説明

磁性材料、磁性材料の製造方法および磁性材料を用いたインダクタ素子

【課題】高周波領域で高いμ’と低いμ”を備え特性に優れた磁性材料を提供する。
【解決手段】実施の形態の磁性材料は、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm以上平均粒径が5μm以上50μm以下の複数の第1の磁性粒子と、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm未満平均粒径が5nm以上50nm以下の複数の第2の磁性粒子と、第1の磁性粒子および第2の磁性粒子間に存在する介在相と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、磁性材料、磁性材料の製造方法および磁性材料を用いたインダクタ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、磁性材料は、インダクタ素子、電磁波吸収体、磁性インク、アンテナ装置等の様々なデバイスの部品に適用されており非常に重要な材料である。これらの部品は、磁性材料の有する透磁率実部(比透磁率実部)μ’または透磁率虚部(比透磁率虚部)μ”の特性を、目的に応じて利用する。例えばインダクタ素子やアンテナ装置は高いμ’(かつ低いμ”)を利用し、電磁波吸収体は高いμ”を利用する。そのため、実際にデバイスとして使用する場合は、機器の利用周波数帯域に合わせてμ’およびμ”を制御しなければならない。
【0003】
近年、機器の利用周波数帯域の高周波数帯化が進んでおり、高周波領域で高いμ’と低いμ”を備え特性に優れた磁性材料の開発が急務となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−143347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、高周波領域で高いμ’と低いμ”を備え特性に優れた磁性材料、磁性材料の製造方法および磁性材料を用いたインダクタ素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態の磁性材料は、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm以上であり平均粒径が5μm以上50μm以下の複数の第1の磁性粒子と、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm未満であり平均粒径が5nm以上50nm以下の複数の第2の磁性粒子と、前記第1の磁性粒子および前記第2の磁性粒子間に存在する介在相と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施の形態の磁性材料の模式図である。
【図2】第1の実施の形態の磁性材料の変形例の模式図である。
【図3】第3の実施の形態のインダクタ素子の一例を示す概念図である。
【図4】第3の実施の形態のインダクタ素子の別の一例を示す概念図である。
【図5】第3の実施の形態のインダクタ素子の磁芯と偏平磁性粒子の配列位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、通信情報の急増に伴い情報通信機器の小型化、軽量化が図られている。特に携帯通信端末は、その利便性からより小型化・軽量化が実現されて来た。しかしながらこれに付属するACアダプターなどの電源システムは依然として大型で重いためその利便性を大いに損なっており、小型化・軽量化が望まれている。
【0009】
一方、近年の電子機器は情報通信機器に限らず、様々な理由から高周波化が望まれている。ところが高周波化することで従来部品はそのままでは駆動するとは限らず、より高周波で駆動可能な部品の開発が必要になって来る。
【0010】
高周波化のために不可欠な電源システムはパワー半導体およびインバータ、コンバーター、リアクトル等のパワー部品もその例外では無く、高周波化がなされた場合、現行の磁性材料では対応が困難である。ただし、仮に今よりも高周波で駆動するパワー用部品が得られた場合、高周波電源システムが可能になるのみならず部品サイズは周波数が高いほど小さくなるため電源システム自体が小型化・軽量化するという利点がある。このためより高周波で駆動可能な新たな高磁束密度、高透磁率および低損失の磁性材料が電源システムの小型化の点からも強く望まれている。
【0011】
現行の電磁鋼板などの金属材料は高磁束密度であるが、電気抵抗が小さく、損失が大きくなる為、高周波での使用は難しい。一方、フェライトは酸化物であるため,電気抵抗が大きく高周波での損失が少ないが磁束密度は金属より小さい。そこで高周波特性と磁束密度の特性要求に対して,電磁鋼板あるいはフェライト単独では満足できない特性範囲を補うために,鉄などの金属磁性粉末に電気的絶縁と樹脂とを混合し圧縮成型した圧粉磁心が開発されている。
【0012】
しかしながら、従来の圧粉磁心の交流磁気特性は電気的絶縁機能を果たす樹脂に依存するところが大きく、十分な電気的絶縁性を確保するために多量の樹脂を混合しなければならず、成型体密度の向上が困難である。裏を返せば、磁性金属粒子を高密度充填すると粒子同士の絶縁を保つことが難しくなり、電気抵抗が低下することで損失が増大するなどの問題があった。
【0013】
電気抵抗の低下を抑制する方法としては酸化物等の絶縁粒子を磁性金属粒子間に配する方法などがあるが、より高い透磁率を得るためには磁性金属粒子同士が磁気的な結合をすることが重要である。例えば、フェライトのような磁性絶縁粒子を用いたとしても磁気的な結合は小さいため高い透磁率を有する材料を作製することが難しい。
【0014】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。なお、図面中、同一または類似の箇所には、同一または類似の符号を付している。
【0015】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の磁性材料は、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm以上であり平均粒径が5μm以上50μm以下の複数の第1の磁性粒子(磁性ミクロン粒子とも称する)と、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm未満であり平均粒径が5nm以上50nm以下の複数の第2の磁性粒子(磁性ナノ粒子とも称する)と、第1の磁性粒子および第2の磁性粒子間に存在する介在相と、を備える。
【0016】
本実施の形態の磁性材料は、透磁率を向上させるために最適な粒径を備える大磁性金属粒子と、この大磁性金属粒子の間の絶縁性を確保し、磁気損失を抑制するための介在相を備える。さらに、大磁性金属粒子同士の磁気的結合を向上させるため、大磁性金属粒子間に大磁性金属粒子よりも粒径の小さい小磁性金属粒子を配置する。この構成により、本実施の形態によれば、高周波で高いμ’と低いμ”を備え特性に優れた磁性材料が実現される。
【0017】
図1は、本実施の形態の磁性材料の模式図である。磁性材料は、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm以上であり平均粒径が5μm以上50μm以下の複数の第1の磁性粒子10を備える。また、平均粒径が5μm以上50μm以下の複数の第1の磁性粒子と、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm未満であり平均粒径が5nm以上50nm以下の複数の第2の磁性粒子12を備える。そして、第1の磁性粒子10および第2の磁性粒子12間に存在する介在相14と、を備える。
【0018】
さらに、介在相14が第2の磁性粒子12の少なくとも一部を被覆し複合粒子16を形成している。ここで、複合粒子16は、第2の磁性粒子12のそれぞれが、介在相14の被覆層を有するコアシェル型粒子である。
【0019】
磁性粒子の平均粒径は、TEM観察、SEM観察により、個々の粒子の最も長い対角線と最も短い対角線を平均したものをその粒子径とし、多数の粒子径の平均から求める。
【0020】
なお、本実施の形態の磁性材料は、磁性粒子の粒径分布の観点から見れば、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有する複数の磁性粒子と、磁性粒子間に存在する介在相を有し、複数の磁性粒子の粒径がバイモーダルな粒径分布を備え、粒径分布の第1のピークに対応する粒径が5μm以上50μm以下であり、粒径分布の第2のピークに対応する粒径が5nm以上50nm以下である磁性材料である。
【0021】
なお、ここでバイモーダルな粒径分布とは、粒径分布のヒストグラムにおいて、少なくとも2つのピークが現れる粒径分布を意味する。TEM観察、SEM観察により、個々の磁性粒子の最も長い対角線と最も短い対角線を平均したものをその磁性粒子の粒径とする。そして、磁性材料中の磁性粒子の粒径分布が適切に判断できるよう十分な数の磁性粒子の粒径を測定する。
【0022】
本実施の形態では、バイモーダルな粒径分布のうち、第1のピークに対応する分布の粒径を備える粒子を第1の磁性粒子10、第2のピークに対応する分布の粒径を備える粒子を第2の磁性粒子12とする場合に、介在相14が少なくとも第2の磁性粒子12を被覆し複合粒子16が形成されている。磁性粒子が第1のピークに対応する分布内か、第2のピークに対応する分布内かが必ずしも明瞭に判別できない時は、第1のピークと第2のピークとの間の適当な粒径で区別すればよい。例えば、1μm以上を第1の磁性粒子、1μm未満を第2の磁性粒子とする。
【0023】
第1の磁性粒子10および第2の磁性粒子12が含有する磁性金属は、Fe、Co、Ni、の少なくとも1種類以上を含み、その中でも高い飽和磁化を実現できるFe基合金、Co基合金、FeCo基合金が特に好ましい。
【0024】
Fe基合金、Co基合金としては、第2成分としてNi、Mn、Cu、Mo、Crなどを含有したFeNi合金、FeMn合金、FeCu合金、FeMo合金、FeCr合金、CoNi合金、CoMn合金、CoCu合金、CoMo合金、CoCr合金が挙げられる。FeCo基合金としては、第2成分として、Ni、Mn、Cu、Mo、Crを含有させた合金などが挙げられる。これらの第2成分は透磁率を向上させるのに効果的な成分である。
【0025】
第2の磁性粒子12には、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つ以上の非磁性金属が含有されることが好ましい。その中でも、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、希土類元素、Ba、Srから選ばれる少なくとも1つ以上の非磁性金属が含有されることが好ましい。これら非磁性金属は酸化物の標準生成ギブスエネルギーが小さく酸化しやすい元素であり、第2の磁性粒子を被覆する介在相14、例えば酸化物の被覆層の絶縁性の安定性の観点から、好ましい元素である。この場合、酸化物の被覆層は第2の磁性粒子12の構成成分の1つである非磁性金属を1つ以上含む酸化物もしくは複合酸化物である。
【0026】
非磁性金属の中でも、Al、Siは、第2の磁性粒子10の主成分であるFe、Co、Niと固溶しやすいため熱的安定性の観点から、特に好ましい。また、第1の磁性粒子10が同様の非磁性金属を含有しても構わない。
【0027】
第1の磁性粒子10および第2の磁性粒子12には、カーボン及び窒素の少なくとも1つを含むことが望ましい。カーボン単独、窒素単独でも良いし、カーボンと窒素両方でも良い。
【0028】
カーボン及び窒素は、磁性金属と固溶することによって、磁気異方性を大きくすることができる有効な元素である。大きな磁気異方性を有する材料は、強磁性共鳴周波数を大きくすることができ、高周波帯域で使用することのできる材料となる。磁性材料のμ’は強磁性共鳴周波数付近で大きく低下し、μ”は強磁性共鳴周波数付近で大きく増加する。
【0029】
以上、第1の磁性粒子10および第2の磁性粒子12に含有する非磁性金属、また、カーボン、窒素の含有量は、磁性金属に対していずれも、20原子%以下であることが望ましい。含有量がそれ以上になると磁性粒子の飽和磁化を下げてしまい好ましくない。
【0030】
また、磁性粒子に含有する磁性金属と、非磁性金属と、カーボン及び窒素の少なくとも1つとは、固溶している方が好ましい。固溶することによって、磁気異方性を効果的に向上させることができ、高周波磁気特性を向上することができる。また、磁性材料の機械的特性を向上することができる。固溶しない場合は、磁性粒子の粒界や表面に偏析してしまい、磁気異方性や機械特性を効果的に向上させることが出来ない。
【0031】
また、第1の磁性粒子10および第2の磁性粒子12は、多結晶粒子、単結晶粒子のいずれでも良いが、単結晶粒子の方が好ましい。単結晶粒子にすることによって、粒子を一体化させる際に磁化容易軸を揃えることができる。このために、磁気異方性を制御することができ、高周波特性は多結晶の場合よりも良くなるからである。
【0032】
なお、第1の磁性粒子と第2の磁性粒子の組成は同一であっても異なっていてもかまわない。また、個々の磁性粒子の組成は、磁性材料の特性を安定させる観点から磁性粒子内で略均一であることが望ましい。
【0033】
第1の磁性粒子10は、粒径が1μm以上であり平均粒径5μm以上50μm以下であり、その中でも特に、10μm以上30μm以下が好ましい。粒径が1μm未満では、磁化過程において粒子の単位体積あたりの磁壁のピニングサイトや反転核生成割合が多くなり、保磁力が大きくなり、結果としてヒステリシス損失が大きくなり好ましくない。また透磁率も小さくなり好ましくない。よって第1の磁性粒子の粒径は1μm以上である必要がある。尚、上記の悪影響は粒径が大きくなればなるほど回避できるので好ましい。しかしながら一方で、粒径が大きくなると高周波領域で渦電流損損失が大きくなり、狙いとする高周波領域での磁気特性が低下してしまうという問題がある。すなわち、第1の磁性粒子の粒径は少なくとも1μm以上にする必要はあるが、大きければ大きい程良い訳ではなく、高い透磁率と低いヒステリシス損失と低い渦電流損失のバランスを取ることができる粒径の範囲にする必要がある。このような理由から、第1の磁性粒子の平均粒径は5μm以上50μm以下、その中でも特に10μm以上30μm以下の範囲におさめることが好ましい。
【0034】
また、磁性材料に対する第1の磁性粒子10の体積率が、30vol%以上80vol%以下であることが望ましい。30vol%を下回ると透磁率が低下するためである。また、80vol%を超える体積率の実現は現実的に困難だからである。
【0035】
また、第2の磁性粒子12は、粒径が1μm未満であり平均粒径5nm以上50nm以下であり、その中でも特に、10nm以上30nm以下が好ましい。この第2の磁性粒子は、第1の磁性粒子の間に存在することによって、第1の磁性粒子の磁気特性を高めることが出来る。すなわち、第1の磁性粒子よりも小さい粒径を有する第2の磁性粒子が存在することによって、磁性材料中に含まれるトータルの磁性粒子の体積割合を大きくする事ができるため、磁性材料の飽和磁化が増加し好ましい。また、第1の磁性粒子間に第2の磁性粒子が存在することによって、第1の磁性粒子間の磁気的な結合を高め、結果として透磁率を大きくすることが出来る。このため、第2の磁性粒子は第1の磁性粒子よりも小さくする必要があり、粒径を1μm未満にする必要がある。また、第2の磁性粒子の渦電流損失が大きいと磁性材料全体の渦電流損失も大きくなるため好ましくない。一方で、第2の磁性粒子は、上述の通り、第1の磁性粒子間に存在し、第1の磁性粒子間の磁気的な結合を高めることが出来るため、磁気的には大きな粒径を有する粒子として振る舞い、たとえ第2の磁性粒子の粒径が小さくても磁性材料のヒステリシス損失は大きくならない。従って、第2の磁性粒子は、1μm未満の粒径を有し、かつ、粒径が小さければ小さいほど良い。しかしながら、粒径が5nm未満では、超常磁性が生じ、磁束量が足りなくなってしまい好ましくない。
【0036】
ところで、粒径が50nmよりも大きくなると単磁区構造よりも多磁区構造をとった方がエネルギー的に安定となる。この時、多磁区構造の高周波磁気特性は、単磁区構造の高周波磁気特性よりも悪くなってしまう。よって、第2の磁性粒子は単磁区構造を有する粒子として存在させる方が好ましい。単磁区構造を保つ限界粒径は、50nm程度以下であるため、粒径は50nm以下であり、30nm以下にする方がより望ましい。
【0037】
以上から、第2の磁性粒子12の粒径が1μm未満で、平均粒径は5nm以上50nm以下、その中でも特に10nm以上30nm以下の範囲におさめることが好ましい。
【0038】
また、第1の磁性粒子に対する第2の磁性粒子の体積率は、3vol%以上30vol%以下、であることが好ましく、更に好ましくは4vol%以上30vol%以下である。第2の磁性粒子の体積率がこの範囲に入っている時、第2の磁性粒子は第1の磁性粒子の間に効率よく存在することができ、これによって、第1の磁性粒子の磁気特性を高めることが出来る。すなわち、第2の磁性粒子が第1の磁性粒子間に存在することによって、磁性材料中に含まれるトータルの磁性粒子の体積割合を大きくする事ができるため、磁性材料の飽和磁化が増加し好ましい。また第1の磁性粒子間に第2の磁性粒子が存在することによって、第1の磁性粒子間の磁気的な結合を高め、結果として透磁率を大きくすることが出来る。飽和磁化と透磁率を効果的に大きくする事が出来る利範囲が上述の範囲となる。
【0039】
また、第1の磁性粒子10および第2の磁性粒子12は、球状粒子でも良いが、アスペクト比が大きい扁平粒子あるいは棒状粒子でも構わない。特に、第1の磁性粒子10はアスペクト比が大きい扁平粒子、棒状粒子が好ましい。
【0040】
アスペクト比を大きくすると、形状による磁気異方性を付与することができ透磁率の高周波特性が向上するだけでなく、粒子を一体化して磁性材料を作製する際に磁場によって配向させやすい。配向することによって透磁率の高周波特性はさらに向上する。
【0041】
また、アスペクト比を大きくすると、単磁区構造となる限界粒径を大きくすることができて、大きな粒子でも透磁率の高周波特性の劣化を抑制できる。一般に粒径の大きな粒子の方が合成しやすいため、製造上の観点からアスペクト比が大きい方が有利となる。
【0042】
さらには、アスペクト比を大きくすることによって、粒子を一体化して磁性材料を作製する際に磁性粒子の充填率を大きくすることができ、それによって部材の体積あたり、重量あたりの飽和磁化を大きくすることができるため好ましい。これによって透磁率も大きくすることが可能となる。
【0043】
上記観点から、平均アスペクト比は大きければ大きい程好ましく、5以上が好ましい。さらに好ましくは10以上である。
【0044】
図2は、本実施の磁性材料の変形例の模式図である。
【0045】
本実施の形態の介在相14の材料・形態についても特に限定されるものではない。ここでは、第2の磁性粒子12のそれぞれが、介在相14の被覆層を有するコアシェル型の磁性粒子である場合を例に説明したが、図2に示すように、第2の磁性粒子12が酸化物、窒化物、樹脂などの絶縁性マトリクス(介在相14)に分散している構造、いわゆるナノグラニュラー型の複合粒子16であってもかまわない。ナノグラニュラー型の複合粒子16は粒子集合体である。
【0046】
また、図1のコアシェル型粒子の場合であっても、コアシェル型粒子が単独であっても良いし、凝集したものであっても構わない。また、それらが融合一体化していても構わない。
【0047】
複合粒子16の形態をとる場合であっても、その形状は特に限定されない。スパッタやメカニカルアロイ等を利用する製造過程で扁平化することがあるがこれに限定されるものでは無い。
【0048】
複合粒子16に対する第2の磁性粒子12の体積率が、30vol%以上80vol%以下であることが好ましく、より好ましくは40vol%以上80vol%以下である。この範囲であることによって、複合粒子中に含まれる第2の磁性粒子間の距離が必然的に近くなり、磁性金属粒子同士が磁気的に強固に結合し、磁気的には粒子集合体として振る舞い、透磁率をかなり大きくすることが出来る。また、粒子同士は物理的に完全には繋がっていないので、ミクロ的な渦電流損失を低減する事ができ、透磁率の高周波特性を向上させる事が出来る。ミクロ的な渦電流損失を抑制し、透磁率を大きくする事が出来る利範囲が上述の範囲となる。
【0049】
第1の磁性粒子10に対する複合粒子16の体積率が、10vol%以上30vol%以下であることが望ましい。複合粒子の体積割合がこの範囲に入っている時、複合粒子は第1の磁性粒子の間に効率よく存在することができ、これによって、第1の磁性粒子の磁気特性を高めることが出来る。すなわち、複合粒子が第1の磁性粒子間に存在することによって、磁性材料中に含まれるトータルの磁性粒子の体積割合を大きくすることができるため、磁性材料の飽和磁化が増加し好ましい。また第1の磁性粒子間に第2の磁性粒子が存在することによって、第1の磁性粒子間の磁気的な結合を高め、結果として透磁率を大きくすることが出来る。飽和磁化と透磁率を効果的に大きくすることが出来る利範囲が上述の範囲となる。
【0050】
複合粒子16の介在相14中の非磁性金属/磁性金属の原子比が、第2の磁性粒子中に含まれる非磁性金属/磁性金属の原子比よりも大きいことが望ましい。これは、第2の磁性粒子を、耐酸化性、熱的安定性の高い「非磁性金属/磁性金属の多い介在相」でブロックすることができ、第2の磁性粒子の耐酸化性、熱的安定性を効果的に高めることが可能となるためである。
【0051】
また、複合粒子16の介在相14中に含まれる酸素の含有量が、第2の磁性粒子12の酸素の含有量よりも大きいことが望ましい。これは、第2の磁性粒子を、酸素濃度が多く耐酸化性、熱的安定性の高い介在相でブロックする事ができ、第2の磁性粒子の耐酸化性、熱的安定性を効果的に高めることが可能となるためである。
【0052】
また、複合粒子16の形態をとらず、第1の磁性粒子10と第2の磁性粒子12の間が、樹脂や酸化物等で充填される構造であってもかまわない。あるいは、樹脂とコアシェル型粒子の複合材であっても構わない。もっとも、介在相14が、すべて無機物であれば、耐熱性や耐酸化性が向上するためより望ましい。
【0053】
図1や図2のように、介在相14が第2の磁性粒子12を被覆し複合粒子16を形成する場合、介在相14は第2の磁性金属粒子の表面の一部を被覆するものであれば特に限定されない。
【0054】
なお、介在相14は、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1つ以上の磁性金属を含有することが望ましく、第2の磁性粒子の構成成分である磁性金属の少なくとも1つを含むことがより望ましい。これによって、第2の磁性粒子と介在相との密着性が向上し、熱的安定性および耐酸化性が向上する。
【0055】
介在相14は、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つ以上の非磁性金属を含有することが望ましい。その中でも、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、希土類元素、Ba、Srから選ばれる少なくとも1つ以上の非磁性金属が含有されることが好ましい。これら非磁性金属は、第2の磁性粒子の抵抗を向上させ、かつ、熱的な安定性および耐酸化性を向上させることができ好ましい。
【0056】
介在相14は、上記列挙した非磁性金属を含む、金属、半導体、酸化物、窒化物、炭化物またはフッ化物であることが望ましく、特に、高い熱的安定性、高い耐酸化性を実現できるという点で、酸化物、窒化物、炭化物であることがより望ましい。
【0057】
介在相14は、渦電流等による損失低減の観点から、第1の磁性粒子および第2の磁性粒子よりも高抵抗であることが望ましい。
【0058】
介在相14は、第2の磁性粒子がMg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つ以上の非磁性金属を含有する場合、介在相がその非磁性金属の少なくとも一つを含有することが望ましい。これによって、第2の磁性粒子と介在相との密着性を向上でき、磁性材料の熱的安定性および耐酸化性を向上させることが可能となる。
【0059】
例えば、酸化物被覆層であれば、第2の磁性粒子12が、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含有し、介在相14が磁性金属および前記非磁性金属の少なくとも一つずつを含有する酸化物であることが好ましい。
【0060】
このような酸化物被覆層は、内部の磁性金属の耐酸化性を向上させるだけでなく、第1の磁性粒子10間に介在することで一体化して磁性材料を作製する際に第1の磁性粒子10同士を電気的に離し、磁性材料の電気抵抗を上げることができる。磁性材料の電気抵抗を上げることによって、高周波における渦電流損失を抑制し、透磁率の高周波特性を向上することができる。よって、酸化物被覆層は電気的に高抵抗である必要があり、1mΩ・cm以上であることが好ましい。
【0061】
そして、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つ以上の金属は、酸化物の標準生成ギブスエネルギーが小さく安定な酸化物を形成しやすい元素であるため好ましい。その中でも、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、希土類元素、Ba、Srが、酸化物の標準生成ギブスエネルギーが小さく好ましい。標準生成ギブスエネルギーが大きい元素は酸化物になりにくく好ましくない。
【0062】
また、酸化物被覆層が、第2の磁性粒子12の構成成分の1つである非磁性金属を1つ以上含む酸化物もしくは複合酸化物であることによって、磁性粒子と酸化物被覆層との密着性・接合性がよくなり、熱的にも安定な材料となる。
【0063】
この時、Al、Siは、磁性粒子の主成分であるFe、Co、Niと固溶しやすいため、磁性金属粒子の熱的安定性の観点から、好ましい。すなわち、酸化物被覆層はAl、Siを含む酸化物がより好ましいことになる。酸化物被覆層は、1種類の酸化物でも良いし、複数種が混合した、固溶も含む複合酸化物でも良い。
【0064】
酸化物被覆層の厚さは、0.1nm以上100nm以下の厚さである。0.1nm未満であると、耐酸化性が不十分であるとともに、粒子を一体化して磁性材料を作製する際に部材の抵抗を下げて渦電流損失を発生しやすく、それによって透磁率の高周波特性は劣化するため好ましくない。
【0065】
また、100nm以上であると、粒子を一体化して磁性材料を作製する際に磁性材料中に含まれる磁性金属粒子の充填率を下げ、磁性材料の飽和磁化を下げ、透磁率が低下するために好ましくない。渦電流損失を抑制して高周波特性を劣化させず、かつ、飽和磁化を大きく下げないことによって透磁率を下げないために効果的な酸化物被覆層の厚さは、0.1nm以上100nm以下の厚さである。
【0066】
次に、本実施の形態に係る磁性材料の製造方法の一例について説明する。
【0067】
本実施の形態の磁性材料の製造方法は、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、平均粒径が5μm以上50μm以下の複数の第1の磁性粒子を合成し、Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、平均粒径が5nm以上50nm以下の複数の第2の磁性粒子を合成し、介在相を合成し、第1の磁性粒子、第2の磁性粒子、介在相を混合し成型する。
【0068】
第1の磁性粒子、第2の磁性粒子、介在相を合成する工程は、それぞれ独立に行われても、2つ以上を同時に行ってもかまわない。混合する工程についても、第1の磁性粒子、第2の磁性粒子、介在相のいずれか2つを別途混合したのち、残りを混合してもよいし、3つ同時に混合してもかまわない。
【0069】
例えば、第2の磁性粒子と介在相からなる複合粒子を形成し、複合粒子と第1の磁性粒子を混合し成型する。
【0070】
例えば、第2の磁性粒子が、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含有し、上記介在相が上記非磁性金属の少なくとも一つを含有し、上記複合粒子がそれぞれの第2の磁性粒子のすくなくとも一部が上記介在相で被覆されるコアシェル型粒子を形成する。具体的には熱プラズマ法などで作製したナノ粒子を処理することでコアシェル型の磁性粒子とし、これをメカニカルアロイにより複合化することで合成することができる。
【0071】
また、例えば、第2の磁性粒子が、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含有し、上記介在相が上記非磁性金属の少なくとも一つを含有し、上記複合粒子が複数の第2の磁性粒子が介在相で被覆されるナノグラニュラー型粒子を形成する。
【0072】
もっとも、介在相を合成する工程は特に限定されるものではない。例えば、酸化物と磁性金属を同時スパッタすることで磁性金属と酸化物の複合薄膜(あるいはナノグラニュラー薄膜)を製造してこれを粉砕することで第2の磁性粒子と絶縁膜の複合粒子を合成することができる。また、例えば、コアシェル型磁性粒子を作製する時に、さらに酸化物微粒子等を添加することもできる。
【0073】
第1の磁性粒子、第2の磁性粒子、介在相を混合する工程は特に限定されない。乳鉢による混合、ボールミルによる混合を行うことができる。また、樹脂等の粘性の高い結合材を加えることで三本ロールなどの混練機を用いて混合することができる。
【0074】
そして、結合材を加えることで効果的に混合を行なうことができることは一般的に知られている。さらに結合材を加えることで磁性粒子同士を結合して強固な磁性材料を得ることができる。結合材としては絶縁体であることが好ましい。結合と同時に、磁性粒子間の介在相として機能し、磁性粒子間の絶縁性を向上することができるからである。用いられる、結合材としては樹脂などの有機物結合材、ガラスなどの無機結合材を用いることができるがそれに限定されるものでは無い。
【0075】
結合材として、樹脂を用いる場合、樹脂は特に限定されない。具体的にはポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース系樹脂、ABS樹脂、ニトリル−ブタジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、シリコンゴム、その他の合成ゴム、天然ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミド系樹脂、イミド系樹脂、或いはそれらの共重合体が用いられる。
【0076】
また、本実施の形態に用いる無機結合材は特に限定されない。具体的にはB、NaO、SiO、ZnO、PbOなどの低融点酸化物系のガラス相を用いることができる。
【0077】
また、共晶を生成する系を用いて一体化することもできる。共晶を生成する系としては、B−SiO、B−Cr、B−MoO、B−Nb、B−Li、B−BaO、B−ZnO、B−La、NaO−SiO、等が考えられる。
【0078】
この様な組み合わせの酸化物は、低い共晶点を有し比較的容易に共晶を生成するため好ましい。特に1000℃以下の共晶点を有する組み合わせが好ましい。またこの組み合わせの酸化物からなる共晶組織は、微細な組織となり強度的に強い材料となるため好ましい。
【0079】
なお、第1酸化物と第2酸化物の組み合わせにおいては、第1酸化物は第2酸化物に比べて融点が200℃以上、より好ましくは500℃以上高いことが望ましい。第1酸化物は、磁性粒子の表面の少なくとも一部に被覆されており磁性粒子の凝集を抑制する最後の砦となる酸化物である。そのため、第2酸化物よりも高い融点を有することによって、高温環境下においても磁性粒子の凝集を抑制し、熱的な安定性を高めることが可能となる。
【0080】
共晶の形成法としては、複合粒子の介在相である無機相と共晶を形成する添加物を結合材として添加することができる。例えば、SiO相とFe系の第2の磁性粒子との複合粒子に対してBを添加、熱処理することで、複合粒子と第1の磁性粒子を結合一体化させることができる。
【0081】
また、実施の形態の磁性材料には以下に示すような無機材料を含有していても良く、例えば、エポキシ樹脂にAlを分散させた形態をとっても良い。また、酸化物、窒化物、炭化物などの無機材料を含有していても良い。具体的には、Al、AlN、SiO、SiCなどが例としてあげられる。
【0082】
本実施の形態の磁性材料は必要とされる周波数帯での複素誘電率の虚数成分および実数成分が小さいことが特長であるため、含有される無機材料の複素誘電率の虚数成分および実数成分が小さいことが好ましい。含有させる方法としては混合時に添加しても良いし、成型時に添加しても良い。また、原料に不純物として含有されるもの、またはコアシェル化の工程で副産物として生成したものをそのまま用いても良い。
【0083】
また、本実施の形態の磁性材料の製造方法において、第1の磁性粒子、第2の磁性粒子、介在相を混合し成型する工程は特に限定されない。上述のように結合材を加えたスラリーを作製してのシート成型を行い、これを圧着積層しても良い。また、あらかじめ樹脂等の結合材との複合体にしてから金型等へ充填・圧縮しても良い。
【0084】
以上の製造方法により、高周波で高いμ’と低いμ”を備え特性に優れた磁性材料を製造することが可能となる。
【0085】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の磁性材料の製造方法は、異方性磁性粒子と結合材を含むスラリーを成型し、異方性磁性粒子を配向させた固化物を形成する工程と、固化物を細分化し複数の磁性体を形成する工程と、磁性体を磁場中で成型する工程と、を備える。
【0086】
好ましい磁性粒子の組成や形態、好ましい結合材等については第1の実施の形態と同様であるので記述を省略する。
【0087】
本実施の形態によれば、異方性磁性粒子の配向を2段階の工程に分けて行うことで、磁性材料の磁気異方性および透磁率を向上させる。したがって、高周波で高いμ’と低いμ”を備え特性に優れた磁性材料を製造することが可能となる。
【0088】
まず、異方性磁性粒子と結合材を含むスラリーを成型する。そして、異方性磁性粒子を配向させた固化物を形成する。
【0089】
例えば、液体中等に異方性磁性粒子を分散した異方性磁性体粒子スラリーを磁場中にて成型することで異方性磁性体が得られる。しかし、分散と高密度化の両立が難しく、高濃度化した場合は凝集沈殿してしまうため磁場による配向が起こり難く、ムラが出て均一な成型体を得ることが困難である。例えば、異方性を付与した後に得られる固化物には、スなどが生じることによるムラがあり、磁性粒子の密度が小さくなる。
【0090】
本実施の形態においては、一度、磁性粒子を配向させた固化物を、粉砕等により細分化し複数の磁性体を形成する。この磁性体を回収し、再び磁場中で成型を行うことで高密度、高強度、高配向の異方性磁性材料を得ることができる。
【0091】
磁場中成型には金型として、非磁性材が用いられる。しかし、強度が弱いため印加圧力にも限界があるため高強度の磁性材料(成型体)が得られないことがある。
【0092】
このような場合は磁場中で成型した仮磁性材料(仮成型体)を一度取り出し、再度より高強度の金型へ装填の後、より高い圧力を印加することで仮に成型した配向を保ったままより高密度の磁性材料を形成する方法を採用してもかまわない。
【0093】
なお、固化物を形成する工程において、スラリーを磁場中で成型することが好ましいが、異方性磁性粒子を配向させた固化物が形成できるのであれば、特に成型方法は限定されない。例えば、ドクターブレード法によりせん断応力を印加しながら配向させる成型方法であってもかまわない。磁場中でドクターブレード法によりせん断応力を印加しながら成型する方法であれば、より異方性磁性粒子の配向性があがるため望ましい。
【0094】
(第3の実施の形態)
本実施の形態のインダクタ素子は、第1または第2の実施の形態に記載した磁性材料を備えるインダクタ素子である。
【0095】
図3は、本実施の形態のインダクタ素子の一例を示す概念図である。チップインダクタ素子の断面を示している。
【0096】
図4は、本実施の形態のインダクタ素子の別の一例を示す概念図である。トランスの断面図を示している。図示しない電極端子が第1のコイルおよび第2のコイルのそれぞれに2個ずつ設けられる。
【0097】
図5は、本実施の形態のインダクタ素子の磁芯と偏平磁性粒子の配列位置関係を示す図である。偏平磁性粒子の偏平面法線が、図中Z軸の方向に一致するような配列の時、巻線内部の磁束密度が最も大きくなるためインダクタ素子性能が向上する。
【0098】
本実施の形態のインダクタ素子によれば、特に100kHz以上のMHz帯域で高い透磁率実部(μ’)と低い透磁率虚部(μ”)を有し、かつ、高い強度、高い飽和磁化、高い熱的安定性、高い耐酸化性を有するインダクタ素子が実現可能となる。
【0099】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、実施の形態の説明においては、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる磁性材料、磁性材料の製造方法、磁性材料を用いたインダクタ素子等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0100】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての磁性材料、磁性材料の製造方法、磁性材料を用いたインダクタ素子は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【0101】
なお、本実施の形態に係る磁性材料、インダクタ素子において、材料組織はSEM(Scanning Electron Microscopy)、TEM(Transmission Electron Microscopy)で、回折パターン(固溶の確認を含む)は、TEM−Diffraction、XRD(X−ray Diffraction)で、構成元素の同定及び定量分析はICP(Inductively coupled plasma)発光分析、蛍光X線分析、EPMA(Electron Probe Micro−Analysis)、EDX(Energy Dispersive X−ray Fluorescence Spectrometer)等で、それぞれ判別(分析)可能である。
【0102】
また、磁性粒子の平均粒径は、TEM観察、SEM観察により、個々の粒子の最も長い対角線と最も短い対角線を平均したものをその粒子径とし、多数の粒子径の平均から求める。
【0103】
ここで、「アスペクト比」とは、粒子の長さが最も長くなる方向の粒子の寸法(長寸法)と、上記方向に対して垂直な方向で粒子の長さが最も短くなる方向の粒子の寸法(短寸法)の比、すなわち、「長寸法/短寸法」を指す。したがって、常に、アスペクト比は1以上となる。完全な球状の場合は、長寸法も短寸法も球の直径と等しくなるためアスペクト比は1になる。扁平状粒子のアスペクト比は直径(長寸法)/高さ(短寸法)である。棒状のアスペクト比は棒の長さ(長寸法)/棒の底面の直径(短寸法)である。但し、回転楕円体のアスペクト比は長軸(長寸法)/短軸(短寸法)となる。アスペクト比を大きくすると、形状による磁気異方性を付与することができ、磁化容易軸の方向を一方向に揃えることによって、透磁率と透磁率の高周波特性を向上させることが可能となる。なお、多数の粒子についてアスペクト比を平均化した値を「平均アスペクト比」とする。また、多数の粒子について長寸法、短寸法を平均化した値を「平均長寸法」、「平均短寸法」とする。
【実施例】
【0104】
以下に、本発明の実施例を、比較例と対比しながら説明する。なお、以下の実施例、比較例での磁性材料について、磁性粒子の形状・平均粒径(もしくは平均高さ)・平均アスペクト比・組成、体積率等を表1に示す。なお、磁性粒子の平均粒径(もしくは平均高さ)の測定方法は、TEM観察に基づいて行った。具体的には観察(写真)で示された個々の粒子の最も長い径と最も短い径を平均したものをその粒子径とし、その平均から求めた。写真は、単位面積10μm×10μmを3ヶ所以上とり平均値を求めた。微構造の組成分析は、EDX分析を中心に評価した。
【0105】
なお、表中、体積率VF1は、磁性材料に対する第1の磁性粒子の体積率である。また、VF2は、複合粒子に対する第2の磁性粒子の体積率である。また、VF3は、第1の粒子に対する複合粒子の体積率である。なお、第2の磁性粒子が複合粒子でない場合、VF3は、第1の磁性粒子に対する第2の磁性粒子の体積率である。
【0106】
第1の磁性粒子、第2の磁性粒子、複合粒子の体積率は磁性材料の断面SEM像及び断面TEM像により算出する。粒子のサイズが大きいものは断面SEM像を主に使い、粒子のサイズが小さいものは断面TEM像を主に使う。体積率の算出方法については、まず、断面SEMもしくは断面TEMにより粒子の平均粒径を求める。この際、平均粒径は、個々の粒子の最も長い対角線と最も短い対角線を平均したものをその粒子径とし、多数、例えば50個、の粒子径の平均から求めることが可能である。なお、磁性粒子の平均粒径が50nm以下と小さく、TEMで判別しにくい場合は、XRD測定から求められる結晶粒径で代用することもできる。すなわち、XRDで磁性粒子に起因するピークのうち最強ピークに関して、回折角度と半値幅からScherrerの式によって求めることができる。Sherrerの式は、D=0.9λ/(βcosθ)で表され、ここでDは結晶粒径、λは測定X線波長、βは半値幅、θは回折ブラッグ角である。アスペクト比の大きい扁平状、棒状などの粒子に関してもそれぞれの長寸法(扁平状の場合は直径、棒状の場合は棒の長さ)や短寸法(扁平状の場合は高さ、棒状の場合は棒の底面の直径)を同様の手法で求めることが可能である。アスペクト比はTEM、SEMによって画像を解析し、多数の磁性粒子を分析しその平均値でもとめる。また磁性粒子の体積率や体積充填率は、TEM観察、SEM観察によって平均粒径と平均アスペクト比、数割合を求め、簡易的に算出することができる。
【0107】
まず、実施例1−1〜実施例11に第1の実施の形態に相当する実施例を示し、比較例1−1〜比較例2−2と比較する。
【0108】
(実施例1−1)
水アトマイズ法によって球状のFeCoAl磁性ミクロン粒子(第1の磁性粒子)を合成する。次に、高周波誘導熱プラズマ装置のチャンバー内にプラズマ発生用ガスとしてアルゴンを40L/分で導入し、プラズマを発生させる。このチャンバー内のプラズマに原料である平均粒径10μmのFe粉末と平均粒径10μmのCo粉末と、平均粒径3μmのAl粉末をアルゴン(キャリアガス)と共に3L/分で噴射、急冷して得られる球状のFeCoAl磁性ナノ粒子(第2の磁性粒子)を得る。FeCoAl磁性ミクロン粒子とナノ磁性粒子と結合材PVBをボールミルにて混合・造粒することで複合粉末を得る。これをプレス成形で一体化することで評価用の磁性材料とする。
【0109】
(実施例1−2)
実施例1において水アトマイズ法によりFeCoAl磁性ミクロン粒子の代わりにFeNiSi磁性ミクロン粒子を合成する。その後の処理は実施例1と同様の方法で評価用の磁性材料とする。
【0110】
(実施例2)
実施例1−2と同様にFeNiSi磁性ミクロン粒子およびFeCoAl磁性ナノ粒子を合成する。次にFeCoAl磁性ナノ粒子を、10ppm酸素中にて200℃で熱処理することで表面にFeCoAl−O被覆層を形成、コアシェル型の複合粒子を形成する。その後、FeCoAl−O被覆層が形成されたFeCoAl磁性ナノ粒子とFeNiSi磁性ミクロン粒子と結合材PVBをボールミルにて混合・造粒することで複合粉末を得る。これをプレス成形で一体化することで評価用の磁性材料とする。
【0111】
(実施例3−1)
実施例2と同様の方法で、球状のFeNiSi磁性ミクロン粒子および球状のFeCoAl磁性ナノ粒子を合成する。次に、共沈法によりSiOの微粉を合成する。これら、球状のFeCoAl磁性粒子と球状のFeNiSi磁性粒子とSiOの微粉をボールミルにて混合・造粒させることで複合粉末を得る。これをプレス成形することで一体化、評価用の磁性材料とする。
【0112】
(実施例3−2)
実施例3−1と同様の方法で複合粉末を得る。これに結合材PVBを添加、混合・造粒・プレス成型することで一体化、評価用の磁性材料とする。
【0113】
(実施例4−1)
実施例2と同様に、FeNiSi磁性ミクロン粒子とFeCoAl磁性ナノ粒子を合成する。FeCoAl磁性ナノ粒子をZrOボールとZrO容器を用いた遊星型ミルによってAr雰囲気下において約2000rpmの複合化処理し、磁性金属粒子と非磁性金属を含有する酸化物からなるナノグラニュラー型の複合粒子を合成する。複合粒子とFeNiSi磁性ミクロン粒子と結合材PVBをボールミルにて混合・造粒することで複合粉末を得る。これをプレス成形で一体化することで評価用の磁性材料とする。
【0114】
(実施例4−2)
実施例4−1と同様にFeCoAl磁性ナノ粒子を合成する。FeCoAl磁性ナノ粒子と実施例3−1と同様のSiO微粉をZrOボールとZrO容器を用いた遊星型ミルによってAr雰囲気下において約2000rpmの複合化処理にて磁性金属粒子と非磁性金属を含有する酸化物からなるナノグラニュラー型の複合粒子を合成する。複合粒子とFeNiSi磁性ミクロン粒子と結合材PVBをボールミルにて混合・造粒することで複合粉末を得る。これをプレス成形で一体化することで評価用の磁性材料とする。
【0115】
(実施例4−3)
実施例4−1と同様に磁性材料を作製するが複合粒子とFeNiSi磁性粒子(第1の磁性粒子)の体積率(VF3)を変えて合成する。
【0116】
(実施例5−1)
実施例2と同様にFeNiSi磁性ミクロン粒子およびFeCoAl−O被覆層が形成されたナノグラニュラー型のFeCoAl磁性ナノ粒子を合成する。次に、FeNiSi磁性ミクロン粒子およびFeCoAl−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeCoAl磁性ナノ粒子を遊星ミルによってAr雰囲気下において約2000rpmの複合化処理にて磁性金属粒子と非磁性金属を含有する酸化物からなるナノグラニュラー型の複合粒子をFeNiSi磁性ミクロン粒子間に合成し複合磁性粉末とする。次に、この複合磁性粉末をプレス成形で一体化、評価用の磁性材料とする。
【0117】
(実施例5−2)
実施例5と同様に複合磁性粉末を合成する。次に、この複合磁性粉末に結合材PVBを添加、混合してプレス成形で一体化、評価用の磁性材料とする。
【0118】
(実施例6−1)
実施例2と同様にFeNiSi磁性ミクロン粒子およびFeCoSi−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeCoSi磁性ナノ粒子を合成する。次に、FeCoSi−O被覆層が形成されたFeCoSi磁性ナノ粒子とB粒子とをボールミルにて十分に混合する。その後、真空中、600℃で熱処理を行うことによって、磁性金属粒子と非磁性金属を含有する酸化物からなるナノグラニュラー型の複合粒子を合成する。次に、複合粒子とFeNiSi磁性ミクロン粒子をボールミルにて混合、プレス成形の後、真空中で再度600℃で熱処理を行なうことで一体化、評価用の磁性材料とする。
【0119】
(実施例6−2)
実施例2と同様の方法でFeNiSi磁性ミクロン粒子およびFeCoSi−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeCoSi磁性ナノ粒子を合成する。次に、FeNiSi磁性ミクロン粒子にゾルゲル法にてSiOを被覆する。次にSiO被覆層が形成されたFeNiSi磁性ミクロン粒子とB粒子とをボールミルにて十分に混合する。その後、真空中、600℃で熱処理を行うことによって、磁性金属粒子と非磁性金属を含有する酸化物からなる複合体を合成する。次に、複合体とFeCoSi−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeCoSi磁性ナノ粒子をボールミルにて混合、プレス成形の後、真空中で再度600℃で熱処理を行なうことで一体化、評価用の磁性材料とする。
【0120】
(実施例7−1)
FeNiSi磁性ミクロン粒子の体積率VF1を変える以外は実施例2と同様の処理を行い磁性材料とする。
【0121】
(実施例7−2)
FeNiSi磁性ミクロン粒子の体積率VF1を変える以外は実施例2と同様の処理を行い磁性材料とする。
【0122】
(実施例7−3)
FeNiSi磁性ミクロン粒子の体積率VF1を変える以外は実施例2と同様の処理を行い磁性材料とする。
【0123】
(実施例8−1)
第1の磁性粒子の組成を変更する以外は実施例2と同様の処理を行い磁性材料とする。
【0124】
(実施例8−2)
第1の磁性粒子の形状を変更する以外は実施例2と同様の処理を行い磁性材料とする。なお、扁平粒子の製造は以下の通り。平均粒径40μmの磁性粒子をZrOボールとZrO容器を用いた遊星型ミルによってAr雰囲気下において約2000rpmの扁平化処理を行うことで表1に示す扁平粒子を得る。
【0125】
(実施例8−3)
第1の磁性粒子の組成、形状を変更する以外は実施例2と同様の処理を行い磁性材料とする。なお、扁平粒子の製造は以下の通り。平均粒径40μmの磁性粒子をZrOボールとZrO容器を用いた遊星型ミルによってAr雰囲気下において約2000rpmの扁平化処理を行うことで表1に示す扁平粒子を得る。
【0126】
(実施例9)
実施例2のFeNiSi磁性ミクロン粒子に部分酸化処理を施すことによって、FeNiSi−O酸化物をFeNiSi磁性ミクロン粒子の表面に形成、コアシェル型のFeNiSi磁性ミクロン粒子を作製する。また、FeCoAl−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeCoAl磁性ナノ粒子を合成する。その後の処理は実施例2と同じである。

【0127】
(実施例10−1)
実施例8−2と同様にFeNiSi扁平磁性ミクロン粒子を作製する。その後、得られた扁平粉末をH雰囲気下で十分に加熱処理を施し、均質な扁平磁性ミクロン粒子を得る。その後、得られた扁平磁性ミクロン粒子に部分酸化処理を施すことによって、FeNiSi−O酸化物被覆層をFeNiSi扁平磁性ミクロン粒子の表面に形成させ、コアシェル型のFeNiSi扁平磁性ミクロン粒子を作製する。その後の処理は実施例2と同じである。
【0128】
(実施例10−2)
実施例10−1と同様にFeSiCr扁平磁性ミクロン粒子を作製。その後、得られた扁平粉末をH雰囲気下で十分に加熱処理を施し、均質な扁平磁性ミクロン粒子を得る。その後、得られた扁平磁性ミクロン粒子に部分酸化処理を施すことによって、FeSiCr−O酸化物被覆層をFeSiCr扁平磁性ミクロン粒子の表面に形成させる。その後の処理は実施例2と同じである。
【0129】
(実施例10−3)
実施例10−1と同様にFeNiSi−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeNiSi扁平磁性ミクロン粒子を作製する。また、FeCoAl−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeCoAl磁性ナノ粒子をZrOボールとZrO容器を用いた遊星型ミルによってAr雰囲気下において約2000rpmの複合化処理することで実施例4と同様のナノグラニュラー型の複合粒子を形成する。その後、コアシェル型のFeNiSi扁平磁性ミクロン粒子と複合粒子とPVBを十分混合してプレス成型で一体化、評価用の磁性材料とする。
【0130】
(実施例10−4)
実施例10−2同様にFeNiSi−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeNiSi扁平磁性ミクロン粒子を作製する。その後、B粒子とコアシェル型のFeNiSi扁平磁性ミクロン粒子とFeCoAl−O被覆層が形成されたコアシェル型のFeCoAl磁性ナノ粒子をボールミルにて十分に混合する。その後、プレス成型の後、真空中で再度600℃熱処理を行なうことで一体化、評価用の磁性材料とする。
【0131】
(実施例11)
実施例10−3と同様の処理にてコアシェル型のFeNiSi扁平磁性ミクロン粒子と複合粒子とPVBを十分混合・造粒することで複合粉末を得る。これを磁場中で成型することで配向一体化、評価用の磁性材料とする。
【0132】
(比較例1−1)
実施例1で合成した球状のFeCoAl磁性ナノ粒子をPVBの結合材とともにプレス成形することによって、評価用の磁性材料とする。
【0133】
(比較例1−2)
実施例1で合成した球状のFeCoAl磁性ミクロン粒子をPVBの結合材とボールミルで混合し、プレス成形することによって、評価用の磁性材料とする。
【0134】
(比較例2−1)
実施例2で合成した球状のFeCoAl磁性ナノ粒子に、この磁性粒子に部分酸化法によりFeCoAl−O被覆層を形成し、コアシェル型の磁性ナノ粒子を形成する。これをPVBの結合材とともにプレス成形することによって、評価用の磁性材料とする。
【0135】
(比較例2−2)
実施例9同様の方法で球状のFeNiSi磁性ミクロン粒子をFeNiSi−O層で被覆してコアシェル型のFeNiSi磁性ミクロン粒子を得る、これをPVBの結合材とともにプレス成形することによって、評価用の磁性材料とする。
【0136】
実施例1−1〜実施例11および比較例1−1〜比較例1−2の評価用材料に関して、以下の方法で透磁率実部(μ’)、透磁率損失(μ−tanδ=μ”/μ’×100(%))を評価する。評価結果を表1に示す。
【0137】
インピーダンスアナライザーを用いて、リング状の試料の透磁率を測定する。測定は10MHzの周波数での実部μ’、虚部μ”を測定する。透磁率損失μ−tanδは、μ”/μ’×100(%)で算出する。
【0138】
【表1】

【0139】
表1に示すように、実施例によれば、高周波領域で高い透磁率と低い透磁率損失を備えた磁性材料が得られることが明らかである。
【0140】
次に、実施例12〜実施例14に第2の実施の形態に相当する実施例を示し、比較例3と比較する。表2に、粒子形状、粒子の平均高さ、アスペクト比、組成、結合材を示す。
【0141】
(実施例12)
実施例10−3同様の処理にてコアシェル型のFeSiCr扁平異方性磁性粒子と結合材のPVBを十分混合してスラリーを作製する。このスラリーをドクターブレード法でせん断応力を印加しながら異方性磁性粒子を配向させた固化物を形成する。成型した固化物を細分化・造粒することで配向複合粉末(磁性体)を得る。この磁性体を磁場中で成型することで配向一体化、評価用の磁性材料とする。
【0142】
(実施例13)
実施例10−3同様の処理にてコアシェルFeSiCr扁平異方性磁性粒子と結合材のPVBを十分混合してスラリーを作製する。このスラリーを、磁場中で、ドクターブレード法でせん断応力を印加しながら異方性磁性粒子を配向させた固化物を形成する。成型した固化物を細分化・造粒することで配向複合粉末(磁性体)を得る。この磁性体を磁場中で成型することで配向一体化、評価用の磁性材料とする。
【0143】
(実施例14)
実施例10−3同様の処理にてコアシェルFeSiCr扁平異方性磁性粒子と結合材のPVBを十分混合してスラリーを作製する。このスラリーを、磁場中で、ドクターブレード法でせん断応力を印加しながら異方性磁性粒子を配向させた固化物を形成する。成型した固化物を細分化・造粒することで配向複合粉末(磁性体)を得る。この磁性体を磁場中で成型する。さらに、この成型体をより強度の高い金型にて再度圧縮成型することで評価用の磁性材料とする。
【0144】
(比較例1)
実施例10−3同様の処理にてコアシェルFeSiCr扁平異方性磁性粒子と結合材のPVBを十分混合してスラリーを作製、ドクターブレード法でせん断応力を印加しながら磁場中成型することで評価用の磁性材料とする。
【0145】
実施例12〜実施例14および比較例1の評価用材料に関して、以下の方法で透磁率実部(μ’)、透磁率損失(μ−tanδ=μ”/μ’×100(%))を評価する。評価結果を表1に示す。
【0146】
インピーダンスアナライザーを用いて、リング状の試料の透磁率を測定する。測定は10MHzの周波数での実部μ’、虚部μ”を測定する。透磁率損失μ−tanδは、μ”/μ’×100(%)で算出する。
【0147】
【表2】

【0148】
表2に示すように、実施例によれば、高周波領域で高い透磁率と低い透磁率損失を備えた磁性材料が得られることが明らかである。
【符号の説明】
【0149】
10 第1の磁性粒子
12 第2の磁性粒子
14 介在相
16 複合粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm以上であり平均粒径が5μm以上50μm以下の複数の第1の磁性粒子と、
Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、粒径が1μm未満であり平均粒径が5nm以上50nm以下の複数の第2の磁性粒子と、
前記第1の磁性粒子および前記第2の磁性粒子間に存在する介在相と、
を備えることを特徴とする磁性材料。
【請求項2】
前記介在相が前記第2の磁性粒子の少なくとも一部を被覆し複合粒子が形成されていることを特徴とする請求項1記載の磁性材料。
【請求項3】
前記第2の磁性粒子が、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含有し、
前記介在相が前記非磁性金属の少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項2記載の磁性材料。
【請求項4】
前記複合粒子が前記第2の磁性粒子のそれぞれが、前記介在相の被覆層を有するコアシェル型粒子であることを特徴とする請求項3記載の磁性材料。
【請求項5】
前記磁性材料に対する前記第1の磁性粒子の体積率が、30vol%以上80vol%以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の磁性材料。
【請求項6】
前記複合粒子に対する前記第2の磁性粒子の体積率が、40vol%以上80vol%以下であることを特徴とする請求項2ないし請求項4いずれか一項記載の磁性材料。
【請求項7】
前記第1の磁性粒子に対する前記複合粒子の体積率が、10vol%以上30vol%以下であることを特徴とする請求項2ないし請求項6いずれか一項記載の磁性材料。
【請求項8】
前記第1の磁性粒子に対する前記第2の磁性粒子の体積率が、4vol%以上30vol%以下であることを特徴とする請求項1記載の磁性材料。
【請求項9】
前記複合粒子の前記介在相中の非磁性金属/磁性金属の原子比が、前記第2の磁性粒子中に含まれる非磁性金属/磁性金属の原子比よりも大きく、
前記複合粒子の前記介在相中に含まれる酸素の含有量が、前記第2の磁性粒子の酸素の含有量よりも大きいことを特徴とする請求項2ないし請求項4、請求項6または請求項7いずれか一項記載の磁性材料。
【請求項10】
Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有する複数の磁性粒子と、
前記磁性粒子間に存在する介在相を有し、
前記複数の磁性粒子の粒径がバイモーダルな粒径分布を備え、前記粒径分布の第1のピークに対応する粒径が5μm以上50μm以下であり、前記粒径分布の第2のピークに対応する粒径が5nm以上50nm以下であることを特徴とする磁性材料。
【請求項11】
前記バイモーダルな粒径分布のうち、前記第1のピークに対応する分布の粒径を備える粒子を第1の磁性粒子、前記第2のピークに対応する分布の粒径を備える粒子を第2の磁性粒子とする場合に、
前記介在相が前記第2の磁性粒子のすくなくとも一部を被覆し複合粒子が形成されていることを特徴とする請求項10記載の磁性材料。
【請求項12】
前記第2の磁性粒子が、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含有し、
前記介在相が前記非磁性金属の少なくとも1つを含有することを特徴とする請求項10または請求項11記載の磁性材料。
【請求項13】
前記複合粒子が前記第2の磁性粒子のそれぞれが、前記介在相の被覆層を有するコアシェル型粒子であることを特徴とする請求項11記載の磁性材料。
【請求項14】
前記磁性材料に対する前記第1の磁性粒子の体積率が、30vol%以上80vol%以下であることを特徴とする請求項10ないし請求項13いずれか一項記載の磁性材料。
【請求項15】
Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、平均粒径が5μm以上50μm以下の複数の第1の磁性粒子を合成し、
Fe、Co、Niからなる群から選ばれる少なくとも1つの磁性金属を含有し、平均粒径が5nm以上50nm以下の複数の第2の磁性粒子を合成し、
介在相を合成し、
前記第1の磁性粒子、前記第2の磁性粒子、前記介在相を混合し成型することを特徴とする磁性材料の製造方法。
【請求項16】
前記第2の磁性粒子と前記介在相からなる複合粒子を形成し、
前記複合粒子と前記第1の磁性粒子を混合し成型することを特徴とする請求項15記載の磁性材料の製造方法。
【請求項17】
前記第2の磁性粒子が、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含有し、前記介在相が前記非磁性金属の少なくとも一つを含有し、
前記複合粒子がそれぞれの前記第2の磁性粒子の少なくとも一部が前記介在相で被覆されるコアシェル型粒子を形成することを特徴とする請求項16記載の磁性材料の製造方法。
【請求項18】
前記第2の磁性粒子が、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、Ba、Sr、Cr、Mo、Ag、Ga、Sc、V、Y、Nb、Pb、Cu、In、Sn、希土類元素から選ばれる少なくとも1つの非磁性金属を含有し、前記介在相が前記非磁性金属の少なくとも1つを含有し、
前記複合粒子が複数の前記第2の磁性粒子が前記介在相で被覆されるナノグラニュラー型粒子を形成することを特徴とする請求項16記載の磁性材料の製造方法。
【請求項19】
異方性磁性粒子と結合材を含むスラリーを成型し、前記異方性磁性粒子を配向させた固化物を形成する工程と、
前記固化物を細分化し複数の磁性体を形成する工程と、
前記磁性体を磁場中で成型する工程と、
を有することを特徴とする磁性材料の製造方法。
【請求項20】
前記固化物を形成する工程において、前記スラリーを磁場中で成型することを特徴とする請求項19記載の磁性材料の製造方法。
【請求項21】
前記固化物を形成する工程において、前記スラリーをせん断応力を印加しながら成型することを特徴とする請求項19または請求項20記載の磁性材料の製造方法。
【請求項22】
異方性磁性粒子と結合材を含むスラリーを成型し、前記異方性磁性粒子を配向させた固化物を形成する工程と、
前記固化物を細分化し複数の磁性体を形成する工程と、
前記磁性体を磁場中で成型する工程と、
により製造されることを特徴とする磁性材料。
【請求項23】
請求項1ないし請求項14、請求項22いずれか一項記載の磁性材料を備えるインダクタ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−51329(P2013−51329A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189071(P2011−189071)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】