80℃で6時間反応させることで得られた、水酸基価21mgKOH/gの重合性不飽和基を有するマクロモノマー。
・上記ポリオールG:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、EOを開環付加重合した後、POとEOとの混合物[PO/EO=46.2/53.8(質量比)]を開環付加重合させた、ポリオールG中のオキシエチレン基含有量65質量%、水酸基価が48mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
・上記ポリオールF:開始剤としてグリセリンを用い、該グリセリンに、EOを開環付加重合した後、POとEOとの混合物[PO/EO=48.0/52.0(質量比)]を開環付加重合させた、ポリオールF中のオキシエチレン基含有量60質量%、水酸基価が28mgKOH/gのポリオキシアルキレンポリオール。
【0066】
[ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物1:ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)(日本ポリウレタン工業社製、製品名:ミリオネートMR−200)。
[発泡剤]
発泡剤1:1,1,2,2−テトラフルオロメチルエーテル(セントラル硝子社製、製品名HFE−254pc)、沸点37℃。
発泡剤2:2,2,2−トリフルオロエチルジフルオロメチルエーテル(ダイキン工業社製、製品名HFE−245mf)、沸点29℃。
発泡剤3:2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル(ダイキン工業社製、製品名HFE−347mcf)、沸点46℃。
発泡剤4:水。
混合発泡剤1:発泡剤1/発泡剤2の20/80(質量%比率)の混合物。
混合発泡剤2:発泡剤1/発泡剤3の20/80(質量%比率)の混合物。
[難燃剤]
難燃剤1:トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(スプレスタジャパン社製、製品名:ファイロールPCF)。[触媒]
触媒1:ペンタメチルジエチレントリアミン(東ソー社製、製品名:TOYOCAT DT)。
触媒2:N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(東ソー社製、製品名:TOYOCAT MR)。
ウレタン化触媒1:触媒1/触媒2の1/3(質量比)の混合物。
[整泡剤]
整泡剤1:シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング社製、製品名:SH−193)。
【0067】
[製造例1:ポリマー分散ポリオール(W1)の製造]
5L加圧反応容器に、下記ポリエーテルポリオール(X1)の300質量部、下記ポリエーテルポリオール(Y1)の150質量部、下記ポリエーテルポリオール(Y2)の300質量部、アクリロニトリルの50質量部、酢酸ビニルの200質量部、および重合開始剤として2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(AMBN)の10質量部を仕込んだ後、撹拌しながら昇温を開始し、反応液を80℃に保ちながら10時間反応させた。モノマーの反応率は80%以上を示した。反応終了後、110℃、マイナス0.10MPa(ゲージ圧力)で2時間加熱減圧脱気して未反応モノマーを除去し、ポリマー分散ポリオール(ポリオールW1)を得た。得られたポリマー分散ポリオールW1の平均水酸基価、25℃における粘度、およびW1中のポリマー粒子の含有量を表1に示す(以下、同様。)。
【0068】
[製造例2:ポリマー分散ポリオール(W2)の製造]
5L加圧反応槽に、表1に示したベースポリオール(W’)の混合物のうちの70質量%を仕込み、120℃に保ちながら、残りのベースポリオール(W’)の混合物とモノマーと重合開始剤(AMBN)との混合物を撹拌しながら2時間かけてフィードし、全フィード終了後同温度下で約0.5時間撹拌を続けた。モノマーの反応率は80%以上を示した。反応終了後、未反応モノマーを120℃、20Paで2時間加熱減圧脱気にて除去し、ポリマー分散ポリオールW2を得た。
【0069】
[製造例3,4:ポリマー分散ポリオール(W3)、(W4)の製造]
5L加圧反応槽に、表1に示した配合で、ポリオールX1、ポリオールY1、およびマクロモノマーを仕込み、120℃に保ちつつ、モノマーおよび重合開始剤(AMBN)の混合物を、撹拌しながら2時間かけてフィードし、全フィード終了後、同温度下で約0.5時間撹拌を続けた。その後、未反応モノマーを減圧下、120℃で3時間除去することによりポリマー分散ポリオールW3およびW4を得た。
【0070】
【表1】

【0071】
ポリエーテルポリオール(X1):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下、POとEOとをランダムに付加して得られる、水酸基価が50mgKOH/g、オキシエチレン基含有量70質量%のポリエーテルポリオール。
ポリエーテルポリオール(Y1):エチレンジアミンを開始剤として、POのみを付加して得られる、水酸基価が760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリエーテルポリオール(Y2):グリセリンを開始剤として、水酸化カリウム触媒存在下、POのみを付加して得られる、水酸基価が650mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0072】
ポリマー分散ポリオールの平均水酸基価は、JIS K 1557−1:2007に従って測定した。
【0073】
<例1〜38>
例21〜38が実施例、例1〜20が比較例である。
表2〜5に示す配合で硬質フォームを製造した。表に示した配合の数値の単位は質量部である。ただしポリイソシアネート化合物の配合量はイソシアネート指数(INDEX)で表す。表にポリオール組成物(P)の全体における平均水酸基数および平均水酸基価を示す。またポリマー粒子の含有量(単位:質量%)を示す。
まず、各ポリオール、ウレタン化触媒、整泡剤、混合発泡剤および水の所定量を混合してポリオールシステム液を調製した。ウレタン化触媒の配合量はゲルタイムが100秒となる量に設定した。ポリオールシステム液およびポリイソシアネート化合物の液温を、それぞれ20℃に調整した。
【0074】
[自由発泡フォームの製造]
上記の手順で調製した、ポリイソシアネート化合物をポリオールシステム液に投入し、ミキサーを用いて、毎分3,000回転の回転速度で5秒間撹拌・混合して発泡原液組成物を調製した。調製直後の発泡原液組成物を、縦、横、高さ各20cmの木箱に素早く投入して、自由発泡フォームを得た。得られた自由発泡フォームのボックスフリー密度を下記の方法で測定した。また、発泡途中には、反応性(クリームタイム、ゲルタイム、タックフリータイム)を下記の方法で測定した。結果を表6〜9に示す。
【0075】
[パネルフォームの製造]
上記自由発泡フォームの製造と同様な方法で調製した発泡原液組成物を、40℃に温度調整した縦400mm×横800mm×厚さ40mmのアルミニウム製金型に有機系の離型剤を塗布した状態で、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合直後に投入した。投入量は、金型容積に対し15%の過充填となる量とした。投入後、蓋をして密閉した状態で発泡させて、パネルフォームを製造した。
得られたパネルフォームのパネル全密度(単位:kg/m)を下記の方法で測定した。また、下記の方法で各特性の評価を行った。結果を表6〜9に示す。
【0076】
<自由発泡フォームの評価方法>
[ボックスフリー密度]
自由発泡で得られたフォームの中央付近を10cm角に切り出した試験片について、JIS A 9526に準拠した方法で密度(単位:kg/m)を測定した。
[反応性]
ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合開始時刻を0秒とし、クリームタイム、ゲルタイムおよびタックフリータイムを測定した。
クリームタイム(秒):ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物との混合液が泡立ちを始めるまでの時間。
ゲルタイム(秒):ゲル化の進行に伴い、細いガラスまたは金属製の棒を発泡中の発泡原液組成物上部に軽く差した後、素早く引き抜いた時に発泡原液組成物が糸を引き始めるまでの時間。
タックフリータイム(秒):発泡が終了し、フォームにベトツキが無くなるまでの時間。
【0077】
<パネルフォームの評価方法>
[パネル全密度]
得られたパネルフォームの全体につき、JIS A 9526に準拠した方法でパネル全密度(単位:kg/m)を測定した。
[成形性]
(1)脱型直後の収縮の有無:発泡原液組成物を金型に投入後密閉した状態で、20℃で30分間放置して、金型から出し、外観状態を観察した。下記の基準で評価した。
○(良):変形がない。良好。
△(可):収縮により部分的に変形が生じた。
×(不可):収縮により全体が潰れた。不良。
(2)セル外観:得られたパネルフォームの表面のうち、発泡方向(金型の厚さ方向)に対して下側(金型の底面側)の表面をスキン部の表面とした。パネルフォームのコア部から、横(x)100mm、縦(y)100mm、高さ(z)25mmの寸法で切り出した試験片の表面をコア部の表面とした。
スキン部およびコア部のそれぞれの表面について、セルが不均一な部分(セルが粗くなっている部分)の有無を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎(優良):セルが粗くなっている部分がない。セルが微細でかつ均一。
○(良):セルが粗くなっている部分がない。セルが均一。
△(可):部分的にセルが粗くなっている。
×(不可):全体的にセルが粗くなっている。不良。
【0078】
[寸法安定性]
金型からパネルフォームを取り出した後、雰囲気温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下で養生した後、パネルフォームのコア部から、横(x)100mm、縦(y)100mm、高さ(z)25mmの寸法で切り出したものを試験片として、高温寸法安定性、低温寸法安定性および湿熱寸法安定性の各試験を行った。
養生条件は以下の条件で行った。
高温寸法安定性:試験片を70℃の恒温槽中で24時間保存。
低温寸法安定性:試験片を−30℃の恒温槽中で24時間保存。
湿熱寸法安定性:試験片を70℃で相対湿度95%の雰囲気下の恒温槽中で24時間保存。
上記各条件での保存終了後、試験片のx、y、zの3方向について増加した長さを、保存前の長さに対する寸法変化率(単位:%)で表した。
寸法変化率において、負の数値は収縮を意味し、絶対値が大きいことは、寸法変化が大きいことを意味する。
【0079】
[圧縮強度]
パネルフォームの圧縮強度は、JIS A 9511に準拠して測定した。試料片の大きさは、縦(x)、横(y)を各50mmに切出し、高さ方向(z)は表面スキン層を切り出さずパネルフォームの厚さである40mmのままとし、z方向の圧縮強度を測定した。
【0080】
[熱伝導率]
パネルフォームの熱伝導率(単位:W/m・K)は、JIS A 1412に準拠し、熱伝導率測定装置(製品名:オートラムダHC−074型、英弘精機社製)を用いて測定した。
【0081】
[常温貯蔵安定性]
ポリオールシステム液を20℃で1ヶ月間保存した後、液の状態を目視で観察した。下記の基準で評価した。
○(良):濁り、分離、沈殿、固化のいずれも発生せず、透明である。良好。
×(不可):濁り、分離、沈殿、固化のうちの1つ以上が発生した。不良。
××(より不可):濁り、分離、沈殿、固化のうち2つ以上が発生する。より不良。
[高温貯蔵安定性]
ポリオールシステム液を40℃で1ヶ月間保存した後、液の状態を目視で観察する。下記の基準で評価する。
○(良):濁り、分離、沈殿、固化のいずれも発生せず、透明である。良好。
×(不可):濁り、分離、沈殿、固化のうちの1つ以上が発生する。不良。
××(より不可):濁り、分離、沈殿、固化のうち2つ以上が発生する。より不良。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
【表7】

【0088】
【表8】

【0089】
【表9】

【0090】
表6〜9の結果より、ポリオール組成物(P)がポリオール(A)とポリマー粒子を含む例21〜22は、ポリオール(A)および/またはポリマー粒子を含まない比較例である例1〜12、例17〜18と比べて、密度が低く軽量化しているにもかかわらず成形性、寸法安定性、圧縮強度、熱伝導率およびポリオールシステムの常温貯蔵安定性がいずれも良好であり、また高温貯蔵安定性が良好だった。
【0091】
表7〜9の結果より、ポリエーテルポリオールよりも収縮する傾向が強いポリエステルポリオール(ポリオール(D))を用いた例13〜16、例19〜20および例23〜38においても、ポリオール(A)およびポリマー粒子を含む例23〜38は、ポリオール(A)およびポリマー粒子を含まない例13〜16および例19〜20と比較して、密度が低く軽量化しているにもかかわらず、フォームの収縮が抑制され、成形性、寸法安定性、圧縮強度、熱伝導率およびポリオールシステムの常温貯蔵安定性が良好であり、また高温貯蔵安定性が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール組成物(P)とポリイソシアネート化合物とを、発泡剤、整泡剤および触媒の存在下で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法であって、
前記ポリオール組成物(P)が下記ポリオール(A)を30〜70質量%、ポリマー粒子を0.002〜30質量%含み、該ポリオール組成物(P)の平均水酸基数が2〜8、平均水酸基価が100〜800mgKOH/gであり、前記発泡剤が下式(I)で表されるハイドロフルオロエーテル類(I)
−O−C …(I)
(式中、a、bはそれぞれ独立に1〜5の整数であり、a+bは2〜6であり、c、dはそれぞれ独立に0または1〜10の整数であり、c+d≧1であり、e、fはそれぞれ独立に0または1〜10の整数であり、e+f≧2であり、c+d<e+fである。)を含むことを特徴とする硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(A):活性水素原子数が4〜12の芳香族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールであって、該アルキレンオキシドの全量中におけるエチレンオキシドの含有量が0〜60質量%であり、水酸基価が100〜800mgKOH/gである、ポリエーテルポリオール。
【請求項2】
前記ポリマー粒子が重合性不飽和基を有するモノマーを重合させて得られるポリマー粒子である、請求項1に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオール組成物(P)が、下記ポリオール(B)を1〜50質量%含む、請求項1または2に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(B):活性水素原子数が5〜12の多価アルコールを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールであって、該アルキレンオキシドの全量中におけるエチレンオキシドの含有量が0〜20質量%であり、水酸基価が100〜800mgKOH/gである、ポリエーテルポリオール。
【請求項4】
前記ポリオール組成物(P)が、下記ポリオール(C)を10〜40質量%含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(C):活性水素原子数が2〜4の脂肪族アミンを開始剤として、アルキレンオキシドを開環付加重合させて得られるポリエーテルポリオールであって、該アルキレンオキシドの全量中におけるエチレンオキシドの含有量が0〜50質量%であり、水酸基価が100〜800mgKOH/gである、ポリエーテルポリオール。
【請求項5】
前記ポリオール組成物(P)が、下記ポリオール(D)を10〜60質量%含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(D):芳香族化合物を含むモノマー混合物を重縮合して製造された、平均水酸基数が2〜3、水酸基価が100〜500mgKOH/gである、ポリエステルポリオール。
【請求項6】
前記ポリマー粒子が、ポリマー分散ポリオール(W)由来のポリマー粒子であり、前記ポリオール組成物(P)がポリマー分散ポリオール(W)を0.01〜50質量%含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ハイドロフルオロエーテル類(I)が、1,1,2,2−テトラフルオロメチルエーテル(HFE−254pc)を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ハイドロフルオロエーテル類(I)が、前記HFE−254pcと、該HFE−254pcよりも沸点が低い不燃性のハイドロフルオロエーテル類(I)を含む、請求項7に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記ハイドロフルオロエーテル類(I)が、前記HFE−254pcと、該HFE−254pcよりも沸点が高い不燃性のハイドロフルオロエーテル類(I)を含む、請求項7に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記製造方法が注入法である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2012−177107(P2012−177107A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21050(P2012−21050)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】