説明

磁性粒子集合体およびそれを用いた標的核酸の抽出装置および抽出方法

【課題】 微小な標的物質を磁性粒子で回収する際に、磁性粒子のサイズが小さいと微小物質を捕獲しやすくなるが、駆動するために大きな磁界を要求され制御が難しくなり、磁性粒子のサイズを大きくすると駆動はしやすくなるが、捕獲効率が低下するという問題があった。また、磁性粒子の大きさに対して比較的大きい空間で結合させることが多いため、磁性粒子と標的核酸が接触する確率が小さく回収効率確保が課題となっていた。
【解決手段】 複数個の磁性粒子を内包した集合体を構成し、集合体の状態で駆動を行ない、標的物質との結合の際は集合体が分解し磁性粒子が放出される。また、標的物質を有すると思われる物質内部に集合体を投入して、その限られた空間内で結合を行ない、結合して得られた複合体を任意面に保持した状態で物質を破壊する構成として結合および回収効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界により位置制御可能な粒子を用いて試料の中から標的物質を抽出装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁界に反応する粒子を用いて試料の中から標的物質を抽出する方法が一般に知られている。
【0003】
これはカオトロピック物質の存在下で核酸がシリカに結合することを利用して試料の中から核酸を磁気回収し分離するものである。
【0004】
磁性粒子に微小物質を保持させる場合、磁性粒子のサイズが小さいと体積に対する表面積の比が増えるので同体積または同重量の磁性粒子を用いると微小物質を捕獲しやすくなるが、磁性粒子1個あたりの磁性量が少ないので磁界の影響力が小さく、駆動するために大きな磁界を要求され、制御が難しくなるという問題があった。
【0005】
磁性粒子のサイズを大きくすると磁性量が多いので磁界の影響力が大きくなり、駆動もしやすくなるが、体積に対する表面積の比が減少するので、同体積または同重量の磁性粒子を用いると微小物質を捕獲しにくくなり捕獲効率が低下するという問題があった。
【0006】
こういった問題を解決するために表面の多数の穴、凹凸に磁性粒子のように遠隔操作できる遠隔作用体と、検査の目的物質を保持した担体が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−329602号広報
【非特許文献1】Nawal Kishor Mal(ナワル・キショール・マル)、藤原正浩、田中裕子,”化学物質の出入りが自由自在なカプセル材料”,[online]、平成15年1月23日、独立行政法人 産業技術総合研究所、[平成15年1月23日検索]<URL:http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20030123/pr20030123.html>、英科学誌ネーチャー、2003年1月23日号、Nawal Kishor Mal(ナワル・キショール・マル), Masahiro Fujiwara(藤原正浩) and Yuko Tanaka(田中裕子),”Photocontrolled reversible release of guest molecules from coumarin−modified mesoporous silica”、Nature
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術は、担体表面に穴、凹凸を形成して目的物質の捕獲効率向上をはかっているが担体自体の外形は比較的大きく、体積に対する表面積の比が小さい、という問題に対する完全な解決策とはいえない。また遠隔作用体が表面に露出しているため保存状態で磁気凝集する可能性がある。
【0008】
さらに、一般には磁性粒子と標的核酸の結合を、磁性粒子の大きさに対して比較的大きい空間、例えばチューブやチャンバ内で行なうことが多いため、磁性粒子と標的核酸が接触する確率が小さいため回収効率を確保するために時間を要するという課題があった。
【0009】
また、大きさがそろった細孔を有するシリカゲルの数nmの細孔出口部分に開閉可能な観音開き状の有機分子のドアを構成したものが開発されている。このドアはある波長の紫外線を照射することにより開閉し、この構造体の内部に化学物質を貯蔵し、必要なときにドアを開けて放出することが提案されている。(非特許文献1参照)
これを応用してシリカゲル内部に粒子を導入して遠隔操作し、必要な場所で放出することが考えられる。
【0010】
これにより比較的小さな粒子を用いることができるため体積に対する表面積の比が小さい、という問題を解決できる可能性があるが、標的核酸との結合を、磁性粒子の大きさに対して比較的大きい空間で行なう場合は上記と同様の問題が生じる場合がある。
【0011】
また、有機分子のドアを構成する手間や、ドアの開閉に異なる波長の紫外線を照射する手段が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも表面の一部が標的物質と結合可能な処理がなされ、磁界により位置制御可能な微粒子を基材内に複数個内包して集合させた内包型の微粒子集合体であって、内包された微粒子の放出を制御可能であることを特徴とする微粒子集合体である。
【0013】
本発明の集合体は、上記の集合体以外に、内部に標的物質を有する第一の物質の構造を破壊可能な薬品を内包し、反応場に投入されてから分解し薬品を放出するものであってもよい。
【0014】
更に本発明は、内部に標的物質を有する第一の物質を反応場に投入する工程と、少なくとも表面の一部が標的物質と結合可能な処理がなされ、磁界により位置制御可能な微粒子を基材内に複数個内包して集合させた内包型の微粒子集合体であって、内包された微粒子の放出を制御可能である微粒子集合体を反応場に投入する工程と、微粒子集合体を前記第一の物質内部に導入する工程と、微粒子集合体を第一の物質内部で分解させ内包された微粒子を放出する工程と、第一の物質内部で前記微粒子と標的物質と結合させる工程と、記微粒子と標的物質が結合した複合体を回収する工程と、複合体から前記標的物質を回収する工程とを有することを特徴とする標的物質抽出方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の微粒子集合体は、複数個の磁性粒子を内包した構造を有するため磁界の影響力を受けやすく駆動しやすく、かつ標的物質と結合する際には分解して個々の小さな微粒子となって動くので微小物質を捕獲しやすくなる。すなわち従来技術の相反する課題を解決することができる。
(1) 集合体を加熱や酵素処理等の簡単な手段で分解可能に構成したので、装置の構成が簡素である。
(2) 磁性粒子が集合体に内包されているため保存状態での凝集が生じにくい。
(3) 標的物質と磁性粒子の結合が細胞などの被処理物の中の限られた空間で行なわれるため接触の回数も多く、反応(結合)効率が良い。
(4) 標的物質と磁性粒子が結合してできた複合体を細胞などの被処理物内で任意方向に集中させて保持したまま細胞などの被処理物を破壊するので、複合体を比較的広い反応場に浮遊させることがない。したがって回収時間が短く効率も良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の集合体は、少なくとも表面の一部が標的物質と結合可能な処理がなされ、磁界により位置制御可能な微粒子を基材内に複数個内包して集合させた内包型の微粒子集合体であって、内包された微粒子の放出を制御可能であることを特徴とする微粒子集合体である。この際、微粒子集合体には微粒子と標的物質の結合反応を促進する結合反応促進剤を内包していることが好ましく、微粒子集合体はその内部で微粒子と反応促進剤が反応の順に多層に内包され、微粒子と反応促進剤がこの順に放出されることがより好ましい。
【0017】
標的物質が核酸であり、微粒子は、少なくとも表面の一部にシリカ層がコーティングされ、反応促進剤がカオトロピック物質であることが好ましい。
【0018】
標的物質が核酸の場合、微粒子は表面に核酸と結合可能な修飾を施しても良い。
【0019】
更に、集合体は、微粒子の変わりに、内部に標的物質を有する第一の物質の構造を破壊可能な薬品を内包させることで、第一の物質の構造を破壊する際に使用することができる。
【0020】
集合体の具体的な構成の一例は、外殻を構成するカプセル部分と、カプセル内に複数個の磁界により位置制御可能な微粒子あるいは第一の物質の構造を破壊する薬品が内包されている構成を挙げることができる。
【0021】
磁界により位置制御可能とするための微粒子としては、磁性微粒子が好ましい。磁性微粒子としては、磁気に反応する金属あるいはフェライトのような材料を用いることができる。磁石からの磁界に対応して磁石に引き寄せられる力は、磁性微粒子が強磁性体であることが好ましい。
【0022】
磁性微粒子は、カプセルに内包され外部と遮断されているため、保存状態で、複数の集合体間での凝集が生じにくい構成となっている。
【0023】
更に、内包された微粒子は標的物質(例えば、核酸)と結合するために表面に表面修飾が施されている。
【0024】
上記の構成以外に、反応場に投入後、標的物質が内包された被処理物、例えば、マクロファージ(大食細胞)の細胞壁を破壊する薬品をカプセル内に内包させ、反応場に投入後集合体のカプセルを分解して薬品を放出する構造も標的物質を抽出する際に使用することができる。
【0025】
本発明は、少なくとも、内部に標的物質を有する第一の物質を反応場に投入する手段と、上述の、少なくとも表面の一部が標的物質と結合可能な処理がなされ、磁界により位置制御可能な微粒子を複数個内包した集合体を反応場に投入する手段と、微粒子集合体を第一の物質内部に導入する手段と、微粒子集合体を第一の物質内部で分解し内包された微粒子を放出する手段と、第一の物質内部で微粒子と標的物質と結合させる手段と、微粒子と標的物質が結合した複合体を回収する手段と、複合体から標的物質を回収する手段とを有する標的物質抽出装置である。
【0026】
微粒子集合体を第一の物質内部に導入する手段は、反応場に印加される磁界であっても良い。更に、微粒子集合体を第一の物質内部に導入する手段が、第一の物質を穿孔する穿孔手段と、第一の物質の穿孔部分から微粒子集合体を導入する手段とからなっていても良い。
【0027】
微粒子集合体を第一の物質内部に導入する手段は、微粒子集合体と第一の物質を衝突させ第一の物質を穿孔する手段と、第一の物質の穿孔部分から微粒子集合体を投入する手段とからなっていても良い。
【0028】
第一の物質内部で微粒子と標的物質と結合させる手段は、第一の物質内で微粒子を駆動する手段を含むことができる。この駆動手段は、反応場に印加される磁界であっても良い。
【0029】
微粒子が標的物質と結合し複合体を形成した後、微粒子が第一の物質に内包されたまま複合体を所定位置まで駆動し保持する手段を有することもできる。
【0030】
微粒子が第一の物質に内包されたまま複合体を所定位置まで駆動し保持する手段は、反応場に印加される磁界であっても良く、複合体を所定位置に保持した後、少なくとも第一の物質の構造を破壊する破壊手段を有することができる。
【0031】
破壊手段として、反応場に投入後、標的物質が内包された第一の物質、例えば、マクロファージ(大食細胞)の細胞壁を破壊する薬品をカプセル内に内包させ、反応場に投入後集合体のカプセルを分解して薬品を放出するような集合体を使うこともできる。この集合体を使う場合、集合体を第一の物質もしくは反応場内の第一の物質近傍で衝突させることにより分解させ、内包された薬品を反応場に放出することで第一の物質を破壊することができる。
【0032】
更に、本発明は、内部に標的物質を有する第一の物質を反応場に投入する工程と、磁界により位置制御可能な微粒子が内包されている微粒子集合体を反応場に投入する工程と、微粒子集合体を第一の物質内部に導入する工程と、微粒子集合体を第一の物質内部で分解させ内包された微粒子を放出する工程と、第一の物質内部で微粒子と標的物質と結合させる工程と、微粒子と標的物質が結合した複合体を回収する工程と、複合体から標的物質を回収する工程とを有することを特徴とする標的物質抽出方法である。
【0033】
微粒子集合体を第一の物質内部に導入する工程は、反応場に印加される磁界であても良く、微粒子集合体を第一の物質内部に導入する工程が、第一の物質を穿孔する穿孔工程と、第一の物質の穿孔部分から微粒子集合体を導入する工程とからなっていても良い。
【0034】
第一の物質を穿孔する穿孔工程は、微粒子集合体と第一の物質を衝突させ第一の物質を穿孔することができる。
【0035】
第一の物質内部で微粒子と標的物質と結合させる工程は、第一の物質内で微粒子を駆動する工程を含んでいても良く、駆動する工程は、反応場に印加される磁界であっても良い。
【0036】
更に、微粒子が標的物質と結合し複合体を形成した後、微粒子が第一の物質に内包されたまま複合体を所定位置まで駆動し保持する工程を有することができ、この微粒子が第一の物質に内包されたまま複合体を所定位置まで駆動し保持する工程は、反応場に印加される磁界であっても良い。
【0037】
更に、複合体を所定位置に保持した後、少なくとも第一の物質の構造を破壊する破壊工程を有しても良い。この破壊工程は、反応場に投入後、標的物質が内包された第一の物質、例えば、マクロファージ(大食細胞)の細胞壁を破壊する薬品をカプセル内に内包させ、反応場に投入後集合体のカプセルを分解して薬品を放出するような集合体から放出される薬品であっても良い。この際に、集合体を第一の物質もしくは反応場内の第一の物質近傍で衝突させることにより分解させ、内包された薬品を反応場に放出させることができる。
【0038】
標的物質となる対象の細胞を含む試料が導入された反応場へ、少なくとも表面の一部が標的物質と結合可能な処理がなされ、磁界により位置制御可能な微粒子(例えば、磁性微粒子)を複数個内包した微粒子集合体(以下、集合体と略す場合がある。)を投入する。反応場の周辺には電極、電磁石が配置されている。電極にパルス電圧印加し、反応場に電界を発生させて対象の細胞に穿孔を行なう。それと同時に電磁石に電流を流し、反応場に磁界を印加して集合体中の微粒子に磁界を作用させて対象の細胞に引き寄せる。細胞近傍まで引き寄せられた微粒子は穿孔部から細胞内に入っていく。この際、電磁石に印加する電流はパルス電流であっても良い。
【0039】
穿孔は数ミリ秒以内に閉じてしまうため、穿孔が形成されている時間内に電磁石により磁界を発生させ微粒子を効率よく移動させて細胞内に投入させる。また、電気穿孔を行なうパルスの回数や電圧値及びパターン、あるいは電磁石のオン/オフや電流値を調節し最適化することができる。
【0040】
集合体は細胞内に導入されるとそのカプセル部分が溶解し、磁性微粒子が細胞内に放出される。
【0041】
集合体に、少なくとも表面の一部が標的物質と結合可能な処理がなされ、磁界により位置制御可能な微粒子を複数個内包させることで、微粒子を小さな磁力で効果的に駆動することができ、かつ細胞内では多数の微粒子により多くの標的物質を捕獲することができる。
【0042】
細胞内に放出された微粒子の表面に形成された修飾部分が細胞内に存在する標的核酸と結合する。
【0043】
なお、このときに電磁石により磁界を変化させる、あるいは複数の電磁石を設け、各々の電磁石の磁界を変化させ細胞内で微粒子を動かすことにより、浮遊する微粒子と標的核酸が接触する確率が高くなり結合する数が増えて効率が高くなる。この間、電極にパルス電圧は印加されていないので細胞は閉じていて磁性粒子が細胞外部に漏れることはなく、標的核酸と微粒子を限られた空間内で効率的に反応させることができるので結合効率を上げることができる。
【0044】
磁性粒子が標的核酸と結合した後、電磁石により磁性粒子−核酸の複合体を細胞の一方に集中させる。集中させる場所は、細胞が動かないように保持できる場所であれば特に制約はない。
【0045】
複合体を細胞の一方に集中させた後、電極にパルス電圧を印加して穿孔を開始するとともに、反応場に細胞処理する酵素を投入し穿孔部から細胞内に浸入させる。このときは集合体を細胞に投入するときよりも大きな電圧をより短い周期で印加などして細胞膜の穿孔をじょじょに大きくしていくとともに酵素の力によって細胞の破壊を進める。このとき磁界は継続して印加されており磁性粒子−核酸の複合体は任意面に保持されている。
【0046】
細胞膜の破壊が進行していくと磁性粒子−核酸の複合体が反応場に露出し、磁界が印加されているので磁性粒子−核酸の複合体は保持面固定されたままなので複合体が反応場に浮遊することがないので回収効率が高い。この時点で電極へのパルス電圧の印加を停止する。
【0047】
細胞膜の破壊が終了したら反応場に水、低塩濃度の緩衝溶液といった溶液を投入して磁性粒子−核酸の複合体から核酸のみを溶出させる。この間、磁界により磁性粒子は任意面に保持されており、溶出液により核酸だけが反応場に浮遊する。この後、核酸を所定位置に回収する。
(第1の実施例)
本実施例では、磁界を印加することによって動かすことができる複数の磁性微粒子を内包した集合体について図面を用いて説明する。
【0048】
図1、図2、図9及び図10は、磁界を印加することによって動かすことができる複数の磁性微粒子を内包した集合体の構造を示す断面図である。
【0049】
図1に示す複数の磁性微粒子を内包した集合体1は、集合体の外殻を構成するカプセル部分2と外部から印加された磁界によって動かされる磁性微粒子3と、磁性微粒子3の表面に形成された核酸と結合させるための表面修飾層4から形成されている。集合体がカプセル構造の場合、外殻や皮膜などのカプセル構造体そのものの、微粒子を結合剤層に分散状態で含む場合の結合剤層などに相当する。
【0050】
集合体の外殻を構成するカプセル2は、リン脂質からなる数100nm程度以下の大きさのリポソ−ム(脂質二重層膜閉鎖小胞)あるいはゼラチン、セルロース、ワックス、その他一般にマイクロカプセルに用いられる材料であっても良い。リポソームによるカプセルの製法はすでに内部に薬剤を内包したドラッグデリバリーシステムで実現されており、それと同じ製造方法で作成する。製法の一例としては特開平09―024269に記載されているようなものがある。またその他のカプセルの製法としては界面沈積法、界面反応法といった公知の技術を用いて作成すればよい。磁性微粒子3は、大きさ数nm〜数10nm程度のフェライトやニッケル等の金属微粒子であり、カプセル2の中に複数個内包されている。磁性微粒子3の材料は上記以外であっても、外部磁界で駆動可能であれば良い。表面修飾層4は、本実施例ではシリカコーティングされたものを用いた。以下、磁性微粒子の表面にシリカコーティングを表面修飾層として形成したものをシリカ磁性微粒子と称する。カプセル部分2は、磁性微粒子3の他に緩衝溶液や水を内包させても良い。本実施例では、カオトロピック物質5が内包されている。
【0051】
本実施例では大きさ15〜20μmのマクロファージ中から核酸を抽出するのに適した、カプセル2、磁性微粒子3の大きさを示しているが、用途に応じて適した大きさにすれば良い。また内包する磁性微粒子3の個数は抽出する対象に応じて適した個数にすれば良い。
【0052】
図2は集合体1の別の形態を示すものである。カプセルが二重に構成されたもので、セルロース外壁17、磁性微粒子18、磁性微粒子18の表面修飾層19、セルロース内壁20およびセルロース内壁20に内包されるカオトロピック物質21から構成されている。図2に示すようにカプセルを二重構造にして外側から磁性粒子18、カオトロピック物質21の順番に個別にまとめても良い。
【0053】
製法は特に記載しないが、通常の2重構造のカプセルの製造方法と同様の製法をもちいて製造することができる。
【0054】
図1および2に示される集合体1はリポソームで構成したカプセルにシリカ磁性微粒子を内包したものであったが、錠剤の形状をした集合体を使うこともできる。
【0055】
図9は錠剤22の断面図である。磁性微粒子24は、結合剤および必要に応じ用いられるその他の成分23により錠剤22を構成している。ここで結合剤はセルロースである。
【0056】
上述の第1の実施例および第2の実施例と同様、磁性微粒子24は、表面にシリカコーティングが施され、図1における磁性微粒子3および表面修飾層4をまとめて表わしたものである。錠剤22には磁性微粒子の他にカオトロピック物質も含まれている。
【0057】
図10は錠剤22の別の形態を示すものである。磁性粒子24、カオトロピック物質25でありこのように錠剤22を二重構造にして外側から磁性粒子24、カオトロピック物質25の順番で個別にまとめても良い。錠剤は湿式顆粒圧縮法、乾式顆粒圧縮法、直接打錠法といった公知技術を用いて作成することができる。
【0058】
図示しないが、上記のカプセル構造を用い、その中に複数の磁性微粒子を含む集合体以外に、内部に標的物質を有する被処理物の構造を破壊可能な薬品を内包した集合体としても良い。
(第2の実施例)
血液中のマクロファージに含まれる感染症の細菌の核酸を取り出す例について説明する。血液中のマクロファージの大きさは、15〜20μmであるので図1に示す集合体1を用いた。
【0059】
図3は本発明による核酸抽出装置の第一実施例の概略構成を示す図である。
【0060】
図3に示した核酸抽出装置は、少なくとも内部に標的物質となる血液の成分を含む被処理物であるマクロファージ6、磁性微粒子や細胞を含む試料などを導入するための流路7、マクロファージ6へ集合体1を導入する反応場8、反応場を挟み込むように配置され、パルス発生電源(不図示)に接続された一対の電極9A、9B及び反応場に磁界を発生する少なくとも1以上の電流を制御できる電流制御装置(不図示)と接続された電磁石10が配置されている。電磁石10は、磁界により集合体10を移動させる機能を持っているので、集合体10を移動することでマクロファージ6に形成された電気穿孔から集合体10をマイクロファージ6内に導入するものである。集合体10に任意の運動を起こさせるためには複数の電磁石を反応場に設け、複数の電磁石をオン・オフすることで制御することができる。電磁石10の変わりに永久磁石を用いても良いことは言うまでもない。永久磁石を用いる場合は、永久磁石を反応場から遠ざける、あるいは、少なくとも永久磁石の反応場に面する側に磁場を遮蔽する、例えばアルミニウムのような非磁性体で覆うことで達成される。
【0061】
マイクロファージ6は、外壁を介して外部と区分された内部領域を内包し、この領域内に内包される標的物質となる血液成分等は移動可能である。
【0062】
図中、電磁弁26および28が排出路27および29に形成されている。この電磁弁26および28が形成された排出路27および29は反応場中に浮遊した核酸および溶出液を流すものである。排出路29の先には不図示の回収部があり、そこで核酸および溶出液が回収される。なお、電磁弁26を経由する排出路27は核酸、溶出液以外の反応場に投入した物質、溶液を流して廃棄する経路となっている。
【0063】
図4および図8の反応場は図3と同一のものであるので上記の構成の説明は省略する。
【0064】
次に、核酸抽出装置を用いた核酸抽出方法を説明する。
【0065】
まず、マクロファージ6を含む試料を流路7から反応場8へ注入する。マクロファージ6を含む試料溶液は水を用い調製した。試料溶液を調製用の媒体としては、水以外に緩衝溶液を用いることができる。マクロファージを含む試料溶液を反応場に導入するとマクロファージ固定プレート11の表面にマクロファージ6が付着する。
【0066】
マクロファージ固定プレート11としては市販されているマクロファージ(単球)純粋分離用特殊コーティングプレートを用いた。
【0067】
次に、反応場8を挟むように配置された一対の電極9A、9Bにパルス電圧を印加する。このとき、細胞膜内外の電位差が1ボルト程度以上になるようにパルス電圧を印加するとマクロファージ6の表面に一過的な穿孔が開く。この現象は電気穿孔と呼ばれ、細胞の両電極に面した細胞膜間の電位差を打ち消すように細胞内でイオンが移動し、それによって発生した細胞膜内外の電位差によって細胞膜の静電破壊が起こるものと考えられている。
【0068】
集合体1は、試料を反応場8に投入する前から反応場8に入れておいても良いし、試料を反応場8に投入してから投入しても良い。図3に示される核酸抽出装置では反応場8の上部に集合体1を格納する貯蔵部12が設けられている。試料を反応場に投入する前は弁13により反応場から遮断されている。
【0069】
図4はマクロファージ6に電気穿孔を行ないながら集合体1を反応場8に投入している図である。
【0070】
電極9A、9Bにパルス電圧を印加するのとほぼ同時に集合体保持部の弁13(図3参照)を開放し、電磁石10を駆動させる。図4のマクロファージ6の外形線が途切れている部分が穿孔部であり、ここから集合体1がマクロファージ6内へ導入される。図4では各マクロファージ6に集合体1が1個ずつ導入された状態を示すもので、予想される標的核酸の数、集合体1内の磁性微粒子3の数、対象細胞(ここではマクロファージ)の大きさによって適正な個数を導入すれば良い。穿孔回数、時間により導入する個数を制御する。14はマクロファージ6から取り出す標的核酸で感染症の細菌の核酸である。
【0071】
図11は、電極9A、9Bに印加するパルス電圧と電磁石に印加する電流のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0072】
電磁石に印加するパルス電流は、電極9A、9Bに電圧が印加されマイクロファージ6に電気穿孔が生じるタイミングで集合体1が所望の運動量を得るように電流を磁石に印加する(図11 1参照)必要があり、電極への電圧の印加が終了し、マイクロファージ6に生じた電気穿孔が閉じるタイミング(図11 2参照)では、集合体1の運動は停止しても良いので磁石への電流の印加をとめても良い。
【0073】
穿孔は数ミリ秒以内に閉じてしまうため、その時間内に電磁石10により磁界を発生させ磁性粒子を効率よく移動させて細胞内に投入させる。また、電気穿孔を行なうパルス回数や電圧及びパターン、あるいは電磁石10のオン/オフや電流値は任意に調節し最適化することができる。
【0074】
図5は1個のマクロファージ6の拡大図であり、シリカ磁性微粒子15は図1の磁性微粒子3および表面修飾層4をまとめて表わしたものである。シリカ磁性微粒子15がマクロファージ6内を浮遊し、その一部が標的核酸14と結合している状態を示している。
【0075】
集合体1のカプセル2(図1参照)は、温度に応答して親水性から疎水性に変化する温度感受性高分子で表面修飾されたリポソ−ムとすることにより、内包したシリカ磁性微粒子15の放出を温度によって制御できる。例えば40℃程度で親水性から疎水性へ変化する外膜を有するリポソ−ムを用い、マクロファージ6内に集合体1が投入されてから不図示の加熱手段により反応場8を加熱して集合体1内部のシリカ磁性微粒子15をマクロファージ6内に放出させる。また、膜融合能を有するリポソ−ムを用いて、集合体1と細胞膜が融合することにより、集合体の中身を細胞の内部に導入しても良い。また、カプセル2は浸透圧で分解するものであっても良い。
【0076】
カプセル2は対象の細胞(ここではマクロファージ)の中に入ってから分解する構成でも良いし、細胞内に入る前からじょじょに分解していく構成であっても良い。例えば投入されてからじょじょに分解し、対象細胞に入る前から内部の微粒子が放出されるものであっても、磁界によって集合体1が近傍まで引き付けられているので、穿孔部から細胞内に必要とされる量のシリカ磁性微粒子15を投入できるからである。
【0077】
上述の構成にすることにより磁性微粒子を小さな磁力で効果的に駆動することができ、かつ細胞内では多数の微粒子により多くの標的物質を捕獲することができる。
【0078】
マクロファージ6内でカプセル2が分解すると内包されていたシリカ磁性微粒子15とカオトロピック物質が細胞内に放出される。マクロファージ6には細菌の核酸が存在しており、カオトロピック物質の存在下で核酸がシリカに吸着されることを利用してシリカ磁性微粒子15で細菌の核酸を回収する。カオトロピック物質は集合体1に内包させても良いし、反応場8に試料とともに混合しておいて、穿孔部から浸入することを利用しても良い。
【0079】
このときに電磁石10(図4参照)により磁界を変化させてマクロファージ6内でシリカ磁性微粒子15を動かすことにより、浮遊するシリカ磁性微粒子15と細菌の核酸14が接触する確率が高くなり結合する数が増えて結合効率が高くなる。
【0080】
またこの間、電極9A、9Bにパルス電圧は印加されていないのでマクロファージ6は閉じていて外部にシリカ磁性微粒子15が漏れることはなく、核酸14とシリカ磁性微粒子15を限られた空間内で効率的に反応させられることも結合効率を上げることに寄与している。
【0081】
図6は1個のマクロファージ6の拡大図でシリカ磁性微粒子15と細菌の核酸14とが結合したものの一部を示したものである。
【0082】
シリカ磁性微粒子15が核酸14と結合した後、電磁石10(図4参照)によりシリカ磁性微粒子15−核酸14の複合体16をマクロファージ6内の一方に集中させる。後述する核酸14の溶出をマクロファージ固定プレート11上以外の任意面で行なう場合には、マクロファージ6をマクロファージ固定プレート11から開放して、磁界を印加して複合体を駆動することによりマクロファージ6ごと任意面まで駆動して、任意面上で複合体16(マクロファージ6)を保持する。
【0083】
複合体16を動かないように保持できる面であれば面の場所に特に制約はない。図6では複合体16をマクロファージ固定プレート面側へ集中させた保持した状態を示している。
【0084】
図7は1個のマクロファージ6およびマクロファージ固定プレート11の拡大図で、マクロファージ6を破壊している状態を示している。
【0085】
複合体16をマクロファージ6内の一方に集中させた後、電極9A、9Bにパルス電圧を印加して穿孔を開始するとともに、反応場8に細胞処理手段、例えば酵素を投入する。このときは集合体1をマクロファージ6に投入するときよりも大きな電圧をより短い周期で印加する等により細胞膜の穿孔をじょじょに大きくしていくとともに酵素の力によってマクロファージ1の破壊を進める。このとき磁界は継続して印加されており複合体16はマクロファージ固定プレート11側に集中している。これにより細胞破壊の際に複合体16が反応場8内に浮遊することを防ぐことができる。細胞壁の破壊が進行していくと複合体16が反応場8に露出し、磁界が印加されているので複合体16はマクロファージ固定プレート11に固定される。この時点で電極9A、9Bへのパルス電圧の印加を停止する。
【0086】
図8は複合体16が反応場8のマクロファージ固定プレート11に磁力で保持されている状態を示す。
【0087】
複合体16は他の部分より強調するために拡大してある。なおこの時点で弁13は閉じているので集合体は反応場8から遮断されて貯蔵部12に格納されている。
【0088】
次に、反応場8に核酸14を溶出するために水あるいは低塩濃度の緩衝溶液等の溶出液を投入する。
【0089】
溶出液を投入することによりカオトロピック物質の濃度が相対的に下がるためシリカ層と核酸14の結合力が弱くなり分離する。ここでも磁界によりシリカ磁性微粒子15はマクロファージ固定プレート11側に引き付けられており、溶出液により核酸14だけが反応場に浮遊する。電磁弁27を開放し排出路29へ浮遊した核酸および溶出液を流す。排出路29の先には不図示の回収部があり、そこで核酸および溶出液が回収される。なお、電磁弁26を経由する排出路27は核酸、溶出液以外の反応場に投入した物質、溶液を流して廃棄する経路となっている。
【0090】
なお、本実施例ではマクロファージから標的核酸を回収し抽出する方法について記載したが、本発明はマクロファージ、核酸に限定されずあらゆる細胞内に存在する標的物質を回収し抽出する場合も本例の考え方を適用できる。
(第3の実施例)
第2の実施例ではカプセルを温度感受性高分子で表面修飾されたリポソ−ムとすることにより、内包した磁性粒子の放出を温度によって制御したが、本実施例の集合体の形状は図2に示す形状の集合体1を用い、更に、カプセルがセルロース外壁17有しこれが細胞内で分解することにより磁性微粒子18を放出する構成である。
【0091】
セルロース外壁17を分解するために反応場8(図3参照)にセルロース分解酵素を投入する。図2のようにカオトロピック物質21がもっとも内側にあるので外側のセルロース17が酵素反応で分解するときはカオトロピック物質21がまだ内側のセルロース20に密閉された状態にある。したがってカオトロピック物質21が酵素のはたらきを阻害することを防ぐことができるため集合体1内部の磁性粒子18をすべて放出させてから、セルロース内壁20が分解され最後にカオトロピック物質が放出される。
(第4の実施例)
図9に示す錠剤22の形状をした集合体を用いて血液中のマクロファージに含まれる感染症の細菌の核酸を取り出す例について説明する。
【0092】
マクロファージの穿孔および集合体の投入方法は第1実施例と同様、パルス電圧と磁界を同時期に印加することにより穿孔と投入を行なうものである。
【0093】
このとき反応場にセルロース分解酵素を混合しておき穿孔部分からマクロファージ内部に酵素が浸入できるようにすると、マクロファージ内部に投入された錠剤22のセルロース層23が酵素によって分解しやすくなる。酵素を用いる場合は、実施例3と同様に図10のような二重構造の錠剤22を用いれば、酵素でセルロース層23を分解させるときにはカオトロピック物質は放出されていないので、カオトロピック物質25による酵素反応の阻害を防ぐことができる。
【0094】
セルロース層23が分解して錠剤22内部のシリカ磁性粒子24およびカオトロピック物質25が反応場に放出されたらパルス電圧の印加を停止し磁界は継続して印加してマクロファージ内部でシリカ磁性粒子24をランダムに動かして核酸と接触する確率を高める。
【0095】
シリカと核酸が結合した後のシリカ磁性粒子−核酸の複合体の集中、マクロファージの破壊、核酸の溶出は第1実施例と同様である。
【0096】
錠剤化することにより保存状態において磁性粒子は離れた状態にあるので磁性粒子同士が凝集することを防ぐことができる。
(第5の実施例)
上述の実施例では磁性微粒子にシリカが表面修飾されていたが、標的核酸と結合する核酸プローブが固定されていても良い。
【0097】
磁性微粒子に標的核酸と結合する核酸プローブを固定する方法は、通常の方法で行えることはいうまでもない。また、表面に核酸プローブが固定された磁気微粒子を内包する集合体は、実施例1と同様の製法で製造できるので詳細な説明は省略する。
【0098】
本実施例においても、集合体が対象細胞(マクロファージ)に投入されて磁性粒子を放出するまでの工程は上述の実施例と同様である。
【0099】
集合体が対象細胞(マクロファージ)に投入されて磁性粒子を放出後、標的核酸と磁性粒子を結合させるには磁性粒子が放出された後に反応場の温度を上昇させる。マクロファージ内の細菌核酸の2本鎖が1本鎖に分離する温度まで加熱しながら、磁界を変化させて磁性粒子をランダムに動かす。磁性粒子が動きまわることにより表面に固定された核酸プローブが標的とする1本鎖と接触し、水素結合すなわちハイブリダイゼーションにより磁性粒子−核酸プローブ−標的核酸の複合体が形成される。
【0100】
複合体が形成された後の複合体の集中、マクロファージの破壊は上記実施例と同様である。複合体近傍を加熱してプローブ核酸と標的核酸を分離し、プローブ核酸付き磁性体が保持されたままの状態で溶出液を流して標的核酸を回収する。
【0101】
また、シリカによる結合、プローブによる結合以外にも抗原抗体反応を利用して標的核酸を回収しても良い。
(第6の実施例)
上述の実施例ではエレクトロポレーション法で対象細胞を穿孔しているが、パーティクルガン法を用いて細胞内に磁性粒子を内包した集合体を打ちこんでも良い。集合体が対象細胞に衝突したことによって分解し、内包した磁性粒子が放出されても良い。このとき一部の粒子は細胞の近傍で内部に進入する前に集合体から放出されることになるが、打ちこみの際に磁界も印加することにより対象細胞外部に放出された磁性粒子も細胞内に引き込むことができる。
(第7の実施例)
上述の実施例では複合体が形成されて、任意面に保持させた後に対象細胞を破壊する際に反応場にパルス電圧を加えながら酵素を投入しているが、パーティクルガン法を用いて酵素の集合体を対象細胞に衝突させても良い。酵素を内包した集合体を形成しておき、対象細胞と衝突したときの衝撃によって細胞近傍で集合体が分解し、内包されている酵素が放出されて対象細胞を破壊する構成である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】集合体の断面図
【図2】集合体の別の形態を示す断面図
【図3】本発明による核酸抽出方法の第1実施例の概略構成を示す図
【図4】本発明による核酸抽出方法の第1実施例の概略構成を示す図
【図5】マクロファージ内で磁性粒子と核酸が浮遊および一部が結合している図
【図6】複合体がマクロファージ内で一方に集められた図
【図7】マクロファージの細胞壁を破壊した図
【図8】複合体が反応場のマクロファージ固定プレートに保持されている図
【図9】錠剤の断面図
【図10】錠剤の別の形態を示す断面図
【図11】電極および電磁石へ印加する電圧および電流のタイミングを示す概略図。
【符号の説明】
【0103】
1: 集合体
2: リポソーム
3: 磁性微粒子
4: 表面修飾層
5: カオトロピック物質
6: マクロファージ
8: 反応場
9A、9B: 電極
10: 電磁石
11: マクロファージ固定プレート
14: 標的核酸
15: シリカシリカ磁性微粒子
16: シリカシリカ磁性微粒子−標的核酸の複合体
17: セルロース外壁
18: 磁性粒子
19: 表面修飾層
20: セルロース内壁
21: カオトロピック物質
22: 錠剤
23: セルロース層
24: 磁性粒子
25: カオトロピック物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面の一部が標的物質と結合可能な処理がなされ、磁界により位置制御可能な微粒子を基材内に複数個内包して集合させた内包型の微粒子集合体であって、
前記内包された微粒子の放出を制御可能であることを特徴とする微粒子集合体。
【請求項2】
前記標的物質が核酸であり、前記微粒子は表面に前記核酸と結合可能な修飾が施されていることを特徴とする請求項1項に記載の微粒子集合体。
【請求項3】
前記微粒子集合体には前記微粒子と前記標的物質の結合反応を促進する結合反応促進剤を内包していることを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子集合体。
【請求項4】
前記微粒子集合体はその内部で前記微粒子と前記反応促進剤が反応の順に多層に内包され、反応の順に放出されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の微粒子集合体。
【請求項5】
前記標的物質が核酸であり、前記微粒子表面に施された前記核酸と結合可能な修飾はコーティングされたシリカ層であり、前記反応促進剤がカオトロピック物質であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の微粒子集合体。
【請求項6】
標的物質の内包領域を有する被処理物の構造を破壊可能な薬品を内包した集合体であって、前記集合体は前記反応場に投入されてから前記薬品を放出することを特徴とする集合体。
【請求項7】
内部に標的物質を有する第一の物質を反応場に投入する手段と、
請求項1〜5に記載の微粒子集合体を前記反応場に投入する手段と、
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部に導入する手段と、
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部で分解し内包された微粒子を放出する手段と、
前記第一の物質内部で前記微粒子と標的物質と結合させる手段と、
前記微粒子と前記標的物質が結合した複合体を回収する手段と、
前記複合体から前記標的物質を回収する手段とを有することを特徴とする標的物質抽出装置。
【請求項8】
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部に導入する手段が、前記反応場に印加される磁界であることを特徴とする請求項7記載の標的物質抽出装置。
【請求項9】
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部に導入する手段が、
前記第一の物質を穿孔する穿孔手段と、
前記第一の物質の穿孔部分から前記微粒子集合体を導入する手段とからなることを特徴とする請求項7記載の標的物質抽出装置。
【請求項10】
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部に導入する手段が、
前記微粒子集合体と前記第一の物質を衝突させ前記第一の物質を穿孔する手段と、
前記第一の物質の穿孔部分から前記微粒子集合体を投入する手段とからなることを特徴とする請求項7記載の標的物質抽出装置。
【請求項11】
前記第一の物質内部で前記微粒子と標的物質とを結合させる手段が、前記第一の物質内で前記微粒子を駆動する手段を含むことを特徴とする請求項7に記載の標的物質抽出装置。
【請求項12】
前記駆動手段が、前記反応場に印加される磁界であることを特徴とする請求項11に記載の標的物質抽出装置。
【請求項13】
前記微粒子が前記標的物質と結合し前記複合体を形成した後、前記微粒子が前記第一の物質に内包されたまま前記複合体を所定位置まで駆動し保持する手段を有することを特徴とする請求項7に記載の標的物質抽出装置。
【請求項14】
前記微粒子が前記第一の物質に内包されたまま前記複合体を所定位置まで駆動し保持する手段が、前記反応場に印加される磁界であることを特徴とする請求項13に記載の標的物質抽出装置。
【請求項15】
前記複合体を前記所定位置に保持した後、少なくとも前記第一の物質の構造を破壊する破壊手段を有することを特徴とする請求項12または13に記載の標的物質抽出装置。
【請求項16】
前記破壊手段が、請求項6に記載の前記第一の物質の構造を破壊可能な薬品を内包した集合体であることを特徴とする請求項15に記載の標的物質抽出装置。
【請求項17】
前記集合体を前記第一の物質もしくは前記反応場内の前記第一の物質近傍で衝突させることにより分解させ、内包された薬品を前記反応場に放出することを特徴とする請求項16に記載の標的物質抽出装置。
【請求項18】
内部に標的物質を有する第一の物質を反応場に投入する工程と、
請求項1〜5に記載の微粒子集合体を前記反応場に投入する工程と、
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部に導入する工程と、
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部で分解させ内包された微粒子を放出する工程と、
前記第一の物質内部で前記微粒子と標的物質と結合させる工程と、
前記微粒子と前記標的物質が結合した複合体を回収する工程と、
前記複合体から前記標的物質を回収する工程とを有することを特徴とする標的物質抽出方法。
【請求項19】
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部に導入する工程が、前記反応場に印加される磁界であることを特徴とする請求項18記載の標的物質抽出方法。
【請求項20】
前記微粒子集合体を前記第一の物質内部に導入する工程が、
前記第一の物質を穿孔する穿孔工程と、
前記第一の物質の穿孔部分から前記微粒子集合体を導入する工程とからなることを特徴とする請求項18記載の標的物質抽出方法。
【請求項21】
前記第一の物質を穿孔する穿孔工程が、前記微粒子集合体と前記第一の物質を衝突させ前記第一の物質を穿孔することを特徴とする請求項18に記載の標的物質抽出方法。
【請求項22】
前記第一の物質内部で前記微粒子と標的物質とを結合させる工程が、前記第一の物質内で前記微粒子を駆動する工程を含むことを特徴とする請求項18に記載の標的物質抽出方法。
【請求項23】
前記駆動する工程が、前記反応場に印加される磁界であることを特徴とする請求項22に記載の標的物質抽出方法。
【請求項24】
前記微粒子が前記標的物質と結合し前記複合体を形成した後、前記微粒子が前記第一の物質に内包されたまま前記複合体を所定位置まで駆動し保持する工程を有することを特徴とする請求項18に記載の標的物質抽出方法。
【請求項25】
前記微粒子が前記第一の物質に内包されたまま前記複合体を所定位置まで駆動し保持する工程が、前記反応場に印加される磁界であることを特徴とする請求項24に記載の標的物質抽出方法。
【請求項26】
前記複合体を前記所定位置に保持した後、少なくとも前記第一の物質の構造を破壊する破壊工程を有することを特徴とする請求項23または24に記載の標的物質抽出方法。
【請求項27】
前記破壊工程が、請求項6に記載の前記第一の物質の構造を破壊可能な薬品を内包した集合体から放出される前記薬品であることを特徴とする請求項26に記載の標的物質抽出方法。
【請求項28】
前記集合体を前記第一の物質もしくは前記反応場内の前記第一の物質近傍で衝突させることにより分解させ、内包された薬品を前記反応場に放出させることを特徴とする請求項27に記載の標的物質抽出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−42621(P2006−42621A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224693(P2004−224693)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】