説明

硼素化アミノアルコール化合物、潤滑油用添加剤及び潤滑油組成物

【課題】高温安定性、高温清浄性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性を有する無灰系清浄分散剤として有用な硼素化アミノアルコール化合物、当該化合物を含有する潤滑油用添加剤及び当該添加剤を配合してなる潤滑油組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の硼素化アミノアルコール化合物は、分子内に1以上のアミノ基及び1以上のヒドロキシル基を有するアミノアルコール化合物がさらに硼素を含有することを特徴とする。本発明の潤滑油用添加剤は、本発明の硼素化アミノアルコール化合物を含有することを特徴とする。本発明の潤滑油組成物は、本発明の潤滑油用添加剤を配合してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硼素化アミノアルコール化合物、該化合物を含有する潤滑油用添加剤及び該添加剤を配合してなる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無灰系の清浄分散剤として、コハク酸イミド系及びヒドロキシベンジルアミン系等の化合物が用いられているが、高温における清浄性、安定性が十分でない。
そこで、特許文献1では、アミノアルコール系の化合物を潤滑油添加剤として用いることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−316576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたアミノアルコール系の潤滑油添加剤は、高温清浄性が十分でないため、金属系清浄剤を添加する必要がある。金属系清浄剤を添加すると、パティキュレートトラップや、未燃燃料や潤滑油を酸化する酸化触媒などの排ガス浄化装置のフィルター状構造が金属分によって目詰まり(閉塞)し易いという問題が生じる。さらに、特許文献1には、塩基価維持性に関する記載も無い。
【0005】
本発明は、高温安定性、高温清浄性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性を有する無灰系清浄分散剤として有用な硼素化アミノアルコール化合物、該化合物を含有する潤滑油用添加剤及び該添加剤を配合してなる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下に示す硼素化アミノアルコール化合物、該化合物を含有する潤滑油用添加剤、並びに該添加剤を配合してなる潤滑油組成物を提供するものである。
【0007】
[1] 分子内に1以上のアミノ基及び1以上のヒドロキシル基を有するアミノアルコール化合物がさらに硼素を含有することを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
[2] 上述の[1]に記載の硼素化アミノアルコール化合物において、前記アミノアルコール化合物が(A)エポキシ基を有する化合物と、(B)1級アミノ基及び2級アミノ基の少なくともいずれかを1つ以上有する化合物と、を反応させて得られたアミノアルコール化合物であり、前記(A)化合物の炭素数が6以上40以下であり、前記(B)化合物の総窒素数が1以上10以下であり、かつ、総炭素数が2以上40以下であることを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
[3] 上述の[2]に記載の硼素化アミノアルコール化合物において、前記(A)化合物の総モル数と前記(B)化合物の総モル数との比が0.7:1以上12:1以下の割合であることを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
[4] 上述の[2]または[3]に記載の硼素化アミノアルコール化合物において、前記(A)化合物と前記(B)化合物とを反応させて得られたアミノアルコール化合物のモル数と、硼素含有化合物のモル数との比が、1:0.01以上1:10以下の割合で反応させて得られたことを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
[5] 上述の[2]から[4]までのいずれか一項に記載の硼素化アミノアルコール化合物において、前記(B)化合物が、ポリアルキレンポリアミン、環状アミン、またはポリアルキレンポリアミン及び環状アミンを含む化合物のいずれかであることを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
[6] 上述の[1]から[5]までのいずれか一項に記載の硼素化アミノアルコール化合物を含有することを特徴とする潤滑油用添加剤。
[7] 上述の[6]に記載の潤滑油用添加剤が清浄分散剤であることを特徴とする潤滑油用添加剤。
[8] 上述の[6]または[7]に記載の潤滑油用添加剤を配合してなる潤滑油組成物。
[9] 上述の[8]に記載の潤滑油組成物が内燃機関用潤滑油であることを特徴とする潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温安定性、高温清浄性、塩基価維持性に優れ、かつ微粒子分散性を有する無灰系清浄分散剤として有用な硼素化アミノアルコール化合物、該化合物を含有する潤滑油用添加剤及び該添加剤を配合してなる潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の硼素化アミノアルコール化合物は、分子内に1以上のアミノ基及び1以上のヒドロキシル基を有するアミノアルコール化合物がさらに硼素を含有したものである。
そして、前記アミノアルコール化合物は、
(A)エポキシ基を有する化合物と、
(B)1級アミノ基及び2級アミノ基の少なくともいずれかを1つ以上有する化合物と、
を反応させて得られたものである。
【0010】
エポキシ基を有する化合物((A)化合物)は、炭素数が6以上40以下であることが好ましい。この(A)化合物の炭素数が6以上であれば潤滑油基油などに十分溶解し、炭素数が40以下であれば高塩基価の化合物が得られる。さらにこの(A)化合物の炭化水素基の好ましい炭素数は6以上30以下である。
【0011】
前記(A)化合物はエポキシ基と炭化水素基とが結合していることが好ましいが、前記炭化水素基としては、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、例えば、アルキル基またはアルケニル基が挙げられる。より具体的には、炭化水素基としては、ヘキシル基、ヘキセニル基、オクチル基、オクテニル基、デシル基、デセニル基、ドデシル基、ドデセニル基、テトラデシル基、テトラデセニル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、イソステアリル基、デセントリマー基、ポリブテン基などが挙げられる。
【0012】
エポキシ基を有する前記(A)化合物の具体例としては、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシエイコサン、1,2−エポキシドデセン、1,2−エポキシテトラデセン、1,2−エポキシヘキサデセン、1,2−エポキシオクタデセン、1,2−エポキシ−2−オクチルドデカン等が挙げられる。
【0013】
1級アミノ基及び2級アミノ基の少なくともいずれかを1つ以上有する化合物((B)化合物)は、総窒素数が1以上10以下であり、かつ、総炭素数が2以上40以下であることが好ましい。この総窒素数が10以下であれば、潤滑油基油などに十分溶解する。この総炭素数が2以上であれば、潤滑油基油などに十分溶解し、40以下であれば、高塩基価の化合物が得られる。
このような(B)化合物としては、1級アミン、2級アミン、ポリアルキレンポリアミンが挙げられる。
【0014】
1級アミンは、総炭素数が2以上40以下の炭化水素基を有していることが好ましく、さらに酸素原子を含んでいてもよい。この炭化水素基の総炭素数が2以上であれば潤滑油基油などに十分溶解し、総炭素数が40以下であれば高塩基価の化合物が得られる。
このような炭化水素基としては、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、例えば、アルキル基またはアルケニル基が挙げられる。より具体的には、炭化水素基としては、エチル基、ブチル基、ブテニル基、ヘキシル基、ヘキセニル基、オクチル基、オクテニル基、デシル基、デセニル基、ドデシル基、ドデセニル基、テトラデシル基、テトラデセニル基、ヘキサデシル基、ヘキサデセニル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、イソステアリル基、デセントリマー基、ポリブテン基等などが挙げられる。
1級アミンの具体例としては、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、2−デシルテトラデシルアミン、オレイルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、オクタデシルオキシエチルアミン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン、12−ヒドロキシステアリルアミンを挙げることができる。
【0015】
2級アミンは、その炭化水素基の総炭素数が2以上40以下であることが好ましく、さらに酸素原子を含んでいても良い。このような炭化水素基としては、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。この炭化水素基の総炭素数が2以上であれば潤滑油基油などに十分溶解し、総炭素数が40以下であれば高塩基価の化合物が得られる。
2級アミンの具体例としては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、メチルステアリルアミン、エチルステアリルアミン、メチルオレイルアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、2−ブチルアミノエタノールを挙げることができる。また、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンのように環状の2級アミンも挙げることができる。
【0016】
ポリアルキレンポリアミンは、総窒素数が2以上10以下であり、かつ、1つのアルキレン基の炭素数が1以上6以下である。このポリアルキレンポリアミンは、さらに酸素原子を含んでいても良い。総窒素数が10以下であれば、潤滑油基油などに十分溶解するので好ましい。アルキレン基の炭素数が6以下であれば反応性が十分であり、目的物が得られ易くなり、高温清浄性や塩基価維持性が向上するので、好ましい。
ポリアルキレンポリアミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシルトリアミン、N−ヒドロキシエチルジアミノプロパン等のようなポリアルキレンポリアミン、あるいはアミノエチルピペラジン、1、4−ビスアミノプロピルピペラジン、1−ピペラジンエタノールのように環状のアルキレンアミンを有するポリアルキレンポリアミンを挙げることができる。
【0017】
上記アミノアルコール化合物は、(A)化合物の総モル数と(B)化合物の総モル数との比が、0.7:1以上12:1以下の割合で反応させて得られた化合物であることが好ましく、1:1以上10:1以下の割合で反応させて得られた化合物であることがより好ましい。
ここで、(A)化合物の総モル数と(B)化合物の総モル数との比が、0.7:1以上であれば、高温清浄性、高温安定性及び微粒子分散性に優れた硼素化アミノアルコール化合物が得られる。一方、該総モル数の比が、12:1以下であれば塩基価維持性に優れた硼素化アミノアルコール化合物が得られる。
【0018】
(A)化合物と(B)化合物との反応は、約50℃〜250℃の温度で行うことが好ましく、約80℃〜200℃の温度で行うことがより好ましい。
【0019】
本発明の硼素化アミノアルコール化合物は、上記のようにして得たアミノアルコール化合物に対して、(C)硼素含有化合物を反応させて得られた化合物である。
硼素化アミノアルコール化合物は、該アミノアルコール化合物のモル数と(C)硼素含有化合物のモル数との比が、1:0.01以上1:10以下の割合で反応させて得られた化合物であることが好ましく、1:0.05以上1:8以下の割合で反応させて得られた化合物であることがより好ましい。ここで、該モル数の比が1:0.01以上であれば、高温清浄性及び高温安定性に優れた硼素化アミノアルコール化合物が得られる。一方、該モル数の比が1:10以下であれば、硼素化アミノアルコール化合物の潤滑油基油に対する溶解性についての問題は生じない。
この反応温度は、約50℃〜250℃とするのが好ましく、約100℃〜200℃とするのがより好ましい。反応を行うに際して、溶剤、例えば炭化水素油等の有機溶剤を使用することもできる。(C)硼素含有化合物としては、酸化硼素、ハロゲン化硼素、硼酸、硼酸無水物、硼酸エステルなどを使用することができる。
【0020】
本発明の潤滑油用添加剤は、本発明の硼素化アミノアルコール化合物を含有する。このような本発明の潤滑油用添加剤は、無灰系の清浄分散剤として好適である。
本発明の潤滑油用添加剤には、硼素化アミノアルコール化合物の効果を阻害しない範囲で潤滑油に通常配合される酸化防止剤、耐摩耗剤、他の清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動性向上剤及びその他の添加剤を添加してもよい。
【0021】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の硼素化アミノアルコール化合物または潤滑油用添加剤が、潤滑油基油である炭化水素油や合成油に配合されて調製される。
本発明の潤滑油組成物における本発明の硼素化アミノアルコール化合物または潤滑油用添加剤の配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01質量%以上50質量%以下、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下の範囲で設定される。
また、本発明の硼素化アミノアルコール化合物または潤滑油用添加剤は、燃料油である炭化水素油に加えることもできる。その際、好ましい配合量は、全量基準で、0.001質量%以上1質量%以下の範囲である。
【0022】
潤滑油基油については、一般に潤滑油の基油として用いられるものであればよく、特に制限はないが、100℃における動粘度が1mm/s以上50mm/s以下の範囲にあるものが好ましく、2mm/s以上20mm/s以下の範囲にあるものがより好ましい。また、この基油の低温流動性の指標である流動点については特に制限はないが、通常−10℃以下であることが好ましい。
【0023】
炭化水素油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、芳香族系鉱油などの潤滑油基油でもよいし、ガソリン、灯油、軽油などの燃料油の留分でもよく、溶剤精製、水素化精製または水素化分解などのいかなる精製方法を経たものでも使用することができる。合成油としては、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル油、グリコール系またはポリオレフィン系合成油などを使用することができる。
【0024】
本発明の硼素化アミノアルコール化合物は、高温安定性、高温清浄性、塩基価維持性に優れ、微粒子分散性を有し、低灰分である。そのため、該硼素化アミノアルコール化合物を含有する本発明の潤滑油組成物は、パティキュレートトラップや、未燃燃料や潤滑油を酸化する酸化触媒などの排ガス浄化装置への悪影響を防止でき、将来の排出ガス規制にも対応可能である。
【0025】
本発明の潤滑油組成物は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン及び2サイクルエンジンのような内燃機関用の潤滑油として好適に用いられる他に、ギヤ油、軸受油、変速機油、ショックアブソーバー油あるいは工業用潤滑油としても好適に用いられる。
【0026】
本発明の潤滑油組成物においては、潤滑油に通常配合される酸化防止剤、耐摩耗剤、他の清浄分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、あるいはその他の添加剤を併用してもよく、本発明の硼素化アミノアルコール化合物の効果を阻害するものではない。
【実施例】
【0027】
次に、本発明の実施例を比較例と共に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
【0028】
まず、アミノアルコール化合物の合成について、以下の合成例1〜11に示す。
(合成例1)
200mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシドデカン89.3g(485mmol)、ジエチレントリアミン(DETA)10.0g(97.1mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は99.0gであった。
【0029】
(合成例2)
200mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシヘキサデカン82.2g(342mmol)、トリエチレンテトラミン(TETA)10.0g(68.5mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は92.0gであった。
【0030】
(合成例3)
200mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシヘキサデカン76.2g(317mmol)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)10.0g(53.0mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は86.0gであった。
【0031】
(合成例4)
500mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシドデカンと1,2−エポキシテトラデカンの混合物123.9g(626mmol)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)20.0g(106.0mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は142.0gであった。
【0032】
(合成例5)
200mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシテトラデカン53.9g(254mmol)、N−ヒドロキシエチルジアミノプロパン(HEAP)10.0g(84.7mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は63.3gであった。
【0033】
(合成例6)
200mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシオクタデカン41.6g(155mmol)、1,2−エポキシオクタン9.9g(77.3mmol)、アミノエチルピペラジン(Aep)10.0g(77.5mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は60.3gであった。
【0034】
(合成例7)
200mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシヘキサデカン44.7g(186mmol)、アミノエチルピペラジン(Aep)8.0g(62.0mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は52.4gであった。
【0035】
(合成例8)
500mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシオクタデカン83.2g(310mmol)、アミノエチルピペラジン(Aep)20.0g(155mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は102.0gであった。
【0036】
(合成例9)
500mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシオクタデカン58.5g(218mmol)、モルホリン(Mor)20.0g(230mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は73.3gであった。
【0037】
(合成例10)
100mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシヘキサデカン30.0g(125mmol)、ジヘキシルトリアミン(DHTA)5.4g(25.0mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は33.1gであった。
【0038】
(合成例11)
100mlのセパラブルフラスコに、1,2−エポキシヘキサデカン30.0g(125mmol)、ジプロピルトリアミン(DPTA)3.3g(25.0mmol)、を入れた。130℃〜140℃で2時間反応させた後、170℃まで昇温し、2時間反応させた。反応物を冷却し目的物を得た。得られた目的物の収量は30.3gであった。
【0039】
次に、上記合成例1〜11で得たアミノアルコール化合物を用いて、目的物である硼素化アミノアルコール化合物を合成した。以下の実施例1〜13に示す。
【0040】
(実施例1)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例1で得られた1,2−エポキシドデカンとDETAとの反応物21.0gと150ニュートラル留分の鉱油9.0g、硼酸3.8gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は31.2gであった。
【0041】
(実施例2)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例2で得られた1,2−エポキシヘキサデカンとTETAとの反応物24.0g、150ニュートラル留分の鉱油16.0g、硼酸4.0gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は40.9gであった。
【0042】
(実施例3)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例3で得られた1,2−エポキシヘキサデカンとTEPAとの反応物24.0g、150ニュートラル留分の鉱油16.0g、硼酸4.1gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は41.0gであった。
【0043】
(実施例4)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例4で得られた1,2−エポキシドデカンと1、2−エポキシテトラデカンの混合物とTEPAとの反応物24.0g、150ニュートラル留分の鉱油16.0g、硼酸5.5gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は41.5gであった。
【0044】
(実施例5)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例5で得られた1,2−エポキシテトラデカンとHEAPとの反応物21.0g、150ニュートラル留分の鉱油9.0g、硼酸3.6gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は31.2gであった。
【0045】
(実施例6)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例6で得られた1,2−エポキシオクタデカンと1,2−エポキシオクタンとAepとの反応物18.0g、150ニュートラル留分の鉱油12.0g、硼酸1.7gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は31.0gであった。
【0046】
(実施例7)
硼酸の使用量を3.4gに変更した以外は、実施例6と同様に反応を行った。得られた目的物の収量は31.3gであった。
【0047】
(実施例8)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例7で得られた1,2−エポキシヘキサデカンとAepとの反応物18.0g、150ニュートラル留分の鉱油12.0g、硼酸3.5gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は30.6gであった。
【0048】
(実施例9)
硼酸の使用量を5.3g、鉱油の使用量を12.6gに変更した以外は、実施例8と同様に反応を行った。得られた目的物の収量は32.8gであった。
【0049】
(実施例10)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例8で得られた1,2−エポキシオクタデカンとAepとの反応物14.0g、150ニュートラル留分の鉱油6.0g、硼酸2.5gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は19.3gであった。
【0050】
(実施例11)
200mLのセパラブルフラスコ中に、合成例9で得られた1,2−エポキシオクタデカンとMorとの反応物30.0gと150ニュートラル留分の鉱油20.0g、硼酸3.1gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は50.9gであった。
【0051】
(実施例12)
100mLのセパラブルフラスコ中に、合成例10で得られた1,2−エポキシヘキサデカンとDHTAとの反応物10.0gと150ニュートラル留分の鉱油7.3g、硼酸2.1gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は17.5gであった。
【0052】
(実施例13)
100mLのセパラブルフラスコ中に、合成例11で得られた1,2−エポキシヘキサデカンとDPTAの反応物10.0gと150ニュートラル留分の鉱油7.3g、硼酸2.2gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。得られた目的物の収量は17.6gであった。
【0053】
次に、比較例として評価する比較化合物の合成について、以下に示す。
(比較例1)
2Lオートクレーブ中に、ポリブテン(Mw:987)1,100g、臭化セチル6.4g(0.021mol)、無水マレイン酸115g(1.2mol)を入れ、窒素置換し、240℃で5時間反応させた。215℃に降温し、未反応の無水マレイン酸と臭化セチルを減圧留去し、140℃に降温して濾過した。得られたポリブテニルコハク酸無水物の収量は1,100gであった。
2Lセパラブルフラスコ中に、得られたポリブテニルコハク酸無水物500g、トリエチレンテトラミン(TETA)49.5g(0.34mol)、150ニュートラル留分の鉱油250gを入れ、窒素気流下150℃で2時間反応させた。200℃に昇温し未反応のTETAと生成水を減圧留去し、140℃に降温して濾過した。得られたポリブテニルコハク酸イミドの収量は765gであった。
【0054】
(比較例2)
100mlのセパラブルフラスコに、エチレンジアミン1.56g(26.0mmol)、を入れ、1,2−エポキシオクタン10.0g(78.0mmol)を室温で滴下した。そのまま1時間攪拌後、60℃に昇温し8時間反応した。さらに100℃に昇温し8時間反応した。反応物をトルエンに溶解させ、不溶解分をろ過した。溶媒を留去し目的物を得た。得られた目的物の収量は9.5gであった。
【0055】
(比較例3)
200mLのセパラブルフラスコ中に、比較例1で得られたポリブテニルコハク酸イミド50gと硼酸5.8gを入れ、窒素気流下150℃で4時間反応させた。150℃で生成水を減圧留去し、濾過した。
【0056】
(実施例14〜26及び比較例4〜6)
実施例1〜13で得た硼素化アミノアルコール化合物、及び比較例1〜3で得た比較化合物を用いて潤滑油組成物を調製した。具体的には、500ニュートラル留分の鉱油を90質量%、硼素化アミノアルコール化合物または比較化合物を10質量%の割合で配合して潤滑油組成物を調製した。
調製した潤滑油組成物と、その調製に用いた化合物との対応関係について、実施例または比較例の番号を対応させて、表1に示す。さらに、硼素化化合物の硼素含有量についても表1に示す。硼素含有量は、ICP発光分析装置によって測定した。
【0057】
【表1】

【0058】
調製した潤滑油組成物の性能を、下記に示す条件でホットチューブ試験により評価した。その結果を表2に示す。
【0059】
〔ホットチューブ試験条件〕
内径2mmのガラス管中に供試油0.3ミリリットル/hr、空気10ミリリットル/minをガラス管の温度を270℃に保ちながら16時間流し続けた。ガラス管中に付着したラッカーと色見本とを比較し、透明の場合は10点、黒の場合は0点として評点を付けるとともに、ガラス管に付着したラッカー質量を測定した。評点が高いほど、また、ラッカーが少ないほど高性能であることを示す。
【0060】
前述のホットチューブ試験後の試験油を回収し、塩酸法により塩基価(残存塩基価)を測定した。この残存塩基価と試験前の供試油の塩基価(初期塩基価)を比較し、残存塩基価率(%)をもとにして、塩基価維持性能を評価した。残存塩基価率が高いほど、塩基価維持性能が高いことを示す。算出式は、以下の通りである。
残存塩基価率=(残存塩基価/初期塩基価)×100
【0061】
【表2】

【0062】
本発明の硼素化アミノアルコール化合物は、エポキシ基を有する化合物と、1級アミノ基及び2級アミノ基の少なくともいずれかを1つ以上有する化合物とを反応させたものに、さらに硼素含有化合物とを反応させて得られた化合物である。
実施例14〜26の潤滑油組成物は、このような硼素化アミノアルコール化合物を含んでおり、表2に示すように、ホットチューブ試験における評点が優れ、ラッカー質量が小さく、残存塩基価率が大きかった。つまり、実施例14〜26の潤滑油組成物は、高温における安定性、高温における清浄性、塩基価維持性能にすぐれ、かつ微粒子分散性を有することがわかった。
したがって、本発明の硼素化アミノアルコール化合物は、潤滑油用添加剤として好適であり、特に内燃機関用として好適であり、さらに、この潤滑油用添加剤を含有する潤滑油組成物にも優れた効果を発揮するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に1以上のアミノ基及び1以上のヒドロキシル基を有するアミノアルコール化合物がさらに硼素を含有することを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の硼素化アミノアルコール化合物において、
前記アミノアルコール化合物が(A)エポキシ基を有する化合物と、(B)1級アミノ基及び2級アミノ基の少なくともいずれかを1つ以上有する化合物と、を反応させて得られたアミノアルコール化合物であり、
前記(A)化合物の炭素数が6以上40以下であり、
前記(B)化合物の総窒素数が1以上10以下であり、かつ、総炭素数が2以上40以下である
ことを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の硼素化アミノアルコール化合物において、
前記(A)化合物の総モル数と前記(B)化合物の総モル数との比が0.7:1以上12:1以下の割合である
ことを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の硼素化アミノアルコール化合物において、
前記(A)化合物と前記(B)化合物とを反応させて得られたアミノアルコール化合物のモル数と、硼素含有化合物のモル数との比が、1:0.01以上1:10以下の割合で反応させて得られた
ことを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか一項に記載の硼素化アミノアルコール化合物において、
前記(B)化合物が、ポリアルキレンポリアミン、環状アミン、またはポリアルキレンポリアミン及び環状アミンを含む化合物のいずれかである
ことを特徴とする硼素化アミノアルコール化合物。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の硼素化アミノアルコール化合物を含有する
ことを特徴とする潤滑油用添加剤。
【請求項7】
請求項6に記載の潤滑油用添加剤が清浄分散剤である
ことを特徴とする潤滑油用添加剤。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の潤滑油用添加剤を配合してなる潤滑油組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の潤滑油組成物が内燃機関用潤滑油である
ことを特徴とする潤滑油組成物。

【公開番号】特開2012−193129(P2012−193129A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56632(P2011−56632)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】