説明

確定的内胚葉細胞の肝分化のための方法

本発明は、肝特異化を刺激する培養培地を用いて確定的内胚葉細胞を培養するステップを含む、肝前駆細胞の集団を得るための方法に関する。特定の実施態様では、このような肝特異化を刺激する培養培地は、レチノイン酸レセプター(RAR)アゴニスト、FGFファミリー成長因子及びアクチビンシグナリング経路の阻害剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝特異化を刺激する培養培地を用いて確定的内胚葉細胞を培養するステップを含む、肝前駆細胞の集団を得るための方法に関する。特定の実施態様では、このような肝特異化を刺激する培養培地は、レチノイン酸レセプター(RAR)アゴニスト、FGFファミリー成長因子及びアクチビンシグナリング経路の阻害剤を含む。
【0002】
背景技術:
肝疾患は、発展途上国における死亡の最も多い原因の1つになっている。現在、同所性肝移植は、唯一利用可能な処置である。しかしながら、適切なドナー肝臓の不足により、肝移植の順番待ちリストに載っている最中に死亡する患者の数は、増加している(Fox and Roy-Chowdhury, 2004)。最近、肝細胞移植は、急性不全及び生命を脅かす代謝性肝疾患の処置のための同所性肝移植の代替手段となっている(Puppi and Dhawan, 2009)。しかしながら、機能的ヒト肝細胞はin vitroで増殖できず、低温保存することが困難なので、この戦略も、ドナーの不足によって、及び、限られた数の細胞によって制限されている。主要な肝臓細胞の代表的なものである肝細胞をターゲティングするこの疾患群は、遺伝性代謝異常(例えば、クリグラー・ナジャー症候群I型、グリコーゲン貯蔵病、尿素サイクル異常症、家族性高コレステロール血症及びチロシン血症)、慢性肝不全及び急性肝不全を包含し、これらに関して、肝細胞移植物は、器官移植への橋渡しとして注入され得る。従って、in vitroで増殖する能力及び肝臓特異的機能を発現する能力を有する肝細胞を作製するための他の起源の細胞を調査することは、依然として主な目的である。
【0003】
ヒト胚性幹細胞(hES)及びヒト誘導多能性幹細胞(hiPS)は、細胞に基づいた治療に関して、有利な起源の細胞の代表的なものである。それらの自己複製能力は、肝臓細胞を含む多数の広範な細胞型に分化する性質を維持しながら、in vitroでほぼ無制限に成長する能力をそれらに与える。いくつかのグループが、様々な培養システムを使用した、hES細胞の肝細胞様細胞への分化を既に報告している(Chiao et al., 2008; Duan et al., 2007; Lavon et al., 2004; Rambhatla et al., 2003; Schwartz et al., 2005; Shirahashi et al., 2004)。しかしながら、これらのアプローチは全て、血清、複合マトリックス(例えば、マトリゲル)及び動物性産物を含む培養培地に基づいている。これらの全ては、発生機序の分析を曖昧なものにし得るか、又は得られた組織を将来の臨床応用に不適合なものにし得る未知の因子を起源とするものである。より重要なことに、これらのアプローチを使用して作製した肝細胞の機能性は、依然としてin vivoで実証されておらず、in vitroにおける完全に分化した肝細胞の作製は、依然として主な問題の代表的なものである。
【0004】
従って、確定的内胚葉細胞から肝前駆細胞の集団を高効率で得る方法の必要性が、当技術分野において依然として存在する。実際、確定的内胚葉細胞から肝前駆細胞を分化させるための定義された培養条件の知見は、肝疾患の細胞に基づいた治療に適合する完全に機能的な肝臓細胞の作製へ向けた大きな一歩を示す。
【0005】
発明の概要:
本発明は、肝特異化を刺激する培養培地を用いて確定的内胚葉細胞を培養するステップを含む、肝前駆細胞の集団を得るための方法に関する。
【0006】
発明の詳細な説明:
本発明者らは、細胞に基づいた治療ための得られた細胞の使用を害し得る動物性産物又は未知の因子を含まない完全に定義された培養システムを使用して、確定的内胚葉細胞の肝前駆細胞への分化を誘導する新たな培養システムを開発した。重要なことに、このアプローチは、ネイティブな性質を有する分化した細胞を作製するための最良のアプローチを提供し得る肝臓発生の主要段階を尊重することによって、開発の自然な道を行く。従って、確定的内胚葉細胞は、肝前駆体に分化し得、これは、次いで胎児肝細胞、そしてin vitro及びin vivoで機能性を示す完全に分化した肝細胞にさらに成熟し得る。
【0007】
定義:
本明細書において使用される「確定的内胚葉細胞」という用語は、典型的には以下のマーカーSox17、GSC、Mixl1、Lhx1、CXCR4、GATA6、Eomes及びHexを発現する細胞を意味する。さらに、このような確定的内胚葉細胞は、Sox7などの追加の胚マーカー及びSox2などの神経外胚葉マーカーを発現しない。
【0008】
本明細書において使用される「肝前駆細胞」、「肝芽細胞」及び「肝前駆体」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。それらは、αフェトプロテイン(AFP)、アルブミン(Alb)、サイトケラチン19(CK19)及び肝細胞核因子4α(HNF4α)を含むがこれらに限定されない特徴的な生化学的マーカーを発現できる細胞を意味する。このような細胞は、胎児肝細胞又は胆管細胞のいずれかに分化し、両系列のマーカー(すなわち、胆管細胞の特異的マーカーである上記CK19;胎児肝細胞の特異的マーカーであるHNF4α及びAFP)を発現し得る。
【0009】
本明細書において使用される「胎児肝細胞」という用語は、肝細胞系列に従事し、成熟肝細胞を生じさせ得る細胞を意味する。典型的には、胎児肝細胞は、以下のマーカー:アルブミン、AFP、CK18、CK8、アポリポタンパク質AII、トランスセリシン(Transtherythin)、α−1−抗トリプシン、HNF4α、HNF3β、β1−インテグリン、c−Met、RLDL、Cyp3A7、ASGRを発現する。インドシアニングリーンを取り込み、そして分泌する能力もまた、肝細胞の典型である。さらに、このような胎児肝細胞は、立方形の形状を有する。
【0010】
本明細書において使用される「成熟肝細胞」又は「肝臓細胞」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。それらは、LDLを取り込んで、グリコーゲンを貯蔵し、アルブミン及び尿素を分泌できる細胞を意味する。典型的には、成熟肝細胞は、以下のマーカー:アルドラーゼB、アルブミン、Glut4、TAT、TO、解毒期Iに関するタンパク質:シトクロムP450、CYP3A4、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9、CYP2E1及び解毒期IIに関するタンパク質:BilUGTならびに胆汁酸トランスポーターを発現する。
【0011】
本明細書において使用される「胆管細胞(cholangiocytes)」、「胆道細胞(biliary cells)」、「胆管上皮細胞」及び「胆管細胞(bile duct cells)」という用語は、本明細書において交換可能に使用される。それらは、胆管の上皮細胞を意味し、リン脂質及び胆汁塩の放出によって胆汁分泌に寄与する。典型的には、胆管細胞は、以下のマーカー:CK14、CK19、CK7及びインテグリンβ4を発現する。
【0012】
本明細書において使用される「多能性幹細胞」という用語は、3個の胚葉:内胚葉(胃内膜、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、尿生殖路)又は外胚葉(表皮組織及び神経系)のいずれかに分化する可能性を有する未分化の細胞を意味する。従って、多能性幹細胞は、あらゆる胎児又は成熟細胞型を生じさせ得る。しかしながら、それらは、胎盤などの胚外組織に寄与する可能性がないので、単独では胎児又は成体動物に成長し得ない。典型的には、多能性幹細胞は、以下のマーカーOct4、Sox2、Nanog、SSEA3及び4、TRA1/81を発現し得る(International Stem Cell Initiative recommendations, 2007を参照)。
【0013】
本明細書において使用される「胚性幹細胞」又は「ES細胞」又は「ESC」という用語は、多能性であり、あらゆる成体細胞を形成する能力を有する細胞を意味する。ES細胞は、1週齢未満の受精胚から生じる。(Chung et al., 2008; Revazova et al., 2007)に記載されているように、例えば、ヒト胚性幹細胞は、胚破壊を含まないプロトコールに従って得られ得る。
【0014】
本明細書において使用される「誘導多能性幹細胞」又は「iPS細胞」又は「iPSC」という用語は、非多能性細胞(例えば、成体体細胞)から人工的に生じる種類の多能性幹細胞を意味する。誘導多能性幹細胞は、あらゆる成体細胞を形成する能力を有する点で胚性幹細胞と同一であるが、胚から生じない。典型的には、誘導多能性幹細胞は、あらゆる成体体細胞(例えば、線維芽細胞)におけるOct3/4、Sox2、Klf4及びc−Myc遺伝子の誘導異所性発現を通じて得られ得る。
【0015】
例えば、ヒト誘導多能性幹細胞(hiPS)は、(Takahashi et al., 2007; Yu et al., 2007)によって記載されているプロトコールに従って得られ得るか、又はこれらの元のプロトコールにおいて細胞を再プログラム化するのに使用される1つもしくはその他の薬剤が、iPS系の起源である体細胞に作用するかもしくは移される任意の遺伝子もしくはタンパク質によって置換されている任意の他のプロトコールに従って得られ得る。基本的には、成体体細胞は、Oct3/4、Sox2、Klf4及びc−Myc遺伝子を含む、レトロウイルスなどのウイルスベクターを用いてトランスダクションされる。
【0016】
本明細書において使用される「多分化能幹細胞」という用語は、複数の、しかし限られた数の系列から細胞を生じさせる可能性を有する幹細胞を意味する。
【0017】
例えば、本発明の方法において使用され得る成体ヒト幹細胞は、多能性間葉系間質細胞(MSC)、成体多系列誘導性(MIAMI)細胞(adult multilineage inducible cells)(D'Ippolito et al., 2004; Reyes et al., 2002)、MAPC(MPCとしても知られる)、臍帯血に由来する幹細胞(Kogler et al., 2004)及び中胚葉性血管芽細胞(Dellavalle et al., 2007; Sampaolesi et al., 2006)を含むがこれらに限定されない。本明細書において使用される「多能性間葉系間質細胞」、「間葉幹細胞」又は「MSC」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、主に骨髄(Jiang et al., 2002)及び脂肪組織(adipose tissue)(Aurich et al., 2009)(又は脂肪組織(fat tissue))から単離されるが、滑膜、骨膜又は胎盤などの他の組織においても同定されている細胞を意味する。これらの細胞は、プラスチックに接着するそれらの性質、それらの表現型及び3個の異なる系列(軟骨細胞、骨芽細胞及び脂肪細胞)に分化するそれらの能力によって特徴付けられる。
【0018】
本明細書において使用される「培養培地」という用語は、確定的内胚葉細胞の肝前駆細胞への成長及び分化を補助できる任意の培地を意味する。確定的内胚葉細胞の肝前駆細胞への成長及び分化を補助するであろう好ましい培地製剤は、化学的に定義された培地(CDM)を含む。
【0019】
本明細書において使用される「化学的に定義された培地」(CDM)という用語は、特定成分、好ましくは既知の化学構造の成分だけを含む、細胞を培養するための栄養液を意味する。化学的に定義された培地は、無血清かつフィーダーフリーの培地である。
【0020】
本明細書において使用される「無血清」は、添加血清を含まない培養培地を意味する。
【0021】
本明細書において使用される「フィーダーフリー」は、添加フィーダー細胞を含まない培養培地を意味する。フィーダーフリーという用語は、とりわけ、たとえ第一の培養物に由来するフィーダーの一部が第二の培養物中に存在するとしても、確定的内胚葉がフィーダーを含む培養物から添加フィーダーを含まない培養培地に移されるという状態を包含する。
【0022】
従って、化学的に定義された培地は、ウシ胎仔血清(FBS)、ウシ血清アルブミン(BSA)などの非ヒト動物に由来する成分及びマウスフィーダー細胞のような動物フィーダー細胞を含まない。
【0023】
好適なCDMは、ヒト化Johansson and Wiles CDMを含む。ヒト化Johansson and Wiles CDMは、(Johansson and Wiles, 1995)に記載されており、インスリン、トランスフェリン及びポリビニルアルコール(PVA)に添加され得る既知の脂質がウシ血清アルブミン(BSA)の代わりに補充されている。本明細書において使用される「CDM−PVA」は、ウシ又はヒト血清アルブミンの代わりにポリビニルアルコール(PVA)を含むJohansson及びWilesの化学的に定義されたヒト化培地を意味する。
【0024】
従って、本発明による適切なCDMは、7μg/mlのインスリン(例えば、Roche製、サンドホーファー、ドイツ)、15μg/mlのトランスフェリン(例えば、Roche製)、450μMのモノチオグリセロール(例えば、Sigma-Aldrich製、サン・クエンティン、フランス)及び1mg/mlのポリビニルアルコール(PVA;例えば、Sigma製)が補充された50%IMDM(例えば、Invitrogen製、セルジー、フランス)ならびに50%F12 NUT MIX(例えば、Invitrogen製)でなり得る。
【0025】
本明細書において使用される「肝特異化を刺激する培養培地」という表現は、αフェトプロテイン(AFP)、アルブミン(Alb)及び肝細胞核因子4a(HNF4α)などの肝臓マーカーの発現を誘導できる培養培地を意味する。
【0026】
本明細書において使用される「マーカー」という用語は、細胞表面上でもしくは細胞中で発現しているタンパク質、糖タンパク質又は他の分子を意味し、これらは、細胞を同定するのを補助するのに使用され得る。一般的に、マーカーは、従来の方法によって検出され得る。細胞表面マーカーの検出に使用され得る方法の限定されない具体例は、免疫細胞化学、蛍光活性化細胞分類(FACS)及び酵素分析である。
【0027】
本明細書において使用される「ほぼ均一な集団」という用語は、全細胞数の大半(例えば、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%)が、関心対象の肝前駆体の特定の特性を有する細胞の集団を意味する。
【0028】
「レセプター」又は「レセプター分子」は、リガンドが結合して、レセプター−リガンド複合体を形成する1つ以上のドメインを含む可溶性もしくは膜結合性/関連タンパク質又は糖タンパク質である。アゴニスト又はアンタゴニストであり得るリガンドに結合することによって、レセプターは、活性化されるか又は不活性化され、経路シグナリングを開始又は遮断し得る。
【0029】
「レセプターアゴニスト」は、レセプターに結合して、レセプター−アゴニスト複合体を形成し、前記レセプター及びレセプター−アゴニスト複合体をそれぞれ活性化させることによって、経路シグナリング及びさらなる生物学的過程を開始させる天然又は合成化合物である。
【0030】
「レセプターアンタゴニスト」又は「レセプター阻害剤」は、レセプターアゴニストの生物学的効果とは反対の生物学的効果を有する天然又は合成の化合物を意味する。この用語は、「真の」アンタゴニスト及びレセプターの逆アゴニストを意味するのに区別なく使用される。「真の」レセプターアンタゴニストは、レセプターに結合し、レセプターの生物学的活性化を阻害し、それによって例えば、前記レセプターに対するアゴニストと競合することによってレセプターアゴニストの作用を阻害する化合物である。逆アゴニストは、アゴニストと同一のレセプターに結合するが、逆の効果を発揮する化合物である。逆アゴニストは、アゴニストの非存在下においてレセプター活性化の構成的レベルを減少させる能力を有する。
【0031】
本明細書において使用される「病態」という用語は、肝損傷に関連するあらゆる疾患又は症状を意味する。「肝損傷に関連する病態」という用語は、肝損傷、傷害、機能不全、欠陥又は異常によって特徴付けられるあらゆる疾患又は臨床症状を意味する。従って、この用語は、例えば、傷害、変性疾患及び遺伝性疾患を包含する。ある実施態様では、関心対象の病態は、代謝性疾患、急性肝不全、慢性肝炎を含む遺伝性疾患である。
【0032】
本明細書において使用される「被験体」という用語は、肝損傷に関連する病態に罹患している可能性があるが、この病態を有していても有していなくてもよい、哺乳動物、好ましくはヒトを意味する。
【0033】
本発明の文脈において、本明細書において使用される「処置する」又は「処置」という用語は、病態の発症を遅延もしくは予防すること、病態の症状の進行、増悪もしくは悪化を逆行、寛解、阻止、減速もしくは停止すること、病態の症状の回復をもたらすこと、及び/又は病態を治癒することを目的とした方法を意味する。
【0034】
肝前駆細胞を得るための方法:
第一の態様において、本発明は、肝特異化を刺激する培養培地を用いて確定的内胚葉細胞を培養するステップを含む、肝前駆細胞の集団を得るための方法に関する。
【0035】
典型的には、前記確定的内胚葉細胞は、多能性幹細胞又は多分化能幹細胞の分化から得られる。
【0036】
一実施態様では、確定的内胚葉細胞は、ヒト確定的内胚葉細胞である。一実施態様では、前記ヒト確定的内胚葉細胞は、国際特許出願WO 2008/056166に記載されている方法に従って、ヒト胚性幹細胞(ES)又はヒト誘導多能性細胞(iPS)などの多能性幹細胞から得られる。特に、確定的内胚葉細胞は、ES又はiPSを、アクチビン5〜20ng/ml、好ましくは10ng/ml及びFGF2 1〜50ng/ml、好ましくは12ng/mlが補充されたCDM−PVA中で、1〜4日間、好ましくは2日間;次いで、アクチビン1〜200ng/ml、好ましくは100ng/ml、FGF2 1〜100ng/ml、好ましくは20ng/ml、BMP4 1〜100ng/ml、好ましくは10ng/ml及びLY294002 10μMが補充されたCDM−PVA中で、1〜5日間、好ましくは3日間培養することによって得られ得る。
【0037】
別の実施態様では、前記ヒト確定的内胚葉細胞は、臍帯血幹細胞などの多分化能幹細胞から得られる。
【0038】
一実施態様では、多能性幹細胞又は多分化能幹細胞は、遺伝性肝疾患の原因となる遺伝子突然変異を含む。有利なことに、この実施態様では、前記多能性幹細胞又は多分化能幹細胞から得られる肝前駆細胞の集団も前記突然変異を含み、従って、疾患の良い細胞モデルを提供し得る。
【0039】
一実施態様では、肝特異化を刺激する培養培地は、RARアゴニストを含む。
【0040】
本明細書において使用される「RARアゴニスト」という用語は、レチノイン酸レセプターの活性化の増加をもたらす天然又は合成の任意の化合物を意味する。
【0041】
実際には、レチノイドレセプターは、レチノイン酸レセプター(RAR)及びレチノイドXレセプター(RXR)(それぞれが3個の異なるサブタイプからなる)という2個のファミリーに分類される。RAR遺伝子ファミリーの各サブタイプは、2個の一次RNA転写産物のディファレンシャルなスプライシングから生じる変化する数のアイソフォームをコードする。オールトランス型レチノイン酸(ATRA)は、レチノイン酸レセプターの生理的なホルモンであり、ほぼ等しい親和性で3個のRARサブタイプの全てに結合する。ATRAは、RXRレセプターに結合せず、従って、選択的RARアゴニストではない。「RAR選択的アゴニスト」は、RARを活性化するが、RXRの活性化をほとんど示さないかもしくは全く示さないか、又はRXRを実際に阻害する化合物を意味する。特に、「選択的」は、レチノイン酸レセプター(RAR)に対するアゴニストの親和性が、レチノイドXレセプター(RXR)に対する親和性よりも少なくとも25倍、好ましくは50倍、より好ましくは100倍高いことを意味し得る。
【0042】
RARのアゴニストの選択性は、例えば、UMSCC10B、UMSCC11B、UMSCC14B、UMSCC17A、UMSCC17B、UMSCC22A及びUMSCC22B(Krause et al., 1981)、UMSCC38及び183A(Grenman et al., 1991)、MDA886Ln(Sacks et al., 1989)、1483(Sacks et al., 1988)、SqCC/Y1(Reiss et al., 1985)、TR146(Rupniak et al., 1985)などのヒト頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)細胞株の成長阻害を前記化合物が誘導するかを決定することによって、アッセイされ得る。実際、RAR選択的レチノイドは、これらのHNSCC細胞株の大部分の成長を阻害するのに活性があったが、RXR選択的アゴニストは、これらの細胞株の全てに対する弱い阻害効果を示すか、又は全く示さなかったことが見出された(Sun et al., 2000)。
【0043】
(38)に記載されているように、RAR又はRXR選択性は、レセプター結合、トランス活性化及びRXRホモ二量体形成を誘導する能力を測定することによっても、アッセイされ得る。
【0044】
本発明の一実施態様では、RARアゴニストは、選択的RARアゴニストである。この実施態様によれば、選択的RARアゴニストは、オールトランス型レチノイン酸(RA)、パンRARアゴニスト(すなわち、α、β及びγアイソタイプのRARを活性化する化合物)、LGD1550、E6060、選択的RARアゴニスト(例えば、CD336(Am580)、AGN193312、Am555S、Am80、CD2314、AGN193174、LE540、CD437、CD666、CD2325、SR11254、SR11363、SR11364、AGN193078、TTNN(Ro19−0645)、CD270、CD271、CD2665、SR3985、AGN193273、Ch55、2AGN190521、CD2366、AGN193109、Re80(Sun et al., 1997))からなる群より選択される。RARアゴニストは、Ro40−6976、Ro13−7410(TTNPB)、Ro11−0874、Ro04−3780(13−シス−RA)、Ro11−4824(4−オキソ−RA)、Ro11−1813、Ro08−8717、Ro10−0191、Ro10−2655(4−ヒドロキシ−RA)及びRo11−0976(Crettaz et al., 1990)、又はRo40−6055及びRo41−5253(Horn et al., 1996)又はCD2019でもあり得る。
【0045】
好ましい実施態様では、RARアゴニストは、ビタミンAの酸性型であるオールトランス型レチノイン酸(ATRA)である。
【0046】
肝特異化を刺激する培養培地中のRARアゴニストの濃度は、10−8M〜10−6M、好ましくは約10−7Mであり得る。
【0047】
別の実施態様では、肝特異化を刺激する培養培地は、FGFファミリー成長因子及びアクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤をさらに含む。
【0048】
本明細書において使用される「FGFファミリー成長因子」という用語は、1つの線維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)に結合することによって、細胞の成長、増殖及び細胞の分化を刺激できる天然に存在する任意の物質(例えば、タンパク質)を意味する。1つのFGFRに結合することによって、この物質は、例えば、前記レセプターのチロシンリン酸化を増加させる。
【0049】
本発明の一実施態様では、FGFファミリー成長因子は、FGF7(KGFとしても知られる)、FGF10及びFGF22からなる群より選択され、これらの3個の成長因子は、好ましくは、上皮細胞によって発現されるケラチノサイト成長因子レセプター(KGFR)及び線維芽細胞成長因子レセプターに結合するので(FGF10に関してのみ、FGFR2−IIb及びFGFR1B)、FGFファミリーメンバーの中でサブファミリー(FGF7サブファミリー(Yeh et al., 2003))を構成する。
【0050】
別の実施態様では、FGFファミリー成長因子は、FGF10様活性(例えば、FGF10模倣)を有する物質である。このような物質は、レセプターFGFR2bがノックアウトされた細胞においてFGF10シグナリングを修復するそれらの能力、又はLPS、PamCys−Ser−(Lys)及びスプラウティ(Sprouty)(Spry)タンパク質などのFGFR2bの阻害剤と接触された細胞の表面においてFGFR2bを活性化するそれらの能力に関して化合物をスクリーニングすることによって、同定され得る。
【0051】
好ましい実施態様では、FGFファミリー成長因子は、FGF10である。FGF10は、AutogenBioclearから購入され得る。典型的には、FGFファミリー成長因子、特にFGF10は、1〜200ng/ml、好ましくは20〜100ng/mlの範囲及び好ましくは約50ng/mlの濃度で本発明の培養培地に添加される。
【0052】
本明細書において使用される「アクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤」という用語は、アクチビン/Nodalシグナリング経路(これは、アクチビンファミリーの任意のメンバーが細胞表面レセプターに結合することの結果として発生される一連の分子シグナルである)の活性化の減少をもたらす任意の天然又は合成の化合物を意味する。典型的には、アクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤は、タンパク質Smad2のリン酸化のレベルの減少を引き起こす(Shi and Massague, 2003)。
【0053】
アクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤は、アクチビン/Nodalアンタゴニスト又は、アクチビン/Nodalシグナリング経路の任意の下流ステップを阻害する分子であり得る。アクチビン/Nodalシグナリングの阻害剤は、天然又は合成の化合物であり得る。アクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤がタンパク質である場合、それは、精製タンパク質又はリコンビナントタンパク質又は合成タンパク質であり得る。
【0054】
リコンビナントタンパク質を製造するための方法は、当技術分野において公知である。当業者であれば、既知のタンパク質の配列又は前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列の知識から、標準分子生物学及び生化学技術を使用して、前記タンパク質を容易に製造できる。
【0055】
本発明の一実施態様では、アクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤は、SB431542、レフティーA、ケルベロス、ココ(アクセッションナンバーGenBank22749329又はNCBI NP_689867.1)ならびに、アクチビンシグナリング経路を阻害するレフティーA及びケルベロスの誘導体からなる群より選択される。ケルベロスのこのような誘導体の例は、切断ケルベロス(truncated Cerberus)(Cerb−S)(Smith et al, 2008)、N末端において残基106〜119(含む)のどこかから始まり残基241の後のどこかで終わるヒトケルベロス(アクセッションナンバーNCBI NP_005445)のフラグメント、及び、N末端において残基106〜119(含む)のどこかから始まり残基241の後のどこかで終わるマウスケルベロス(アクセッションナンバーNCBI NP_034017)のフラグメントである。
【0056】
好ましい実施態様では、アクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤は、Tocris及びSigmaから購入され得るSB431542としても知られる4−(5−ベンゾール[1,3]ジオキソール−5−イル−4−ピロリジン(pyrlidn)−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンズアミド水和物である。典型的には、SB431542は、1〜100μM、好ましくは5〜25μMの範囲、さらに好ましくは約10μMの濃度で本発明の培養培地に添加される。
【0057】
好ましくは、肝特異化を刺激する培養培地は含む。肝特異化を刺激する培養培地は、上記RARアゴニスト、FGFファミリー成長因子及びアクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤が補充された50%IMDM及び50%F12 NUT、インスリン7μg/ml、トランスフェリン15μg/ml、モノチオグリセロール450μMならびにポリビニルアルコール(PVA)1mg/mlからなるCMD−PVA基本培地を含み得る。
【0058】
好ましくは、肝特異化を刺激する培養培地は:
− 10−8M〜10−6M、好ましくは約10−7MのRARアゴニスト、特にATRA;
− 1〜200ng/ml、好ましくは20〜100ng/ml、さらに好ましくは約50ng/mlの、FGF7、FGF10及びFGF22からなる群より選択されるFGFファミリー成長因子、好ましくはFGF10;ならびに
− 1〜100μM、好ましくは5〜25μM、さらに好ましくは約10μM SB431542
を含む。
【0059】
さらに好ましくは、肝特異化を刺激する培養培地は:
− 10−8M〜10−6M、好ましくは約10−7MのRARアゴニスト、特にATRA;
− 1〜200ng/ml、好ましくは20〜100ng/ml、さらに好ましくは約50ng/mlの、FGF7、FGF10及びFGF22からなる群より選択されるFGFファミリー成長因子、好ましくはFGF10;ならびに
− 1〜100μM、好ましくは5〜25μM、さらに好ましくは約10μM SB431542が補充された基本培地CMD−PVA
を含む。
【0060】
肝特異化を刺激する培養培地を用いて確定的内胚葉細胞を培養するステップは、確定的内胚葉細胞の肝特異化に要する必要時間実施されるべきである。この培養ステップの継続時間は、当業者によって容易に決定され得る。例えば、培養中、当業者であれば、確定的内胚葉細胞において特異的に発現しているマーカー(例えば、Sox17、GSC、Mixl1、Lhx1、CXCR4、GATA6、Eomes及びHex)の発現の非存在に関して、及び/又は、肝前駆細胞によって特異的に発現されているマーカー(例えば、αフェトプロテイン(AFP)、アルブミン(Alb)、サイトケラチン19(CK19)及び肝細胞核因子4α(HNF4α))の発現に関して、培養細胞をモニタリングできる。確定的内胚葉細胞に特異的なマーカーの少なくとも1つ、好ましくはいくつかの発現が検出され得ないか、及び/又は、肝前駆細胞に特異的なマーカーの少なくとも1つ、好ましくはいくつかの発現が検出される場合、肝特異化を刺激する培養培地を用いて培養する段階は、中止され得る。本発明を例示する以下の実施例に示されるように、これらのマーカーのモニタリングは、例えば、特異的プライマーを用いた培養細胞から抽出されたRNAのRT−PCR分析、マーカーに特異的な抗体を用いた免疫蛍光分析及びFACSを使用して、実施され得る。典型的には、前記肝特異化を刺激する培地を用いた確定的内胚葉細胞の培養は、少なくとも2日間、好ましくは少なくとも3日間、特により好ましくは少なくとも5日間実施され得る。一実施態様によれば、前記肝特異化を刺激する培地を用いた確定的内胚葉細胞の培養は、2〜5日間、特に2又は3日間実施される。
【0061】
本発明の培養培地は、一定の間隔で部分的又は全体的に取り換えられなければならない。典型的には、本発明の培養培地は、本発明の新鮮な培養培地と1日おきに置き換えられ得る。
【0062】
培養は、タンパク質、ペプチド又は細胞接着を助ける分子(例えば、フィブロネクチン、コラーゲン又はゼラチン)でコーティングされた支持体(プレート、フラスコなど)において実施され得る。
【0063】
好ましい一実施態様では、確定的内胚葉細胞は、肝特異化を刺激する培養培地を用いてそれらを培養する前に、FGFファミリー成長因子と一緒にあらかじめ培養される。従って、この実施態様では、確定的内胚葉細胞は、第一のステップa)においてFGFファミリー成長因子と一緒に培養され、次いで第二のステップb)において、ステップa)において培養された細胞は前記肝特異化を刺激する培養培地を用いて培養される。
【0064】
この実施態様によれば、FGFファミリー成長因子は、FGF10である。典型的には、FGF10は、1〜100ng/mlの範囲、好ましくは約50ng/mlの濃度で本発明の培養培地に添加される。
【0065】
典型的には、前記FGFファミリー成長因子と一緒にする確定的内胚葉細胞の培養は、少なくとも2日間、好ましくは少なくとも3日間、特により好ましくは少なくとも5日間実施され得る。例えば、前記FGFファミリー成長因子と一緒にする確定的内胚葉細胞の培養は、2〜10日間、好ましくは2〜5日間、さらに好ましくは3日間実施され得る。本発明の培養培地は、一定の間隔で(例えば、毎日)部分的又は全体的に取り換えられ得る。
【0066】
上記方法によって作製される肝前駆細胞は、任意の適切な方法(例えば、フローサイトメトリー)を使用して、単離及び/又は精製され得る。
【0067】
肝前駆細胞は、例えば、培養物中で展開もしくは増殖され得るか、又は臨床応用に使用され得る。
【0068】
いくつかの実施態様では、肝前駆細胞は、関心対象の核酸を用いてさらに遺伝的に改変され得る。従って、改変された肝前駆細胞は、核酸を送達するためのベクターとして有用であり得る。
【0069】
他の実施態様では、肝前駆細胞は、さらに分化され得る。
【0070】
従って、本発明の確定的内胚葉細胞に由来する肝前駆細胞の集団は、胎児肝細胞を得るのに好適であり得る。
【0071】
胎児肝細胞を得るための方法:
従って、本発明の第二の態様は、
a.本発明の方法に従って肝前駆細胞の集団を作製するステップ、及び
b.前記肝前駆細胞の集団を胎児肝細胞に分化させるステップ
を含む、胎児肝細胞の集団を得るための方法に関する。
【0072】
好ましい一実施態様では、肝前駆細胞の集団を胎児肝細胞に分化させるステップは、FGFファミリー成長因子、EGFシグナリング経路のアゴニスト及びHGFシグナリング経路のアゴニストを含む培養培地を用いて前記肝前駆細胞を培養することによって実施される。
【0073】
胎児肝細胞を得るための方法に関連して使用される「FGFファミリー成長因子」という用語は、1つの線維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)に結合することによって、細胞の成長、増殖及び細胞の分化を刺激できる天然に存在する任意の物質(例えば、タンパク質)を意味する。1つのFGFRに結合することによって、この物質は、例えば、前記レセプターのチロシンリン酸化を増加させる。
【0074】
一実施態様では、FGFファミリー成長因子は、FGF4(ヘパリン分泌形質転換タンパク質1又はカポジ肉腫ガン遺伝子としても知られる)である。典型的には、FGF4は、1〜100ng/ml、好ましくは1〜50ng/mlの範囲、さらに好ましくは約30ng/mlの濃度で本発明の培養培地に添加される。FGF4は、Peprotechから購入され得る。
【0075】
本明細書において使用される「EGFシグナリング経路のアゴニスト」という用語は、EGFの細胞膜レセプターである上皮成長因子レセプター(EGFR)の活性化の増加をもたらす天然又は合成の任意の化合物を意味する。EGFRはまた、EGF様モチーフとして分類されるアミノ酸配列を含む他のリガンドに結合する。EGFRは、ErbB−1レセプターとしても知られており、レセプターチロシンキナーゼのI型ファミリーに属する。EGFレセプターに対するアゴニストを設計するための方法は、例えば、国際特許WO 99/62955に記載されている。
【0076】
本発明の一実施態様では、EGFシグナリング経路のアゴニストは、上皮成長因子(EGF)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB−EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)及び免疫グロブリン結合タンパク質(IGBP)からなる群より選択される。
【0077】
好ましい一実施態様では、EGFシグナリング経路のアゴニストは、EGFである。典型的には、EGFは、1〜100ng/mlの範囲、好ましくは約50ng/mlの濃度で本発明の培養培地に添加される。EGFは、Peprotechから購入され得る。
【0078】
本明細書において使用される「HGFシグナリング経路のアゴニスト」という用語は、HGF生物学的活性もしくはHGFレセプター活性化を直接的もしくは間接的に、実質的に誘導、促進もしくは増強できる天然又は合成の任意の化合物を意味する。US patent 6,099,841に記載されているように、HGF生物学的活性は、例えば、肝細胞成長促進のin vitro又はin vivoアッセイにおいて測定され得る。
【0079】
HGFシグナリング経路のアゴニストは、肝細胞成長因子(HGF)(Michieli et al., 2002)又はHGF経路を活性化できる任意の物質(例えば、薬物、HGFの合成又は天然の類似物、例えばHGFの切断型)であり得る。特に、アゴニストは、マジック因子1、Metチロシンキナーゼの部分的アゴニスト、HGFの高親和性レセプターであり得る(39)。
【0080】
好ましい一実施態様では、HGFシグナリング経路のアゴニストは、HGFである。典型的には、HGFは、1〜100ng/mlの範囲、好ましくは約50ng/mlの濃度で本発明の培養培地に添加される。HGFは、Peprotechから購入され得る。
【0081】
肝前駆細胞の分化を刺激する培養培地を用いて細胞を培養するステップは、肝前駆細胞の作製に要する必要時間実施すべきである。この培養ステップの継続時間は、当業者によって容易に決定され得る。例えば、培養中、当業者であれば、肝前駆細胞によってのみ発現されているマーカー(例えば、サイトケラチン19)の発現の非存在に関して、及び/又は、胎児肝細胞によって特異的に発現されているマーカー(例えば、アルブミン、AFP、CK18、CK8、アポリポタンパク質AII、トランスセリシン、α−1−抗トリプシン、HNF4α、HNF3β、β1−インテグリン、c−Met、RLDL、Cyp3A7、ASGRならびにインドシアニングリーン取り込み及び分泌)の発現に関して、培養細胞をモニタリングできる。確定的内胚葉細胞に特異的なマーカーの少なくとも1つ、好ましくはいくつかの発現が検出され得ないか、及び/又は、肝前駆細胞に特異的なマーカーの少なくとも1つ、好ましくはいくつかの発現が検出される場合、肝前駆細胞の分化を刺激する培養培地を用いて培養する段階は、中止され得る。これらのマーカーのモニタリングは、例えば、特異的プライマーを用いた培養細胞から抽出されたRNAのRT−PCR分析、マーカーに特異的な抗体を用いた免疫蛍光分析及びFACSを使用して、実施され得る。典型的には、前記本発明の培地を用いた確定的内胚葉細胞の培養は、少なくとも3日間、好ましくは少なくとも7日間、特により好ましくは少なくとも15日間実施され得る。
【0082】
必要な場合、本発明の培養培地は、一定の間隔で部分的又は全体的に取り換えられ得る。典型的には、本発明の培養培地は、本発明の新鮮な培養培地と1日おきに15日間置き換えられ得る。
【0083】
上記方法によって作製される胎児肝細胞は、任意の適切な方法(例えば、FACS)を使用して、単離及び/又は精製され得る。
【0084】
胎児肝細胞は、例えば、培養物中で展開もしくは増殖され得るか、又は臨床応用に使用され得る。いくつかの実施態様では、胎児肝細胞は、成熟肝細胞にさらに分化され得る。
【0085】
従って、本発明の胎児肝細胞の集団は、成熟肝細胞を得るのに好適であり得る。
【0086】
医薬組成物:
次いで、本発明の方法に従って得られた確定的内胚葉細胞に由来する肝前駆細胞及び/又は胎児肝細胞の集団は、肝臓治療及び/又は肝臓の再構築もしくは再生に好適であり得る。
【0087】
従って、本発明は、本発明の肝前駆細胞の集団及び場合により薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。ある実施態様では、医薬組成物は、少なくとも1つの生物学的に活性な物質又は生物活性因子をさらに含み得る。
【0088】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体又は賦形剤」という用語は、前駆細胞の生物学的活性の効力を妨げず、投与される濃度においてホストに対して過度に有毒ではない、担体培地を意味する。適切な薬学的に許容される担体又は賦形剤の例は、水、塩溶液(例えば、リンガー液)、オイル、ゼラチン、炭水化物(例えば、ラクトース、アミラーゼ又はデンプン)、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリンを含むがこれらに限定されない。医薬組成物は、液体、半液体(例えば、ゲル、アルギン酸ビーズ)又は固体(例えば、マトリックス、格子、足場など)として製剤化され得る。
【0089】
本明細書において使用される「生物学的に活性な物質又は生物活性因子」という用語は、本発明の医薬組成物におけるその存在が組成物を受ける被験体にとって有益である、任意の分子又は化合物を意味する。当業者によって認識されているように、本発明の実施における使用に好適な生物学的に活性な物質又は生物活性因子は、生物活性分子及び化合物の多種多様なファミリーにおいて見出され得る。例えば、本発明の文脈において有用な生物学的に活性な物質又は生物活性因子は、抗炎症剤、抗アポトーシス剤、免疫抑制剤又は免疫調節剤、抗酸化剤、成長因子及び薬物から選択され得る。
【0090】
本発明の関連態様は、肝病態に罹患している被験体を処置するための方法であって、確定的内胚葉細胞に由来する肝前駆細胞の集団(又はその医薬組成物)の有効量を被験体に投与するステップを含む方法に関する。
【0091】
本発明のこの態様によれば、処置され得る肝病態は、遺伝性代謝異常(例えば、クリグラー・ナジャー症候群I型、糖原病(glucogenosis)1a、尿素サイクル異常症、家族性高コレステロール血症、チロシン血症及びウィルソン病)、ウイルス感染(特に、HBV又はHCVによる感染)によって引き起こされ得る慢性もしくは急性肝不全、毒性(アルコール)及び薬物又は自己免疫疾患(自己免疫性慢性肝炎、原発性胆汁性肝硬変症、原発性硬化性胆管炎)からなる群より選択される。
【0092】
本明細書において使用される「有効量」という用語は、意図した目的を達成するのに十分である、確定的内胚葉細胞に由来する肝前駆細胞の集団(又はその医薬組成物)の任意の量を意味する。
【0093】
本発明の確定的内胚葉細胞に由来する肝前駆細胞の集団(又はその医薬組成物)は、任意の適切な方法を使用して被験体に投与され得る。
【0094】
本発明の確定的内胚葉細胞に由来する肝前駆細胞の集団は、単独でもしくは他の細胞と組み合わせて、ならびに/又は他の生物学的に活性な因子もしくは試薬、及び/もしくは薬物と組み合わせて移植され得る。当業者によって理解されているように、これらの他の細胞、生物学的に活性な因子、試薬及び薬物は、本発明の細胞と一緒に同時に又は連続的に投与され得る。
【0095】
ある実施態様では、本発明による処置は、細胞に基づいた処置を開始する前に、被験体を薬理学的に免疫抑制することをさらに含む。被験体の全身的又は局所的免疫抑制法は、当技術分野において周知である。
【0096】
効果的な投与量及び投与レジメンは、被験体の病態の性質に基づいた適正医療業務によって容易に決定され得、病態の症状の程度、及び関心対象の組織もしくは器官の損傷又は変性の程度、及び被験体の特徴(例えば、年齢、体重、性別、身体全体の健康など)を含むがこれらに限定されない多くの因子に依存するであろう。
【0097】
化合物をスクリーニングするための方法:
本発明の細胞の異なる集団は、他の用途も有し得る。これらの用途は、肝損傷に関連する傷害又は病態をモデリングするための、及び、齧歯類において化合物をスクリーニングするための使用を含むがこれらに限定されない。
【0098】
例えば、前記細胞の集団は、様々なin vitro及びin vivo試験にも使用され得る。特に、限定されないが、それらは、医薬候補化合物などの化合物の肝毒性の評価における用途を見出す。
【0099】
従って、本発明のさらなる態様は、肝防御又は肝毒性作用を有する化合物をスクリーニングするための方法であって:
a.試験化合物の存在下において、本発明による肝前駆細胞の集団、胎児肝細胞の集団又は成熟肝細胞の集団を培養するステップ、及び
b.ステップa)の細胞の生存を、前記試験化合物の非存在下において培養された上記の前記細胞の集団のものと比較するステップ
を含む、方法に関する。
【0100】
「肝毒性」という用語は、肝前駆細胞又は肝細胞の生存の減少を引き起こす化合物を意味する。化合物の存在下において培養された生細胞の数が、前記化合物の非存在下において培養された生細胞の数よりも少ない場合、前記化合物は、肝毒性作用を有するとみなされる。
【0101】
「肝防御」という用語は、肝前駆細胞又はニューロンの生存の増加をもたらす化合物を意味する。化合物の存在下において培養された生細胞の数が、前記化合物の非存在下において培養された生細胞の数よりも多い場合、前記化合物は、肝防御作用を有するとみなされる。典型的には、肝防御作用は、肝臓栄養因子(hepatotrophic factors)の非存在下においてアッセイされ得る。あるいは、肝防御作用は、公知の肝毒性薬物の存在下においてアッセイされ得る。公知の肝毒性薬物は、アミオダロン、メトトレキサート、ニトロフラントインを含むがこれらに限定されない。
【0102】
動物モデル
ヒトESもしくはiPSに由来し得る肝前駆細胞及び/又は胎児肝細胞の利用可能性は、ヒト肝疾患及び肝指向性ウイルス性疾患、特にB又はC型肝炎のin vitroならびにin vivoモデルを設計することをさらに可能にする。より具体的には、ヒト肝疾患及び肝指向性ウイルス性疾患のin vivoモデルは、ヒト肝前駆体及び/又は胎児肝細胞を用いて非ヒト哺乳動物の肝臓を再構築することによって提供され得る。
【0103】
従って、本発明は、機能的ヒト肝細胞を含む非ヒト哺乳類ホストを作製するための、本発明による方法によって得られたか、もしくは得られ得るヒト肝前駆細胞及び/又はヒト胎児肝細胞の使用にさらに関する。
【0104】
機能的ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト哺乳動物を作製する適切な方法は、本発明によるヒト肝前駆細胞及び/又はヒト胎児肝細胞を前記非ヒト哺乳動物の肝臓に注射する段階からなるステップを含み得る。ヒト肝前駆細胞及び/又はヒト胎児肝細胞の生着を助けるために、非ヒト哺乳動物は、抗マクロファージ処置を受けて、非適応的防衛をコントロールし得る。これは、例えば、ジクロロメチレン二リン酸を投与することによって(例えば、リポソーム被包性ジクロロメチレン二リン酸の腹腔内注射によって)実施され得る。
【0105】
本発明は、本発明の方法によって得られたか、又は得られ得る機能的ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト哺乳動物にさらに関する。
【0106】
本発明の非ヒト哺乳動物は、ヒト肝細胞が導入及び保持され得る任意の非霊長類哺乳動物であり得る。これは、ウマ、ヒツジ、ウシ、ネコ、イヌ、ラット、ハムスター、ウサギ、スナネズミ、テンジクネズミ及びマウスを含むがこれらに限定されない。好ましくは、ホスト動物は、齧歯類、さらに好ましくはマウスである。それは、非ヒト霊長類(マカク属)でもあり得る。
【0107】
非ヒト哺乳動物は、特に、異種細胞(ヒト肝細胞)に対する十分な免疫応答を一般的に高めることができないであろう免疫不全哺乳動物であり得る。移植に好適な免疫不全哺乳類ホストは存在しているか、又は、例えば1つ以上の化合物(例えば、サイクロスポリン)の投与によって、もしくは、例えば免疫グロブリン及びT細胞抗原レセプターをコードするローカスにおける生殖系列DNA再構成を起こす能力の喪失をもたらす遺伝的欠損によって作り出され得る。
【0108】
ヒト肝細胞の機能性は、それらの非ヒト哺乳類(特に、マウス)と区別できるヒト肝細胞の生理的産物、免疫学的又は定量的基準による類似物(例えば、ヒト血清アルブミンの発現又はIL−6に反応するC反応性タンパク質の発現)などを含む、肝細胞活性に関する代理マーカーを見ることによってモニタリングされ得る。これらのマーカーは、レシピエントの犠牲を伴わない細胞の存在を決定するのに使用され得る。
【0109】
機能的ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト哺乳動物は、特に、ヒトB型肝炎感染症のin vivoモデルとして使用され得る。
【0110】
本発明は、以下の図面及び実施例によってさらに説明されるであろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、なんら本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、化学的に定義された培地を使用して、ヒト多能性幹細胞又はヒト多分化能幹細胞を肝前駆体に分化させるための本発明による方法のスキームを表す。
【0112】
実施例:
材料と方法
確定的内胚葉(DE)細胞の肝前駆体への分化:
肝内胚葉を誘導するために、FGF10(50ng/ml、Autogenbioclear、ノッティンガム、イギリス)の存在下において、CDM−PVA中でDE細胞を3日間培養し、次いで、レチノイン酸(10−7M、Sigma)、SB431542(10μM、Tocris、ブリストル、イギリス)及びFGF10(50ng/ml、Autogenbioclear)の存在下において、得られた細胞を成長させた。最後に、FGF4(30ng/ml、Peprotech、ヌイイシュルセーヌ、フランス)、HGF(50ng ml-1、Peprotech)及びEGF(50ng ml-1、Peprotech)の存在下において、得られた肝前駆体を3〜15日間成長させて、それらの肝細胞への分化を誘導した。
【0113】
RT−PCR及び定量的PCR分析:
RNeasy Mino Kit(Quiagen、コートアボフ、フランス)を使用して、総RNAを細胞から抽出した。RNAse-free DNAse(Quiagen)で各サンプルを処理した。各サンプルに関して、Superscript II Reverse Transcriptase(Invitrogen)を使用して、0.6μgのRNAを逆転写した。GoTaq Flexi DNA Polymerase(Promega、シャルボニエ、フランス)を使用して、PCR増幅を実施した。使用したプライマー及び条件を表1に記載する。
【0114】
【表1】

【0115】
Stratagen Mw3005Pを使用してリアルタイムRT−PCRを実施し、製造業者(SensiMiX Protocol Quantace、ロンドン、イギリス)によって記載されているように混合物を調製し、次いで、94℃で30秒間、60℃で30秒間及び72℃で30秒間変性させ、続いて、40サイクル終了後に72℃で10分間最終伸長させた。
【0116】
定量的PCRに使用したプライマーを表2に記載する。各反応を2回実施し、同じランでPBGDに対して標準化した。結果を3回の独立した実験の平均として提示し、エラーバーは標準偏差を示す。
【0117】
【表2】

【0118】
免疫蛍光:
パラホルムアルデヒド4%(Alpha Aesar、カルルスルーエ、ドイツ)中で細胞を4℃で20分間固定し、次いで、3%BSA又は1%ゼラチンを含むPBS溶液中で1時間ブロッキングした。細胞内染色に関して、ブロッキング前に0.1%Triton X−100中で細胞を透過処理した。細胞を、一次抗体と一緒に室温で1時間インキュベーションした。ヒトα−1−抗トリプシンに対する一次抗体(1:100)、CK19(1:50)及びαフェトプロテイン(1:300)をDAKO(DakoCytomation、トラップ、フランス)から購入した。ヒトOct4に対する抗体(1:100)、HNF4に対する抗体(1:100)をTebu Bio(ル ペレ アン イブリーヌ、フランス)から購入した。PBS中で細胞を3回洗浄した後、細胞を二次抗体と一緒に室温で1時間インキュベーションし、結合ヤギ抗マウスCy3(1:800)及び結合ニワトリ抗ウサギalexa 488(1:600)をGE-HealthCare Bio-Sciences ABから入手した。PBS中で3回洗浄することによって、未結合の二次抗体を除去した。Hoescht 33258(1:10000、Sigma)を最初の洗浄に添加した。
【0119】
FACS分析(フローサイトメトリー):
PBS中で0.2mg/mlEDTA(Sigma)及び1mg/mlBSA fraction V(Sigma)を用いて37℃で5分間解離することによって細胞を回収し、洗浄し、PBS+3%FBS中で再懸濁した。細胞を、一次抗体(ウサギ抗ヒトc−met(1:25)(Tebu Bio)又はウサギ抗ヒトASGr(1:25)(Abcam、ケンブリッジ、イギリス)、ウサギ抗ヒトrLDL(1:20)(Abcam)又はCD−49fFITC結合抗体(1:20)(BD Pharmingen、ブリュマト、フランス))と一緒に4℃でインキュベーションした。3回洗浄した後、細胞を抗体(PE結合ヤギ抗ウサギ(1:100))と一緒にインキュベーションした。次いで、FACS-Calibur(BD Biosciences)を使用して、細胞を分析した。
【0120】
肝細胞機能
McManusによる過ヨウ素酸シッフ技術によって、グリコーゲン貯蔵をアッセイした。
【0121】
Dil-Ac-LDL staining kit(Biomedical Technologies、ストートン、MA)を使用してLDLの取り込みを実施し、製造業者の使用説明書に従ってアッセイを実施した。肝臓マーカーとの共局在化に関して、4%パラホルムアルデヒド中で細胞を固定し、次いで、上記のように免疫蛍光によってさらにアッセイした。
【0122】
ヒトタンパク質に特異的なキット(Dade Behring)を用いて、アルブミン濃度を測定した。
【0123】
細胞を1mg/mlICGと一緒に60分間インキュベーションすることによって、インドシアニングリーン(ICG)取り込み試験を実施した。次いで、培地中で細胞を洗浄し、16時間後にICGの放出を評価した。
【0124】
P450-Glo assays kit(Promega)を使用して、製造業者の提言に従ってCYP3A7活性を測定した。次いで、P450-GloMax96マイクロプレート照度計を使用してシトクロム活性を分析した。
【0125】
レンチウイルス作製及びヒト胚性幹細胞のトランスダクション
EF1α−GFPレンチベクターを構築し、Vectalys(トゥールーズ、フランス)によって作製した。研究室においてAPOA−II−GFPレンチベクターを構築し、Vectalysによって作製した。
【0126】
レンチウイルスによるトランスダクションの前に、hESCを解離し、4ng/mlFGF2(R&D systems)を含むhESC培地中で分裂期に不活性化したMEFに播種する前に、緩やかな振動の下でlow-attachment 24-well plate(Corning Life Sciences)においてウイルスパーティクルと一緒に37℃で3時間インキュベーションした。上記化学的に定義された条件を使用して、未分化のトランスダクションした細胞を増殖及び分化させた。
【0127】
動物:
French Ministry of Agricultureによって承認されたプロトコールの下で、動物試験を行った。分化した細胞(50μl食塩水中の5x10細胞/動物)を、5日齢uPAxRag2γc−/−マウス(n=9)の肝臓に注射した。非適応的防衛をコントロールするために、マウスは、(Strick-Marchand et al., 2004)に記載されているように、リポソーム被包性ジクロロメチレン二リン酸(250μgのクロドロネート)の腹腔内注射によって、抗マクロファージ処置を受けた。移植後8週間に、移植マウスを殺した。血液サンプルを採取し、Elisa試験によって血清中のヒトアルブミンを定量化した。組織学的分析のために肝臓を取り出し、肝臓フラグメントをOCT化合物中に包埋し次いで液体窒素中で凍結させたか、又はPFA4%中で固定しパラフィン中に包埋した。非移植マウスをコントロールとして使用した。
【0128】
結果
ヒト内胚葉細胞の肝前駆体への分化
H9細胞又はhIPSCを、CDM+10ng/mlアクチビン+FGF2 12ng/mlにおいて2日間、CDM−PVA、100ng/mlアクチビン、20ng/mlFGF2、10ng/mlBMP4、10μM LY294002において3日間培養することによって、DE細胞を作製した。様々な組み合わせの因子(例えば、FGF10、Wnt、レチノイン酸(RA)及びアクチビンA)の存在下において、肝前駆体にさらに分化するDE細胞の能力。アクチビン/Nodalレセプターの薬理学的阻害剤であるSB431542(Inman et al., 2002)又はWntシグナリング経路の阻害剤であるFrizzled8/Fcキメラ(Hsieh et al., 1999)をそれぞれ使用して、アクチビン及びWnt経路を阻害する効果も分析した。
【0129】
HNF4α及びαフェトプロテイン(AFP)(これらは、肝臓発生の初期段階の間に肝前駆体において発現している2個のマーカーである)の発現に関して、肝臓細胞の作製をモニタリングした。DE細胞を、まずFGF10の存在下において3日間、次いで、FGF10、RA及びSB431542の組み合わせにおいてさらに2日間成長させた場合に、HNF4α及びAFP発現の最も高い誘導が認められた。
【0130】
Wntシグナリングの阻害は肝分化を減少させたが、このことは、DE細胞の肝内胚葉への分化をコントロールする機序において、Wntが本質的機能を有することを示す最近の観察(Hay et al., 2008)を裏付けている。しかしながら、DE細胞は、高いレベルのWnt3aを既に発現していたので、外来性のWntは、本発明者らの培養条件に必要ではなかった。
【0131】
これらの結果は、FGF10及びWntシグナリングによって相乗作用を与えられる肝特異化において、RAが重要な役割を果たすのに対して、肝前駆体へのDE細胞分化の初期ステップをTGFβシグナリングが妨げる可能性を示唆している。
【0132】
FGF10、RA及びSB431542の組み合わせによって作製した肝前駆体のほとんどは、EpCAMを発現していた。60%及び50%の細胞において、HNF4α及びAFP又はCK19がそれぞれ共発現していた。肝臓発生中に、肝細胞及び胆管上皮細胞は、共通の両性能前駆体(肝芽細胞)から生じるので、本発明者らの結果は、分化過程中に肝芽細胞の集団が発生したことを示唆している。
【0133】
肝前駆体の肝細胞様細胞への成熟
次いで、肝前駆体を肝細胞に分化させるために、培養条件を開発した。本発明者らは、FGF4、HGF及びEGFの組み合わせが、肝前駆体のより分化した細胞への分化を誘導するのに十分であったことを認めた。5日後、これらの培養条件において、細胞の形態は、肝細胞の典型である立方形の形状に似ていた。加えて、ヒト胎児及び成体肝細胞と比較して、作製した細胞は、α1−抗トリプシン(AAT)、アポリポタンパク質A−II(ApoAII)、チロシンアミノトランスフェラーゼ、トリプトファン2,3−ジオキシゲナーゼ、因子IXならびに解毒酵素Cyp3A7及びCyp7A1を含む成熟肝臓細胞に特異的なマーカーを発現していた。
【0134】
肝細胞の発生を免疫染色分析によって確認したところ、分化している肝前駆体がCK8/18をほぼ均一的に発現していたこと、ならびに、細胞の集団がAAT及び高いレベルのアルブミン(Alb)を発現していたことが示された。35%の細胞がASGR1、LDLR、c−met及びα6インテグリンを発現していたことが、FACS分析によって示された。興味深いことに、これらの細胞表面マーカーの最後の2個は、in vivoで増殖している肝細胞の特徴である。
【0135】
これらの肝細胞様細胞の同一性をさらに確認するために、本発明者らは、ヒトAPOA−II調節配列のコントロール下において、GFPを保持するリコンビナントレンチウイルスで未分化のhESCをトランスダクションし、それらの分化を誘導した。EF1αプロモーターのコントロール下において、GFPを保持するレンチベクターでトランスダクションした細胞を、陽性コントロールとして使用した。トランスダクション後48時間に75%のコントロール細胞が蛍光を発したのに対して、APOA−IIプロモーターによって誘導した場合はGFPの発現が検出できなかったことが、フローサイトメトリー分析によって示された。APOA−II−GFPレンチベクターでトランスダクションした細胞は、たった13日間の分化の後にGFPを発現し始めたが、このことは、内胚葉細胞の成熟肝臓細胞への進行性分化を裏付けており、本発明者らの培養システムにおいて作製した肝細胞が肝臓特異的プロモーターの生理学的調節を示すことも実証している。
【0136】
加えて、本発明者らは、これらの分化した細胞がin vitroで機能的であったか否かを試験した。60%の細胞がグリコーゲンを貯蔵できたことが、過ヨウ素酸シッフ染色によって明らかになった。加えて、CK19陽性細胞及びAFP陽性細胞は、LDLを取り込むことができた。本発明者らは、肝細胞の機能特性であるICGインドシアニングリーンの取り込み及び排出も検査した。ICG陽性細胞を可視化したところ、細胞は、培地から取り出した16時間後にICGを排出した。これらの細胞が5.9+0.7μg/10細胞/日の速度でアルブミンを分泌したことが、培養培地中のアルブミンの分泌量の分析によって明らかになった。最後に、作製した肝細胞は、CYP3A7活性を示した。
【0137】
ESに由来する肝細胞は、in vivoで機能的である
次いで、hESCから作製した肝細胞の生着能力及び肝実質内での分化能力を調査した。GFPを発現しているhESCを21日間分化させ、得られた細胞をuPAxrag2γc−/−マウスの肝臓に移植した。これらの免疫不全トランスジェニックマウスは、Albプロモーターのコントロール下において、ウロキナーゼ遺伝子を発現する。この導入遺伝子は肝細胞にとって有毒であり、従って、それは、肝臓成長を一時的に(常在細胞において、導入遺伝子が不活性化されるまで)阻害し、移植細胞のより良い生着を可能にする。
【0138】
移植マウスの肝臓においてヒトAAT及びALBを発現している細胞の存在(これは、hESCから作製した肝細胞がin vivoで生着でき、肝細胞のタンパク質特性を発現できたことを裏付けている)が、免疫組織化学的分析によって示された。ヒト細胞は、主に小さな及び大きな細胞集団として肝臓全体にわたって分布していたが、このことは、移植細胞が増殖し、肝臓成長に関与したことを示唆している。加えて、ヒトAAT及びGFPタンパク質は、同じ細胞において共発現していたが、このことは、これらの細胞集団がヒト由来であることを裏付けている。さらに、移植動物の血清は、3ng/mlヒトアルブミンを含んでいたが、このことは、移植細胞がin vivoで肝細胞のいくつか機能特性を示したことを裏付けている。最後に、奇形腫又は肝内腫瘍の存在は、組織学的検査によって明らかにならなかったが、このことは、注射した細胞集団だけが完全に分化した細胞を含むことを示唆している。
【0139】
hESC用に開発した培養条件を使用した、ヒト誘導多能性幹細胞からの肝前駆体の作製
ヒト誘導多能性幹細胞は、再プログラム化した線維芽細胞から生じ得る。従って、本発明者らは、hESCから肝細胞を作製するために開発した培養条件が、hIPSCを肝細胞に分化させるのにも効果的であり得るか否かを調査した。Oct−4、Sox2、KLF4及びcMycを発現しているレトロウイルスを使用して、(Vallier et al., 2009)に記載されているCDM+アクチビンA+FGF2において、包皮線維芽細胞を再プログラム化し、3個の得られたhIPSC株を上記培養条件で成長させた。これらの培養条件下で作製した細胞が、同じ培養条件を使用して分化させたhESCよりも同じようなレベルで、HNF4α、AFP及びアルブミンを発現していたことが、免疫染色及びQ−PCR分析によって示された。要するに、これらのデータは、hESCを用いて開発した本発明者らのアプローチが、hIPSCから肝臓細胞を作製するのにも使用できることを示唆している。
【0140】
現在、いくつかの方法が、hESCから肝細胞様細胞を作製するのに利用可能であるが、本発明者らのアプローチは、2つの主な利点を有する。それは、フィーダー細胞及び血清を含まない完全に定義された培地に基づいており、それはまた、酪酸ナトリウム又はDMSO(これらは両方とも、それぞれ、ヒストンアセチル化を阻害すること、及び、DNAメチル化を増加させることによって、哺乳類細胞のエピジェネティックプロファイルに影響を与えることが知られている(Iwatani et al., 2006))の使用を避けている。その結果として、本発明者らの方法は、hESCの肝細胞への分化を可能にする既存の方法(Cai et al., 2007; Duan et al., 2007; Lavon et al., 2004; Rambhatla et al., 2003; Schwartz et al., 2005)に明らかな進歩をもたらす。
【0141】
さらに、本発明者らのプロトコールは、哺乳類の発生における確定的内胚葉細胞の肝細胞への進行性分化を模倣する過程に従っている。第一のステップにおいて、高投与量のアクチビンA、FGF2、BMP4及びLY294002の組み合わせを使用して、hESCをDE細胞に分化させる。hESCの内胚葉分化を増大させるためのこのPI3キナーゼ阻害剤の使用は、以前に示されている(Johansson and Wiles, 1995)。しかしながら、この研究は、血清、マトリゲル及びフィーダーを含む培地に基づいていた。加えて、本発明者らの条件におけるPI3キナーゼの阻害は、多能性におけるアクチビンシグナリングの作用を阻害するのに十分ではなかった。その結果として、多能性遺伝子の発現を抑制し、アクチビンシグナリングを内胚葉分化の誘導シグナルに変換するのに、BMP4などの他の因子を必要とする。これらの結果は、完全に定義された培養条件を使用して、重要な細胞の運命選択をコントロールするシグナリング経路を定義することの重要性を強調している。第二のステップにおいて、FGF10及びRA(これらは、in vivoにおける肝臓成長及び肝芽細胞生存に重要であることが知られている2個の因子である(Hatzis and Talianidis, 2001; Berg et al, 2007; Zaret, 2008))の組み合わせは、CK19及びHNF4αを共発現する肝前駆体への内胚葉細胞の分化を誘導するのに不可欠なようである。これらの2個のマーカーは、発生の初期段階において、両性能肝芽細胞によって特異的に共発現されており、それらの発現は、肝臓器官形成中、胆管上皮細胞と肝細胞との間でそれぞれ別々である。しかしながら、本発明者らは、TGFβが肝芽形成に必要であることを示すマウス胚における研究(Lemaigre and Zaret, 2004)と比較して、アクチビンシグナリングの阻害が肝分化を増大させ得ることも認めた。しかしながら、マウス及びヒト肝臓発生におけるアクチビン/TGFβシグナリングの機能は、保存されていない可能性がある。あるいは、肝芽特異化は、マウスにおける12〜24時間に対して、ヒトにおいては3〜4日間を必要とし、従って、マウス発生中に非常に迅速に起こる機序は、in vitroにおけるhESCの分化中により明白になり得る。
【0142】
第三のステップは、in vivoでこの過程に関与することが知られている成長因子(FGF4、EGF及びHGF)(Jung et al., 1999; Suzuki et al., 2003)の組み合わせを使用して増殖状態を維持しながら、これらの肝前駆体を肝細胞に分化させる段階にある。作製した細胞は、様々な成体肝臓特異的タンパク質、及び、多くの肝臓特異的遺伝子の発現をコントロールするのに必要である重要な肝細胞核因子を発現していた。加えて、これらの細胞は、肝臓細胞の特異的機能も示した。これらの特性は、hESCに由来する肝細胞が分化されることを示唆しているが、本発明者らの結果は、この集団が依然として胎児肝臓発生段階にあることも示唆している。実際、これらの肝細胞は、他者によって既に報告されているAFPの発現(Basma et al., 2009; Cai et al., 2007)などのいくつかの未成熟特性を保持している。完全な成熟肝細胞を作製するための条件を決定するには、さらなる調査が必要であろう。高密度細胞培養、又は、他の細胞型(例えば、内皮細胞)との共培養と組み合わせたさらなる誘導因子は、この主な課題を克服する潜在的解決策を示す可能性がある。
【0143】
本発明者らの研究は、hESCに由来する肝細胞が、増殖能力、及び、分化した正常肝細胞の特性を示す能力を保持しながら、ホストの肝実質内で効果的に生着したことも実証している。しかしながら、移植マウスの血清中の少量のヒトアルブミンは、ヒトタンパク質分泌と生着効果との間に相関がないことを示唆している。このことは、本発明者らの1人及び他者によって、このモデルにおいて既に報告されている(Mahieu-Caputo et al., 2004)。一説によると、移植後2ヶ月において肝細胞分化の程度は部分的であり、生着細胞は予想よりも少ない量のアルブミンを産生する。異種の環境が、ヒト前駆体の完全に分化する能力を過小評価している可能性もある。
【0144】
in vivoでhESに由来する細胞を使用する場合、腫瘍形成及び異常成長は、依然として別の主な問題である。実際、作製した集団は、奇形腫を形成する能力を有する未分化の多能性細胞が容易に混入し得る(D'Amour et al., 2006; Kroon et al., 2008)。加えて、成体環境が、初期前駆体の増殖能力をコントロールできず、コントロールされない増殖につながる可能性がある。従って、最近、hESCに由来するAFP産生細胞が奇形腫形成を誘導したことが報告された(Ishii et al., 2007)。hESCに由来する肝細胞を移植した無アルブミン血症ラットにおいて、腺ガンも腹腔内に認められた(Basma et al., 2009)。重要なことに、本発明者らの3つのステップアプローチを使用して作製した肝細胞は、移植後に腫瘍を産生しなかったが、このことは、本発明者らの方法が多能性細胞全体の分化を誘導することを示唆している。
【0145】
大量の肝細胞を発生させる能力は、薬理毒性学(pharmacotoxicology)などのin vitro研究にとって明らかな利点を提示するのに対して、最終分化した細胞の利用は、細胞に基づいた治療にとっていくつかの欠点を提示する可能性がある。実際、肝細胞が増殖利点を示さない限り、それらはin vivoで増殖しないことが、齧歯類における多くの研究によって実証されている(Azuma et al., 2007)。前駆体/胎児肝細胞の使用は、これらの主な限界を解決する可能性がある有利な代替手段を示す可能性がある。実際、本発明者らは、以前、ヒト肝臓の初期発生段階からこのような未成熟細胞を単離し、それらが齧歯類の肝臓において分化及び増殖できたことを示した(Mahieu-Caputo et al., 2004)。さらに、前駆体を細胞に基づいた治療に効果的に使用できるという原理の証明は、神経変性疾患との関連で、他の器官(例えば、ニューロン幹細胞)に関して、明らかに確立されている(Bachoud-Levi et al., 2006)。
【0146】
どのような場合でも、マウスモデルは、それら自体によっては、分化した細胞が臨床応用に安全であるか否かを決定することを可能にしないであろう。実際、移植細胞の量は器官のサイズによって限られており、非ヒト霊長類などの大きな動物における研究は、安全性問題に慎重に取り組むのに必要とされるであろう。
【0147】
結論として、本発明者らは、肝臓発生を模倣する完全に定義された条件が、in vitro及びin vivoにおける機能的肝細胞の作製をもたらすという最初の実証を提供した。本発明者らは、このアプローチが、個々の患者に由来する成体体細胞を再プログラム化することによって作製した多能性幹細胞に直接的に置換可能であることも示した。この研究は、肝疾患に罹患している患者に由来する再プログラム化したhESC又はhiPSCから肝臓細胞を作製するための道を開く。これは、薬物スクリーニングを実施するための、及び、肝疾患の新たな治療を開発するための新たなin vitroモデルの作製を可能にするはずである。
【0148】
参考文献:
本出願を通じて、様々な参考文献が、本発明が関連する技術水準を記載する。これらの参考文献の開示は、本明細書において参照により本開示に組み込まれる。
【0149】
【表3】












【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝特異化を刺激する培養培地を用いて確定的内胚葉細胞を培養するステップを含む、肝前駆細胞の集団を得るための方法。
【請求項2】
肝特異化を刺激する培養培地が、レチノイン酸レセプター(RAR)アゴニストを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
RARアゴニストが、オールトランス型レチノイン酸(ATRA)である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
肝特異化を刺激する培養培地が、FGFファミリー成長因子及びアクチビン/Nodalシグナリング経路の阻害剤をさらに含む、請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
a)確定的内胚葉細胞が、FGFファミリー成長因子と一緒に培養され;そして
b)次いで、ステップa)において培養された細胞が、前記肝特異化を刺激する培養培地を用いて培養される、
請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
FGFファミリー成長因子が、FGF10である、請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
アクチビンシグナリング経路の阻害剤が、SB431542、レフティーA及びケルベロスならびにアクチビンNodalシグナリング経路を阻害するレフティーA及びケルベロスの誘導体からなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項8】
前記確定的内胚葉細胞が、ヒト確定的内胚葉細胞である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ヒト確定的内胚葉細胞が、ヒト胚性幹細胞(ES)、ヒト多能性細胞(iPS)、臍帯血幹細胞、胎児幹細胞及び成体幹細胞からなる群より選択されるヒト多能性幹細胞又はヒト多分化能幹細胞から得られる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
a)請求項1〜9のいずれか一項記載の方法に従って肝前駆細胞の集団を作製すること、及び
b)前記肝前駆細胞の集団を胎児肝細胞に分化させること
からなるステップを含む、胎児肝細胞の集団を得るための方法。
【請求項11】
ステップb)が、FGFファミリー成長因子、EGFシグナリング経路のアゴニスト及びHGFシグナリング経路のアゴニストを含む培養培地を用いてステップa)の肝前駆細胞を培養することによって実施される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項記載の方法によって得ることができる、肝前駆細胞の集団。
【請求項13】
請求項10又は11のいずれか一項記載の方法によって得ることができる、胎児肝細胞の集団。
【請求項14】
請求項12記載の肝前駆細胞の集団又は請求項13記載の胎児肝細胞の集団及び薬学的に許容しうる担体又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項15】
肝病態の処置及び/もしくは肝臓の再構成もしくは再生のための、請求項12記載の肝前駆細胞の集団又は請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
機能的ヒト肝細胞を含むキメラ非ヒト哺乳動物を作製する方法であって、請求項12記載のヒト肝前駆細胞の集団及び/又は請求項13記載のヒト胎児肝細胞の集団を前記非ヒト哺乳動物ヒトの肝臓に注射することからなるステップを含む、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−511969(P2013−511969A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540435(P2012−540435)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068237
【国際公開番号】WO2011/064309
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【出願人】(501484851)ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
【Fターム(参考)】