説明

磁力波伝搬を利用した通信事業

【課題】大気中、地中、水中、海水中、地上、水上、海上、もしくはこれらの組合せにおいて、比較的に低損失で伝搬する磁力波信号を利用して、中距離間での通信サービスを行なうための通信事業を実現する。
【解決手段】陸上に固定された基地局22内に設置された送受信機221に磁力波信号の4分の1波長以下の短ループアンテナ222を接続することによって、磁力波信号を水中あるいは海水中において効率よく送受信し、かつ海上を移動する移動局21に設置された送受信機211に磁力波信号の4分の1波長以下の短ループアンテナ212を接続することによって、前記基地局22との間あるいは別に設けたアクテイブタグ31との間で磁力波信号を効率よく送受信し、固定局22と移動局21との間、あるいは移動局21とアクテイブタグ31との間で、中距離間の移動体通信サービスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気中、水中、地中、海水中、水上、地上、海上、あるいはこれらの組合せの中を、比較的に低損失で伝搬する磁力波信号を利用し、中距離間での通信サービスを行なうための通信事業に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁力波の定義、および海水中での磁力波の伝搬特性などが明確でなかった問題点があった。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2009−225395号公報
【0003】
特許文献1に記載されている従来の「磁力波を利用した通信事業」では、陸上に固定された基地局22内に設置され、送受信機221に接続されたループアンテナ222によって、磁力波を水中あるいは海水中において効率よく送受信し、一方、海上を移動する移動局21に設置され、送受信機211に接続されたループアンテナ212によって前記基地局22との間あるいは別に設けたアクテイブタグ31との間で磁力波を効率よく送受信することによって、固定局22と移動局21との間、あるいは移動局21とアクテイブタグ31との間で移動体通信サービスを提供するとされているが、磁力波の定義、および磁力波の伝搬特性に関する記述が不明確であるなどの問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、大気中、水中、地中、海水中、水上、地上、海上、あるいはこれらの組合せにおける磁力波信号の伝搬特性を明確にするとともに、磁力波伝搬を利用した通信事業を実現するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係わる磁力波伝搬を利用した通信事業は、従来電磁波信号の伝搬が難しいとされていた水中あるいは海水中において、磁力波信号の伝搬が電磁波信号の伝搬に比較してはるかに低損失であることを明確にするとともに、磁力波信号の中距離間での伝搬が可能であることを利用して通信サービスを行なうためのものである。
【発明の効果】
【0006】
従来、水中あるいは海水中での通信にはもっぱら音波あるいは超音波が用いられ、あるいは例えば100kHz以下あるいは数Hzである極めて低い周波数帯の電磁波信号を用いて行われており、100kHz以上の比較的に高い周波数帯の電磁波信号は、例えば海水中での減衰が1MHz帯において約100dB/mと急激であるために、利用が難しいというのが定説であった。
本発明の磁力波伝搬を利用した通信事業では、100kHz以上の周波数帯において広い帯域幅の磁力波信号の伝搬を利用することで、水中あるいは海水中において数10m〜数10kmの中距離間の通信が可能となり、広帯域で高品質の通信サービスを安価に提供する通信事業を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すシステム構成図
【図2】本発明の第2の実施の形態を示すシステム構成図
【図3】本発明の第1と第2の実施の形態における磁力波信号の伝搬特性を解析するための説明図
【図4】本発明の第1と第2の実施の形態における磁力波信号の伝搬特性と従来の電磁波信号の伝搬特性との比較図
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明に係わる磁力波伝搬を利用した通信事業は、図1〜図3、および請求項第1項に、本発明の第1の実施の形態を示すように、大気中、水中、地中、海水中、水上、地上、海上、あるいはこれらの組合せにおいて、周波数が100kHz以上で比較的に広い帯域を占有する磁力波信号を利用し、かつ数10m〜数10km程度の中距離間で通信サービスを行う通信事業において、前記磁力波信号を効率よく放射するための第1の磁力波アンテナと、前記第1の磁力波アンテナに対して伝導電流を効率よく駆動するための第1の通信手段と、前記磁力波信号から起電力を効率よく誘起するための第2の磁力波アンテナと、前記誘起した起電力を効率よく受信するための第2の通信手段とから構成される。
【0009】
前記第1の磁力波アンテナが、前記磁力波信号の4分の1波長以下の短ループアンテナであり、前記駆動される伝導電流によって生じる磁界変動を効率良く生成して外部へ放射するための磁界変動送信手段と、駆動される変位電流によって生じる電界変動を抑制し、あるいは外部への電磁波信号の放射を抑制するための電界変動抑制手段とを有し、前記第2の磁力波アンテナが、前記磁力波信号の4分の1波長以下の短ループアンテナであり、誘導磁界の変動を受信して起電力を効率良く生成するための磁界変動受信手段と、生成される起電力によって生じる電界変動を抑制し、あるいは外部への電磁波信号の再放射を抑制するための電界変動抑制手段とを有する。
【0010】
また、請求項第2項に示すように、前記通信サービスが、音声通信サービスであり、データ通信サービスであり、画像通信サービスであり、インターネット通信サービスであり、あるいはこれらの組合せである。
また、請求項第3項に示すように、前記通信サービスが、公衆通信サービスであり、専用通信サービスであり、固定間通信サービスであり、移動体通信サービスであり、データの収集・配信サービスであり、位置検知もしくは位置測位サービスであり、あるいはこれらの組合せである。
また、請求項第4項に示すように、前記第1の通信手段、第2の通信手段、もしくはこれらの両方が、移動局であり、固定局であり、中継局であり、固定電話局であり、無線マーカであり、アクテイブタグであり、あるいはこれらの組合せである。

【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態を示すシステム構成図であり、磁力波伝搬を利用した移動体通信サービスの例である。図1において、21は移動局、22は固定局、23は固定電話局、31は無線マーカもしくはアクテイブタグ、211、221は送受信機、212、222、311は磁力波信号の波長の4分の1波長以下の長さの短ループアンテナ、231は公衆電話網、111は海表面、112は岸壁など、113は海底である。前記短ループアンテナ212からは磁力波信号が放射され、中距離間を低損失で伝搬して前記短ループアンテナ222によって受信され、前記短ループアンテナ311から放射された磁力波信号は前記短ループアンテナ212によって受信され、逆に、前記短ループアンテナ222から放射された磁力波信号は前記短ループアンテナ212によって受信される。
【0012】
ここで、大気中、水中、地中、海水中、、水上、地上、海上、あるいはこれらの組合せにおいて、周波数が100kHz以上で比較的に広い帯域を占有する磁力波信号を利用し、かつ数10m〜数10km程度の中距離間で通信サービスを行う通信事業において、前記磁力波信号を効率よく放射するための第1の磁力波アンテナと、前記第1の磁力波アンテナに対して伝導電流を効率よく駆動するための第1の通信手段と、前記磁力波信号から起電力を効率よく誘起するための第2の磁力波アンテナと、前記誘起した起電力を効率よく受信するための第2の通信手段とから構成される。
【0013】
また、前記第1の磁力波アンテナが、前記磁力波信号の4分の1波長以下の短ループアンテナであり、前記駆動される伝導電流によって生じる磁界変動を効率良く生成して外部へ放射するための磁界変動送信手段と、駆動される変位電流によって生じる電界変動を抑制し、あるいは外部への電磁波信号の放射を抑制するための電界変動抑制手段とを有し、前記第2の磁力波アンテナが、前記磁力波信号の4分の1波長以下の短ループアンテナであり、誘導磁界の変動を受信して起電力を効率良く生成するための磁界変動受信手段と、生成される起電力によって生じる電界変動を抑制し、あるいは外部への電磁波信号の再放射を抑制するための電界変動抑制手段とを有する。
【0014】
(実施の形態2)
図2は、本発明の第2の実施の形態を示すシステム構成図である。図2において、24は中継局、25a、25bは移動局、26は固定局、27は衛星局、31は無線マーカもしくはアクテイブタグ、241aは電磁波アンテナ、241b、251a、251b、261、および311は短ループアンテナ、241、251a、251b、261は送受信機、311は送信機、111は海表面、113は海底である。
前記中継局24の送受信機241に接続された短ループアンテナ241bが例えば海水中に設置され、前記中継局24の送受信機241に接続された電磁波アンテナ241aが大気中に設置され、前記送受信機241によって単方向中継および/あるいは双方向中継が行なわれる。
【0015】
前記中継局24の送受信機241に接続された短ループアンテナ241bと、移動局25a、25b、固定局26、およびアクテイブタグ31との間で地中、水中、海水中もしくはこれらの組合せにおいて通信ネットワークを構成し、前記中継局24の送受信機241に接続された電磁波アンテナ241aと衛星局27との間で大気中における通信ネットワークを構成し、前記中継局24は両者間を中継する役割を担っている。
また、前記中継局24は前記地中、水中、海水中、もしくはこれらの組合せにおける通信ネットワーク内で中継する役割を持たせることも可能である。
【0016】
また、前記中継局24の通過帯域幅を広帯域特性とすることで、例えば、地上と、地中、水中、あるいは海水中との間でブロードバンドな通信サービスを可能とする。
また、大気中に向かって、任意の周波数帯で、必要な帯域幅の単方向あるいは双方向中継局を構成することができる。
また、100kHz以上の周波数帯において、前記短ループアンテナ241bを中心として、中継機241を時分割で動作させ、移動局25a、25b、固定局26、およびアクテイブタグ31との間で単方向中継局および/あるいは双方向中継局を構成することができる。
【0017】
図3は、本発明の第1と第2の実施の形態における磁力波信号の伝搬特性を解析するための説明図である。
従来から、電磁波信号の伝搬式については、マックスウエルの方程式とポインテイングの理論とによって、下記の式で示されている。
E・∇H = E・J + E・(∂D/∂t) - - -(1)
前記(1)式において、E・Jは伝搬損失、E・(∂D/∂t)はポインテイングペクトルと呼ばれる電磁波信号の伝搬電力を示すものであり、真空中あるいは大気中では伝導電流Jが流れないため、伝導電流に起因する伝搬損失は0であるが、海水中では、伝導電流ガ流れるために、伝搬損失が大きく、電磁波信号の伝搬の減衰が1MHz帯において約100dB/mと急激であるとされている。
【0018】
そこで、図3に示す説明図を用いて、磁力波伝搬のメカニズムをファラデーの法則に立ち返って解明する。図3において、600aは短ループアンテナを用いた送信アンテナ、600bは短ループアンテナを用いた受信アンテナ、601a、601bは電界シールド、602a、602bは送信アンテナ600aに流れる伝導電流の方向、603a、603bはインピーダンス変換トランス、604a、604bはインピーダンス整合用コンデンサ、605a、605bは電磁界シールド、606a、606bはアンテナコネクタ、611aは短ループアンテナの間隔D(m)、611bは短ループアンテナの面積S(m^2)、612は送信アンテナと受信アンテナの距離R(m)とする。ここで、前記短ループアンテナ600a、600bがお互いに水平面方向に対向しているものとする。
【0019】
例えば、周波数が3.58MHzにおいて、前記短ループアンテナ600a、600bの長さが2mであり、直径2cmの銅パイプを用いた正方形ループの場合、表皮抵抗が3Ω程度となるので、変換比が1:16のインピーダンス変換トランス603a、603bを用いて抵抗成分を50Ωに変換すると共に、誘導性リアクタンス成分をインピーダンス整合用コンデンサ604a、604bによって打ち消すことで、コネクタ606a、606bから見たアンテナのインピーダンスを市販の同軸ケーブルの特性インピーダンスと整合させるものとする。
前記整合させた状態で、前記送信機に接続された短ループアンテナ600aに対して伝導電流を効率良く駆動し、あるいは受信側短ループアンテナ600bから起電力を効率よく出力させることが可能となり、しかも、市販品の無線通信装置がそのままで使用可能となるので、経済的な効果が得られる。
【0020】
前記送信アンテナ600aの各辺が無限長であり、伝導電流ISinωtが均一に流れているとして、ファラデーの法則から、受信アンテナ600bの中心部での磁界変動を磁束密度の変動(dBR/dt)によって表現すると、次式によって表わすことができる。
(dBR/dt)=μINω[{1/2π(R-(D/2))}-{1/2π(R+(D/2))}]Cosωt=[μINfD/R^2]Cosωt - - -(2)
ここで、Nは送信側の短ループアンテナの巻数、Dは送信側の短ループアンテナの間隔、Rは送信アンテナと受信アンテナとの間隔、μ=4π10^−7は海水の透磁率であり、ω=2πfは磁力波信号の角周波数であり、R>>Dとする。
ただし、前記送信アンテナ600aの各辺は有限長であるため、前記磁束密度の変動が(2)式より減少することが確認されている。
【0021】
一方、前記受信アンテナ600bの出力端子間に生じる起電力emfは、受信アンテナ600bの面積をSとし巻数をNとすると、次式によって表わすことができる。
emf=-(dΦ/dt)=-∫(dBR/dt)=-[μIN^2fDS/R^2]Cosωt - - -(3)
例えば、f=3.58MHz、I=1.58A(送信出力10W相当)、N=1回巻、D=0.5m、S=0.25m^2とすると、距離Rにおける起電力は、前記短ループアンテナ600a、600bがお互いに水平面方向に対向している場合には、emf=0.89/R^2(V)となる。
【0022】
次に、前記送信アンテナ600aを駆動する駆動電力PTxと、受信側の短ループアンテナ600bから出力される受信電力PRxとの比、従って、磁力波信号の誘導伝搬損失PLは、短ループアンテナの表皮効果を含めた直列抵抗をrとすると、次式によって表わすことができる。
PL=PTx/PRx=(rI^2)/[{μIN^2fDS/R^2}^2/4r]=[{2r/μN^2fDS}^2]/(R^4) - - -(4)
例えば、f=3.58MHz、N=1回巻、D=0.5m、S=0.25m^2とすると、r=3Ω(銅パイプ直径2cmに相当)となり、前記送信側の短ループアンテナ600aへの駆動電力を40dBm(10W)とすると、受信側の短ループアンテナ600bでの受信電力は、R=1mではPRx=17dBm、R=10mではPRx=−23dBm、R=100mではPRx=−63dBm、R=1kmではPRx=−103dBmとなるので、海水中で400m離れた地点と数Mbps程度の広帯域通信が可能であり、1km離れた地点でも数kbps程度の狭帯域通信であれば十分可能なことになる。なお、駆動電力を更に大きくすることで通信距離を拡大することができるが、バースト信号として間欠発信する場合には、平均電力は問題となるほど大きくならない利点がある。
【0023】
ただし、(4)式には、前記インピーダンス変換トランス603a、603bの損失、および短ループアンテナの間隔Dmが有限であるための誘導磁界の算出誤差、電磁波の放射による損失の増加分などが含まれておらず、これらを含めると損失の増加が見込まれるので、実用化に際しては詳細な検討を要する。
なお、(4)式によって表わされる磁力波信号の伝搬損失では、表皮効果を含めた直列抵抗rが小さければ小さい程、駆動電力が同じでも大きな伝導電流を駆動できることから、前記短ループアンテナ、インピーダンス変換トランス、もしくはこれらの両方に、例えば、規定値以下の直列抵抗が得られる超伝導材料、構成、あるいは構造を採用することによって、磁力波信号の放射効率を高めることができる。ただし、直列抵抗rが小さくなると前記短ループアンテナのQ値が大きくなり、周波数帯域幅が狭くなるので後述するような対策が必要となる。
【0024】
また、前記短ループアンテナ600a、600bと、インピーダンス変換用トランス603a、603bの1次側端子とが、直列もしくは並列に接続され、前記インピーダンス変換用トランスの2次側端子に、インピーダンス整合用コンデンサ604a、604bが、直列もしくは並列に接続され、かつ前記短ループアンテナ、前記インピーダンス変換用トランス、前記インピーダンス整合用コンデンサ、あるいはこれらの組み合わせを、前記電界変動抑制手段内に収納することで、電界変動が外部へ放射されることのよる損失の増加を抑制することができる。
また、前記短ループアンテナに、前記インピーダンス整合用コンデンサを、直接あるいはインピーダンス変換用トランスを介して、直列もしくは並列に接続して共振回路を構成することでも同様な効果が得られる。
また、前記インピーダンス整合用コンデンサをインピーダンス変換用トランスの2次側の端子に分散して接続することでバランスした回路構成となる。
【0025】
図4は、本発明の第1と第2の実施の形態における磁力波信号の伝搬特性と従来の電磁波信号の伝搬特性との比較図である。図4において、(1)式で示される大気中における電磁波信号の伝搬損失と、(4)式によって表わされる大気中における磁力波信号の伝搬損失とを比較すると、大気中の電磁波信号の伝搬損失が距離の二乗に比例して6dB/octで増加するのに対して、磁力波信号の伝搬損失が距離の四乗に比例して12dB/octで増加するので、この点では電磁波信号の伝搬損失の増加の方が緩やかであり、遠距離間通信には有利であることが分かる。
【0026】
一方、(1)式で示される海水中での電磁波信号の伝搬損失と、(4)式によって表わされる海水中での磁力波信号の伝搬損失とを比較すると、電磁波信号の伝搬損失が1MHz帯において約100dB/mと急激であるのに比較して、磁力波信号の伝搬が12dB/octと緩やかに減衰するので、海水中においては、磁力波信号の伝搬による磁力波通信の方が俄然有利となり、海水と同じ塩分濃度の塩水中での伝搬実験でも伝搬損失が緩やかであり、中距離間の通信が可能であることが実験で確認されている。
【0027】
また、大気中においては磁力波信号の伝搬の方が不利であるとしても、磁力波信号の伝搬の方が、従来不可能とされていた、大気中から海水中へ、あるいは逆に海水中から大気中への中距離間通信を可能とするメリットが大きいことから、海水中と大気中とをシームレスに接続する磁力波通信装置が実現可能であることを示唆している。
また、海水中での磁力波伝搬を利用する以外に、一般的に、電磁波信号の伝搬損失が磁力波信号の伝搬損失より比較的に大きい物質中で、磁力波伝搬を利用しても同様な効果が得られることになる。
【0028】
また、前記アンテナ手段が、少なくとも、駆動された伝導電流から効率よく磁力波信号を放射し、あるいは受信した磁力波信号から効率よく起電力を誘起するための磁力波アンテナであり、前記アンテナ手段、送信手段、受信手段、もしくはこれらの組み合わせが、少なくとも、電界変動の生成を抑制し、あるいは電界変動を低損失で内部に蓄積して外部へ放射することを抑制するための電界変動抑制手段を有し、かつ磁力波信号を効率よく外部へ放射するための磁界変動生成手段、あるいは磁力波信号を効率よく外部から受信するための磁界変動受信手段を有するものとする。
また、前記短ループアンテナの開口面が電界シールド601a、601bによって覆われており、前記短ループアンテナの開口面以外が電磁界シールド605a、605bによって囲まれている場合には、電界変動が低損失で内部に蓄積されて外部へ放射されないので、電界変動の放射による電力損失を抑制することができる。
【0029】
以上の説明では短ループアンテナを用いる場合について述べたが、磁界型アンテナ、あるいは磁流型アンテナ、あるいはフエライトコア上に巻かれたフエライトアンテナ、あるいはヘリカルアンテナ、あるいはスパイラルアンテナ、あるいはスロットアンテナ、あるいはループスパイラルアンテナ、あるいはマイクロストリップアンテナなど、比較的に大きな磁界変動および/あるいは磁流変動を送信しかつ/または受信するアンテナを用いても同様な効果が得られる。
【0030】
また、前記固定局あるいは中継局あるいは移動局あるいはアクテイブタグあるいはこれらの組合せが少なくとも相互間の相対距離および/あるいは相互間の方向を高精度で測定する機能を有することで、前記通信サービスの付加価値を高めることができる。
また、磁力波を利用して行なう前記通信サービスが公衆通信サービスであり、あるいは専用通信サービスであり、あるいは固定間通信サービスであり、あるいは移動体通信サービスであり、あるいはデータ収集サービスであり、あるいは情報発信サービスであり、あるいは安全管理サービスであり、あるいは案内サービスであり、あるいはこれらの組合せとして提供できる。
【0031】
また、前記磁力波信号が、大気中、地中、水中、海水中、もしくはこれらの組合せにおいて、中距離間を低損失で伝搬する特性を有し、100kHz以上の周波数帯において必要な帯域幅を占有することができる。
また、前記固定局、中継局、移動局、アクテイブタグ、あるいはこれらの組合せが、大気中、地中、水中、海水中、地上、水上、海上、もしくはこれらの組合せにおいて、複数の移動体に設置され、複数のダイバーあるいは海水浴客あるいは船舶の乗組員あるいは水中あるいは海水中の生物によって携帯され、水中あるいは海水中あるいは水底あるいは海底に離散的に設置された複数のセンサーに接続され、あるいは水中あるいは海水中あるいは水底あるいは海底に離散的に固定され、あるいはこれらの組合せによって運用可能であり、移動体相互間の中距離間通信、船舶の衝突防止、遭難者の探索、あるいは地殻変動の監視ネットワークなど幅広いサービスを提供できる。
【0032】
また、前記固定局、中継局、移動局、アクテイブタグ、あるいはこれらの組合せから少なくとも水上あるいは海上を移動する移動体の安全な移動を支援し誘導するために必要な情報を間欠的に発信し、かつ/または水中あるいは海水中を移動する移動体の自律移動を支援し誘導するために必要な情報を間欠的に発信することで、前記通信サービスの付加価値を高めることができる。

また、前記固定局、中継局、移動局、アクテイブタグ、あるいはこれらの組合せを海上のブイに搭載し、あるいは海底のアンカーに固定することことで恒常的な設備として運用することができる。
【0033】
また、前記固定局、中継局、移動局、アクテイブタグ、あるいはこれらの組合せが、波動および/あるいは潮流のエネルギによって発電された電力を利用して運用すること、長い期間であり、かつ無保守での運用ができる。
また、塩分濃度が0%から10%までの真水中あるいは海水中で磁力波を利用し、アナログ通信あるいはデジタル通信、あるいはスペクトル拡散符号を用い音声通信あるいはデータ通信など、広帯域で高速度の通信が可能である。
また、前記通信サービスが、新技術、新システム、あるいは新サービスの開発業務を含み、機器の製造と販売業務およびアフタサービスを含み、機器のレンタルあるいはリース業務を含み、あるいはこれらの組合せによって、当該通信事業を将来に渡って継続し発展させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は上記のように構成されているため、大気中、地中、水中、海水中、地上、水上、海上、もしくはこれらの組合せにおいて、広帯域中距離間通信サービス、船舶の水先案内サービス、船舶の安全救援サービス、ダイバーの安全救援サービス、海上遭難者の探索と救援サービス、海水中でのセンシングサービスなどへの展開が可能であり、また、スペクトル拡散通信システムを適用した秘匿通信サービス、あるいは高速大容量のデータ通信サービス、あるいは画像通信を含むマルチメデイア通信サービスなどの高付加価値の通信サービスを実現することができる。
【符号の説明】
【0035】
21 海上移動局
22 基地局
23 固定電話局
24 中継局
25a、25b、25c、 水中あるいは海水中の移動局
26 固定局
27 衛星局
31 無線マーカもしくはアクテイブタグ
【0036】
111 海表面
112 岸壁など
113 海底面
211、221 送受信機
231 公衆電話網
241 中継機
242a242b 短ループアンテナ
251a〜251c、261 送受信機
262 短ループアンテナ
311 短ループアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中、水中、地中、海水中、水上、地上、海上、あるいはこれらの組合せにおいて、周波数が100kHz以上で比較的に広い帯域を占有する磁力波信号を利用し、かつ数10m〜数10km程度の中距離間で通信サービスを行う通信事業において、
前記磁力波信号を効率よく放射するための第1の磁力波アンテナと、前記第1の磁力波アンテナに対して伝導電流を効率よく駆動するための第1の通信手段と、前記磁力波信号から起電力を効率よく誘起するための第2の磁力波アンテナと、前記誘起した起電力を効率よく受信するための第2の通信手段とから構成され、
前記第1の磁力波アンテナが、前記磁力波信号の4分の1波長以下の短ループアンテナであり、前記駆動される伝導電流によって生じる磁界変動を効率良く生成して外部へ放射するための磁界変動送信手段と、駆動される変位電流によって生じる電界変動を抑制し、あるいは外部への電磁波信号の放射を抑制するための電界変動抑制手段とを有し、
前記第2の磁力波アンテナが、前記磁力波信号の4分の1波長以下の短ループアンテナであり、誘導磁界の変動を受信して起電力を効率良く生成するための磁界変動受信手段と、生成される起電力によって生じる電界変動を抑制し、あるいは外部への電磁波信号の再放射を抑制するための電界変動抑制手段とを有することを特徴とする磁力波伝搬を利用した通信事業。
【請求項2】
前記通信サービスが、音声通信サービスであり、データ通信サービスであり、画像通信サービスであり、インターネット通信サービスであり、あるいはこれらの組合せであることを特徴とする請求項第1項に記載の磁力波伝搬を利用した通信事業。
【請求項3】
前記通信サービスが、公衆通信サービスであり、専用通信サービスであり、固定間通信サービスであり、移動体通信サービスであり、データの収集・配信サービスであり、位置検知もしくは位置測位サービスであり、あるいはこれらの組合せであることを特徴とする前記請求項第1項に記載する磁力波伝搬を利用した通信事業。
【請求項4】
前記第1の通信手段、第2の通信手段、もしくはこれらの両方が、移動局であり、固定局であり、中継局であり、固定電話局であり、無線マーカであり、アクテイブタグであり、あるいはこれらの組合せであることを特徴とする前記請求項第1項に記載する磁力波伝搬を利用した通信事業。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−253695(P2012−253695A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126769(P2011−126769)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(395007299)有限会社アール・シー・エス (51)