説明

磁場測定装置

【課題】高い感度を有する磁場測定装置を提供する。
【解決手段】磁場測定装置100は、試料Sから交流磁場を発生させる交流磁場制御手段2と、交流磁場中に位置し、スピンによる磁気共鳴により交流磁場を検出する磁気検出手段4と、磁気検出手段4に静磁場を与える静磁場発生手段6と、磁気検出手段4にスピンを制御するためのパルスシーケンスを与える高周波磁場発生手段8と、磁気検出手段4の磁化を検出するスピン磁化検出手段8と、を含み、交流磁場制御手段2は、交流磁場を制御することによって、第1高周波磁場パルス照射後、第2高周波磁場パルス照射前の間、および第2高周波磁場パルス照射後、第3高周波磁場パルス照射前の間に、スピンの位相をシフトさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁場強度を精度よく計測するための磁場測定装置として、コンパスなど磁気力を用いたもの、磁気ホール素子などホール効果を用いたもの、磁気共鳴法を用いたもの、超伝導量子干渉計の原理を用いたものなどが知られている。これらは、サイズやコストの他、磁場に対する感度、分解能、磁場の絶対値が測定できるか否か、測定時間など、要求に応じて適宜選択されている。
【0003】
近年、脳波(脳の磁場信号)の測定や磁性材料の表面の測定など、微小な領域から発生する微弱な磁場強度を測定できる磁場測定装置が求められている。このような磁場測定装置として、磁気共鳴法を用いた磁場測定装置は、高い感度を有し、かつ磁場の絶対値を高い分解能で測定することができるため期待されている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、一般的なガウスメーターに用いられる磁気共鳴法とは異なり、Phase modulated pulse 技術を用いることにより、原子レベルの超小型磁気センサーで高感度に交流磁場強度を測定できることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.R.Maze et. al., "Nanoscale magnetic sensing with an individual electronic spin in diamond", Nature vol.455 2008 p644-648.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Phase modulated pulse 技術を用いた磁気センシングは、計測したい交流磁場の強度(振幅あるいは実効値)を、スピン歳差運動の回転位相シフトから評価する方法である。非特許文献1に記載の磁気センサーでは、下記式(1)で表される縦磁化Mが検出され、式(1)から交流磁場強度δBを求めることができる。
【0007】
【数1】

【0008】
但し、Mは熱平衡状態における磁気センサーの磁化であり、δBは交流磁場強度であり、γは、磁気センサーの磁気回転比であり、τはスピンエコー法に基づくパルスシーケンスにおけるパルス間隔である。
【0009】
しかしながら、非特許文献1の技術では、縦磁化Mと交流磁場強度δBとが式(1)の関係にあるため、例えば、δBがゼロのとき、MはMとなり、Mzがゼロとはならない。さらに、δBがゼロ近傍において微小な変化をしても、Mは感度よく応答しない。このように、非特許文献1に記載の磁気センサーでは、δBに対するMの応答関数の線形性がよくないため、微小な交流磁場強度を感度よく測定することが困難である。
【0010】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、高い感度を有する磁場測定装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る磁場測定装置は、
試料から発生する交流磁場の強度を測定するための磁場測定装置であって、
前記試料から前記交流磁場を発生させる交流磁場制御手段と、
前記交流磁場中に位置し、スピンによる磁気共鳴により前記交流磁場を検出する磁気検出手段と、
前記磁気検出手段に静磁場を与える静磁場発生手段と、
前記磁気検出手段に前記スピンを制御するためのパルスシーケンスを与える高周波磁場発生手段と、
前記磁気検出手段の磁化を検出するスピン磁化検出手段と、
を含み、
Z軸の周りに所定の角周波数で回転する回転座標系において、
前記磁気検出手段に与えられる前記静磁場の方向および前記交流磁場の方向を、Z軸方向とした場合、
前記パルスシーケンスは、
前記スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させる第1高周波磁場パルスと、
前記第1高周波磁場パルスの照射後に照射され、前記スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させる第2高周波磁場パルスと、
前記第2高周波磁場パルスの照射後に照射され、前記スピンを+X軸に対して右回りに90°回転させる第3高周波磁場パルスと、
を有し、
前記交流磁場制御手段は、前記交流磁場を制御することによって、前記第1高周波磁場パルス照射後、前記第2高周波磁場パルス照射前の間、および前記第2高周波磁場パルス照射後、前記第3高周波磁場パルス照射前の間に、前記スピンの位相をシフトさせ、
前記スピン磁化検出手段は、前記第3高周波磁場パルス照射後に、前記磁気検出手段の磁化を検出し、
前記スピン磁化検出手段の検出結果から前記交流磁場の強度を求める。
【0012】
このような磁場測定装置によれば、交流磁場強度に対する縦磁化の応答関数をサイン型にすることができる。そのため、交流磁場強度の微小変化に対して検出される縦磁化は線形に変化する。したがって、交流磁場強度を高い感度で測定できる。
【0013】
(2)本発明に係る磁場測定装置は、
試料から発生する交流磁場の強度を測定するための磁場測定装置であって、
前記試料から前記交流磁場を発生させる交流磁場制御手段と、
前記交流磁場中に位置し、スピンによる磁気共鳴により前記交流磁場を検出する磁気検出手段と、
前記磁気検出手段に静磁場を与える静磁場発生手段と、
前記磁気検出手段に前記スピンを制御するためのパルスシーケンスを与える高周波磁場発生手段と、
前記磁気検出手段の磁化を検出するスピン磁化検出手段と、
を含み、
Z軸の周りに所定の角周波数で回転する回転座標系において、
前記磁気検出手段に与えられる前記静磁場の方向および前記交流磁場の方向を、Z軸方向とした場合、
前記パルスシーケンスは、
前記スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させる第1高周波磁場パルスと、
前記第1高周波磁場パルスの照射後に照射され、前記スピンを+X軸に対して右回りに180°回転させる第2高周波磁場パルスと、
前記第2高周波磁場パルスの照射後に照射され、前記スピンを−X軸に対して右回りに90°回転させる第3高周波磁場パルスと、
を有し、
前記交流磁場制御手段は、前記交流磁場を制御することによって、前記第1高周波磁場パルス照射後、前記第2高周波磁場パルス照射前の間、および前記第2高周波磁場パルス照射後、前記第3高周波磁場パルス照射前の間に、前記スピンの位相をシフトさせ、
前記スピン磁化検出手段は、前記第3高周波磁場パルス照射後に、前記磁気検出手段の磁化を検出し、
前記スピン磁化検出手段の検出結果から前記交流磁場の強度を求める。
【0014】
このような磁場測定装置によれば、交流磁場強度に対する縦磁化の応答関数をサイン型にすることができる。そのため、交流磁場強度の微小変化に対して検出される縦磁化は線形に変化する。したがって、交流磁場強度を高い感度で測定できる。
【0015】
(3)本発明に係る磁場測定装置は、
試料から発生する交流磁場の強度を測定するための磁場測定装置であって、
前記試料から前記交流磁場を発生させる交流磁場制御手段と、
前記交流磁場中に位置し、スピンによる磁気共鳴により前記交流磁場を検出する磁気検出手段と、
前記磁気検出手段に静磁場を与える静磁場発生手段と、
前記磁気検出手段に前記スピンを制御するための第1パルスシーケンスおよび第2パルスシーケンスを与える高周波磁場発生手段と、
前記磁気検出手段の磁化を測定するスピン磁化検出手段と、
を含み、
Z軸の周りに所定の角周波数で回転する回転座標系において、
前記磁気検出手段に与えられる前記静磁場の方向および前記交流磁場の方向を、Z軸方向とした場合、
前記第1パルスシーケンスは、
前記スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させる第1高周波磁場パルスと、
前記第1高周波磁場パルスを照射後に照射され、前記スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させる第2高周波磁場パルスと、
前記第2高周波磁場パルスを照射後に照射され、前記スピンを+X軸に対して右回りに90°回転させる第3高周波磁場パルスと、
を有し、
前記第2パルスシーケンスは、
前記スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させる第4高周波磁場パルスと、
前記第4高周波磁場パルスを照射後に照射され、前記スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させる第5高周波磁場パルスと、
前記第5高周波磁場パルスを照射後に照射され、前記スピンを−X軸に対して右回りに90°回転させる第6高周波磁場パルスと、
を有し、
前記交流磁場制御手段は、前記交流磁場を制御することによって、前記第1高周波磁場パルス照射後、前記第2高周波磁場パルス照射前の間、および前記第2高周波磁場パルス照射後、前記第3高周波磁場パルス照射前の間に、前記スピンの位相をシフトさせ、前記第4高周波磁場パルス照射後、前記第5高周波磁場パルス照射前の間、および前記第5高周波磁場パルス照射後、前記第6高周波磁場パルス照射前の間に、前記スピンの位相をシフトさせ、
前記スピン磁化検出手段は、前記第3高周波磁場パルス照射後および前記第6高周波磁場パルス照射後に、前記磁気検出手段の磁化を検出し、
前記スピン磁化検出手段の検出結果から前記交流磁場の強度を求める。
【0016】
このような磁場測定装置によれば、交流磁場強度に対する縦磁化の応答関数をサイン型にすることができる。そのため、交流磁場強度の微小変化に対して検出される縦磁化は線形に変化する。したがって、交流磁場強度を高い感度で測定できる。さらに、測定結果から磁気共鳴とは無関係のバックグラウンドノイズを差し引くことができる。
【0017】
(4)本発明に係る磁場測定装置において、
前記磁気検出手段は、ダイヤモンドであってもよい。
【0018】
このような磁場測定装置によれば、高い空間分解能を有することができる。
【0019】
(5)本発明に係る磁場測定装置において、
前記高周波磁場発生手段は、高周波磁場の位相を制御する移相器を有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る磁場測定装置を模式的に示す図。
【図2】本実施形態に係る磁場測定装置において、磁気センサーに照射される高周波磁場のタイムチャート。
【図3】本実施形態に係る磁気センサーのスピンの状態を示す図。
【図4】本実施形態の第1変形例に係る磁場測定装置において、磁気センサーに照射される高周波磁場のタイムチャート。
【図5】本実施形態の第1変形例に係る磁気センサーのスピンの状態を示す図。
【図6】本実施形態の第2変形例に係る磁場測定装置において、磁気センサーに照射される高周波磁場のタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0022】
1. 磁場測定装置の構成
まず、本実施形態に係る磁場測定装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る磁場測定装置100を説明するための模式図である。
【0023】
磁場測定装置100は、図1に示すように、交流磁場制御器2と、磁気センサー4と、静磁場発生器6と、RFコイル(高周波磁場発生器)8と、を含む。
【0024】
試料Sは、例えば、遺伝子、蛋白質、生体分子等の生物試料や、磁性体等である。試料Sは、交流磁場制御器2からの刺激を受けて、磁気センサー4に交流磁場を作る。磁場測定装置100は、この磁気センサー4に作られた交流磁場の強度を測定することができる。これにより、例えば、試料Sにスピンがどの程度含まれているかなど、試料Sの磁気的、電気的な性質を知ることができる。なお、交流磁場の強度とは、交流磁場の振幅あるいは交流磁場の実効値をいう。
【0025】
交流磁場制御器2(交流磁場制御手段の一例)は、試料Sから交流磁場を発生させる。交流磁場制御器2は、例えば、磁気的な刺激、電気的な刺激を試料Sに与えて、試料Sに交流磁場を発生させることができる。交流磁場制御器2は、例えば、磁気共鳴法により試料Sのスピンを操作して、交流磁場を発生させてもよい。この場合、交流磁場制御器2は、高周波磁場パルスを試料Sに照射することで、試料Sのスピンを操作する高周波磁場コイル(RFコイル)であってもよい。交流磁場制御器2によって試料Sのスピンを操作することにより、スピン磁化に比例した微小な交流磁場を磁気センサー4に作ることができる。磁場測定装置100では、この磁気センサー4に作られた交流磁場の強度を測定することで、どの程度のスピンが試料Sに含まれているかを評価することができる。
【0026】
磁気センサー4(磁気検出手段の一例)は、試料Sが作る交流磁場中に位置し、スピンによる磁気共鳴により交流磁場を検出する。磁気センサー4は、例えば、ダイヤモンドであり、ダイヤモンド中の電子スピンによる磁気共鳴(電子スピン共鳴)により交流磁場を検出することができる。これにより、磁場測定装置100は、高い空間分解能を有することができる。なお、磁気センサー4は、例えば、核磁気共鳴により交流磁場を検出してもよい。磁気センサー4の大きさは、例えば、数十nm〜0.1μm程度である。
【0027】
静磁場発生器6(静磁場発生手段の一例)は、磁気センサー4に磁気共鳴を励起するための静磁場Bを与える。静磁場発生器6としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等を用いることができる。
【0028】
RFコイル8(高周波磁場発生手段の一例)は、高周波磁場発生器として機能することができる。RFコイル8は、磁気センサー4に磁気共鳴を励起するための高周波磁場を与えることができる。RFコイル8が磁気センサー4に与える高周波磁場は、例えば、強度B、角周波数ωであり、角周波数ωは、静磁場Bに対して磁気センサー4が磁気共鳴に励起されるように選択される。RFコイル8は、この高周波磁場のパルス系列、すなわちパルスシーケンスを磁気センサー4に与えることで、磁気センサー4のスピンを制御することができる。RFコイル8は、高周波磁場の位相を制御するための移相器を有していてもよい。
【0029】
また、さらに、RFコイル8は、磁気センサー4のスピン磁化を検出してもよい。すなわち、RFコイル8は、スピン磁化検出手段としての機能を有していてもよい。磁場測定装置100では、スピン磁化を、例えば、フリーインダクション測定法で測定してもよいし、CW−NMRにおいて、スピン磁化を変調操作し、それに伴う信号をRFコイル8によって検出することによりスピン磁化を測定してもよい。
【0030】
なお、ここでは、RFコイル8が、高周波磁場発生手段としての機能とスピン磁化検出手段としての機能とを有している場合について説明したが、高周波磁場発生手段とスピン磁化検出手段とが、別に設けられていてもよい。すなわち、磁場測定装置100は、高周波磁場発生手段として機能するRFコイルと、スピン磁化検出手段として機能するRFコイルと、をそれぞれ有していてもよい。
【0031】
2. 磁場測定装置の動作
次に、磁場測定装置100の動作について説明する。図2は、磁気センサー4に照射される高周波磁場RF、および試料Sが磁気センサー4に作る交流磁場Aのタイムチャートである。図3は、磁気センサー4のスピンの状態を示す図である。なお、図3(a)は、交流磁場Aの強度δBをゼロにした場合であり、図3(b)は、交流磁場Aの強度δBを4δBγτ/π=π/2(γは磁気センサー4の磁気回転比、τはパルス間隔)を満たすように設定した場合である。すなわち、これは、式(1)において、cosineの中の位相がπ/2になる場合である。また、図2および図3において、座標系(X,Y,Z)は、Z軸の周りに所定の角速度ω(ω=γB、Bは静磁場強度)で回転する回転座標系である。すなわち、座標系(X,Y,Z)は、Z軸を回転軸としてZ軸の正の方向に右回りに角速度ωで回転している回転座標系である。なお、Z軸に沿う方向を静磁場の方向および交流磁場Aの方向とする。また、図3では、スピンを、原点を基点としたベクトルで示している。
【0032】
磁場測定装置100では、RFコイル8が、磁気センサー4のスピンを制御するためのパルスシーケンスを与える。このパルスシーケンスは、図2に示すように、スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させるπ/2(Y)パルス(第1高周波磁場パルス)と、π/2(Y)パルス照射後に照射され、スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させるπ(Y)パルス(第2高周波磁場パルス)と、π(Y)パルスを照射後に照射され、スピンを+X軸に対して右回りに90°回転させるπ/2(X)パルス(第3高周波磁場パルス)と、を有している。また、交流磁場制御器2が、試料Sが作る交流磁場を制御することによって、π/2(Y)パルス照射後、π(Y)パルス照射前の間に、スピンの位相を所与の量だけシフトさせ、π(Y)パルス照射後、π/2(X)パルス照射前の間に、スピンの位相を前記所与の量だけもどす。
【0033】
磁場測定装置100では、上述したパルスシーケンスおよび交流磁場Aを磁気センサー4に与えることにより、計測したい交流磁場Aの強度δBを、スピン歳差運動の回転位相シフトから評価することができる(Phase modulated pulse 技術)。以下、詳細に説明する。
【0034】
図2に示すように、磁気センサー4には、RFコイル8によって、t0〜t1の間にπ/2(Y)パルスが照射され、t2〜t3の間にπ(Y)パルスが照射され、t4〜t5の間にπ/2(X)パルスが照射される。RFコイル8は、例えば、磁気センサー4に対してY軸方向から高周波磁場を照射する。
【0035】
ここで、π/2(Y)パルスとは、回転座標系において、スピンを+Y軸に対して(Z軸を回転軸としてZ軸の正の方向に)右回りに90°回転させる高周波磁場をいう。π/2(Y)パルスにおいて、高周波磁場の時間関数は、Bsinωt(Bは、高周波磁場強度)である。したがって、この高周波磁場は、回転座標系において、+Y軸に静止しているように見える。
【0036】
また、π(Y)パルスとは、回転座標系において、スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させる高周波磁場をいう。π(Y)パルスにおいて、高周波磁場の時間関数は、Bsinωtである。したがって、この高周波磁場は、回転座標系において、+Y軸に静止しているように見える。
【0037】
また、π/2(X)パルスとは、回転座標系において、スピンを+X軸に対して右回りに90°回転させる高周波磁場をいう。π/2(X)パルスにおいて、高周波磁場の時間関数は、Bcosωtである。したがって、この高周波磁場は、回転座標系において、+X軸に静止しているように見える。高周波磁場の位相の制御は、例えば、移相器によって行うことができる。
【0038】
π/2(Y)パルスが照射された後、π(Y)パルスが照射されるまでの間隔(t1〜t2間)と、π(Y)パルスが照射された後、π/2(X)パルスが照射されるまでの間隔(t3〜t4間)とは、同じ間隔τである。パルス間隔τは、例えば、T(磁気センサー4のスピンの横緩和時間)によって決まる。
【0039】
交流磁場Aは、交流磁場制御器2によって、図2に示すように、時刻t0以前、時刻t2(t2〜t3間)、t4以降の時刻では、強度0であり、t1〜t4において、磁場強度δB、周期2τを有する正弦波(δBsin(πt/τ))であるように制御される。なお、パルス間隔τがパルスの照射時間(t0〜t1間、t2〜t3間、t4〜t5間)に対して充分に大きいため、この式において、パルスの照射時間(t2〜t3間)は無視できるものとしている。交流磁場Aは、試料SにZ軸に沿う方向(静磁場の方向)から印加される。すなわち、交流磁場Aは、静磁場を変調する変調磁場であるともいえる。
【0040】
まず、交流磁場Aの強度δBがゼロの場合における磁気センサー4のスピンの振る舞いについて、図3(a)を参照しながら説明する。
【0041】
磁気センサー4のスピンは、静磁場が与えられることにより、静磁場の方向である+Z軸に分極している(時刻t0)。
【0042】
この+Z軸に分極しているスピンは、π/2(Y)パルスが照射されることにより、+X軸に倒れる(時刻t1)。+X軸に倒れたスピンは、磁場の不均一性の影響によって+X軸を中心としてXY平面内に広がる(時刻t2)。
【0043】
次に、π(Y)パルスが照射されることにより、スピンは、+Y軸に対して180°回転し、スピンの中心は−X軸方向を向く(時刻t3)。XY平面内に広がっていたスピンは、リフォーカスし、−X軸に集束する(時刻t4)。このようにスピンには、t0〜t4間に、π/2(Y)パルスおよびπ(Y)パルスからなるパルスシーケンス、すなわち、スピンエコー法に基づくパルスシーケンスが与えられる。
【0044】
次に、π/2(X)パルスが照射されるが、スピンは、−X軸に集束しているため、π/2(X)パルスが照射されてもスピンはなんら変化しない(時刻t5)。
【0045】
次に、交流磁場Aの強度δBが4δBγτ/π=π/2の関係を満たす場合における磁気センサー4のスピンの振る舞いについて、図3(b)を参照しながら説明する。
【0046】
磁気センサー4のスピンは、静磁場が与えられることにより、静磁場の方向である+Z軸に分極している(時刻t0)。
【0047】
この+Z軸に分極しているスピンは、π/2(Y)パルスが照射されることにより、+X軸に倒れる(時刻t1)。+X軸に倒れたスピンは、磁場の不均一性によってXY平面内に広がる。さらに、交流磁場Aによって、スピンにはt1〜t2間に下記式(2)の位相シフトが生じる。これにより、スピンは、+X軸から+Y軸に向かう方向に回転する(時刻t2)。
【0048】
【数2】

【0049】
次に、π(Y)パルスが照射されることにより、XY平面内に広がったスピンは+Y軸に対して180°回転する。さらに、交流磁場Aによって、スピンには、t3〜t4間においても位相シフトが生じ、t1〜t2間に生じた位相シフト量だけ位相が戻る。これにより、スピンは、−X軸から+Y軸に向かう方向に回転する(時刻t3)。t3〜t4間において生じるスピンの位相シフト量は、t1〜t2間におけるシフト量と同じである。結果として、t4では、位相シフトθ=π−(4δBγτ)/πが生じる。4δBγτ/π=π/2の関係から、t4では、位相シフトθ=π/2が生じ、スピンは、+Y軸に集束する(スピンエコー)(時刻t4)。
【0050】
次に、π/2(X)パルスが照射されると、+Y軸に集束したスピンは、X軸を中心に90°回転して+Z軸に沿う(時刻t5)。π/2(X)パルスは、スピンエコーとして集束した横磁化を縦磁化に射影する役割を担う。
【0051】
結果として、図3(a)に示すように、交流磁場Aの強度δBがゼロのときに縦磁化Mがゼロ、図3(b)に示すように、交流磁場Aの強度δBが4δBγτ/π=π/2の関係を満たすときにM=M(Mは、熱平衡状態における磁気センサー4の縦磁化)となる。t5において得られる縦磁化Mの大きさは、下記式(3)で表される。
【0052】
【数3】

【0053】
磁場測定装置100では、式(3)から交流磁場Aの強度δBを次のようにして求めることができる。縦磁化Mは、スピン磁化検出手段(RFコイル8)を用いてフリーインダクション測定法等で検出できる。また、Mは、例えばδBを増加させて、Mの最大値あるいはMの最小値が得られればその絶対値がMである。また、磁気センサー4の磁気回転比γは既知であり、パルス間隔τは、設定値である。したがって、式(3)から交流磁場Aの強度δBを求めることができる。
【0054】
磁場測定装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0055】
磁場測定装置100では、式(3)に示すように、交流磁場強度δBに対する縦磁化Mの応答関数がサイン型である。これにより、交流磁場強度δBの微小変化に対して検出される縦磁化Mは線形に変化する。したがって、交流磁場強度を高い感度で測定できる。このように磁場測定装置100は、微小領域の微小な交流磁場強度を検出できるため、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置のプローブとして用いることができる。
【0056】
3. 磁場測定装置の変形例
次に、本実施形態に係る磁場測定装置の変形例について説明する。なお、上述した本実施形態に係る磁場測定装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0057】
(1)第1変形例
まず、第1変形例について説明する。図4は、第1変形例に係る磁場測定装置において、磁気センサー4に照射される高周波磁場RFのタイムチャート、および試料Sが磁気センサー4に作る交流磁場Aのタイムチャートである。図5は、磁気センサー4のスピンの状態を示す図である。なお、図5(a)は、交流磁場Aの強度δBをゼロにした場合であり、図5(b)は、交流磁場Aの強度δBを4δBγτ/π=π/2を満たすように設定した場合である。また、図4および図5において、座標系(X,Y,Z)は、Z軸の周りに所定の角速度ω(ω=γB、Bは静磁場強度)で回転する回転座標系である。すなわち、座標系(X,Y,Z)は、Z軸を回転軸としてZ軸の正の方向に右回りに角速度ωで回転している回転座標系である。なお、Z軸に沿う方向を静磁場の方向および交流磁場Aの方向とする。また、図5では、スピンを、原点を基点としたベクトルで示している。なお、本変形例に係る磁場測定装置の構成は、図1に示す磁場測定装置100の例と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0058】
本変形例では、RFコイル8が磁気センサー4に与えるパルスシーケンスは、スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させるπ/2(Y)パルス(第1高周波磁場パルス)と、π/2(Y)パルス照射後に照射され、スピンを+X軸に対して右回りに180°回転させるπ(X)パルス(第2高周波磁場パルス)と、π(X)パルス照射後に照射され、スピンを−X軸に対して右回りに90°回転させるπ/2(−X)パルス(第3高周波磁場パルス)と、を有している。以下、詳細に説明する。
【0059】
図4に示すように、磁気センサー4には、RFコイル8によって、t0〜t1の間にπ/2(Y)パルスが照射され、t2〜t3の間にπ(X)パルスが照射され、t4〜t5の間にπ/2(−X)パルスが照射される。
【0060】
ここで、π(X)パルスとは、回転座標系において、スピンを+X軸に対して右回りに180°回転させる高周波磁場をいう。π(X)パルスにおいて、高周波磁場の時間関数は、Bcosωtである。したがって、この高周波磁場は、回転座標系において、+X軸に静止しているように見える。
【0061】
また、π/2(−X)パルスとは、回転座標系において、スピンを−X軸に対して右回りに90°回転させる高周波磁場をいう。π/2(−X)パルスにおいて、高周波磁場の時間関数は、Bcos(ωt+π)である。したがって、この高周波磁場は、回転座標系において、−X軸に静止しているように見える。
【0062】
まず、交流磁場Aの強度δBがゼロの場合における磁気センサー4のスピンの振る舞いについて、図5(a)を参照しながら説明する。
【0063】
磁気センサー4のスピンは、静磁場が与えられることにより、静磁場の方向である+Z軸に分極している(時刻t0)。
【0064】
この+Z軸に分極しているスピンは、π/2(Y)パルスが照射されることにより、+X軸に倒れる(時刻t1)。+X軸に倒れたスピンは、磁場の不均一性の影響によって+X軸を中心としてXY平面内に広がる(時刻t2)。
【0065】
次に、π(X)パルスが照射されることにより、XY平面内に広がったスピンは、+X軸に対して180°回転する(時刻t3)。これにより、徐々にTによる広がりがなくなり(リフォーカス)、+X軸に集束する(時刻t4)。
【0066】
次に、π/2(−X)パルスが照射されるが、スピンは、−X軸に集束しているため、π/2(−X)パルスが照射されてもスピンはなんら変化しない(時刻t5)。
【0067】
次に、交流磁場Aの強度δBが4δBγτ/π=π/2の関係を満たす場合における磁気センサー4のスピンの振る舞いについて、図5(b)を参照しながら説明する。
【0068】
磁気センサー4のスピンは、静磁場が与えられることにより、静磁場の方向である+Z軸に分極している(時刻t0)。
【0069】
この+Z軸に分極しているスピンは、π/2(Y)パルスが照射されることにより、+X軸に倒れる(時刻t1)。+X軸に倒れたスピンは、磁場の不均一性によってXY平面内に広がる。さらに、交流磁場Aによって、スピンには、t1〜t2間に式(2)の位相シフトが生じる。これにより、スピンは、+X軸から+Y軸に向かう方向に回転する(時刻t2)。
【0070】
次に、π(X)パルスが照射されることにより、XY平面内に広がったスピンは、+X軸に対して180°回転する。さらに、交流磁場Aによって、スピンには、t3〜t4間においても、位相シフトが生じ、t1〜t2間に生じた位相シフト量だけ位相が戻る。これにより、スピンは、+X軸から−Y軸に向かう方向に回転する(時刻t3)。t3〜t4間において生じるスピンの位相シフト量は、t1〜t2間におけるシフト量と同じである。結果として、t4では、スピンに位相シフトθ=π−(4δBγτ)/πが生じる。4δBγτ/π=π/2の関係から、t4では、位相シフトθ=π/2が生じ、スピンは、−Y軸に集束する(スピンエコー)(時刻t4)。
【0071】
次に、π/2(−X)パルスが照射されると、−Y軸に集束したスピンは、+Z軸に倒れる(時刻t5)。
【0072】
結果として、図5(a)に示すように、交流磁場Aの強度δBがゼロのときに縦磁化Mがゼロ、図5(b)に示すように、交流磁場Aの強度δBが4δBγτ/π=π/2の関係を満たすときにM=Mとなる。t5において得られる縦磁化Mの大きさは、磁場測定装置100と同様に式(3)で表される。したがって、本変形例においても、磁場測定装置100と同様に、δBに対する縦磁化Mの応答関数がサイン型である。そのため、δBの微小変化に対して検出される縦磁化Mは線形に変化する。したがって、交流磁場を高い感度で測定できる。
【0073】
(2)第2変形例
次に、第2変形例について説明する。図6は、第2変形例に係る磁場測定装置において、磁気センサー4に照射される高周波磁場RFのタイムチャート、および試料Sが磁気センサー4に作る交流磁場Aのタイムチャートである。なお、図6において、座標系(X,Y,Z)は、Z軸の周りに所定の角速度ω(ω=γB、Bは静磁場強度)で回転する回転座標系である。すなわち、座標系(X,Y,Z)は、Z軸を回転軸としてZ軸の正の方向に右回りに角速度ωで回転している回転座標系である。なお、Z軸に沿う方向を静磁場の方向および交流磁場Aの方向とする。また、図6では、スピンを、原点を基点としたベクトルで示している。なお、本変形例に係る磁場測定装置の構成は、図1に示す磁場測定装置100の例と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0074】
本変形例では、RFコイル8は、スピンを制御するための第1パルスシーケンス(図3参照)および第2パルスシーケンス(図6参照)を与える。
【0075】
第1パルスシーケンスは、図3に示すように、スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させるπ/2(Y)パルス(第1高周波磁場パルス)と、π/2(Y)パルスを照射後に照射され、スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させるπ(Y)パルス(第2高周波磁場パルス)と、π(Y)パルスを照射後に照射され、スピンを+X軸に対して右回りに90°回転させるπ/2(X)パルス(第3高周波磁場パルス)と、を有している。なお、第1パルスシーケンスは、図3に示す磁場測定装置100の例に係るパルスシーケンスと同様である。
【0076】
第2パルスシーケンスは、図6に示すように、スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させるπ/2(Y)パルス(第4高周波磁場パルス)と、π/2(Y)パルスを照射後に照射され、スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させるπ(Y)パルス(第5高周波磁場パルス)と、π(Y)パルスを照射後に照射され、スピンを−X軸に対して右回りに90°回転させるπ/2(−X)パルス(第6高周波磁場パルス)と、を有している。
【0077】
また、交流磁場制御器2は、試料Sの交流磁場を制御することによって、第1高周波磁場パルス照射後、第2高周波磁場パルス照射前の間に、スピンの位相を所与の量だけシフトさせ、第2高周波磁場パルス照射後、第3高周波磁場パルス照射前の間に、スピンの位相を所与の量だけもどし、第4高周波磁場パルス照射後、第5高周波磁場パルス照射前の間に、スピンの位相を所与の量だけシフトさせ、第5高周波磁場パルス照射後、第6高周波磁場パルス照射前の間に、スピンの位相をシフトさせる。
【0078】
本変形例では、磁場測定装置100と同様に、δBに対する縦磁化Mの応答関数がサイン型である。したがって、磁場測定装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0079】
さらに、本変形例では、RFコイル8が、例えば、奇数回目の試行で第1パルスシーケンスを用い、偶数回目の試行で第2パルスシーケンスを用いる。RFコイル8(スピン磁化検出手段)は、第3高周波磁場パルス照射後および第6高周波磁場パルス照射後に縦磁化Mを測定する。得られた縦磁化Mを平均演算する際に、奇数回目の測定結果を加算し、偶数回目の測定結果を減算して、最後に繰り返し回数で割る。これにより、磁気共鳴とは無関係のバックグラウンドノイズを平均値から差し引くことができる。
【0080】
(3)第3変形例
次に、第3変形例について説明する。
【0081】
上述した磁場測定装置100の例では、交流磁場Aが、交流磁場制御器2によって、図2に示すように、時刻t0以前の時間(t<t0)、時刻t2(t2〜t3間)、時刻t4以降の時間(t>t4)において、強度がゼロであり、t1〜t4間において、δBsin(πt/τ)であるように制御される場合について説明した。これに対し、本変形例では、交流磁場Aは、時刻t0以前の時間(t<t0)、時刻t2(t2〜t3間)、時刻t4以降の時間(t>t4)において、強度0であれば特に限定されない。このような場合であっても、磁場測定装置100と同様に、δBに対する縦磁化Mの応答関数がサイン型となり、磁場測定装置100の例と同様の作用効果を奏することができる。例えば、交流磁場Aは、時刻t0以前の時間、時刻t2、時刻t4以降の時間において、強度0であり、t1〜t2間、およびt3〜t4間でスピンの位相を変化させるような波形である。このときの波形は、特に限定されず、正弦波、矩形波、三角波等であってもよい。
【0082】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0083】
2 交流磁場制御器、4 磁気センサー、6 静磁場発生器、8 RFコイル、
100 磁場測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から発生する交流磁場の強度を測定するための磁場測定装置であって、
前記試料から前記交流磁場を発生させる交流磁場制御手段と、
前記交流磁場中に位置し、スピンによる磁気共鳴により前記交流磁場を検出する磁気検出手段と、
前記磁気検出手段に静磁場を与える静磁場発生手段と、
前記磁気検出手段に前記スピンを制御するためのパルスシーケンスを与える高周波磁場発生手段と、
前記磁気検出手段の磁化を検出するスピン磁化検出手段と、
を含み、
Z軸の周りに所定の角周波数で回転する回転座標系において、
前記磁気検出手段に与えられる前記静磁場の方向および前記交流磁場の方向を、Z軸方向とした場合、
前記パルスシーケンスは、
前記スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させる第1高周波磁場パルスと、
前記第1高周波磁場パルスの照射後に照射され、前記スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させる第2高周波磁場パルスと、
前記第2高周波磁場パルスの照射後に照射され、前記スピンを+X軸に対して右回りに90°回転させる第3高周波磁場パルスと、
を有し、
前記交流磁場制御手段は、前記交流磁場を制御することによって、前記第1高周波磁場パルス照射後、前記第2高周波磁場パルス照射前の間、および前記第2高周波磁場パルス照射後、前記第3高周波磁場パルス照射前の間に、前記スピンの位相をシフトさせ、
前記スピン磁化検出手段は、前記第3高周波磁場パルス照射後に、前記磁気検出手段の磁化を検出し、
前記スピン磁化検出手段の検出結果から前記交流磁場の強度を求める、磁場測定装置。
【請求項2】
試料から発生する交流磁場の強度を測定するための磁場測定装置であって、
前記試料から前記交流磁場を発生させる交流磁場制御手段と、
前記交流磁場中に位置し、スピンによる磁気共鳴により前記交流磁場を検出する磁気検出手段と、
前記磁気検出手段に静磁場を与える静磁場発生手段と、
前記磁気検出手段に前記スピンを制御するためのパルスシーケンスを与える高周波磁場発生手段と、
前記磁気検出手段の磁化を検出するスピン磁化検出手段と、
を含み、
Z軸の周りに所定の角周波数で回転する回転座標系において、
前記磁気検出手段に与えられる前記静磁場の方向および前記交流磁場の方向を、Z軸方向とした場合、
前記パルスシーケンスは、
前記スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させる第1高周波磁場パルスと、
前記第1高周波磁場パルスの照射後に照射され、前記スピンを+X軸に対して右回りに180°回転させる第2高周波磁場パルスと、
前記第2高周波磁場パルスの照射後に照射され、前記スピンを−X軸に対して右回りに90°回転させる第3高周波磁場パルスと、
を有し、
前記交流磁場制御手段は、前記交流磁場を制御することによって、前記第1高周波磁場パルス照射後、前記第2高周波磁場パルス照射前の間、および前記第2高周波磁場パルス照射後、前記第3高周波磁場パルス照射前の間に、前記スピンの位相をシフトさせ、
前記スピン磁化検出手段は、前記第3高周波磁場パルス照射後に、前記磁気検出手段の磁化を検出し、
前記スピン磁化検出手段の検出結果から前記交流磁場の強度を求める、磁場測定装置。
【請求項3】
試料から発生する交流磁場の強度を測定するための磁場測定装置であって、
前記試料から前記交流磁場を発生させる交流磁場制御手段と、
前記交流磁場中に位置し、スピンによる磁気共鳴により前記交流磁場を検出する磁気検出手段と、
前記磁気検出手段に静磁場を与える静磁場発生手段と、
前記磁気検出手段に前記スピンを制御するための第1パルスシーケンスおよび第2パルスシーケンスを与える高周波磁場発生手段と、
前記磁気検出手段の磁化を測定するスピン磁化検出手段と、
を含み、
Z軸の周りに所定の角周波数で回転する回転座標系において、
前記磁気検出手段に与えられる前記静磁場の方向および前記交流磁場の方向を、Z軸方向とした場合、
前記第1パルスシーケンスは、
前記スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させる第1高周波磁場パルスと、
前記第1高周波磁場パルスを照射後に照射され、前記スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させる第2高周波磁場パルスと、
前記第2高周波磁場パルスを照射後に照射され、前記スピンを+X軸に対して右回りに90°回転させる第3高周波磁場パルスと、
を有し、
前記第2パルスシーケンスは、
前記スピンを+Y軸に対して右回りに90°回転させる第4高周波磁場パルスと、
前記第4高周波磁場パルスを照射後に照射され、前記スピンを+Y軸に対して右回りに180°回転させる第5高周波磁場パルスと、
前記第5高周波磁場パルスを照射後に照射され、前記スピンを−X軸に対して右回りに90°回転させる第6高周波磁場パルスと、
を有し、
前記交流磁場制御手段は、前記交流磁場を制御することによって、前記第1高周波磁場パルス照射後、前記第2高周波磁場パルス照射前の間、および前記第2高周波磁場パルス照射後、前記第3高周波磁場パルス照射前の間に、前記スピンの位相をシフトさせ、前記第4高周波磁場パルス照射後、前記第5高周波磁場パルス照射前の間、および前記第5高周波磁場パルス照射後、前記第6高周波磁場パルス照射前の間に、前記スピンの位相をシフトさせ、
前記スピン磁化検出手段は、前記第3高周波磁場パルス照射後および前記第6高周波磁場パルス照射後に、前記磁気検出手段の磁化を検出し、
前記スピン磁化検出手段の検出結果から前記交流磁場の強度を求める、磁場測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記磁気検出手段は、ダイヤモンドである、磁場測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
前記高周波磁場発生手段は、高周波磁場の位相を制御する移相器を有している、磁場測定装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−103171(P2012−103171A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253132(P2010−253132)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511132029)株式会社 JEOL RESONANCE (13)