説明

磁場計測装置

【課題】複数のセルを並べて磁場を計測する磁場計測装置において、各セルの温度を制御して磁場の測定精度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】磁場計測装置は、ポンプ光により励起される複数の原子を含むセルを複数有するセルアレイと、各セルに対しポンプ光を照射してセル内の原子を励起させ、各セルを透過したプローブ光を検出して各セルにおける磁場を検出する磁場検出部と、入力された制御値に従って各セルの温度を制御する温度制御部と、セルアレイに対して一定の磁場を印加したときの磁場検出部で検出される各セルの磁場の検出結果が基準値となるように各セルの温度を調整し、基準値となるときの各セルの温度を示す制御値を温度情報としてセル毎に記憶部に記憶する第1の処理と、第1の処理に代えて、記憶部内の温度情報に基づく制御値を温度制御部に入力し、磁場検出部による検出結果を出力する第2の処理とを行う制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の脳や心臓等から発せられる磁場を検出する生体磁気計測装置等において、光ポンピングを利用した磁気センサーが利用されている。このような磁気センサーとしては、ガスが封入された各セルに、円偏光成分を有するポンプ光と直線偏光成分を有するプローブ光とが直交するように照射され、生体から発せられる磁場をプローブ光によって検出するものがある。下記特許文献1には、そのような光ポンピング原子磁力計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−236599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、独立した複数のセルを並べて生体の広範囲な部分を測定する場合、各セル内の原子やガスが均一でなければ磁場感度にばらつきが生じる。磁場感度は、光ポンピングされている原子が多いほど高くなるため、セルの温度を調整することでセル内の原子密度を高くして磁場感度を高めることができるが、各セルの磁場感度が均一でなければ正確に磁場を測定することができない。
本発明は、複数のセルを並べて磁場を計測する磁場計測装置において、セルの温度を制御して磁場の測定精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る磁場計測装置は、ポンプ光により励起される複数の原子からなる原子群が内部に含まれたセルを複数有するセルアレイと、前記セルアレイの各セルに対してポンプ光を照射して前記各セルにおける前記原子を励起させ、前記各セルを透過したプローブ光を検出して前記各セルにおける磁場を検出する磁場検出手段と、前記セルアレイの各セルに対応して設けられ、入力される制御値に従って、前記各セルの温度を制御する温度制御手段と、前記セル毎に温度情報を記憶する記憶手段と、前記セルアレイに対して一定の磁場を印加し、前記温度制御手段に入力する前記制御値を変化させて前記磁場検出手段で検出される前記各セルの磁場の検出結果が予め定められた基準値となるときの前記制御値を前記セル毎に特定し、特定した前記セル毎の前記制御値を前記温度情報として前記記憶手段に記憶させる第1の処理と、前記第1の処理に代えて、前記記憶手段に記憶された前記温度情報に基づく前記制御値を前記温度制御手段に入力し、前記磁場検出手段による検出結果を出力する第2の処理とを行う制御手段とを備える。この構成によれば、各セルの感度が均一になるように各セルの温度が制御され、磁場の測定精度を向上させることができる。
【0006】
また、本発明に係る磁場計測装置は、上記磁場計測装置において、気温を計測する計測手段を備え、前記記憶手段は、気温毎に前記セル毎の温度情報を記憶し、前記制御手段は、前記第1の処理において、前記計測手段で計測された気温毎に前記セル毎の前記制御値を特定し、特定した制御値を前記温度情報として前記記憶手段に記憶させ、前記第2の処理において、前記計測手段で計測された気温に応じた前記セル毎の前記温度情報を前記記憶手段から読み出して当該温度情報に基づく前記制御値を前記温度制御手段に入力することとしてもよい。この構成によれば、気温に応じて各セルの温度が制御されるので、気温が変化しても一定の測定精度を得ることができる。
【0007】
また、本発明に係る磁場計測装置は、上記磁場計測装置において、前記ポンプ光の光量を示す情報を取得する取得手段を備え、前記記憶手段は、前記ポンプ光の光量毎に前記セル毎の温度情報を記憶し、前記制御手段は、前記第1の処理において、前記取得手段で取得された前記情報が示す光量毎に前記セル毎の前記制御値を特定し、特定した制御値を前記温度情報として前記記憶手段に記憶させ、前記第2の処理において、前記取得手段で取得された前記情報が示す前記光量に応じた前記セル毎の前記温度情報を前記記憶手段から読み出して当該温度情報に基づく前記制御値を前記温度制御手段に入力することとしてもよい。この構成によれば、ポンプ光の光量に応じて各セルの温度が制御されるので、ポンプ光の光量が変化しても一定の測定精度を得ることができる。
【0008】
また、本発明に係る磁場計測装置は、上記磁場計測装置の前記制御手段においては、前記第1の処理において、前記各セルの磁場の検出結果に基づいて前記基準値を求めることとしてもよい。この構成によれば、各セルにおける磁場の検出結果に基づいて各セルの温度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る磁場計測装置の構成例を示す図である。
【図2】実施形態に係る磁気センサーアレイに照射するポンプ光とプローブ光を説明する図である。
【図3】(a)は、実施形態に係るポンプ光照射部を説明する図である。(b)は、実施形態に係るプローブ光照射部を説明する図である。
【図4】実施形態に係る各セルの磁場の検出結果と制御値との関係を示す図である。
【図5】実施形態に係る温度情報の例を示す図である。
【図6】変形例(1)に係る温度情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
(構成)
図1は、本発明に係る実施形態の磁場計測装置の構成を表すブロック図である。磁場計測装置1は、セルアレイ10、セルアレイ10の温度を制御する温度制御ユニット20、セルアレイ10における磁場を検出する磁場検出ユニット30、制御部40、操作部50及び記憶部60を備えている。
【0011】
セルアレイ10は、複数のセル(10a,10b,10c,10d)を一列に並べて構成されている。各セルは、光を透過するガラス等の素材で構成され、内部に所定の原子を含む立方体形状の各々独立した物体である。各セル内の所定の原子は、円偏光によって励起状態となり、スピン偏極する原子であり、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)等のアルカリ金属である。また、各セル内には、これらのアルカリ金属原子の他に、ヘリウム(He)、窒素(N)などのバッファーガスが含まれていてもよい。尚、アルカリ金属の原子は磁気を検出する際に気体の状態であればよく、常時気体の状態でなくてもよい。また、本実施形態では、セルアレイ10のセルは一列に4つ並べられている例であるが、セルの数は複数であればよく、複数列であってもよい。本実施形態では、各セルは独立した物体である例を用いるが、例えば、隣接するセルとの影響を受けないように直方体を仕切って形成されたものでもよいし、隣接するセルとの影響を受けない程度にセルとセルとの仕切りの一部に設けられた孔によって各セルが連通されていてもよい。要は、セルアレイ10は、区分けされた複数の各空間が形成されていればよい。また、本実施形態のセルの形状は、立方体形状であるが、セルの形状はこの形状に限らない。
【0012】
温度制御ユニット20は、各セルに対応する温度制御部(20a,20b,20c,20d)を有する。各温度制御部は、温度制御手段の一例であり、各セル(10a,10b,10c,10d)と対応するように当該セルの外側に設けられており、セルを加熱・冷却する加熱冷却装置を各々有し、制御部40によって入力された制御値(電力値)に応じて加熱冷却装置を制御することで、各セルの温度を調整する。
【0013】
磁場検出ユニット30は、各セル(10a,10b,10c,10d)における磁場を検出する磁場検出部(30a,30b,30c,30d)を有する。各磁場検出部は、磁場検出手段の一例であり、各セル内の原子を同一方向にスピン偏極させるためのポンプ光を、図2の破線矢印で示す各セルの上面から底面へ向かう方向(−z軸方向)に照射するポンプ光照射部(図示略)と、各セルにおける磁場を検出するためのプローブ光を図2の実線矢印で示す各セルの側面方向(−y軸方向)に照射するプローブ光照射部(図示略)と、更に、各セルを透過したプローブ光を検出することにより各セルにおける磁場を検出する検出部(図示略)とを備える。ここで、ポンプ光照射部、プローブ光照射部、検出部について説明する。
【0014】
図3(a)は、ポンプ光照射部(310a,310b,310c,310d)と図2に示した各セルとを示す図である。図3(a)に示すように、各ポンプ光照射部は、セル毎に設けられている。ポンプ光照射部は、円偏光成分を有するレーザー光をポンプ光として出力する光源を各々有する。各光源は、円偏光成分を有するポンプ光を対応するセルに対して破線矢印で示すように各々照射する。各ポンプ光照射部の各々から照射されたポンプ光が各セルに入射すると、各セル内の原子はポンプ光によって同一方向にスピン偏極する。
【0015】
図3(b)は、図2に示した各セルとプローブ光照射部(320a,320b,320c,320d)及び検出部(330a,330b,330c,330d)を示す図である。図3(b)に示すように、各プローブ光照射部と各検出部は、セル毎に設けられている。各プローブ光照射部は、直線偏光成分を有するレーザー光をプローブ光として出力する光源を各々有する。各光源は、直線偏光成分を有するプローブ光を対応するセルに対して照射する。各セルに照射されたプローブ光は、各々のセルに入射し、入射した光は、各セルにおける磁場の影響により原子が歳差運動を行った回転力に応じて偏光面が回転されて各セルを透過する。各検出部は、フォトディテクターを有し、各セルを透過したプローブ光をP偏光成分とS偏光成分とに分離して各々のフォトディテクターで受光する。そして、各検出部は、各フォトディテクターで受光した光量に応じた電気信号を解析し、セル毎に受光したプローブ光の偏光面の回転角度を求め、回転角度に応じた磁場値を検出する。この例においては、図3(b)に示すx軸方向の磁場が検出される。
【0016】
図1に戻り、構成の説明を続ける。制御部40は、制御手段の一例であり、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のメモリを有する。CPUは、ROMに予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、第1の処理としてキャリブレーション処理と、第2の処理として生体から発する磁場を検出する磁場検出処理とをユーザー操作に応じて行う。
【0017】
制御部40は、キャリブレーション処理として、各セルに対して設けられた図示しないコイルを用い、セルアレイ10に対して図2のx軸方向に一定の磁場を印加すると共に、各ポンプ光照射部と各プローブ光照射部と各検出部とを制御して各セル(10a,10b,10c,10d)における磁場を検出する。そして、各セルにおける磁場の検出結果が予め定められた基準値となるように、各セルの温度を調整する制御値を変化させて温度制御ユニット20に入力し、基準値の検出結果が得られたときの制御値をセル毎に特定し、特定したセル毎の制御値を温度情報として記憶部60に記憶させる処理を行う。本実施形態では、基準値の一例として、印加した磁場の値に相当する値を用いる。また、制御部40は、磁場検出処理として、記憶部60に記憶させた各セルの温度情報に基づく制御値を温度制御ユニット20に入力し、各ポンプ光照射部と各プローブ光照射部と各検出部とを制御して生体から発する磁場を検出し、検出結果を出力する処理を行う。
【0018】
操作部50は、キャリブレーションの指示操作を受付ける操作スイッチと、生体の磁場の測定指示を受付ける操作スイッチ等の操作手段を有し、操作された内容を示す操作信号を制御部40に送出する。記憶部60は、記憶手段の一例であり、不揮発性の記憶媒体で構成され、制御部40の制御の下、キャリブレーション処理によって特定されたセル毎の各温度制御部の制御値を温度情報として記憶する。
【0019】
(動作例)
次に、この磁場計測装置1の動作例について説明する。磁場計測装置1の制御部40は、キャリブレーション処理を指示する操作が操作部50を介してなされると、各ポンプ光照射部(310a,310b,310c,310d)の各々から円偏光成分を有するポンプ光をセルアレイ10の各セル(10a,10b,10c,10d)に対して照射すると共に、各プローブ光照射部(320a,320b,320c,320d)から直線偏光成分を有するプローブ光を、各セル(10a,10b,10c,10d)に照射されたポンプ光とセル内で直交するように照射する。そして、制御部40は、ポンプ光とプローブ光とに直交する方向の一定の磁場を図示しないコイルを用いて印加する。
【0020】
各セル内の原子はポンプ光により励起されて同一方向にスピン偏極され、印加された磁場に応じて磁気モーメントの方向を変化させて歳差運動を行う。プローブ光は、各セルに入射し、各セル内の原子が受けている磁場の大きさに応じて偏光面を回転させ各セルを透過する。各セルを透過したプローブ光は、当該セルに対応する検出部で受光される。各検出部(330a,330b,330c,330d)は、プローブ光の光量に応じた電気信号を解析してプローブ光の偏光面の回転角を求め、対応するセルにおける磁場を検出して制御部40に検出結果を出力する。
【0021】
制御部40は、セル毎に、印加した磁場値に相当する基準値の検出結果が得られるまで、当該セルに対応する温度制御部に入力する制御値を変化させ、基準値の検出結果が得られたときの制御値を特定する。そして、制御部40は、各セルについて特定した制御値を温度情報として当該セルを識別するセル番号と関連付けて記憶部60に記憶する。例えば、セル毎の温度制御部の制御値に対する磁場の検出結果が図4に示す波形で表わされる場合、検出結果が基準値となる各セル(10a,10b,10c,10d)の制御値として、P2,P4,P1,P3が特定される。この場合、記憶部60には、図5に示すように、各セルを識別するセル番号と当該セルに対応する温度情報とを関連づけた温度制御情報150が記憶される。
【0022】
次に、磁場計測処理の動作例について説明する。磁場計測装置1において、生体からの磁場を計測する磁場計測処理の指示操作が操作部50を介してなされると、制御部40は、記憶部60からセル毎の温度制御情報150を読み出す。制御部40は、温度制御情報150の各セル番号に対応する温度制御部(20a,20b,20c,20d)に対し、温度制御情報150に記憶されている温度情報に基づく制御値を入力する。各温度制御部は、制御部40から入力された制御値に従って加熱冷却装置を制御する。制御部40は、各ポンプ光照射部(310a,310b,310c,310d)の各々から円偏光成分を有するポンプ光をセルアレイ10の各セル(10a,10b,10c,10d)に対して照射すると共に、各プローブ光照射部(320a,320b,320c,320d)から直線偏光成分を有するプローブ光をポンプ光と直交するように照射する。
各セル内の原子はポンプ光の照射によって同一方向にスピン偏極され、生体からの磁場に応じて歳差運動を行う。プローブ光は、各セルに入射し、セル内の原子が受ける磁場の大きさに応じて偏光面が回転されて各セルを透過する。各セルを透過したプローブ光は、各セルに対応する検出部で各々受光される。各検出部(330a,330b,330c,330d)は、プローブ光の光量に応じた電気信号を解析してプローブ光の偏光面の回転角を求め、回転角から磁場値を算出して制御部40に出力する。制御部40は、検出部毎に出力された各磁場の値を示す情報を図示しない表示装置等に出力する。
【0023】
本実施形態の例では、セルアレイの状態でキャリブレーション処理を行い、各セルの位置で検出された磁場の検出値が各々基準値となるように各セルの温度を制御する制御値が設定される。そのため、生体からの磁場を測定する際、各セルの感度が均一となるようにセルを保温することができ、磁場の測定精度を向上させることができる。
【0024】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のように変形させて実施してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0025】
(1)上述した実施形態では、セル毎の温度制御部の制御値を当該セルを識別する情報と共に記憶する例であったが、磁場計測装置1が設置される場所の気温と制御値とを記憶するようにしてもよい。この場合には、計測手段の一例として、気温を計測する気温計測部を磁場計測装置1に設けるようにしてもよいし、磁場計測装置1が外部装置から通信により気温情報を取得してもよいし、気温を入力するための操作部を磁場計測装置1に設け、ユーザーの入力操作によって気温情報を取得するように構成してもよい。本変形例では、キャリブレーション処理において、磁場計測装置1の制御部40は、計測された気温とセル毎の温度制御部の制御値とを対応づけた温度情報を記憶部60に記憶する。例えば、15℃〜30℃の範囲の気温毎に、実施形態と同様の方法で各セルにおける磁場を検出すると共に、各セルにおける磁場の検出結果が基準値となるように温度制御部へ入力する制御値を変化させて、基準値の検出結果が得られたときの制御値をセル毎に特定する。そして、制御部40は、図6に示すように各セルについて特定した制御値を温度情報として記憶部60に記憶する。また、制御部40は、磁場計測処理を開始する際、磁場計測装置1の設置場所における気温情報を取得し、取得した気温情報の気温に対応する温度情報を記憶部60から読み出す。制御部40は、各セルに対応する温度制御部に対し、読み出した温度情報に基づく制御値を入力し、生体から発する磁場を実施形態と同様の方法で検出する。
【0026】
(2)上述した変形例(1)では、気温毎に各セルに対応する温度制御部の制御値を記憶する例を説明したが、気温だけでなく、各セルに照射されるポンプ光の光量毎又は波長毎又は光量と波長の組み合わせ毎に、各セルに対応する温度制御部の制御値を記憶させるようにしてもよい。この場合には、取得手段の一例として、ポンプ光の光量や波長を示す情報をユーザーが入力するための操作部を磁場計測装置1に設け、光量や波長を示す情報をユーザーの入力操作によって取得するようにしてもよい。例えば、キャリブレーション処理において、気温と光量とに応じたセル毎の温度制御部の制御値を設定する場合、制御部40は、気温毎及びポンプ光の光量毎に各セルにおける磁場を実施形態と同様に検出し、セル毎の磁場の検出結果が基準値となるように当該セルの温度制御部の制御値を変化させ、基準値の検出結果が得られたときの制御値とセルを識別する情報とを気温及び光量と共に温度情報として記憶するようにする。制御部40は、磁場計測処理を開始する際に、磁場計測装置1の設置場所における気温とポンプ光の光量を示す情報をユーザーによる入力操作等によって取得し、取得した気温と光量とに対応する各セルに対応する制御値を温度情報から読み出し、各温度制御部に対して読み出した各制御値を入力する。
【0027】
(3)上述した実施形態及び変形例では、セル毎に、ポンプ光及びプローブ光の光源を設ける例を説明したが、分岐カプラー等を用いて、各々1つの光源からのポンプ光及びプローブ光を各セルに分配して照射するようにしてもよい。また、各セルにつき、ポンプ光とプローブ光とを兼ねた一つの光源で当該セル内の原子をポンピングさせ、当該セルを透過したプローブ光を検出するように構成してもよい。
【0028】
(4)また、上述した実施形態及び変形例では、印加した磁場に相当する値を基準値として用いる例を説明したが、キャリブレーション処理において検出された各セルにおける磁場の検出結果から基準値を求めるようにしてもよい。例えば、各セルにおける磁場の検出値のうち、印加した磁場に相当する値に最も近い検出値を各セルについて特定し、特定した各検出値を平均した値や、特定した各検出値の最小値や最頻値等を基準値として用いるようにしてもよい。また、キャリブレーション処理において検出された各セルの検出値が基準値と一致していない場合でも、検出値と基準値との差分が予め定めた値の範囲内であれば、当該検出値を検出したときの温度制御部の制御値を当該セルに対応する制御値として記憶するようにしてもよい。
【0029】
(5)また、上述した実施形態では、ユーザーによる操作部50の操作に応じてキャリブレーション処理と磁場検出処理とが選択的に行われる例について説明したが、キャリブレーション処理と磁場検出処理とが排他的に行われればよく、例えば、キャリブレーション処理の後、自動的に磁場検出処理が開始されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1・・・磁場計測装置、10・・・セルアレイ、10a,10b,10c,10d・・・セル、20・・・温度制御ユニット、20a,20b,20c,20d・・・温度制御部、30・・・磁場検出ユニット、30a,30b,30c,30d・・・磁場検出部、40・・・制御部、50・・・操作部、60・・・記憶部、310a,310b,310c,310d・・・ポンプ光照射部、320a,320b,320c,320d・・・プローブ光照射部、330a,330b,330c,330d・・・検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ光により励起される複数の原子からなる原子群が内部に含まれたセルを複数有するセルアレイと、
前記セルアレイの各セルに対してポンプ光を照射して前記各セルにおける前記原子を励起させ、前記各セルを透過したプローブ光を検出して前記各セルにおける磁場を検出する磁場検出手段と、
前記セルアレイの各セルに対応して設けられ、入力される制御値に従って、前記各セルの温度を制御する温度制御手段と、
前記セル毎に温度情報を記憶する記憶手段と、
前記セルアレイに対して一定の磁場を印加し、前記温度制御手段に入力する前記制御値を変化させて前記磁場検出手段で検出される前記各セルの磁場の検出結果が予め定められた基準値となるときの前記制御値を前記セル毎に特定し、特定した前記セル毎の前記制御値を前記温度情報として前記記憶手段に記憶させる第1の処理と、前記第1の処理に代えて、前記記憶手段に記憶された前記温度情報に基づく前記制御値を前記温度制御手段に入力し、前記磁場検出手段による検出結果を出力する第2の処理とを行う制御手段と
を備えることを特徴とする磁場計測装置。
【請求項2】
気温を計測する計測手段を備え、
前記記憶手段は、気温毎に前記セル毎の温度情報を記憶し、
前記制御手段は、前記第1の処理において、前記計測手段で計測された気温毎に前記セル毎の前記制御値を特定し、特定した制御値を前記温度情報として前記記憶手段に記憶させ、前記第2の処理において、前記計測手段で計測された気温に応じた前記セル毎の前記温度情報を前記記憶手段から読み出して当該温度情報に基づく前記制御値を前記温度制御手段に入力することを特徴とする請求項1に記載の磁場計測装置。
【請求項3】
前記ポンプ光の光量を示す情報を取得する取得手段を備え、
前記記憶手段は、前記ポンプ光の光量毎に前記セル毎の温度情報を記憶し、
前記制御手段は、前記第1の処理において、前記取得手段で取得された前記情報が示す光量毎に前記セル毎の前記制御値を特定し、特定した制御値を前記温度情報として前記記憶手段に記憶させ、前記第2の処理において、前記取得手段で取得された前記情報が示す前記光量に応じた前記セル毎の前記温度情報を前記記憶手段から読み出して当該温度情報に基づく前記制御値を前記温度制御手段に入力することを特徴とする請求項1に記載の磁場計測装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の処理において、前記各セルの磁場の検出結果に基づいて前記基準値を求めることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の磁場計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163393(P2012−163393A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22438(P2011−22438)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】