説明

磁性層パターンの形成方法および薄膜磁気ヘッドの製造方法

【課題】 フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターンを安定に形成することが可能な磁性層パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】 フォトレジストパターンのうちのフレーム部の厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データに基づいて、各フレーム部104F1〜104F3の厚さに各開口部104K1〜104K3ごとに差異を設けることにより、各フレーム部104F1〜104F3の厚さが各開口部104K1〜104K3ごとに異なるようにフォトレジストパターン104を形成したのち、そのフォトレジストパターン104のうちの各開口部104K1〜104K3に選択的にめっき膜を成長させることにより複数の磁性層パターン105を形成する。一連の磁性層パターン105の形成厚さがばらつきにくくなり、すなわち一連の磁性層パターン105の形成厚さが均一化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームめっき法を使用して複数の磁性層パターンを形成する磁性層パターンの形成方法、ならびに磁性層パターンの形成方法を使用した薄膜磁気ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種製造分野において、めっき処理が広く使用されている。このめっき処理としては、例えば、フォトレジストパターンをフレーム(パターン形成用の枠)として使用して選択的にめっき膜を成長させることにより各種機能膜をパターン形成する手法が知られており、この手法は、一般的に「フレームめっき法」と呼ばれている。
【0003】
このフレームめっき法では、フォトレジスト膜を形成したのち、フォトリソグラフィ処理を使用してフォトレジスト膜をパターニングすることにより、上記したフォトレジストパターンを形成している。より具体的には、フォトレジストパターンを形成する際には、フォトレジスト膜を選択的に露光したのち、その露光済みのフォトレジスト膜を現像し、すなわちフォトレジスト膜に選択的にめっき膜を成長させるための開口部を設けることにより、フォトレジストパターンを形成している。
【0004】
このフレームめっき法を使用した製造技術としては、既にいくつかの技術例が知られている。具体的には、例えば、フレームめっき法を使用して選択的にめっき膜を成長させることにより磁性層パターンを形成する技術が知られており、詳細には、ハードディスクドライブなどの磁気記録装置に搭載される薄膜磁気ヘッドのうちの磁極層をパターン形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この薄膜磁気ヘッドの製造工程では、一般的に、ウェハ上において複数の薄膜磁気ヘッドを一括して製造しており、すなわちフレームめっき法を使用して複数の磁極層を並列的に形成している。
【特許文献1】特開2004−085615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フレームめっき法を使用して磁極層に代表される複数の磁性層パターンを並列的に形成する場合には、その複数の磁性層パターンを製造プロセス上において安定に形成するために、一連の磁性層パターンの形成厚さを可能な限り均一化する必要がある。より具体的には、フレームめっき法を使用して磁性層パターンとして複数の磁極層を並列的に形成する場合には、一連の磁極層の形成厚さがばらつくと、その磁極層の形成厚さのばらつきに起因して一連の薄膜磁気ヘッド間において記録性能がばらついてしまうため、可能な限り均一な記録性能を有するように複数の薄膜磁気ヘッドを製造する上で、可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁極層を形成することが重要である。
【0006】
しかしながら、フレームめっき法を使用した従来の磁性層パターンの形成方法では、主に、めっき処理時におけるアノード〜カソード間の電界分布などの要因に起因して、そのめっき膜の形成厚さがばらつきやすいため、可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターンを安定に形成することが困難であるという問題があった。この結果、従来の磁性層パターンの形成方法を使用して磁極層を形成した場合には、可能な限り均一な記録性能を有するように複数の薄膜磁気ヘッドを安定に製造することも困難であった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターンを安定に形成することが可能な磁性層パターンの形成方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な記録性能を有するように複数の薄膜磁気ヘッドを安定に製造することが可能な薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る磁性層パターンの形成方法は、複数の開口部を画定する複数のフレーム部を有するフォトレジストパターンを使用して、そのフォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜を成長させることにより複数の磁性層パターンを形成する方法であり、フォトレジストパターンのうちのフレーム部の厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを取得する第1の工程と、基体上に、相関データに基づいて各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設けることにより、各フレーム部の厚さが各開口部ごとに異なるようにフォトレジストパターンを形成する第2の工程と、フォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜を成長させることにより、基体上に複数の磁性層パターンを形成する第3の工程とを含むものである。
【0010】
本発明に係る磁性層パターンの形成方法では、フォトレジストパターンのうちのフレーム部の厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データが取得されたのち、その相関データに基づいて、フレームめっき法を使用して基体上に複数の磁性層パターンが形成される。具体的には、相関データに基づいて各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異が設けられることにより、基体上に各フレーム部の厚さが各開口部ごとに異なるようにフォトレジストパターンが形成されたのち、そのフォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜が成長させられることにより、基体上に複数の磁性層パターンが形成される。このフォトレジストパターンが形成される際には、例えば、めっき膜が成長させられた際に各めっき膜間の厚さの差異が解消されるように、各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異が設けられる。この場合には、例えば、めっき膜の厚さが基体の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に大きくなる傾向にある場合に、基体の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に大きくなるように各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設けたり、あるいはめっき膜の厚さが基体の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に小さくなる傾向にある場合に、基体の中心から周辺へ向かうに近づくにしたがって次第に小さくなるように各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設ければ、各フレーム部の厚さに各開口ごとに差異を設けない場合と比較して、一連の磁性層パターンの形成厚さがばらつきにくくなり、すなわち一連の磁性層パターンの形成厚さが可能な限り均一化される。
【0011】
本発明に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、磁束を発生させる薄膜コイルと、その薄膜コイルにおいて発生した磁束に基づいて記録媒体を磁化させるための磁界を発生させる磁極層とを備えた複数の薄膜磁気ヘッドを製造する方法であり、本発明に係る磁性層パターンの形成方法を使用して、基体上に複数の磁性層パターンとして複数の磁極層を形成する工程を含むものである。
【0012】
本発明に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、上記した磁性層パターンの形成方法を使用して、基体上に複数の磁性層パターンとして複数の磁極層が形成されるため、一連の磁極層の形成厚さが可能な限り均一化される結果、一連の薄膜磁気ヘッドの記録性能が可能な限り均一化される。
【0013】
なお、本発明に係る磁性層パターンの形成方法では、第2の工程が、基体上に、相関データに基づいてフォトレジストパターンを形成した際に各フレーム部の厚さが各開口部ごとに異なるように厚さに位置ごとに差異を設けることにより、その厚さが位置ごとに異なるようにフォトレジスト膜を形成する工程と、フォトリソグラフィ処理を使用してフォトレジスト膜をパターニングして、そのフォトレジスト膜に複数のフレーム部により画定された複数の開口部を設けることによりフォトレジストパターンを形成する工程とを含むようにしてもよい。この場合には、フォトレジストパターンを形成する工程において、フォトレジスト膜の厚さに位置ごとに設けられた差異に対応して、そのフォトレジスト膜の露光量に位置ごとに差異を設けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る磁性層パターンの形成方法によれば、フォトレジストパターンのうちのフレーム部の厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを取得しておき、その相関データに基づいて各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設けることにより、基体上に各フレーム部の厚さが各開口部ごとに異なるようにフォトレジストパターンを形成したのち、そのフォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜を成長させることにより基体上に複数の磁性層パターンを形成する方法的特徴に基づき、フォトレジストパターンのうちの各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設けない場合と比較して、一連の磁性層パターンの形成厚さが可能な限り均一化されるため、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターンを安定に形成することができる。
【0015】
本発明に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、上記した磁性層パターンの形成方法を使用して、基体上に複数の磁性層パターンとして複数の磁極層を形成する製法的特徴に基づき、一連の磁極層の形成厚さが可能な限り均一化される結果、一連の薄膜磁気ヘッドの記録性能が可能な限り均一化されるため、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な記録性能を有するように複数の薄膜磁気ヘッドを安定に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
まず、図1〜図8を参照して、本発明の一実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法について説明する。図1は磁性層パターンの形成方法の流れを説明し、図2〜図6は磁性層パターンの形成工程を説明し、図7は磁性層パターンの形成領域を説明し、図8は相関データを説明するためのものである。
【0018】
本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法は、図2〜図6に示したように、フレームめっき法を使用してウェハ101上に複数の磁性層パターンを形成する方法であり、特に、図7に示したように、ウェハ101上に設けられた複数の領域(領域R1〜領域R5)に複数の磁性層パターンを並列的に形成する方法である。より具体的には、磁性層パターンの形成方法は、複数の開口部104Kを画定する複数のフレーム部104Fを有するフォトレジストパターン104を使用して、そのフォトレジストパターン104のうちの各開口部104Kに選択的にめっき膜を成長させることにより、ウェハ101上に複数の磁性層パターン105を形成する方法である。なお、図2〜図6では、図7に示した複数の領域(領域R1〜領域R5)のうち、太線で囲んだ領域(領域R3,R2,R1,R2,R3)に対応する断面構成を拡大して示している。また、図7では、領域R1〜R5を識別しやすくするために、領域R1,R3,R5に淡い網掛を施していると共に、領域R2,R4に濃い網掛を施している。
【0019】
この磁性層パターンの形成方法では、まず、複数の磁性層パターン105を実質的に形成する前に、その複数の磁性層パターン105を形成するための前準備として、フォトレジストパターン104のうちのフレーム部104Fの厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを取得する(図1;ステップS101)。
【0020】
この相関データを取得する際には、フォトレジストパターン104のうちのフレーム部104Fの厚さを変化させながら、フレームめっき法を使用してフォトレジストパターン104のうちの開口部104Kにめっき膜を成長させることにより、そのめっき膜の厚さの変化を調べる。なお、フォトレジストパターン104を使用してめっき膜を成長させる工程の詳細に関しては、そのめっき膜を成長させることにより複数の磁性層パターン105を形成する工程について後述する。この相関データは、例えば、図8に示したように、「横軸」としてフレーム部104Fの厚さTFを示すと共に「縦軸」としてめっき膜の厚さTMを示すことにより、厚さTFと厚さTMとの間の関係を線分Lとして相関づけたものである。図8に示した線分Lに基づく相関から判るように、フレーム部104Fの厚さTFとめっき膜の厚さTMとの間では、一般に、フレーム部104Fの厚さTFが大きくなるにしたがってめっき膜の厚さTMが次第に小さくなり、すなわち厚さTFと厚さTMとの間には比例関係が成立する。この相関は、主に、フォトレジストパターン104を使用してめっき膜を成長させる場合に、開口部104Kを画定しているフレーム部104Fの厚さTFが大きい箇所ほど、フレーム部104Fの厚さTFが小さい箇所と比較して、その開口部104K内におけるめっき用の金属イオンの濃度が相対的に小さくなり、すなわちめっき膜の成長速度が相対的に遅くなるため、フレーム部104Fの厚さTFが小さい箇所においてめっき膜の厚さTMが相対的に小さくなる原理に基づいている。この相関によれば、フレーム部104Fの厚さTFを大きく設定することによりめっき膜の厚さTMを小さく設定することが可能であると共に、フレーム部104Fの厚さTFを小さく設定することによりめっき膜の厚さTMを大きく設定することが可能であるため、フレーム部104Fの厚さTFに基づいてめっき膜の厚さTMを制御することが可能である。もちろん、上記した相関によれば、フォトレジストパターン104のうちの各フレーム部104Fごとに厚さTFを設定することにより、各めっき膜ごとに厚さTMを設定することが可能である。
【0021】
特に、相関データを取得する際には、図8に示したように、フォトレジストパターン104を使用してめっき膜を成長させる上での基準厚さ、すなわち点Jに対応するフレーム部104Fの基準厚さTFJおよびめっき膜の基準厚さTMJを設定しておく。この基準厚さTMJは、後工程において形成される磁性層パターン105の目標形成厚さに対応するものであり、基準厚さTFJは、磁性層パターン105の目標形成厚さ(基準厚さTMJ)を実現する上でフレーム部104Fの目標厚さとなるものである。
【0022】
なお、相関データを取得する際には、例えば、その相関データの信頼性を確保するために、相関データを取得する際の条件を、後工程において実際にフォトレジストパターン104を使用してめっき膜を成長させることにより磁性層パターン105を形成する際の条件に一致させるのが好ましい。この「条件」とは、例えば、フォトレジストパターン104の仕様条件、めっき処理に使用するめっき浴の浴条件、ならびにめっき処理時の処理条件などである。フォトレジストパターン104の仕様条件としては、例えば、開口部104Kの仕様として開口面積、高さおよびアスペクト比(高さ/幅)などが挙げられる。めっき浴の浴条件としては、例えば、めっき用の金属イオンの濃度および導電率などが挙げられる。処理条件としては、例えば、攪拌速度、電流密度およびめっき浴の温度などが挙げられる。
【0023】
続いて、図2に示したように、ウェハ101を準備したのち、そのウェハ101上に、フレームめっき法を実施する際に電極膜として機能するシード層102を形成したのち、そのシード層102上に、先に取得した相関データに基づいて、後工程においてフォトレジストパターン104を形成した際に各フレーム104Fの厚さが各開口部104Kごとに異なるように厚さに位置ごとに差異を設けることにより、その厚さが位置ごとに異なるようにフォトレジスト膜103を形成する(図1;ステップS102)。なお、ウェハ101は、磁性層パターン105を形成するための基体であり、そのウェハ101としては、例えば、シリコン(Si)製の基板を使用する。
【0024】
シード層102を形成する際には、例えば、スパッタリングを使用して磁性材料や非磁性材料を成膜すると共に、図2に示したように、領域R1〜R3の全ての領域においてウェハ101を被覆するようにする。なお、シード層102の形成材料や形成厚さは、例えば、成膜精度や磁性層パターン105の形成材料との相性等に基づいて適宜設定可能である。
【0025】
フォトレジスト膜103を形成する際には、例えば、シード層102の表面にフォトレジストを塗布して膜化させたのち、その被膜を加熱(焼成)することにより定着させる。
【0026】
このフォトレジスト膜103を形成する際には、上記したように、相関データに基づいて意図的に厚さに領域R1〜R3ごとに差異を設けるようにし、具体的には、例えば、めっき膜の厚さがウェハ101の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に大きくなる傾向にある場合には、フォトレジスト膜103の厚さがウェハ101の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に大きくなるようにする。この「めっき膜の厚さがウェハ101の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に大きくなる」とは、図7を参照すると、フレームめっき法を使用してウェハ101上の領域R1〜R5にめっき膜を成長させた場合に、めっき処理用の装置の構造的要因やめっき処理時におけるアノード〜カソード間の電界分布などの要因に起因して、めっき膜の厚さが領域R1において最も小さくなると共に、そのめっき膜の厚さが領域R1の周囲に同心円状に設けられた領域R2〜R5において領域R1から離れるにしたがって次第に大きくなるように分布する、という意味である。これに伴い、図2に示したように、領域R1〜R3におけるフォトレジスト膜103の厚さをそれぞれT1,T2,T3とした場合に、厚さT1,T2,T3がこの順に大きくなるようにフォトレジスト膜103を形成する(T1<T2<T3)。
【0027】
特に、フォトレジスト膜103を形成する際には、後工程においてウェハ101上の領域R1〜R3にめっき膜を成長させた際に各めっき膜の厚さの差異が解消されるように、厚さT1〜T3に差異を設ける。なお、「各めっき膜の厚さの差異を解消する」とは、必ずしも各めっき膜の厚さの差異(各めっき膜間の厚さのずれ)をゼロにする場合に限らず、各めっき膜の厚さの差異を所望の範囲内において小さくする場合も含む意である。
【0028】
この「各めっき膜の厚さの差異が解消されるように、フォトレジスト膜103の厚さT1〜T3に差異を設ける」ための具体的な手順は、例えば、以下の通りである。すなわち、まず、厚さT1〜T3に差異を設けたフォトレジスト膜103を形成する前に、厚さT1〜T3に差異を設けない前準備用のフォトレジスト膜(図示せず)として、全体に渡って上記した基準厚さTFJを有するフォトレジスト膜を形成したのち、フォトリソグラフィ処理を使用して前準備用のフォトレジスト膜をパターニングすることにより、複数の開口部を有する前準備用のフォトレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、前準備用のフォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜を成長させることにより、上記したようにめっき膜の厚さが領域R1〜R3においてこの順に大きくなり、より具体的には領域R1においてめっき膜の厚さが上記した基準厚さTMJに一致する一方で、領域R2,R3においてめっき膜の厚さが基準厚さTMJよりも大きくなった場合に、それらの領域R2,R3におけるめっき膜の実測厚さの基準厚さTMJに対するずれ量(ずれ厚さ=実測厚さ−基準厚さTMJ)を算出する。最後に、相関データ、すなわちフレーム部104Fの厚さ(ここではフォトレジスト膜103の厚さ)とめっき膜の厚さとの間の相関を参照しながら、先に算出しためっき膜のずれ厚さが解消されるように厚さT1〜T3を設定することにより、フォトレジスト膜103を形成する。ここでは、例えば、上記したように、領域R1においてめっき膜の厚さが基準厚さTMJに一致する一方で、領域R2,R3においてめっき膜の厚さが基準厚さTMJよりも大きくなっているため、フォトレジスト膜103の厚さT1を基準厚さTFJに一致させたまま(T1=TFJ)、フォトレジスト膜13の厚さT2,T3を基準厚さTFJよりも大きくする(T2,T3>TFJ,T1<T2<T3)。
【0029】
なお、フォトレジスト膜103の厚さを領域R1〜R3ごとに異ならせる方法は、例えば、以下の通りである。第1に、例えば、スピンコータを使用してフォトレジストをコーティングすることによりフォトレジスト膜103を形成する場合に、塗布用カップ内の排気量(排気時間)を調整する方法が挙げられる。この場合には、排気量を大きくすると、ウェハ101の中心よりも周辺においてフォトレジストが乾燥しやすくなるため、そのウェハ101上の領域R1から領域R5へ向かってフォトレジスト膜103の厚さが次第に大きくなり、一方、排気量を小さくすると、ウェハ101の周辺よりも中心においてフォトレジストが滞留しやすくなるため、そのウェハ101上の領域R1から領域R5へ向かってフォトレジスト膜103の厚さが次第に小さくなる。また、第2に、例えば、ウェハ101の中心と周辺との間でスキャンしながらフォトレジストを供給することによりフォトレジスト膜13を形成する場合に、そのフォトレジストの供給量を調整する方法が挙げられる。この場合には、ウェハ101の中心よりも周辺においてフォトレジストの供給量を多くすると、そのウェハ101上の領域R1から領域R5へ向かってフォトレジスト膜103の厚さが次第に大きくなり、一方、ウェハ101の中心よりも周辺においてフォトレジストの供給量を少なくすると、ウェハ101上の領域R1から領域R5へ向かってフォトレジスト膜103の厚さが次第に小さくなる。
【0030】
続いて、フォトリソグラフィ処理を使用してフォトレジスト膜103をパターニングして、そのフォトレジスト膜103に複数のフレーム部104Fにより画定された複数の開口部104Kを設けることにより、図3に示したように、フォトレジストパターン104を形成する(図1;ステップS103)。このフォトレジストパターン104は、上記したように、相関データに基づいて厚さに位置ごとに差異を設けることにより、その厚さが位置ごとに異なるようにフォトレジスト膜103を形成したことに伴い、相関データに基づいて各フレーム部104Fの厚さに各開口部104Kごとに差異が設けられることにより、各フレーム部104Fの厚さが各開口部104Kごとに異なるように形成される。
【0031】
フォトレジストパターン104を形成する際には、露光用のマスク(図示せず)を使用してフォトレジスト膜103を選択的に露光したのち、現像液を使用してフォトレジスト膜103を露光し、すなわちフォトレジスト膜103のうちの露光箇所を選択的に除去することにより、その除去箇所が周辺のフレーム部104Fにより開口部104Kとして画定されるようにする。これにより、図3に示したように、フォトレジストパターン104に設けられたフレーム部104Fにより画定された開口部104Kとして、領域R1,R2間を区切るように設けられたフレーム部104F1により領域R1において開口部104K1が画定され、領域R2,R3間を区切るように設けられたフレーム部104F1,104F2により領域R2において開口部104K2が画定され、領域R3およびその周辺(図3では図示していない領域R4)を区切るように設けられたフレーム部104F2,104F3により領域R3において開口部104K3が画定される。
【0032】
このフォトレジストパターン104を形成するためにフォトレジスト膜103を露光する際には、例えば、図2に示したように、フォトレジスト膜103の厚さが位置ごとに異なる場合においても、そのフォトレジスト膜103を十分に露光することにより開口部104K(104K1〜104K3)を確実に形成可能とするために、フォトレジスト膜103の厚さに位置ごとに設けられた差異に対応して、そのフォトレジスト膜103の露光量に位置ごとに差異を設けるのが好ましい。具体的には、例えば、フォトレジスト膜103の厚さT1〜T3がこの順に大きくなっている場合には、そのフォトレジスト膜103の露光量を領域R1〜R3の順に大きくなるように調整するのが好ましい。
【0033】
なお、上記したフォトレジストパターン104のうちのフレーム部104Fの厚さ、すなわち相関データ中においてめっき膜の厚さと相関づけられるフレーム部104F1〜104F3の厚さとは、正確には、開口部104K1〜104K3を画定しているフレーム部104F1〜104F3の内壁面のうち、各開口部104K1〜104K3ごとに最も大きな高さを有する内壁面の高さに基づいて規定されるフレーム部104F1〜104F3の厚さである。具体的には、図3に示したように、領域R1における厚さT1とは、開口部104K1を画定しているフレーム部104F1の内壁面の高さに基づいて規定される厚さであり、領域R2における厚さT2とは、開口部104K2を画定しているフレーム部104F1,104F2のうち、より大きな高さを有するフレーム部104F2の内壁面の高さに基づいて規定される厚さであり、領域R3における厚さT3とは、開口部104K3を画定しているフレーム部104F2,104F3のうち、より大きな高さを有するフレーム部104F3の内壁面の高さに基づいて規定される厚さである。
【0034】
続いて、先工程において形成したシード層102を電極膜として使用して、フォトレジストパターン104のうちの各開口部104Kに選択的にめっき膜を成長させることにより、図4に示したように、複数の磁性層パターン105を形成する(図1;ステップS104)。具体的には、シード層102を共用してめっき膜を成長させることにより、フォトレジストパターン104に設けられた開口部104K1〜104K3に、それぞれ磁性層パターン105を形成する。
【0035】
続いて、図5に示したように、使用済みのフォトレジストパターン104を除去することにより(図1;ステップS105)、一連の磁性層パターン105の周辺にシード層102を露出させる。
【0036】
最後に、例えばイオンミリングなどのドライエッチング処理を使用して、一連の磁性層パターン15をマスクとして使用済みのシード層102を選択的にエッチングする。このエッチング処理により、図6に示したように、一連の磁性層パターン105の周辺に露出していたシード層102が選択的に除去される。これにより、ウェハ101上に複数の磁性層パターン105が形成されるため、その磁性層パターン105の形成工程が完了する。
【0037】
なお、上記では、図7に示したウェハ101上の領域R1〜R5のうち、領域R1〜R3のみを抜粋して図2〜図6に示すことにより、それらの図2〜図6を参照しながら領域R1〜R3に複数の磁性層パターン105を形成する場合に関して言及したが、領域R1〜R3以外の他の領域R4、R5に複数の磁性層パターン105を形成する工程内容は、領域R1〜R3に磁性層パターン15を形成する工程内容と同様であり、すなわち領域R1〜R3に複数の磁性層パターン105が形成される際に、領域R4,R5にも同様に複数の磁性層パターン105が形成される。
【0038】
本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法では、フォトレジストパターン104のうちのフレーム部104Fの厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを取得しておき、その相関データに基づいて各フレーム部104F(104F1〜104F3)の厚さに各開口部104K(104K1〜104K3)ごとに差異を設けることにより、ウェハ101上に各フレーム部104Fの厚さが各開口部104Kごとに異なるようにフォトレジストパターン104を形成したのち、そのフォトレジストパターン104のうちの各開口部104Kに選択的にめっき膜を成長させることにより、ウェハ101上に複数の磁性層パターン105を形成するようにしたので、以下の理由により、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターン105を安定に形成することができる。
【0039】
図9〜図12は、本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法に対する比較例としての磁性層パターンの形成方法を説明するためのものであり、それぞれ図2〜図5に対応している。この比較例の磁性層パターンの形成方法は、図9〜図12に示したように、フォトレジスト膜103およびフォトレジストパターン104(フレーム部104F(104F1〜104F3),開口部104K(104K1〜104K3))にそれぞれ対応するフォトレジスト膜203およびフォトレジストパターン204(フレーム部204F(204F1〜204F3),開口部204K(204K1〜204K3))を使用して、複数の磁性層パターン105に対応する複数の磁性層パターン205を形成する方法であり、より具体的には、各フレーム部104Fの厚さが各開口部104Kごとに異なるようにフォトレジストパターン104を形成する本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法とは異なり、各フレーム部204Fの厚さが各開口部204Kごとに等しくなるようにフォトレジストパターン204を形成する点を除き、本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法と同様の手順を経るものである。詳細には、比較例の磁性層パターンの形成方法では、ウェハ101上に、厚さT1〜T3が領域R1〜R3間において等しくなるようにフォトレジスト膜203を形成し(図9参照)、引き続きフォトリソグラフィ処理を使用してフォトレジスト膜203をパターニングすることにより、各フレーム部204F1〜204F3の厚さが各開口部204K1〜204K3ごとに等しくなるようにフォトレジストパターン204を形成したのち(図10参照)、そのフォトレジストパターン204のうちの各開口部204K1〜204K3に選択的にめっき膜を成長させることにより、複数の磁性層パターン205を形成している(図11および図12参照)。
【0040】
比較例の磁性層パターンの形成方法では、図10に示したように、各フレーム部204F1〜204F3の厚さが各開口部204K1〜204K3ことに等しくなるようにフォトレジストパターン204を形成しているため、そのフォトレジストパターン204のうちの各開口部204K1〜204K3に選択的にめっき膜を成長させることにより複数の磁性層パターン205を形成すると、図11に示したように、一連の磁性層パターン205の形成厚さがばらつきやすくなる。この場合には、例えば、ウェハ101の中心よりも周辺においてめっき処理の電流密度が高くなることに起因して、そのウェハ101の中心よりも周辺においてめっき膜の成長速度が相対的に大きくなるため、一連の磁性層パターン205の形成厚さが領域R1〜R3の順に大きくなる。この一連の磁性層パターン205の形成厚さのばらつきは、その磁性層パターン205の目標形成厚さが小さいほど顕著になる。これにより、比較例の磁性層パターンの形成方法では、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターン205を安定に形成することが困難である。
【0041】
これに対して、本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法では、図3に示したように、各フレーム部104F1〜104F3の厚さが各開口部104K1〜104K3ごとに異なるようにフォトレジストパターン104を形成しているため、そのフォトレジストパターン104のうちの各開口部104K1〜104K3に選択的にめっき膜を成長させることにより複数の磁性層パターン105を形成すると、図4に示したように、一連の磁性層パターン105の形成厚さがばらつきにくくなり、すなわち一連の磁性層パターン105の形成厚さが均一化される。この各磁性層パターン105の形成厚さの均一化は、上記したように、開口部104Kを画定しているフレーム部104Fの厚さが大きいほど、めっき膜の成長速度が相対的に遅くなる原理に基づいている。しかも、この場合には、あらかじめフォトレジストパターン104のうちのフレーム部104Fの厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを取得しておき、その相関データに基づいて各めっき膜間の厚さの差異が解消されるように各フレーム部104Fの厚さを設定しながらフォトレジストパターン104を形成することにより、一連の磁性層パターン105の形成厚さが高精度に均一化される。もちろん、上記した一連の磁性層パターン105の形成厚さの均一化は、その磁性層パターン105の目標形成厚さが小さい場合においても同様に得られる。したがって、本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法では、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターン105を安定に形成することができるのである。
【0042】
特に、本実施の形態では、上記したように一連の磁性層パターン105の形成厚さが均一化されることに基づき、以下の観点においても、やはりフレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターン105を安定に形成することができる。
【0043】
すなわち、比較例の磁性層パターンの形成方法では、図12に示したように、一連の磁性層パターン205の形成厚さがばらついた場合に、その一連の磁性層パターン205の形成厚さのばらつきを改善するためには、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing )法を使用して一連の磁性層パターン205を厚さ方向(Z軸方向)に研磨することにより平坦化すればよい。しかしながら、この場合には、CMP法の機械的研磨作用に基づいて、上記した形成厚さのばらつきが解消されるように各磁性層パターン205が研磨される一方で、そのCMP法の化学的研磨作用に基づいて、研磨前のばらついた厚さ分布を反映するように各磁性層パターン205が研磨されるため、一連の磁性層パターン205の形成厚さのばらつきは小さくなるものの、その一連の磁性層パターン205の形成厚さのばらつきは十分に解消されるまでには至らない。これにより、比較例の磁性層パターンの形成方法を使用した場合には、CMP法の研磨処理を併せて使用したとしても、やはりフレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターン205を安定に形成することが困難である。
【0044】
これに対して、本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法では、図5に示したように、一連の磁性層パターン105の形成厚さが均一化されるため、フレームめっき法を使用して複数の磁性層パターン105を形成することにより、CMP法などの研磨処理を使用せずに一連の磁性層パターン105の形成厚さを均一化することが可能である。もちろん、この場合には、例えば、一連の磁性層パターン105の形成厚さを調整する必要が生じたために、CMP法を使用して一連の磁性層パターン105を研磨したとしても、研磨前の均一な厚さ分布を再現するように各磁性層パターン105が研磨されるため、研磨後の一連の磁性層パターン105の厚さはやはり均一化される。したがって、この観点においても、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターン105を安定に形成することができるのである。
【0045】
ここで、本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法に関する技術的意義について補足しておく。すなわち、本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法では、上記したように、フォトレジストパターン104のうちの各フレーム部104Fの厚さに各開口部104Kごとに差異を設けているが、この「各フレーム部104Fの厚さの差異」は、一般的な形成手順を経ることにより複数の開口部を有するフォトレジストパターンを形成した際に、そのフォトレジストパターンのうちの各フレーム部間に生じる厚さのばらつきとは、明らかに異なるものである。なぜなら、本実施の形態における「各フレーム部104Fの厚さの差異」とは、複数の磁性層パターン105の形成厚さを均一化することを目的として、あらかじめ取得しておいた相関データに基づいて各めっき膜間の厚さが解消されるように設定された「意図的な厚さのばらつき」であり、一般的な形成手順を経ることにより各フレーム部が互いに等しい厚さとなるようにフォトレジストパターンを形成したにもかかわらず、フォトレジストの流動状態のばらつき等の要因に起因して意図せずに各フレーム部間に生じた「偶発的な厚さのばらつき」とは、技術論理上において明らかに異なるからである。
【0046】
なお、確認までに説明しておくと、本実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法では、フォトレジストパターン104のうちの各フレーム部104Fの厚さに差異を設ける上で、「各フレーム部104Fの厚さに各開口部104Kごとに差異を設ける」と説明しているが、この説明の意図するところは、必ずしも各フレーム部104Fの厚さが各開口部104Kごとに異なる厚さを有している(いかなる2つ以上のフレーム部104Fも互いに等しい厚さを有していない)という意味に限定されるわけではなく、最終的に一連の磁性層パターン105の形成厚さを均一化させることが可能な限りにおいて、複数のフレーム部104Fのうちの一部(2つ以上)のフレーム部104Fが互いに等しい厚さを有していてもよいという意味も含んでいる。
【0047】
なお、本実施の形態では、めっき膜の厚さがウェハ101の中心から周辺へ向かって次第に大きくなる傾向にある場合に、図2に示したように、相関データに基づいてフォトレジスト膜103の厚さT1〜T3がウェハ101の中心から周辺へ向かって次第に大きくなるようにすることにより(T1<T2<T3)、図3に示したように、各フレーム部104F1〜104F3の厚さがウェハ101の中心から周辺へ向かって次第に大きくなるようにフォトレジストパターン104を形成したが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、めっき膜の厚さがウェハ101の中心から周辺へ向かって次第に小さくなる傾向にある場合には、図13に示したように、相関データに基づいてフォトレジスト膜103の厚さT1〜T3がウェハ101の中心から周辺へ向かって次第に小さくなるようにすることにより(T1>T2>T3)、図14に示したように、各フレーム部104F1〜104F3の厚さがウェハ101の中心から周辺へ向かって次第に小さくなるようにフォトレジストパターン104を形成してもよい。この場合には、例えば、フォトトレジスト膜103を十分に露光することにより開口部104K(104K1〜104K3)を確実に形成可能とするために、そのフォトレジスト膜103の露光量を領域R1〜R3の順に小さくなるように調整するのが好ましい。この場合においても、各フレーム部104F1〜104F3の厚さがウェハ101の中心から周辺へ向かって次第に大きくなるようにフォトレジストパターン104を形成した場合と同様の作用に基づき、図15に示したように、フォトレジストパターン104を使用して複数の磁性層パターン105を形成することにより、各フレーム部104F間の厚さの差異に基づいて一連の磁性層パターン105の形成厚さが均一化されるため、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターン105を安定に形成することができる。
【0048】
以上をもって、本発明の一実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法についての説明を終了する。
【0049】
次に、図16〜図23を参照して、本発明の磁性層パターンの形成方法を使用した薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。図16および図17は薄膜磁気ヘッドの製造方法を使用して製造される薄膜磁気ヘッドの構成を表しており、図18〜図23は薄膜磁気ヘッドの製造工程を説明するためのものである。図16のうち、(A)はエアベアリング面に平行な断面構成(XZ面に沿った断面構成)を示し、(B)はエアベアリング面に垂直な断面構成(YZ面に沿った断面構成)を示している。図17は、図16に示した薄膜磁気ヘッドのうちの主要部の斜視構成を示している。図18〜図23は、図16(A)に示した薄膜磁気ヘッドのうちの主要部の断面構成を拡大して示している。
【0050】
ここでは、まず、薄膜磁気ヘッドの製造方法を説明する前に、図16および図17を参照して、薄膜磁気ヘッドの製造方法を使用して製造される薄膜磁気ヘッドの構成について簡単に説明する。
【0051】
この薄膜磁気ヘッドは、例えば、媒体進行方向Mに移動するハードディスクなどの磁気記録媒体(以下、単に「記録媒体」という。)に磁気的処理を施すために、ハードディスクドライブなどの磁気記録装置に搭載されるものであり、磁気的処理として記録処理および再生処理の双方を実行可能な複合型の薄膜磁気ヘッドである。具体的には、薄膜磁気ヘッドは、例えばアルティック(Al2 3 ・TiC)などのセラミック材料により構成された基板1上に、例えば酸化アルミニウム(Al2 3 ;以下、単に「アルミナ」という)などの非磁性絶縁性材料により構成された絶縁層2と、磁気抵抗(MR;Magneto-resistive )効果を利用して再生処理を実行する再生ヘッド部100Aと、例えばアルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成された分離層7と、垂直記録方式の記録処理を実行する記録ヘッド部100Bと、例えばアルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されたオーバーコート層13とがこの順に積層された構成を有している。
【0052】
再生ヘッド部100Aは、例えば、下部リードシールド層3と、シールドギャップ膜4と、上部リードシールド層5とがこの順に積層された構成を有している。このシールドギャップ膜4には、記録媒体に対向する記録媒体対向面(エアベアリング面)20に一端面が露出するように、再生素子としてのMR素子6が埋設されている。
【0053】
下部リードシールド層3および上部リードシールド層5は、いずれもMR素子6を周囲から磁気的に分離するものであり、例えば、いずれもニッケル鉄合金(NiFe(例えばNi:80重量%,Fe:20重量%);以下、単に「パーマロイ(商品名)」という。)などの磁性材料により構成されている。シールドギャップ膜4は、MR素子6を周囲から電気的に分離するものであり、例えば、アルミナなどの非磁性絶縁性材料により構成されている。MR素子6は、例えば、巨大磁気抵抗(GMR;Giant Magneto-resistive )効果またはトンネル磁気抵抗(TMR;Tunneling Magneto-resistive )効果などを利用して再生処理を実行するものである。
【0054】
記録ヘッド部100Bは、例えば、補助磁極層8と、薄膜コイル10が埋設されたギャップ層9およびギャップ層9に設けられた開口9CKに設けられた連結部11と、その連結部11を介して補助磁極層8に磁気的に連結された主磁極層12とがこの順に積層された構成を有している。なお、図17では、主に、主磁極層12の斜視構成を表している。
【0055】
補助磁極層8は、主磁極層12から放出された磁束を記録媒体を経由して環流させるものであり、例えば、パーマロイなどの磁性材料により構成されている。ギャップ層9は、補助磁極層8上に配設され、開口9AKが設けられたギャップ層部分9Aと、このギャップ層部分9A上に配設され、薄膜コイル10の各巻線間よびその周辺領域を被覆するギャップ層部分9Bと、ギャップ層部分9A,9Bを被覆するように配設され、開口9CKが設けられたギャップ層部分9Cとを含んで構成されている。ギャップ層部分9A,9Cは、例えば、アルミナやシリコン酸化物(SiO2 )などの非磁性絶縁性材料により構成されており、ギャップ層部分9Bは、例えば、加熱されることにより流動性を示すフォトレジスト(感光性樹脂)やスピンオングラス(SOG;Spin On Glass )などの非磁性絶縁性材料により構成されている。薄膜コイル10は、記録用の磁束を発生させるものであり、例えば、連結部11を中心としてスパイラル状に巻回された巻線構造を有するように、銅(Cu)などの導電性材料により構成されている。連結部11は、補助磁極層8と主磁極層12との間を磁気的に連結させるためのものであり、例えばパーマロイなどの磁性材料により構成されている。主磁極層12は、薄膜コイル10において発生した記録用の磁束を収容して記録媒体へ向けて放出することにより、その磁束に基づいて記録媒体を磁化させるための磁界(記録磁界)を発生させるものであり、エアベアリング面20から後方に向かって延在している。この主磁極層12は、例えば、ギャップ層部分9Cのうちの前方部分上に配設された磁極部分層12Aと、この磁極部分層12Aの後方部分を周囲から覆うように配設されたヨーク部分層12Bとを含んで構成されている。
【0056】
なお、主磁極層12を構成している磁極部分層12Aおよびヨーク部分層12Bの詳細な構成は、例えば、以下の通りである。すなわち、磁極部分層12Aは、磁束の放出部分として機能するものであり、例えば、パーマロイ、鉄系合金(FeM)または鉄コバルト系合金(FeCoM)などの磁性材料により構成されている。この鉄系合金としては、例えば、窒化鉄(FeN)や鉄コバルト合金(FeCo)などが挙げられ、鉄コバルト系鉄合金としては、例えば、鉄コバルトニッケル合金(FeCoNi)や鉄コバルトジルコニウム合金(FeCoZr)などが挙げられる。この磁極部分層12Aは、例えば、エアベアリング面20側から順に、実質的な磁束の放出部分として機能し、記録媒体の記録トラック幅を規定する一定幅Wを有する先端部12A1と、この先端部12A1の後方に磁気的に連結された後端部12A2とを含んで構成されている。この後端部12A2の幅は、例えば、後方において一定(先端部12A1の幅Wよりも大きな一定幅)であり、前方において先端部12A1に向かって次第に狭まっている。一方、ヨーク部分層12Bは、磁束の収容部分として機能するものであり、例えば、磁極部分層12Aの構成材料と同様の磁性材料により構成されている。このヨーク部分層12Bは、エアベアリング面20に露出しておらず、例えば、エアベアリング面20から約1.5μm以上後退している。
【0057】
続いて、図18〜図23を参照して、図16および図17に示した薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。以下では、まず、図16および図17を参照して薄膜磁気ヘッド全体の製造工程の概略について説明したのち、図18〜図23を参照して本発明の磁性層パターンの形成方法、すなわちフレームめっき法を使用して磁性層パターンとして磁極部分層12Aを形成する工程について詳細に説明する。なお、薄膜磁気ヘッドを構成する一連の構成要素の材質、寸法および構造的特徴に関しては既に詳述したので、その説明を随時書略する。特に、磁極部分層12Aを形成する工程について説明する場合には、本発明の磁性層パターンの形成方法の詳細に関しては既に詳述したので、ここでは説明を簡略化するために、上記した磁性層パターンの形成方法の詳細な手順については随時省略した上で、図7に示した複数の領域(領域R1〜R5)のうちの任意の1つの領域に磁性層パターンとして磁極部分層12Aを1つだけ形成する場合について言及する。
【0058】
この薄膜磁気ヘッドは、主に、めっき処理やスパッタリングに代表される成膜技術、フォトリソグラフィ処理に代表されるパターニング技術、ならびにドライエッチングやウェットエッチングに代表されるエッチング技術などを含む既存の薄膜プロセスを使用して、各構成要素を順次形成して積層させることにより製造される。特に、薄膜磁気ヘッドが製造される際には、ウェハ101上の複数の領域(領域R1〜R5)に複数の磁性層パターン105を並列的に形成した上記実施の形態(図2〜図7参照)と同様に、そのウェハ101に対応する基板1上の複数の領域(領域R1〜R5)に各構成要素が順次形成されて積層されることにより、複数の薄膜磁気ヘッドが並列的に製造される。
【0059】
薄膜磁気ヘッドを製造する際には、図16および図17に示したように、まず、基板1上に絶縁層2を形成したのち、その絶縁層2上に、下部リードシールド層3と、MR素子6が埋設されたシールドギャップ膜4と、上部リードシールド層5とをこの順に形成して積層させることにより、再生ヘッド部100Aを形成する。続いて、再生ヘッド部100A上に分離層7を形成したのち、その分離層7上に、補助磁極層8と、薄膜コイル10が埋設されたギャップ層9(ギャップ層部分9A,9B,9C)および連結部11と、主磁極層12(磁極部分層12A,ヨーク部分層12B)とをこの順に形成することにより、記録ヘッド部100Bを形成する。最後に、記録ヘッド部100B上にオーバーコート層13を形成したのち、機械加工や研磨加工を使用してエアベアリング面20を形成することにより、薄膜磁気ヘッドが完成する。
【0060】
フレームめっき法を使用して磁極部分層12Aを形成する際には、ギャップ層9(ギャップ層部分9C)を形成したのち、まず、図18に示したように、例えばスパッタリングを使用して、ギャップ層9上に磁性材料や非磁性材料を成膜することにより、電極膜としてシード層31を形成する。なお、図16では、シード層31の図示を省略している。続いて、シード層31の表面にフォトレジストを塗布することによりフォトレジスト膜を形成したのち、フォトリソグラフィ処理を使用してフォトレジスト膜をパターニングすることにより、フレーム部32Fにより画定された開口部32Kを有するようにフォトレジストパターン32を形成する。このフォトレジストパターン32を形成する際には、開口部32Kの開口パターンが、後工程において形成される磁極部分層12Aのパターン形状に対応すると共に、その開口部32Kのうちの先端部12A1に対応する箇所の開口幅が、その先端部12A1の幅Wに対応するようにする。
【0061】
続いて、図18に示したように、フレームめっき法を使用して磁極部分層12Aを形成する。具体的には、先工程において形成したシード層31を電極膜として使用して、フォトレジストパターン32のうちの開口部32Kに選択的にめっき膜を成長させることにより、その開口部32Kに磁極部分層12Aを形成する。この磁極部分層12Aが形成される際には、フレーム部32Fにより画定された開口部32Kにおいてめっき膜が成長すると共に、そのフレーム部32Fの周辺においても同様にめっき膜が成長するため、開口部32Kに磁極部分層12Aが形成されると共に、フレーム部32Fの周辺にダミー層12AXも併せて形成される。このダミー層12AXは、フレームめっき法のプロセス的要因に起因して磁極部分層12Aと共に形成されるものであり、後工程において除去されるものである。
【0062】
続いて、図19に示したように、使用済みのフォトレジストパターン32を除去することにより、磁極部分層12Aおよびダミー層12AXの周辺にシード層31を露出させる。
【0063】
続いて、例えばイオンミリングなどのドライエッチング処理を使用して、磁極部分層12Aおよびダミー層12AXをマスクとして使用済みのシード層31を選択的にエッチングすることにより、図20に示したように、磁極部分層12Aおよびダミー層12AXの周辺に露出していたシード層31を選択的に除去する。これにより、磁極部分層12Aおよびダミー層12AXの周辺にギャップ層9が露出する。
【0064】
続いて、磁極部分層12Aを覆うようにフォトレジスト膜を形成したのち、フォトリソグラフィ処理を使用してフォトレジスト膜をパターニングすることにより、図21に示したように、磁極部分層12Aおよびその周辺のギャップ層9を被覆するようにマスク33をパターン形成する。このマスク33を形成する際には、磁極部分層12Aのみを被覆する一方で、ダミー層12AXを露出させるようにする。
【0065】
続いて、例えばウェットエッチングを使用して全体にエッチング処理を施すことにより、図22に示したように、マスク33により覆われていなかったダミー層12AXと共にシード層31を併せて選択的に除去する。
【0066】
最後に、図23に示したように、使用済みのマスク33を除去することにより、ギャップ層9上に磁極部分層12Aのみを残存させる。これにより、フレームめっき法を使用した磁極部分層12Aの形成工程が完了する。
【0067】
この薄膜磁気ヘッドの製造方法では、上記実施の形態において説明した磁性層パターンの形成方法を使用して、その磁性層パターンとして磁極部分層12Aを形成するようにしたので、複数の磁極部分層12Aを形成すれば、上記実施の形態において複数の磁性層パターン105を形成した場合と同様の作用により、一連の磁極部分層12Aの形成厚さが可能な限り均一化される結果、一連の薄膜磁気ヘッドの記録性能が可能な限り均一化される。したがって、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な記録性能を有するように複数の薄膜磁気ヘッドを安定に製造することができる。
【0068】
特に、上記では、本発明の磁性層パターンの形成方法を使用して、可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁極部分層12Aを安定に形成することが可能である点に言及したが、必ずしもこれに限られるものではなく、本発明の磁性層パターンの形成方法を使用して磁極部分層12A以外の他の構成要素、具体的には薄膜コイル10やヨーク部分層12Bなどを形成すれば、それらの他の構成要素も可能な限り均一な厚さとなるように形成することが可能である。したがって、この観点においても、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な記録性能を有するように複数の薄膜磁気ヘッドを安定に製造することができる。
【0069】
なお、上記では、本発明の磁性層パターンの形成方法を複合型の薄膜磁気ヘッドの製造方法に適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、書き込み用の誘導型磁気変換素子を有する記録専用の薄膜磁気ヘッドの製造方法や、記録・再生兼用の誘導型磁気変換素子を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法に適用することも可能である。もちろん、本発明の磁性層パターンの形成方法を、書き込み用の素子および読み出し用の素子の積層順序を逆転させた構造を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法に適用することも可能である。
【0070】
また、上記では、本発明の磁性層パターンの形成方法を垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの製造方法に適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、長手記録方式の薄膜磁気ヘッドの製造方法に適用することも可能である。
【実施例】
【0071】
次に、本発明に関する実施例について説明する。
【0072】
上記実施の形態において説明した磁性層パターンの形成方法を使用して複数の磁性層パターンを形成したところ、以下の一連の結果が得られた。
【0073】
まず、磁性層パターンを形成するための前準備として、フォトレジストパターンのうちのフレーム部の厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを調べたところ、図24に示した結果が得られた。図24は相関データを表しており、「横軸」はフレーム部の厚さTF(nm)を示し、「縦軸」はめっき膜の厚さTM(nm)を示している。
【0074】
相関データを調べる際には、以下の手順により、フレームめっき法を使用して試験的に複数の磁性層パターンを形成した。すなわち、まず、アルティック製のウェハ(直径=15.24cm(=6インチ),厚さ=2mm)上に、シード層としてパーマロイ(NiFe;50nm厚)/チタン(Ti;5nm厚)の積層膜を形成した。続いて、シード層の表面にフォトレジスト(クラリアントジャパン株式会社製AZ5105P )を塗布することによりフォトレジスト膜を形成したのち、そのフォトレジスト膜に加熱処理(加熱温度=90℃、加熱時間=90秒間)を施した。続いて、フォトリソグラフィ処理を使用してフォトレジスト膜をパターニングすることにより、複数のフレーム部により画定された複数のスリット状(所定の長さを有する線状)の開口部(開口部の直径=300nm)を有するようにフォトレジストパターン(1000nm厚)を形成した。このフォトレジストパターンを形成する際には、露光装置としてNikon 社製のNSR-TFHEX14Cを使用し、露光条件として光学系開口数NAl(NA;Numerical Aperture)=0.6、照明系開口数NAi=0.24、レンズ系開口数σ=0.4、露光量=15mJ/cm2 とすると共に、現像手順として、現像処理前にフォトレジスト膜に加熱処理(加熱温度=120℃、加熱時間=120秒間)を施したのち、現像液としてTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロキシド)2.38%水溶液を使用して現像処理(現像時間=60秒間)を行った。続いて、めっき浴としてワット浴に鉄イオンを添加したパーマロイ浴を使用して、フォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜を成長させることにより複数の磁性層パターンを形成したのち、使用済みのフォトレジストパターンを除去した。この磁性層パターンを形成する際には、パーマロイ浴の浴条件として、硫酸ニッケル濃度=300g/L(リットル),塩化ニッケル濃度=50g/L,硫化第一鉄濃度=15g/L,ホウ酸濃度=40g/L,界面活性剤等の添加剤=少量,pH=3.5,温度=60℃,陰極電流密度=1.5A/dm2 とすると共に、めっき処理時の処理手順として、カソードに対して平行に配置させたパーマロイ製のアノード(直径=15.24cm(=6インチ))を使用し、極間距離=100mmとした。なお、相関データを調べる際には、フレームめっき法を使用してめっき膜を成長させる際の基準として、フレーム部の厚さTF=1000nmのときにめっき膜の厚さTM=750nmとなるように電流値および処理時間を調整し、すなわち基準厚さTFJ=1000nm,基準厚さTMJ=750nmとした。
【0075】
図24に示した結果から判るように、フレーム部の厚さTFが大きくなるにしたがってめっき膜の厚さTMが次第に小さくなり、すなわち厚さTFと厚さTMとの間にほぼ比例関係が成立するような相関データが得られた。具体的には、図24に示した相関データから明らかなように、フレーム部の厚さTFを950nm〜1050nmの範囲内において変化させたところ、めっき膜の厚さTMが713nm〜790nmの範囲内において変化した。このことから、本発明の磁性層パターンの形成方法では、相関データに基づいてフォトレジストパターンのうちのフレーム部の厚さTFを設定することにより、そのフレーム部の厚さTFに基づいてめっき膜の厚さTMを制御することが可能であることが確認された。
【0076】
続いて、フレームめっき法を使用して複数の磁性層パターンを形成することにより、一連の磁性層パターンの形成厚さの分布を調べたところ、図25、図26および表1に示した結果が得られた。図25は、フレーム部の設定厚さの分布を表しており、「横軸」はフレーム部の厚さTFを測定した領域、すなわち図7に示した領域(領域R1〜R5)を示し、「縦軸」はフレーム部の厚さTF(nm)を示している。図26は、めっき膜の成長厚さの分布を表しており、「横軸」はめっき膜の厚さTMを測定した領域(領域R1〜R5)を示し、「縦軸」はめっき膜の厚さTM(nm)を示している。表1は、図25に示したフレーム部の設定厚さ(厚さTF)の膜厚分布DTF(%)および図26に示しためっき膜の成長厚さ(厚さTM)の膜厚分布DTM(%)を表している。なお、表1に示した膜厚分布DTFは、DTF(%)=[(厚さTFの最大値(nm)−厚さTFの最小値(nm))/厚さTFの平均値(nm)]×100を表しており、膜厚分布DTMは、DTM(%)=[(厚さTMの最大値(nm)−厚さTMの最小値(nm))/厚さTMの平均値(nm)]×100を表している。
【0077】
一連の磁性層パターンの形成厚さの分布を調べる際には、表1に示した6通りのサンプルS1(●),S2(▲),S3(■),S4(○),S5(△),S6(□)として、図25に示したように、フレーム部の設定厚さ(厚さTF)が6通りの厚さ分布となるように6種類のフォトレジストパターンを形成したのち、各フォトレジストパターンを使用して6種類のめっき膜群を成長させることにより磁性層パターンを形成した。このときの各めっき膜群の成長厚さ(厚さTM)は、図26に示したように分布した。なお、図25および図26に示した記号●,▲,■,○,△,□は、表1に示した一連のサンプルS1,S2,S3,S4,S5,S6にそれぞれ対応している。表1に示したように、サンプルS1〜S6では、この順に膜厚分布DTFが次第に大きくなるようにフレーム部の厚さTFを設定しており、すなわち領域R1から領域R5へ向かって次第にフレーム部の厚さTFが大きくなるとき、各領域R1〜R5間におけるフレーム部の厚さTFの差異は、サンプルS1〜S6の順に次第に大きくなっている。
【0078】
【表1】

【0079】
図25、図26および表1に示した結果から判るように、膜厚分布DTFがサンプルS1〜S6の順に次第に大きくなるようにフォトレジストパターンを形成したところ、膜厚分布DTMはサンプルS1〜S6の順に次第に小さくなった。すなわち、図25に示したように、各領域R1〜R5間における各フレーム部の厚さTFの差異がサンプルS1〜S6の順に次第に大きくなるようにフォトレジストパターンを形成したところ、図26に示したように、各領域R1〜R5間における各めっき膜の厚さTMの差異はサンプルS1〜S6の順に次第に小さくなった。具体的には、表1に示したように、膜厚分布DTFと膜厚分布DTMとの間の関係は、サンプルS1においてDTF=0.50%のときにDTM=8.70%,サンプルS2においてDTF=2.00%のときにDTM=6.64%,サンプルS3においてDTF=3.80%のときにDTM=4.79%,サンプルS4においてDTF=5.19%のときにDTM=3.35%,サンプルS5においてDTF=7.10%のときにDTM=1.42%,サンプルS6においてDTF=8.50%のときにDTM=0.13%となった。すなわち、各領域R1〜R5間におけるフレーム部の厚さTFの差異が最も小さいサンプルS1(膜厚分布DTF=0.50%)では、各領域R1〜R5間におけるめっき膜の厚さTMのばらつきが最も大きくなったが(膜厚分布DTM=8.70%)、そのめっき膜の厚さTMのばらつきは各領域R1〜R5間におけるフレーム部の厚さTFの差異が大きくなるにしたがって次第に小さくなり、各領域R1〜R5間におけるフレーム部の厚さTFの差異が最も大きいサンプルS6(膜厚分布DTF=8.50%)では、各領域R1〜R5間におけるめっき膜の厚さTMのばらつきが最も小さくなった(膜厚分布DTM=0.15%)。このことから、本発明の磁性層パターンの形成方法では、図24に示した相関データに基づいてフォトレジストパターンのうちの各フレーム部の厚さTFに差異を設けることにより、各めっき膜の厚さTMの差異が小さくなるため、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターンを安定に形成することが可能であることが確認された。
【0080】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。具体的には、例えば、上記実施の形態および実施例において説明した磁性層パターンの形成手順は、必ずしもこれに限られるものではなく、フォトレジストパターンのうちの各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設け、各フレーム部の厚さが各開口部ごとに異なるようにフォトレジストパターンを形成したのち、そのフォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜を成長させて複数の磁性層パターンを形成することにより、フレームめっき法を使用して可能な限り均一な厚さとなるように複数の磁性層パターンを安定に形成することが可能な限り、自由に変更可能である。
【0081】
また、上記では、本発明の磁性層パターンの形成方法を薄膜磁気ヘッドの製造方法に適用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、薄膜磁気ヘッド以外の他の磁気デバイスの製造方法に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る磁性層パターンの形成方法は、例えば、ハードディスクドライブなどの磁気記録装置に搭載される薄膜磁気ヘッドの製造方法などに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法の流れを説明するための流れ図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法のうちの一工程を説明するための断面図である。
【図3】図2に続く工程を説明するための断面図である。
【図4】図3に続く工程を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】磁性層パターンの形成領域を説明するための平面図である。
【図8】フォトレジストパターンのうちのフレーム部の厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを説明するための図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法に対する比較例としての磁性層パターンの形成方法のうちの一工程を説明するための断面図である。
【図10】図9に続く工程を説明するための断面図である。
【図11】図10に続く工程を説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程を説明するための断面図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法に関する変形例のうちの一工程を説明するための断面図である。
【図14】図13に続く工程を説明するための断面図である。
【図15】図14に続く工程を説明するための断面図である。
【図16】本発明の一実施の形態に係る磁性層パターンの形成方法を使用した薄膜磁気ヘッドの製造方法を使用して製造される薄膜磁気ヘッドの断面構成を表す断面図である。
【図17】図16に示した薄膜磁気ヘッドのうちの主要部の斜視構成を表す斜視図である。
【図18】薄膜磁気ヘッドの製造方法のうちの一工程を説明するための断面図である。
【図19】図18に続く工程を説明するための断面図である。
【図20】図19に続く工程を説明するための断面図である。
【図21】図20に続く工程を説明するための断面図である。
【図22】図21に続く工程を説明するための断面図である。
【図23】図22に続く工程を説明するための断面図である。
【図24】フォトレジストパターンのうちのフレーム部の厚さとめっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを表す図である。
【図25】フレーム部の設定厚さの分布を表す図である。
【図26】めっき膜の成長厚さの分布を表す図である。
【符号の説明】
【0084】
1…基板、2…絶縁層、3…下部リードシールド層、4…シールドギャップ膜、5…上部リードシールド層、6…MR素子、7…分離層、8…補助磁極層、9…ギャップ層、9A〜9C…ギャップ層部分、9AK,9CK,32K,104K(104K1〜104K3)…開口部、10…薄膜コイル、11…連結部、12…主磁極層、12A…磁極部分層、12A1…先端部、12A2…後端部、12AX…ダミー層、12B…ヨーク部分層、13…オーバーコート層、20…エアベアリング面、31,102…シード層、32,104…フォトレジストパターン、32F,104F(104F1〜104F3)…フレーム部、33…マスク、101…ウェハ、103…フォトレジスト膜、105…磁性層パターン、M…媒体進行方向、R1〜R5…領域、T1〜T3…厚さ、W…幅。


































【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部を画定する複数のフレーム部を有するフォトレジストパターンを使用して、そのフォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜を成長させることにより、複数の磁性層パターンを形成する方法であって、
前記フォトレジストパターンのうちの前記フレーム部の厚さと前記めっき膜の厚さとの間の相関を表す相関データを取得する第1の工程と、
基体上に、前記相関データに基づいて各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設けることにより、各フレーム部の厚さが各開口部ごとに異なるように前記フォトレジストパターンを形成する第2の工程と、
前記フォトレジストパターンのうちの各開口部に選択的にめっき膜を成長させることにより、前記基体上に前記複数の磁性層パターンを形成する第3の工程と、を含む
ことを特徴とする磁性層パターンの形成方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、前記第3の工程において前記めっき膜を成長させた際に各めっき膜間の厚さの差異が解消されるように、各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設ける
ことを特徴とする請求項1記載の磁性層パターンの形成方法。
【請求項3】
前記めっき膜の厚さが、前記基体の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に大きくなる傾向にある場合に、
前記第2の工程において、前記フレーム部の厚さが前記基体の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に大きくなるように、各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設ける
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性層パターンの形成方法。
【請求項4】
前記めっき膜の厚さが、前記基体の中心から周辺へ向かうにしたがって次第に小さくなる傾向にある場合に、
前記第2の工程において、前記フレーム部の厚さが前記基体の中心から周辺へ向かうに近づくにしたがって次第に小さくなるように、各フレーム部の厚さに各開口部ごとに差異を設ける
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁性層パターンの形成方法。
【請求項5】
前記第2の工程が、
前記基体上に、前記相関データに基づいて、前記フォトレジストパターンを形成した際に各フレーム部の厚さが各開口部ごとに異なるように厚さに位置ごとに差異を設けることにより、その厚さが位置ごとに異なるようにフォトレジスト膜を形成する工程と、
フォトリソグラフィ処理を使用して前記フォトレジスト膜をパターニングして、そのフォトレジスト膜に前記複数のフレーム部により画定された前記複数の開口部を設けることにより、前記フォトレジストパターンを形成する工程と、を含む
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁性層パターンの形成方法。
【請求項6】
前記フォトレジストパターンを形成する工程において、前記フォトレジスト膜の厚さに位置ごとに設けられた差異に対応して、そのフォトレジスト膜の露光量に位置ごとに差異を設ける
ことを特徴とする請求項5記載の磁性層パターンの形成方法。
【請求項7】
磁束を発生させる薄膜コイルと、その薄膜コイルにおいて発生した磁束に基づいて記録媒体を磁化させるための磁界を発生させる磁極層と、を備えた複数の薄膜磁気ヘッドを製造する方法であって、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載した磁性層パターンの形成方法を使用して、基体上に複数の磁性層パターンとして複数の前記磁極層を形成する工程を含む
ことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。















































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2006−124729(P2006−124729A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−310836(P2004−310836)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】