説明

磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置及び画像再構成方法

【課題】磁性ナノ粒子の空間的分布を画像化する画像再構成装置又は画像再構成方法において再構成画像の分解能を改善し、偽像の影響を軽減・排除する。
【解決手段】画像再構成装置10は、磁化応答信号を画像情報として再構成する再構成手段4を備える。再構成手段4は検出手段によって非飽和領域において検出された磁化応答波形と比較すべき理想波形を取得する。再構成手段は、理想波形と磁化応答波形との差分情報を補正係数として算出して該補正係数により前記磁化応答波形の信号強度に重み付けを行うことを特徴とする。再構成手段4は、重み付けを行う前に磁化応答信号波形から磁化応答波形のオフセット成分wmeanを減じた後に磁化応答波形の振幅最大値で正規化してもよい。理想波形は、非飽和領域と同一の空間位置に磁性ナノ粒子が配置された場合に検出される磁化応答信号波形であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ナノ粒子の空間的分布を画像化する方法及び装置に関し、特に、磁性ナノ粒子から生じる磁化応答信号の特性を利用して再構成画像の分解能を改善した画像再構成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、がん等の疾病における早期診断技術として、磁性粒子映像法(magnetic particle imaging,MPI)が提案されている(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1を参照)。このMPIは、生体に投与された磁性流体へ体外から交番磁場を照射した場合に、磁性ナノ粒子の非線形な磁化特性と交番磁場との相互作用によって生じる微弱な磁化信号を利用したイメージング技術である。
【0003】
MPIで用いられる磁場制御法は、磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging,MRI)と類似しており、使用される磁性流体もMRIにおける造影剤と同等のものであるが、磁性ナノ粒子の分布を直接画像化する点がMRIとは異なっている。MPIは、高分解能と高感度を兼ね備え、それらを高速に実現する画像化法に発展する可能性があり、加えて装置構成はMRIと比較してシンプルなため安価になることが見込まれる。
【0004】
MPIでは、上記の交番磁場に重畳して体外から局所磁場を印加し、これを空間的に走査することで特定領域の磁性ナノ粒子から磁化信号を検出しているが、目的領域外に存在する磁性ナノ粒子から生じる磁化信号の干渉により、空間分解能が低下してしまったり、偽像が表れてしまったりするといった問題があった。
【0005】
特に、磁性ナノ粒子の粒径が50nm程度又はこれ以下の場合には、磁性ナノ粒子の非線型性が小さくなることに起因して位置の識別に有用な磁化信号が微弱となり、また、画像化に必要な局所磁場分布の不完全性と相俟って、画像分解能の低下が顕著に現れることが懸念されている。このため、磁化特性が飽和状態へ達するために大きな外部磁場が必要となり、MPI画像再構成装置が大型化し、高価なものとなっていた。
【0006】
これまでに、MPIにおける再構成画像の高分解能化を目指し、磁性ナノ粒子から検出される磁化信号の応答波形(以下、磁化応答波形と呼ぶ)に含まれる高調波成分の特性を利用した方法が提案されているがその効果は限定的であった(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−199767号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0009826号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/091392号
【特許文献4】国際公開第2007/000350号
【特許文献5】国際公開第2007/000351号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】バーンハード・グレイヒ(BernhardGleich)、ヤーゲン・ウェイゼネッカー(JurgenWeizenecker) 著、「磁性粒子の非線形応答を利用した断層撮影技術」、(米国)、ネイチャー(Nature)、2005年6月30日、第435巻、p.1214−1217
【非特許文献2】草山裕助、石原康利 著、「磁性ナノ粒子を利用した分子イメージング装置に関する基礎検討」、信学技報、2007年9月20日、第MBE2007−48巻、p.15−18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
MPIは、磁性ナノ粒子が持つ非線形な磁化特性を利用した画像化法である。一般的な強磁性体(Fe、Co等)では磁化曲線がヒステリシスループを示すのに対して、磁性ナノ粒子では磁化の残留現象が生じず、磁場強度に対して一意に磁化の値が定まる。ここで、「磁性ナノ粒子」とは、強磁性を有する微粒子(粒径≦100nm程度)の総称であり、代表的な物質としてFePt(鉄白金)、Fe(マグネタイト)等が挙げられ、生体へ投与する場合には一般的に生体適合物質(糖、たんぱく質等)で被覆される(必ずしもこれらに限定されない)。
【0010】
この性質を利用することで実現されるMPIの原理を図1に示す。磁性ナノ粒子が磁場のない領域に存在する場合(後述の飽和状態に対して「非飽和状態」の場合とも呼ぶ)に周波数fの交番磁場Hを照射すると、非線形磁化特性に基づく磁化応答波形が生じ、これをフーリエ変換することで高調波成分を検出できる(図1の各線図での(a)を参照)。
【0011】
一方、磁性ナノ粒子が存在する領域の磁場が十分に大きく、磁化が「飽和状態」(すなわち、図1の磁化応答を示す図において、外部から印加される磁場強度Hが大きい場合に、磁性ナノ粒子から生じる磁化の強さMが磁場強度Hに比例せず一定となる現象)となり磁化応答波形の変化が僅少である場合には、交番磁場により発生する高調波成分は抑えられる(図1の各線図での(b)を参照)。
【0012】
つまり、磁場強度が小さい領域に磁性ナノ粒子が存在する場合にのみ高調波成分を含む磁化応答波形が得られ、その領域における磁性ナノ粒子の存在量を把握できる。このような原理を利用して、MPIでは局所的に磁場強度がほぼ零となるField−Free Point(FFP)領域すなわち磁化非飽和領域を生成し、これを走査することで、磁性ナノ粒子の存在領域(分布)を磁化応答波形(周波数応答)の高調波成分により識別できる。最終的に、検出される高調波成分の振幅を配列化することで、磁性ナノ粒子の分布を画像として再構成できる。なお、このようにして作成された画像を以下の説明では「再構成画像」と呼ぶ。
【0013】
従来のMPIの問題点の一つに、FFP以外に存在する磁性ナノ粒子から生じる磁化応答波形の干渉により、再構成画像において偽像が現れ、空間分解能が低下してしまうことが挙げられる。特に、磁性ナノ粒子の粒径が小さくなると、磁性ナノ粒子の非線型性が小さくなることに起因して位置の識別に有用な磁化信号が微弱となり、画像分解能の低下が顕著に現れることが懸念されている。これは、図1(左上)に示される磁性ナノ粒子の磁化特性Mは、外部から印加される磁界強度Hに対してランジュバン関数(M∝coth(αH)−1/αH、α:比例係数)で近似されるとともに、磁性ナノ粒子径の3乗に比例するとされているからである。このため、磁化特性が飽和状態へ達するために大きな外部磁場が必要となり、MPI画像再構成装置が大型化し、高価なものとなっていた。
【0014】
上記問題点の現象を反映した磁化応答波形の一例を図2に示す。図2(a)は、9mm×9mmサイズの撮像領域(Field of View:FOV)における磁性ナノ粒子(図中MNPと●印で表記)とFFPとの配置を示している。FFPはFOVの中心に設定され、磁性ナノ粒子はFFPから上下(z方向)に等距離の位置に存在している場合を示す。一方、図2(b)では、FOVの中心位置にFFPと磁性ナノ粒子とが配置されている場合を示す。
次に、図2(c)、(d)は、図2(a)及び図2(b)の場合に検出される磁化応答波形(時間応答)、および、及びそのフーリエ変換結果を示している。ここで、図2(c)、(d)において、図2(a)の配置の場合に得られる波形を干渉波形と呼び、問題となっていた。これは以下の理由による。
【0015】
図2(c)の結果からFFPから等距離の領域に存在する磁性ナノ粒子から生じる磁化応答波形は正負の対称性を有する。従来の画像再構成法では、このような奇数次高調波スペクトルの情報のみを利用しているため、磁性ナノ粒子が存在する領域(本例では実際に粒子が配置されている上下の領域)に加え、本来磁性ナノ粒子が存在していない領域(本例ではFOV中心のFFPの領域)にも信号分布が再構成されてしまうことになる(図2(e)を参照)。従って、奇数次高調波成分のみでは判別できない干渉の影響を、軽減・排除する手法が求められていた。
【0016】
なお、図2(c)、(d)には、図2(b)の配置の場合に得られる磁化応答波形も理想波形として併せて表示している。干渉波形の場合も理想波形の場合と同様に奇数次高調波成分のみ信号が表れ、偶数次高調波成分に信号が現われていないことがわかる。よって、図2(a)のような粒子配置の場合に、従来の判別手法では、図2(b)の配置で撮像される信号情報と区別がつかず、FOVに撮像(再構成)された磁性ナノ粒子像が実像なのか偽像なのかの判別ができなかった。
【0017】
つまり、本発明では、磁性ナノ粒子の空間的分布を画像化する画像再構成装置において再構成画像の分解能を改善することを目的とする。
【0018】
さらに、本発明では、磁性ナノ粒子の空間的分布を画像化する画像再構成装置において再構成画像上に現われ得る偽像を排除することを目的とする。
【0019】
本願発明の発明者は、鋭意検討の末、磁性ナノ粒子の偽像による磁化応答信号(偽像波形)と、実際に磁性ナノ粒子が偽像発生位置に存在していた場合の磁化応答信号(理想波形)と、の間に差異があることに着目し、前者(偽像波形)の再構成画像に重み付けを行い、後者(理想波形)と、を比較できるようにすれば、磁性ナノ粒子が実像であるか又は偽像であるかを判別でき、かつ、この偽像を排除した画像再構成装置を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0020】
すなわち、本発明は次の1〜12の構成をとるものである。
1.磁性ナノ粒子が存在する撮像領域に、該磁性ナノ粒子の磁化が飽和する飽和領域と該飽和領域よりも磁場強度が低い非飽和領域とを有する局所磁場分布を印加するとともに、オフセット磁場と交番磁場とをさらに印加する磁場発生手段と、
前記磁場発生手段の前記交番磁場の印加によって前記磁性ナノ粒子から発生する磁化応答信号を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記磁化応答信号を画像情報として再構成する再構成手段と、を備え、かつ、
前記再構成手段は、前記検出手段によって前記非飽和領域において検出された前記磁化応答波形と比較すべき理想波形を取得し、
前記再構成手段は、前記理想波形と前記磁化応答波形との差分情報を補正係数として算出して該補正係数により前記磁化応答波形の信号強度に重み付けを行うことを特徴とする磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
2.前記再構成手段は、前記重み付けを行う前に前記磁化応答信号波形から前記磁化応答波形のオフセット成分を減じた後に前記磁化応答波形の振幅最大値で正規化し、かつ、
前記理想波形が、前記非飽和領域と同一の空間位置に前記磁性ナノ粒子が配置された場合に検出される磁化応答信号波形であることを特徴とする前記1に記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
3.前記理想波形が、前記磁化応答波形の前記振幅最大値と周期とから算出される矩形波であることを特徴とする請求項1に記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
4.前記差分情報が、各時間における前記理想波形の振幅と前記磁化応答波形の振幅との差分値の総和であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
5.前記差分情報が、前記理想波形の磁化が飽和する時間と前記磁化応答波形の磁化が飽和する時間との差分値であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
6.前記信号強度は、前記磁化応答波形の高調波信号の奇数次高調波成分が強調され、かつ/又は、該高調波信号の偶数次高調波成分が減衰された信号に基づいて算出されていることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
7. 磁性ナノ粒子が存在する撮像領域に、該磁性ナノ粒子の磁化が飽和する飽和領域と該飽和領域よりも磁場強度が低い非飽和領域とを有する局所磁場分布を印加するとともに、オフセット磁場と交番磁場とをさらに印加する磁場発生ステップと、
前記磁場発生ステップの前記交番磁場の印加によって前記磁性ナノ粒子から発生する磁化応答信号を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって検出された前記磁化応答信号を画像情報として再構成する再構成ステップと、を備え、かつ、
前記再構成ステップは、前記検出ステップによって前記非飽和領域において検出された前記磁化応答波形と比較すべき理想波形を取得し、
前記再構成ステップは、前記理想波形と前記磁化応答波形との差分情報を補正係数として算出して該補正係数により前記磁化応答波形の信号強度に重み付けを行うことを特徴とする磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
8.前記再構成ステップは、前記重み付けを行う前に前記磁化応答信号波形から前記磁化応答波形のオフセット成分を減じた後に前記磁化応答波形の振幅最大値で正規化し、かつ、
前記理想波形が、前記非飽和領域と同一の空間位置に前記磁性ナノ粒子が配置された場合に検出される磁化応答信号波形であることを特徴とする前記7に記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
9.前記理想波形が、前記磁化応答波形の前記振幅最大値と周期とから算出される矩形波であることを特徴とする前記7に記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
10.前記差分情報が、各時間における前記理想波形の振幅と前記磁化応答波形の振幅との差分値の総和であることを特徴とする前記7〜9のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
11.前記差分情報が、前記理想波形の磁化が飽和する時間と前記磁化応答波形の磁化が飽和する時間との差分値であることを特徴とする前記7〜9のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
12.前記信号強度は、前記磁化応答波形の高調波信号の奇数次高調波成分が強調され、かつ/又は、該高調波信号の偶数次高調波成分が減衰された信号に基づいて算出されていることを特徴とする前記7〜11のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、磁化応答信号の高調波成分の情報と磁化応答波形の飽和・非飽和時間の情報との両者を用いることで、FFP内外から生じる磁化応答信号をより精細に分別することが可能となるため、所望としない目的領域外からの磁化応答信号の干渉を抑制し、画質の向上と画像分解能の改善が達成される。すなわち、再構成画像に表れる磁性ナノ粒子の偽像を削除・抑制することが可能となる。
【0022】
本発明の上記課題解決手段を講じることにより、所望としない磁化応答信号の干渉(偽像)を大幅に(従来の方法の信号強度の1/10以下までに)抑制することが可能となる(以下の実施例の数値解析や基礎実験の結果から確認済みである)。
【0023】
このため、再構成画像の分解能を向上することが可能となり、さらに、所望とする信号を検出するために必要な外部印加磁場の強度を小さくできることから、MPI画像再構成装置を安価・小型に構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】磁性ナノ粒子から生じる磁化応答信号を示し、MPIの原理を説明する図である。
【図2】MPIにおける問題点を説明する図である。
【図3】本発明のMPI画像再構成装置の構成の一例を示す図である。
【図4】従来のMPIによる画像再構成の原理を説明する図である。
【図5】磁性ナノ粒子から生じる磁化応答信号の高調波成分の一例を示す図である。
【図6】本発明によるMPI画像の分解能を改善する方法を説明する図である。
【図7】本発明によるMPI画像の分解能を改善する別の方法を説明する図である。
【図8】本発明による画像再構成方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】本発明によるMPI画像分解能の改善効果の一例(数値解析結果)を示す図である。
【図10】本発明によるMPI画像分解能の改善効果の一例(実験結果)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置10の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図2、4、5、7及び10に示された[a.u.]は、任意単位を示し、[ms]はミリ秒(s×10−3)である。
【0026】
MPI画像再構成装置の構成
図3は本発明のMPI画像再構成装置の構成の一例を示す。図3において、本装置は二組の対向するヘルムホルツ型コイル1,2と、それらの中央に配置された受信用コイル3、検出信号を処理する計算処理装置4により構成されている。なお、ヘルムホルツ型コイル1,2に電流を供給する電流源、受信用コイル3からの信号を増幅・弁別する回路、および、これらの要素に関連した制御系は図示していない。
【0027】
先ず、ヘルムホルツ型コイル1,2において対向するコイルに逆方向の直流電流IDC、および、−IDCを印加することにより、画像再構成装置10の中央では各ヘルムホルツ型コイル1,2で発生する同軸方向の磁場が相殺されFFPが生成される。また、両コイル1,2に供給するオフセット電流IOFF(X,Y)を調整し、ヘルムホルツ型コイル1の上側のコイルには(IDC+IOFF(X,Y))をヘルムホルツ型コイル1の下側のコイルには(−IDC+IOFF(X,Y))を供給することで、FFPの位置(X、Y)を上下左右に走査可能となる。さらに、上下のヘルムホルツ型コイル1,2に重畳して印加する交流電流IACは装置10全体に交番磁場を発生させ、磁性ナノ粒子からの磁化応答波形を取得するための入力信号としての役割を果たす。
【0028】
このように、二組のヘルムホルツ型コイル1,2はFFPの生成及び走査、並びに交番磁場の発生を同時に実現する。なお、FFPの生成と交番磁場の発生とを独立した構成とすることも可能である。例えば、FFPの生成を永久磁石で行った上で、その走査をXYステージ等の機械制御によって行うとともに、交番磁場をヘルムホルツ型コイルで発生することも可能である。
【0029】
また、磁性ナノ粒子から生じる磁化応答波形は受信用コイル3により検出され、ヘルムホルツ型コイル1,2により生成される磁場の線形領域が撮像領域たるFOVとして定義される。
【0030】
従来の画像再構成手法による問題点
前述のように、MPIでは生成したFFPを走査しながら検出される磁化応答波形を利用して画像再構成が行われるが、上記のヘルムホルツ型コイル1,2を用いた場合には、FFPを形成する磁場分布の局所性(立ち上がりの鋭さ)が悪く、矩形状の局所磁場分布しか得られないため、再構成画像の劣化が生じてしまう。
【0031】
例えば、図4(a)に示すようにFOVの中心に磁性ナノ粒子(図中●印及びMNPで表示)を配置し、FFPを図中FFP−a点と、FFP−b点とにそれぞれ設定した場合に検出される各磁化応答波形の一例を図4(b)に示す。理想的には、FFPがFFP−a点(図4(a)中の□印の位置)に走査された場合にのみ磁化応答信号が検出されるべきであるが(図4(b)の実線のみ検出されるべきであるが)、磁性ナノ粒子が存在しないFFP−b点(図4(a)中の◇印の位置)にFFPが走査された場合でも磁化応答信号が検出されてしまっていることがわかる(図4(b)の破線を参照)。
【0032】
そこで、従来のMPI画像再構成法では、FFPがFFP−a点に走査された場合(磁性ナノ粒子がFFPのみに存在する場合)に磁化応答波形の周波数スペクトルが奇数次高調波成分のみとなることに着目し(図4(c))、主に奇数次高調波成分を利用した画像再構成が行われている。すわなち、FFPが図3上におけるy=0の二次元平面(x−z平面)にあるときには、再構成画像における信号強度Uxz tradは次式(数式1)で表される。
【0033】
【数1】

【0034】
ここで、Nは使用する高調波の最大次数、Vxzはフーリエ変換で得られる高調波成分である。
【0035】
このように、従来法では磁化応答波形に含まれる高調波成分を基に画像再構成が行われるが、高次の高調波成分については振幅が微小であり、信号強度Uxz tradに反映される影響が僅かであるため、高次成分の情報は活用されていない。また、上述のように一般的なヘルムホルツ型コイル1,2では急峻な局所磁場分布が得られないため、FFP近傍の磁性ナノ粒子からも望ましくない磁化応答波形が検出されてしまい、空間分解能の低下が引き起こされる可能性が考えられる(問題点1)。同様に、FFP(目的領域)以外に存在する磁性ナノ粒子から磁化応答波形が収集されることで、本来磁性ナノ粒子が存在していない領域に偽像が出現し、真像との識別が困難となる問題があった(問題点2)。
【0036】
磁化応答波形の奇数次高調波成分の強調
そこで、磁性ナノ粒子がFFPのみに存在する理想的な状態において検出される磁化応答波形の奇数次高調波成分を有効に利用することで、再構成画像の検出感度を向上する手法が考えられる(非特許文献2)。図4(a)において、FFP−a点のみに磁性ナノ粒子が存在する場合に得られる奇数次高調波スペクトルの振幅特性は図5のようにS=ae−αnで表される指数関数により近似できる(ここで、a、α、nは任意定数である)。このため、次数の増加に応じた指数係数を乗じて高次成分を強調することで、検出感度の増強、すなわち高分解能化が期待できる。この処理を数式1に加えた場合の再構成画像における信号強度Uxz emphは次式(数式2)で表される。
【0037】
【数2】

【0038】
ここで、k、kは任意定数である。
【0039】
磁化応答波形の偶数次高調波成分の抑制
一方、磁性ナノ粒子の存在する領域から離れたFFP‐b点(図4(a)の◇印位置)において検出される磁化応答波形は、図4(b)のように正負の対称性が維持されておらず、フーリエ変換結果には偶数次の高調波スペクトルが顕著に確認できることから(図4(c))、偶数次高調波成分は再構成画像の空間分解能の低下を引き起こすと考えられる。そこで、奇数次高調波成分と同様に、偶数次高調波スペクトルに応じた指数係数を乗じた後、奇数次高調波成分より減じることで、再構成画像において磁性ナノ粒子が存在する領域のみから局所的に信号を得られると考えられる。これらの処理を式2に加えた場合の再構成画像における信号強度Uxz localは次式(数式3)で表される。
【0040】
【数3】

【0041】
ここで、βは偶数次の高調波スペクトルより得られる減衰定数であり、k、kは任意定数である。
【0042】
これらの方法により、再構成画像の空間分解能・検出感度を改善すること(すなわち上記問題点1の解決)が期待できるが、図2に示したように、FFPから等距離の領域に存在する磁性ナノ粒子から生じる磁化応答波形は正負の対称性を有するため、このような高調波スペクトルの情報のみを利用した処理だけでは磁性ナノ粒子が実在する領域に加え、本来磁性ナノ粒子が存在していない領域にも信号分布が再構成される場合が生じてしまう。すなわち、上記問題点2は未解決のままであった。
【0043】
偽像の識別(磁化応答波形の補正処理)
ここで、図2(c)において干渉波形(図中実線)と理想波形(図中破線)とを比較すると、照射される交番磁場により磁化応答波形が周期的に飽和状態(変化が僅少)となる時間に顕著な差が認められる。そこで、本発明では、FFPの各走査点で検出される磁化応答波形と各走査点にのみ磁性ナノ粒子が存在する場合に生じる理想波形との相似性に応じて補正(重み付けとも呼ぶ)を行い、高分解能画像を実現することを提案する。本発明では、検出される磁化応答波形wと理想波形wn iを離散データとして扱い、両者の相似性を補正係数Cとして、次式(数式4)で定義する。
【0044】
【数4】

【0045】
ここでNは各波形のサンプリング数であり、wmax、wmax iは各波形の最大値、wmeanは磁化応答波形の中間値(最大値と最小値の平均値)であり、cは任意定数である。数式4において、検出される磁化応答波形にはFFP領域外に存在する磁性ナノ粒子から生じる磁化応答波形のオフセット成分(wmean)が含まれるため、図6に示すように、この成分を減じた後に正規化を行っている。そして、両者の正規化離散データを比較し、検出される磁化応答波形が理想波形と等しい場合に補正係数が1.0となるように、差分情報を基に相似性を算出する。この補正を数式1に加えた場合の再構成画像における信号強度Uxz compは次式(数式5)で表される。
【0046】
【数5】

【0047】
さらに、数式4による補正処理に加え、数式3のように高調波成分の振幅特性を有効に利用する処理を施すことで、得られる信号強度がより局所化され、高分解能化に繋がると考えられる。両者の処理を組み合わせた場合の再構成画像における信号強度Uxz combは次式(数式6)で表される。
【0048】
【数6】

【0049】
ここで、上記補正処理に必要な理想波形は、FFPが配置されている空間位置と同一位置にのみ磁性ナノ粒子が実在する場合に予め観測(実測)された磁化応答信号か、あるいは、数値解析によって算出されるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0050】
例えば、理想波形として、図7に示すように、磁化応答信号の最大値(振幅最大値)と周期とで算出される矩形波を近似的に用いることも可能である。この矩形波を用いることで、上述のFFP領域に磁性ナノ粒子が配置された理想波形を予め実験又は数値解析によって取得する手間を省くことができる。
【0051】
また、理想波形を用いずに、印加する交番磁場の振幅を変えて(つまり複数のレベルの振幅の交番磁場を与えて)観測される複数の磁化応答信号を利用して、上記と同様の補正処理を行うことも可能である。これは、FFPに実在する磁性ナノ粒子と、偽像の原因となるFFP外部に存在する磁性ナノ粒子とでは、外部から印加する交番磁場の大きさを変化させた場合の影響(磁化応答の変化)が異なるからである。
【0052】
さらに、上記の補正手法は、磁性ナノ粒子の磁化特性の時間応答における干渉波形と理想波形との面積の差に対応しているが、別の補正手法として理想波形が飽和している時間と干渉波形が飽和している時間(図6から、干渉波形が飽和する時間は理想波形に比べて短くなる)を指標として補正(重み付け)することも考えられる。
【0053】
以上のようにして、本発明では干渉波形の影響(偽像)を軽減することが可能となる。すなわち、上述の従来法の問題点を解決し、上記作用効果を奏する本発明の画像再構成方法は、図8に示すように下記のステップS1〜3により達成される。
【0054】
まず、磁性ナノ粒子が存在すると予想される撮像領域に、該磁性ナノ粒子の磁化が飽和する飽和領域と該飽和領域よりも磁場強度が低い非飽和領域とを有する局所磁場分布を印加するとともに、オフセット磁場と交番磁場とをさらに印加する磁場発生ステップS1を実行する。
【0055】
この磁場発生ステップS1を実行する際に磁場を発生する磁場発生手段として、上述のヘルムホルツ型コイル1,2が挙げられるが、必ずしもこれに限定されず、例えば永久磁石をはじめ他の磁場発生装置であってもよい。また、オフセット磁場の印加は、前記局所磁場分布を空間的に走査するためであり、上述のようにヘルムホルツ型コイル1,2にオフセット電流を重畳させることでオフセット磁場を発生させることができる。また、交番磁場の印加は、前記磁性ナノ粒子から磁化応答信号を検出するためであり、上述のようにヘルムホルツ型コイル1から交番磁場を発生させることができる。
【0056】
次に、前記磁場発生ステップS1の前記交番磁場の印加によって前記磁性ナノ粒子から発生する磁化応答信号を検出する検出ステップS2を実行する。ここで、この検出ステップを実行する検出手段として、上述のような受信コイル3が挙げられる。
【0057】
さらに、前記検出ステップS2によって検出された前記磁化応答信号を画像情報として再構成する再構成ステップS3を実行する。ここで、再構成ステップを実行する再構成手段として、上述の計算処理装置4が挙げられる。
【0058】
この再構成ステップS3は、具体的には上述のように、前記局所磁場分布の非飽和領域において検出された前記磁化応答信号波形から前記磁化応答波形のオフセット成分を減じた後に前記磁化応答波形の振幅最大値で正規化し(ステップS3a)、前記検出手段によって前記非飽和領域において検出された前記磁化応答波形と比較すべき理想波形を取得して(ステップS3b)、前記理想波形と前記磁化応答波形との差分情報を補正係数として算出して該補正係数により前記磁化応答波形の信号強度に重み付けを行う(ステップS3c)。ここでステップS3cの重み付けを行う前に、信号強度が数式3及び数式6に示したように、磁化応答波形の高調波信号の奇数次高調波成分が強調され、かつ/又は、該高調波信号の偶数次高調波成分が減衰された信号に基づいて算出されるようにしてもよい。信号強度へ上記処理を行うことで、画質と画像分解能のさらなる改善が達成され得る。
【0059】
なお、この再構成ステップS3の理想波形として、図6に示したように、前記非飽和領域と同一の空間位置に前記磁性ナノ粒子が配置された場合に検出される磁化応答信号波形が挙げられるが、必ずしもこれに限定されず、例えば、図7に示したように、磁化応答信号波形の振幅最大値と周期とから算出される矩形波のようなものであってもよい。
【0060】
また、この再構成ステップS3の差分情報には、図6に示したように、各時間における前記理想波形の振幅と前記磁化応答波形の振幅との差分値の総和(面積差)が挙げられるが、必ずしもこれに限定されず、前記理想波形の磁化が飽和する時間と前記磁化応答波形の磁化が飽和する時間との差分値であってもよい。
【実施例1】
【0061】
本発明の有効性を確認するため、図2(a)のように配置された磁性ナノ粒子(粒子径20nm、飽和磁場20mT(T×10−3、Tはテスラ)、粒子間距離7mm(互いにFFPから点対称に配置)を対象に、数式1、5、又は6を用いて数値解析による画像再構成を行った結果を図9に示す。数値解析では、ヘルムホルツ型コイル1、2(コイル直径50mm、コイル間隔50mm)と受信用コイル(直径16mm、コイル巻数200回)から構成されるモデルを用いた。ここで、理想波形の磁化飽和時間に応じてc=10とした。
【0062】
まず、数式1に基づく再構成画像(従来手法、図9(a)参照)では、FOVの中心部分において干渉の影響が強く現れており、磁性ナノ粒子を配置した領域の約98%の信号強度に対応した偽像が観測されている。したがって、干渉が発生している偽像における信号強度と実際に磁性ナノ粒子が存在する領域の信号強度とが同等となり、再構成画像から磁性ナノ粒子の存在の有無(分布)を識別するのは困難である。
【0063】
一方、数式5により、検出される磁化応答波形と理想波形との差異から算出される相似性に応じた補正(本発明による補正処理)を行うことで、偽像における信号強度が磁性ナノ粒子を配置した領域の約3.6%の信号強度まで大幅に軽減できることが確認された(図9(b)参照)。
【0064】
さらに、数式6において、上記補正処理に加え、奇数次高調波成分を強調すると共に偶数次高調波成分を減じる処理を施すことで、偽像における信号強度が約3.3%までに抑えられ、磁性ナノ粒子を配置した領域から生じる信号を局所化できることが示された(図9(c)参照)。
【実施例2】
【0065】
さらに、FFP領域外から生じる磁化応答波形に起因した干渉の影響を実験的に評価した。評価サンプルには、粒子径10〜100nmの磁性ナノ粒子からなる磁性流体(フェルカルボトラン)が使用された。実験にはヘルムホルツ型コイル1のみで構成される装置(コイル直径180mm、コイル巻数各285回、コイル間隔50mm)が使用された。ヘルムホルツ型コイル1には周波数80Hz、振幅4.7Aの交流電流が同位相に印加されてコイル1中央において約20mTの交番磁場IACが発生されるとともに、9.4Aの直流電流IDCが上下のコイルへ逆方向に印加されて約1.2T/m(ここで、mは長さメートルを意味)の傾斜磁場が発生され、コイルギャップの中心にFFPが形成された。また、濃度約500×10−3mol/lの水ベースの上記磁性流体(フェルカルボトラン)0.5ccを円筒ポリエチレン容器に封入した試験対象物(生体を模擬した試験対象物、以下「ファントム」と呼ぶ)が使用された。
【0066】
実施例1の数値解析の条件(図2(a))と同様にFFPに対して点対称な位置に磁性ナノ粒子を配置するために、ヘルムホルツ型コイル1が対向する方向にFOV中心から20mmの距離に2つのファントムが配置された。FFPがこれらのファントムから等距離となるコイル1,2間の中心に設定され、磁性ナノ粒子から生じる磁化応答波形がファントム周囲に配置した受信用コイル3(直径23mm、巻数400回)を用いて検出された。
【0067】
ここで、補正に使用する理想波形は、コイル1,2間中心の1点のみにファントムを配置して信号検出を行うことにより取得された。なお、システム固有の非線型誤差を軽減するために、検出された磁化応答波形とファントムを配置していない場合に検出される信号との差分処理が行われた。
【0068】
上記の条件に基づいて、受信用コイル3で検出された磁化応答波形、及び理想波形が図10(a)に示される。検出された磁化応答波形には干渉の影響が反映されており、図2に示した一例と同様に、正負の対称性と、ゼロ振幅付近で大きく変曲する応答波形となっている。本発明によりFFP領域外から生じる磁化応答波形の干渉を抑制できることを確認するため、実験で得られた磁化応答波形に数式1(従来手法)、及び数式6(本発明の提案手法)を適用した。ここで、数式6で使用する各補正係数は、実験で得られた理想波形の特性を基に決定した(N=16、α=0.1、β=0.1、k=0.74、k=1.0、k=0.82、k=1.0、c=12)。
【0069】
検出された磁化応答波形、及び理想波形に対して、両式を用いて算出された信号強度が図10(b)に示される。上述の補正処理を施さない従来手法の場合では、FFP領域外から生じる磁化応答波形の干渉を反映した信号強度は理想波形のそれの約83%であるのに対して、提案手法による補正を行うことで干渉の影響を約10%まで大幅に抑制できることが示された(図中の黒塗りの棒グラフの各値を参照)。
【0070】
本発明の画像再構成装置及び画像再構成方法は、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を奏する。
【0071】
本発明によれば、磁化応答信号の高調波成分の情報と磁化応答波形の飽和・非飽和時間の情報の両者を用いることで、FFP内外から生じる磁化応答信号をより精細に分別することが可能となるため、所望としない目的領域外からの磁化応答信号の干渉を抑制し、画質の向上と画像分解能の改善が達成される。すなわち、再構成画像に表れる磁性ナノ粒子の偽像を削除・抑制することが可能となる。
【0072】
本発明の上記課題解決手段を講じることにより、所望としない磁化応答信号の干渉(偽像)を大幅に(従来の方法の信号強度の1/10以下までに)抑制することが可能となる(以下の実施例の数値解析や基礎実験の結果から確認済みである)。
【0073】
このため、再構成画像の分解能を向上することが可能となり、さらに、所望とする信号を検出するために必要な外部印加磁場の強度を小さくできることから、MPI画像再構成装置を安価・小型に構成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、磁性ナノ粒子を生体内に投与し、その非線形な磁化応答特性から生体内の状況を画像化できるMPI装置に利用でき、画像分解能を大幅に改善できる。本発明をMPI装置に適用することにより、MPI技術は、癌等の疾病における早期診断技術として益々有望視されるであろう。
【0075】
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の記載した発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
1 ヘルムホルツ型コイル(磁場発生手段)
2 ヘルムホルツ型コイル(磁場発生手段)
3 受信コイル(検出手段)
4 計算処理装置(再構成手段)
10 画像再構成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性ナノ粒子が存在する撮像領域に、該磁性ナノ粒子の磁化が飽和する飽和領域と該飽和領域よりも磁場強度が低い非飽和領域とを有する局所磁場分布を印加するとともに、オフセット磁場と交番磁場とをさらに印加する磁場発生手段と、
前記磁場発生手段の前記交番磁場の印加によって前記磁性ナノ粒子から発生する磁化応答信号を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記磁化応答信号を画像情報として再構成する再構成手段と、を備え、かつ、
前記再構成手段は、前記検出手段によって前記非飽和領域において検出された前記磁化応答波形と比較すべき理想波形を取得し、
前記再構成手段は、前記理想波形と前記磁化応答波形との差分情報を補正係数として算出して該補正係数により前記磁化応答波形の信号強度に重み付けを行うことを特徴とする磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
【請求項2】
前記再構成手段は、前記重み付けを行う前に前記磁化応答信号波形から前記磁化応答波形のオフセット成分を減じた後に前記磁化応答波形の振幅最大値で正規化し、かつ、
前記理想波形が、前記非飽和領域と同一の空間位置に前記磁性ナノ粒子が配置された場合に検出される磁化応答信号波形であることを特徴とする請求項1に記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
【請求項3】
前記理想波形が、前記磁化応答波形の前記振幅最大値と周期とから算出される矩形波であることを特徴とする請求項1に記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
【請求項4】
前記差分情報が、各時間における前記理想波形の振幅と前記磁化応答波形の振幅との差分値の総和であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
【請求項5】
前記差分情報が、前記理想波形の磁化が飽和する時間と前記磁化応答波形の磁化が飽和する時間との差分値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
【請求項6】
前記信号強度は、前記磁化応答波形の高調波信号の奇数次高調波成分が強調され、かつ/又は、該高調波信号の偶数次高調波成分が減衰された信号に基づいて算出されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成装置。
【請求項7】
磁性ナノ粒子が存在する撮像領域に、該磁性ナノ粒子の磁化が飽和する飽和領域と該飽和領域よりも磁場強度が低い非飽和領域とを有する局所磁場分布を印加するとともに、オフセット磁場と交番磁場とをさらに印加する磁場発生ステップと、
前記磁場発生ステップの前記交番磁場の印加によって前記磁性ナノ粒子から発生する磁化応答信号を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによって検出された前記磁化応答信号を画像情報として再構成する再構成ステップと、を備え、かつ、
前記再構成ステップは、前記検出ステップによって前記非飽和領域において検出された前記磁化応答波形と比較すべき理想波形を取得し、
前記再構成ステップは、前記理想波形と前記磁化応答波形との差分情報を補正係数として算出して該補正係数により前記磁化応答波形の信号強度に重み付けを行うことを特徴とする磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
【請求項8】
前記再構成ステップは、前記重み付けを行う前に前記磁化応答信号波形から前記磁化応答波形のオフセット成分を減じた後に前記磁化応答波形の振幅最大値で正規化し、かつ、
前記理想波形が、前記非飽和領域と同一の空間位置に前記磁性ナノ粒子が配置された場合に検出される磁化応答信号波形であることを特徴とする請求項7に記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
【請求項9】
前記理想波形が、前記磁化応答波形の前記振幅最大値と周期とから算出される矩形波であることを特徴とする請求項7に記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
【請求項10】
前記差分情報が、各時間における前記理想波形の振幅と前記磁化応答波形の振幅との差分値の総和であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
【請求項11】
前記差分情報が、前記理想波形の磁化が飽和する時間と前記磁化応答波形の磁化が飽和する時間との差分値であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。
【請求項12】
前記信号強度は、前記磁化応答波形の高調波信号の奇数次高調波成分が強調され、かつ/又は、該高調波信号の偶数次高調波成分が減衰された信号に基づいて算出されていることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の磁性ナノ粒子の磁化応答信号を利用した画像再構成方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図2】
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【図9】
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