説明

磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法及び熱放出ナノ物質

本発明は、(a)(i)金属前駆物質及び調節された量の亜鉛前駆物質を含むナノ物質前駆物質と(ii)反応溶媒とを混合する段階と、(b)(a)の混合物から、金属酸化物ナノ物質マトリックスに亜鉛がドーピングされた亜鉛−含有磁性ナノ物質を製造する段階とを含み、前記ドーピングされる亜鉛の量によって亜鉛−含有磁性ナノ物質の熱放出係数が調節されることを特徴とするナノ物質の熱放出量を調節する方法に関する。また、本発明は、熱放出ナノ物質及び温熱療法用組成物に関する。本発明は、磁性ナノ物質の熱放出量を改善する新しい接近方法を提示する。本発明によると、ナノ物質に含有される亜鉛の含量を調節して熱放出係数を調節することができ、調節された熱放出量を示す温熱療法用組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法、熱放出ナノ物質及び温熱療法用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子の大きさが減ってナノメートルの大きさになると、バルク物質(bulkmaterial)と異なって、ナノ物質(nanomaterial)では全く新しい物理的/化学的性質を示すようになる。また、このような特性を有するナノ物質に対する多くの研究者らの努力により、現在、大きさだけではなく、物質の組成や形も調節することができるようになり、ナノ領域における物理的/化学的特性を、バルク領域でのように一部分は調節することができるようになった。このような新しい可能性を通じて、現在ナノ物質は、化学反応の触媒、次世代ナノ素子の製作、新しいエネルギー開発、そして医/生命科学との結合(ナノメディスン)による癌診断及び治療分野までその応用性を広げ、その他にも多様な分野で広範囲に応用されている。
【0003】
その中でも磁性ナノ物質は、それらが持っている独特の磁気的性質により、その応用性が磁気的性質を利用した細胞分離、非浸透的(noninvasive)イメージングの信号を画期的に増加させるに寄与する磁気共鳴映像(Magnetic Resonance Imaging)造影剤、外部から作用する力を利用して単一細胞内あるいは細胞表面に影響を与えて、細胞内あるいは表面の物理的特性を観察できる磁気的ピンセット(magnetic tweezers)のプローブなど、磁性ナノ物質を利用した応用性は非常に広範囲である。特に、磁性ナノ物質から放出される熱を利用した多様な応用が現在活発に研究されている。
【0004】
磁性ナノ物質周辺に高周波磁場を加えると、1)液体中に分散されているナノ物質自体の回転現象によるBrownian Relaxation現象と、2)ナノ物質内部spinのエネルギー障壁(E = KV, K =非等方常数、V=ナノ物質の容量)により生じるNeel Relaxation現象により、磁性ナノ物質から熱が発生するようになる(J. Mater. Chem. 2004, 14, 2161-2175.)。このように生成された熱を利用して、磁性ナノ物質は、多様な熱発生装置あるいは技術に利用できる。特に、医療分野では、磁性ナノ物質に強力な高周波を加えて生成される熱を利用して、癌を始めとした疾病治療(hyperthermia)に使用している。
【0005】
磁性ナノ物質により発生された熱(熱放出量)は、熱放出係数(SLP = specific loss power)を通じて定量化できる。そして熱放出係数は、物質の多様な要因により決定されるが、特に、
スピン非等方性(spin anisotropy)、
飽和磁化率(saturation magnetism, Ms)
によりその値が決定される(R. E. Rosensweig J. Magn. Magn. Mater. 2002, 252, 370-374)。
【0006】
これと関連し、多様な研究チームが、高い熱放出係数を有するナノ物質を開発するために鋭意研究している。現在までのこのようなナノ物質を利用した熱放出応用事例は、以下のようである。
【0007】
米国特許第7282479号は、高温治療物質(hyperthermia agents)として、磁性ナノ物質のフェライト(ferrite)、マグネタイト(magnetite)あるいはパーマロイ(permalloy)を癌細胞治療に利用することを開示している。
【0008】
米国特許20050125046号は、Fe、Mn、Znが添加されたフェライト物質の熱治療への応用について明示している。
【0009】
米国特許20050249817号は、特定範囲のキュリー温度を有するFe, Mn, Zn,Gdの混合フェライト物質の熱治療への応用について明示している。
【0010】
米国特許6565887号の場合、ポリマーマトリックスで囲まれており、一定熱放出係数以上を示すマンガン、鉄、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、リチウムが含まれている金属酸化物あるいは金属フェライト物質について明示している。
【0011】
米国特許5916539号では、ポリエチレングリコール単一層で囲まれた酸化鉄及び混合フェライト物質について開示している。
【0012】
米国特許出願公開第20050090732号は、酸化鉄を利用した標的指向的高温治療を開示している。
【0013】
米国特許第6541039号は、鉄酸化物コア周辺にシリカ、またはポリマーを利用してコーティングして、これを高温治療に利用することを開示している。
【0014】
WO2006/102307は、貴金属でコーティングされた磁性ナノ物質コアに、金属ではない他の有機物シェルを包んで、再び抗体及び蛍光物質でシェル層を包んだ後、これを高温治療に利用することを開示している。
【0015】
しかしながら、前記研究は、各磁性ナノ物質が熱放出効果があることを示しているだけで、熱放出量をさらに増加させるか、効果的に調節することに対する研究は進行されていない。しかし、究極的にさらに効果的な疾病治療のためには、高い熱放出係数を有する磁性ナノ物質が必要であるという点で、増加された熱放出係数及び目的によって調節可能な熱放出係数を有する磁性ナノ物質の開発は、必ず必要である。
【0016】
本明細書全体にかけて多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者らは、高周波磁場の中で既存の磁性ナノ物質が有していた低い熱放出量問題点を克服できるようなナノ物質を開発するために鋭意研究した。このような目的を達成するために、磁性ナノ物質の熱放出係数に大きい影響を与えるスピン非等方性と飽和磁化率を調節する方法に対する研究を行った。
【0018】
その結果、磁性ナノ物質内の亜鉛の含有量を調節することにより、スピン非等方性または飽和磁化率を改善させることができて、結果的に熱放出係数を調節または増加させることができることを見い出し、本発明を完成した。
【0019】
したがって、本発明の目的は、磁性ナノ物質の熱放出係数を調節する方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、亜鉛が含有されたナノ物質を含む熱放出組成物を提供することにある。
【0021】
本発明のまた他の目的は、温熱療法(hyperthermia)用組成物を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一様態によると、本発明は、(a)(i)金属前駆物質及び調節された量の亜鉛前駆物質を含むナノ物質前駆物質と(ii)反応溶媒とを混合する段階と、(b)(a)の混合物から、金属酸化物ナノ物質マトリックスに亜鉛がドーピングされた亜鉛−含有磁性ナノ物質を製造する段階とを含み、前記ドーピングされる亜鉛の量によって亜鉛−含有磁性ナノ物質の熱放出係数を調節して、磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法を提供する。
【0024】
本発明者らは、様々な金属添加物が含有された金属酸化物ナノ物質の中、亜鉛を含有させた場合、磁気非等方性が画期的に増加され得ることを見い出し、これを通じて熱放出係数も画期的に向上した、亜鉛が含有された金属酸化物ナノ物質を含む熱放出ナノ物質を開発した。
【0025】
本明細書で記述する‘亜鉛−含有磁性ナノ物質’は、亜鉛原子が、金属酸化物からなるナノ物質マトリックスの金属を置換するか、空いている正孔に添加されて形成されたナノ物質を意味する。用語‘マトリックス(matrix)’は、ナノ物質の無機物コアを意味し、多様な元素を加えるか除けることができる母体構造を意味する。このように亜鉛が含有された金属酸化物磁性ナノ物質は、亜鉛が含有されていない本来の金属酸化物ナノ物質マトリックスと比較し、向上された熱放出係数を有して、亜鉛が含有される程度によって熱放出係数が調節できる。
【0026】
本明細書で使用される用語‘金属酸化物ナノ物質マトリックス’は、亜鉛が含有される母体の無機ナノ物質を意味する。マトリックスとして使用される金属酸化物は、下記一般式1または2で表されるナノ物質である:
[一般式1]
MaOb [0<a≦16, 0<b≦8, Mは、磁性を帯びる金属原子(好ましくは、遷移金属、ランタン族、またはアクチニウム金属、より好ましくは、Ba, Mn, Co, NiまたはFe含む遷移金属、またはGd, Er, Ho, Dy, Tb, SmまたはNdを含むランタン族金属、最も好ましくは、Mn, Co, Ni, Fe, Gd, Er, Ho, Dy, Tb, SmまたはNdを含むランタン族金属)またはこれらの合金]
[一般式2]
McM’dOe (0<c≦16, 0<d≦16, 0<e≦8、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金;M’は、1族元素、2族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素、好ましくは、Li, Na, K, Rb,Cs, Be, Mg, Ca, Sr, Ba, Ra, Ge, Ga, In, Si, Bi, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd, Ag, Cd, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, Au, Hg,ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される元素)。
【0027】
上記の金属酸化物ナノ物質マトリックスに亜鉛が含有されて、金属原子の一部を置換するか、空いている正孔に添加された形態は、一般式3または4で表される磁性ナノ物質である:
[一般式3]
ZnfMa-fOb (0<f<8, 0<a≦16, 0<b≦8, 0<f/(a-f)<10、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金)
[一般式4]
ZngMc-gM’dOe (0<g<8, 0<c≦16, 0<d≦16, 0<e≦8, 0<g/{(c-g)+d}<10、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金であり;M’は、1族元素、2族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素、好ましくは、Li, Na, K, Rb, Cs, Be, Mg, Ca, Sr, Ba, Ra, Ge, Ga, Bi, In, Si, Ge, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd, Ag, Cd, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, Au, Hg, ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から1種以上選択される元素)。
【0028】
本発明の好ましい具現例によると、マトリックスとして使用される金属酸化物は、一般式5で表されるナノ物質である:
[一般式5]
M”hFeiOj (0<h≦16, 0<i≦8, 0<j≦8; M”は、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金)。
【0029】
好ましくは、前記マトリックスに亜鉛がドーピングされた亜鉛−含有磁性ナノ物質は、一般式6で表されるナノ物質である:
[一般式6]
ZnkM”h-kFeiOj(0<k<8, 0<h≦16, 0<i≦8, 0<j≦8, 0<k/{(h-k)+i}<10; M”は、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金)。
【0030】
より好ましくは、マトリックスとして使用される金属酸化物は、一般式7または8で表されるナノ物質である:
[一般式7]
FelOm (0<l≦8, 0<m≦8)
[一般式8]
MnnFeoOp (0<n≦8, 0<o≦8, 0<p≦8)。
【0031】
より好ましくは、前記マトリックスに亜鉛がドーピングされた亜鉛−含有磁性ナノ物質は、一般式9または10で表されるナノ物質である:
[一般式9]
ZnqFel-qOm (0<q<8, 0<l≦8, 0<m≦8, 0<q/(l-q)<10)
[一般式10]
ZnrMnn-rFeoOp(0<r<8, 0<n≦8, 0<o≦8, 0<p≦8, 0<r/{(n-r)+o}<10)。
【0032】
本明細書において用語‘亜鉛−含有’は、金属酸化物ナノ物質マトリックスの結晶学的構造において、亜鉛原子が、酸素原子間に存在する陽イオンの正孔(hole)の中、四面体正孔や八面体正孔の間に入ることを意味する。したがって、亜鉛が含有された水溶性または水分散性金属酸化物ナノ物質を合成する時、まず金属酸化物ナノ物質マトリックスが成長した後、マトリックス上の四面体正孔または八面体正孔に存在していた金属原子を亜鉛が置換するか、または金属酸化物ナノ物質の成長時に金属原子と亜鉛が一緒に結晶成長に導入され、亜鉛が酸素原子の陽イオン正孔の中、四面体正孔や八面体正孔の間に添加されて入るように合成されることを意味する(例えば、ZnO + Fe2O3 → ZnFe2O4)。特に、四面体正孔の亜鉛の配置が円滑になって、磁性の増大をもたらす。前記亜鉛が添加されるナノ物質の金属酸化物の組成は、非化学量論的な場合も可能である。
【0033】
本発明の‘亜鉛−含有磁性ナノ物質’は、亜鉛と他の金属の含有比率が化学量論的に、好ましくは0.001<‘亜鉛/(総金属−亜鉛)’<10、より好ましくは、0.01<‘亜鉛/(総金属−亜鉛)’<1、最も好ましくは、0.03<‘亜鉛/(総金属−亜鉛)’<0.5である。亜鉛が前記範囲で含まれる時、高い飽和磁化率を有することができる。
【0034】
本発明によると、ナノ物質に含有される亜鉛の量を調節することにより、ナノ物質の熱放出量を調節することができる。
【0035】
亜鉛が含有された金属酸化物熱放出ナノ物質を得るためには、ナノ物質前駆物質の水溶液上や有機溶媒上で化学反応による結晶成長を通じて合成するか、有機溶媒上で合成されたナノ物質を、相転移方法を通じて水溶化することができる。本発明で提示する亜鉛−含有金属酸化物磁性ナノ物質は、製法に限定されず、増加された熱放出効果を有する。
【0036】
本発明のナノ物質の好ましい製造方法の一つの例として、(i)磁性及び/または金属前駆物質を含むナノ物質前駆物質を、界面活性剤または界面活性剤を含む有機溶媒に添加して混合溶液を製造する段階、(ii)前記混合溶液を高温(例えば、150〜500℃)に加熱して、前記前駆物質を熱分解させて磁性または金属酸化物ナノ物質が形成されるようにする段階、及び(iii)前記ナノ物質を分離する段階を経て製造することができる。
【0037】
前記ナノ物質前駆物質は、金属ニトレート系列の化合物、金属サルフェート系列の化合物、金属アセチルアセトネート系列の化合物、金属フルオロアセトアセテート系列の化合物、金属ハライド系列の化合物、金属パークロレート系列の化合物、金属アルキルオキシド系列の化合物、金属サルファメート系列の化合物、金属ステアレート系列の化合物または有機金属系列の化合物が利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記有機溶媒としては、ベンゼン系溶媒、炭化水素溶媒、エーテル系溶媒、ポリマー溶媒、イオン性液体溶媒が利用できて、好ましくは、ベンゼン、トルエン、ハロベンゼン、オクタン、ノナン、デカン、ベンジルエーテル、フェニルエーテル、炭化水素エーテル、ポリマー溶媒、イオン性液体溶媒が利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、上述の製造方法で合成されたナノ物質は、水溶性多作用基リガンドを利用して相転移することにより、水溶液上で使用することができる。
【0040】
本発明の明細書において、‘水溶性多作用基リガンド’は、亜鉛が含有されたナノ物質と結合してナノ物質を水溶化及び安定化して、生物/化学活性物質との結合を可能にするリガンドである。
【0041】
水溶性多作用基リガンドは、(a)付着領域(L, adhesive region)を含み、(b)活性成分結合領域(LII, reactive region)、(c)クロス連結領域(LIII, cross linking region)、または前記活性成分結合領域(LII)とクロス連結領域(LIII)とを同時に含む活性成分結合領域−クロス連結領域(LII-LIII)をさらに含むことができる。以下、水溶性多作用基リガンドをより具体的に説明する。
【0042】
前記‘付着領域(LI)’は、ナノ物質と付着できる作用基(functional group)を含む多作用基リガンドの一部分であって、好ましくは、多作用基リガンドの末端を意味する。したがって、付着領域は、ナノ物質をなす物質と親和性が高い作用基を含むことが好ましい。この際、ナノ物質と付着領域との結合は、イオン結合、共有結合、水素結合、疎水性結合または金属-リガンド配位結合により付着することができる。これにより、多作用基リガンドの付着領域は、ナノ物質をなす物質によって多様に選択できる。例えば、イオン結合、共有結合、水素結合、金属-リガンド配位結合を利用した付着領域は、-COOH, -NH2, -SH, -CONH2, -PO3H, -OPO3H2, -SO3H, -OSO3H,-N3, -NR3OH (R=CnH2n+1, 0≦n≦16), -OH, -SS-, -NO2, -CHO, -COX (X = F, Cl, BrまたはI), -COOCO-, -CONH-または-CNを含むことができ、疎水性結合を利用した付着領域は、炭素数2個以上からなる炭化水素鎖を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
前記‘活性成分結合領域(LII)’は、化学または生体機能性物質と結合できる作用基を含む多作用基リガンドの一部分であって、好ましくは、前記付着領域の反対側に位置した末端を意味する。前記活性成分結合領域の作用基は、活性成分の種類及びこれの化学式によって選択できる(表1参照)。本発明において、活性成分結合領域は、-SH, -COOH, -CHO, -NH2, -OH, -PO3H, -OPO3H2, -SO3H, -OSO3H, -NR3+X- (R= CnHm0≦n≦16, 0≦m≦34, X = OH, ClまたはBr), -N3, -SCOCH3, -SCN, -NCS, -NCO, -CN, -F, -Cl, -Br, -I, エポキシ基, スルホネート基、ニトレート基、ホスホネート基、アルデヒド基、ヒドラゾン基, -C=C-または-C≡C-を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
前記‘クロス連結領域(LIII)’は、近接した多作用基リガンドとクロス連結できる作用基を含む多作用基リガンドの一部分、好ましくは、中心部に付着された側鎖を意味する。‘クロス連結’とは、一つの多作用基リガンドが、近接して位置した他の多作用基リガンドと分子間引力(intermolecular interaction)で結合されることを意味する。前記分子間引力は、疎水性引力、水素結合、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)、ファンデルワールス結合、イオン結合などがあるが、特にこれらに限定されるものではない。したがって、クロス連結できる作用基は、目的とする分子間引力の種類によって多様に選択できる。クロス連結領域は、例えば、-SH, -COOH, -CHO, -NH2, -OH, -PO3H, -OPO4H2, -SO3H, -OSO3H, -NR3+X- (R= CnHm, 0≦n≦16, 0≦m≦34, X = OH, ClまたはBr), NR4+X- (R= CnHm, 0≦n≦16, 0≦m≦34, X = OH, ClまたはBr), -N3, -SCOCH3, -SCN, -NCS, -NCO, -CN, -F, -Cl, -Br, -I, エポキシ基, -ONO2, -PO(OH)2, -C=NNH2, -C=C-または-C≡C-を作用基として含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
【表1】

【0046】
(I:多作用基リガンドの活性成分結合領域の作用基、II:活性成分、III:IとIIの反応による結合例)
本発明では、上記のような作用基を保有した化合物を水溶性多作用基リガンドとして利用することもできるが、当業界に公知の化学反応を通じて、上記のような作用基を備えるように変形または製造された化合物を多作用基リガンドとして利用することもできる。
【0047】
本発明の好ましい多作用基リガンドは、単分子、高分子、炭水化物、蛋白質、ペプチド、核酸、脂質あるいは両親性リガンドを含む。
【0048】
本発明による水溶性ナノ物質において、好ましい多作用基リガンドの例は、単分子であって、上述の作用基を含む単分子であり、好ましくは、ジメルカプトコハク酸(dimercaptosuccinic acid)である。ジメルカプトコハク酸は、もともと付着領域、クロス連結領域及び活性成分結合領域を含んでいるからである。即ち、ジメルカプトコハク酸の一方の-COOHは、磁性信号発生コアに結合されて、末端部の-COOH及び-SHは、活性成分と結合する役割をする。また、-SHの場合、周辺の他の-SHとジスルフィド結合をなすことにより、クロス連結領域として作用が可能である。前記ジメルカプトコハク酸の他にも、付着領域の作用基として、-COOH、活性成分、結合領域の作用基として、-COOH、-HN2または-SHを含む化合物は、いずれも好ましい多作用基リガンドとして利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の好ましい水溶性多作用基リガンドの他の例は、ポリホスファゲン、ポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸の誘導体、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリヒドロオキシブチレート、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコール、ポリ−L−リジン、ポリグリコリド、ポリメチルメタクリレート及びポリビニールピロリドンからなる群から選択される1種以上の高分子であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明による亜鉛が含有された水溶性金属酸化物ナノ粒子において、好ましい多作用基リガンドの他の例は、ペプチドである。ペプチドは、アミノ酸からなるオリゴマー/ポリマーであって、アミノ酸の両末端に-COOHと-NH2作用基を保有しているため、ペプチドは、自然的に付着領域と活性成分結合領域を備えるようになる。また、特に側鎖として-SH、-COOH、-NH2及び-OHのいずれか一つ以上を側鎖として有するアミノ酸を一つ以上含むペプチドは、好ましい水溶性多作用基リガンドとして使用できる。
【0051】
本発明による水溶性ナノ粒子において、好ましい多作用基リガンドの他の例は、蛋白質である。蛋白質は、ペプチドよりさらに多いアミノ酸、即ち、数百乃至数十万個のアミノ酸からなるポリマーであって、両末端に-COOHと-NH2作用基を保有しているだけではなく、数十個の-COOH、-NH2、-SH、-OH、-CONH2などを含んでいる。これにより、蛋白質は、上述のペプチドのようにその構造によって自然的に付着領域、クロス連結領域、活性成分結合領域を備えることができ、本発明の相転移リガンドとして有用に利用できる。相転移リガンドとして好ましい蛋白質の代表的な例は、構造蛋白質、貯蔵蛋白質、運搬蛋白質、ホルモン蛋白質、受容体蛋白質、収縮蛋白質、防衛蛋白質、酵素蛋白質などがある。より詳しくはアルブミン、抗体、抗原、アビジン、シトクロム、カゼイン、ミオシン、グリシニン、ケロチン、コラーゲン、球状蛋白質、軽蛋白質、ストレプタビジン、プロテインA、プロテインG、プロテインS、免疫グロブリン、レクチン、セレクチン、血管蛋白(angioprotein)、抗癌蛋白質、抗生蛋白質、ホルモン拮抗蛋白質、インターロイキン、インターフェロン、成長因子蛋白質、腫瘍壊死因子蛋白質、エンドトキシン蛋白質、リンフォトキシン蛋白質、組織プラスミノゲン活性剤、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、プロテアーゼ阻害剤、アルキルホスホコリン、界面活性剤、心血管係薬物蛋白質、神経系薬物蛋白質、胃腸管系薬物蛋白質などが挙げられる。
【0052】
本発明で好ましい水溶性多作用基リガンドのまた他の様態は、核酸である。核酸は、多数のヌクレオチドからなるオリゴマーであって、両末端にPO4-と-OH作用基を保有しているため、自然的に付着領域及び活性成分結合領域(LI-LIII)を備えるか、付着領域及びクロス連結領域(LI-LII)を備えるため、本発明の相転移リガンドとして有用に利用できる。核酸は、場合によって3’末端または5’末端に-SH、-NH2、-COOH、-OHの作用基を有するように変形されることが好ましい。
【0053】
本発明による水溶性ナノ物質において、好ましい多作用基リガンドの他の例は、疎水性作用基と親水性作用基を同時に有している両親性リガンドである。有機溶媒上で合成されたナノ粒子の場合、その表面には、疎水性の長い炭素鎖からなるリガンドが存在する。この時、付加される両親性リガンドに存在する疎水性作用基とナノ物質表面の疎水性リガンドが分子間引力により結合されてナノ粒子を安定化させて、ナノ粒子の最外側には、親水性作用基が露出し、結果的に水溶性ナノ物質を製造することができる。ここで、分子間引力は、疎水性結合、水素結合、ファンデルワールス結合などを含む。この際、ナノ粒子と疎水性引力により結合される部分が付着領域(LI)であり、これと共に有機化学的な方法によって活性成分連結領域(LII)及びクロス連結領域(LIII)を導入することができる。また、水溶液上における安定度の増加のために、数個の疎水性作用基と親水性作用基を有している高分子多重両親性リガンドを利用するか、あるいは連結分子を利用して両親性リガンドを互いにクロス連結させることができる。このような相転移リガンドとして好ましい両親性リガンドの例として、まず疎水性作用基に含まれるものは、炭素数2個以上の鎖からなり、線形や分岐鎖(branched)構造を有している疎水性分子であって、さらに好ましくは、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、イコシル、テトラコシル、ドデシルまたはシクロペンチル、シクロヘキシルなどのアルキル作用基と、エチニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、オクテニル、デセニル、オレイルなどの炭素−炭素2重結合、及びプロピニル、イソプロピニル、ブチニル、イソブチニル、オクテニル、デセニルなどの炭素−炭素3重結合を有する不飽和された炭素鎖を有する作用基などが挙げられる。また、親水性作用基に含まれるものは、-SH, -COOH, -NH2, -OH, -PO3H, -PO4H2, -SO3H, -SO4H,-OSO3H-NR3+X-などのように、特定pHでは中性を表すが、さらに高いか低いpHでは陽電荷または陰電荷を帯びる作用基を意味する。また、親水性グループとして高分子及びブロックコポリマーなどが使用可能であり、ここで使用されるモノマーは、エチルグリコール、アクリル酸、アルキルアクリル酸、アタコニン酸、マレイン酸、フマリン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ビニールスルホン酸、ビニールリン酸、ビニール乳酸、スチレンスルホン酸、アリールアンモニウム、アクリロニトリル、N−ビニールピロリドン、N−ビニールホルムアミドなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
本発明の水溶性ナノ物質において好ましい水溶性多作用基リガンドの他の例は、炭水化物を含む。さらに好ましい例は、グルコース、マンノース、フコース、N−アセチルグルコミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸、果糖、キシロース、ソルビトール、スクロース、マルトース、グリコアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、エリスロース、エリトルロース、アラビノース、キシルロース、乳糖、トレハロース、メリボース、セロビオース、ラフィノース、メレジトース、マルトリオース、スターチオース、エストロドース、キシラン、アラバン、ヘキソサン、フルクタン、ガラクタン、マンナン、アガロペクチン、アルギン酸、カラギーナン、ヘミセルロース、ヒプロメロース、アミロース、デオキシアセトン、グリセリンアルデヒド、キチン、アガロース、デキストリン、リボース、リブロース、ガラクトース、カルボキシメチルセルロースまたはグリコゲンデキストラン、カルボデキストラン、ポリサッカロイド、シクロデキストラン、プルラン、セルロース、デンプン、グリコゲンなどを含むが、こられに限定されるものではない。
【0055】
また、前記亜鉛を含有した金属酸化物は、水溶液上で化学反応を通じて合成することができる。この方法は、多作用基リガンドを含む反応溶液に亜鉛イオン前駆物質を添加することにより、亜鉛が含有された水溶性金属酸化物ナノ物質を合成する方法は、既存に公知の水溶性ナノ物質の合成方法(共沈法、ゾル-ゲル法、ミセル法など)を通じてなされる。
【0056】
前記ナノ物質前駆物質は、金属ニトレート系列の化合物、金属サルフェート系列の化合物、金属アセチルアセトネート系列の化合物、金属フルオロアセトアセテート系列の化合物、金属ハライド系列の化合物、金属パークロレート系列の化合物、金属アルキルオキシド系列の化合物、金属サルファメート系列の化合物、金属ステアレート、金属アルコキシド系列の化合物または有機金属系列の化合物が利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
前記反応溶媒は、ベンゼン系溶媒、炭化水素溶媒、エーテル系溶媒、ポリマー溶媒、イオン性液体溶媒、ハロゲン炭化水素、アルコール類、スルホキシド系溶媒、水などが利用できて、好ましくは、ベンゼン、トルエン、ハロベンゼン、オクタン、ノナン、デカン、ベンジルエーテル、フェニルエーテル、炭化水素エーテル、ポリマー溶媒、DEG(Diethylene glycol)、水、イオン性液体溶媒が利用できるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
上述の方法を通じて合成された亜鉛が含有された金属酸化物ナノ物質は、非常に均一な大きさ分布(δ<10%)及び非常に高い結晶性を有するようになる。また、本発明を利用すると、ナノ物質マトリックス内の亜鉛含有率の精密な調節が可能である。即ち、反応時、亜鉛と他の金属前駆物質の混合比率を変化させると、ナノ物質内の亜鉛含有比率を化学量論比で0.001<‘亜鉛/(総金属-亜鉛)’<10まで調節が可能である。
【0059】
本発明により最終的に製造されるナノ物質は、好ましくは1〜1000nm、より好ましくは1〜800nm、最も好ましくは2〜500nmの大きさを有する。
【0060】
本発明の方法によって製造された亜鉛−含有磁性ナノ物質の具体的な例は、下記表2のようである。
【0061】
【表2】

【0062】

【0063】

【0064】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のナノ物質は、2〜20000W/gのSLP(specific loss power)値を有して、より好ましくは、50〜10000W/g、さらに好ましくは、100〜5000W/g、最も好ましくは、200〜5000W/gの熱放出係数値を有する。
【0065】
また他の観点で、本発明は、前記亜鉛が含有された金属酸化物ナノ物質は、生体機能性を帯びる化学機能性分子または生体機能性物質を結合させた、亜鉛が含有された金属酸化物生物/化学活性物質ハイブリッドナノ物質を提供する。
【0066】
本発明において、‘亜鉛が含有された金属酸化物生物/化学活性物質ハイブリッドナノ物質’は、亜鉛が含有された金属酸化物ナノ物質に生物活性物質(例えば、抗体、蛋白質、抗原、ペプチド、核酸、酵素、細胞など)、または化学活性物質(例えば、単分子、高分子、無機支持体、蛍光体、薬物など)がリガンドの活性成分と共有結合、イオン結合、または疎水性結合を通じて結合されているナノ物質を意味する。
【0067】
追加的な生物活性物質の例は、蛋白質、ペプチド、核酸、抗原、酵素、細胞、生体機能性薬物を含み、好ましくは、抗原、抗体、DNA、RNA、ハプテン(hapten)、アビジン(avidin)、ストレプタビジン(streptavidin)、ニュートラビジン(neutravidin)、プロテインA、プロテインG、レクチン(lectin)、セレクチン(selectin)のような組織特異的結合成分(tissue-specific binding substances);抗癌剤、抗生剤、ホルモン、ホルモン拮抗剤、インターロイキン、インターフェロン、成長因子、腫瘍壊死因子、エンドトキシン、リンフォトキシン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノゲン活性剤、プロテアーゼ阻害剤、アルキルホスホコリン、界面活性剤、心血管係薬物、胃腸管系薬物、神経系薬物のような薬剤学的活性成分、加水分解酵素、酸化-還元酵素、分解酵素、異性化酵素、合成酵素などの生体活性酵素、酵素共因子、酵素抑制剤などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
前記化学活性物質は、多様な機能性単分子、高分子、無機物質、蛍光有機物質あるいは薬物などを含む。
【0069】
前記単分子の例は、抗癌剤、抗生剤、ビタミン、葉酸を含む薬物、脂肪酸、ステロイド、ホルモン、プリン、ピリミジン、単糖類及び二糖類などを含むが、これらに限定されるものではない。前記単分子は、側鎖に-COOH, -NH2, -SH, -SS-, -CONH2, -PO3H, -OPO4H2, -PO2(OR1)(OR2) (R1, R2 = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -SO3H, -OSO3H, -NO2, -CHO, -COSH, -COX, -COOCO-, -CORCO- (R = ClHm, 0≦l≦3, 0≦m≦2l+1), -COOR, -CN, -N3, -N2, -NROH (R = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -NR1NR2R3 (R1,R2,R3 = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -CONHNR1R2 (R1, R2 = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -NR1R2R3X’ (R1, R2, R3 = CsHtNuOwSxPyXz, X = -F, -Cl, -Brまたは-I, X’ = F-, Cl-, Br-またはI-, 0≦s≦20, 0≦t≦2(s+u)+1, 0≦u≦2s, 0≦w≦2s, 0≦x≦2s, 0≦y≦2s, 0≦z≦2s), -OH, -SCOCH3, -F, -Cl, -Br, -I, -SCN, -NCO, -OCN, -エポキシ,-ヒドラゾン、-アルケンまたはアルキン群から選択される一つ以上の作用基を含むことを特徴とする。
【0070】
前記化学活性化学高分子の例は、デキストラン、カルボデキストラン、ポリサッカロイド、シクロデキストラン、プルラン、セルロース、デンプン、グリコゲン、カルボヒドレート、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、ポリホスファゲン、ポリラクチド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリアンヒドリド、ポリマレイン酸及びポリマレイン酸の誘導体、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリヒドロオキシブチレート、ポリカーボネート、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコール、ポリ−L−リジン、ポリグリコリド、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルエーテルメタクリレートまたはポリビニールピロリドンなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0071】
前記化学活性無機物質の例は、金属酸化物、金属カルコゲン化合物、無機セラミック物質、炭素物質、II/VI族、III/V族、またはIV族半導体、金属、またはこれの複合体などである。好ましくは、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、インジウムチンオキシド(ITO)、ナノチューブ、黒鉛、フラーレン、CdS, CdSe, CdTe, ZnO, ZnS, ZnSe, ZnTe, Si,GaAs, AlAs, Au, Pt, Ag, Cuなどがある。
【0072】
前記化学活性蛍光物質の例は、フルオレセインとその誘導体、ローダミンとその誘導体、ルシファーイエロー、B-フィトエリトリン、9-アクリジンイソチオシアネート、ルシファーイエローVS、4-アセトアミド-4’-イソチオ-シアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、7-ジエチルアミノ-3-(4’-イソチオシアトフェニル)-4-メチルクマリン、スクシニミジル-ピレンブチレート、4-アセトアミド-4’-イソチオシアネートスチルベン-2,2’-ジスルホン酸誘導体、LCTM-Red 640、LCTM-Red 705、Cy5、Cy5.5、レサミン、イソチオシアネート、エリスロシンイソチオシアネート、ジエチルトリアミンペンタアセテート、1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホネート、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホネート、2-p-トルイジニル-6-ナフタレンスルホネート、3-フェニル-7-イソシアネートクマリン、9-イソチオシアネートアクリジン、アクリジンオレンジ、N-(p-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル)メレイミド、ベンゾオキサジアゾール、スチルベンまたはピレンなど、蛍光有機物質を含むが、これらに限定されるものではない。
【0073】
本発明により開発されたナノ物質は、画期的に優れた熱放出量を示すことにより、各種発熱装置に使用が可能であり、医生物学的目的としては、高温治療、または薬物放出などの用途に使用が可能である。より詳細には、本発明の熱放出ナノ物質は、癌治療、痛み緩和、血管治療、骨回復、薬物活性化、または薬物放出などの用途に使用できる。
【0074】
本発明の他の様態によると、本発明は、下記一般式3〜4、6または9〜10で表される亜鉛−含有磁性ナノ物質を含む熱放出組成物を提供する:
[一般式3]
ZnfMa-fOb (0<f<8, 0<a≦16, 0<b≦8, 0<f/(a-f)<10、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金);または
[一般式4]
ZngMc-gM’dOe (0<g<8, 0<c≦16, 0<d≦16, 0<e≦8, 0<g/{(c-g)+d}<10、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金;M’は、1族元素、2族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される元素);
本発明の好ましい具現例によると、前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、下記一般式6で表される:
[一般式6]
ZnkM”h-kFeiOj(0<k<8, 0<h≦16, 0<i≦8, 0<j≦8, 0<k/{(h-k)+i}<10; M”は、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金)。
【0075】
より好ましくは、前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、下記一般式9または10で表される:
[一般式9]
ZnqFel-qOm (0<q<8, 0<l≦8, 0<m≦8, 0<q/(l-q)<10)
[一般式10]
ZnrMnn-rFeoOp(0<r<8, 0<n≦8, 0<o≦8, 0<p≦8, 0<r/{(n-r)+o}<10)。
【0076】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のナノ物質は、2〜20000W/gのSLP(specific loss power)値を有して、より好ましくは、100〜〜5000W/g、さらに好ましくは、200〜5000W/g、最も好ましくは、400〜2000W/gのSLP値を有する。
【0077】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述の本発明の熱放出用組成物を含む温熱療法(hyperthermia)用組成物を提供する。
【0078】
本発明の温熱療法用組成物は、上述の本発明の温熱療法用ナノ物質を有効成分として含むため、その共通する内容は、本明細書の過度なる複雑性を避けるために、その記載を省く。
【0079】
本発明の温熱療法用組成物は、通常的に薬剤学的組成物として提供される。したがって、本発明の温熱療法用組成物は、薬剤学的に許容される担体を含む。薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、またはミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。適した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0080】
本発明の温熱療法用組成物は、非経口方式で投与されることが好ましい。非経口投与をする場合、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、または病巣内(intralesional)注入などで投与できる。本発明の組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により様々に処方できる。本発明の温熱療法用組成物は、治療学的有効量の熱放出用組成物を含む。用語‘治療学的有効量’は、治療目的の疾患を治療できる充分な量を意味し、一般に0.0001〜100mg/kgである。
【0081】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、またはカプセル剤の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含むことができる。
【0082】
本発明の温熱療法用組成物は、特に、癌治療に有用である。例えば、胃癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、肝癌、気管支癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、膵臓癌、膀胱癌、結腸癌、子宮頸部癌、脳癌、前立腺癌、骨癌、皮膚癌、甲状腺癌、副甲状腺癌及び尿管癌などのような多様な癌疾患において、癌細胞の死滅を効果的に誘導することができる。
【0083】
表面には、標的細胞と特異的に結合するターゲッティング分子(targeting molecule)が結合されるか、結合無しに単独で使用できる。前記ターゲッティング分子は、コア−シェルナノ物質が、温熱療法で死滅させようとする細胞に特異的に結合して、標的細胞のみを死滅させることができるようにする。本発明で利用できるターゲッティング分子は、ターゲット細胞の表面抗原に対する抗体(好ましくは、単一クローン抗体)とアプタマー、受容体、レクチン、DNA、RNA、リガンド、補酵素(coenzyme)、無機イオン、酵素補助因子(cofactor)、糖、脂質または基質(substrate)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0084】
本発明の温熱療法用組成物は、適した投与経路で患者に投与された後、高周波の磁場が付加されて、これにより熱が発生される。1kHz乃至10MHzの振動数を有する電磁波の高周波の磁場が利用できる。
【発明の効果】
【0085】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下のようである:
(i)本発明は、磁性ナノ物質の熱放出量を改善する新しい接近方法を提示する。
(ii)本発明によると、ナノ物質に含有される亜鉛の含量を調節して、熱放出量を調節することができる。
(iii)本発明によると、調節された熱放出量を示す温熱療法用組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】亜鉛が添加された金属酸化物ナノ物質の透過電子顕微鏡イメージである。図1のa〜eは、多様な組成(x=0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)の亜鉛が含まれたマンガンフェライトナノ物質、f〜jは、多様な組成(x=0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)の亜鉛が含まれた酸化鉄ナノ物質であり、15nmの大きさを有して、非常に均一な大きさ分布度(δ<5%)を示す。
【図2】図2a〜2bは、亜鉛が添加されたマンガンフェライト(ZnxMn1-xFe2O4;図a、b)と酸化鉄ナノ物質(ZnxFe3-xO4; 図c、d)の多様な組成(x = 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)によるEDAX及びICP-AES分析結果である。ZnxMn1-xFe2O4の(a)EDAX、(b)ICP-MS結果、ZnxFe3-xO4の(c)EDAX、(d)ICP-MS結果である。
【図3】亜鉛が添加されたマンガンフェライト(ZnxMn1-xFe2O4)と酸化鉄ナノ物質(ZnxFe3-xO4)の多様な組成(x = 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)による飽和磁化率を比較した結果であって、亜鉛の含有率が、0から0.4までは増加するほど磁化率が増加するが、0.8では減少する傾向を示す。
【図4】合成された亜鉛の添加された酸化鉄ナノ物質の交流磁場下で時間による温度変化を示すグラフである。
【図5】亜鉛が添加されたマンガンフェライト(ZnxMn1-xFe2O4)と酸化鉄ナノ物質(ZnxFe3-xO4)の多様な組成(x = 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)による熱放出係数比較結果であって、亜鉛の含有量によって熱放出量が調節されることを確認することができる。特に、亜鉛がx=0.2に含有された時、最も大きい熱放出係数を示した。
【図6】様々な金属酸化物((MFe2O4、M = Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+)に同一な量の亜鉛が添加された場合(x = 0.2, Zn0.2M0.8Fe2O4, M = Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+)による熱放出係数比較結果であって、亜鉛が添加されるにつれてその熱放出係数が増加することが分かる。
【図7】水溶液上で合成された、亜鉛の添加量が異なる酸化鉄ナノ物質(ZnxFe3-xO4, x = 0.2, 0.4)のTEM、EDAX分析結果である。
【図8】亜鉛が含有されたマンガンフェライトナノ物質(Zn0.4Mn0.6Fe2O4)と商用化されたFeridexとの(a)熱放出係数及び(b)細胞死滅比較結果と、その顕微鏡写真である。図aにおいて、Zn0.4Mn0.6Fe2O4は、Feridexと比較し、熱放出係数が約4倍優れていることが分かる。図bでは、HeLa細胞に同一な量を処理した場合、Zn0.4Mn0.6Fe2O4は、Feridexと比較し、約6.5倍向上された細胞死滅率を示す。また、図c、dは、Zn0.4Mn0.6Fe2O4とFeridexがHeLa細胞に処理された後に観察された顕微鏡イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0088】
〔実施例1:亜鉛が添加された金属酸化物ナノ物質の製造〕
実施例で利用された金属酸化物ナノ物質は、本発明者らが出願した大韓民国特許第10-0604975号、PCT/ KR2004/003088、大韓民国特許出願2006-0018921号に記載の方法によって合成した。ナノ物質の前駆物質であるZnCl2(Aldrich, USA)、MCl2(M = Mn2+, Fe2+, Ni2+, Co2+)(Aldrich, USA)とFe(acac)3(Aldrich, USA)を、オレイン酸(Aldrich, USA)及びオレイルアミン(Aldrich, USA)がキャッピング分子としてそれぞれ20mmol含有されたトリオクチルアミン(Aldrich, USA)溶媒に全て添加した。次いで、アルゴン(Ar)下で200℃で反応して、再び300℃で反応した。このような方法で合成されたナノ物質を過量のエタノールで沈殿させて、分離されたナノ物質を再びトルエンで再分散させてコロイド溶液を得た。このように合成されたナノ物質は、15nmサイズのZn0.4M0.6Fe2O4(M = Mn2+, Fe2+, Ni2+, Co2+)形態の物質である。
【0089】
初期反応物であるMCl2(M = Mn2+, Fe2+, Ni2+, Co2+, Zn2+)物質の相対的なモル数を変化させながら、組成も容易に変化させることができた。このような方法で合成されたナノ物質は、均一な大きさの球状の形態を有しており、粒子の特性は、TEM(transmission electron microscopy)、EDAX(Energy dispersive atomic emission spectra of X-ray)及びICP-AES(Inductively coupled plasma atomic emission spectra)で分析した。合成されたナノ物質のTEM写真は、図1そしてEDAX及びICPは、図2に示されている。
【0090】
〔実施例2:亜鉛添加量によるZnxM1-xFe2O4(M = FeまたはMn, x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)の飽和磁化率の比較〕
実施例1によって、15nmの大きさを有するZnxM1-xFe2O4(M = FeまたはMn, x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)を合成して、SQUID(Superconducting Quantum Interference Devices)を使用して、3Teslaにおける飽和磁化率を測定した(図3)。結果的に、ZnxM1-xFe2O4(x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)ナノ物質の飽和磁化率(Ms)は、それぞれ125, 140, 154, 166, 175,137 emu/g(Zn+Mn+Fe)であって、これと同様に、ZnxFe3-xO4(x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)ナノ物質の飽和磁化率(Ms)も114, 126, 140, 152, 161, 115 emu/g(Zn+Fe)として表れた。合成されたナノ物質の飽和磁化率は、図3に示されている。
【0091】
〔実施例3:亜鉛添加量によるZnxM1-xFe2O4(M = FeまたはMn, x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)の熱放出量の比較〕
亜鉛添加量によるof ZnxM1-xFe2O4(M = FeまたはMn, x = 0, 0.1, 0.2, 0.4, 0.8)の熱放出値を体系的に比較するために、同一な濃度条件下で、亜鉛添加量の異なるZnxM1-xFe2O4(M = FeまたはMn, x = 0, 0.1, 0.2, 0.4, 0.8)のナノ物質に高周波磁場を加えて、放出される熱量を測定した。ナノ物質は、交流磁場(周波数:500kHz、電流:35A)において5cm直径のコイルに5mg/ml濃度の溶液状態で時間による温度変化を測定し(図4)、これに基づいて熱放出係数を測定した。
【0092】
亜鉛がマンガンフェライトや酸化鉄のような金属酸化物ナノ物質に添加されると、亜鉛が添加される含有量によって異なる熱放出係数値を示す。さらに詳細には、15nm大きさのZnxM1-xFe2O4とZnxFe3-xO4 ナノ物質は、いずれも亜鉛の含有量が変化することにより、熱放出量が調節されることが観察された。ZnxFe3-xO4ナノ物質の場合、亜鉛の含有量が増加される(x = 0, 0.1, 0.2, 0.4, 0.8)につれて、333,539, 694, 496, 458 W/gに、ZnxM1-xFe2O4ナノ物質の場合、亜鉛の含有量が増加する(x = 0, 0.1, 0.2, 0.4, 0.8)につれて、411, 451, 667, 472, 379 W/gに調節される。このような結果は、亜鉛が添加されるにつれて飽和磁化率が変化するという実施例2で測定された結果に密接に関わるが、実際的な熱放出係数に、磁気的性質だけではなく、亜鉛が添加されるにつれて変わる非等方常数の影響も大きいということを示す。亜鉛添加量によるZnxM1-xFe2O4(M = Fe2+またはMn2+, x = 0, 0.1, 0.2, 0.4, 0.8)の熱放出量比較データは、図5に示した。
【0093】
〔実施例4:亜鉛が添加された様々な種類の金属酸化物の熱放出係数の比較〕
様々な金属酸化物MFe2O4(M = Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+)に亜鉛が添加される場合、熱放出係数を変化させるかを調べるために、同じ大きさ(15nm)に合成して、熱放出係数を測定した。亜鉛の含有された酸化鉄ナノ物質は、大韓民国特許第10-0604975号、第10-0652251号、第10-0713745号、PCT/KR2004/002509、大韓民国特許第10-0604975号、PCT/KR2004/003088、PCT/KR2007/001001、大韓民国特許出願第2006-0018921号に明示の方法を通じて合成した。その結果、様々な金属酸化物MFe2O4(M = Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+)に亜鉛が添加される場合(Zn0.2M0.8Fe2O4, x = 0.2)、四つの物質のいずれも熱放出値が増加されることが分かる。
【0094】
亜鉛が添加されたZn0.2M0.8Fe2O4(M = Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+)の熱放出係数比較データは、図6に示した。
【0095】
〔実施例5:ZnxFe3-xO4(x = 0.2, 0.4)の組成を有する、亜鉛が含有されたフェライトナノ物質の水溶液における合成〕
本発明で提示する亜鉛の含有された金属酸化物ナノ物質を含む熱放出剤は、上述の有機溶媒上で相転移過程を通じて製造されたナノ物質のみに局限されず、水溶液上で以下のような方法により製造することもできる。ZnxFe3-xO4(x = 0.2, 0.4)の組成を有する亜鉛の含有された酸化鉄ナノ物質を水溶液上で合成するために、ナノ物質の前駆物質であるZn(acac)2H2O 20mg、FeCl2H2O 60mg、FeCl3H2O 240mgを10mLの水に溶解した後、3.2M濃度のNH4OH溶液1mLを入れて、20分間強く掻き混ぜながら反応して、Zn0.2Fe0.8Fe2eO4ナノ物質を得ることができた。また、Zn0.4Fe2.6O4ナノ物質を得るためには、前駆物質であるZn(acac)2H2O、FeCl2H2Oの量をそれぞれ40mgずつ使用して、同じ条件で反応することにより得ることができた。
【0096】
図7は、上記の方法で合成されたZnxFe3-xO4(x = 0.2, 0.4)ナノ物質の電子顕微鏡写真(図7(a、b))と、EDAXを通じて亜鉛含有量を分析した結果(図7(c、d))である。
【0097】
〔実施例6:ZnxM1-xFe2O4(M = Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+, x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8)の組成、及び15nmのコア大きさを有して、ジメルカプトコハク酸(DMSA)でコーティングされた亜鉛が含有されたフェライトナノ物質の合成〕
トルエン上に20mg/mlとして分散されているナノ物質に、過量のジメルカプトコハク酸(DMSA)が溶解されているDMSO溶液を入れて、2時間反応した後、ナノ物質を遠心分離して分離した後、水に分散させた。
【0098】
〔実施例7:ZnxM1-xFe2O4(M = Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+, x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8) の組成、及び6、9、12nmのコア大きさを有して、ジメルカプトコハク酸でコーティングされた亜鉛が含有されたフェライトナノ物質の合成〕
トルエン上に20mg/mlとして分散されているナノ物質に、過量のジメルカプトコハク酸が溶解されているDMSO溶液を入れて、2時間反応した後、ナノ物質を遠心分離して分離した後、水に分散させた。
【0099】
〔実施例8:ZnxM1-xFe2O4(M = Mn2+, Fe2+, Co2+, Ni2+, x = 0, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.8) の組成を有して、水和テトラメチルアンモニウム(tetramethylammoniumhydroxide pentahydrate(TMAOH))でコーティングされた亜鉛が含有された酸化物ナノ物質熱放出剤の合成〕
50mg/mlの濃度で1mLのトルエンに分散されている亜鉛の含有されている酸化物ナノ物質を、過量のエタノール使用して沈殿させた後、TMAOH(tetramethylammoniumhydroxide pentahydrate)溶液5mlに再分散させて、水溶液に分散させた。
【0100】
〔実施例9:癌細胞死滅の研究〕
増加された熱放出値を有するナノ物質は、多様に応用できる。その中で一例として、癌細胞死滅に非常に効果的に使用できる。癌細胞は、正常細胞と異なって、一般に40〜50℃近くの温度を与える場合、死滅するようになる。このような事実に基づいて、増加された熱放出係数を有するナノ物質は、非常に少ない量を利用しても大きい熱を放出することができるため、効果的である。したがって、このような効果を確認するために、既存に常用化されたFeridexと、本発明で開発された画期的に増加された熱放出量を示す15nm Zn0.4Mn0.6Fe2O4 ナノ物質を利用して、同一な量を細胞に処理した後、高周波磁場を加えた。その結果、15nm Zn0.4Mn0.6Fe2O4 ナノ物質の場合、既存の物質に比べ、卓越した癌細胞死滅効果を示した。その結果を図8に示した。
【0101】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)金属前駆物質及び調節された量の亜鉛前駆物質を含むナノ物質前駆物質と(ii)反応溶媒とを混合する段階と、
(b)(a)の混合物から、金属酸化物ナノ物質マトリックスに亜鉛がドーピングされた亜鉛−含有磁性ナノ物質を製造する段階とを含み、
前記ドーピングされる亜鉛の量によって亜鉛−含有磁性ナノ物質の熱放出係数を調節して、磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項2】
前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、金属酸化物ナノ物質マトリックスに、亜鉛がマトリックス金属を置換するか、または亜鉛が空いている正孔に添加された形態であることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項3】
前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、次の一般式1または2で表される金属酸化物ナノ物質マトリックスに、亜鉛がマトリックス金属を置換するか、または空いている正孔に添加されて形成されたものであるか、あるいは次の一般式3または4で表されることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法:
[一般式1]
MaOb (0<a≦16, 0<b≦8, Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金);
[一般式2]
McM’dOe (0<c≦16, 0<d≦16, 0<e≦8、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金;M’は、1族元素、2族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素から構成された群から選択される元素);
[一般式3]
ZnfMa-fOb (0<f<8, 0<a≦16, 0<b≦8, 0<f/(a-f)<10、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金);または
[一般式4]
ZngMc-gM’dOe (0<g<8, 0<c≦16, 0<d≦16, 0<e≦8, 0<g/{(c-g)+d}<10、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金であり;M’は、1族元素、2族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される元素)。
【請求項4】
M’は、Li, Na, K, Rb, Cs, Be, Mg, Ca, Sr, Ba, Ra, Ge, Ga, Bi, In, Si, Ge, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Y, Zr, Nb, Mo, Tc, Ru, Rh, Pd, Ag, Cd, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, Au, Hg, ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される元素であることを特徴とする、請求項3に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項5】
前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、次の一般式5で表される金属酸化物ナノ物質マトリックスに、亜鉛がマトリックス金属を置換するか、または空いている正孔に添加されて形成されたものであるか、あるいは次の一般式6で表されることを特徴とする、請求項3に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法:
[一般式5]
M”hFeiOj (0<h≦16, 0<i≦8, 0<j≦8; M”は、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金)
[一般式6]
ZnkM”h-kFeiOj(0<k<8, 0<h≦16, 0<i≦8, 0<j≦8, 0<k/{(h-k)+i}<10; M”は、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金)。
【請求項6】
前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、次の一般式7または8で表される金属酸化物ナノ物質マトリックスに、亜鉛がマトリックス金属を置換するか、または空いている正孔に添加されて形成されたものであるか、あるいは次の一般式9または10で表されることことを特徴とする、請求項5に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
[一般式7]
FelOm (0<l≦8, 0<m≦8)
[一般式8]
MnnFeoOp (0<n≦8, 0<o≦8, 0<p≦8)
[一般式9]
ZnqFel-qOm (0<q<8, 0<l≦8, 0<m≦8, 0<q/(l-q)<10)
[一般式10]
ZnrMnn-rFeoOp(0<r<8, 0<n≦8, 0<o≦8, 0<p≦8, 0<r/{(n-r)+o}<10)。
【請求項7】
前記亜鉛−含有磁性ナノ物質において、亜鉛と他の金属の比率が化学量論的に0.001<亜鉛/(総金属物質−亜鉛)<10であることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項8】
前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、金属酸化物ナノ物質マトリックスと比較して増加された熱放出係数を有することを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項9】
前記段階(a)の反応溶媒は、有機溶媒または水溶液であり、
前記段階(b)は、前記ナノ物質前駆物質を反応溶媒で分解して、亜鉛−含有磁性ナノ物質を製造して行われることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項10】
前記ナノ物質前駆物質は、金属ニトレート系列の化合物、金属サルフェート系列の化合物、金属アセチルアセトネート系列の化合物、金属フルオロアセトアセテート系列の化合物、金属ハライド系列の化合物、金属パークロレート系列の化合物、金属アルキルオキシド系列の化合物、金属サルファメート系列の化合物、金属ステアレート系列の化合物または有機金属系列の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項11】
前記反応溶媒は、ベンゼン系溶媒、炭化水素溶媒、エーテル系溶媒、ポリマー溶媒、イオン性液体溶媒、ハロゲン炭化水素、アルコール類またはスルホキシド系溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項12】
前記磁性ナノ物質は、付着された生物活性物質または化学活性物質をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項13】
前記ナノ物質は、2〜20000W/gの熱放出係数(SLP=specific loss power)値を有することを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ物質の熱放出量を調節する方法。
【請求項14】
下記一般式3〜4、6または9〜10で表される亜鉛−含有磁性ナノ物質を含む熱放出組成物:
[一般式3]
ZnfMa-fOb (0<f<8, 0<a≦16, 0<b≦8, 0<f/(a-f)<10、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金);
[一般式4]
ZngMc-gM’dOe (0<g<8, 0<c≦16, 0<d≦16, 0<e≦8, 0<g/{(c-g)+d}<10、Mは、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金;M’は、1族元素、2族元素、12族元素、13族元素、14族元素、15族元素、遷移金属元素、ランタン族元素及びアクチニウム族元素からなる群から選択される元素);
[一般式6]
ZnkM”h-kFeiOj(0<k<8, 0<h≦16, 0<i≦8, 0<j≦8, 0<k/{(h-k)+i}<10; M”は、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金);
[一般式9]
ZnqFel-qOm (0<q<8, 0<l≦8, 0<m≦8, 0<q/(l-q)<10);または
[一般式10]
ZnrMnn-rFeoOp(0<r<8, 0<n≦8, 0<o≦8, 0<p≦8, 0<r/{(n-r)+o}<10)。
【請求項15】
前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、下記一般式6で表されることを特徴とする、請求抗14に記載の熱放出組成物:
[一般式6]
ZnkM”h-kFeiOj(0<k<8, 0<h≦16, 0<i≦8, 0<j≦8, 0<k/{(h-k)+i}<10; M”は、磁性を帯びる金属原子またはこれらの合金)。
【請求項16】
前記亜鉛−含有磁性ナノ物質は、下記一般式9または10で表されることを特徴とする、請求項14に記載の熱放出組成物:
[一般式9]
ZnqFel-qOm (0<q<8, 0<l≦8, 0<m≦8, 0<q/(l-q)<10)
[一般式10]
ZnrMnn-rFeoOp(0<r<8, 0<n≦8, 0<o≦8, 0<p≦8, 0<r/{(n-r)+o}<10)。
【請求項17】
前記磁性ナノ物質は、2〜20000W/gの熱放出係数(SLP=specific loss power)値を有することを特徴とする、請求項14に記載の熱放出組成物。
【請求項18】
請求項14乃至17のいずれかに記載の熱放出組成物を含む温熱療法(hyperthermia)用組成物。
【請求項19】
請求項14乃至17のいずれかに記載の熱放出組成物を対象にする段階を含む温熱療法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−520953(P2011−520953A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510425(P2011−510425)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002662
【国際公開番号】WO2009/142439
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(506157422)インダストリー‐アカデミック・コオペレイション・ファウンデイション,ヨンセイ・ユニバーシティ (8)
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY‐ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION, YONSEI UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】YONSEI UNIVERSITY, 134, SHINCHON‐DONG, SEODAEMUN‐GU, SEOUL 120‐749, KOREA
【Fターム(参考)】