説明

磁性シート

【課題】優れた難燃性を有するとともに、寸法変化が十分に抑制された磁性シートを提供すること。
【解決手段】(A)磁性粉末と、(B)(a)エポキシ基を有するアクリルゴム、(b)フェノールアラルキル樹脂、(c)エポキシ樹脂、(d)硬化促進剤及び(e)メラミンシアヌレートを含む樹脂組成物を硬化してなるバインダ樹脂と、(C)赤燐と、を含有し、(C)赤燐の含有量が、(B)バインダ樹脂及び(C)赤燐の総量を基準として2〜10質量%である、磁性シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波吸収シート、磁気収束シート等の用途に使用可能な磁性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器や電子機器においては、放射電磁ノイズ等が、機器内で共鳴やクロストークなどの電磁干渉を発生させ、誤動作や周辺機器の動作に悪影響を生じさせることが問題となっている。このような電磁波障害の発生を防止するためのシールド材として、電磁波吸収シートが用いられている。この電磁波吸収シートは、軟磁性体を含有しており、この軟磁性体が自然共鳴して電磁波を熱エネルギーに変換することによって、電磁波がシートを通過したり、反射したりすることを防止することができる。
【0003】
電磁波吸収シートとしては、電子機器の発火に伴う燃焼を防止する観点から、難燃性のものが求められている。例えば、特許文献1では、難燃剤として、カルボン酸アミドを含むメラミンシアヌレートとケイ素原子を含むメラミンシアヌレートと赤燐を含有する磁性シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−219348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電磁波吸収シートが通信機器や電子機器に搭載される場合には、比較的高温且つ高湿度の環境下で使用されることとなる。このため、上述のような通信機器や電子機器に搭載される場合には、特に温度や湿度の変化によって寸法が大きく変わらないことが求められる。しかしながら、上述の特許文献1のような従来の電磁波吸収シートは、温度や湿度の変化によって寸法が大きく変わってしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた難燃性を有するとともに、寸法変化が十分に抑制された磁性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)磁性粉末と、(B)(a)エポキシ基を有するアクリルゴム、(b)フェノールアラルキル樹脂、(c)エポキシ樹脂、(d)硬化促進剤及び(e)メラミンシアヌレートを含む樹脂組成物を硬化してなるバインダ樹脂と、(C)赤燐と、を含有し、(C)赤燐の含有量が、(B)バインダ樹脂及び(C)赤燐の総量を基準として2〜10質量%である、磁性シートを提供する。
【0008】
本発明の磁性シートによれば、(a)エポキシ基を有するアクリルゴム、(b)フェノールアラルキル樹脂、(c)エポキシ樹脂及び(d)硬化促進剤により緻密な架橋構造が形成されるため、高温高湿度環境下で使用しても寸法変化が十分に抑制される。また、このような架橋構造を形成する(a)〜(d)成分に、(e)メラミンシアヌレートと特定量の(C)赤燐とを組み合わせて添加することで、優れた難燃性が得られる。
【0009】
本発明の磁性シートにおいて、(e)メラミンシアヌレートの含有量が、(B)バインダ樹脂及び(C)赤燐の総量を基準として20〜60質量%であることが好ましい。このような磁性シートは、高温高湿度環境下での寸法変化が一層抑制される。
【0010】
本発明の磁性シートは、電磁波吸収シートとして好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた難燃性を有するとともに、寸法変化が十分に抑制された磁性シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の磁性シートの一実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な一実施形態について以下に説明する。図1は、本実施形態の磁性シートを示す斜視図である。本実施形態の磁性シート10は、(A)磁性粉末と、(B)バインダ樹脂と、(C)赤燐と、を含有する。
【0014】
(B)バインダ樹脂は、(a)エポキシ基を有するアクリルゴム、(b)フェノールアラルキル樹脂、(c)エポキシ樹脂、(d)硬化促進剤及び(e)メラミンシアヌレートを含む樹脂組成物(以下、場合により「(B’)樹脂組成物」という。)の硬化物である。
【0015】
磁性シート10において、(C)赤燐の含有量は、(B)バインダ樹脂及び(C)赤燐の総量を基準として2〜10質量%である。
【0016】
磁性シート10では、上記特定のバインダ樹脂と赤燐とを赤燐の含有量が上記範囲となるように組み合わせて用いているため、優れた難燃性が実現されるとともに、高温高湿環境下での寸法変化が十分に抑制される。以下、各成分の詳細について説明する。
【0017】
(A)磁性粉末としては、通常の軟磁性粉末を用いることができる。磁性粉末としては、例えば、センダスト(Fe−Si−Al合金)、パーマロイ(Fe−Ni合金)、ケイ素銅(Fe−Cu−Si合金)、Fe−Si合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)合金、Fe−Ni−Cr−Si合金、Fe−Si−Cr合金、Fe−Si−Al−Ni−Cr合金等が挙げられる。これらの磁性粉末は、市販のものを入手してもよいし、公知の方法で合成してもよい。軟磁性粉末は扁平状であることが好ましい。また、軟磁性粉末の粒径は平均粒径で30μm〜100μmであることが好ましく、50μm〜90μmであることがより好ましい。
【0018】
(A)磁性粉末の含有量は、磁性シート10全体を基準として、30体積%以上であることが好ましく、30〜55体積%であることがより好ましく、35〜50体積%であることがさらに好ましい。(A)磁性粉末の含有量が30体積%以上であると、十分に優れた電磁波吸収特性が得られ、電磁波吸収シートとして一層好適に用いることができる。また、(A)磁性粉末の含有量が55体積%以下であると、磁性シート10の柔軟性が向上し、取扱い性及び貼り付け性に一層優れるようになる。
【0019】
(B)バインダ樹脂は、(B’)樹脂組成物を、例えば120〜180℃に加熱して得られる硬化物である。(B)バインダ樹脂は、(A)磁性粉末及び(C)赤燐を結着させて、シート状に保形する機能を有する。
【0020】
(B’)樹脂組成物は、(a)エポキシ基を有するアクリルゴムと、(b)フェノールアラルキル樹脂と、(c)エポキシ樹脂と、(d)硬化促進剤と、(e)メラミンシアヌレートと、を含有する。
【0021】
(a)エポキシ基を有するアクリルゴムとしては、市販のアクリルゴムを用いることができ、目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
(B’)樹脂組成物中の(a)エポキシ基を有するアクリルゴムの含有量は、(B’)樹脂組成物中の固形分全量を基準として、20〜80質量%とすることが好ましく、30〜70質量%とすることがより好ましい。
【0023】
(b)フェノールアラルキル樹脂としては、例えば、下記式(b−1)、(b−2)等で表されるフェノールアラルキル樹脂が挙げられる。
【0024】
【化1】

【0025】
【化2】

【0026】
式中、nはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。nは1〜15の整数であることが好ましく、1〜10の整数であることがより好ましい。
【0027】
(b)フェノールアラルキル樹脂としては、市販のフェノールアラルキル樹脂を用いることができ、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
(b)フェノールアラルキル樹脂としては、ビフェニル構造を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましく、例えば、式(b−2)等で表されるフェノールアラルキル樹脂を好適に用いることができる。
【0029】
(B’)樹脂組成物中の(b)フェノールアラルキル樹脂の含有量は、(B’)樹脂組成物中の固形分全量を基準として、1〜20質量%とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがより好ましい。
【0030】
(c)エポキシ樹脂としては、二官能エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂等を用いることができる。ここで、二官能エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を2つ有するエポキシ樹脂であり、多官能エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を3つ以上有するエポキシ基である。
【0031】
(c)エポキシ樹脂としては、多官能エポキシ樹脂が好ましい。(c)エポキシ樹脂として多官能エポキシ樹脂を用いると、(B)バインダ樹脂の架橋構造が一層密になり、磁性シートの高温高湿度環境下における寸法変化が一層抑制される。
【0032】
多官能エポキシ樹脂としては、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0033】
(B’)樹脂組成物中の(c)エポキシ樹脂の含有量は、(B’)樹脂組成物中の固形分全量を基準として、1〜20質量%とすることが好ましく、1〜15質量%とすることがより好ましい。
【0034】
(d)硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化促進剤として公知の化合物を適宜用いることができる。(d)硬化促進剤としては、イミダゾール類、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DBU−フェノール塩、DBU−オクチル酸塩、トリスジメチルアミノメチルフェノール等のアミン化合物が好ましく、これらのうち、イミダゾール類がより好ましい。
【0035】
イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0036】
(B’)樹脂組成物中の(d)硬化促進剤の含有量は、(B’)樹脂組成物中の固形分全量を基準として、0.01〜5質量%とすることが好ましく、0.1〜3質量%とすることがより好ましい。
【0037】
(e)メラミンシアヌレートとしては、市販のメラミンシアヌレートを用いることができる。メラミンシアヌレートの態様は特に限定されるものではなく、粒径等は目的に応じて適宜選択することができる。
【0038】
磁性シート10における(e)メラミンシアヌレートの含有量は、(B)バインダ樹脂及び(C)赤燐の総量を基準として、20〜60質量%であることが好ましく、25〜55質量%であることがより好ましい。
【0039】
(B’)樹脂組成物中の(e)メラミンシアヌレートの含有量は、磁性シート10における含有量が上記範囲内となるように適宜調製することができる。
【0040】
(B’)樹脂組成物は、上記以外の成分を含有してもよい。例えば、(B’)樹脂組成物は、分散剤、カップリング剤等を含有していてもよい。
【0041】
磁性シート10における(B)バインダ樹脂の含有量は、(A)磁性粉末の総量100質量部に対して、好ましくは10〜40質量部であり、より好ましくは15〜35質量部である。(B)バインダ樹脂の比率が小さくなりすぎると、磁性シート10が脆くなる傾向があり、(B)バインダ樹脂の比率が大きくなりすぎると、磁性シート10の優れた電磁波吸収特性が損なわれる場合がある。
【0042】
(C)赤燐は、市販の赤燐系難燃剤を用いて配合することができる。また、赤燐系難燃剤は取り扱い時の安全性を向上するために金属水酸化物でコートしたもの、混合してマスターバッチ化したもの、各種樹脂に予め練りこんだもの等を使用することができる。これらは目的に応じて適宜選定することが可能である。
【0043】
(C)赤燐の含有量は、(B)バインダ樹脂及び(C)赤燐の総量を基準として、2〜10質量%であり、好ましくは3〜7質量%である。(C)赤燐の含有量が2質量%未満であると、十分な難燃性が得られず、寸法変化の抑制も不十分となる。また、(C)赤燐の含有量が10質量%を超えると、難燃性が低下する。
【0044】
(C)赤燐の含有量は、例えば、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)により測定することができる。
【0045】
磁性シート10は、通信機器、電子機器等における電磁波障害の発生を防止又は抑制するためのシールド材として、すなわち電磁波吸収シートとして、好適に用いることができる。また、磁性シート10は、アンテナ、ICタグ等の分野における、磁気収束シートとしても好適に用いることができる。
【0046】
次に、本発明の磁性シートの製造方法の好適な実施形態について説明する。本実施形態の製造方法は、
(i)(A)磁性粉末、(B’)樹脂組成物及び(C)赤燐を含む磁性塗料を調製する混合工程、
(ii)磁性塗料を基材フィルム上に塗布する塗布工程、
(iii)基材フィルムに塗布した磁性塗料を加熱して磁性シートを形成する加熱工程、
を有する。以下、各工程の詳細について説明する。
【0047】
混合工程では、原材料として、(A)磁性粉末と、(B’)樹脂組成物の各成分と、(C)赤燐と、を準備する。そして、有機溶媒にこれらの原材料を、所定の比率で配合して、液状の混合物である磁性塗料を調製する。
【0048】
ここで、有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等、一般的なものを用いることができる。
【0049】
塗布工程では、混合工程で調製した磁性塗料を、基材フィルムの一面上に塗布する。磁性塗料の塗布方法としては、コーター法、ドクターブレード法等が挙げられる。このとき、磁性塗料の塗布厚みは、所望の厚さに調節することが好ましい。
【0050】
基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム等を用いることができる。基材フィルムの厚みは、例えば1〜1000μmとすることができる。
【0051】
塗布工程では、磁性塗料を基材フィルムに塗布する際に、磁場を印加することによって、磁性塗料に含まれる磁性粉末を所定の方向に配向させることができる。このような塗布工程によれば、電磁波吸収特性に一層優れる磁性シートが得られる。
【0052】
加熱工程では、基材フィルム上に塗布した磁性塗料を、用いた有機溶媒の沸点付近(例えば80〜150℃)にまで加熱して有機溶媒を蒸発除去するとともに、(B’)樹脂組成物を硬化させて、基材フィルム上に磁性シートを形成する。
【0053】
なお、加熱前後に、磁性シートに対して厚み方向にプレスを行うことが好ましい。これによって、(A)磁性粉末と、(B’)樹脂組成物の硬化物である(B)バインダ樹脂と、(C)赤燐とが一層密に充填されることとなり、磁性シートの電磁波吸収特性が一層向上する。
【0054】
基材フィルム上に磁性シートが形成された後、該基材フィルムから磁性シートを取り外し、必要に応じて、同様の方法によって形成された磁性シートを積層する積層工程を行ってもよい。これによって、所望の厚みを有する磁性シートを得ることができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1〜4、比較例1〜5)
磁性シートを作製するため、以下の原材料を準備した。なお、磁性粉末としては、市販のFeSiAl粉末を用いた。
(a)アクリルゴム
・エポキシ基含有アクリルゴム
(b)フェノールアラルキル樹脂
・ビフェニル構造を有するフェノールアラルキル樹脂(式(b−2)で表されるフェノールアラルキル樹脂)
(c)エポキシ樹脂
・JER 180S65(三菱化学株式会社製、商品名)
(d)硬化促進剤
・キュアゾール 2E4MZ(四国化成工業株式会社製、商品名):2−エチルー4−メチルイミダゾール
(e)メラミンシアヌレート
・MELAGARD MC8(ITALMATCH株式会社製、商品名)
(C)赤燐
・ノーバレッド 120(リン化学工業株式会社製、商品名)
(その他)
・バルノックAB(大内新興化学工業株式会社、商品名):安息香酸アンモニウム(アクリルゴム硬化剤)(表中、「(g)」と表す。)
【0058】
上記の原材料のうち、磁性粉末以外の原材料を、表1又は表2に示す配合比率(質量比)で溶媒(メチルエチルケトン)中に配合して分散液を調製した。
【0059】
調製した分散液に、磁性粉末を、作製する磁性シート全体を基準とする磁性粉末の含有量が40体積%となるように配合して、磁性塗料を調製した。調製した磁性塗料をコーターによって塗布し、160℃で1時間加熱して乾燥及び硬化させて、シートを作製した。このシートを複数作製し、積層してプレスすることにより、厚み0.2mmの磁性シート及び厚み0.3mmの磁性シートを作製した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
得られた評価用磁性シートについて、下記の方法で電磁波吸収特性、難燃性、屈曲性、寸法変化率を評価した。結果は、表3に示すとおりであった。
【0063】
[電磁波吸収特性]
厚み0.2mmの評価用磁性シートの電磁波吸収特性(透磁率:μ’)を、アジレントテクノロジー社製のインピーダンス/マテリアル アナライザー(商品名:F4991A)を用いて評価した。
【0064】
[難燃性の評価]
厚み0.2mmの評価用磁性シートを用いて、UL94に規定する垂直試験法(UL94 V法)に準拠して、難燃性の試験を行い、UL94に規定する評価基準(V−0、V−1、V−2)に基づいて評価を行った。UL94に規定する評価基準のV−0、V−1、V−2基準を満たすものを、それぞれ「V−0」、「V−1」、「V−2」と評価した。また、いずれの基準にも満たないものを「燃焼」とした。
【0065】
[屈曲性の評価]
厚み0.3mmの評価用磁性シートを折り曲げて、屈曲性を評価した。具体的には、φ2mmの丸棒に、評価用磁性シートを巻きつけて評価用磁性シートの表面を目視にて観察し、クラックが発生していないものを「A」、クラックが発生していたものを「B」と評価した。
【0066】
[寸法変化率の評価]
厚み0.3mmの評価用磁性シートを、60℃、90%RHの条件下で500時間保管した後、取り出して、評価用磁性シートの厚み方向の長さをマイクロメータによって測定した。保管前の厚み方向の長さをL、保管後の厚み方向の長さをLとして、下記式(1)によって寸法変化率を求めた。なお、表3中、「<1」は、寸法変化率が1%未満であったことを示す。
寸法変化率(%)=[(L−L)/L]×100 (1)
【0067】
【表3】

【0068】
表3に示すように、実施例の磁性シートでは、優れた電磁波吸収特性、屈曲性及び難燃性が得られ、寸法変化が十分に抑制された。これに対して、比較例の磁性シートでは、難燃性が格段に劣る結果となり、寸法変化が十分に抑制されない場合もあった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、優れた難燃性を有するとともに、寸法変化が十分に抑制された磁性シートが提供され、本発明の磁性シートは、電磁波吸収シート又は磁気収束シートとして好適に使用できる。
【符号の説明】
【0070】
10…磁性シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)磁性粉末と、
(B)(a)エポキシ基を有するアクリルゴム、(b)フェノールアラルキル樹脂、(c)エポキシ樹脂、(d)硬化促進剤及び(e)メラミンシアヌレートを含む樹脂組成物を硬化してなるバインダ樹脂と、
(C)赤燐と、
を含有し、
前記赤燐の含有量が、前記バインダ樹脂及び前記赤燐の総量を基準として2〜10質量%である、磁性シート。
【請求項2】
前記メラミンシアヌレートの含有量が、前記バインダ樹脂及び前記赤燐の総量を基準として20〜60質量%である、請求項1に記載の磁性シート。
【請求項3】
電磁波吸収シートである、請求項1又は2に記載の磁性シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−212791(P2012−212791A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77804(P2011−77804)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】