説明

硬質表面用洗浄剤

【課題】有機酸でpHを1を超え3.5以下に調整した酸性硬質表面用洗浄剤であって、製品中での香りが経時的に安定な洗浄剤を提供する。
【解決手段】特定の香料化合物群(A-1)から選ばれる1種以上の香料化合物及び特定の香料化合物群(A-2)から選ばれる1種以上の香料化合物を含む香料組成物、有機酸、並びに水を含有し、20℃におけるpHが1を超え3.5以下の硬質表面用洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの便器、浴室の壁等の洗浄に用いられる酸性硬質表面用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、洗浄剤は、洗浄能力だけでなく、好きな香りであるか否かという判断基準での購入が増えており、その割合は年々高くなってきている。特に住居内で使用される製品に対しては消費者の香りへの意識が高い。そして好きな香りは、洗浄剤を消費者が購入してから使い終わるまでにわたって香りが維持されるよう要求される。これを満足させるためには、単に香料を洗浄液中に添加、配合したとしても、その要求を満たすことはできない。その理由として、香料にはエステル基やアルデヒド基などをもつ化合物が多いので、それらの香料を含む強酸性水溶液あるいは分散液を長期間保存した場合、保存中に香料の加水分解や酸化が起きるからである。その結果、洗浄剤の外観の変化や匂いの変質あるいは沈殿物の生成等、洗浄剤の調製当初の品質が損なわれる場合がある。
【0003】
また、洗浄剤を使用する場合、香りの質が重要となり、洗浄剤に求められる香りを消費者に提供する必要がある。有機酸を用いた洗浄剤に於いては、塩酸などの強酸に比べると洗浄力は劣るものの、香りの種類を多く創れることが期待できる。商品の香りの質には様々な要素があるが、トイレ、浴室などに求められる香りとして「爽やかな香り」、「清潔感のある香り」等が挙げられる。これらの香りを有する洗浄剤を使用した場合、洗浄中において、糞尿臭・排水口臭・皮脂臭・カビ臭等の環境臭を抑制することが期待できる。
【0004】
また、トイレなどの使用時に「爽やかな香り」、「清潔感のある香り」等の香りが感じられると「洗浄したてできれいなトイレ」という実感がトイレ洗浄者及びトイレ使用者ともに得られ、また洗浄後に香りが持続することもトイレ使用者にとって重要なポイントとなる。
【0005】
有機酸などで酸性に調整された洗浄剤は、硬質表面用として好適であり、従来、住居の浴室のタイルやトイレの便器等の硬質表面洗浄に適した洗浄剤が数多く提案されている。これらの洗浄剤においても香料を添加することが提案されている(例えば特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2003−183697号公報
【特許文献2】特開2004−75764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2では、洗浄剤中の香料の安定性が検討されているにとどまり、実際の使用場面での香りの質や香りの持続力などについては検討されていない。
【0007】
本発明の目的は、有機酸でpHを1を超え3.5以下に調整した酸性硬質表面用洗浄剤であって、製品中での香りが経時的に安定な洗浄剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の香料化合物群(A-1)から選ばれる1種以上の香料化合物及び下記の香料化合物群(A-2)から選ばれる1種以上の香料化合物を含む香料組成物(以下、本発明の香料組成物という)、有機酸、並びに水を含有し、20℃におけるpHが1を超え3.5以下の硬質表面用洗浄剤に関する。
〔香料化合物群(A-1)〕
2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、γ-ウンデカラクトン、カシュメラン、ガラクソライド、クマリン、酢酸アニシル、シクロペンタデカノリド、デセノール、フェニル酢酸、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、メチル β−ナフチルケトン、メチルアトラレート、リラール、リリアール、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、α−ダマスコン、γ-ノナラクトン、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン
〔香料化合物群(A-2)〕
2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2,2,5,5-テトラメチル-4-イソプロピル-1,3-ジオキサン、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、2-メチル-2-ペンテノ酸、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル、cis-3-ヘキセノール、l-メントール、l-メントン、n-オクタナール、p-t-ブチルシクロヘキサノン、β-ダイナスコン、γ-ドデカラクトン、アセトキシアミルテトラヒドロピラン、アセトフェノン、アリルアミルグリコレート、イソ酢酸ボルニル、エチル 2-tert-ブチルシクロヘキシルカルボネート、カンファー、ジャスモラクトン、ダマセノン、テトラヒドロリナロール、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルメチルエーテル、ブチルジメチルジヒドロピラン、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イルカルボキシレート、ベンズアルデヒド、ボルネオール、マルトール、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチレンテトラメチルヘプタノン、ローズオキサイド、2,6-ジメチルヘプタノール、γ-デカラクトン、クレオゾール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロムゴール
【0009】
なお、本発明では硬質表面とは浴室内では浴槽、内壁等、トイレ内では便器等、台所内ではシンク、内壁等で用いられるそれ自体が硬い性質を有する物質から構成されている物体の表面を意味する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製品中での香りの経時的な安定性も極めて高い洗浄剤を得ることができる。本発明の洗浄剤は、有機酸を含有し、洗浄力や防汚性の点でも望ましい効果を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の香料組成物において、香料化合物群(A-1)記載のものは香りの持続性が高く、香料化合物群(A-2)記載のものは拡散性が高い。それぞれの群に属する香料化合物を併用することにより、香料組成物の保存安定性が高く、更に洗浄中に求められる香り、並びに拡散性及び持続性が高い香りを有する洗浄剤を実現することができる。
【0012】
香料化合物群(A-1)において、その中でも好ましい香料として2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、γ-ウンデカラクトン、カシュメラン、ガラクソライド、クマリン、酢酸アニシル、シクロペンタデカノリド、デセノール、フェニル酢酸、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、メチル β−ナフチルケトン、メチルアトラレート、リラール、リリアール、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0013】
また、香料化合物群(A-2)において、その中でも好ましい香料として2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2,2,5,5-テトラメチル-4-イソプロピル-1,3-ジオキサン、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、2-メチル-2-ペンテノ酸、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル、cis-3-ヘキセノール、l-メントール、l-メントン、n-オクタナール、p-t-ブチルシクロヘキサノン、β−ダイナスコン、γ-ドデカラクトン、アセトキシアミルテトラヒドロピラン、アセトフェノン、アリルアミルグリコレート、イソ酢酸ボルニル、エチル 2-tert-ブチルシクロヘキシルカルボネート、カンファー、ジャスモラクトン、ダマセノン、テトラヒドロリナロール、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルメチルエーテル、ブチルジメチルジヒドロピラン、フルーテート、ベンズアルデヒド、ボルネオール、マルトール、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチレンテトラメチルヘプタノン、ローズオキサイドが挙げられる。
【0014】
また、本発明に使用される香料組成物において、香料化合物群(A-1)に記載のもの、及び香料化合物群(A-2)に記載のもののみならず、所期の目的を達成する範囲内で天然香料や精油等も用いることができる。
【0015】
また、本発明の香料組成物と組み合わせて、例えば、溶剤、具体的には、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピルミリステート、ジエチルフタレート等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0016】
また、〔香料化合物群(A-2)の香料化合物の合計質量〕/〔香料化合物群(A-1)の香料化合物の合計質量〕の質量比が1以上であることが、香りの安定性及び香りの多様性を達成するために好ましい。
【0017】
本発明の香料組成物は、本発明の所望の香りの効果を達成するために、洗浄剤中に好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜2質量%、特に好ましくは0.1〜0.8質量%含有される。
【0018】
本発明の洗浄剤は、香料化合物群(A-2)から選ばれる香料化合物の合計中、30質量%以上を占める香料化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0019】
また、香料組成物中の香料化合物群(A-1)の香料化合物の合計含有量は、20質量%以上、香料化合物群(A-2)の香料化合物の合計含有量は、30質量%以上であることが、本発明の所望の香りの効果を達成するために好ましい。
【0020】
〔有機酸〕
本発明の洗浄剤は水と有機酸が配合され、20℃におけるpHが1を超え3.5以下、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは2〜3になるように調整される。有機酸としてクエン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、乳酸及びグルコン酸の1種以上を使用することが好ましいが、洗浄性の観点よりクエン酸が特に好ましい。有機酸は洗浄剤の洗浄性及び低温安定性の観点より、洗浄剤中に好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%、更に好ましくは2.5〜15質量%含有される。この場合において、必要ならばリン酸、硫酸等の無機酸を併用してもよい。
【0021】
〔アミノ基及び/又は第4級アンモニウム基を有する重合体〕
本発明の洗浄剤は、分子中に、アミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を1種以上有するモノマー単位〔モノマー単位(イ)〕を、全モノマー単位に対して10〜100モル%有し、且つ重量平均分子量が1,000〜100,000である重合体(以下、本発明の重合体という)を含有することが好ましい。特に、分子中に、アミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を1種以上有するモノマー単位(イ)と、−SO2−で表されるモノマー単位(ロ)とを有し、モノマー単位(イ)を全モノマー単位に対して10〜99モル%含み、且つモノマー単位(ロ)/モノマー単位(イ)のモル比が0.01〜1である重合体(以下、本発明の重合体Aという)を含有することが防汚性を達成するために好ましい。
【0022】
重合体Aでは、モノマー単位(ロ)/モノマー単位(イ)のモル比は、好ましくは0.01〜1であり、より好ましくは0.02〜0.75、特に好ましくは0.03〜0.5である。
【0023】
本発明の重合体又は重合体Aにおいて、モノマー単位(イ)を構成するために用いられるモノマーとしては、下記一般式(1)の化合物及び一般式(2)の化合物から選ばれる1種以上が好適である。
【0024】
【化2】

【0025】
〔式中、R1、R2、R3、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR12−、−CONHR12−、−OCOR12−、−R13−OCO−R12−から選ばれる基である。ここでR12、R13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R4は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基又はR12C=C(R3)−X−である。R5は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ベンジル基であり、R6はヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はベンジル基であり、R6がアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基の場合は、Z-は陰イオンを示す。R6がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基を含む場合、Z-は存在せず、R6中のこれらの基は陰イオンとなる。R10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR78C=C(R9)−Y−である。R11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。〕
【0026】
この場合において、Z-の陰イオンとしては、たとえばハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜3のアルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸イオン、ヒドロキシイオンを挙げることができる。
【0027】
一般式(1)の化合物として具体的に好ましいものはアクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N−(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N,N−トリアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)4級アンモニウム塩が好適であり、特にジアリルジメチルアンモニウム塩が良好である。
【0028】
一般式(2)の化合物として具体的に好ましいものはアクリロイル(又はメタクリロイル)アミノアルキル(炭素数1〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシアルキル(炭素数1〜5)−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、N−(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N,N−ジアルキル(炭素数1〜3)アミン、N,N−ジ(ω−アルケニル(炭素数2〜10))−N−アルキル(炭素数1〜3)アミン、アリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミンが好適であり、特に、アリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)アミノプロピル−N,N−ジメチルアミン、アクリロイル(又はメタクリロイル)オキシエチル−N,N−ジメチルアミンが良好である。モノマー単位Aは全モノマー単位に対して10〜99モル%の割合で含まれる。好ましくは20〜99モル%、より好ましくは30〜90モル%の割合で含まれる。
【0029】
本発明の重合体Aにおいてモノマー単位(ロ)は-SO2-であり、このようなモノマー単位を重合体に導入する方法としては、所定量のSO2ガスを一般式(1)の化合物及び/又は一般式(2)の化合物を含有する溶液に吹き込み、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレルニトリロ、2、2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、過酢酸、過安息香酸、過硫酸塩、過酸化水素から選ばれる重合開始剤を用いて重合することで得られる。重合時には溶媒を用いることができ、具体的には水、メタノール、エタノール、プロパノールから選ばれるアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンから選ばれるケトン類、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルイミダゾリジノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、トルエン、キシレン、ヘキサンを用いることが可能である。重合温度は溶媒や開始剤の組み合わせにより異なり、好ましくは-20〜20℃、好ましくは-10〜100℃である。また、本発明では光や放射線によっても重合することが可能であり、特に300〜450nmの波長の光を照射することで効率良く重合することができる。
【0030】
モノマー単位(ロ)を加えることにより、防錆効果に加えて、重合体の濃度が低い場合でも硬質表面に対する十分な付着性を示し、またカチオン界面活性剤との併用による影響も受け難くなる。
【0031】
本発明では、さらに防汚効果を向上させる目的から、本発明の重合体又は重合体Aが、更に下記(i)〜(ii)から選ばれるモノマーに由来するモノマー単位(ハ)を含有することが好適である。
【0032】
(i)アクリル酸又はその塩、メタクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、無水マレイン酸、スチレンスルホン酸塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、ビニルスルホン酸塩、メタリルスルホン酸塩、スルホプロピルメタクリレート、リン酸モノ−ω−メタクリロイルオキシアルキル(炭素数1〜12)
【0033】
(ii)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアクリル(又はメタクリル)アミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N,N−ジメチルアミノメチルアクリル酸(又はメタクリル酸)アミド、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドンから選ばれるアミド基含有化合物
【0034】
これらの中でも特に防汚効果の点から(i)のモノマー由来のモノマー単位が好ましく、これらの中でもアクリル酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩、メタクリル酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩、マレイン酸またはそのナトリウム塩もしくはカリウム塩が好ましい。ここで(i)のモノマー由来のモノマー単位の対イオンは、含有する重合体のカチオン基部分であっても良い。
【0035】
本発明の重合体又は重合体Aがモノマー単位(ハ)を有する場合、モノマー単位(ハ)/モノマー単位(イ)のモル比は、防汚効果の点から、0.05〜2、更には0.1〜1、特には0.2〜0.5が好ましい。
【0036】
本発明の重合体又は重合体Aは、重量平均分子量が好ましくは1,000〜6,000,000、より好ましくは1,000〜500,000、さらに好ましくは1,000〜100,000、特に好ましくは5,000〜60,000であり、この重量平均分子量はアセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝液)を展開溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリエチレングリコールを標準物質として求めたものである。
【0037】
本発の重合体又は重合体Aは、モノマー単位(イ)、モノマー単位(ロ)及び好ましくはモノマー単位(ハ)が、重合体中の主鎖または側鎖のいずれに存在していても構わない。これらはランダム重合したもの、ブロック重合したものでも、グラフト重合したものなどでも構わない。本発明ではモノマー単位(イ)、モノマー単位(ロ)及びモノマー単位(ハ)のみから構成される重合体を用いることが最も好ましい。
【0038】
本発明の重合体又は重合体Aは所望の防汚性を達成する観点より、洗浄剤中に 好ましくは0.02〜5質量%、より好ましくは0.05〜2質量%含有される。
【0039】
〔界面活性剤〕
本発明の洗浄剤において界面活性剤を洗浄力増強剤として使用することができる。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が挙げられるが、有機酸の洗浄力増強剤として相乗的に作用するものとしては、ノニオン界面活性剤が好ましい。洗浄性及び低温での安定性の観点より、界面活性剤は洗浄剤中に好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは 1〜10質量%使用される。
【0040】
〈ノニオン界面活性剤〉
本発明に使用されるノニオン界面活性剤は、特に限定されないが、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシプロピレンアルキル又はアルケニルエーテル類、ポリオキシブチレンアルキル又はアルケニルエーテル類、アルキレンオキシド付加アルキル基又はアルケニル基含有ノニオン界面活性剤混合物、蔗糖脂肪酸エステル類、脂肪族アルカノールアミド類、脂肪酸グリセリンモノエステル類、アミンオキサイド類、酸化エチレン縮合型界面活性剤及びアルキルグリコシド類の中から選ばれる一種又は二種以上が好ましい。特に好ましいノニオン界面活性剤としてアミンオキサイド類が挙げられる。例えば炭素数1〜24の直鎖又は分岐鎖アルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルアミンオキサイドが挙げられる。より好ましいアミンオキサイドとしては、次の一般式(3)で表されるアルキルアミンオキサイドが挙げられる。
【0041】
【化3】

【0042】
上記一般式(3)において、R30 は炭素数8〜24のアルキル基又はアルケニル基であるが、特に炭素数12〜18のアルキル基が好ましい。R31 、R32 は炭素数1〜3のアルキル基であるが、特に炭素数1のメチル基が好ましく、a=0且つb=0のものが好ましい。
【0043】
〈アニオン界面活性剤〉
本発明に使用されるアニオン界面活性剤は特に限定されないが以下のものが挙げられる。
(1) 直鎖又は分岐鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩類であってアルキル基の平均炭素数が8〜18のもの。
(2) ポリオキシアルキレン基を有するアニオン界面活性剤であって、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩など。
(3) アルキル又はアルケニル硫酸塩であって、アルキル基又はアルケニル基の平均炭素数が8〜20のもの。
【0044】
〈カチオン界面活性剤〉
カチオン界面活性剤は特に限定されるものではないが、第4級アンモニウム塩が好ましく、中でも下記の一般式(4)及び(5)から選ばれるカチオン界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0045】
【化4】

【0046】
〔式中、R40は炭素数6〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、R41はメチル基又は炭素数6〜20の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル若しくはアルケニル基を示し、R50は炭素数6〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、X- はハロゲンイオン又はアルキル硫酸残基を示す〕
【0047】
〈両性界面活性剤〉
両性界面活性剤としては、特に限定されないが、本発明においては下記の一般式(6)、(7)、(8)及び(9)で表されるベタイン類から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0048】
【化5】

【0049】
〔式中、R60は炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、R61及びR62は同一又は異なって水酸基が置換していてもよい炭素数1〜5のアルキル基を示し、R80は炭素数7〜21の直鎖又は分岐鎖のアルキル又はアルケニル基を示し、Y は水素原子又は水酸基を示し、r 、s 、及びt は1〜3の数を示し、u は1〜5の数を示し、v は1以上の数を示し、w とx とは0≦w+x≦4である数を示す〕
【0050】
一般式(6)中、R60は洗浄力の点で炭素数8〜18の飽和アルキル基が好ましく、更に10〜16の飽和アルキル基が好ましい。同様の理由でR61、R62は、それぞれメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基が、rは1が好ましい。
【0051】
一般式(7)中、R60は洗浄力の点で、炭素数8〜18の飽和アルキル基が好ましく、更に10〜16の飽和アルキル基が好ましい。同様の理由で、R61、R62はそれぞれメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基が、s は1がt は1が好ましい。
【0052】
また、本発明に使用されるアミドベタイン型両性界面活性剤(8)、(9)においてR80洗浄力の点で炭素数9〜15の飽和アルキル基が好ましい。同様の理由でR61及びR62は、それぞれメチル、エチル又はヒドロキシエチル基が、u は2又は3が、v は1が、w が1が、x は1が好ましい。
【0053】
これらの具体例としては、アルキルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピル−N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルスルホベタイン、アルキルアミドプロピル−N,N−ジメチル−プロピルスルホベタインなどが挙げられるが、洗浄力、起泡力という点で、ラウリン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ミリスチン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、コカミドアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、ラウリン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルベタイン等が好ましい。
【0054】
本発明の硬質表面用洗浄剤は上記成分の他、更に必要に応じて水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカリ剤、塩酸などの無機酸を用いpH調整をしたり、増粘剤、顔料、着色剤、殺菌剤、防腐剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0055】
本発明の硬質表面用洗浄剤は、前記成分を混合することにより製造され、所定のpHに調整される。本発明の洗浄剤は、タイル、セラミック、ホーロー、強化プラスチック(FRP)、ステンレス等からなる住居まわりの各種硬質表面の各種汚れに対する洗浄剤として好適である。
【実施例】
【0056】
実施例1〜12及び比較例1〜6
表1に示した香料組成物を配合して、表2の硬質表面用洗浄剤を調製し、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0057】
(1)香りの安定性
表2の硬質表面用洗浄剤50gを100mlガラス容器2個それぞれにとり、50℃と5℃(コントロール)の温度下に保管する。保管後、2週間経過後と4週間経過後に、50℃で保管した硬質物体表面洗浄剤の香りの質を、5℃で保管した硬質表面用洗浄剤と比較することにより官能評価した。具体的には、10人のパネラーが洗浄剤の香りの変化について官能評価を行った。香りの質に関する官能評価は次の5段階で行った。
1:変化なし
2:やや変化あり
3:変化あり
4:かなり変化あり
5:激しく変化
【0058】
パネラー10人の平均値を算出し、以下の記号で評価結果を示した。香りの安定性に於いては、◎、○のレベルであることが望ましい。
◎:1以上2未満
○:2以上3未満
△:3以上4未満
×:4以上5以下
【0059】
(2)香りの質
香りの質に関しては洗浄剤らしい香り、ここでは「清潔感のある香り」又は「爽やかな香り」について、それぞれの香りのイメージに一致するかどうかを調べた。さらに、これらの香りが空間中でどの程度持続するのかを調べた。
【0060】
具体的な評価は浴室内(奥行き2m×幅2m×高さ2m)の床全面に20mlの洗浄剤を散布し、浴室空間内の香りの質(香りの一致)、持続性について専門パネラー10人で評価した。
【0061】
(2−1)香りの質の一致
洗浄剤散布後の浴室空間内の香りが、それぞれの香りのイメージに一致するかどうかの評価を行った。「清潔感のある香り」又は「爽やかな香り」と評価した人数が6以上8人以下では望ましい香りの質を満たしており、9人以上では更に望ましい質を満たしているといえる。パネラー10人のうち、前記のように評価した人数により以下の記号で表中に記した。
◎:9人以上
○:6人以上8人以下
△:3人以上5人以下
×:2人以下
香りの一致度に於いては、◎、○のレベルであることが望ましい
【0062】
(2−2)香りの拡散性及び持続力
浴室に洗浄剤を散布し、散布後の経時変化を評価した。散布から5分後、30分後、60分後の香りの強さを評価して、5分後の香りの強さを拡散性、30分後、60分後の香りの強さを持続性として性能を調べた。
1.十分強く匂う
2.強く匂う
3.匂う
4.弱く匂う
5.匂わない
【0063】
パネラー10人の平均値により以下の記号で表中に記した。香りの持続力に於いては、30分後までは◎、○のレベル、60分後では△までであることが望ましい。
◎:1以上2未満
○:2以上3未満
△:3以上4未満
×:4以上5以下
【0064】
【表1】

【0065】
*1:〔香料化合物群(A-2)の香料化合物の合計質量〕/〔香料化合物群(A-1)の香料化合物の合計質量〕の質量比
*2:〔香料化合物群(A-2)の香料化合物の合計質量〕+〔香料化合物群(A-1)の香料化合物の合計質量〕の質量%
【0066】
【表2】

【0067】
*3:塩化ジアリルジメチルアンモニウムとマレイン酸(モル比2/1)の共重合体、重量平均分子量6万
*4:塩化ジアリルジメチルアンモニウムとマレイン酸と二酸化硫黄(モル比2/1/1)の共重合体、重量平均分子量3万
【0068】
【表3】

【0069】
表3に示されるように、実施例1〜12の洗浄剤は、香りの安定性が優れている。また洗浄する際の香りの質において、洗浄剤として求められる質である「清潔感」、「爽やかさ」の項目においても高い評価が得られた。
【0070】
一方、比較例1〜6においては香りの安定性が満足できる結果ではなく、保存中中に香りが変化してしまう等の問題が生じた。また変化後の香りは「清潔感」及び「爽やかさ」にはほど遠い香りであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の香料化合物群(A-1)から選ばれる1種以上の香料化合物及び下記の香料化合物群(A-2)から選ばれる1種以上の香料化合物を含む香料組成物、有機酸、並びに水を含有し、20℃におけるpHが1を超え3.5以下の硬質表面用洗浄剤。
〔香料化合物群(A-1)〕
2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、γ-ウンデカラクトン、カシュメラン、ガラクソライド、クマリン、酢酸アニシル、シクロペンタデカノリド、デセノール、フェニル酢酸、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘリオトロピン、メチル β−ナフチルケトン、メチルアトラレート、リラール、リリアール、2,4-ジメチル-4-フェニルテトラヒドロフラン、α−ダマスコン、γ-ノナラクトン、ドデカヒドロ-3a,6,6,9a-テトラメチルナフト[2,1-b]フラン
〔香料化合物群(A-2)〕
2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2,2,5,5-テトラメチル-4-イソプロピル-1,3-ジオキサン、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、2-メチル-2-ペンテノ酸、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル、cis-3-ヘキセノール、l-メントール、l-メントン、n-オクタナール、p-t-ブチルシクロヘキサノン、β-ダイナスコン、γ-ドデカラクトン、アセトキシアミルテトラヒドロピラン、アセトフェノン、アリルアミルグリコレート、イソ酢酸ボルニル、エチル 2-tert-ブチルシクロヘキシルカルボネート、カンファー、ジャスモラクトン、ダマセノン、テトラヒドロリナロール、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルメチルエーテル、ブチルジメチルジヒドロピラン、エチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イルカルボキシレート、ベンズアルデヒド、ボルネオール、マルトール、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチレンテトラメチルヘプタノン、ローズオキサイド、2,6-ジメチルヘプタノール、γ-デカラクトン、クレオゾール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロムゴール
【請求項2】
〔香料化合物群(A-2)の香料化合物の合計質量〕/〔香料化合物群(A-1)の香料化合物の合計質量〕の質量比が1以上である硬質表面用洗浄剤。
【請求項3】
香料化合物群(A-2)から選ばれる香料化合物の合計中、30質量%以上を占める香料化合物を少なくとも1種含有する請求項1又は2に記載の硬質表面用洗浄剤。
【請求項4】
有機酸がクエン酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、乳酸及びグルコン酸から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の硬質表面用洗浄剤。
【請求項5】
有機酸の含有量が硬質表面用洗浄剤中2.5質量%を超える量である請求項1〜4のいずれかに記載の硬質表面用洗浄剤。
【請求項6】
更に、分子中に、アミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を1種以上有するモノマー単位を、全モノマー単位に対して10〜100モル%有し、且つ重量平均分子量が1,000〜100,000である重合体を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の硬質表面用洗浄剤。
【請求項7】
前記重合体のアミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を1種以上有するモノマー単位が、下記一般式(1)で表される化合物及び/又は一般式(2)で表される化合物に由来する請求項6に記載の硬質表面用洗浄剤。
【化1】


〔式中、R1、R2、R3、R7、R8、R9は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。X、Yは、それぞれ独立して、炭素数1〜12のアルキレン基、−COOR12−、−CONHR12−、−OCOR12−、−R13−OCO−R12−から選ばれる基である。ここでR12、R13は、それぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキレン基である。R4は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基又はR12C=C(R3)−X−である。R5は炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、ベンジル基であり、R6はヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、又はベンジル基であり、R6がアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はベンジル基の場合は、Z-は陰イオンを示す。R6がカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基を含む場合、Z-は存在せず、R6中のこれらの基は陰イオンとなる。R10は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR78C=C(R9)−Y−である。R11は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基、ベンジル基である。〕

【公開番号】特開2007−106922(P2007−106922A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300004(P2005−300004)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】