説明

磁性粒子攪拌分離装置、磁性粒子攪拌装置、磁性粒子分離装置、磁性粒子攪拌分離方法、磁性粒子攪拌方法、磁性粒子分離方法、分析装置、および分析方法

【課題】本発明の目的は、磁性粒子を非磁性粒子と分離する磁性粒子攪拌分離装置において、反応容器内で混合液から測定対象物と磁性粒子などが結合した反応生成物とそれ以外の非磁性成分を短時間に効率よく分離し、後、該反応生成物を簡易に短時間に効率よく攪拌・洗浄し、後、該反応生成物を分離することが可能な磁性粒子攪拌分離装置を提供することにある、等。
【解決手段】同軸円筒状の反応容器の中心部が該中心部を通る垂線上の上部または下部の配置にあることで交互に形成される、「該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器とを有する磁性粒子攪拌部」と、「該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石とを有する磁性粒子分離部」と、を交互に有することを特徴とする磁性粒子攪拌分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子攪拌分離装置、磁性粒子攪拌装置、磁性粒子分離装置、磁性粒子攪拌分離方法、磁性粒子攪拌方法、磁性粒子分離方法、分析装置、および分析方法に関し、詳しくは、容器中に溶媒に分散浮遊する磁性粒子を捕集し、攪拌・洗浄し、捕集する、特に従来のものに比べ捕集効率の高い、攪拌・洗浄にも優れた、磁性粒子攪拌分離装置、磁性粒子攪拌装置、磁性粒子分離装置、磁性粒子攪拌分離方法、磁性粒子攪拌方法、磁性粒子分離方法、分析装置、および、分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、媒体中に分散させた磁性粒子を磁場をかけて捕集する装置は各種分析に用いられているが、以下では血液等の生体サンプル中の抗原、抗体の有無及びその量を測定する免疫分析装置を例にして従来の技術を説明する。
【0003】
免疫学的な分析の一手法として、分析過程で、磁性粒子を試料中の測定対象物と結合させる抗体と、標識物質を含む標識抗体とを反応容器中で抗原抗体反応を行わせ、試料中の測定対象物と磁性粒子及び標識物質が結合した反応生成物を磁気分離手段により非磁性成分と分離する方法が知られている。
【0004】
この方法として、例えば、反応容器の外側に配置した磁石により反応容器中の溶媒に分散浮遊している磁性粒子を反応容器壁の内側に吸引させ、その間に反応容器壁に吸引しなかった溶媒、粒子を洗い流すことにより磁性粒子と非磁性粒子を分離するという技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、磁性粒子の効率的な回収に関して、主に磁石の配置、形状の工夫により効率化を図っているが、磁性粒子の回収が未だ非効率である。
【0005】
又、スターラーによる攪拌・洗浄や磁石アレイの中を反応容器を移動させることにより磁性粒子の効率的な攪拌・洗浄を図っている技術が開示されている(例えば、特許文献3、4参照)が、磁性粒子の攪拌・洗浄の観点から未だ非効率である。
【0006】
反応容器内で混合液から測定対象物と磁性粒子などが結合した反応生成物とそれ以外の非磁性成分を、短時間に効率よく分離し、後、反応生成物を効率よく攪拌・洗浄することが可能な攪拌分離器の開発が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−28201号公報
【特許文献2】特開2008−209330号公報
【特許文献3】特開2006−266836号公報
【特許文献4】特表2003−504195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、磁性粒子を非磁性粒子と分離する磁性粒子攪拌分離装置において、反応容器内で混合液から測定対象物と磁性粒子などが結合した反応生成物とそれ以外の非磁性成分を短時間に効率よく分離し、後、該反応生成物を簡易に短時間に効率よく攪拌・洗浄し、後、該反応生成物を分離することが可能な磁性粒子攪拌分離装置を提供することにある。更には、磁性粒子攪拌装置、磁性粒子分離装置、磁性粒子攪拌分離方法、磁性粒子攪拌方法、磁性粒子分離方法、および、該装置、方法を用いた分析装置、分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、
・磁性粒子の効率的な回収に関して、先行技術(例えば、特許文献1、2参照)では主に磁石の配置、形状の工夫により効率化を図っているが、これに対して本発明では反応容器の形状を円柱状ではなく、同軸円柱状にすることにより効率化を図っている。反応容器を円筒状ではなく同軸円筒状にすることにより、円筒状に比べて磁性粒子の移動時間が短くなり、短時間で磁性粒子と非磁性粒子を分離することが可能となることを見出した。
【0010】
・更には、先行技術(例えば、特許文献3、4参照)では、スターラーによる攪拌や磁石アレイの中を反応容器を移動させることにより効率的な攪拌を図っている。それに対して、本発明者は、同軸円筒状の反応容器中心部に配置した導体に電流を流すことにより、反応容器内に同心円状に磁場を誘起することが可能となり、反応容器内での磁性粒子の攪拌・洗浄を確実、安定的に行うことが可能となることを見出した。
【0011】
・前記2項目を実施することにより、より効率的な磁性粒子と非磁性粒子の分離、および、攪拌・洗浄が可能な磁気粒子攪拌分離装置を提供できることを達成した。
【0012】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0013】
1.同軸円筒状の反応容器の中心部が該中心部を通る垂線上の上部または下部の配置にあることで交互に形成される、
該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器とを有する磁性粒子攪拌部と、
該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石とを有する磁性粒子分離部と、
を交互に有することを特徴とする磁性粒子攪拌分離装置。
【0014】
2.同軸円筒状の反応容器と、該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器とを有することを特徴とする磁性粒子攪拌装置。
【0015】
3.同軸円筒状の反応容器と、該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石とを有することを特徴とする磁性粒子分離装置。
【0016】
4.同軸円筒状の反応容器の中心部を該中心部を通る垂線上の上部または下部の配置にして交互に形成する、
該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器とを有する磁性粒子攪拌部を用いて該同軸円筒状の反応容器の中の磁性粒子を攪拌し、
該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石とを有する磁性粒子分離部を用いて該同軸円筒状の反応容器の中の磁性粒子を分離する、
ことを特徴とする磁性粒子攪拌分離方法。
【0017】
5.同軸円筒状の反応容器の中の磁性粒子を、該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器の導体に電流を流すことにより攪拌することを特徴とする磁性粒子攪拌方法。
【0018】
6.同軸円筒状の反応容器の中の磁性粒子を、該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石で該反応容器の壁面に分離回収することを特徴とする磁性粒子分離方法。
【0019】
7.前記磁性粒子攪拌部にて導体に電流を流すことにより誘起された磁場によって該磁性粒子を同心円に沿って攪拌し、前記磁性粒子分離部にて同軸円筒状の反応容器の内の磁性粒子を該反応容器の壁面に分離回収する、ことを特徴とする前記4に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【0020】
8.前記同軸円筒状の反応容器の中にて磁性粒子と試料とを接触させ、該同軸円筒状の反応容器の中心部には通電可能な導体を配置し、該反応容器の最外円筒部の周囲には磁石を配置可能にすることを特徴とする前記4または7に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【0021】
9.前記磁性粒子攪拌部の導体は通電可能な導体柱から成り、磁性粒子攪拌時には前記反応容器の中心部に配置する導体柱に通電することにより誘起された同心円状磁場に沿って磁性粒子を回転させることにより攪拌することを特徴とする前記4、7または8に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【0022】
10.前記磁性粒子分離部は、円周上に配置された磁石から成り、磁性粒子回収時には前記反応容器の中心部を該円周上に配置された磁石の中心部に設置し、該反応容器内の磁性粒子を該反応容器の最外円筒部壁面に分離回収することを特徴とする前記4、7〜9のいずれか1項に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【0023】
11.前記磁性粒子分離部での円周上に配置された磁石の中心部と、前記磁性粒子攪拌部での導体の中心部とを同軸上に上下に配置することを特徴とする前記4、7〜10のいずれか1項に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【0024】
12.前記1に記載の磁性粒子攪拌分離装置と、該磁性粒子攪拌分離装置に載置される同軸円筒状の反応容器に試薬を分注する試薬分注機構と、前記反応容器内で分離された磁性粒子に結合している標識体を検出する検出手段と、を備えたことを特徴とする分析装置。
【0025】
13.前記磁性粒子に結合している標識体の粒子径が100nm以上、5000以下であることを特徴とする前記12に記載の分析装置。
【0026】
14.前記4、7〜11のいずれか1項に記載の磁性粒子攪拌分離方法と、該磁性粒子攪拌分離方法に用いられる同軸円筒状の反応容器に試薬を分注する試薬分注方法と、前記反応容器内で分離された磁性粒子に結合している標識体を検出する検出方法と、を備えたことを特徴とする分析方法。
【0027】
15.前記磁性粒子に結合している標識体の粒子径が100nm以上、5000nm以下であることを特徴とする前記14に記載の分析方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、磁性粒子を非磁性粒子と分離する磁性粒子攪拌分離装置において、反応容器内で混合液から測定対象物と磁性粒子などが結合した反応生成物とそれ以外の非磁性成分を短時間に効率よく分離し、後、該反応生成物を簡易に短時間に効率よく攪拌・洗浄し、後、該反応生成物を分離することが可能な磁性粒子攪拌分離装置を提供することができる。更には、磁性粒子攪拌装置、磁性粒子分離装置、磁性粒子攪拌分離方法、磁性粒子攪拌方法、磁性粒子分離方法、および、該装置、方法を用いた分析装置、分析方法を提供することができる。
【0029】
即ち、本発明によれば、
・同軸円筒状の反応容器により、円筒状の反応容器に比べて磁性粒子の移動時間が短くなり、短時間で磁性粒子と非磁性粒子を分離することが可能となる。
・同軸円筒状の反応容器の中心部に配置した導体に電流を流すことにより、該反応容器内での磁性粒子の攪拌・洗浄を簡易に、確実、安定的に行うことが可能となる。
・前記2項目を実施することにより、効率的に、磁性粒子と非磁性粒子の分離を効率的に実施することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の磁性粒子攪拌分離装置の基本構成を示す平面図である。
【図2】図1に記載の本発明の磁性粒子攪拌分離装置の断面図である。
【図3】従来の磁気分離器の一例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0032】
本発明の磁性粒子攪拌分離装置は、試料と、磁性粒子と、この磁性粒子を前記試料中の測定対象物と結合させる抗体と、標識物質を含む標識抗体と、を反応容器内で混合し抗原抗体反応を行わせ、後、試料中の測定対象物を磁性粒子および標識物質が結合した反応生成物を含む混合液を、磁気分離手段(磁性粒子回収部と磁性粒子攪拌部)により磁性粒子に担持されている反応生成物を磁気的に補足されなかった非磁性成分から分離回収し、攪拌・洗浄するための磁性粒子攪拌分離装置として有効であり、またそれを備えた自動分析装置において有効に利用される。前記混合液に含まれる試料中には、分析精度低下の要因となる不純物が含まれる。そのため、磁気分離手段により反応生成物と不純物を含む非磁性成分を分離、および洗浄液中での攪拌・洗浄を数回繰り返し、不純物を含む非磁性成分を除去した後に、検出器で反応性生物量を定量することにより、分析精度を向上できる。
【0033】
ここでは、試料と、磁性粒子と、試料中の測定対象物に結合する抗体と、標識物質を含む標識抗体と、の抗原抗体反応を同軸円筒状の反応容器にて行う方式について、以下本発明の実施例を示す。
【0034】
図1に本発明の磁性粒子攪拌分離装置の基本構成を示す平面図を示す。図1aに本発明の磁性粒子攪拌分離装置による磁性粒子回収部(集磁)の基本構成を示す平面図を示し、図1bに本発明の磁性粒子攪拌分離装置による磁性粒子攪拌部(攪拌洗浄)の基本構成を示す平面図を示す。
【0035】
図2に図1に記載の本発明の磁性粒子攪拌分離装置の断面図(但し、理解の便宜上から一部分正面図)を示す。図2aに図1aに記載の本発明の磁性粒子攪拌分離装置による磁性粒子回収部(集磁)の基本構成を示す断面図(但し、理解の便宜上から一部分正面図)を示し、図2bに図1bに記載の本発明の磁性粒子攪拌分離装置による磁性粒子攪拌部(攪拌洗浄)の基本構成を示す断面図(但し、理解の便宜上から一部分正面図)を示す。
【0036】
本実施例で示す磁性粒子攪拌分離装置では、磁性粒子を捕捉回収するにあたり、反応生成物を磁気によって反応容器1の最外円筒部の内側壁面に効率よく捕捉回収することを可能とするため、反応容器1を覆うように磁石複合体2が配置されている。
【0037】
また、その後、不純物を効率的に攪拌洗浄除去にあたり、磁性粒子4に担持されている反応生成物を洗浄液にて攪拌・洗浄するため、反応容器の中心部に導体3が設置されている。この導体3に通電することにより導体3を中心として同心円状に回転磁場が発生し、磁性粒子4を洗浄液中で同心円状に移動(攪拌)させることにより、効率的な不純物の攪拌・洗浄除去を可能とする。
【0038】
そして、図2の図2a(磁性粒子回収部)、図2b(磁性粒子攪拌部)に示すように、反応容器1を上下に移動させることにより、磁性粒子4の捕捉回収と、磁性粒子4の攪拌・洗浄と、を効率的に行えるような配置となっている。以上のように反応容器1を上下に移動させることができる手段を設けたことにより、磁性粒子攪拌分離装置を広く応用することができる。
【0039】
尚、本発明において、前記磁性粒子4に担持されている反応生成物、即ち、磁性粒子に結合している標識体の粒子径が100nm以上、5000nm以下であることが、効率的な集磁、感度の観点から好ましく、500nm〜3000nmであることがより好ましい。
【0040】
《磁性粒子4に担持されている反応生成の捕捉回収、および、不純物を含む非磁性成分(反応液残液)の吸引除去》
具体的には、例えば、
一度反応容器1に磁石2を接触あるいは接近させると、反応容器1最外周内側壁に磁性粒子4に担持されている反応生成物が捕捉回収される。その状態で、反応容器1の内側壁に捕捉されなかった不純物を含む非磁性成分(反応液残液)を、吸引用ノズルで吸引除去できる。
【0041】
《磁性粒子4に担持されている反応生成物の洗浄液による攪拌・洗浄、および、捕捉回収(単離)》
その後、反応容器1を磁石2から十分に離して(例えば、上に移動して)洗浄液を分注すると、磁性粒子4に担持されている反応生成物は反応容器1の最外円筒部の内側壁面から離れやすくなり、磁性粒子4に担持されている反応生成物全体に洗浄液が行き渡り、前記の吸引除去のみでは除去しきれなかった磁性粒子4に担持されている反応生成物に付着していた不純物を剥離できる。
【0042】
続いて、次ぎに、中心部の導体3に通電することにより、導体3を中心に同心円状に回転磁場を誘起し、洗浄液中で磁性粒子4を移動させることにより、効率的に磁性粒子4の攪拌・洗浄を行うことができる。
【0043】
続いて、次ぎに、反応容器1を磁石2に接触あるいは接近させる(例えば、下に移動する)と、反応容器1の最外円筒部の内側壁面に磁性粒子4に担持されている反応生成物が捕捉回収される。その状態で、反応容器1の内側壁に捕捉されなかった不純物を含む洗浄液を、吸引用ノズルで吸引除去できる。
【0044】
上記磁性粒子4に担持されている反応生成物の洗浄液による攪拌・洗浄、捕捉回収を、必要に応じて適宜、繰り返し行うことにより、磁性粒子4に担持されている反応生成物を付着不純物が十分に洗浄除去された状態で簡便に単離することができる。
【0045】
従って、反応容器1を移動させる駆動手段を設けることは、特に磁性粒子4に担持されている反応生成物の繰り返し洗浄を効率的に簡便に実施でき、非常に有用である。
【0046】
《磁性粒子の回収効率、および、磁性粒子の洗浄効率》
ここで、本発明実施例における磁性粒子攪拌分離装置の有用性確認のため、本発明実施例および従来の磁気分離器の一例(比較)について、磁性粒子捕集効率の比較、および、磁性粒子洗浄効率の比較を実施した。
【0047】
従来の磁気分離器の一例の構成を図3に示す。従来の磁気分離器の一例は図3のような構成となり、偶数個(例えば8個)の磁石2を円柱状の反応容器31の周囲に本発明実施例と同様に放射状等間隔で磁界の向きを反応容器の中心に向けるが、隣り合う極が異極となるように配置されている。しかし、本発明実施例はここまで説明してきた通り、使用した反応容器は従来技術の円柱状の反応容器31ではなく同軸円柱状の反応容器1であり、図2の構成となっている。
【0048】
また、磁性粒子の攪拌に関しては、従来の磁気分離器の一例(図3)では、分注器による洗浄液の分注と同時に、洗浄液と反応生生物との混合液を再度吸引排出することにより、攪拌・洗浄が実行される。しかし、本発明実施例では、同軸円柱状の反応容器1の中心部に配置する導体3に電流を流すことにより、反応容器内に磁場を誘導し、磁性粒子の攪拌・洗浄を実行する。
【0049】
ここで、各構成要素の寸法は、本発明実施例にて使用した反応容器1は、外径12mm、内径8mm、高さ4000mmであり、ポリプロピレン製の容器である。
【0050】
従来の磁気分離器用の反応容器31としては、外径12mm、高さ5000mmであり、ポリプロピレン製の容器である。
【0051】
磁石2は7mm×1mm×7mm(7mmの辺のうち一方の方向に磁化:1.4T)とし、磁石2と反応容器は接触させた。磁石2は、ネオジウム系(信越化学コードN45相当品)のマグネット材である。
【0052】
また、磁性粒子数の測定にはベックマンコールター社のMultisizer3を用いた。磁性粒子溶液としては、Invitrogen社製Dynabeads M−270を純水で50倍希釈したものを用いた(以下M液と呼ぶ)。
【0053】
《磁性粒子の回収効率》
つぎに、磁性粒子回収時間および回収効率の測定手順について述べる。
【0054】
まず、充分に攪拌したM液150μlを分注した反応容器を、磁性粒子回収部に設置し、2秒,3秒,5秒,8秒,10秒経過後に、吸引ノズルにてM液を反応容器より吸引除去させた後、残液に150μlのMultisizer3(磁性粒子数の測定機器)用の希釈液アイソトンIIpcをピペッタにて分注、攪拌する。さらに攪拌後の溶液30μlを10mlのMultisizer3用の希釈液アイソトンIIpcで希釈した溶液500μlの磁性粒子数を測定した。
【0055】
また、リファレンスとして充分に攪拌したM液30μlを10mlのMultisizer3用の希釈液アイソトンIIpcで希釈した溶液500μlの磁性粒子数も測定した。本測定は、図1および図2に示す本発明実施例での同軸円柱状の反応容器および図3に示す従来の円柱状反応容器の各々について、表1記載の各捕集時間にて磁性粒子回収数の5重測定を行った。リファレンスでの磁性粒子回収数に対する各測定条件での磁性粒子回収数の平均値の比を磁性粒子回収率(%)として計算して求めて、磁性粒子の回収効率(%)を表す指標として示す。
【0056】
表1に、本発明実施例での磁性粒子攪拌分離装置101(本発明)および従来の磁気分離器102(比較)についての、捕集時間2秒,3秒,5秒,7秒,10秒での磁性粒子の回収効率(%)を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から明らかなように、従来の磁気分離器(円柱状の反応容器)では、95%以上の磁性粒子回収率の達成には10秒の捕集時間が必要であったのに対し、本発明の磁性粒子攪拌分離装置(同軸円柱状の反応容器)では5秒の捕集時間で済み、短時間に効率よく分離できることが判った。
【0059】
《磁性粒子の攪拌洗浄効率》
次に、磁性粒子の攪拌洗浄効率の測定手順について述べる。
【0060】
磁性粒子の攪拌法としては、比較については、従来技術のスターラーを用いた攪拌方法(特開2006−266836号)を用いた。
【0061】
M液150μlを分注した反応容器について、まず、磁性粒子回収部で磁性粒子を分離・補足した。分離・補足した状態のままで(即ち、液を除去することなしに)次ぎに、該反応容器を磁性粒子攪拌部に設置し、攪拌時間2秒,3秒,5秒,8秒,10秒経過ごとに、磁性粒子を再度回収し、それぞれ、磁性粒子の粒度分布の変動係数の測定を行った。
【0062】
本発明実施例での磁性粒子攪拌分離装置101(本発明)および従来の磁気分離器102(比較)についての、各測定時間での磁性粒子の粒径の変動係数を測定した結果を攪拌効率、即ち、攪拌洗浄効率を表す指標として表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2から明らかなように、比較の従来技術(スターラーを用いた攪拌方法)では、初期値の90%に達するのに8秒要しているのに対して、本発明では5秒の時間で済むことがわかった。反応生成物を短時間に効率よく簡易に攪拌・洗浄できることがわかった。
【符号の説明】
【0065】
1 反応容器(同軸円柱状の反応容器)
2 磁石複合体
3 導体
4 磁性粒子
5 混合液
6 電流
31 反応容器(円柱状の反応容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸円筒状の反応容器の中心部が該中心部を通る垂線上の上部または下部の配置にあることで交互に形成される、
該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器とを有する磁性粒子攪拌部と、
該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石とを有する磁性粒子分離部と、
を交互に有することを特徴とする磁性粒子攪拌分離装置。
【請求項2】
同軸円筒状の反応容器と、該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器とを有することを特徴とする磁性粒子攪拌装置。
【請求項3】
同軸円筒状の反応容器と、該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石とを有することを特徴とする磁性粒子分離装置。
【請求項4】
同軸円筒状の反応容器の中心部を該中心部を通る垂線上の上部または下部の配置にして交互に形成する、
該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器とを有する磁性粒子攪拌部を用いて該同軸円筒状の反応容器の中の磁性粒子を攪拌し、
該同軸円筒状の反応容器と該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石とを有する磁性粒子分離部を用いて該同軸円筒状の反応容器の中の磁性粒子を分離する、
ことを特徴とする磁性粒子攪拌分離方法。
【請求項5】
同軸円筒状の反応容器の中の磁性粒子を、該同軸円筒状の反応容器の中心部に配置された導体に電流を流す磁場発生器の導体に電流を流すことにより攪拌することを特徴とする磁性粒子攪拌方法。
【請求項6】
同軸円筒状の反応容器の中の磁性粒子を、該同軸円筒状の反応容器の最外円筒部の周囲に配置された磁石で該反応容器の壁面に分離回収することを特徴とする磁性粒子分離方法。
【請求項7】
前記磁性粒子攪拌部にて導体に電流を流すことにより誘起された磁場によって該磁性粒子を同心円に沿って攪拌し、前記磁性粒子分離部にて同軸円筒状の反応容器の内の磁性粒子を該反応容器の壁面に分離回収する、ことを特徴とする請求項4に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【請求項8】
前記同軸円筒状の反応容器の中にて磁性粒子と試料とを接触させ、該同軸円筒状の反応容器の中心部には通電可能な導体を配置し、該反応容器の最外円筒部の周囲には磁石を配置可能にすることを特徴とする請求項4または7に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【請求項9】
前記磁性粒子攪拌部の導体は通電可能な導体柱から成り、磁性粒子攪拌時には前記反応容器の中心部に配置する導体柱に通電することにより誘起された同心円状磁場に沿って磁性粒子を回転させることにより攪拌することを特徴とする請求項4、7または8に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【請求項10】
前記磁性粒子分離部は、円周上に配置された磁石から成り、磁性粒子回収時には前記反応容器の中心部を該円周上に配置された磁石の中心部に設置し、該反応容器内の磁性粒子を該反応容器の最外円筒部壁面に分離回収することを特徴とする請求項4、7〜9のいずれか1項に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【請求項11】
前記磁性粒子分離部での円周上に配置された磁石の中心部と、前記磁性粒子攪拌部での導体の中心部とを同軸上に上下に配置することを特徴とする請求項4、7〜10のいずれか1項に記載の磁性粒子攪拌分離方法。
【請求項12】
請求項1に記載の磁性粒子攪拌分離装置と、該磁性粒子攪拌分離装置に載置される同軸円筒状の反応容器に試薬を分注する試薬分注機構と、前記反応容器内で分離された磁性粒子に結合している標識体を検出する検出手段と、を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項13】
前記磁性粒子に結合している標識体の粒子径が100nm以上、5000以下であることを特徴とする請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
請求項4、7〜11のいずれか1項に記載の磁性粒子攪拌分離方法と、該磁性粒子攪拌分離方法に用いられる同軸円筒状の反応容器に試薬を分注する試薬分注方法と、前記反応容器内で分離された磁性粒子に結合している標識体を検出する検出方法と、を備えたことを特徴とする分析方法。
【請求項15】
前記磁性粒子に結合している標識体の粒子径が100nm以上、5000nm以下であることを特徴とする請求項14に記載の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−180111(P2011−180111A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47628(P2010−47628)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】