説明

磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩

【課題】オレフィンのジヒドロキシル化反応に用いられる新規な磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表されるオスミウム(VI)酸塩のSiに結合する3つのR−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中のOと置換した、磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩。


[式中、R及びRは炭化水素基。s、uは0以上の整数、tは0または1、但し、s、u、tのうち1つは0ではない。Rは例えば一般式(II)で表される基である。


(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち2つが1、残りは0)]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩、このものを製造する方法、及びこのものから成るオレフィンのジヒドロキシル化反応用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の有機合成反応は液相反応が中心であるが、液相反応では、触媒は反応溶液に溶解しているため、触媒の回収、再利用(リサイクル)が容易でなく、触媒のリサイクルを図るには、反応後の抽出などの後処理、さらには精製などの操作が必要とされる。また触媒の多くは金属を含有し、これが反応処理液に混入してくるため、そのままでは排出できず、環境保全の面からも問題がある。そこで触媒の回収、再利用が容易で、環境にも優しい新規固定化触媒やそれを用いる新しい合成手法が求められている。
【0003】
最近触媒の回収、再利用を行うべく、ポリマー樹脂固定型触媒やフルオラスタグを導入した触媒等が種々開発されている。しかしこれらを用いた場合も濾別による回収操作やフルオラス溶媒を用いた抽出操作が必要とされる(非特許文献1、2参照)。
【0004】
近年四酸化三鉄(マグネタイト)等の磁性ナノ粒子(非特許文献3)に触媒機能性部位を固定化した磁性ナノ粒子固定型触媒の合成プロセスにおける有用性が報告されている。支持体の粒径が小さいので、固定化に伴う触媒活性の低下は、ポリマー樹脂への固定化の場合よりも小さい。また反応後に磁石を反応容器に近づけると触媒は引き寄せられるので、デカンテーションにより反応生成物を含む反応溶液を取り出すことができ、さらに触媒が残った反応容器に反応溶媒と反応基質を加えることにより、触媒を再利用でき、触媒のリサイクルの操作が簡便である(非特許文献4、5、6参照)。
【0005】
例えば、これまでに磁性ナノ粒子固定型パラジウム触媒や銅触媒などが報告されている。これらは対応するポリスチレン樹脂固定型触媒よりも触媒活性は高く、またリサイクルを4,5回程度行っても収率の低下は殆どない(非特許文献7、8参照)。
【0006】
一方、近年オレフィンのジヒドロキシル化反応に有効なOsO2−の四級アンモニウム塩とのイオン交換に基づく固定化により、リサイクルが可能な新規固定化酸化オスミウム触媒が開発されている。しかしこれまでに報告されている支持体は無機層状化合物、シリカゲル、ポリスチレンやデンドリマー等であり、磁性ナノ粒子への固定化は報告されていない(非特許文献9、10、11、12、13参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「固定化触媒のルネッサンス」、2007年、p.1(シーエムシー出版)
【非特許文献2】「グリーンケミストリー・アンド・キャタリシス(Green Chemistry and Catalysis)」、2006年、p.309(WILEY−VCH)
【非特許文献3】「ジャーナル・オブ・マグネティズム・アンド・マグネティック・マテリアルズ(J.Magn.Magn.Mater.)」、2004年、第270巻、p.1
【非特許文献4】「ニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー(New J.Chem.)」、2003年、第27巻、p.227
【非特許文献5】「アドバンスト・シンセシス・アンド・キャタリシス(Adv.Synth.Catal.)」、2007年、第349巻、p.2431
【非特許文献6】「ケミカル・コミュニケーション(Chem.Commum.)」、2007年、p.3404
【非特許文献7】「ケミカル・コミュニケーション(Chem.Commum.)」、2005年、p.4435
【非特許文献8】「ケミカル・コミュニケーション(Chem.Commum.)」、2007年、p.4809
【非特許文献9】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)」、2001年、第123巻、p.9220
【非特許文献10】「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)」、2002年、第124巻、p.5341
【非特許文献11】「シンレット(Synlett)」、2008年、第15巻、p.2313
【非特許文献12】「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)」、2010年、第51巻、p.808
【非特許文献13】「テトラヘドロン(Tetrahedron)」、2010年、第66巻、p.8536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情のもとでなされたものであり、磁性ナノ粒子固定型触媒として、オレフィンのジヒドロキシル化反応に用いられる新規な固定型酸化オスミウムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記した磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩について鋭意研究を重ねた結果、溶媒中において磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩とオスミウム(VI)酸カリウムとを反応させると、新規な磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩が容易に得られること、そしてこの磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩は、オレフィンのジヒドロキシル化反応を効率的に促進させ、さらに反応終了後磁石を近づけることにより引き寄せられ、回収、再利用可能な固定化酸化オスミウム触媒として有用であることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
(1) 一般式(I)
【化1】

[式中、R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Rは炭化水素基または一般式(II)
【化2】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表されるオスミウム(VI)酸塩が、当該一般式中のSiに結合する3つのR−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩。
(2) 磁性ナノ粒子が、M(II)FeO[式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。]で表される組成のフェライトを主成分とすることを特徴とする、(1)に記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩。
(3) 下記の一般式(III)、
【化3】

下記の一般式(IV)
【化4】

及び/又は、下記の一般式(V)
【化5】

[これらの式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Rは炭化水素基または一般式(II)
【化6】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表される四級アンモニウム塩構造を含有する、(2)に記載のフェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩。
(4) 一般式(VI)
【化7】

[式中、R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Xはハロゲン原子であり、Rは炭化水素基または一般式(II)
【化8】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表される構造を有する四級アンモニウム塩が、当該一般式中のSiに結合する3つのR−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構

造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩と、オスミウム(VI)酸カリウム K2OsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、(1)に記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩の製造方法。
(5) 磁性ナノ粒子が、M(II)Fe[式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。]で表される組成のフェライトを主成分とすることを特徴とする、(4)に記載の、磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩の製造方法。
(6) 下記の一般式(VII)、
【化9】

下記の一般式(VIII),
【化10】

及び/又は、下記の一般式(IX)
【化11】

[これらの式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Xはハロゲン原子であり、Rは炭化水素基または一般式(II)
【化12】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表される四級アンモニウム塩構造を含有する、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩と、オスミウム(VI)酸カリウム K2OsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、(5)に記載の、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩の製造方法。
(7) (1)〜(3)のいずれかに記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩から成るジヒドロキシル化反応用触媒。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩は、オレフィンのジヒドロキシル化反応における触媒として有効であり、反応終了後磁石に引き寄せることにより容易に回収でき、また再利用も可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の新規な磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩は、下記の一般式(I)
【化13】

[式中、R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Rは炭化水素基または一般式(II)
【化14】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表されるオスミウム(VI)酸塩が、当該一般式中のSiに結合する3つのR−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩である。
【0013】
この磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩について、前記式中の置換基における各符号で示される内容を具体的に説明することにより、それらの構造をさらに明らかにする。
【0014】
(1)Rは炭化水素基を表し、炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の中から選ばれる基である。
アルキル基は、その炭素数が1〜22であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニルなどの基を挙げることができる。
シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等を挙げることができる。
アリール基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン等を挙げることができる。置換基としてはアルキル基等が挙げられ、また2以上の置換基を有していて差し支えない。アルキル基としては炭素数1から3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基を挙げることができる。
アラルキル基は、側鎖としてアルキル基を持つ芳香族炭化水素の側鎖から1個の水素原子が失われた構造であり、ベンジル基、フェネチル基、アントラセニルメチル基等である。
(2)s及びuは0以上の整数で好ましくは0〜10である。また、tは0または1である。但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。
(3)Rが炭化水素基の場合、Rと同様である。Rが一般式(II)で表される場合、RはRと同様である。この場合、繰り返し構造の世代数nは1以上の整数を示すが、好ましくは1〜6である。繰り返し構造は下記一般式(X)で表される。
【化15】

一般式(II)で表される基の一例として、d、e及びfのうち、いずれか2つが1でn=3の場合について示すと次のとおりである。
−CH−C−[O−CH−C−[O−CH−C−(O−R
【0015】
支持体の磁性ナノ粒子としては、M(II)Feを組成とするフェライト、及びこれを含有する、フェライトを主成分とする磁性を有する鉄化合物を用いることができる。M(II)としては、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+及びCu2+が挙げられ、これらが単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。完全にこの構造でなくてもこの組成を含有する磁性ナノ粒子は何れも支持体と成り得る。例えば、シリカ(SiO)で被覆したフェライトがこれに該当する。また、マグへマイト(γ−Fe2O3)を組成とする磁性ナノ粒子も支持体として用い得る。
【0016】
以下に、磁性ナノ粒子としてフェライトを用いた場合を例にとって、磁性ナノ粒子支持体への有機基の固定化の形態を、説明する。固定化の主な形態として、一般式(III)が挙げられる。
【化16】

(式中、M(II)、R、R、s、t、uは前記と同じ意味を示す。)
上記の構造は鉄酸化物の表面の3個の酸素原子とケイ素が結合し、固定化されている。しかしこの場合、必ずしも酸素3原子の3箇所で固定化している必要はなく、酸素2原子での2箇所や酸素1原子での1箇所での固定化もあり得る。またSi−O−Si結合により形成されたケイ素化合物のオリゴマーが鉄酸化物に固定化された構造もあり得る。固定化の様式は問わず、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子の表面に固定化されていればよい。酸素原子2個で固定化した構造とケイ素化合物の二量体が固定化した構造の一例をそれぞれ一般式(IV)及び一般式(V)に示す。
【化17】

(式中、M(II)、R、R、s、t、uは前記と同じ意味を示す。Rは炭化水素基を示す。)
【化18】

(式中、M(II)、R、R、R、s、t、uは前記と同じ意味を示す。)
【0017】
本発明の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩に導入されるオスミウムの含有量は、0.001〜5.0mmol/g、好ましくは、0.01〜2.0mmol/gである。
また本磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩の一次粒子の粒径は、0.5〜1000nm、好ましくは5〜100nmであるが、一般に凝集していることが多い。
また本磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩は、この凝集を解くために、磁性ナノ粒子の表面が、オクタノール等の長鎖アルコールやオレイン酸等の長鎖カルボン酸等の界面活性剤で覆われていてもよい。
【0018】
本発明の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩は、下記の一般式(VI)
【化19】

[式中、R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Xはハロゲン原子であり、Rは炭化水素基または一般式(II)
【化20】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表される構造を有する四級アンモニウム塩が、当該一般式中のSiに結合する3つのR−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩と、オスミウム(VI)酸カリウム K2OsO4とを溶媒中で反応させることにより製造することができる。
【0019】
この製法では、ハロゲン化物イオンとオスミウム(VI)酸イオン(OsO42−)とのイオン交換により、磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩が製造される。
【0020】
反応溶媒としては水が用いられるが、有機溶媒との混合系でもよい。水と有機溶媒との混合系の場合、有機溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、t−ブタノールが好ましいが、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の炭化水素、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコールなどでもよい。
この溶媒を用いて磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩とオスミウム(VI)酸カリウム K2OsO4との反応を行うに際しては、好ましくは、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウムを溶媒に溶解させたところに磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩を添加し、十分に攪拌しながら反応させる。
【0021】
反応条件については、反応温度は室温が好ましい。100℃まで加熱してもよいが、それぞれの溶媒の沸点により上限が異なる。また反応時間は、反応温度及び使用する溶媒等その他の条件により異なり一概に定めることはできないが、好ましくは0.5〜50時間程度である。
また、オスミウム(VI)酸カリウムの使用量については、必ずしも限定する必要はないが、一般的には、原料のハロゲン1モルあたり0.01〜5モル、好ましくは0.4〜0.5モルの範囲のオスミウム(VI)酸カリウムが用いられる。
【0022】
反応終了後、磁石を反応容器に近づけることにより、反応生成物は引き寄せられるので反応溶液をデカンテーションする。さらに溶媒で反応生成物を洗浄し、減圧下乾燥することにより、反応生成物が得られ、赤外線吸収スペクトル(IR)及び元素分析より目的物の生成が確認される。
本反応により、一段階で目的とする磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を製造することができる。
【0023】
前記の製造方法において、原料物質に対応する
一般式(VI)
【化21】

[式中、R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Xはハロゲン原子であり、Rは炭化水素基または一般式(II)
【化22】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表される構造を有する四級アンモニウム塩が、当該一般式中のSiに結合する3つのR−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩は、一般式(VI)
【化23】

(式中、R、R、R、s、t、u、Xは前記と同じ意味を示す。)
で表される四級アンモニウム塩と、磁性ナノ粒子とを、溶媒中加熱することにより製造することができる。
の炭化水素基は、アルキル基及びアルケニル基の中から選ばれる基である。
アルキル基は、その炭素数が1〜20であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニルなどの基を挙げることができる。
アルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル基等を挙げることができる。
この反応に用いられる溶媒としては、四級アンモニウム塩を溶解し得るものであればよく、特に制限されない。例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール等が好ましく挙げられる。
加熱温度は、通常室温から200℃の範囲で選ばれるが、50℃から120℃が好ましい。溶媒の沸点によっては還流することが望ましい。また、反応中、反応液は撹拌するのがよい。
【0024】
前項の磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩の製造方法において原料物質に対応する下記一般式(VI)
【化24】

(式中、R、R、R、s、t、u、Xは前記と同じ意味を示す)
で表される四級アンモニウム塩は、一般式(XI)
【化25】

(式中、R、R、s、t、uは前記と同じ意味を示す)
で表される三級アミンと、一般式(XII)
X (XII)
(式中R及びXは前記と同じ意味を示す。)
で表される含ハロゲン化合物を溶媒中で加熱することにより製造することができる。
あるいは一般式(XIII)
【化26】

(式中、R、s、t、u、Xは前記と同じ意味を示す)
で表される含ハロゲン化合物と、一般式(XIV)
N (XIV)
(式中R及びRは前記と同じ意味を示す。)
で表される三級アミンを溶媒中で加熱することにより製造することができる。
これらの反応に用いられる溶媒としては、三級アミンと含ハロゲン化合物を溶解し得るものであればよく、特に制限されない。例えば、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランやトルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素等が好ましく挙げられる。
加熱温度は、通常室温から150℃の範囲で選ばれるが、50℃から100℃が好ましい。また、反応中、反応液は撹拌するのがよい。
【0025】
磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を用いることにより、オレフィンのジヒドロキシル化反応が進行するから、本磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩は、新規ジヒドロキシル化反応用触媒として有用である。
【0026】
本発明の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩をこのような酸化触媒として用いた反応の1例について、以下に説明する。
前記触媒としての磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩と共酸化剤存在下に、一般式(XV)
【化27】

(式中、R、R、R及びRは、水素原子又は炭化水素基であって、これらのうち2つ以上が炭化水素基の場合、いずれか2つは互いに結合して環を形成してもよい)
で表されるオレフィンを溶媒中で反応させ、一般式(XVI)
【化28】

(式中、R、R、R及びRは前記と同じ意味を示す)
で表されるジオール体を製造することができる。
上記炭化水素基は特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0027】
またこの反応は、通常、溶媒に触媒、原料物質及び共酸化剤を溶解させて行われる。共酸化剤には通常N−メチルモルホリンN−オキシド、フェリシアン化カリウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド等が用いられる。溶媒には通常有機溶媒と水との混合溶媒が用いられる。有機溶媒として好ましくはアセトン、アセトニトリル、ジオキサン、t−ブチルアルコール等が単独もしくは組み合わせて用いられる。
また反応は、格別加熱することなく、室温程度で進行させることができるが、加熱により促進させるようにしてもよい。反応中、反応液は攪拌するのがよい。
反応終了後、磁石を反応容器に近づけ磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を引き寄せ、デカンテーションにより反応溶液を取り出すことにより、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム触媒を回収できる。そして再度反応容器に反応溶媒や反応基質等を添加することにより、触媒の再利用が可能である。また取り出した反応溶液を濃縮しカラムクロマトグラフィーによる分離精製により目的物質を得ることができる。
特に窒素上に導入される官能基(R、R)が嵩高い程、オスミウムの反応溶液中への溶出(リーチング)は抑えられ、より効率的な触媒の回収、再利用(リサイクル)が達成される。例えばRが一般式(II)の場合がこれに該当し、円滑な触媒のリサイクルが実現される。
【0028】
従来、酸化オスミウム触媒のリサイクルには、濾過操作や分液操作等が必要であったが、本磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム触媒は触媒を磁石に引き寄せ、反応溶液をデカンテーションするだけで回収でき、再度反応容器に反応基質等を添加することにより再利用が可能であり、容易にリサイクルが実現される点が本触媒の利点といえる。
【0029】
このように、本発明の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩は、新規ジヒドロキシル化反応用触媒として有用であり、これを用いることにより溶媒中において効率的にオレフィンのジヒドロキシル化反応を促進させることができる。
【実施例】
【0030】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例では磁性ナノ粒子として、マグネタイト(Fe)またはシリカ(SiO)で被覆したマグネタイトを用いた。これらの磁性ナノ粒子は、上述の非特許文献3に記載の方法に従い合成した。
また、磁性ナノ粒子に対する四級アンモニウム塩の固定化は、上述の非特許文献6に記載された有機基の固定化方法に準じて行った。
【0031】
マグネタイト固定型四級アンモニウム塩の合成の一例を、原料の四級アンモニウム塩の調製も含め参考例として以下に記載する。
参考例
アルゴン雰囲気下、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(435.3mg)と以下の構造式
【化29】

で表される含臭素化合物(268.3mg)の脱水アセトニトリル溶液(4mL)を70℃1時間撹拌した後、溶媒を真空留去し、以下の構造式
【化30】

で表される四級アンモニウム塩を得た。
次にアルゴン雰囲気下、マグネタイト(581.1mg)と調製した四級アンモニウム塩を脱気したエタノール(12mL)に加え、さらに超純水(78μL)を加え、1分間超音波をかけた後、メカニカルスターラーを用いて撹拌しながら20時間加熱還流した。反応終了後、磁石を近づけることにより、生成物を壁面に引き寄せ、反応溶液をデカンテーションし、さらに脱気したエタノールで5回洗浄した。その後
70℃で真空乾燥し、目的物を得た(黒色粉末、666.1mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:3447、2984、2945、1159、584cm−1
元素分析:C 5.27%、H 0.59%、N 0.24%、Br 1.11%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で代表される、磁性ナノ粒子に有機基が固定化された化合物と同定された。なお、以下の構造式は、磁性ナノ粒子に対する有機基の固定化の主な形態である、磁性ナノ粒子中の鉄酸化物の表面の3個の酸素原子と有機基のケイ素が結合する形態で記載されているが、[0016]において述べたように、有機基の磁性ナノ粒子に対する結合形態はこれに限られるものではない。以下の実施例における構造式についても同様である。
【化31】

【0032】
実施例1
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物KOsO・2HO4.8mgの水溶液(1ml)に、以下の構造式
【化32】

で表されるマグネタイト(Fe)固定型四級アンモニウム塩200.0mg(0.139mmol/g)を加え、室温にて3時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、水で5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量203.8mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:3445、2900、1661、1159、1045、970、581cm−1
元素分析:C 4.60%、H 0.55%、N 0.20%、Os 1.16%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化33】

【0033】
実施例2
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物KOsO・2HO20.8mgの水溶液(5ml)に、以下の構造式
【化34】

で表されるマグネタイト(Fe)固定型四級アンモニウム塩1.0014g(0.120mmol/g)を加え、室温にて5時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、水で5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量1.0078g)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:3447、1636、1150、1049、571cm−1
元素分析:C 7.94%、H 0.80%、N 0.18%、Os 1.06%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化35】

【0034】
実施例3
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物KOsO・2HO8.0mgの水溶液(1ml)に、以下の構造式
【化36】

で表されるマグネタイト(Fe)固定型四級アンモニウム塩260.1mg(0.178mmol/g)を加え、室温にて5時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、水で5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量263.0mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:3445、2850、1650、1100,1000,590cm−1
元素分析:C 2.47%、H 0.43%、N 0.14%、Os 1.57%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化37】

【0035】
実施例4
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物KOsO・2HO14.3mgの水溶液(3ml)に、以下の構造式
【化38】

で表されるマグネタイト(Fe)固定型四級アンモニウム塩801.0mg(0.103mmol/g)を加え、室温にて5時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、水で5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量802.7mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:2957、2922、2853、1589、1456,1113,1047、627、563cm−1
元素分析:C 5.76%、H 1.01%、N 0.15%、Os 0.91%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化39】

【0036】
実施例5
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物KOsO・2HO13.3mgの水溶液(3ml)に、以下の構造式
【化40】

で表されるマグネタイト(Fe)固定型四級アンモニウム塩700.2mg(0.108mmol/g)を加え、室温にて5時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、水で5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量702.3mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:2922、2853、1634、1470,1043,633、557cm−1
元素分析:C 4.03%、H 0.73%、N 0.15%、Os 0.93%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化41】

【0037】
実施例6
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物KOsO・2HO8.7mgの水溶液(3ml)に、以下の構造式
【化42】

で表される、シリカ(SiO)を被覆したマグネタイト(Fe)固定型四級アンモニウム塩254.0mg(0.197mmol/g)とアセトニトリル(0.5ml)を加え、室温にて5時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、水で5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量254.5mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:3032、2922、1595、1456、1152、1092、627、577、552cm−1
元素分析:C 11.85%、H 1.24%、N 0.24%、Os 1.70%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化43】

【0038】
実施例7
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物KOsO・2HO17.7mgの水溶液(3ml)に、以下の構造式
【化44】

で表されるマグネタイト(Fe)固定型四級アンモニウム塩1.2000g(0.085mmol/g)を加え、室温にて5時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、水で5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量1.2040g)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:3032、1597、1452、1159、1049、572cm−1
元素分析:C 11.80%、H 0.95%、N 0.12%、Os 0.67%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
【化45】

【0039】
実施例8
アルゴン雰囲気下、アセトン0.75mL、水0.75mLの混合溶液に、実施例1で得られた磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩(0.0615mmol/g)195mg、スチレン61.5mg、N−メチルモルホリンN−オキシド90.3mgを順次加え、室温にて4時間撹拌し、反応させた。
反応終了後アセトンを減圧留去し、磁石を反応容器に近づけデカンテーションした。さらに触媒を水で5回洗浄し、反応溶液を含むこれらの水溶液を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で分離、精製して以下の構造式
【化46】

で表されるジオール60.8mg(収率74.6%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Rは炭化水素基または一般式(II)
【化2】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表されるオスミウム(VI)酸塩が、当該一般式中のSiに結合する3つのR−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩。
【請求項2】
磁性ナノ粒子が、M(II)FeO[式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。]で表される組成のフェライトを主成分とすることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩。
【請求項3】
下記の一般式(III)、
【化3】

下記の一般式(IV)
【化4】

及び/又は、下記の一般式(V)
【化5】

[これらの式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Rは炭化水素基または一般式(II)
【化6】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表される四級アンモニウム塩構造を含有する、請求項2に記載のフェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩。
【請求項4】
一般式(VI)
【化7】

[式中、R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Xはハロゲン原子であり、Rは炭化水素基または一般式(II)
【化8】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表される構造を有する四級アンモニウム塩が、当該一般式中のSiに結合する3つのR−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩と、オスミウム(VI)酸カリウム K2OsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩の製造方法。
【請求項5】
磁性ナノ粒子が、M(II)Fe[式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。]で表される組成のフェライトを主成分とすることを特徴とする、請求項4に記載の、磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩の製造方法。
【請求項6】
下記の一般式(VII)、
【化9】

下記の一般式(VIII),
【化10】

及び/又は、下記の一般式(IX)
【化11】

[これらの式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。R及びRは炭化水素基である。s及びuは0以上の整数、tは0または1であり、但し、s、u、tの少なくとも1つは0ではない。Xはハロゲン原子であり、Rは炭化水素基または一般式(II)
【化12】

(式中、Rは炭化水素基、nは1以上の整数、d、e及びfのうち少なくとも2つが1、残りは0を示す)
で表される基である。]
で表される四級アンモニウム塩構造を含有する、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型四級アンモニウム塩と、オスミウム(VI)酸カリウム K2OsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項5に記載の、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩から成るジヒドロキシル化反応用触媒。

【公開番号】特開2011−201862(P2011−201862A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40484(P2011−40484)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】