説明

硬質表面用洗浄剤組成物

【課題】洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、速やかにすすぎが完了する硬質表面用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー、(b)炭素数5〜18のアルキル基を有するスルホコハク酸アルキルエステル及びこの塩から選ばれる1種以上の界面活性剤、並びに(c)一般式(c1)で表される特定の化合物を含有し、(a)/(b)の質量比が0.01〜5である、硬質表面用洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質表面洗浄用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物等の硬質表面用洗浄剤組成物は、洗浄時の豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性が求められる。この起泡性/泡持続性は洗浄持続性と相関がある非常に重要な物性であり、これまで起泡性/泡持続性に優れる洗浄剤の開発が主に行われてきた。一方、近年、環境負荷軽減、水資源有効利用の目的から、洗浄に用いる水の量を低減することが好ましく、手洗い食器洗浄用洗浄剤で洗浄後のすすぎ水は極力低減することが望まれる。
【0003】
起泡性/泡持続性を高めるためには、一般的には水溶性高分子の添加が効果的であることが知られている。例えば、特許文献1には、正電荷特性、負電荷特性または双性イオン特性を保持する能力を備える高分子材料を用い、泡量が多く、また泡の持続性が高い液体手洗い洗剤組成物が開示されている。特許文献2には高分子系界面活性剤を含む、泡の安定性に優れた液体洗剤組成物が開示されている。特許文献3には界面活性剤とポリエチレンイミン系のポリマーを用い、泡立ちの持続性に優れた液体洗剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−524587公報
【特許文献2】特開昭62−181400公報
【特許文献3】特表2009−537692公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物等の硬質表面用洗浄剤組成物には、洗浄時には豊かな泡立ちと泡の持続性を示す一方で、すすぎ時には泡が消えやすく、速やかにすすぎが完了することが求められる。しかしながら、特許文献1、2、3に記載の液体洗剤のすすぎ性は十分ではなく、濯ぎ時になかなか泡が消えにくく、濯ぎに多くの水を使用しなければならないという課題がある。
【0006】
本発明の課題は、洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、速やかにすすぎが完了する硬質表面用洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(a)ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー〔以下、(a)成分という〕 0.1〜10質量%、
(b)炭素数5〜18のアルキル基を有するスルホコハク酸アルキルエステル及びこの塩から選ばれる1種以上の界面活性剤〔以下、(b)成分という〕 0.1〜30質量%、並びに
(c)下記一般式(c1)で表される化合物〔以下、(c)成分という〕 1〜50質量%を含有し、
(a)/(b)の質量比が0.01〜5である、
硬質表面用洗浄剤組成物に関する。
1c−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (c1)
〔式中、R1cは、炭素数8〜18のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの平均付加モル数を示し、mが0以上、1未満であり、nが0〜5である。ここで、mとnが共に0の場合には、R1cの少なくとも一部は分岐鎖構造を有するアルキル基である。Mは陽イオンである。“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗浄時には豊かな泡立ちと洗浄時の泡の持続性を示すが、すすぎ時には瞬時に泡が消え、速やかにすすぎが完了する食器等の硬質表面用洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<(a)成分>
本発明で用いられる(a)成分は、ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマーである。
【0010】
ポリエチレンイミンとしては、構成単位であるエチレンイミン−CH2CH2NH−から構成されるポリマーを挙げることができる。このポリエチレンイミン主鎖は、窒素上の水素が、構成単位であるエチレンイミンのもう一つの鎖によって置換される場合、分岐することがある。即ち、前記ポリエチレンイミンは、完全な線状構造を有するものではなく、1級、2級及び3級アミノ窒素を含む分岐鎖構造を有している。また、前記ポリエチレンイミンとしては、活性水素を1分子中に10〜200個、好ましくは12〜100個有しているものが好ましい。ここで、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、好ましくは200〜20,000、より好ましくは200〜6,000であり、より好ましくは250〜3,000、更に好ましくは300〜1,500である。また、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたものである。
【0011】
また、ポリエチレンイミンのアルコキシル化物としては、特に限定されるものではないが、エチレンイミン単位1個に対して好ましくは平均1個〜30個、より好ましくは平均5個〜25個、更に好ましくは平均10個〜20個のアルコキシル部分を有する(ポリ)アルコキシル化ポリエチレンイミンポリマーを挙げることができる。ここで、アルコキシル化物の具体例としては、例えば、ポリエチレンイミンのエトキシル化物、ポリエチレンイミンのプロポキシル化物、又はポリエチレンイミンのエトキシル−プロポキシル化物を挙げることができるが、ポリエチレンイミンのエトキシル化物又はポリエチレンイミンのエトキシル−プロポキシル化物が好ましく、洗浄時の起泡性及び濯ぎ時の泡切れ性の点で、ポリエチレンイミンのエトキシル化物がより好ましい。ここで、ポリエチレンイミンのアルコキシル化物の重量平均分子量は、好ましくは200〜20,000、より好ましくは1,000〜20,000であり、より好ましくは2,000〜10,000、更に好ましくは3,000〜7,000である。また、ポリエチレンイミンのアルコキシル化物の重量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたものである。
【0012】
ポリエチレンイミンのアルコキシル化物は、前記ポリエチレンイミンへのアルキレンオキシドの付加反応により得ることができ、例えば出発物質であるポリエチレンイミンに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートなどの塩基性触媒の存在下、100℃〜180℃でエチレンオキシド等のアルキレンオキシドを添加して反応させる方法などの通常の方法によって行うことができる。
【0013】
<(b)成分>
本発明で用いられる(b)成分は、炭素数5〜18のアルキル基を有するスルホコハク酸アルキルエステル及びこの塩から選ばれる1種以上の界面活性剤であり、好ましくはアルキル基の炭素数が5〜18のスルホコハク酸モノアルキルエステル、アルキル基の炭素数がそれぞれ5〜18のスルホコハク酸ジアルキルエステル及びこれらの塩から選ばれる1種以上の界面活性剤であり、具体的には下記一般式(b1)の化合物が好適である。
【0014】
【化1】

【0015】
〔式中、R1b、R2bは、それぞれ、炭素数5〜18、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜12のアルキル基又は水素原子であり、R1b、R2bの少なくとも一方は炭素数5〜18のアルキル基である。即ち、R1bとR2bが同時に水素原子である場合を除く。A1、A2はそれぞれ独立に炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレン基、x、yは平均付加モル数でありそれぞれ独立に0〜6である。M1は陽イオン、好ましくは無機又は有機の陽イオンである。〕
【0016】
(b)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩である場合、一般式(b1)中のR1b、R2bは、同一あるいは異なっていても良く、洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から炭素数5〜18、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜12のアルキル基であり、好ましくは分岐構造を有するアルキル基である。5以上の炭素数で良好なすすぎ時の泡消え性が得られ、18以下の炭素数で良好な洗浄時の起泡性が得られる。また、(b)成分が、スルホコハク酸モノアルキルエステル又はその塩である場合、一般式(b1)中のR1b、R2bの一方は洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から炭素数5〜18、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜12のアルキル基であり、他方は水素原子である。R1b、R2bは洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、それぞれ、炭素数5〜18、好ましくは5〜14、より好ましくは5〜12のアルキル基であること、すなわち、(b)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩であることが好ましい。よって、(b)成分は、アルキル基の炭素数がそれぞれ5〜18のスルホコハク酸ジアルキルエステル及びその塩から選ばれる1種以上の界面活性剤が好ましい。A1、A2は洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点からそれぞれ独立に炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレン基である。x、yは平均付加モル数であり、洗浄時の起泡性及びすすぎ時の泡消え性の観点から、それぞれ0〜6であり、好ましくは0〜2であり、更に好ましくは0〜1であり、特に好ましくは0である。
【0017】
一般式(b1)中、R1a、R2aは、それぞれ、具体的にはヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、sec−オクチル基、イソペンチル基、イソノニル基、イソデシル基、シクロヘキシル基であり、特にn−オクチル基、sec−オクチル基、デシル基、イソデシル基、及び2−エチルヘキシル基から選ばれる基であることが好適であり、2−エチルヘキシル基が最も好適である。M1としては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンから選ばれる無機陽イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオンから選ばれる有機陽イオンが挙げられるが、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、及びアンモニウムイオンから選ばれる陽イオンである。
【0018】
(b)成分が、スルホコハク酸ジアルキルエステル又はその塩である場合、R1b、R2bが同一の化合物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えば米国特許明細書第2,028,091号公報に記載の方法を参考にして製造することができ、また、R1b、R2bが異なる非対称の化合物の調製方法としては、例えば特開昭58−24555号公報を参考にして製造することができる。市販の化合物を用いる場合には、花王(株)製ペレックスOT−P(R1b、R2bが共に2−エチルヘキシル基である化合物)、同ペレックスTR(R1b、R2bが共にトリデシル基である化合物)、BASF社製LuensitA−BO(R1b、R2bが共に2−エチルヘキシル基である化合物)、三井サイテック株式会社から入手可能であったエアロゾルAY−100(R1b、R2bが共にアミル基である化合物)、同エアロゾルA−196(R1b、R2bが共にシクロヘキシル基である化合物)などを用いることができる。
【0019】
<(c)成分>
(c)成分は、下記一般式(c1)の化合物である。
1c−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (c1)
〔式中、R1cは、炭素数8〜18のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの平均付加モル数を示し、mが0以上、1未満であり、nが0〜5である。ここで、mとnが共に0の場合には、R1cの少なくとも一部は分岐鎖構造を有するアルキル基である。Mは陽イオンである。“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【0020】
一般式(c1)中、R1cの炭素数は10〜16が好ましく、12〜14がより好ましい。mは0.1〜0.9が好ましく、0.2〜0.8がより好ましく、0.3〜0.8が更により好ましく、0.5〜0.7が特に好ましい。nは0〜3が好ましく、0以上、1未満がより好ましく、0が特に好ましい。mとnの組合せとしては、mが0.1〜0.9、且つ、nが0が好ましく、mが0.3〜0.8、且つ、nが0がより好ましく、mが0.5〜0.7、且つ、nが0がより好ましい。
【0021】
一般式(c1)において、mとnが同時に0の場合には、R1cの少なくとも一部は、分岐鎖構造を有するアルキル基であり、その場合、炭素数は8〜18、好ましくは10〜16、より好ましくは12〜14である。つまり、一般式(c1)において、mとnが同時に0の場合には、(c)成分は、R1cが分岐鎖構造を有する化合物、又はR1cが分岐鎖構造を有する化合物及びR1cが直鎖構造を有する化合物の混合である。
【0022】
(c)成分として、一般式(c1)中のR1cが分岐鎖構造を有するアルキル基(分岐鎖アルキル基)である化合物を含む場合、(c)成分の分岐率〔一般式(c1)の化合物の総モル数に対する分岐鎖アルキル基を有する化合物の総モル数の割合〕は、好ましくは15〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%、特に好ましくは70〜100モル%である。
【0023】
一般式(c1)中のMはナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンから選ばれる無機陽イオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリンの酸塩から選ばれる有機陽イオンであるが、好ましくはナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオンである。
【0024】
一般式(c1)の化合物の調製方法としては、特に限定されるものではないが、例えばR1c−OHで示される脂肪アルコールに目的に応じてエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを所定量付加させた後、三酸化硫黄(液体又は気体)、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸から選ばれる硫酸化剤で硫酸エステル化し、所定のアルカリ剤で中和して製造される。エチレンオキシド(以下、EOと表記する)及び/又はプロピレンオキシド(以下、POと表記する)の付加反応は触媒が必要でありNaOH、KOHなどの水酸化アルカリを用いることができる。また、特開平8−323200号公報に記載の酸化マグネシウムを主成分とする触媒を用いることができ、前者は付加モル数分布が比較的広いポリオキシエチレンアルキルエーテルを得ることができ、後者は比較的狭い付加モル数分布を有する化合物を得ることができる。また、特開平10−158384号公報に開示されているようにアルカリ触媒と金属酸化物触媒を併用することにより付加モル数分布を制御することも可能である。
【0025】
一般式(c1)においてnが0の場合に好適であるR1cが分岐構造を有するアルキル基を含む化合物を得る場合には、原料であるR1c−OHで示されるアルコールとして、炭素数8〜14の1−アルケンをヒドロホルミル化して得られたアルコール(OH基に対してβ位にメチル基が分岐したアルキル基が15〜70モル%含まれる)、炭素数4〜8のアルデヒドを縮合させた後、還元して得られるゲルベ型アルコール(OH基に対してβ位に炭素数3〜6のアルキル基が分岐した構造のものが100モル%含まれる)、イソブテンの2量体をヒドロホルミル化して得られる3,5,5−トリメチルヘキサノール、イソブテンの3量体をヒドロホルミル化して得られる多分岐トリデカノール(分岐率は100モル%である)、石油、石炭を原料とした合成アルコール(分岐率が約20〜100モル%のアルキル基である)を挙げることができる。
【0026】
(c)成分としては、(c−I)一般式(c1)中のmが0.1〜0.9、且つ、nが0である化合物〔他の条件は一般式(c1)と同じ〕、及び(c−II)一般式(c1)中のmとnが共に0である化合物〔他の条件は一般式(c1)と同じ〕から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、中でも(c−I)の化合物がより好ましい。(c−I)の化合物では、R1cは直鎖のアルキル基、又は直鎖アルキル基と分岐鎖アルキル基の混合が好ましい。ここで、(c−I)の化合物においては、mは0.1〜0.8が好ましく、0.2〜0.8がより好ましく、0.4〜0.7が更により好ましく、またR1cのアルキル基の炭素数は8〜18が好ましく、10〜16がより好ましく、12〜14が更により好ましい。一方、(c−II)の化合物においては、R1cのアルキル基の炭素数は8〜18が好ましく、10〜16がより好ましく、12〜14が更により好ましい。(c−II)の化合物は、分岐率が好ましくは15〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%、特に好ましくは70〜100モル%である。なお、(c−I)の化合物もこの範囲の分岐率であってもよい。
【0027】
<硬質表面用洗浄剤組成物>
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、起泡力の観点から、(a)成分を組成物中に0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜6質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%含有する。また、泡消え性の観点から、(b)成分を組成物中に1〜30質量%、好ましくは3〜20質量%、特に好ましくは5〜10質量%含有する。また、起泡力及び泡消え性の観点から、(c)成分を組成物中に1〜50質量%、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%含有する。
【0028】
また(a)成分/(b)成分の質量比は、起泡力と泡消え性の観点から、0.01〜5、好ましくは0.02〜3、より好ましくは0.03〜1である。
【0029】
本発明においては洗浄時及びすすぎ時の泡の挙動が非常に重要である。手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物等の硬質表面用洗浄剤組成物の一般的な研究においては、洗浄時の起泡性/泡持続性を考慮して増泡効果のある界面活性剤を併用することが行われているが、本発明においてはこのような増泡効果のある界面活性剤はすすぎ時の泡消え性に大きな影響を及ぼすため、使用する場合注意が必要である。本発明では特に(d)成分として、アミンオキシド型界面活性剤、カルボベタイン型界面活性剤及びアルカノールアミド型界面活性剤から選ばれる界面活性剤の取り扱いに注意を要する。
【0030】
アミンオキシド型界面活性剤としてはN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアミンオキシド(アルカノイルとしてはラウロイル又はミリスチロイル)、N−アルキル−N,N−ジメチルアミンオキシド(アルキル基としてはラウリル基又はミリスチル基)を挙げることができる。また、カルボベタイン型界面活性剤としてはN−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−アルカノイルアミノプロピル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N−アルキル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムベタインを挙げることができる。さらに、アルカノールアミド型界面活性剤としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルモノエタノールアミンなどのアルカノールアミンとラウリン酸、ミリスチン酸などの脂肪酸とのアミド化物を挙げることができる。
【0031】
本発明においては泡の挙動が非常に重要であり、組成物に増泡効果を与える(d)成分の使用には注意を要し、特に組成物中の全界面活性剤の含有量に対する(d)成分の含有量が好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下であり、より更に好ましくは0.5質量%以下、最も好ましくは含有しないことである。
【0032】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、すすぎ時には瞬時にぬるつきがなくなり、少量の水ですすぎを完了できるという観点から、(e)成分として、アルキル基の炭素数が6から18のアルキルグリセリルエーテルを含有することが好ましい。具体的には下記一般式(e1)の化合物が好適である。
1e−O−(Gly)r−H (e1)
〔式中、R1eは炭素数6〜18のアルキル基を示し、Glyはグリセリンから2つの水素原子を除いた残基を示し、rは平均付加モル数で有り、1〜4の数を示す。〕
【0033】
一般式(e1)において、R1eは炭素数6〜18、好ましくは7〜12、より好ましくは8〜10のアルキル基である。本発明ではすすぎ時のぬるつき低減の観点から、分岐鎖構造を有する化合物が好適であり、R1eは分岐鎖構造を有するアルキル基が好ましく、具体例として、2−エチルヘキシル基、sec−オクチル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2−エチルヘキシル基又はイソデシル基が更に好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。一般式(e1)において、rは1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、r=1の化合物が最も好ましい。特に好ましい化合物は、R1eが2−エチルヘキシル基で、かつ、r=1の化合物である。
【0034】
Glyで示される構造はグリセリンの1位と3位のヒドロキシ基が結合している−CH2CH(OH)CH2−で示される構造か、又はグリセリンの1位と2位のヒドロキシ基が結合している−CH(CH2OH)CH2−で示される構造であり、触媒や反応条件によって異なる。
【0035】
一般式(e1)の化合物を得るには、例えば炭素数6〜10のアルコールとしてR1e−OHで示されるアルキルアルコールを用い、エピハロヒドリンやグリシドールなどのエポキシ化合物とを、BF3などの酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。
【0036】
例えば、2−エチルヘキサノールを用いた場合、得られる2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルは、特開2001−49291号公報に記載されているように複数の生成物を含み得る混合物である。
【0037】
(e)成分の含有量は洗浄性能の観点から、組成物中、0.5〜20質量%、更に1〜15質量%、より更に2〜10質量%が好ましい。
【0038】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、貯蔵安定性の改善や粘度調節の目的で、溶剤〔以下、(f)成分という〕を含有することができる。溶剤の具体的例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、フェノキシエタノール、フェニルグリコール、フェノキシイソプロパノール、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジブチレンジグリコール、ベンジルアルコールから選ばれる水溶性有機溶媒が好ましい。なかでも、ブチルジグリコール、エタノール、及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤が好ましく、エタノール、及びプロピレングリコールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤が更に好ましい。ここで、水溶性有機溶剤とは、オクタノール/水分配係数(LogPow)が3.5以下の溶剤を指すものとする。(f)成分の含有量は、組成物中に好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、特に好ましくは2〜10質量%である。
【0039】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、貯蔵安定性を向上させる目的でハイドロトロープ剤〔以下、(g)成分という〕を含有することが好ましい。ハイドロトロープ剤としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸又はこれらのナトリウム、カリウムあるいはマグネシウム塩が良好であり、特にp−トルエンスルホン酸又はその塩が良好である。(g)成分の含有量は、組成物中に好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.5〜8質量%、特に好ましくは1〜7質量%である。
【0040】
本発明では、硬質表面用洗浄剤組成物のゲル化防止のために重合体〔以下、(h)成分という〕、例えば特表平11−513067号公報に記載されているゲル化防止重合体を使用してもよい。とりわけポリアルキレングリコールを配合することが粘度調節及び貯蔵安定性の点から好ましい。ゲル化防止のための重合体としてのポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコールを標準としたときのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量が200〜3,000のポリプロピレングリコール、及び重量平均分子量が200〜3,000のポリエチレングリコールを挙げることができる。(h)成分の含有量は、組成物中に好ましくは0.05〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.2〜1.5質量%である。
【0041】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解/分散/乳化させた液体組成物の形態が好ましく、水溶液がより好ましい。水としては脱イオン水や蒸留水、或いは次亜塩素酸を0.5〜10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。
【0042】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは4〜10、より好ましくは5〜9が好適であり、このようなpHに調整は硫酸、塩酸、リン酸、から選ばれる無機酸、クエン酸、りんご酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸から選ばれる有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ剤を用いて行われる。本発明では、組成物に緩衝能を持たせることが起泡性/泡持続性の点から好ましく、上記有機酸、好ましくはクエン酸、及び無機アルカリ剤を併用することが好適である。有機酸はナトリウム塩やカリウム塩の形態で組成物に配合しても差し支えないが、含有量は酸の形態として組成物中に好ましくは0〜7質量%、より好ましくは0.5〜5質量%、特に好ましくは0.5〜3質量%である。
【0043】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、(i)成分として、炭素数10〜18の脂肪酸又はその塩を含有することができる。(i)成分としては、具体的にはデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸及びこれらの塩を挙げることができる。また、椰子組成脂肪酸などの混合脂肪酸を用いることも可能である。脂肪酸の塩としては、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩から選ばれる無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩であるが、好ましくはナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、より好ましくはナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩が挙げられる。(i)成分としては、より好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸又はこれらの塩であり、より更に好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸又はこれらの塩であり、最も好ましくはミリスチン酸又はその塩である。従って、起泡力及び泡消え性の観点からは(i)成分がミリスチン酸又はその塩を含むことが好ましく、(i)成分中、ミリスチン酸又はその塩の割合は30〜100質量%、更に50〜100質量%、より更に80〜100質量%が好ましい。(i)成分の含有量は、組成物中に好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜6質量%、特に好ましくは0.5〜6質量%である。
【0044】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物の20℃における粘度は、好ましくは10〜300mPa・s、より好ましくは20〜200mPa・sであり、このような粘度は(f)成分、(g)成分、(h)成分などで調整することができる。
【0045】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物には香料、染料、顔料などの通常用いられる成分を含有することができる。
【0046】
本発明の硬質表面用洗浄剤組成物は、手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物として好適である。すなわち、本発明の組成物は、食器の手洗い洗浄に用いられる。手洗い洗浄に用いられる洗浄液は、本発明の手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物を用いて得られたものであり、組成物の原液又は水を含む希釈液が用いられる。具体的な手洗い洗浄方法としては、例えば、水を含んだスポンジなどの可撓性材料に本発明の組成物を付着させ洗浄液を保持させて、手で数回揉みながら泡立てて、食器をこすり洗いする。可撓性材料が保持する洗浄液中の(a)成分、(b)成分、及び(c)成分の合計濃度は、好ましくは1,000〜30,000ppm、より好ましくは1,000〜20,000ppm、更に好ましくは2,000〜10,000ppmであることが、高い起泡性と泡持続性の点から好ましい。洗浄終了後には水を加えてすすぎを行うが、例えば、本発明では使用した組成物1質量部に対してすすぎ水3.3〜133質量部で泡が消え、すすぎを速やかに完了することができる。このすすぎ水の量は、従来の手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物を用いた場合の2/3〜1/10である。
【実施例】
【0047】
下記の配合成分を用いて表1の手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物を調製した。各手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物の洗浄時の起泡力、およびすすぎ時の泡消え性を下記の方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0048】
<配合成分>
・a−1:ポリエチレンイミン(東亜合成(株)製、重量平均分子量300)を用い、エチレンオキシドを付加させた化合物(ポリエチレンイミンのエチレン部分のプロトン:エチレンオキシドのエチレン部分のプロトン=1:17、エチレンオキシド付加後の重量平均分子量約4500)
・a−2:ポリエチレンイミン(和光純薬工業(株)、試薬、平均分子量1800)
・b−1:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(東京化成(株)、試薬)
・c−1;アルキル鎖が炭素数12の天然アルコール1モルに、POを0.6モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、アンモニアで中和した化合物。
・c−2:直鎖/分岐鎖混合アルコール〔サソール社製Lial 123(炭素数12のアルキル基及び炭素数13のアルキル基を含有し、分岐率は60モル%)〕を、三酸化イオウで硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した化合物(平均分子量:295)
・c−3:直鎖/分岐鎖混合アルコール〔シェル社製Dobanol23(炭素数12のアルキル基及び炭素数13のアルキル基を含有し、分岐率は40モル%)〕を、三酸化イオウで硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した化合物(平均分子量:295)
・c−4:直鎖/分岐鎖混合アルコール〔サソール社製Isalchem123(炭素数12のアルキル基及び炭素数13のアルキル基を含有し、分岐率は94モル%)〕にPOを0.6モル付加したのち、三酸化イオウで硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した化合物(平均分子量:295)
【0049】
<洗浄時の起泡力評価>
市販のスポンジ(キクロン社製、材質:ポリウレタン/ナイロン製、縦11.5cm、横7.5cm、高さ3.5cm)を25℃の水道水で軽く20回揉みながら水洗いし、水道水が10g含浸している状態までスポンジを固く絞った。そのスポンジに組成物1gを量り取ったのち、25℃の水道水20mLをさらにスポンジに含浸させた。この状態からスポンジを5回揉み、そのときに泡だった泡を全て500mLのガラス製メスシリンダーに回収してそのときの泡量を目盛りから読み取った。この値を組成物の起泡力とした。
【0050】
<すすぎ時の泡消え性評価>
組成物を3.5°DH硬水で3.2%に希釈し、ポンプフォーマー〔花王(株)製、キュキュットクエン酸効果泡タイプ(2007年発売)にて使用されていたもの〕により、3gの泡を500mlのガラス製メスシリンダーに作製し、メスシリンダーの目盛りからその容量を記録した(初期の泡量)。次に、手製のジョウロを通して3.5°DH硬水を泡に100ml添加し、その後1分経過毎に硬水100ml添加するという操作を計3回実施し(100mlの硬水を添加するのは計4回で、合計添加量は400mlとなる)、最後に硬水を添加してから30秒後の泡量を測定した。手製のジョウロは、250mlのポリプロピレン製広口びん(アズワン製:アイボーイ広口びん)の底部約3分の1を除去し、フタを外した状態の開口部に、均一に13個の直径約2mmの穴を開けた薄いプラスチック製の多孔板を固定して作製した。泡消え性については次式で示す泡量変化率から求め、合計400ml添加時に30%以下になったものを合格とした。
泡量変化率(%)=(硬水合計400mL添加後の泡量/初期の泡量)×100
【0051】
【表1】

【0052】
表1の結果から、実施例の組成物は、洗浄時の起泡力及びすすぎ時の泡消え性で優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエチレンイミン及びそのアルコキシル化物から選ばれる1種以上のポリマー 0.1〜10質量%、
(b)炭素数5〜18のアルキル基を有するスルホコハク酸アルキルエステル及びこの塩から選ばれる1種以上の界面活性剤 0.1〜30質量%、並びに
(c)下記一般式(c1)で表される化合物 1〜50質量%を含有し、
(a)/(b)の質量比が0.01〜5である、
硬質表面用洗浄剤組成物。
1c−O−〔(PO)m/(EO)n〕−SO3M (c1)
〔式中、R1cは、炭素数8〜18のアルキル基であり、POとEOはそれぞれプロピレンオキシ基とエチレンオキシ基であり、m、nはPO又はEOの平均付加モル数を示し、mが0以上、1未満であり、nが0〜5である。ここで、mとnが共に0の場合には、R1cの少なくとも一部は分岐鎖構造を有するアルキル基である。Mは陽イオンである。“/”は、POとEOの付加形態がブロックでもランダムでもよいことを意味する。〕
【請求項2】
(a)が、重量平均分子量が200〜20,000のポリマーである、請求項1記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)のアルコキシル化物が、ポリエチレンイミンのエトキシル化物、ポリエチレンイミンのプロポキシル化物、又はポリエチレンイミンのエトキシル−プロポキシル化物である、請求項1又は2記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b)の前記炭素数5〜18のアルキル基が、分岐構造を有するアルキル基である、請求項1〜3の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項5】
(b)の前記炭素数5〜18のアルキル基が、2−エチルヘキシル基である請求項1〜4の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項6】
(c)が、一般式(c1)中のmが0.2〜0.8、nが0の化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。
【請求項7】
手洗い食器洗浄用洗浄剤組成物である、請求項1〜6の何れか1項に記載の硬質表面用洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2013−18883(P2013−18883A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153764(P2011−153764)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】