説明

磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物、磁性材樹脂複合材料、及び磁性材樹脂複合体

【課題】溶融時の流動性に優れ、成形時の磁性金属粉末の配向性にも優れており、磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物から得られた成形体が高い耐熱性、機械的特性を有しているとともに磁気特性に優れており、その成形品の表面に添加剤のブリードアウトがなく、外観の優れた成形品を提供すること。
【解決手段】JIS K−6920により測定された相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10 g/dm、25℃)が1.40〜1.80であって、末端カルボキシル基濃度が90μeq/g以下、末端アミノ基濃度が30μeq/g以下であるポリアミド樹脂97〜99.9質量%、ポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマー0.1〜3質量%からなることを特徴とする磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材樹脂複合体成形用のポリアミド樹脂組成物、複合材料、複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁性材樹脂複合体は磁性金属粉末と該磁性金属粉末をなす粒子同士を結合するバインダー樹脂よりなり、バインダー樹脂としてポリアミドが広く使用されている。このような磁性材樹脂複合体において磁気特性を向上させるために磁性金属粉末を高濃度に充填する必要がある。しかし、磁性金属粉末の配合量を多くしようとすると、磁性金属粉末の分散性が悪くなったり、射出成形等の方法で成形する時に溶融時の樹脂の流動性が極めて低下したり、溶融時における組成物中の磁性金属粉末の配向性が低下していた。そのため、たとえ磁性材樹脂複合体の成形が可能であったとしても、得られた成形品の磁気特性が極めて低下したり、成形品の外観(表面性)が極めて不良であったり、さらに成形品が機械的に脆くなるという問題点があった。
【0003】
この問題に対して、特許文献1には、ポリアミド樹脂にステアリン酸金属塩やビスアミド化合物を添加する方法が提案されているが、そのような方法では使用時の雰囲気によっては上記添加剤が成形時に成形品の表面にブリードし、成形品の表面の外観を著しく低下させるという不都合が生じている。また特許文献2には、脂肪族二価アルコールを、ポリアミド樹脂及び磁性金属粉末に使用する組成物が提案されているが、流動性改良という点からは未だ改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、溶融時の流動性が低下し、成形時の磁性金属粉末の配向性が低下し、得られた成形体が低い耐熱性、機械的特性を有しているとともに磁気特性に劣っており、その成形品の表面に添加剤のブリードアウトし、外観の低下する点であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、JIS K−6920により測定された相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10 g/dm、25℃)が1.40〜1.80であって、末端カルボキシル基濃度が90μeq/g以下、末端アミノ基濃度が30μeq/g以下であるポリアミド樹脂97〜99.9質量%、ポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマー0.1〜3質量%からなることを特徴とする磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物を完成させた。
【発明の効果】
【0006】
前述の磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物が有していた問題点を解決し、溶融時の流動性に優れ、成形時の磁性金属粉末の配向性にも優れており、磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物から得られた成形体が高い耐熱性、機械的特性を有しているとともに磁気特性に優れており、その成形品の表面に添加剤のブリードアウトがなく、外観の優れた成形品が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願発明の磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物は、特定の末端基濃度、相対粘度を有するポリアミドに対して、モノマー、オリゴマーを添加することにより、流動性を改良し、且つ機械的特性を維持し、磁性材樹脂複合体成形用として有益なものである。
【0008】
(1)ポリアミド樹脂について
ポリアミド樹脂は、主鎖中に酸アミド結合(−CONH−)を有するものであり、ラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られる。
【0009】
ラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等を、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンドデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0010】
ジアミンとジカルボン酸から誘導されるポリアミドの原料となるジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−/1,4−シクロヘキシルジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3−/1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0011】
ジアミンとジカルボン酸から誘導されるポリアミドの原料となるジカルボン酸としては、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−/1,8−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
ポリアミド樹脂において、これらラクタム、アミノカルボン酸、又はジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩から誘導される単一重合体又は共重合体を各々単独又は混合物の形で用いる事ができる。また、ポリアミド樹脂としては脂肪族ポリアミドが好ましい。
【0013】
脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリドデカンラクタム(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)等の単独重合体、これらの原料モノマーを用いたポリアミド共重合体、例えば、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアゼラミド共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンウンデカミド共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンドデカミド共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/ウンデカンラクタム共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ドデカンラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ドデカンラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンドデカミド共重合体(ポリアミド6/66/612)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0014】
これらの中でも、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種類のポリアミドが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種類のポリアミドがより好ましく、ポリアミド6、ポリアミド12及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種類のポリアミドがさらに好ましい。
【0015】
ポリアミド樹脂のJIS K−6920に準拠して測定した相対粘度は、1.40〜1.80であって、1.45〜1.75であることが好ましく、1.50〜1.70であることがより好ましい。相対粘度が前記の値未満であると、樹脂のみが流動して磁性金属粉末が流動しにくくなり、分散性が低下する。そのため、磁性材樹脂複合体の磁気特性が低下しやすい。また、磁性材樹脂複合体の機械的強度も低下しやすい。一方、前記の値を超えると、磁性材樹脂複合体成形時に、押出圧力やトルクが高くなりすぎて、製造が困難となる。ポリアミド樹脂の相対粘度が前記の範囲内であることにより、磁性金属粉末の分散性を高いレベルに維持できる。
【0016】
ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基濃度は、90μeq/g以下であって、10〜80μeq/gの範囲内であることが好ましく、20〜70μeq/gの範囲内であることがより好ましい。末端カルボキシル基濃度が前記の値を超えると、磁性金属粉末との相互作用が強固になりすぎるためか、成形時に溶融混合物の粘度が上昇しやすい。
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度は、30μeq/g以下であって、5〜25μeq/gの範囲内であることが好ましく、5〜20μeq/gの範囲内であることがより好ましい。末端アミノ基濃度が前記の値を超えると、加熱時に架橋反応が進行するためか溶融混合物の粘度が増大しやすくなるため、成形性が低下し、安定した成形ができないことがある。
【0017】
なお、末端アミノ基濃度(μeq/ポリマー1g)は、該ポリアミドをフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定することができる。末端カルボキシル基濃度(μeq/ポリマー1g)は、該ポリアミドをベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定することができる。
【0018】
ポリアミド樹脂の末端調整は、慣用の方法、例えば、末端調整剤の存在下で、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合する事により製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。あるいは、重合後、末端調整剤の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、末端調整剤は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、磁性材樹脂複合体成形時のポリアミド樹脂の流動性、成形性を考慮した場合、重合時の段階で添加することが好ましい。
【0019】
ポリアミド樹脂の末端調整に際しては、モノアミン、ジアミン、モノカルボン酸、ジカルボン酸のうちの1種あるいは2種以上を適宜組合せて添加することができる。例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン、m−/p−フェニレンジアミン、m−/p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンや酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、α−/β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−/2,6−/2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら末端調節剤の使用量は末端調節剤の反応性や重合条件により異なるが、最終的に得ようとするポリアミド樹脂の相対粘度と末端カルボキシル基濃度、末端アミノ基濃度が前記の範囲になるように適宜決められる。
【0020】
(2)モノマー、オリゴマーについて
本発明において使用されるポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマーとしては、上記のポリアミドを形成するモノマー成分及び/又は該モノマー成分から形成されるポリアミドオリゴマーが挙げられる。これらのモノマー成分は、前記ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分と同じものでも、異なるものでもよいが、同一のものであることが好ましい
【0021】
本発明で使用されるポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマーの配合量は、ポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドオリゴマーとポリアミド樹脂の合計量に対し、0.1〜3.0質量%であり、0.3〜2.0質量%であることが好ましく、0.5〜1.0質量部であることがより好ましい。モノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマーの配合量が前記の値未満であると流動性改良効果が小さい。一方、前記の値を超える、成形品の表面に添加剤のブリードアウトが見られ、外観の優れた成形品を得ることができない。
【0022】
ポリアミド樹脂とポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマーの配合方法は、ポリアミド樹脂とポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマーに、必要に応じて各種添加剤を配合し、公知の方法で混合することによって製造される。例えば、タンブラーやミキサーを用いて、成形時に原料を直接添加するドライブレンド法、成形時に使用する濃度で予め原料を一軸又は二軸の押出機を用いて溶融混練する練り込み法、あるいは予め高濃度で原料を一軸又は二軸の押出機を用いて練り込み、これを成形時に希釈して使用するマスターバッチ法等が挙げられる。
【0023】
本発明の磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物は、要求される特性に応じて他の添加剤、例えば耐熱剤、紫外線吸収剤を含む耐候剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、核剤、発泡剤、着色剤、安定剤、カップリング剤等を含有することができる。
【0024】
(3)磁性材樹脂複合材料について
磁性材樹脂複合材料は、JIS K−6920により測定された相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10 g/dm、25℃)が1.40〜1.80であって、末端カルボキシル基濃度が90μeq/g以下、末端アミノ基濃度が30μeq/g以下であるポリアミド樹脂99.9〜98質量%、ポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマー0.1〜3質量%からなるポリアミド樹脂組成物と磁性金属粉末よりなる。
【0025】
磁性金属粉末は、磁性を付与する機能を有し、プラスチック磁石に使用することができる公知の磁性金属粉末であれば、特に制限はなく、例えば、フェライト系磁性粉、アルニコ系磁性粉、希土類磁性等が挙げられる。フェライト系磁性粉としては、酸化鉄、炭酸バリウム等のバリウムフェライト系磁性粉、酸化鉄、炭酸ストロンチウム等のストロンチウムフェライト系磁性粉等が挙げられる。アルニコ系磁性粉としては、ニッケル、アルミニウム、コバルト、銅から成るアルニコ、ニッケル、アルミニウム、コバルト、銅、チタンから成るアルニコ等が挙げられる。希土類磁性粉としては、サマリウムコバルト、サマリウムコバルトのコバルト成分を銅、鉄、チタン、ジルコニウム、ナフニウム、ニオブ、タンタル等で置換した希土類コバルト磁石、ネオジウム−鉄−ホウ素磁石等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
磁性金属粉末の平均粒径は、0.1〜300μmであることが好ましく、0.1〜200μmであることがより好ましく、0.5〜100μmであることがさらに好ましい。磁性金属粉末の平均粒径が、前記の値を超えると、磁性材樹脂複合体の流動性や、機械的強度が低下する場合がある。
【0027】
磁性金属粉末の配合量は、磁性材樹脂複合材料全体に対して、50〜98質量%であり、65〜97質量%であることが好ましく、70〜95質量%であることがより好ましい。磁性金属粉末の配合量が前記の値未満であると、残留磁束密度が低く、永久磁石用途としての実用性は小さいうえに、樹脂の流動特性に対する効果が小さくなる場合がある。一方、前記の値を超えると、磁場配向性に劣り、樹脂成分の減少に伴う残留磁束密度の向上が見られない上に樹脂量が少ないため、流動性に劣り、これが混練及び成形工程にて充填不良等のトラブルを惹起させ、実用性に欠ける場合がある。
【0028】
磁性金属粉末は、本発明の磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物に配合した際の分散性又は密着性を改良するために、磁性金属粉末をカップリング剤や表面改質剤であらかじめ処理してもよい。カップリング剤又は表面改質剤として、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、亜リン酸エステルその他の有機リン化合物系、クロム系、メタクリレート系等の慣用のカップリング剤又は表面改質剤を使用できる。これらの種類は、バインダーとして用いる樹脂の種類により適宜最適なものを選択される。これらの中でも、ポリアミド樹脂との相溶性を高めるため、アミノ基含有シラン系化合物、チタネート系化合物を配合することがより好ましい。
【0029】
アミノ基含有シラン系化合物としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノジチオプロピルトリヒドロキシシラン、γ−(ポリエチレンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノプロピル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)−エチレンジアミン、γ−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
チタネート系化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
これらに加えて、添加剤として滑剤や安定剤等を使用し、磁性材樹脂複合材料の流動性、成形性や磁気特性を改良することも可能である。
滑剤としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス類、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコーングリ−ス等のポリシロキサン類、フッ素系オイル、フッ素系グリース、含フッ素樹脂粉末等のフッ素化合物、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、シリカ、アルミナ、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0032】
安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジドデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル−3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等のリン系の加工安定剤、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物等のヒンダードアミン系光安定剤、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール等の紫外線吸収剤、2’,3−ビス[(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)]プロピオノヒドラジド等の金属不活性剤、メラミンシアヌレート等の難燃剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
(4)磁性材樹脂複合材料、磁性材樹脂複合体の製造方法について
磁性材樹脂複合材料、磁性材樹脂複合体の製造方法について説明するが、特に以下に記載した製造方法に限定されるものではない。磁性材樹脂複合材料、磁性材樹脂複合体は、混合工程、混練工程、成形工程を経て製造される。混合工程にて、磁性金属粉末、本発明の磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物と必要に応じて各種添加剤を配合し、公知の方法で混合する。混合工程は、後記混練工程の前に行うことが好ましい。また、混合時に溶媒を使用する事は、カップリング剤及び滑剤を使用する際、均一に添加する意味で有効な手段となるが、必ずしも必要ではない。混合機は特に限定されるものではなく、リボンミキサー、V型ミキサー、ロータリーミキサー、ヘンシェルミキサー、フラッシュミキサー、ナウタミキサー、タンブラー等が挙げられる。また、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ウエットミル、ジェツトミル、ハンマーミル、カッターミル等を用いて、添加、粉砕混合をする方法も有効である。
【0034】
その際、磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物の形状は、ペレット、ビーズ、パウダー、ペースト状等、いずれでも良いが、混合物の均質性を高める意味で、粒度の細かい形態が望ましい。
【0035】
磁性材樹脂複合体は、混合物を溶融混練しながらそのまま所望の形状に成形する一段成形法や造粒により粉粒化したり、棒状又はシート状に押し出し、適当な大きさに切断又は粉砕してペレット化又は粉粒化した後(混練工程)、磁場をかけながら、射出成形、押出成形、圧縮成形等の慣用の方法により成形(成形工程)する二段成形法のどちらでも製造可能である。
【0036】
混練工程は、混合した磁性金属粉末、本発明の磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物と各種添加剤をブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸押出機、二軸押出機等を用いて50〜400℃の温度領域で混練する工程である。混練温度は、一般にポリアミド樹脂が溶融し、分解しない温度領域から選ばれる。混練物は、ストランドやシート状に押し出した後カッティング或いは、ホットカット、アンダーウオーターカット、もしくは冷却固化したブロック状の物を粉砕機にかける、といった方法でペレット状態やパウダー状態にして成形に供される。こうして磁性材樹脂複合材料を得ることができる。
【0037】
混練工程で得られた磁性材樹脂複合材料から、磁性材樹脂複合体を得るためには、更に成形加工処理を施す(成形工程)。中でも高い磁気特性をもつ磁性材樹脂複合体を製造する方法として、ペレット或いはパウダー状の磁性材樹脂複合材料を加熱溶融し、必要に応じ磁場をかけながら、射出成形、押出成形、圧縮成形する方法が挙げられる。押出成形の場合には、混練と共に行うこともできる。これらの成形法のなかで、特に射出成形法は、表面平滑性及び磁気特性に優れた磁性材樹脂複合体が得られると共に、成形形状の自由度が大きいことから有用性が大きい。成形温度は、前記混練温度と同様である。
【0038】
成形体は、通常さらに着磁を行って、永久磁石としての性能を高める。着磁は通常行われる方法、例えば静磁場を発生する電磁石、パルス磁場を発生するコンデンサー着磁機等によって行われる。このときの磁場強度は、15kOe以上であることが好ましく、30kOe以上であることがより好ましい。
【0039】
本発明の磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物は、特定の相対粘度、末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度を有するポリアミド樹脂にポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマーを配合しているため、溶融時の流動性に優れ、磁性材樹脂複合体成形時の磁性金属粉末の分散性、配向性にも優れているとともに、複雑な形状を有する成形品への適用が可能となる。さらに、磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物から得られた磁性材樹脂複合体が高い耐熱性、機械的特性を有しているとともに磁気特性に優れており、その成形品の表面に添加剤のブリードアウトがなく、外観の優れた成形品を得ることができる。
【実施例】
【0040】
以下において実施例及び比較例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の例に限定されるものではない。以下に、各種評価方法、使用した材料を示す。
【0041】
[物性測定、成形、評価方法]
(1)相対粘度
JIS K−6920に準じて、96%硫酸溶液(ポリマー濃度:10 g/dm)を使用してオストワルド型粘度計を用いて25℃で測定した。
【0042】
(2)末端カルボキシル基濃度
三つ口ナシ型フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、ベンジルアルコール40mLを加えた後、窒素気流下、180℃に設定したオイルバスに浸漬する。上部に取り付けた攪拌モーターにより攪拌溶解し、指示薬にフェノールフタレインを用いてN/20の水酸化ナトリウム溶液で滴定を行い、末端カルボキシル基濃度を求めた。
【0043】
(3)末端アミノ基濃度
活栓付三角フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、あらかじめ調整しておいた溶媒フェノール/メタノール(体積比9/1)の40mLを加えた後、マグネットスターラーで攪拌溶解し、指示薬にチモールブルーを用いてN/20の塩酸で滴定を行い、末端アミノ基濃度を求めた。
【0044】
(4)機械的物性
以下に示す〔1〕〜〔2〕の測定は、下記の試験片をシリンダ温度290℃、金型温度80℃の射出成形により作成し、これを用いて行った。
〔1〕 曲げ試験(曲げ強さ及び曲げ弾性率):試験片寸法127mm×12.7mm×6.5mmの試験片を用いてASTM D−790に準拠し、23℃で測定した。
〔2〕 衝撃強度(アイゾットノッチ付):試験片寸法62mm×12.7mm×12.7mmの試験片を用いてASTM D−256に準拠し、23℃で測定した。
【0045】
(5)流動性
シリンダ温度290℃、金型温度80℃にて、馬蹄形流動長さ測定用金型を使用し、射出成形圧力80MPaにおける流動長を測定した。流動長の値が大きいほど、流動性が良好である。
【0046】
[使用した原材料]
(A)ポリアミド
(A−1)ポリアミド12の製造
70リットルのオートクレーブに、ラウロラクタム20kg、水0.5kgとステアリン酸240g(1/120eq/molラウロラクタム)を仕込み、重合槽内を窒素置換した後、100℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで重合槽内温度を260℃まで昇温させ、槽内圧力を3.5MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて常圧に放圧し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において1時間重合を行なった。次いで、窒素をオートクレーブ内に導入し、常圧に復圧後、反応容器の下部ノズルからストランドとして抜き出し、カッティングしてペレットを得た。このペレットを減圧乾燥した。当該ポリマーの相対粘度は1.67、末端カルボキシル基濃度67μeq/g、末端アミノ基濃度23μeq/gであった(以下、このポリアミド12を(A−1)という)。
【0047】
(A−2)ポリアミド12の製造
(A−1)ポリアミド12の製造の製造において、ステアリン酸240g(1/110eq/molラウロラクタム)を390g(1/74eq/molラウロラクタム)に変えた以外は、(A−1)ポリアミド12の製造と同様の方法にて、相対粘度が1.56、末端カルボキシル基濃度84μeq/g、末端アミノ基濃度14μeq/gのポリアミドを得た(以下、このポリアミド12を(A−2)という)。
【0048】
(A−3)ポリアミド12の製造
(A−1)ポリアミド12の製造の製造において、ステアリン酸240g(1/110eq/molラウロラクタム)を66g(1/438eq/molラウロラクタム)に変え、減圧下において2時間重合を行なった以外は、(A−1)ポリアミド12の製造と同様の方法にて、相対粘度が1.87、末端カルボキシル基濃度49μeq/g、末端アミノ基濃度36μeq/gのポリアミドを得た(以下、このポリアミド12を(A−3)という)。
【0049】
(A−4)ポリアミド12/6共重合体の製造
(A−1)ポリアミド12の製造の製造において、ラウロラクタム20kgをラウロラクタム15kg、カプロラクタム5kgに変えた以外は、(A−1)ポリアミド12の製造と同様の方法にて、当該ポリマーの相対粘度は、1.70、末端カルボキシル基濃度64μeq/g、末端アミノ基濃度20μeq/gのポリアミドを得た(以下、このポリアミド12/6共重合体を(A−4)という)。
【0050】
実施例1
ポリアミド(A−1)19.8質量%、ラウロラクタム0.2質量%、β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランにて表面処理されたストロンチウムフェライト(平均粒径:1.3μm、BET比表面積:1.6m/g、表面処理量:1.0質量部)80質量%、[ペンタエリスリトール テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)]0.5質量部、ステアリン酸マグネシウム0.1質量部を小型のヘンシェルミキサーにて撹拌混合し、二軸押出機で混練し押出してペレット(磁性材樹脂複合材料)を製造した。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った。その結果を表1に示す。
【0051】
実施例2
実施例1において、ラウロラクタムを12−アミノドデカン酸に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得た。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った結果を表1に示す。
【0052】
実施例3〜5
実施例1において、ラウロラクタムの添加量を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得た。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った結果を表1に示す。
【0053】
実施例6
実施例1において、ポリアミド(A−1)を(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得た。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った結果を表1に示す。
【0054】
実施例7
実施例2において、ポリアミド(A−1)を(A−1)と(A−4)の混合物とし、表1に示す割合に変更した以外は、実施例2と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得た。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
実施例1において、ラウロラクタムを使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得た。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った結果を表1に示す。
【0056】
比較例2〜3
実施例1において、ラウロラクタムの添加量を表1に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得た。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った結果を表1に示す。
【0057】
比較例4
実施例1において、ポリアミド(A−1)を(A−3)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得ようとしたがトルクオーバーのため成形体が得られず機械的物性の測定はできなかった。
【0058】
比較例5
実施例1において、ラウロラクタムをエチレンビスステアリルアミドに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得た。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った結果を表1に示す。
【0059】
比較例6
実施例1において、ラウロラクタムを1,6−ヘキサンジオールに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて磁性材樹脂複合材料を得た。該磁性材樹脂複合材料を使用して上記評価を行った結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から明らかなように、モノマー及び/又はオリゴマーを使用しない比較例1は流動性に劣り、モノマー及び/又はオリゴマーの配合量が本発明の規定範囲未満である比較例2は流動性に劣っていた。また、モノマー及び/又はオリゴマーの配合量が本発明の規定範囲を超える比較例3は、その成形品の表面に添加剤のブリードアウトがあり、外観が劣り、本発明の規定以外の相対粘度、末端アミノ基濃度を有するポリアミドを使用した比較例4は、成形性に劣っていた。本発明に規定以外の添加剤を使用している比較例5、6は流動性が悪く、添加剤のブリードアウトも確認された。
一方、本発明に規定されているポリアミド樹脂組成物より得られる実施例1から7の磁性材樹脂複合材料は、溶融時の流動性に優れ、得られた磁性材樹脂複合体が高い機械的特性を有しており、その成形品の表面に添加剤のブリードアウトがなく、外観の優れた成形品が得られることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特昭開53−270701号公報
【特許文献2】特平開08−217970号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K−6920により測定された相対粘度(96%硫酸中、ポリマー濃度10 g/dm、25℃)が1.40〜1.80であって、末端カルボキシル基濃度が90μeq/g以下、末端アミノ基濃度が30μeq/g以下であるポリアミド樹脂97〜99.9質量%、ポリアミドのモノマー及び/又は9量体以下のポリアミドのオリゴマー0.1〜3質量%からなることを特徴とする磁性材樹脂複合体成形用ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
磁性粉体50〜98質量%と請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物2〜50質量%よりなる磁性材樹脂複合材料。
【請求項3】
請求項2に記載の磁性材樹脂複合材料よりなる磁性材樹脂複合体。

【公開番号】特開2010−222394(P2010−222394A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68197(P2009−68197)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】