説明

磁力を利用した器具コーティング方法及びコーティング装置

【課題】磁力を利用した器具コーティング方法及びコーティング装置を提供する。
【解決手段】磁力反応粒子が添加された充填材を混合したコーティング物を器具表面に塗布した後、熱処理する過程で前記器具表面の上下面に設けた磁石の磁気力によって磁性反応粒子が移動し、磁性反応粒子の密度を高めて器具の表面に凹凸が形成されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁力を利用した器具コーティング方法及びコーティング装置に関するものであり、より詳しくは、磁力を利用して台所器具の表面に凹凸を形成できるようにする器具コーティング方法及びコーティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面をコーティングする必要がある一般的な器具は大体アルミニウムのような金属製からなっている。初期には金属自体の無処理の器具を使用して来たが、使用しているうちに、例えば、台所用器具の場合は調理するときや、又はそれ以外の場合に前記器具の表面が傷付く等の問題が生じ、それを防ぐために、コーティング液を表面に塗布してコーティング層が前記表面に形成された器具が開発されるようになった。多様な種類のコーティング液の開発に伴い多様な形態のコーティング層が表面に形成された器具が登場した。
【0003】
現在では、器具の表面にプライマーコート、ミッドコート及びトップコートが順に積層されてコーティング層を形成する、別名三重コーティングが普遍化された形態で器具に利用されている。
【0004】
図1に図示したように、器具表面に塗布された三重コーティング層は、成形金属層11上にプライマーコート(下塗コーティング)12を施した後、1次加熱乾燥作業を行い、次にミッドコート(中塗コーティング)13を施した後、2次加熱乾燥作業を行ってコーティング面が完全に硬化した状態にしてから、鉱物性粒子14をミッドコート13上に塗布して構成する。そして、鉱物性粒子14とミッドコート13上にトップコート(上塗コーティング)15を施して製造する。
【0005】
しかし、前記のようなコーティング層を有する台所器具は、表面が平面を成しているため熱伝達が劣り、調理待機時間、つまり予熱時間が長くなることから調理の効率が落ちるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明の目的は、台所器具の表面にコーティングをする際に塗布されるコーティング物を成すバインダー、溶剤、充填材のうち、前記充填材に磁力に反応する金属粒子を添加し、磁力によって磁力反応粒子が移動して磁力反応粒子の密度が高まるようにすることにより、器具表面に凹凸が形成されるようにすることにある。
【0007】
また、本発明の目的は、磁力による引力を発生させる磁石の配置状態によって複数個の同心円を有する形状、或いは螺旋型状等の多様な形状を有する凹凸を形成させることができるようにすることにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、磁力手段を同一極性で配置させて斥力を発生させることができるようにすることにより、不規則な凹凸の形成を可能にさせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するための本発明の磁力を利用した器具コーティング方法は、バインダーと溶剤、充填材からなるコーティング物でコーティングされる器具において、磁力反応粒子が添加された充填材を混合したコーティング物を器具表面に塗布した後、熱処理する過程で前記器具表面の上下面に設けた磁石の磁気力によって、磁力反応粒子が移動して磁力反応粒子の密度を高めて器具の表面に凹凸が形成されるようにする。
【0010】
本発明によると、前記器具の上下部に設けられた磁石は、同一な極性を有するようにして斥力を発生させたことを更に含むことにより、斥力によって磁力反応粒子が不規則に移動して凹凸を形成するようになる。
【0011】
本発明によると、前記器具に配置された磁石は、同心円状に複数個設けられる。
【0012】
本発明によると、前記器具に配置された磁石は、螺旋状に設けられる。
【0013】
本発明によると、バインダーと溶剤、充填材でコーティングされる器具において、コーティング対象器具の上下面に対向するように配置される一対のブロックと、向かい合うブロックの面に複数個設けられる磁力を有する磁力手段で構成する。
【0014】
本発明によると、前記磁力手段は、ピン形態で、一対毎に器具の上下に垂直に且つ向かい合うように設けられて相互に同一な配列で設けられるように構成する。
【0015】
本発明によると、前記磁力手段は、磁力手段を保持するブロック表面に溝を形成し、前記溝に磁力手段を埋め込み前記磁力手段が器具表面と同一面を有するように構成する。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明の磁力を利用した器具コーティング方法及びコーティング装置は、磁力に反応する粒子が混合されたコーティング物を器具表面に塗布した後、熱処理する過程で前記器具表面の上下面に位置した磁石により発生する磁気力により磁性反応粒子が移動し、磁性反応粒子の密度を高めて器具の表面に凹凸の形成が可能となる。台所器具の底面に形成された凹凸によって表面積を増大させて熱効率が向上した台所器具を製造できるようにするという効果を奏する。
【0017】
また、本発明の磁力を利用した器具コーティング方法及びコーティング装置は、磁石の配置状態によって引力を発生させることにより、複数個の同心円を有する形状または螺旋型状等の多様な形状を有する凹凸の形成が可能で、多様な台所容器の製作が可能となる効果を奏する。
【0018】
さらに、本発明の磁力を利用した器具コーティング方法及びコーティング装置は、台所容器の底面の表面の上下に同一の極性の磁石を配置することにより斥力が生成され、磁性反応粒子を不規則に粒子移動させてより多様な形態の凹凸が形成できるようにするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術にかかる器具のコーティング状態を示した部分断面斜視図
【図2】磁性体の磁力線を示した状態図
【図3】本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第1実施例を示した分解斜視図
【図4】本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第2実施例を示した分解斜視図である。
【図5】本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第1実施例を示した断面図
【図6】本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第2実施例を示した断面図
【図7】本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第3実施例を示した断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に添付した図面を参照して本発明の好ましい一実施例を詳しく説明する。
【実施例】
【0021】
図面中の同一な構成要素または部品は、可及的同一な参照符号で示すこととする。本発明の説明において、関連する公知機能あるいは構成に対する具体的な説明は、本発明の要旨を曖昧にさせないために省略する。
【0022】
図2は磁性体の磁気力線を示した状態図であり、図3は本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第1実施例を示した分解斜視図であり、図4は本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第2実施例を示した分解斜視図であり、図5は本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第1実施例を示した断面図であり、図6は本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第2実施例を示した断面図であり、図7は本発明の磁力を利用した器具コーティング装置の第3実施例を示した断面図である。
【0023】
通常、台所用器具は、表面にバインダー、溶剤、充填材からなるコーティング物10aを塗布した後、熱処理したコーティング層を有する。
【0024】
前記コーティング層は、台所器具表面にコーティングされて積層される順序に従いプライマーコート、ミッドコート、及びトップコートに区分される。
【0025】
つまり、前記プライマーコートは台所器具表面にコーティングされるコーティング層を指すものであり、前記ミッドコートはプライマーコート上部にコーティングされてプライマーコートと共に二重のコーティング層を有するものであり、前記トップコートはミッドコート上部にコーティングされてプライマーコート及びミッドコートと共に三重のコーティング層を有する。
【0026】
ここで、台所器具はそれぞれのコーティング層を選択して利用できる。
【0027】
言い換えると、前記プライマーコート、ミッドコート、及びトップコートによって三重にコーティングすることもでき、前記プライマーコート、ミッドコートによって二重にコーティングすることもでき、前記プライマーコートによって単一層にコーティングすることもできる。
【0028】
前記コーティング物10aは、下記のような組成物からなる。
【0029】
前記バインダーは、ポリアミドのN−メチルピロリドン(nmp)溶解混合物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液が用いられる。
【0030】
前記溶剤は、水、芳香族炭化水素、トリエチルアミン、オレイン酸、界面活性剤が用いられる。
【0031】
前記充填材は、シリカ分散液が含まれたカーボンブラック、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化鉄のいずれかの群に属する物質が選ばれ添加される。
【0032】
ここで、コーティング物10aを器具10の表面にコーティングする際、発現させる色に応じて、カーボンブラック、酸化アルミニウム、酸化チタニウム及び酸化鉄から適切な充填材を選んで用いる。
【0033】
つまり、カーボンブラックは黒、酸化アルミニウム、酸化チタニウムは白、酸化鉄は赤を発現する際に用いられ、台所器具10に該当する充填材として適用できる。
【0034】
また、前記充填材には磁性に反応する金属酸化物粒子がさらに添加される。(以下、″磁力反応粒子″と称する。)
図2〜図6に図示したように、前記のようなコーティング工程を経て製造される器具10は、磁力反応粒子が添加されたコーティング物10aを器具10の表面に塗布した後、熱処理する前の過程で前記器具10の表面の上下面に磁力手段120を配置させる。
【0035】
つまり、磁力手段120によって発生する磁気力は、コーティング物10aに添加された磁力反応粒子が前記磁気手段により生成される引力によって粒子移動して磁力反応粒子の密度を高めて器具10の表面に凹凸が形成されるようにする。
【0036】
つまり、器具10の表面にコーティング物10aを塗布した後、表面の上下に磁力手段120を近接して配置するが、前記磁力手段120は相異する極性を有するようにして前記磁力手段120間に引力が発生するようにする。
【0037】
前記コーティング物10aは、流動性を有し、前記コーティング物10aを含有した充填材のうち磁力に反応する粒子は、前記磁力手段120の磁気力によって粒子が移動して磁気力が発生する部位で密度が高くなる。
【0038】
つまり、図2に図示したように、磁気力線は磁気場内の各点で磁気力の方向を表す線を言うものであり、通常、磁気力線の方向は磁気場方向と平行で、N極から出てS極に向かう。
【0039】
また、電気力線と同様に、磁気場内の任意の点で磁気力が働く方向は一つだけのため、途中で分岐したり、2つの磁気力線が交わることはない。そして、N極から出た磁気力線は必ずS極で終わり、途中で消滅したり発生したりしない。
【0040】
また、磁気力線の密度は磁気場の強さを表す。磁気力線の間隔が狭いほど磁気場の強さが強く、一般的に磁石の両側の磁極で磁気力線の間隔が狭く、磁極から徐々に遠くなると磁気力線の密度が低くなる。
【0041】
これにより、磁気力線の高い密度によって器具10の表面に凹凸形状の突出部が形成され、前記凹凸によって器具10の表面積を拡張させて熱効率を向上させることができる。
【0042】
前記のような磁力を利用した器具コーティング方法を実行するコーティング装置100は次の通りである。
【0043】
前記コーティング装置100は、ブロック110と磁力手段120で構成される。
【0044】
前記ブロック110は、一対が備えられコーティング対象の器具10の上下面に対向して配置される。
【0045】
そして、磁力手段120から磁気力が発生される。前記磁力手段120はブロック110が向かい合う面に複数個設けられる。
【0046】
ここで磁力手段120は、複数個の同心円または螺旋状に配置できる。また、器具10に配置された磁力手段120は、複数個の同心円状に配置されるか、或いは螺旋状に設けることもできるため器具10の表面に多様な形状の凹凸を製造できる。
【0047】
第1実施例は、図5に図示したように、磁力手段120は、ピン形態の一対が器具10に垂直に向かい合うように設けられると共に、上下に同一な配列で設けることができるため、より集中した磁気力が保障されるようになる。
【0048】
そして第2実施例は、図6に図示したように、前記ブロック110の表面に一対の溝111を形成し、前記溝111に磁力手段120を埋め込み前記磁力手段120が器具10の表面と同一な面を有するようにする。
【0049】
前記第1実施例と第2実施例は、向かい合うように上下に配置される一対の磁力手段120が互いにN極とS極の磁力を有するようにして磁極間に引力を発生させて磁力反応粒子の移動によって密度を高めることができるようにする。
【0050】
さらに第3実施例は、図7に図示したように、前記磁力手段120は相互同一な極性を有するようにする。つまり、一対の磁力手段120が同一極性のN極を有するようにして前記磁力手段に斥力を発生させて磁力反応粒子が不規則に移動して不規則な模様の凹凸を形成させる。
【0051】
上記のように構成されるコーティング装置による磁力を利用した器具コーティング方法は次の通りである。
【0052】
器具10の表面にコーティング物10aを塗布した後、器具の上下面に磁力手段120を搭載したブロック110を近接させると、前記磁力手段120によって発生する磁気力によりコーティング物10aに含有された磁力反応粒子が移動して密度が高くなり突出した形状を有する凹凸が形成される。
【0053】
その後、ブロック110を分離し、器具に40〜60℃で余熱処理して凹凸形状を固形化させた後、焼成炉において400〜600℃で器具を乾燥焼結する熱処理工程を行って仕上げる。
【0054】
以上で説明した本発明は、前述の実施例及び添付の図面によって限定されるのではなく、本発明の技術的思想から外れない範囲で様々に置換、変形及び変更が可能なことは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかである。
【符号の説明】
【0055】
10 器具
10a コーティング物
100 コーティング装置
110 ブロック
111 溝
120 磁力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと溶剤、充填材からなるコーティング物で器具をコーティングする方法であって、
磁力反応粒子が添加された充填材を混合したコーティング物を器具表面に塗布した後、熱処理する過程で前記器具表面の上下面に設けた磁石の磁気力によって、磁力反応粒子が移動して磁力反応粒子の密度を高めて器具の表面に凹凸を形成させることを特徴とする磁力を利用した器具コーティング方法。
【請求項2】
前記器具の上下部に同一な極性を有する磁石を設けて斥力を発生させることにより、該斥力によって磁力反応粒子が不規則に移動して凹凸を形成させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の磁力を利用した器具コーティング方法。
【請求項3】
前記器具に配置された磁石は、同心円状に複数個設けられたことを特徴とする請求項1に記載の磁力を利用した器具コーティング方法。
【請求項4】
前記器具に配置された磁石は、螺旋状に複数個設けられたことを特徴とする請求項1に記載の磁力を利用した器具コーティング方法。
【請求項5】
バインダーと溶剤、充填材で器具をコーティングする装置であって、
コーティング対象器具の上下面に対向するように配置される一対のブロックと、
向かい合うブロックの面に複数個設けられる磁力を有する磁力手段で構成したことを特徴とする磁力を利用した器具コーティング装置。
【請求項6】
前記磁力手段は、ピン形態の磁力手段が一対ずつ前記器具の上下に垂直に且つ向かい合うように相互に同一な配列で設けられるように構成したことを特徴とする請求項5に記載の磁力を利用した器具コーティング装置。
【請求項7】
前記磁力手段は、前記ブロック表面に溝を形成し、前記溝に磁力手段を埋め込み前記磁力手段が器具表面と同一面を有するように構成したことを特徴とする請求項5に記載の磁力を利用した器具コーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−130899(P2012−130899A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55464(P2011−55464)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(505260844)
【Fターム(参考)】