説明

磁性トナー

【課題】低温定着性、耐久性に優れる磁性トナーを提供すること。
【解決手段】ポリエステルを主成分とする樹脂、磁性酸化鉄およびワックスを酢酸エチル中で溶解または分散させて得られた溶解物または分散物を水系媒体中に分散させ、ついで酢酸エチルを除去することによって得られる磁性トナー粒子と、無機微粒子とを有する磁性トナーであって、前記磁性酸化鉄は、前記磁性酸化鉄を酢酸エチルに分散させた後静置し、沈澱体積の減少速度を評価する試験において、静置5分後の液面体積(A0)に対する沈澱体積(A5)の割合(A5/A0)が、50%以上85%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法を利用した記録方法に用いられる磁性トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の小型化、高速化、高精細化の両立が求められる中、トナーを現像する方法として、キャリアを必要とせず、磁性トナーを用いた磁性一成分現像方式が好ましく用いられる。磁性一成分現像方式とは、マグネットを内包した現像スリーブ(現像剤担持体)に現像剤を担持し、現像スリーブの表面から所定の微小間隙をおいて感光体を対向させる。この間隙を飛翔する現像剤により現像する方式である。
【0003】
磁性一成分現像方式に用いる現像剤としての磁性トナー中には、磁性粒子が相当量混合分散されており、この存在状態が磁性トナーの耐久性に影響する。磁性トナーの耐久性を向上させるためには、磁性粒子の分散性が重要である。
【0004】
さらに磁性トナーにおいては、磁性粒子をそのまま着色剤として用いる場合が多く、磁性粒子の存在状態が磁性トナーの着色力、黒色度(a*)に影響する。磁性トナーの着色力、黒色度(a*)を向上させるためには磁性粒子の分散性が重要となる。
【0005】
さらに画像形成装置には、より少ない電力量で磁性トナーを定着する要望が近年高まっている。そこで磁性トナーへの要求としては、上記磁性粒子の分散性に加え、より低温で定着する磁性トナーが求められている。より低温で定着する磁性トナーを提供するために、磁性トナーの軟化温度を下げることが従来より検討されている。しかし磁性トナーを軟化させると耐熱保存性が低下しやすく、飛躍的な定着性改良が行いにくい。
【0006】
そこで低軟化温度の樹脂をコアに用い、高軟化温度の樹脂をシェルに用いたカプセル型のトナーであって溶解懸濁法で調製されたトナーが提案されている(特許文献1)。しかし、磁性トナー粒子中における磁性粒子の分散性が不十分で、偏っている場合があった。さらに磁性粒子の含有量が磁性トナー粒子間でばらつきを生じることがあった。結果、長期の使用で濃度が低下する場合があった。
【0007】
すなわち、磁性一成分現像方式で優れた低温定着性と耐久性を満たす磁性トナーが提供されていない。この状況を鑑み本発明に至った。
【0008】
【特許文献1】特開2009−098257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、低温定着性、耐久性に優れる磁性トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリエステルを主成分とする樹脂、磁性酸化鉄およびワックスを酢酸エチル中で溶解または分散させて得られた溶解物または分散物を水系媒体中に分散させ、ついで酢酸エチルを除去することによって得られる磁性トナー粒子と、無機微粒子とを有する磁性トナーであって、
前記磁性酸化鉄は、前記磁性酸化鉄を酢酸エチルに分散させた後静置し、沈澱体積の減少速度を評価する試験において、静置直後の沈澱体積(A0)に対する静置5分後の沈澱体積(A5)の割合(A5/A0)が、50%以上85%以下であることを特徴とする磁性トナーに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粒径分布、耐熱保存性が良好な磁性トナーを提供できる。さらに低温定着性、耐久性、黒色度(a*)に優れ、カブリの抑制と画像濃度を両立する磁性トナーを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、磁性トナーと磁性トナー粒子とは区別して用いる。粉体流動性および帯電性を調整するために、磁性トナー粒子に対し無機微粒子を外添した形態を磁性トナーと呼ぶ。
【0013】
磁性酸化鉄は、磁性一成分現像方式に用いる磁性トナーに磁化を付与する機能および着色の機能を兼ねる磁性粒子である。
【0014】
本発明の磁性トナー粒子は、少なくともポリエステルを主成分とする樹脂(結着樹脂に占めるポリエステルの割合が50質量%以上)、磁性酸化鉄およびワックスを酢酸エチル中で溶解または分散させて得られた溶解分散物を水系媒体中に分散させ、ついで酢酸エチルを除去する方法、いわゆる溶解懸濁法によって得られる。
【0015】
本発明の溶解懸濁法は、ポリエステルを主成分とする樹脂、磁性酸化鉄およびワックスを酢酸エチル中で溶解または分散させて得られた溶解分散物(磁性トナー組成物)を用意する。一方、磁性トナー組成物を水系媒体に懸濁させるための分散剤を含有する水系媒体(水相)を用意する。ついで磁性トナー組成物を水相に分散させ、油滴を形成し(造粒)、得られた分散液から酢酸エチルを除去(脱溶剤)し、磁性トナー粒子を得る。
【0016】
したがって、本発明において磁性酸化鉄と酢酸エチルとの関係が、磁性トナー粒子における磁性酸化鉄の分散性を制御する上で重要となる。磁性トナー粒子における磁性酸化鉄の分散性とは、磁性トナー粒子めいめいが含有する磁性粒子の量におけるばらつきの程度を表す。つまり、分散性が良いことは磁性トナー粒子の密度が揃っていることを意味する。
【0017】
本発明者らは、酢酸エチルを用いた溶解懸濁法による磁性トナーの調製において、磁性酸化鉄が酢酸エチルに特定の範囲でなじむ特性が重要であると見出した。
【0018】
そこで磁性酸化鉄の酢酸エチルへのなじみやすさをあらわす指標として、磁性酸化鉄を酢酸エチルに十分分散させた後、静置し、沈澱体積の減少速度を評価するのが適している。酢酸エチルに対し磁性酸化鉄の比重が大きいために、磁性酸化鉄は酢酸エチル中で沈澱を形成する。沈澱体積の減少速度が小さいことは、磁性酸化鉄が酢酸エチルになじみやすいことを意味すると考えられる。一方、沈澱体積の減少速度が大きいことは、磁性酸化鉄が酢酸エチルになじみにくいことを意味すると考えられる。
【0019】
本発明の磁性トナーに用いる磁性酸化鉄は、磁性酸化鉄を酢酸エチルに分散させた後静置し、沈澱体積の減少速度を評価する試験において、静置直後の沈澱体積(A0)に対する静置5分後の沈澱体積(A5)の割合(A5/A0)が、50%以上85%以下であることを特徴とする。(A5/A0)は55%以上80%以下であるのが好ましい。さらに(A5/A0)は60%以上75%以下であるのがより好ましい。(A5/A0)を評価する際、磁性酸化鉄を酢酸エチルに分散させる方法としては、磁性酸化鉄と酢酸エチルを蓋のできる容器に入れ、しんとうする方法を用いることができる。
【0020】
静置5分後の沈澱体積(A5)とは、磁性酸化鉄を酢酸エチルに十分分散させ、静置し、5分経過後の沈澱体積を表す。磁性酸化鉄が酢酸エチルになじみやすい場合、A5/A0は1に近い値として測定されると考えられる。
【0021】
沈降速度の算出に静置5分後の沈澱体積(A5)を採用する理由は、造粒後、脱溶剤工程で磁性酸化鉄のふるまいを評価するにあたり、磁性トナー粒子における磁性酸化鉄の分散性との相関を確認したところ、静置5分後が最も良く相関したためである。
【0022】
(A5/A0)が50%未満の場合、磁性酸化鉄は酢酸エチルになじみにくすぎるため、磁性トナー組成物を調製する際、磁性酸化鉄の十分な解砕、分散が行えず、磁性トナー粒子中における磁性酸化鉄の分散性が悪化しやすい。さらに磁性トナー粒子の製造安定性が低下しやすく、磁性トナーの粒径分布がブロード化しやすく((重量平均径D4/個数平均径D1)が大きくなりやすく)、耐久性に劣る。
【0023】
一方、(A5/A0)が85%を超えた場合、磁性酸化鉄は酢酸エチルになじみやすすぎるため、脱溶剤時、磁性酸化鉄が磁性トナー粒子から離脱しやすくなる。これは酢酸エチルが油滴から水相へ移行する際、磁性酸化鉄が酢酸エチルの移動に伴って油滴から抜けることで生じる。結果、磁性酸化鉄が仕込量含有されず十分な画像濃度が得られない原因となったり、磁性トナーの耐久性の低下、カブリの発生をもたらす。
【0024】
本発明の磁性トナーは、磁性トナー粒子および無機微粒子を含有することを特徴とする。無機微粒子を含有することで、磁性トナーの流動性を向上させ、磁性トナー粒子本来の耐久性を発揮させることができる。さらに、現像性、帯電性を補うことができ、十分な画像濃度が得られる。
【0025】
磁性トナーにおける磁性酸化鉄の分散性を向上する手段として、磁性酸化鉄と酢酸エチルとの親和性を特定の範囲とすることに加え、磁性酸化鉄と結着樹脂に用いるポリエステルとの親和性を上げることが好ましい。
【0026】
磁性酸化鉄とポリエステルとのなじみやすさを評価する手段として、磁性酸化鉄とイソプロピルアルコールとのなじみやすさを評価するのが適している。この理由は、物質どうしの親和性を表す溶解度パラメータにおいて、イソプロピルアルコールの値がポリエステルの値に近いと考えるからである。
【0027】
磁性酸化鉄とイソプロピルアルコールとのなじみやすさを評価する手法としては、磁性酸化鉄と酢酸エチルとのなじみやすさを評価する手法と同様にして行うのが好ましい。すなわち磁性酸化鉄をイソプロピルアルコールに分散させた後静置し、沈澱体積の減少速度を評価する試験において、静置直後の沈澱体積(I0)に対する静置5分後の沈澱体積(I5)の割合(I5/I0)を測定する。
【0028】
沈降速度の算出に静置5分後の沈澱体積(I5)を採用する理由は、磁性トナー粒子における磁性酸化鉄の分散性との相関を確認したところ、静置5分後が最も良く相関したためである。
【0029】
前記磁性酸化鉄は、前記磁性酸化鉄をイソプロピルアルコールに分散させた後静置し、沈澱体積の減少速度を評価する試験において、静置直後の沈澱体積(I0)に対する静置5分後の沈澱体積(I5)の比(I5/I0)が、前記(A5/A0)と式(1)の関係を満たすのが好ましい。
1.10≦(I5/I0)/(A5/A0)≦2.00 ・・・(1)
【0030】
前記比(I5/I0)/(A5/A0)は、磁性酸化鉄と酢酸エチルとのなじみやすさに対する、磁性酸化鉄とイソプロピルアルコールとのなじみやすさを表す指標である。(I5/I0)/(A5/A0)が式(1)の関係を満たすことによって、油滴から磁性酸化鉄が抜けるのを抑えながら、磁性酸化鉄の分散性をより向上することができる。結果、磁性トナーの着色力がさらに向上し、より濃度の高い画像が得られやすい。また、磁性トナーの赤み(a*)を下げやすく、黒色度の高い画像が得られやすい。
【0031】
より好ましくは、前記比(I5/I0)/(A5/A0)は、1.10以上1.60以下である。この範囲とすることで、耐久性評価において長期の使用であっても、高い濃度が得られやすい。
【0032】
磁性酸化鉄と酢酸エチルとのなじみやすさ、磁性酸化鉄とイソプロピルアルコールとのなじみやすさを制御することで、油滴における磁性酸化鉄の挙動を調整でき、磁性酸化鉄の分散性を良好な状態にできる。
【0033】
(I5/I0)/(A5/A0)は磁性酸化鉄の表面に存在する成分量で調整するのが好ましい。
【0034】
本発明に用いられる磁性酸化鉄は、Fe成分に加えて、Ti成分、Al成分及びSi成分を少なくとも含有するのが好ましい。これらの元素を含有することで、磁性トナーの磁気特性、画像濃度、a*を所望の値にしやすい。
【0035】
磁性酸化鉄はTi成分の含有量が、Ti元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.30質量%以上5.00質量%以下であるのが好ましい。0.30質量%以上4.00質量%以下であることがより好ましく、0.30質量%以上3.00質量%以下であることがさらにより好ましい。この範囲とすることで、磁性トナーに適当な磁化を付与しやすく、カブリを抑制しやすい。
【0036】
磁性酸化鉄はAl成分の含有量が、Al元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上3.00質量%以下であるのが好ましい。0.10質量%以上2.50質量%以下であることがより好ましく、0.10質量%以上2.00質量%以下であることがさらにより好ましい。この範囲とすることで、磁性酸化鉄の粒度分布をシャープにしやすく、画像のa*値を低くしやすい。
【0037】
磁性酸化鉄はSi成分の含有量が、Si元素換算で、磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上5.00質量%以下であるのが好ましい。より好ましくは0.10質量%以上4.00質量%以下であり、さらにより好ましくは0.15質量%以上3.50質量%以下である。この範囲とすることで、帯電量が高くなる現象を抑えやすくなり、帯電起因の画像濃度低下を抑制しやすい。
【0038】
本発明に係わる磁性酸化鉄の更に好ましい態様について説明する。
【0039】
(1)前記磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるAl成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量の割合が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の50%以上95%以下であるのが好ましい。
【0040】
磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入した際、Fe成分とTi成分はほとんど溶出せず、最表層Al成分が溶出する。つまり磁性酸化鉄表面から深い部分のAlは溶解されず、最表層のAlのみが溶解すると考えられる。したがって、前記磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるAl成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量は、磁性酸化鉄の最表層のAl成分量を意味すると考えられる。
【0041】
最表層Al量の割合が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の50%以上95%以下とすることで、(A5/A0)を所望の値にしやすい。この理由は十分明らかになっていないが、磁性酸化鉄最表層の組成はAl成分量により、酢酸エチルとのなじみやすさを調整できる。
【0042】
(2)前記磁性酸化鉄に含まれるAl成分を前記アルカリ水溶液で溶出した後のアルカリ溶出後磁性酸化鉄を酸水溶液により溶解し、全て溶解された時点での溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたとき、前記総Fe元素量の10質量%のFe元素が溶解された時点での溶解液(以下、Fe元素溶解率10質量%溶解液という)に含まれるAl成分量と、前記(1)で溶出されるAl成分量の割合の合計が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の95%以上であるのが好ましい。
【0043】
言い換えれば、Al成分が磁性酸化鉄の最表層および中間層に存在するのが好ましく、Al成分は磁性酸化鉄の中心部に存在しないのが好ましい。磁性酸化鉄中心部にAl成分を含有しないことで小粒径の磁性酸化鉄が生成しにくく、画像のa*値を小さくしやすい。
【0044】
(3)本発明における磁性酸化鉄は、前記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分の含有量(Ti元素換算値)のAl成分の含有量(Al元素換算値)に対する比(Ti成分の含有量(Ti元素換算値)/Al成分の含有量(Al元素換算値))が、2.0以上30.0以下であるのが好ましい。この範囲とすることで磁性トナーにおける磁性酸化鉄の分散性を良好にしやすく、カブリを良好にしやすい。
【0045】
前記磁性酸化鉄を前記アルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるSi成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量が、磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量の5.0%以上30.0%以下であるのが好ましい。より好ましくは8.0%以上27.0%以下であり、さらに好ましくは10.0%以上25.0%以下である。
【0046】
磁性酸化鉄の最表層のアルカリ水溶液で溶出されるSi成分量が、磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量に対して、上記範囲である場合、磁性酸化鉄を高抵抗としやすい。さらに磁性酸化鉄とポリエステルを主成分とする樹脂との親和性を上げやすく、磁性トナー粒子中への良好な分散性が達成しやすい。
【0047】
前記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分の含有量(Ti元素換算値)のSi成分の含有量(Si元素換算値)に対する比(Ti成分の含有量(Ti元素換算値)/Si成分の含有量(Si元素換算値))が、1.0以上5.0以下であるのが好ましい。当該TiのSiに対する比(以下、単に[Ti/Si]ともいう)、つまり中間層におけるTi量/Si量の比は、1.0以上5.0以下であるのが好ましく、さらに好ましくは1.2以上4.5以下である。[Ti/Si]が上記範囲にある場合、磁性トナーにおける磁性酸化鉄の分散性を良好にしやすく、良好なa*、カブリを得やすい。
【0048】
前記磁性酸化鉄を前記アルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるSi成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量(最表層Si量)は、0.20質量%以上1.00質量%以下であるのが好ましい。最表層Si量をこの範囲とすることで、磁性酸化鉄のイソプロピルアルコールへの分散性を所望の値に制御しやすい。
【0049】
<磁性粒子の分散性>
以下の方法により磁性トナー粒子における磁性粒子の分散性を評価する。
【0050】
まず磁性トナー粒子の乾式比重(M)の値に等しい比重の水溶液を準備する。乾式比重の測定は、「乾式自動密度計 アキュピック1330」(島津製作所製)を用いて測定した。水溶液の比重調整にはヨウ化ナトリウムを用いた。
【0051】
この水溶液中には、コンタミノンN(和光純薬工業製)を約0.05質量%の濃度になるように添加しておく。この水溶液50mLに精秤した磁性トナー粒子約0.25g(W1)を添加し、超音波分散して一次粒子にまで分散されたことを光学顕微鏡にて確認した後、JIS R−3504規格取得の50mLメスシリンダーに注ぎ入れ、約24時間静置する。上澄みをデカンテーションし沈殿をイオン交換水で洗浄後、乾燥したサンプルの質量(W2)を精秤する。
【0052】
(W1−W2)/W1が1に近いほど、磁性粒子の分散性が良好であることを示す。(W1−W2)/W1は0.90以上であるが好ましい。0.94以上であるのがさらに好ましい。
【0053】
この原理では水溶液の比重よりも大きな比重を有する粒子が沈降することになる。従って、(M)の比重の水溶液中にて沈降する粒子は(M)を超える比重を有する。一方、浮遊している粒子は(M)以下の比重を有する。
【0054】
本発明の磁性トナーは、79.6kA/mの外部磁場における磁化が12Am2/kg以上80Am2/kg以下であるのが好ましい。79.6kA/mの外部磁場で規定する理由は、現像スリーブ上の磁気環境を想定しているためである。該磁化が上記範囲内であることによって、画像濃度とカブリを両立しやすい。さらに良好な耐久性が得られやすい。
【0055】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄は、透過型電子顕微鏡写真による観察で、磁性酸化鉄粒子が主に平滑面を有さない曲面で形成された球形状粒子から構成され、八面体粒子を殆ど含まないことが好ましい。
【0056】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄は、後述する測定方法に基づくBET比表面積が、5.0m2/g以上15.0m2/g以下であることが好ましく、より好ましくは、6.0m2/g以上13.0m2/g以下である。当該BET比表面積を上記範囲にすることで、磁性トナーの帯電性に影響する磁性酸化鉄の水分吸着量を適正化しやすい。
【0057】
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄の磁気特性としては、磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10.0Am2/kg以上200.0Am2/kg以下であることが好ましく、より好ましくは60.0Am2/kg以上100.0Am2/kg以下である。また、残留磁化が1.0Am2/kg以上100.0Am2/kg以下であることが好ましく、より好ましくは2.0Am2/kg以上20.0Am2/kg以下である。さらに保磁力が1.0kA/m以上30.0kA/m以下であることが好ましく、より好ましくは2.0kA/m以上15.0kA/m以下である。このような磁気特性を有することで、画像濃度とカブリの抑制を両立できる良好な現像性を得ることができる。
【0058】
本発明で用いられる磁性酸化鉄の比重は、3.00g/cm3以上6.00g/cm3以下が好ましい。この範囲であることで、所望の磁化を満たし、磁性トナー粒子内での磁性酸化鉄の分散性を良好なものにしやすい。
【0059】
本発明で用いられる磁性酸化鉄の製造方法について例示するが、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0060】
(第一工程)
硫酸第一鉄水溶液、ケイ酸ソーダ、水酸化ナトリウムおよび水を混合し、混合溶液を調製する。この混合溶液の温度を90℃に維持し、かつpHを6以上9以下に維持しながら空気を吹き込み、液中に生成した水酸化第一鉄を湿式酸化する。水酸化第一鉄が、当初の量に対して、70%以上90%以下消費された時点で生成されたマグネタイト粒子の中心域の形成を確認する。
【0061】
(第二工程)
第一工程を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄の濃度を調べることで酸化反応の進行率を調べ、上記水酸化第一鉄が、当初の量に対して70%以上90%以下消費された時点を特定する。特定された時点において、第一工程で用いたものと同濃度の硫酸第一鉄水溶液と、硫酸チタニル、硫酸アルミニウムを当該溶液に加え、更に水を加えて液量を調整する。これに、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを9以上12以下に調整する。この溶液には、第一工程で加えたケイ酸ソーダが残存している。液温90℃にて空気を吹き込み湿式酸化を進行させ、中間域を生成させる。
【0062】
(第三工程)
第二工程を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄が、95%以上99%以下消費された時点で空気の吹き込みを停止し、ケイ酸ソーダ、および硫酸アルミニウムを当該溶液に添加する。また、希硫酸を添加して液のpHを5以上9以下に調整する。
【0063】
(第四工程)
このようにして得られたマグネタイト粒子を、常法により洗浄、ろ過し、更に乾燥させた後に粉砕して、本発明に用いられる磁性酸化鉄を得る。
【0064】
なお、本発明に用いられる磁性酸化鉄は、特に
1.第一工程において、水酸化第一鉄が、当初の量に対して、70%以上90%以下消費された時点で第二工程に移行し、
2.第二工程で、硫酸チタニルを添加し、その際の硫酸チタニルと硫酸アルミニウムの量を適宜調整し、かつ、
3.第二工程でのpHを9以上12以下に調整し、さらに、
4.水酸化第一鉄が、95%以上99%以下消費された時点で第三工程に移行し、
5.第三工程において、ケイ酸ソーダと硫酸アルミニウムの添加量を適宜調整することによって、上記特性を付与することが可能である。
【0065】
本発明の磁性トナーにおいて、上記磁性酸化鉄の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、磁性酸化鉄が30質量部以上120質量部以下であることが好ましく、より好ましくは磁性酸化鉄が45質量部以上100質量部以下である。上記範囲内とすることで、磁性トナーのカブリ抑制と画像濃度向上の両立がより達成しやすい。
【0066】
本発明において磁性酸化鉄の分散性を上げるため、磁性酸化鉄分散液をあらかじめ調製し、これを用いて磁性トナー組成物を調製するのが好ましい。
【0067】
磁性体分散液の製造方法としては、湿式で溶媒存在下で分散する方法が好ましい。磁性酸化鉄、樹脂、その他添加剤と溶媒を混合し、ビーズミル、ペイントシェーカー等のメディア分散が好ましい。用いたメディアは回収し磁性体分散液を得る。メディア分散としては例えば、ペイントシェーカー(東洋精機製)、アトライター(三井三池工機製)等を使用する。又、使用するメディアとしては、アルミナ、ジルコニア、ガラスが好ましいが、メディア汚染が極めて少ないジルコニアがより好ましい。その際のビーズ径は、2mm以上5mm以下が分散性に優れており好ましい。
【0068】
本発明で磁性トナーの製造に用いる溶解懸濁法の好ましい形態について、以下に説明を述べる。
【0069】
ポリエステルを主成分とする樹脂、磁性酸化鉄およびワックスを酢酸エチル中で溶解または分散させて得られた溶解物または分散物(磁性トナー組成物)を用意する。一方、磁性トナー組成物を水系媒体に懸濁させるための分散剤を含有する水系媒体(水相)を用意する。磁性トナー組成物を水相に分散させ(造粒)、得られた分散液から酢酸エチルを除去(脱溶剤)し、磁性トナー粒子を得る。
【0070】
本発明に用いる水系媒体としては、水に酢酸エチルを溶解させておくのが好ましい。これは水系媒体に磁性トナー組成物を懸濁しやすくする効果があり、造粒中の油滴安定性を高めることができるからである。酢酸エチルを溶解させる量は、水100質量部あたり、酢酸エチル2質量部以上8質量部以下(飽和量以下)添加するのが好ましい。
【0071】
上記磁性トナー組成物100質量部に対する水系媒体の使用量は、100質量部以上2000質量部以下であることが好ましく、より好ましくは120質量部以上1600質量部以下である。上記範囲内とすることで、水相中に油滴が海島構造で存在する形態(o/wエマルション)になりやすく、磁性トナー粒子の製造安定性が高められる。
【0072】
本発明では、樹脂微粒子を水系媒体に含有し、磁性トナー組成物の液状物を懸濁させると同時に、カプセル構造を形成するのが好ましい。つまり、樹脂微粒子がシェルを形成すると同時に、分散剤としても機能するのが好ましい。
【0073】
本発明で用いる樹脂微粒子は、一分子内に少なくともエステル結合およびウレタン結合を含有する樹脂、すなわちポリエステル含有ウレタン樹脂であるのが好ましい。エステル結合を有することで、ポリエステルを主成分とする樹脂との接着性を良好にし、良好なシェルを形成しやすい。さらに樹脂微粒子がポリエステル含有ウレタン樹脂であることによって、耐溶剤性を付与することができ、油滴の粒径、粒径分布を制御しやすい。
【0074】
さらに樹脂微粒子に占める結合のモル比(ウレタン結合/エステル結合)は、1/9以上5/5以下であるのが好ましい。
【0075】
磁性トナー組成物を油滴に変える(造粒する)ために、界面活性剤を用いることもできる。本発明で用いることのできる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等が挙げられ、磁性トナー粒子形成の際の極性にあわせる形で任意に選択可能なものである。
【0076】
両性界面活性剤としては、例えば以下を挙げることができる。アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等。
【0077】
カチオン界面活性剤としては、例えば以下を挙げることができる。フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6以上C10以下)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、等。
【0078】
また分散剤として、高分子分散剤を用いてもよく、例えば以下を挙げることができる。アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、或いは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等、ビニルアルコール、又はビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等、又はビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド或いはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド等の酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の窒素原子、又はその複素環を有するもの等のホモポリマー又は共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類等。
【0079】
分散剤を使用した場合には、該分散剤が磁性トナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、溶解洗浄除去するのが磁性トナーの帯電面から好ましい。
【0080】
また水系媒体中に分散安定剤を使いるのが好ましい理由を以下に述べる。
【0081】
磁性トナー組成物にせん断力を加えるために、磁性トナー組成物と水系媒体とで粘度に差がないのが好ましい。分散安定剤を用いることによって、磁性トナー組成物と水系媒体の粘度差を調製しやすい。磁性トナー組成物(油相)と水系媒体とで粘度に大きな違いがある場合、油滴の粒径を所望の範囲に収めるのが困難となる場合がある。さらにせん断力で磁性トナー組成物を微細に分散して形成された油滴の周囲を分散安定剤が囲み、油滴同士が再凝集するのを防ぎ、油滴を安定化させる効果があるためでもある。
【0082】
また樹脂の融点以上に加熱して磁性トナーを調整する場合、磁性トナーの凝集を防ぐために水系媒体中には、公知の界面活性剤、水溶性ポリマー、また、粘度調整剤等を添加することが好ましい。
【0083】
本発明で用いることができる分散安定剤としては、無機分散安定剤、および有機分散安定剤が使用でき、無機分散安定剤の場合は、分散後に粒子表面上に付着した状態で磁性トナー粒子が造粒されるので溶媒と親和性がない塩酸等の酸類によって除去ができるものが好ましく、例えば、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、炭化水素ナトリウム、炭化水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ヒドロキシアパタイト、三リン酸カルシウム等が使用できる。
【0084】
以下ウレタン樹脂について述べる。上記ウレタン樹脂はジオールとジイソシアネート基を含有する物質との反応物であり、ジオール、ジイソシアネートの調整により、各種機能性をもつ樹脂を得ることができる。
【0085】
イソシネート基を含有する物質としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0086】
炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6以上20以下の芳香族イソシアネート、炭素数2以上18以下の脂肪族イソシアネート、炭素数4以上15以下の脂環式イソシアネート、炭素数8以上15以下の芳香脂肪族イソシアネート及びこれらのイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物等。以下、変性イソシアネートともいう)及びこれらの2種以上の混合物。
【0087】
芳香族イソシアネートのNCO基は芳香性または脂肪性炭素原子と結合していてよい。芳香族イソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。1,3−及び/または1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4’−及び/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)。
【0088】
また樹脂微粒子は、ウレタン樹脂として、上記したジイソシアネート成分に加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。上記した3官能以上のイソシアネート化合物としては例えば、ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−及びp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
【0089】
上記脂肪族イソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等の脂肪族イソシアネート。
【0090】
上記脂環式イソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−及び/または2,6−ノルボルナンジイソシアネート。
【0091】
上記芳香脂肪族イソシアネートとしては、例えば以下のものが挙げられる。m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)。また、上記ポリイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン。
【0092】
これらのうちで好ましいものは6以上15以下の芳香族イソシアネート、炭素数4以上12以下の脂肪族ポリイソシアネート、及び炭素数4以上15以下の脂環式イソシアネートである。特に好ましいものはIPDI、HDIおよびMDIである。
【0093】
また、上記ウレタン樹脂に用いることのできるジオール成分としては、例えば以下のものが挙げられる。アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなど);上記したアルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
【0094】
アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);
脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);
上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;その他、ポリラクトンジオール(ポリε−カプロラクトンジオールなど)、ポリブタジエンジオール。
【0095】
これらのうち好ましいものは、酢酸エチルへの溶解性(親和性)を考えるとアルキル構造が好ましく、炭素数2以上12以下のアルキレングリコールを用いることが好ましい。
【0096】
また上記ウレタン樹脂においては上記したジオール類に加えて、末端が水酸基であるポリエステルオリゴマーも好適なジオール類として用いることができる。
【0097】
このとき、末端ジオールポリエステルオリゴマーの分子量は3000以下、より好ましくは800以上2000以下であるのが好ましい。この範囲内とすることで、イソシアネート末端の化合物の反応性を調整でき、ウレタン樹脂の酢酸エチルへの溶解性を調整しやすい。
【0098】
また、上述したオリゴマーはジオール成分とジイソシアネート成分との反応物を構成するモノマー中において、1モル%以上10モル%以下、より好ましくは3モル%以上6モル%以下含有されていることが好ましい。この範囲内とすることで、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応を調整でき、ウレタン樹脂の酢酸エチルへの溶解性を調整しやすい。さらに、ウレタン樹脂と結着樹脂との親和性を調整でき、良好なカプセル構造の表層を形成しやすい。
【0099】
上記したポリエステルオリゴマーのポリエステル骨格と、後述する結着樹脂のポリエステル骨格は、同一であることが、良好なカプセル構造を形成するためには好ましい。これは表層のジオール成分とジイソシアネート成分との反応物とコアのとの親和性と関係している。
【0100】
また上述したポリエステルオリゴマーは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどで変性された、エーテル結合を有していても良い。
【0101】
また上記ウレタン樹脂においてはジオール成分とジイソシアネート成分との反応物に加えて、アミノ化合物とイソシアネート化合物の反応物いわゆるウレア結合を持つ化合物も併用して用いることができる。
【0102】
上記ウレタン樹脂に用いることのできるアミノ化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。ジアミン、たとえばジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、またはトリアミン、たとえばトリエチルアミン、ジエチレントリアミンおよび1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタン。
【0103】
上記ウレタン樹脂においては、上記したアミノ化合物のほかに、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物に加えて、イソシアネート化合物とカルボン酸基、シアノ基、チオール基といった、反応性の高い水素が存在する基を有する化合物との反応物を併用して用いることもできる。
【0104】
ウレタン樹脂においては、上記した少なくともジイソシアネート成分とジオール成分との反応物が側鎖にカルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩の基またはスルホン酸基の塩構造を有していることが好ましい。該カルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩の基またはスルホン酸基の塩構造は、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物を形成するモノマーの側鎖にカルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩の基またはスルホン酸基の塩構造を持たせることで容易に導入することができる。
【0105】
該モノマーのうち、汎用性のあるモノマーとして、側鎖に上記した基を有するジオール類を好適に用いることができる。
【0106】
側鎖にカルボン酸基を持つジオール化合物として、例えば以下を挙げることができる。ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸等のジヒドロキシルカルボン酸類及びその金属塩。
【0107】
側鎖にスルホン酸基を有するモノマーも水性分散液を形成しやすく、また、磁性トナー組成物の溶剤に溶けることなく、安定にカプセル構造を形成するために有効である。側鎖にスルホン酸基を持つジオール化合物としては、例えば以下を挙げることができる。3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、1,4−ジヒドロキシ−2−スルホベンゼン、1,3−ジヒドロキシメチル−5−スルホベンゼン、2−スルホ−1,4−ブタンジオール等、ならびにその金属塩。
【0108】
上記した、側鎖にカルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩の基またはスルホン酸基の塩構造をもつジオール類は、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物を形成するモノマーのうち、10モル%以上50モル%以下、より好ましくは20モル%以上30モル%以下含まれていることが好ましい。
【0109】
この範囲内とすることで、樹脂微粒子の分散性を調整でき、磁性トナー粒子の造粒安定性を良好にしやすい。
【0110】
樹脂微粒子の調製は特に限定されるものではなく、乳化重合法や、樹脂を溶媒に溶解したり、溶融させたりして液状化し、これを水系媒体中で懸濁させることにより造粒する方法により、調製することができる。
【0111】
この時、公知の界面活性剤や分散剤等を用いることもできるし、微粒子を構成する樹脂に自己乳化性を持たせることもできる。
【0112】
樹脂を溶媒に溶解させて上記樹脂微粒子を調整する場合用いることのできる溶媒としては特に制限を受けないが、例えば以下を挙げることができる。酢酸エチル、キシレン、ヘキサン等の炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒。
【0113】
また、上記樹脂微粒子を調製する場合において、ジオール成分とジイソシアネート成分との反応物を含有する樹脂微粒子を分散剤として用いる製造方法が好ましい形態の一つである。この製造方法では、イソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、これを水に急速に分散させ、引き続きイソシアネート基と反応可能なアミノ基を有する化合物を添加することにより、鎖を延長させるかまたは架橋することにより調製する方法を好ましく用いることができる。
【0114】
すなわち、上記樹脂微粒子を調製する場合においてはイソシアネート基を有するプレポリマーと必要に応じてその他に必要な成分を、上記の溶媒のうちアセトンやアルコールといった水への溶解度が高い溶媒中に溶解および分散させる。これを水に投入することにより、該イソシアネート基を有するプレポリマー系を急速に分散させる。そして、引き続きアミノ基含有化合物を投入して、所望の物性を持ったジオール成分とジイソシアネート成分との反応物を調製する方法を好適に用いることができる。
【0115】
上記樹脂微粒子は、数平均粒子径が30nm以上100nm以下を示すものを用いることが、本発明の磁性トナーの特徴であるカプセル構造を形成する上で好ましい。
【0116】
樹脂微粒子の数平均粒子径を30nm以上100nm以下の範囲とすることで、樹脂微粒子の添加量が少ない場合であっても、カプセル構造を形成しやすくなる。さらに、水相中における油滴の合一を防ぎ、形状の揃った磁性トナー粒子を調製しやすい。
【0117】
本発明においてポリエステルの調製に用いることのできるモノマーを以下に述べる。
【0118】
アルコール成分としては、好ましくは炭素数2以上8以下、より好ましくは炭素数2以上6以下の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0119】
上記炭素数2以上8以下の脂肪族アルコールとしては、例えば以下のものが挙げられる。エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,7−ヘプタンジオール、および1,8−オクタンジオールの如き直鎖系ジオール。
【0120】
また、他のアルコール成分として以下のものが挙げられる。水素化ビスフェノールA、下記化学式(1)で表わされるビスフェノール誘導体および下記化学式(2)で示されるジオール類。
【0121】
【化1】

【0122】
【化2】

【0123】
一方、カルボン酸成分としては、たとえば以下のものが挙げられる。フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸の如き芳香族多価カルボン酸;フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸の如き炭素数1以上20以下のアルキル基または炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の如き脂肪族多価カルボン酸;それらの酸の無水物およびそれらの酸のアルキル(炭素数1以上8以下)のエステル。
【0124】
このなかでもテレフタル酸が好ましい。酸価の調整には公知の方法を用いることが可能であるが、無水トリメリット酸の併用がより好ましい。
【0125】
カルボン酸成分は、帯電性の観点から、芳香族多価カルボン酸化合物が含有されていることが好ましく、芳香族多価カルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、30モル%以上が好ましく、50モル%以上100モル%以下がより好ましい。
【0126】
また、原料モノマー中には、3価以上の多価アルコールおよび/または3価以上の多価カルボン酸化合物が含有されていてもよい。
【0127】
本発明における樹脂としては、前記ポリエステルに加え、ビニル系樹脂、ポリエステルとスチレンアクリルの混合樹脂、ポリエステル成分とビニル系樹脂とが化学結合したハイブリッド樹脂、エポキシ樹脂等が含有されていてもよい。
【0128】
本発明において、必要に応じ異なる分子量の樹脂を混合し用いてもよい。樹脂の混合比率は任意である。
【0129】
本発明の磁性トナーは、結晶性を有する樹脂を含有していてもよい。結晶性を有する樹脂はポリエステルが好ましい。結晶性ポリエステルは、脂肪族ジオールを主成分にしたアルコール成分と脂肪族ジカルボン酸化合物を主成分としたカルボン酸成分を縮重合させて得られる樹脂が好ましい。2価以上の多価アルコールからなるアルコール成分と、2価以上の多価カルボン酸化合物からなるカルボン酸成分とを含有した単量体を用いて得られる。その中でも、炭素数が2以上6以下、好ましくは4以上6以下の脂肪族ジオールを60モル%以上含有したアルコール成分と炭素数が2以上8以下、好ましくは4以上6以下、より好ましくは4の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上含有したカルボン酸成分を縮重合させて得られた樹脂が好ましい。
【0130】
本発明に用いられる離型剤(ワックス)として、例えば以下を挙げることができる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したもの。ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等。
【0131】
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、溶解懸濁法において、ワックス分散液の調製しやすさ、磁性トナー中への取り込まれやすさ、定着時における磁性トナーからの染み出しやすさ、離型性から、エステルワックスが特に好ましい。
【0132】
本発明においてエステルワックスとは、一分子中にエステル結合を少なくとも1つ有していればよく、天然ワックス、合成ワックスのいずれを用いてもよい。併用することもできる。
【0133】
合成エステルワックスの例としては例えば、長鎖脂肪酸と長鎖アルコールから合成されるモノエステルワックスが挙げられる。長鎖直鎖飽和脂肪酸は一般式Cn2n+1COOHで表わされ、nが5以上28以下が好ましく用いられる。また長鎖直鎖飽和アルコールはCn2n+1OHで表わされ、nが5以上28以下が好ましく用いられる。
【0134】
ここで長鎖直鎖飽和脂肪酸の具体例としては、例えば以下を挙げることができる。カプリン酸,ウンデシル酸,ラウリン酸,トリデシル酸,ミリスチン酸,パルミチン酸、ペンタデシル酸,ヘプタデカン酸,テトラデカン酸,ステアリン酸,ノナデカン酸,アラモン酸,ベヘン酸,リグノセリン酸,セロチン酸,ヘプタコサン酸,モンタン酸およびメリシン酸等。
【0135】
一方、長鎖直鎖飽和アルコールの具体例としては、例えば以下を挙げることができる。アミルアルコール,ヘキシールアルコール,ヘプチールアルコール,オクチルアルコール,カプリルアルコール,ノニルアルコール,デシルアルコール,ウンデシルアルコール,ラウリルアルコール,トリデシルアルコール,ミリスチルアルコール,ペンタデシルアルコール,セチルアルコール,ヘプタデシルアルコール,ステアリルアルコール,ノナデシルアルコール,エイコシルアルコール,セリルアルコールおよびヘプタデカンノオール等。
【0136】
また、1分子にエステル結合を2つ以上有するエステルワックスとしては、例えば以下を挙げることができる。トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオール−ビス−ステアレート等);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等。
【0137】
また、天然エステルワックスの例としては、例えば以下を挙げることができる。キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ油、蜜ろう、ラノリン、カスターワックス、モンタンワックスおよびその誘導体等。
【0138】
また、その他の変性ワックスとしては、例えば以下を挙げることができる。ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミド等);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミド等);及びジアルキルケトン(ジステアリルケトン)等。
【0139】
上記ワックスは部分ケン化されていてもよい。
【0140】
上記のうち、より好ましいワックスとしては、直鎖脂肪酸と直鎖脂肪族アルコールとによる合成エステルワックスもしくは、上記エステルを主成分とする天然ワックスである。
【0141】
この理由は定かでないが、ワックスが直鎖状の構造を持つことにより、離型効果を発現しやすく、低温定着性を向上させ、高温オフセットを抑制しやすい。
【0142】
さらに、本発明においては上記した直鎖構造に加えてエステルがモノエステルであることがより好ましい。これも上述した理由と同様に、分岐した鎖にそれぞれエステルが結合しているようなバルキーな構造では、ポリエステルや本発明の表面層のような極性の高い物質を通り抜けて表面に染み出るのが困難な場合があると推測される。
【0143】
また本発明においては、必要に応じてエステルワックス以外の炭化水素系ワックスを併用することも好ましい形態の一つである。
【0144】
上記したワックスとしては、例えば以下を挙げることができる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムおよびこれらの誘導体の如き石油系天然ワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)の如き合成炭化水素;オゾケライト、セレシンの如き天然ワックス等。
【0145】
本発明において、磁性トナーにおけるワックス含有量は、0.50質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは1.00質量%以上15.0質量%以下である。この範囲内とすることで、磁性トナーの耐久性および帯電性ならびにワックスの離型効果を良好にしやすい。
【0146】
本発明においてワックスは、DSC測定において、60℃以上90℃以下の温度範囲に吸熱ピークを有することが好ましい。この範囲内とすることで、低温でワックスが溶融しやすく、離型効果を発現しやすい。結果、低温定着性や耐オフセット性を両立しやすい。
【0147】
本発明においては、必要に応じて荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、樹脂および磁性酸化鉄を含有するコア部分に含まれていてもよいし、表面層に含まれていてもよい。
【0148】
トナー組成物の調製時に荷電制御剤を添加し、分散する方法。樹脂微粒子の調製時、荷電制御剤を添加し、分散させる方法。樹脂微粒子を構成する樹脂の分子内に荷電制御剤を結合させる方法。これらを好適に用いることができる。
【0149】
磁性トナー粒子100質量部に対し、荷電制御剤は0.01質量部以上0.80質量部以下が好ましい。この範囲内とすることで、低温低湿下のチャージアップを防ぎやすく、高温高湿下での帯電保持能を良好にしやすい。
【0150】
帯電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、含金アゾ錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及びサリチル酸誘導体の金属塩。
【0151】
具体的には、以下のものが挙げられる。ニグロシン系染料のボントロンN−03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基及び四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物。
【0152】
上記製造方法で得られた磁性トナー粒子の流動性や現像性、帯電性を補うため、無機微粒子を外添し、磁性トナーを調製する。
【0153】
この無機微粒子の一次粒子径は、5nm以上2μm以下であるのが好ましく、特に5nm以上500nm以下であるのが好ましい。また、BET法による比表面積は、20m2/g以上500m2/g以下であるのが好ましい。この範囲内とすることで磁性トナーの耐久性、低温定着性および帯電性を良好にしやすい。
【0154】
この無機微粒子の使用割合は、磁性トナー粒子の0.01質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、特に0.01質量%以上2.0質量%以下であるのが好ましい。
【0155】
無機微粒子は、必要に応じ複数種の無機微粒子を併用してもよい。さらに必要に応じ高分子微粒子を併用してもよい。
【0156】
無機微粒子の具体例としては、例えば以下を挙げることができる。シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、等。
【0157】
高分子系微粒子の具体例としては、例えば以下を挙げることができる。ソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンの如き重合体の粒子等。
【0158】
本発明で用いる微粒子は、表面処理剤により表面処理を行って、疎水性を上げることで、高湿度下においても磁性トナーの流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。
【0159】
例えば好ましい表面処理剤としては、例えば以下を挙げることができる。シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等。
【0160】
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の磁性トナーを除去する為のクリーニング性向上剤としては、例えば以下を挙げることができる。ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合等によって製造された、ポリマー微粒子等。
【0161】
磁性酸化鉄、磁性トナー粒子および磁性トナーの物性の測定方法、ならびに磁性トナーの評価方法を以下に説明する。
【0162】
<A5/A0測定>
磁性酸化鉄のA5/A0測定方法を以下に述べる。
【0163】
磁性酸化鉄20g、酢酸エチル30gを有栓耐圧性ガラス瓶に入れ、ペイントシェーカ(東洋精機製)で5分間しんとうすることで磁性酸化鉄を酢酸エチルに十分に分散させたスラリーを得る。
【0164】
前記スラリー20g、酢酸エチル20gをメスシリンダーに入れ、メスシリンダーの口をゴム栓でふさぐ。メスシリンダーは、JIS R−3504規格取得の50mLメスシリンダーを用い、たとえば柴田科学製3Zを用いることができる。
(1)ゴム栓をしたメスシリンダーを10秒間手で振り、これを水平な台上に静置する。
静置した瞬間ストップウォッチをスタートし、計時を開始する。時間経過とともに沈澱体積が減少し、5分経過後の沈澱面の体積を目視で計測する(A5−No.1)。体積は0.1mL単位で計測する。なお沈澱面が荒れている場合、山と谷の平均線を水平に引き、目視で計測する。さらに液面の体積を目視で計測し、A0とする。
(2)(1)のメスシリンダーを再び10秒間手で振り、これを水平な台上に静置する。静置した瞬間にストップウォッチをスタートし、5分経過後の沈澱面の体積を目視で計測する(A5−No.2)。
(3)(2)を再度繰り返し、同様にA5−No.3を得る。
(4)A5−No.1、A5−No.2、A5−No.3の平均値をA5とする。
(5)A0に対するA5の比をA5/A0とする。
【0165】
<I5/I0測定>
磁性酸化鉄のI5/I0測定方法を以下に述べる。
【0166】
A5/A0の求め方において、酢酸エチルの代わりにイソプロピルアルコールを用いる以外同様にして、I5/I0を求める。
【0167】
<(I)磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、上記磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量又はSi成分量の定量方法>
【0168】
(1)試料の調製
磁性酸化鉄0.9gを計量し、メチルペンテン製ビーカーに入れる。次に、1mol/LのNaOHを25mL計量して、ビーカー中に投入する。回転子をビーカーに入れて、蓋をし、ホットスターラー上で4時間加温・攪拌(液温70℃)した後、放冷する。放冷後、回転子に付着している磁性酸化鉄を含め、全ての磁性酸化鉄をメスシリンダー中に純水で流しいれる。純水で液量を125mLに調整後、ビーカーに移し変えて十分に攪拌させる。その後、磁石上にビーカーを静置し、上澄みが透明になるまで磁性酸化鉄を沈降させる。沈降後、上澄みをろ過し、ろ液を得る。
(2)測定方法
得られたろ液をICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該ろ液中のAl元素濃度(mg/L)、Si元素濃度(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
100mLポリメスフラスコに、4gのNaOH、Si成分、およびAl成分を加え、イオン交換水で100mLに定容して、Si成分のSi元素濃度が[0mg/L以上50mg/L以下]の範囲にあり、Al成分のAl元素濃度が[0mg/L以上40mg/L以下]の範囲にある検量線液を数水準作製する。
(4)計算式
磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分を上記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量(Al元素換算値:質量%])又はSi成分量(Si元素換算値:質量%)は以下の式より算出する。
(式):Al成分量(Al元素換算値:質量%])又はSi成分量(Si元素換算値:質量%)=(L×0.125)/(S×1000)×100
但しL:各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S:試料質量0.9(g)
【0169】
<(II)Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含有される各元素の定量方法>
【0170】
(1)試料の調製
前記(1)試料の調製に記載された、試料調製終了後のビーカー内に沈降した磁性酸化鉄、即ち、磁性酸化鉄に含まれるAl成分、又はSi成分をアルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄を集めて乾燥させる。得られた磁性酸化鉄の乾燥物を25g計量し、5Lガラスビーカーに入れる。次に、0.5mol/LのH2SO4を5L添加攪拌しながら、ウォーターバス中で室温から80℃まで徐々に昇温させて、当該磁性酸化鉄を表面から徐々に溶解し、溶解液を得る。ここで、特に、磁性酸化鉄が全て溶解された溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたときに、総Fe元素量の10質量%が溶解液に存在する状態まで磁性酸化鉄を溶解した溶解液(Fe元素溶解率10質量%溶解液という)を取得する。得られたFe元素溶解率10質量%溶解液(スラリー)を25mL採取する。採取したスラリーを0.1μmメンブランフィルターでろ過し、ろ液を得る。
(2)測定方法
得られたろ液を、ICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)、波長334.94nm(Ti)、波長259.94nm(Fe)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該ろ液中のSi元素濃度(mg/L)、Ti元素濃度(mg/L)、Al元素濃度(mg/L)、Fe元素濃度(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
1000mLポリメスフラスコに、51gのH2SO4、Fe成分、Si成分、Al成分、およびTi成分を加え、イオン交換水で1000mLに定容して、Fe成分のFe元素濃度が[100mg/L以上4000mg/L以下]の範囲にあり、Si成分のSi元素濃度が[0mg/L以上150mg/L以下]の範囲にあり、Al成分のAl元素濃度が[0mg/L以上40mg/L以下]の範囲にあり、Ti成分のTi元素濃度が[0mg/L以上30mg/L以下]の範囲にある検量線液を数水準作製する。
(4)計算式
上記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含有される、Si成分量(Si元素換算値:質量%])、Ti成分量(Ti元素換算値:質量%])、Al成分量(Al元素換算値:質量%])、およびFe成分量(Fe元素換算値:質量%])は次式を用いて算出する。
(式):Si成分量(Si元素換算値:質量%])、Ti成分量(Ti元素換算値:質量%])、Al成分量(Al元素換算値:質量%])、又はFe成分量(Fe元素換算値:質量%])=(L×5)/(S×1000)×100
但しL:各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S:試料質量25(g)
【0171】
<(III)磁性酸化鉄に含有される全Si成分量(Si元素換算値[質量%])、全Ti成分量(Ti元素換算値:質量%))、又は全Al成分量(Al元素換算値:[質量%])の定量方法>
【0172】
(1)試料の調製
磁性酸化鉄1.00gを計量し100mLテフロン(登録商標)ビーカーに入れる。次に水10mL、濃塩酸16mLを添加後、加熱し、磁性酸化鉄を全て溶解する。冷却後、弗化水素酸(1+1)を4mL添加し、20分放置する。次に、得られた溶液を100mLポリメスフラスコに移して、界面活性剤(商品名:トリトンX[10g/L])を1mL添加し100mLにメスアップする。
(2)測定方法
上記調製された試料溶液をICP発光光度分析装置(商品名:ICPS2000、製造元:島津製作所)の誘導結合プラズマ中に噴霧し、波長288.16nm(Si)、波長396.15nm(Al)、波長334.94nm(Ti)での発光強度を測定して、濃度既知の検量線液の発光強度と比較することで、当該試料溶液中のSi元素(mg/L)、Ti元素(mg/L)、Al元素(mg/L)を定量する。
(3)上記検量線液の調製方法
1000mLポリメスフラスコに、16mLのHCl、4mLのHF(1+1)、1mLの界面活性剤(1%トリトンX)、650mgのFe、Si成分、Al成分、およびTi成分を加え、イオン交換水で1000mLに定容して、Si成分のSi元素濃度、Al成分のAl元素濃度、およびTi成分のTi元素濃度がそれぞれ[0mg/L以上200mg/L以下]の範囲にある検量線液を数水準作製する。
(4)計算式
磁性酸化鉄に含有される全Si成分量(Si元素換算値:質量%)、全Ti成分量(Ti元素換算値:質量%)、又は全Al成分量(Al元素換算値:質量%)は次式を用いて算出する。
(式):全Si成分量(Si元素換算値:質量%)、全Ti成分量(Ti元素換算値:質量%)、又は全Al成分量(Al元素換算値:質量%)
=(L×0.1)/(S×1000)×100
但しL:各元素のICP測定値から得られた各元素の濃度(mg/L)
S:試料質量1.00(g)
【0173】
本発明において使用される、磁性酸化鉄に含有される、(全)Ti成分量(Ti元素換算値:質量%)、又は(全)Al成分量(Al元素換算値:質量%])は、上記(III)の方法により算出される。
【0174】
本発明において使用される、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量に対する割合(%)、又は、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるSi成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量に対する割合(%)は、上記 (I)、および(III)の結果より算出される。
【0175】
本発明において使用される、磁性酸化鉄に含まれるAl成分をアルカリ水溶液で溶出した後の磁性酸化鉄をさらに酸水溶液で溶解し、溶解液を得、磁性酸化鉄が全て溶解された溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたときに、総Fe元素量の10質量%が溶解液に存在する状態まで磁性酸化鉄を溶解した溶解液(Fe元素溶解率10質量%溶解液)中に含まれるAl成分量と、磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、磁性酸化鉄に含まれるAl成分を当該アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量との合計の、当該磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量に対する割合(%)は、上記(I)、(II)および(III)の結果より算出される。
【0176】
<磁化測定>
試料の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業(株)製)を用いて測定することができる。79.6kA/mまたは795.8kA/mの外部磁場を作り、この状態で前記容器に充填した試料の磁化モーメントを測定する。
【0177】
円筒状のプラスチック容器に試料を密になるよう充填する。前記容器に充填した試料の実際の質量を測定して、試料の磁化値(Am2/kg)を求める。最大印加磁場を79.6kA/mまたは795.8kA/mとした際のヒステリシスループを描くことにより、磁化を求めた。
【0178】
<磁性トナーの重量平均粒子径(D4)、個数平均粒径(D1)測定>
磁性トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定および測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
【0179】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0180】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
【0181】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0182】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0183】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、磁性トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いて磁性トナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調製する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0184】
<耐熱保存性>
磁性トナーの耐熱保存性の評価方法を以下に述べる。5gの磁性トナーを100mLのポリカップ(サンプラテック社製)に入れ、50℃(±0.5℃)の恒温槽で3日間放置した後、目視および指の腹で触って評価した。放置前後で変化が小さいほど耐熱保存性は良好である。
【0185】
評価基準
A:流動性に変化がみられない
B:流動性が若干低下する
C:凝集物が発生するが容易に解砕できる
【0186】
<低温定着性>
磁性トナーの低温定着性の評価方法を以下に述べる。
【0187】
低温定着性の評価用画像は、定着ユニットを除去改造したLaserJet 4515n(ヒューレットパッカード社製)を用い、紙にベタ黒の未定着画像を出力した。紙上の未定着画像の磁性トナー量を0.60±0.05mg/cm2になるよう調整し、先端余白10mm、幅200mm、長さ30mmの「未定着画像A」を作製した。紙は坪量81.4g/m2のA4用紙 CS814(キヤノンマーケティングジャパン社製)を用いた。
【0188】
LaserJet 4515n(ヒューレットパッカード社製)の定着ユニットを定着温度、通紙速度が手動で設定できるように改造した状態で定着試験を行った。定着温度は、定着ニップの上側ローラ表面温度を非接触温度計temperature hitester 3445(日置電機製)で測定した。通紙速度は、定着上ローラ径とデジタルタコメータHT−5100(小野測器製)で測定した。
【0189】
常温常湿度環境下(23℃60%RH)において、通紙速度を300mm/secに設定し、定着温度100℃から180℃まで5℃刻みで未定着画像Aを定着器に通紙した。定着画像の後端から5cmの部分について、柔和な薄紙(例えば、商品名「ダスパー」、小津産業社製)により4.9kPaの荷重をかけつつ5往復摺擦し、摺擦前と摺擦後の画像濃度をそれぞれ測定して、下式により画像濃度の低下率ΔD(%)を算出した。尚、画像濃度は反射濃度計(Macbeth RD918)で測定した。
【0190】
このΔD(%)が5%未満のときの温度を定着開始温度とした。定着開始温度が低いほど低温定着性に優れる。
ΔD(%)=(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)×100/摺擦前の画像濃度
【0191】
評価基準
A:定着開始温度が120℃以下
B:定着開始温度が125℃以上145℃以下
C:定着開始温度が150℃以上170℃以下
D:定着開始温度が175℃以上
【0192】
<耐久性>
磁性トナーの耐久性の評価方法を以下に述べる。
【0193】
磁性トナー900gを5942x CRG(ヒューレットパッカード社製)に充填し、LaserJet 4515n(ヒューレットパッカード社製)を用い、常温常湿度環境下(23℃/60%)で行った。まず線幅42μmの格子模様がA4用紙全面に配置された印字面積比率2%の画像(耐久用画像)を999枚印刷し、カートリッジ内の磁性トナーの帯電を立ち上げた後、濃度測定用のベタ黒画像(濃度用画像)を1枚印刷する。濃度用画像の濃度を反射濃度計(Macbeth RD918)で5点測定し、平均値をD1とする。
【0194】
29999枚印刷後、濃度用画像を1枚印刷し、同様にD2とする。1000枚目の濃度に対する3万枚目の濃度の比(D2/D1)を評価した。D2/D1が小さいほど耐久性に優れる。用紙は坪量81.4g/m2のA4用紙 CS814(キヤノンマーケティングジャパン社製)を用いた。
【0195】
評価基準
A:D2/D1が0.90以上1.00以下
B:D2/D1が0.75以上0.90未満
C:D2/D1が0.60以上0.75未満
D:D2/D1が0.60未満
【0196】
<カブリ>
磁性トナーのカブリの評価方法を以下に述べる。耐久性評価において、1000枚終了時点で現像バイアスの交流成分の振幅を1.8kVに設定し、ベタ白を2枚プリントし、2枚目のカブリを以下の方法により測定した。
【0197】
反射濃度計(リフレクトメーター、モデルTC−6DS、東京電色社製)を用いてベタ白をプリントしたものについて四隅の反射濃度を測定しその最悪値をDsとし、紙の四隅の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drを求め、これをカブリの指標とした。Ds−Drが低いほどカブリが少なく、良好であることを示す。
【0198】
<画像濃度>
画像濃度の評価方法を以下に述べる。画像濃度の評価は、耐久性評価にけるD1の値とする。D1が高いほど良好である。
【0199】
<a*>
国際照明委員会で規格されたL*、a*、b*表色系において、赤または緑の度合いを表すa*で示される数値で黒色度を評価した。
【0200】
黒色度の評価に際しては、低温定着性の評価で用いた定着画像のうち、前記ΔDが最小となる定着温度で得られた定着画像について、a*値を分光測色器Spectrolino(Gretag Macbeth社製)により測定した。a*が小さい数値ほど黒色度が強く、良好であることを表す。
【0201】
測定条件
・光源 D50
・測定視野 2度
・白色基準 Abs
・フィルタ No
【実施例】
【0202】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の配合における部数は特に説明が無い場合は質量部である。
【0203】
(磁性酸化鉄の製造例)
[工程1]
Fe2+を1.9mol/L含む硫酸第一鉄水溶液8.0Lと、Si品位13.4%のケイ酸ナトリウム75gと、水酸化ナトリウム1.06kgを混合し、イオン交換水を加えて全量を16.2Lとした。この溶液の温度を90℃に維持し、かつpHを6以上9以下に維持しながら空気を2L/minで吹き込み、液中に生成した水酸化第一鉄を湿式酸化した。水酸化第一鉄が、当初の量に対して90%消費された時点でマグネタイトの中心域の形成を確認した。この中心域は、Si元素を含有するものであった。
【0204】
[工程2]
工程1を行っている途中に、溶液中における未反応の水酸化第一鉄の濃度を調べることで酸化反応の進行率を調べ、水酸化第一鉄が、当初の量に対して90%消費された時点で、工程1で用いたものと同濃度の硫酸第一鉄水溶液0.9Lと、Ti品位20.0%の硫酸チタニル70gを溶液に加え、更にイオン交換水を加えて液量を18Lとした。これに加えて、水酸化ナトリウムを添加して液のpHを9以上12以下に調整した。この溶液には、工程1で加えたケイ酸ナトリウムが残存していた。液温90℃にて空気を1L/minで吹き込み湿式酸化を進行させ、Si元素およびTi元素を含むマグネタイトからなる中間域を生成させた。
【0205】
[工程3]
上記工程2を行っている途中に、液中における未反応の水酸化第一鉄が、当初の量に対して95%消費された時点で空気の吹き込みを停止し、Si品位が13.4%のケイ酸ソーダ15gおよび、Al品位が6%の硫酸アルミニウム230gを溶液に添加した。また、希硫酸を添加して液のpHを5以上9以下に調整した。
【0206】
このようにして得られたマグネタイト粒子を、常法により洗浄、ろ過し、更に乾燥させた後に粉砕した。得られた磁性酸化鉄1について、その諸特性を測定した。結果を表1に示す。
【0207】
<磁性酸化鉄の製造例2乃至22>
上記磁性酸化鉄の製造例1において、硫酸チタニル、ケイ酸ソーダ、硫酸アルミニウムの量を適宜変更し、工程1、2において、それぞれ水酸化第一鉄が消費された割合をモニターしながら、工程1から硫酸チタニルを添加する工程2、工程2から硫酸アルミニウムを添加する工程3への移行のタイミング(水酸化第一鉄の消費割合)を微調整した以外は製造例1と同様にして、磁性酸化鉄2乃至22を得た。その諸物性を測定した結果を表1に示す。
【0208】
<磁性酸化鉄分散液1の調製>
・磁性酸化鉄1 100部
・酢酸エチル 100部
・ガラスビーズ(直径1mm) 100部
上記を耐圧性密閉容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間分散させ、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、磁性酸化鉄分散液1を得た。
【0209】
<磁性酸化鉄分散液2乃至22の調製>
磁性酸化鉄分散液1の調製において、磁性酸化鉄2の代わりに磁性酸化鉄3乃至22をそれぞれ用いた以外は同様にして、磁性酸化鉄分散液2乃至22を得た。
【0210】
(樹脂溶解液の製造例)
まず樹脂を調製し、得られた樹脂を任意の比率で混合した後酢酸エチルに溶解し、樹脂溶解液とした。
【0211】
《樹脂H1の調製》
・テレフタル酸ジメチルエステル 136部
・アジピン酸 44部
・無水トリメリット酸 10部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 304部
・ジブチルスズオキシド 0.8部
上記材料を窒素置換したフラスコに入れ、170℃で4時間反応させた。さらに減圧下200℃で反応させ、水およびメタノールを除去し、非線形ポリエステル樹脂である樹脂H1を得た。
【0212】
《樹脂H2の調製》
冷却管、窒素導入管および攪拌機のついた反応容器中に、下記を投入した。
・プロピレングリコール 799部
・テレフタル酸ジメチルエステル 815部
・アジピン酸 263部
・テトラブトキシチタネート(縮合触媒) 3部
【0213】
180℃で窒素気流下、生成するメタノールを留去しながら8時間反応させた。ついで230℃まで徐々に昇温させながら、窒素気流下に、生成するアルコールおよび水を留去しながら4時間反応させ、さらに20mmHgの減圧下にて1時間反応させた。ついで180℃まで冷却し、無水トリメリット酸173部を加え、常圧密閉下2時間反応後、220℃常圧で反応させ、軟化点が140℃になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕、粒子化し、非線形ポリエステル樹脂である樹脂H2を得た。
【0214】
《樹脂L1の調製》
・テレフタル酸ジメチルエステル 107部
・イソフタル酸ジメチルエステル 78部
・フマル酸 12部
・ビスフェノールA−エチレンオキサイド1モル付加物 272部
・ジブチルスズオキシド 0.8部
上記材料を窒素置換したフラスコに入れ、170℃で4時間反応させた。さらに減圧下200℃で反応させ、水およびメタノールを除去し、線形ポリエステル樹脂である樹脂L1を得た。
【0215】
《樹脂L2の調製》
冷却管、窒素導入管および攪拌機のついた反応容器中に、下記を投入した。
・1,3−プロパンジオール 860部
・テレフタル酸ジメチルエステル 776部
・アジピン酸 292部
・テトラブトキシチタネート(縮合触媒) 3部
【0216】
180℃で窒素気流下、生成するメタノールを留去しながら8時間反応させた。ついで230℃まで徐々に昇温させながら、窒素気流下に、生成するアルコールおよび水を留去しながら4時間反応させ、さらに20mmHgの減圧下にて反応させ、軟化点が90℃になった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕、粒子化し、線形ポリエステル樹脂である樹脂L2を得た。
【0217】
<樹脂溶解液1の調製>
攪拌羽つきの密閉容器に樹脂H1 20部、樹脂L1 80部、酢酸エチル 100部を入れ25℃を維持し24時間攪拌し、樹脂溶解液1を調製した。
【0218】
<樹脂溶解液2の調製>
攪拌羽つきの密閉容器に樹脂H2 20部、樹脂L1 80部、酢酸エチル 100部を入れ25℃を維持し24時間攪拌し、樹脂溶解液2を調製した。
【0219】
<樹脂溶解液3の調製>
攪拌羽つきの密閉容器に樹脂H1 20部、樹脂L2 80部、酢酸エチル 100部を入れ25℃を維持し24時間攪拌し、樹脂溶解液3を調製した。
【0220】
<樹脂溶解液4の調製>
攪拌羽つきの密閉容器に樹脂H2 20部、樹脂L2 80部、酢酸エチル 100部を入れ25℃を維持し24時間攪拌し、樹脂溶解液4を調製した。
【0221】
(ワックス分散液の製造例)
<ワックス分散液1の調製>
・カルナバワックス(融点84℃) 20部
・酢酸エチル 80部
上記を密閉できる反応容器に投入し、カルナバワックスが溶融する温度(約85℃)まで加熱攪拌し、ワックスを酢酸エチルに溶融させた。ついで、系内を50rpmで緩やかに攪拌しながら3時間かけて25℃にまで冷却し、乳白色の液体を得た。
【0222】
この溶液を直径1mmのガラスビーズ30部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて3時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、ワックス分散液1を得た。
【0223】
<ワックス分散液2の調製>
・ステアリン酸ステアリル(融点69℃) 20部
・酢酸エチル 80部
上記を密閉できる反応容器に投入し、ステアリン酸ステアリルが溶融する温度(約70℃)まで加熱攪拌し、ワックスを酢酸エチルに溶融させた。ついで、ワックス分散液1と同様の操作を行い、ワックス分散液2を得た。
【0224】
(樹脂微粒子分散液の製造例)
<樹脂微粒子分散液1の調製>
・ビスフェノールA−エチレンオキサイド2モル付加物 41部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 9部
・2,2−ジメチロールプロピオン酸 5部
・3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム 1部
・イソホロンジイソシアネート 27部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 17部
・トリエチルアミン 0.5部
・アセトン(溶媒) 100部
上記材料を窒素置換したフラスコに入れ、50℃で12時間反応させ、ウレタン樹脂のアセトン溶液を得た。ウレタン樹脂のアセトン溶液を35℃に冷却後、2,2−ジメチロールプロピオン酸のカルボキシル基を中和するため、1当量に相当するトリエチルアミン(0.37部)を添加し、中和液を得た。
【0225】
中和液を、TKホモミクサー(特殊機化工業社製)で10000rpm攪拌下、水600部中に注ぎ乳化させた。固形分比が13質量%となるよう水希釈してウレタン樹脂のエマルションである樹脂微粒子分散液1を得た。
【0226】
<樹脂微粒子分散液2の調製>
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 49部
・ネオペンチルグリコール 3部
・2,2−ジメチロールプロピオン酸 4部
・3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム 2部
・イソホロンジイソシアネート 32部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 10部
・トリエチルアミン 0.5部
・アセトン(溶媒) 100部
上記材料を窒素置換したフラスコに入れ、50℃で12時間反応させ、ウレタン樹脂のアセトン溶液を得た。ウレタン樹脂のアセトン溶液を35℃に冷却後、2,2−ジメチロールプロピオン酸のカルボキシル基を中和するため、1当量に相当するトリエチルアミン(0.31部)を添加し、中和液を得た。
【0227】
中和液を、TKホモミクサー(特殊機化工業社製)で10000rpm攪拌下、水600部中に注ぎ乳化させた。固形分比が13質量%となるよう水希釈してウレタン樹脂のエマルションである樹脂微粒子分散液2を得た。
【0228】
<樹脂微粒子分散液3の調製>
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 6部
・1,9−ノナンジオール 35部
・2,2−ジメチロールプロピオン酸 6部
・3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム 1部
・イソホロンジイソシアネート 44部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 8部
・トリエチルアミン 0.5部
・アセトン(溶媒) 100部
上記材料を窒素置換したフラスコに入れ、50℃で12時間反応させ、ウレタン樹脂のアセトン溶液を得た。ウレタン樹脂のアセトン溶液を35℃に冷却後、2,2−ジメチロールプロピオン酸のカルボキシル基を中和するため、1当量に相当するトリエチルアミン(0.45部)を添加し、中和液を得た。
【0229】
中和液を、TKホモミクサー(特殊機化工業社製)で10000rpm攪拌下、水600部中に注ぎ乳化させた。固形分比が13質量%となるよう水希釈してウレタン樹脂のエマルションである樹脂微粒子分散液3を得た。
【0230】
<樹脂微粒子分散液4の調製>
・イソフタル酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加物とから得られる ポリエステル樹脂(数平均分子量1030) 49部
・ネオペンチルグリコール 10部
・2,2−ジメチロールプロピオン酸 4部
・3−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム 1部
・イソホロンジイソシアネート 4部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 32部
・トリエチルアミン 0.5部
・アセトン(溶媒) 100部
上記材料を窒素置換したフラスコに入れ、50℃で10時間反応させた。さらに1,3−プロパンジアミン2部を加え、50℃で2時間反応させ、ウレタン樹脂のアセトン溶液を得た。ウレタン樹脂のアセトン溶液を35℃に冷却後、2,2−ジメチロールプロピオン酸のカルボキシル基を中和するため、1当量に相当するトリエチルアミン(0.31部)を添加し、中和液を得た。
【0231】
中和液を、TKホモミクサー(特殊機化工業社製)で10000rpm攪拌下、水600部中に注ぎ乳化させた。固形分比が13質量%となるよう水希釈してウレタン樹脂のエマルションである樹脂微粒子分散液4を得た。
【0232】
〔実施例1〕
(磁性トナー1の調製)
<トナー組成物1の調製>
・樹脂溶解液1 120部
・磁性酸化鉄分散液1 60部
・ワックス分散液1 50部
・酢酸エチル 20部
・トリエチルアミン 0.5部
上記を容器に投入し、ホモディスパー(特殊機化工業製)で、1500rpmで10分間攪拌し、分散させた。さらに容器を超音波分散器UT−305HS(シャープ製)により5分間照射し、磁性トナー組成物1を調製した。
【0233】
<水相1の調製>
・樹脂微粒子分散液1 38部
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液
(エレミノールMON−7、三洋化成工業製) 35部
・カルボキシメチルセルロース 1質量%水溶液 100部
・酢酸エチル 80部
・イオン交換水 400部
上記を別途容器に投入し、TKホモミクサー(特殊機化工業製)で、5000rpmで1分間攪拌し、水相1を調製した。
【0234】
<造粒、脱溶剤工程>
水相1 600部に磁性トナー組成物1 240部を投入しTKホモミクサーで回転数を8000rpm3分間攪拌し、磁性トナー組成物1を懸濁させた。
【0235】
容器に攪拌羽を設置し、200rpmで攪拌しながら系内を50℃に昇温し、かつ常圧下5時間かけて脱溶剤を行い、磁性トナー粒子の水分散液を得た。
【0236】
<洗浄乃至分級工程>
磁性トナー粒子水分散液をろ過し、イオン交換水800部にリスラリーした。塩酸を系内がpH4になるまで加え、5分間攪拌した。磁性トナー粒子水分散液をろ過、イオン交換水400部添加、5分間攪拌の操作を3回繰り返すことで、系内に残存した界面活性剤およびトリエチルアミンを除去し、磁性トナー粒子のろ過ケーキを得た。
【0237】
ついで上記ろ過ケーキを温風乾燥機にて45℃で3日間乾燥し、目開き75μmメッシュでふるい、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径(D4)6.3μm、粒径分布(D4/D1)1.22の磁性トナー粒子1を得た。磁性トナー粒子の特性として磁化、重量平均粒径(D4)および粒径分布(D4/D1)を表3に示す。
【0238】
<外添工程>
磁性トナー粒子1 100部に対し、平均粒径20nmの疎水性シリカ(ヘキサメチルジシラザン処理)1.3部と、平均粒径120nmのチタン酸ストロンチウム0.5部をヘンシェルミキサーFM−10B(三井三池化工機製)にて混合し、磁性トナー1を得た。
【0239】
(磁性トナー1の評価)
磁性トナーの諸性能を表4に示す。
【0240】
〔実施例2〕
<磁性トナー組成物2の調製>
磁性トナー組成物1の調製において、表2に示す如き材料の種類及び添加量(樹脂溶解液、磁性酸化鉄分散液、ワックス分散液、酢酸エチル)を用いた以外は同様にして、磁性トナー組成物2を調製した。
【0241】
<水相2の調製>
水相1の調製において、表2に示す如き樹脂微粒子分散液の種類および量を用いた以外は同様にして、水相2を調製した。
【0242】
<造粒乃至乾燥工程>
磁性トナー1の調製と同様にして造粒乃至乾燥工程を経て、磁性トナー粒子2を得た。
【0243】
<外添工程>
磁性トナー粒子2 100部に対し、平均粒径15nmの疎水性シリカ0.5部(ヘキサメチルジシラザン処理)、平均粒径140nmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)1.0部、平均粒径120nmのチタン酸ストロンチウム2.5部をヘンシェルミキサーFM−10B(三井三池化工機製)にて混合し、磁性トナー2を得た。
【0244】
〔実施例3、4、8および13〕
実施例1と同様にして、表2に示す如き材料を用いて磁性トナー3、4、8および13を得、それぞれ評価を行った。
【0245】
〔実施例5乃至7、9乃至12ならびに14〕
実施例2と同様にして、表2に示す如き材料を用いて磁性トナー5乃至7、9乃至12ならびに14を得、それぞれ評価を行った。
【0246】
〔実施例15〕
<トナー組成物15の調製>
・樹脂溶解液1 120部
・磁性酸化鉄分散液15 60部
・ワックス分散液2 50部
・酢酸エチル 20部
・トリエチルアミン 0.5部
上記を容器に投入し、ホモディスパー(特殊機化工業製)で、1500rpmで10分間攪拌し、分散させた。さらに容器を超音波分散器UT−305HS(シャープ製)により5分間照射し、磁性トナー組成物15を調製した。
【0247】
[無機分散液の調製]
イオン交換水709部に0.1mol/L Na3PO4水溶液451部を投入し60℃に加温した後、TKホモミクサー(特殊機化工業製)で12000rpmにて攪拌し、1.0mol/L CaCl2水溶液67.7部を徐々に添加してCa3(PO42を含む無機分散液を得た。
【0248】
<水相15の調製>
・無機分散液 442部
・カルボキシメチルセルロース 1質量%水溶液 100部
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液(エレミノールM ON−7、三洋化成工業製) 35部
・酢酸エチル 50部
上記をビーカーに投入し、TKホモミクサーにて5000rpmで1分攪拌し、水相15を調製した。
【0249】
<造粒、脱溶剤工程>
水相15 600部に磁性トナー組成物15 240部を投入しTKホモミクサーで回転数を8000rpm3分間攪拌し、磁性トナー組成物15を懸濁させた。
【0250】
容器に攪拌羽を設置し、200rpmで攪拌しながら系内を50℃に昇温し、かつ常圧下5時間かけて脱溶剤を行い、磁性トナー粒子の水分散液を得た。
【0251】
<洗浄乃至乾燥工程>
磁性トナー粒子水分散液をろ過し、イオン交換水800部にリスラリーした。塩酸を系内がpH1.5になるまで加え、5分間攪拌した。磁性トナー粒子水分散液をろ過、イオン交換水400部添加、5分間攪拌の操作を3回繰り返すことで、系内に残存した界面活性剤、トリエチルアミンおよび塩を除去し、磁性トナー粒子のろ過ケーキを得た。
【0252】
ついで、上記ろ過ケーキを温風乾燥機にて45℃で3日間乾燥し、目開き75μmメッシュでふるい、磁性トナー粒子15を得た。
【0253】
<外添工程>
磁性トナー粒子15 100部に対し、平均粒径20nmの疎水性シリカ(ヘキサメチルジシラザン処理)0.7部と、平均粒径120nmのチタン酸ストロンチウム3.0部をヘンシェルミキサーFM−10B(三井三池化工機製)にて混合し、磁性トナー15を得た。
【0254】
(磁性トナー15の評価)
磁性トナーの特性として磁化、重量平均粒径(D4)および粒径分布(D4/D1)を表3に示す。諸性能を表4に示す。
【0255】
〔実施例16〕
実施例15において磁性酸化鉄分散液15の代わりに、磁性酸化鉄分散液16を用いた以外は同様にして、磁性トナー16を得た。実施例1と同様に磁性トナー16の評価を行った。
【0256】
〔比較例1乃至6〕
実施例15において磁性酸化鉄分散液15の代わりに、表2に示す如く磁性酸化鉄分散液17乃至22をそれぞれ用いた以外は同様にして、磁性トナー17乃至22を得た。実施例1と同様に磁性トナー16乃至22の評価を行った。
【0257】
【表1】

【0258】
【表2】

【0259】
【表3】

【0260】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを主成分とする樹脂、磁性酸化鉄およびワックスを、酢酸エチルに溶解または分散させて得られた組成物を水系媒体中に分散させ、ついで酢酸エチルを除去することによって得られる磁性トナー粒子と、無機微粒子とを有する磁性トナーであって、
前記磁性酸化鉄を酢酸エチルに分散させた後、静置し、沈澱体積の減少速度を評価する試験において、静置5分後の液面体積(A0)に対する沈澱体積(A5)の割合(A5/A0)が、50%以上85%以下であることを特徴とする磁性トナー。
【請求項2】
前記磁性酸化鉄は、前記磁性酸化鉄をイソプロピルアルコールに分散させた後静置し、沈澱体積の減少速度を評価する試験において、静置5分後の液面体積(I0)に対する沈澱体積(I5)の比(I5/I0)が、前記(A5/A0)と式(1)の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の磁性トナー。
1.10≦(I5/I0)/(A5/A0)≦2.00 ・・・(1)
【請求項3】
前記磁性酸化鉄は、Ti成分、Al成分及びSi成分を含有し、
前記Ti成分の含有量が、Ti元素換算で、前記磁性酸化鉄全体に対して、0.30質量%以上5.00質量%以下であり、
前記Al成分の含有量が、Al元素換算で、前記磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上3.00質量%以下であり、
前記Si成分の含有量が、Si元素換算で、前記磁性酸化鉄全体に対して、0.10質量%以上5.00質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁性トナー。
【請求項4】
(1)前記磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるAl成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるAl成分量が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の割合の50%以上95%以下であり、
(2)前記磁性酸化鉄に含まれるAl成分を前記アルカリ水溶液で溶出した後のアルカリ溶出後磁性酸化鉄を酸水溶液により溶解し、全て溶解された時点での溶解液中に含まれるFe元素量を総Fe元素量としたとき、前記総Fe元素量の10質量%のFe元素が溶解された時点での溶解液(以下、Fe元素溶解率10質量%溶解液という)に含まれるAl成分量と、前記(1)で溶出されるAl成分量の割合の合計が、磁性酸化鉄に含まれる全Al成分量の95%以上であり、
(3)前記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分の含有量(Ti元素換算値)のAl成分の含有量(Al元素換算値)に対する比(Ti成分の含有量(Ti元素換算値)/Al成分の含有量(Al元素換算値))が、2.0以上30.0以下であることを特徴とする請求項3に記載の磁性トナー。
【請求項5】
前記磁性酸化鉄をアルカリ水溶液に投入し、前記磁性酸化鉄に含まれるSi成分を前記アルカリ水溶液で溶出したときに溶出されるSi成分量が、磁性酸化鉄に含まれる全Si成分量の5.0%以上30.0%以下であることを特徴とする請求項3に記載の磁性トナー。
【請求項6】
前記Fe元素溶解率10質量%溶解液中に含まれる、Ti成分の含有量(Ti元素換算値)のSi成分の含有量(Si元素換算値)に対する比(Ti成分の含有量(Ti元素換算値)/Si成分の含有量(Si元素換算値))が、1.0以上5.0以下であることを特徴とする請求項3に記載の磁性トナー。

【公開番号】特開2013−25294(P2013−25294A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163157(P2011−163157)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】