説明

磁力固定式レール穿孔機

【解決手段】レール12に対するレール穿孔機1の取付状態で、駆動源3とカッター支持機構4と支持台とがレール12の幅方向Yの片側に配置される。支持台の長手方向の両端部には、レール12の頭部13の下面13bと台部14の上面14aとに当てがわれて支持台の上下方向Zの動きを規制する支持面21,24を有する支持板8を設けている。両支持板8間で支持台にはレール12の頭部13と台部14との間でウェブ15の幅方向Yの側面15aに吸着される吸着面11を有する磁力吸着部10を設けている。その吸着状態で、カッター支持機構4におけるカッター着脱部5の回転中心線5aを支持台の両支持板8のうち一方の支持板8の外側でウェブ15の幅方向Yの側面15aに向けて配置している。
【効果】車両が実際に通るレール12の敷設状態のままでもレール12のウェブ15に対し連結孔を穿つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールのウェブに対し枕木との連結孔を穿つレール穿孔機をレールに対し取り付ける手段の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1においては、穿孔時にレール穿孔機をレールに取り付ける際にレールのウェブを幅方向両側から挟持するレール挟持機構が開示されている。
【特許文献1】特開2004−322238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載されたレール挟持機構はレールの頭部の上方を跨いでレールの幅方向両側に配設されるため、車両が実際に通るレールの敷設状態のままではレールのウェブに対し連結孔を穿つことができない。
【0004】
この発明は、車両が実際に通るレールの敷設状態のままでもレールのウェブに対し連結孔を穿つことができるレール穿孔機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
後記実施形態の図面(図1〜3)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる磁力固定式レール穿孔機は、下記のように構成されている。
レール12の上下方向Zの両側でレール12の長手方向Xへ延設した頭部13と台部14との間にその頭部13及び台部14に沿って延設したウェブ15に対しレール12に対する取付状態で連結孔をレール12の幅方向へ穿つレール穿孔機1は、駆動源3と、この駆動源3に連動して回転するカッター着脱部5を有するカッター支持機構4と、この駆動源3及びカッター支持機構4を支持する支持台6とを備えている。レール12に対する取付状態で、前記駆動源3とカッター支持機構4と支持台6とがレール12における頭部13や台部14やウェブ15の幅方向Yの側面13c,14c,15aよりも幅方向Yの両側のうち片側に配置される。この支持台6の長手方向Xの両端部には、レール12の頭部13の下面13bと台部14の上面14aとに当てがわれて支持台6の上下方向Zの動きを規制する支持面21,24を有する支持板8を設けている。この両支持板8間で支持台6にはレール12の頭部13と台部14との間でウェブ15の幅方向Yの側面15aに吸着される吸着面11を有する磁力吸着部10を設けている。この磁力吸着部10の吸着面11をウェブ15の幅方向Yの側面15aに吸着した取付状態で、前記カッター支持機構4におけるカッター着脱部5の回転中心線5aを前記支持台6の両支持板8のうち一方の支持板8の外側でウェブ15の幅方向Yの側面15aに向けて配置している。
【0006】
請求項1の発明では、レール穿孔機1をレール12に対し取り付ける手段として、支持台6の磁力吸着部10の吸着面11をウェブ15の幅方向Yの側面15aに吸着するようにしたので、レール穿孔機1をレール12の頭部13の上方を跨ぐことなくレール12の幅方向Yの両側のうち片側に配置することができる。
【0007】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記取付状態で、両支持板8における上側支持面21よりも上方に位置する上端面23は、レール12の頭部13の上面13aよりも下方に位置し、その上端面23の上方にはレール12の頭部13の幅方向Yの側面13cに隣接する空域Sを有している。請求項2の発明では、レール12の頭部13の上面13aを走行する車輪とレール穿孔機1との接触をこの空域Sにより回避することができる。
【0008】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記取付状態で、前記空域Sはレール12の頭部13の幅方向Yの側面13cから幅方向Yの片側へ延びている。請求項3の発明では、レール12の頭部13の上面13aを走行する車輪とレール穿孔機1との接触をこの空域Sにより一層回避することができる。
【0009】
請求項1または請求項2または請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記取付状態で、前記磁力吸着部10の吸着面11は両支持板8における上側支持面21と下側支持面24との間の側縁16bからウェブ15の幅方向Yの側面15aに向けて突出している。請求項4の発明では、支持台6の磁力吸着部10の吸着面11をウェブ15の幅方向Yの側面15aに対し接触させて吸着させることができる。
【0010】
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明において、前記両支持板8にはレール12における頭部13の幅方向Yの側面13cと台部14の幅方向Yの側面14cとに当てがわれる側面22,25を設けている。例えば、前記両支持板8の上側側面22は頭部13の幅方向Yの側面13cに沿って設けられ、前記両支持板8の上側支持面21は頭部13の下面13bに沿って設けられ、前記磁力吸着部10の吸着面11はウェブ15の幅方向Yの側面15aに沿って設けられ、前記両支持板8の下側支持面24は台部14の上面14aに沿って設けられ、前記両支持板8の下側側面25は台部14の幅方向Yの側面14cに沿って設けられている。請求項5の発明では、両支持板8の上下両支持面21,24によりレール12に対する支持台6の上下方向Zの動きを規制することができるばかりでなく、両支持板8の側面22,25の機能により磁力吸着部10の機能と相俟ってレール12に対する支持台6の幅方向Yの動きを規制することができる。
【0011】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第6の発明においては、前記両支持板8を支持台6に対し締結手段9により着脱可能に取り付けている。第6の発明では、両支持板8を交換して、レール穿孔機1をサイズの異なるレール12に取り付けることができる。
【0012】
第6の発明を前提とする第7の発明において、前記締結手段9は支持台6に対する両支持板8の取付位置を調節可能にした移動調節部を有している。例えば、前記締結手段9の移動調節部は、支持台6に螺合されて支持板8を支持台6に締め付ける締付ねじ19,20と、支持板8に形成されてその締付ねじ19,20が相対移動可能に挿通される締付孔17,18とを備えている。第7の発明では、締結手段9の移動調節部により、両支持板8の上下両支持面21,24や両支持板8の上下両側面22,25をレール12に対し接触させて支持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、車両が実際に通るレール12の敷設状態のままでもレール12のウェブ15に対し連結孔を穿つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかる磁力固定式レール穿孔機について図1,2,3を参照して説明する。
図1〜3に示すレール穿孔機1において、駆動源としての電動モータ3と、この電動モータ3の出力伝達機構に連動して回転するカッター着脱部5を有するカッター支持機構4とを備えた駆動ユニット2は、支持台6の幅方向Yの表裏両側のうち表側で、支持台6の長手方向Xに沿って移動可能に支持されて所定スライド位置で固定し得るスライド台7に対し載置され、そのスライド台7に対し支持台6の幅方向Yの軸心7aを中心に回動可能に支持されて所定回動位置で固定し得る。この支持台6の長手方向Xの両端部にはそれぞれ支持板8が締結手段9により着脱可能に取り付けられている。この両支持板8間で支持台6の裏側には吸着面11を有する磁力吸着部10が着脱可能に取り付けられている。
【0015】
一方、図1〜3に示すレール12において、その上下方向Zの両側でレール12の長手方向Xへ延設された頭部13と台部14との間にはその頭部13及び台部14に沿ってウェブ15が延設されている。このレール12としては、例えば、図1(a)(b)に示すように頭部13の上下両面13a,13bのうち上面13aと台部14の上下両面14a,14bのうち下面14bとの間の背丈Hの高いものと、図3(a)(b)に示すようにその背丈Hの低いものとが規格品として存在している。
【0016】
前記支持板8としては、図1(c)に示すように背丈Hの高いレール12の場合に使用される長さLの長いものと、図3(c)に示すように背丈Hの低いレール12の場合に使用される長さLの短いものとが用意されている。前述したように支持台6に対し締結手段9により着脱可能に取り付けられたいずれの支持板8においても、幅方向Yの両側縁16a,16b間で上下両側に締付孔17が貫設されているとともに、この上下両締付孔17間で前記磁力吸着部10に対し反対側になる側縁16aにはU状に切り欠かれた締付孔18が貫設され、いずれの締付孔17,18にも締付ねじ19,20が挿通されて支持台6に螺着されている。この締付孔17,18と締付ねじ19,20とは支持台6に対する支持板8の移動調節部として機能し、支持台6に対し締付ねじ19,20を緩めた状態で支持板8を締付ねじ19,20に対する締付孔17,18の遊びの範囲で移動調節することができる。前記磁力吸着部10の吸着面11は磁力吸着部10側になる側縁16bから突出している。この支持板8の上端部においては、この側縁16bの上端部から連続する支持面21と、この支持面21から連続する側面22と、この側面22から連続する上端面23とが形成されている。また、この支持板8の下端部においては、この側縁16bの下端部から連続する支持面24と、この支持面24から連続する側面25と、この側面25から連続する上端面26とが形成されている。
【0017】
支持板8を支持台6に対し緩めた状態でレール穿孔機1をレール12の幅方向Yの片側に配置して、磁力吸着部10の吸着面11をウェブ15の幅方向Yの側面15aに吸着した取付状態で、レール12に対する支持板8の位置を調節した後に支持板8を支持台6に締め付けて固定すると、支持板8の上側支持面21が頭部13の下面13bに当てがわれるとともに支持板8の下側支持面24が台部14の上面14aに当てがわれて、支持台6の上下方向Zの動きを規制する。また、支持板8の上側側面22が頭部13の側面13cに当てがわれるとともに支持板8の下側側面25が台部14の側面14cに当てがわれて、支持台6の幅方向Yの動きを磁力吸着部10による吸着と相俟って規制する。前記カッター支持機構4におけるカッター着脱部5の回転中心線5aは支持台6の両支持板8のうち一方の支持板8の外側でウェブ15の幅方向Yの側面15aに向けて配置される。このカッター着脱部5に取り付けられたカッターにより、ウェブ15に対し連結孔を穿つことができる。前記取付状態で、両支持板8において上側支持面21よりも上方に位置する上端面23は、レール12の頭部13の上面13aよりも距離Aだけ下方に位置し、その上端面23の上方には頭部13の幅方向Yの側面13cに隣接してその側面13cから幅方向Yの片側へ距離Bだけ延びる空域Sが生じる。なお、前記取付状態で、両支持板8において下側支持面24よりも下方に位置する下端面26は、レール12の台部14の下面14bよりも上方に位置している。
【0018】
本実施形態は下記の効果を有する。
* 支持台6の磁力吸着部10の吸着面11をウェブ15の幅方向Yの側面15aに吸着するようにしてレール穿孔機1をレール12に対し幅方向Yの片側に配置した状態で取り付けるので、レール穿孔機1をレール12の頭部13の上方を跨ぐことなく、車両が実際に通るレール12の敷設状態のままでもレール12のウェブ15に対し連結孔を穿つことができる。
【0019】
* レール12の頭部13の幅方向Yの側面13cに隣接する空域Sを有しているので、頭部13の上面13aを走行する車輪とレール穿孔機1との接触をこの空域Sにより回避することができる。
【0020】
* 支持台6の支持板8及び磁力吸着部10により、レール12に対する支持台6の上下方向Zの動きや幅方向Yの動きを規制することができる。
* 支持台6の磁力吸着部10の吸着面11を台上に載置すれば、レール12以外のものも容易に穿孔することができる。
【0021】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 支持台6の支持板8についてはレール12のサイズや外形状に合わせた各種サイズや外形状のものを用意することができる。
【0022】
・ 支持台6の磁力吸着部10についてはレール12のサイズや外形状に合わせた各種サイズや外形状のものを用意することができる。
・ 支持台6の支持板8については上側側面22及び下側側面25を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本実施形態にかかる磁力固定式レール穿孔機を所定規格のレールに取り付けた状態を示す正面図であり、(b)は(a)の背面図であり、(c)はその取り付けで利用した支持板を示す正面図である。
【図2】(a)は図1(a)の底面図であり、(b)は図1(a)の側面図であり、(c)は(b)で支持台に対し駆動源及びカッター支持機構を回動させた側面図である。
【図3】(a)は本実施形態にかかる磁力固定式レール穿孔機をサイズの異なる別のレールに取り付けた状態を示す正面図であり、(b)は(a)の背面図であり、(c)はその取り付けで利用した支持板を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…磁力固定式レール穿孔機、3…駆動源、4…カッター支持機構、5…カッター着脱部、5a…カッター着脱部の回転中心線、6…支持台、8…支持板、10…磁力吸着部、11…吸着面、12…レール、13…レールの頭部、13a…頭部の上面、13b…頭部の下面、13c…頭部の側面、14…レールの台部、14a…台部の上面、14c…台部の側面、15…レールのウェブ、15a…ウェブの側面、21…支持板の上側支持面、22…支持板の上側側面、23…支持板の上端面、24…支持板の下側支持面、25…支持板の下側側面、S…空域、X…レールの長手方向、Y…レールの幅方向、Z…レールの上下方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの上下方向両側でレールの長手方向へ延設した頭部と台部との間にその頭部及び台部に沿って延設したウェブに対しレールに対する取付状態で連結孔をレールの幅方向へ穿つレール穿孔機において、
駆動源と、この駆動源に連動して回転するカッター着脱部を有するカッター支持機構と、この駆動源及びカッター支持機構を支持する支持台とを備え、
レールに対する取付状態で、前記駆動源とカッター支持機構と支持台とがレールにおける頭部や台部やウェブの幅方向側面よりも幅方向両側のうち片側に配置され、
この支持台の長手方向両端部にはレールの頭部下面と台部上面とに当てがわれて支持台の上下方向の動きを規制する支持面を有する支持板を設けるとともに、この両支持板間で支持台にはレールの頭部と台部との間でウェブの幅方向側面に吸着される吸着面を有する磁力吸着部を設け、この磁力吸着部の吸着面をウェブの幅方向側面に吸着した取付状態で前記カッター支持機構におけるカッター着脱部の回転中心線を前記支持台の両支持板のうち一方の支持板の外側でウェブの幅方向側面に向けて配置する
ことを特徴とする磁力固定式レール穿孔機。
【請求項2】
前記取付状態で、両支持板において上側支持面よりも上方に位置する上端面は、レールの頭部上面よりも下方に位置し、その上端面の上方にはレールの頭部の幅方向側面に隣接する空域を有していることを特徴とする請求項1に記載の磁力固定式レール穿孔機。
【請求項3】
前記取付状態で、前記空域はレールの頭部の幅方向側面から幅方向片側へ延びていることを特徴とする請求項2に記載の磁力固定式レール穿孔機。
【請求項4】
前記取付状態で、前記磁力吸着部の吸着面は両支持板における上側支持面と下側支持面との間の側縁からウェブの幅方向側面に向けて突出していることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の磁力固定式レール穿孔機。
【請求項5】
前記取付状態で、前記両支持板にはレールにおける頭部の幅方向側面と台部の幅方向側面とに当てがわれる側面を設けた請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項に記載の磁力固定式レール穿孔機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−285762(P2009−285762A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139459(P2008−139459)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000205052)大見工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】