説明

磁性ターゲット交換装置及び磁性ターゲット交換方法

【課題】磁性ターゲットを交換する際に生じる、ターゲットとカソードマグネットの吸着力によるターゲットの変形及び真空容器内の汚染を防止するとともに、ターゲットの交換を安全に行うことができるターゲット交換装置及び磁性ターゲット交換方法を提供する。
【解決手段】磁性ターゲット2の交換に用いられるターゲット交換装置20は、カソードボディ5側に固定可能なベース部材22と、ターゲット2を固定可能な固定プレート23と、固定プレート23をベース部材22に対して移動操作可能な移動機構25とを備え、固定プレート23の長手方向には補強部材としてのリブが取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ターゲットの交換作業に用いるターゲット交換装置及び磁性ターゲット交換方法に係り、特に、マグネトロンスパッタ装置に取り付けられた強磁性材料からなる磁性ターゲットを交換するために用いる磁性ターゲット交換装置及び磁性ターゲット交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ターゲット交換に用いられるターゲット交換装置は、ターゲットに設けられたタップ穴に螺合するネジ部が形成されたネジ部材を有し、一方、ネジ部材と螺合するタップ穴はターゲットを厚さ方向に貫通して形成されていた。ターゲットを交換する際、タップ穴を貫通させたネジ部材の先端をカソードボディに当接させた状態で、更にタップ穴にねじ込むことでターゲットをカソードから引き離していた。
【0003】
しかし、上述したターゲット交換方法では、カソードの強磁性マグネット(カソードマグネット)の磁力によって引き寄せられているターゲットを引き離すとき、ネジ部材付近のみが引き離される状態になることがある。その結果、ターゲットに反りが生じ、著しいときには塑性変形してしまうおそれがあった。
【0004】
また、ターゲットとカソードマグネットとの吸着力が働いている状態で、ネジ部材のネジ部をターゲットにねじ込むため、ネジ部材のネジ部や先端部が磨耗し、発生した磨耗粉により真空容器内が汚染されるおそれがあった。
【0005】
これらの問題の解決策として、強磁性体のターゲットを交換するためのターゲット交換装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術によると、磁性ターゲット交換装置をカソードフランジのターゲット交換位置に位置決め装着し、保持マグネットによって磁性ターゲットを吸引保持した状態で磁性ターゲットの着脱を行うことにより、カソードフランジ側マグネットを取り外すことなく直接磁性ターゲットの交換を行うとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−161078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、カソードマグネットと磁性ターゲットとの吸着を剥がすために、これらのマグネットよりも強力な磁力を有するマグネットを保持マグネットとして使用する必要がある。このため、保管時や作業時の安全性を確保するために特別な取り扱いが要求されるという課題を有していた。
【0008】
本発明は、磁性ターゲットを交換する際に生じる、ターゲットとカソードマグネットの吸着力によるターゲットの変形及び真空容器内の汚染を防止するとともに、ターゲットの交換を安全に行うことができるターゲット交換装置及び磁性ターゲット交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために提案する本発明の磁性ターゲット交換装置は、基板が保持される基板ホルダーと、基板ホルダーに対向して磁性ターゲットを取り付け可能なカソードボディ及び該カソードボディの内側に配置されるカソードマグネットを有するカソード電極と、を備えるマグネトロンスパッタ装置における磁性ターゲットの交換作業に用いられる磁性ターゲット交換装置であって、カソードボディに取り付け可能なベース部と、磁性ターゲットを取り付け可能な固定部と、ベース部がカソードボディに取り付けられた状態で、固定部を前記カソードボディから離間する方向、若しくはカソードボディに近接する方向に移動させる移動操作部と、非磁性材料からなり、磁性ターゲットを前記固定部に締結する締結部材とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明で提案する磁性ターゲット交換方法は、上記の磁性ターゲット交換装置を用いた、マグネトロンスパッタ装置における磁性ターゲット交換方法であって、第2締結部材によってベース部をカソードボディに締結する第1ステップと、カソードボディに配設されていた磁性ターゲットを締結部材によって固定部に締結する第2ステップと、移動操作部によって磁性ターゲットが締結された固定部をカソードボディから所定距離離間させる第3ステップとを有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強磁性を有するターゲット(磁性ターゲット)を交換する際に生じる磁力の影響によるターゲットの変形を防ぐことができ、かつ、ごみの発生を低減して真空容器内の汚染を防ぐことができるターゲット交換装置を提供することができる。また、このようなターゲット交換装置を用いて、安全に磁性ターゲットの交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るマグネトロンスパッタ装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るターゲット交換装置の側方から見た概観図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るターゲット交換装置の上方から見た概観図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るターゲット交換装置のA−A線断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るターゲット交換装置とターゲットの下方から見た斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るターゲット交換装置の下方から見た概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0013】
図1乃至6は本発明の一実施形態に係るターゲット交換装置について説明した図であり、図1はマグネトロンスパッタ装置を示す断面図、図2はターゲット交換装置の側方から見た概観図、図3はターゲット交換装置の上方から見た概観図、図4は図1のA−A線断面図、図5はターゲットのターゲット交換装置とターゲットの下方から見た斜視図、図6はターゲット交換装置とターゲットを下方から見た概観図である。なお、ここでは図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0014】
まず、本実施形態に係るターゲット交換装置20を用いてターゲットの交換を行うことができるマグネトロンスパッタ装置Sについて図1に基づいて説明する。マグネトロンスパッタ装置Sは、真空容器としてのチャンバー6の内側にカソードユニット1(カソード電極)と、被成膜材である基板を保持するためのホルダー7(基板ホルダー)を有して構成されている。ホルダー7はカソードユニット1の対向する位置に設けられている。マグネトロンスパッタ装置Sは、マグネトロンカソードを備えるスパッタリング装置として、一般的な構成を備えた装置の一例である。
【0015】
チャンバー6は排気装置(非図示)と接続されていて内部を減圧状態にすることができる。また、アルゴン等のガスを供給可能なガス供給装置(不図示)とも接続されており、チャンバー6を減圧状態にした後にアルゴン等のガスをチャンバー内に供給するとともにターゲット2(磁性ターゲット2)に高電圧を印加することでスパッタリングが行われ、ホルダー7に保持された基板に成膜される。
【0016】
カソードユニット1は、ターゲット表面上に一定の磁場を形成する為のマグネットユニット9(カソードマグネット)を収容するカソードボディ5を有している。また、ホルダー7は、チャンバー5内のターゲットTと対向する位置に配置されている。カソードユニット1のカソードボディ5には裏板支持体3を介して裏板2が取り付けられている。また、裏板2にはターゲットTが接着されている。以下の記載では分かりやすいように裏板2とターゲットTを合わせてターゲット2と記載する。また、カソードユニット1は、チャンバー6側壁への成膜物質の付着を防止するためのシールド36(不図示)によって側方の周囲を囲まれている。
【0017】
裏板支持体3は、ターゲット2をカソードユニット1に固定するための部材であり、高電圧を印加するための導電性部材11が接続できるように構成されるとともに、絶縁材4をカソードボディ5との間に挟み込む形で固定されている。導電性部材11に接続された電圧印加用電源10によって、裏板支持体3を介してターゲット2に高電圧を印加可能な構造とされている。
【0018】
また、裏板支持体3には、ターゲット2に設けられた水路の供給口と排出口の位置に対応する位置に同様に供給口と排出口が設けられている。供給口と排出口にはそれぞれ配管部材13を介して冷却水供給装置12が接続されており、ターゲット2の水路内に冷却水を流通させることができる。以下の記載では分かりやすいようにカソードボディ5と裏板支持体3を合わせてカソードボディ5と記載する。
【0019】
以下に、本実施形態に係るターゲット交換装置について、図2乃至図6に基づいて説明する。ターゲット交換装置20は、ターゲット交換装置20をカソードユニット1側(カソードボディ5)に位置決め固定するベース部としてのベース部材22と、ターゲット2を取り付け可能な固定部としての固定プレート23と、固定プレート23を支持部材24から離間若しくは近接する方向に移動させる移動操作部としての移動機構25とを主要な構成部材としている。
【0020】
ベース部材22は、ターゲット2よりも大きな寸法の開口部を有する略矩形枠状の部材であり、カソードボディ5に取り付けられる面とは逆側に支持部材24とガイド部材22a、22bが設けられている。また、固定プレート23は、ターゲット2とほぼ同じ寸法に形成された略矩形状の部材であり、支持部材24のベース部材22とは逆の端部側に連結された移動機構25に取り付けられている。固定プレート23には、軽量化のため開口部23aが複数箇所に形成されている。
【0021】
ガイド部材22a、22bは、略矩形状の板状部材であり、内側に面する中央部分22cは肉薄に削られている。なお、薄肉に削られた中央部分22cを開口部とすると、ガイド部材22a、22bは略矩形状の枠状となる。枠状とした場合、強度がやや低下するものの実用上は問題なく使用できる。
【0022】
また、ガイド部材22a、22bの縁部分(枠部分)の一部にも、薄肉に削られた逃げ溝aが形成されている。ガイド部材22a、22bのそれぞれには、把持部としての取っ手22dが取り付けられている。ガイド部材22a、22bの中央部分22cを薄肉にすることで、カソードボディ5を囲むように配置されているシールド36の内側にターゲット交換装置20を設置することができ、ターゲット交換装置20の軽量化にも寄与する。
【0023】
逃げ溝aは、固定プレート23に固定されたターゲット2が上下する際に、接触せずにスムーズに動作させるために設けられている。ガイド部材22aの逃げ溝aの上端位置は、マグネットユニット9からの磁力の影響を受けない距離に設定されている。このため、マグネットユニット9からの磁力の影響を受けずにベース部材22の位置決め及び固定ができ、さらに、逃げ溝aの上端位置をターゲット2の上端位置の目安にすることができる。
【0024】
カソードボディ5に対するターゲット交換装置20の位置決めは、ベース部材22とガイド部材22aの内側が交わる角部の一つと、裏板支持体3の角を一致させることで行う。なお、逃げ溝aは、ベース部材22がカソードボディ5と接触する位置には設けられていない。
【0025】
ベース部材22は、ノブ31(装置固定用ノブ)によってカソードボディ5に固定することができる。ノブ31は、ベース部材22を貫通して取り付けられた第2締結部材としての雄ネジを回転させるための円板状の取っ手であり、手締めでもトルクがかけやすいようにローレット加工が施されている。ノブ31を回転操作することにより、ノブ31に固定された雄ネジをカソードボディ5のタップ(ネジ穴)にねじ込むことができる。すなわち、ノブ31によって他の工具を使用せずターゲット交換装置20のターゲットボディ5への取り付けできるように構成されている。ノブ31は、ベース部材22の4箇所に設けられている。
【0026】
固定プレート23は、ノブ32(ターゲット固定用ノブ)によってターゲット2に固定することができる。ノブ32は、固定プレート23を貫通して取り付けられた締結部材としての雄ネジを回転させるための円板状の取っ手であり、手締めでもトルクがかけやすいように星形に形成されている。ノブ32を回転操作することによりノブ32に固定された雄ネジをターゲット2のタップ(ネジ穴)にねじ込むことができる。
【0027】
すなわち、ノブ32によって、他の工具を使用せずターゲット交換装置20をターゲット2に固定できるように構成されている。固定プレート23の6箇所にノブ32が設けられている。固定箇所が多いほど、固定プレート23と合わせての剛性が上がるため、磁性によるターゲット2の反りに対し有利である。しかし、本実施形態では作業性を考慮してノブ32を6ヶ所にした。
【0028】
一方、移動機構25は、支持部材24のベース部材22とは逆の端部側に設けられており、支持部材24のベース部材22とは逆の端部側に取り付けされた上部プレート24aと、上部プレート24aの中央部に設けられたナット27と、ナット27に螺合するシャフト26と、シャフト26の一端部側に固定されたハンドル28とを有して構成されている。
【0029】
シャフト26のハンドル28が固着された端部とは逆側の端部には固定プレート23がベアリング34を介して回転可能に取り付けられ、固定プレート23は4本の支持部材24に貫通して取り付けられている。シャフト26のネジ部とナット27の摺動面に働く摩擦力により、ターゲット2がマグネットとの間に働く吸着力の影響を受ける距離に近づいても自然に引き寄せられないようになっている。
【0030】
すなわち、移動機構25のハンドル28を回転操作することにより、固定プレート23の上下動させることができる。また、支持部材24の固定プレート23と接触する部分は、摩擦低減のため樹脂で覆われている。樹脂は潤滑性を有するテフロン(登録商標)樹脂などを筒状に形成して取り付けている。
【0031】
以下に、本実施形態に係るターゲット交換装置20の細部について説明する。図3に示すように、固定プレート23には、固定プレート23に取り付けられたターゲット2がマグネットに接近した際に吸着力に対する強度を保つために補強部材としてのリブ29が設けられている。リブ29によってマグネットの吸着力によって発生する固定プレート23の反り(ターゲット2の反り)を軽減することができる。
【0032】
本実施形態におけるリブ29は、ベアリング34に近づけ、かつ固定プレート23の長手方向に2本渡して配置されている。しかし、リブ29の配置は上記の構成に限定されないが、固定プレート23(ターゲット2)のたわみ方向の強度を補強するように配置される必要がある。例えば、固定プレート23の対角線上に配置、若しくは固定プレート23に格子状に配置してもよい。ターゲット2や固定プレート23が円形の場合には、固定プレートの中心から放射方向(半径方向)にリブを設けるとよい。
【0033】
リブ29は、固定プレート23のターゲット2側の面に取り付けることもできる。この場合のリブはボス30の高さよりも低い寸法であることが望ましいが、部品点数低減のためリブとボス(スペーサ)を一体に形成しても良い。
【0034】
固定プレート23のターゲット2固定側には、スペーサとしての略円筒状のボス30が6箇所に取り付けられている。本実施形態に係るボス30は、固定プレート23に溶接で固着されており、ボス30中心の貫通穴と一致する位置の固定プレート23にも貫通穴が設けられている。それぞれのボス30には、ノブ32に固定された雄ネジが貫通された状態で配置されており、ターゲット2を固定プレート23に取り付けた際に、それらの間に位置することになる。ボス30に、ノブ32に固定された雄ネジを貫通して配置することで、雄ネジをターゲット2のタップにねじ込むときの締め付け力が変化しても、ターゲット2の変形を避けることができる。
【0035】
ボス30によって固定プレート23とターゲット2の間隔を所定距離に保つことができる。ボス30を設けることでターゲット交換装置20側から飛散するごみによるターゲット2の汚染を軽減することができる。また、固定プレート23を板状に形成したことで、移動機構25の動作時にシャフト26とナット27の摺動面から発生するごみは、固定プレート23に付着するため、ターゲット2の汚染が軽減される。
【0036】
長孔22a(締結孔)は、ベース部材22の左右方向に長い略矩形状(長孔状)に形成された貫通孔であり、ノブ31に固定された雄ネジはベース部材22に設けられた長孔35を貫通して取り付けられている。そのため、雄ネジは長孔35に係止された状態で、長孔35の内面に沿って係止位置を調整することができる。このような長孔35に雄ネジを取り付けることによって、ネジ孔の位置がずれた場合にもターゲット交換装置20の取り付け位置を調整することなく使用することができる。また、長孔22aをベース部材22の左右対称位置に設けることによって、左右のベース部材22を同一形状の部材で構成することができる。
【0037】
本実施形態においては、ベース部材22はアルミニウム合金製(ジュラルミン)であり、移動機構25の構成部材、固定プレート23、ノブ31の雄ネジ、ノブ32の雄ネジはいずれも非磁性ステンレス(SUS304)で構成されており、いずれも非磁性の部材が用いられている。なお、本実施形態ではカソードボディ5と裏板2も非磁性材料(SUS304)で構成されている。非磁性の部材を用いることでマグネットユニット9やターゲット2の磁力に影響されることがなくなり、安全に取り扱うことができる。また、ターゲット交換装置20の構成部材が磁化されることがないため保管の際にも特別な管理を必要としない。特に、ノブ32の雄ネジは磁化されると微粒子(ごみ)が付着してクリーニングに工数を取られる部材であるが、非磁性材料とすることで汚れ難くなる。
【0038】
ここで、本実施形態に係るターゲット交換装置20を用いた磁性ターゲット交換方法について説明する。まず、強磁性ターゲットを取り外す方法について説明する。
【0039】
まず、ターゲット2を裏板支持体3に固定しているネジを外す。ターゲット交換装置20の内側の角部(ベース部材22とガイド部材22aが接する内側の角部)の一つを、固定プレート23を上方に引き上げた状態で裏板支持体3(カソードボディ5)の角部の1ヶ所に当てて装着し、ノブ31を回転操作してカソードボディ5に固定する(第1ステップ)。
第1ステップは、準備ステップと位置調整ステップとを有している。準備ステップは、ノブ31の雄ネジ(第2締結部材)を長孔22a(締結孔)に貫通させるとともに、ベース部材22の位置をカソードボディ5に対して調整できるようにノブ31の雄ネジを締め付けない状態にする工程である。位置調整ステップは、ノブ31の雄ネジを締め付ける前に、ターゲット交換装置20の位置調整を行うことで、カソードボディ5に対するベース部材22の位置を調整する工程である。その後、ノブ31の雄ネジを締め付けて、ターゲット交換装置20をカソードボディ5に固定する。
【0040】
ハンドル28を回転させて固定プレート23を下降させ、ノブ32によってターゲット2を固定プレート23に固定する(第2ステップ)。具体的には、ノブ32の雄ネジをボス30貫通穴に通させてターゲット2のタップにねじ込むことで固定する。再びハンドル28を回転させ、ターゲット2が固定された固定プレート23をマグネットの磁力の影響が十分弱まる距離(所定距離離間)まで引き上げる(第3ステップ)。ノブ31を操作してカソードボディ5との固定を外し、その後、ターゲット交換装置20をカソードボディ5から取り外す。
【0041】
次に、強磁性ターゲットをカソードに取り付ける方法について説明する。ターゲット交換装置20にターゲットを取り付ける際、交換するターゲット2が載置された作業台の上にターゲット交換装置20を設置し、ノブ32を操作して固定プレート23にターゲット2を固定する。そして、ハンドル28操作によってガイド部材22aの逃げ溝a部上端にターゲット2の角部が近接する位置まで固定プレート23を上に引き上げる。その状態で、ターゲット交換装置20を裏板支持体3の角部の1ヶ所に当てて装着し、ノブ31によってカソードボディ5側に固定する。
【0042】
ハンドル28を回し、固定プレート23を下降させ、ターゲット2をカソードベース3に装着する。ノブ32を外して固定プレート23からターゲット2を取り外し、ノブ31を外してターゲット交換装置20をカソードボディ5から取り外す。最後にターゲット2を裏板支持体3にネジで固定する。
【0043】
本実施形態に係るターゲット交換装置20を用いることにより、強磁性を有するターゲット2の交換の際、カソードマグネットから引き剥がす際に生じるターゲット2の変形を軽減することできるとともに、ごみによるチャンバー6内及びターゲット2の汚染を低減することができる。また、ノブ32によってターゲット2をターゲット交換装置20側に固定する機構であるため強磁性ターゲットの交換作業を安全に行うことができる。さらに、ターゲット交換装置20は非磁性材料から構成され、磁石を備えないことから、磁性材料の近くに保管することができる。このため、保管場所の選択の幅が広がる。
【0044】
なお、本発明に係るターゲット交換装置20は、強磁性を有しないターゲットの交換作業においても同様の使用方法にて適用することができる。また、本実施形態に係るターゲット交換装置20は、矩形状のターゲット交換に用いるものであるが、ターゲット交換装置20に設けられた各構成は、円形のターゲットのための交換装置に対しても適用することができることはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
S マグネトロンスパッタ装置
a 逃げ溝
T ターゲット
1 カソードユニット
2 裏板
3 裏板支持体
4 絶縁材
5 カソードボディ
6 チャンバー
7 ホルダー
8 バルブ
9 マグネットユニット
10 電圧印加用電源
11 導電性部材
12 冷却水供給装置
13 配管部材
20 強磁性ターゲット交換装置
22 ベース部材
22a、22b ガイド部材
22c 中央部分
22d 取っ手
23 固定プレート
23a 開口部
24 支持部材
24a 上部プレート
25 移動機構
26 シャフト
27 ナット
28 ハンドル
29 リブ
30 ボス
31 ノブ(装置固定用ノブ)
32 ノブ(ターゲット固定用ノブ)
34 ベアリング
35 長孔
36 シールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が保持される基板ホルダーと、該基板ホルダーに対向して磁性ターゲットを取り付け可能なカソードボディ及び該カソードボディの内側に配置されるカソードマグネットを有するカソード電極と、を備えるマグネトロンスパッタ装置における前記磁性ターゲットの交換作業に用いられる磁性ターゲット交換装置であって、
前記カソードボディに取り付け可能なベース部と、
前記磁性ターゲットを取り付け可能な固定部と、
前記ベース部が前記カソードボディに取り付けられた状態で、前記固定部を前記カソードボディから離間する方向、若しくは前記カソードボディに近接する方向に移動させる移動操作部と、
非磁性材料からなり、前記磁性ターゲットを前記固定部に締結する締結部材とを備えることを特徴とする磁性ターゲット交換装置。
【請求項2】
前記ベース部に形成された締結孔と、
前記締結孔を貫通した状態で、前記ベース部を前記カソードボディに締結する第2締結部材と、を備え、
前記締結孔は、前記第2締結部材を貫通させた状態で前記カソードボディに対する前記ベース部の位置を調整できるように長孔状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁性ターゲット交換装置。
【請求項3】
前記固定部は、前記固定部に前記磁性ターゲットが締結された状態において、前記固定部と前記磁性ターゲットとの間に介装されるスペーサを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁性ターゲット交換装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性ターゲット交換装置を用いた、マグネトロンスパッタ装置における磁性ターゲット交換方法であって、
前記第2締結部材によって前記ベース部を前記カソードボディに締結する第1ステップと、
前記カソードボディに配設されていた前記磁性ターゲットを前記締結部材によって前記固定部に締結する第2ステップと、
前記移動操作部によって前記磁性ターゲットが締結された前記固定部を前記カソードボディから所定距離離間させる第3ステップと、を有してなることを特徴とする磁性ターゲット交換方法。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の磁性ターゲット交換装置を用いた、マグネトロンスパッタ装置における磁性ターゲット交換方法であって、
前記第2締結部材によって前記ベース部を前記カソードボディに締結する第1ステップと、
前記カソードボディに配設されていた前記磁性ターゲットを前記締結部材によって前記固定部に締結する第2ステップと、
前記移動操作部によって前記磁性ターゲットが締結された前記固定部を前記カソードボディから所定距離離間させる第3ステップと、を有し、
前記第1ステップは、
前記第2締結部材を前記締結孔に貫通させるとともに、前記ベース部材の位置を前記カソードボディに対して調整できるように前記第2締結部材を締め付けない状態にする準備ステップと、
前記準備ステップの後に行われ、前記カソードボディに対する前記ベース部の位置を調整する位置調整ステップと、
前記位置調整ステップの後に行われ、前記第2締結部材を締め付けて前記ベース部を前記カソードボディに締結する締結ステップと、を有してなることを特徴とする磁性ターゲット交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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