磁気エネルギー回生スイッチを用いた交流/直流電力変換装置
【課題】交流電源から二次電池を充電し、また二次電池から交流電圧へと逆変換する。
【解決手段】単相ブリッジ構成の4つの逆導通型半導体スイッチの直流端子にコンデンサCを接続、直流インダクタンスを介して二次電池を接続し、交流電源側とは交流インダクタンスLで結合して電源電圧位相に同期してタスキがけのペアの半導体スイッチを交互にオン・オフさせ、LCの共振周波数よりも低い周波数の交流電源を接続すれば、スイッチはゼロ電圧ゼロ電流でオン・オフすることになり、従来のPWM制御を行わず、交流電流の高調波も少なくなり、スイッチのゲート位相の制御のみで交流と直流との可逆の電力変換が可能になる。
【解決手段】単相ブリッジ構成の4つの逆導通型半導体スイッチの直流端子にコンデンサCを接続、直流インダクタンスを介して二次電池を接続し、交流電源側とは交流インダクタンスLで結合して電源電圧位相に同期してタスキがけのペアの半導体スイッチを交互にオン・オフさせ、LCの共振周波数よりも低い周波数の交流電源を接続すれば、スイッチはゼロ電圧ゼロ電流でオン・オフすることになり、従来のPWM制御を行わず、交流電流の高調波も少なくなり、スイッチのゲート位相の制御のみで交流と直流との可逆の電力変換が可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電気自動車、ハイブリッド自動車などの二次電池に、車庫において充電電源から充電するための充電器であって、交流電源から直流に順変換し、また直流から交流に逆変換する機能を有した磁気エネルギー回生スイッチを用いた交流/直流電力の可逆変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、運輸関係に掛かるエネルギーの半分近くを石油で賄っているが、電気自動車の普及は、石油に代わって原子力、さらに風力、太陽などの自然エネルギーからの炭酸ガス放出の少ない電力で賄える割合が増えることになるので、その普及が期待される。また、二次電池とエンジンの両方で走るハイブリッド自動車は、燃料消費を格段に抑えられるので、これも同様に期待されるが、電気の比率が大きいプラグイン・ハイブリッド車は、電気エネルギーを主とし、ガソリンエンジンは補助にして走る自動車であって、完全な電気自動車への橋渡し的存在かと考えられる。
【0003】
電気自動車の充電には、電力系統からの商用交流電源を使うが、各家庭まで配電線のインフラが整っているのでどこでも充電できる。家庭の車庫では、これらの二次電池を、主として夜間に充電することになるが、その充電器は、1台あたり数kWの容量であるものの、狭い地域に電力が集中すると地域の電圧や広域周波数の動揺をもたらすおそれがあるので、そのような問題を起こさないように運転制御するべきである。
【0004】
電気温水器などの不要不急の負荷に対して、インターネットを介してリアルタイムで集中制御すれば、風力などの変動電力に対する緩衝のために負荷調整電源と同じ役割となって、電力安定化を図る計画は、同じ出願人によってすでに提案されている(特許文献1)。
【0005】
さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車は、各家庭に電力貯蔵装置が配備されたに等しいので、必要に応じて直流から交流への逆変換を行えば、各家庭の需要負荷に対する非常用電源(UPS)となって、商用電力ラインの停電対策となることが出来る。
【特許文献1】特願2006−70444
【特許文献2】特許第3634982号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように期待される電気自動車であるが、従来のバッテリー充電器は、ダイオード整流器やサイリスタ整流器のように交流から直流への順変換のみを行っているので上記の目的には使えない。図2は従来のPWMインバータ・コンバータの構成を示す回路ブロック図であるが、図2に示すように、交流/直流の可逆電力変換はブリッジ構成のコンバータ1を用いて交流電源6の周波数より高速なオン・オフを行って方形波電圧波形(PWM:パルスワイズモジュレーションと言われる)の擬似交流電圧を発生させ、その擬似交流の位相を交流電源6に対して遅らせると順変換、進ませると逆変換となるが、交流インダクタンス4を介して交流電源6に接続していた。この場合、交流インダクタンス4の値はPWMの周波数が高周波のため、小さくてもよいという利点がある。
【0007】
PWMコンバータは高周波ノイズが発生するので、そのフィルタが必要となる。また、多数回の半導体スイッチのスイッチング損失のため、効率が落ち、さらに半導体の発熱除去のための装置が大型になっている。
【0008】
逆変換の場合、直流電圧が交流電圧の出力のピーク値以上である必要があり、直流電圧が二次電池2の放電に伴って低下すると、直流電圧を上昇させる必要がある。図3はDCアップコンバータを備えたPWMインバータ・コンバータの構成を示す回路ブロック図であり、例えば、図3のように二次電池2とコンデンサ7の間にDCアップコンバータ10で電圧調整をするなどの手段を講じる必要があった。電圧変動は大きく、リチウム二次電池では放電後は電圧が70%近くに低下する。
本発明は、上述のような従来の交流/直流電力の可逆変換装置の問題点に鑑み為されたものであり、DCアップコンバータによる電圧調整を不要とした効率の高い交流/直流電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、交流から直流への順変換、及び直流から交流への逆変換機能を備えた交流/直流電力変換装置に関し、本発明の上記目的は、4個の逆導通型半導体スイッチにて構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路の直流端子間に接続され、電流遮断時の磁気エネルギーを蓄積するコンデンサ7と、前記各逆導通型半導体スイッチのゲートに制御信号を与えて、前記各逆導通型半導体スイッチのオン/オフ制御を行う制御装置とを具備した磁気エネルギー回生双方向スイッチと、一端が交流電源6に接続され、他端が前記ブリッジ回路の交流端子に接続された交流インダクタンス4と、一端が直流電源の二次電池2に接続され、他端が前記ブリッジ回路の直流端子に接続された直流インダクタンス3とを備えるとともに、
前記コンデンサ7の静電容量Cと前記交流インダクタンス4のLとで決まる共振周波数が前記交流電源6の周波数よりも高くなるように前記C及び/又はLが設定され、前記制御装置は、前記交流電源6の電圧に同期して、前記逆導通型半導体スイッチのうち対角線上に位置するペアを同時にオン/オフさせ、かつ2組のペアが同時にオンすることのないように前記制御信号を制御するとともに、前記制御信号の位相を前記交流電源の位相よりも遅らせることによって前記順変換を、前記制御信号の位相を前記交流電源の位相よりも進ませることによって前記逆変換を行うことを特徴とする交流/直流電力変換装置によって達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記交流インダクタンス4と前記交流電源6との間に前記制御装置によって開閉制御される交流スイッチ5を挿入し、前記制御装置が、前記交流電源6の停電または瞬低を検出した時に、前記交流スイッチ5を開いて前記交流電源6を遮断し、前記交流電源に替わる模擬の同期信号を発生させるとともに前記制御信号の位相を進ませることによって逆変換に切換え、前記二次電池2又は他の直流電源からの直流電力を逆変換して、交流負荷に交流電力を供給し続けることによって効果的に達成される。
【0011】
さらに、本発明の上記目的は、前記直流インダクタンス3と前記二次電池2との間、又は前記直流インダクタンス3と前記ブリッジ回路の直流端子との間に直流スイッチを挿入することにより、或いは、前記制御装置に、外部との通信を行う通信手段を備えることによって、さらに効果的に達成される。
【0012】
また、本発明は、前記交流/直流電力変換装置を用いた二次電池の充放電制御システムに関し、本発明の上記目的は、電力系統の交流電源及び直流電源の二次電池に接続された、1または複数の前記交流/直流電力変換装置と、外部集中制御拠点9のサーバーとがインターネット等の通信回線8を介して相互に通信可能に接続され、前記サーバーは前記電力系統の電力の需給状態を監視するとともに、前記二次電池の充電状態を監視し、
前記需給状態に応じて、前記制御装置に対して順変換又は逆変換の指令を送り、前記二次電池の充放電を制御することにより、前記電力系統の電力安定化を図ることを特徴とする二次電池の充放電制御システムによって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る交流/直流電力変換装置では、従来のPWMコンバータに比べて大きな交流インダクタンス4が必要になるが、その結果、原則的に1サイクル1パルスのオン・オフで電流波形は高調波が非常に少なくなる。若干、低次調波のひずみが残るものの、三相化すればこれも解消する。オン・オフ回数の減少によりスイッチング損失の大幅な低減が図れる。
【0014】
従来のPWMコンバータに比べDCリンク部のコンデンサのサイズ、容量が10分の1から20分の1に低減される。本発明のように磁気エネルギー回生スイッチの原理を用いるとDCリンクコンデンサ7は磁気エネルギーを蓄積するだけの容量でよいので、PWMコンバータに比べて小型にできる。
【0015】
コンデンサ静電容量Cと、交流インダクタンスLとで決まる共振周波数が交流電源周波数より高くなるように設定されているので、半導体スイッチはコンデンサ電圧がゼロ電圧でオフし、かつ電流はインダクタンスの存在によって急速には上がらない、いわゆる半導体スイッチにとって理想のゼロ電圧・ゼロ電流でのスイッチングが実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は特許文献2で開示した磁気エネルギー回生スイッチ1を用いて交流電源6との間においた交流インダクタンス4とコンデンサ7を半導体スイッチペア(SW1,SW3)と(SW2、SW4)を交互にオン・オフさせて、磁気エネルギーがコンデンサ7との間に行き来する共振振動が連続する。図10に、磁気エネルギー回生スイッチを直列に用いて、磁気エネルギーを蓄積するインダクタンスを駆動する回路を示す。
【0017】
図10には、すでに公知となっている磁気エネルギー回生スイッチ(MERS)とその双対回路(Dual MERS)をともに示すが、電圧源が電流源に、LはCに、直列は並列になる回路である。図11は、コンデンサに直流電流源を接続して、直流から電力を入力する交流電力発振回路と、さらに交流側に交流電源をつなぐ方式を示す。
【0018】
これらの磁気エネルギー回生スイッチの発展を経て、本発明は図1に示すように、直流から交流電力への可逆の変換が、最小の構成で、かつ、1サイクルに1回のオン・オフ制御しか行わないことで、スイッチング損を低減し、かつ、そのブリッジの直流コンデンサ7が交流電源6との結合用に設置した交流インダクタンス4との共振周波数を交流電源6の周波数に近く設定することで、オン・オフに伴う波形ひずみを抑制している。さらに交流インダクタンス4は電源周波数の直列フィルタを構成するので外部系統や交流負荷などからの高周波ノイズの侵入をなくすことが出来る。
またコンテンサ7と交流インダクタンス4とで決まる共振周波数を交流電源周波数より高く設定することで、コンデンサ7は毎回、放電のあと電圧がゼロになる期間が生じ、半導体スイッチにとって理想のゼロ電圧・ゼロ電流でのオン・オフが実現することでさらに抵損失になる。
【0019】
コンデンサ7の両端から直流電源2を直流インダクタンス3を介して結合することで、交流電源周波数の2倍の周波数で振動するコンデンサ7の平均電圧が直流電圧より高いときは順変換、逆に直流電圧より低いときは逆変換になる。振動するコンデンサ7の電圧は、半導体スイッチのゲート信号の位相を交流電源6の位相に対して進み、または遅れ制御をすることによって増減できる。
本発明では、従来の可逆コンバータで行われていたPWM制御は行わず、伴うノイズも無いので高調波フィルタが不要である。
【0020】
制御装置は、これらの電源の運転を行うばかりでなく、外部との通信を行う通信手段(図示せず)を備えており、インターネットなどの通信回線8を介して外部集中制御拠点9(サーバーで構成される。)へデータを送りまた指令を受け取る機能を持っており、外部からの指令によって充電電力を変化させて、その結果、地域の電力の安定化に寄与することができる。
【実施例1】
【0021】
図1に実施例を示すが、逆導通型半導体スイッチをブリッジ構成にして直流端子に磁気エネルギーを蓄積するコンテンサ7を接続する。このコンデンサ7は従来の単相インバータと異なり、容量が小さく磁気エネルギーを蓄積するだけであるため、電圧は各半サイクルでピークと電圧ゼロまで充放電する。
【0022】
充電放電の電流波形が交流電源6の角周波数ω0に近くなるように選択されるべきで、静電容量Cと交流インダクタンスLとの関係式は、
LC=ω0−2・・・・・・(1)
である。
さらに、Cの値を(1)式より若干小さくすることで、半サイクルの放電の後に、電圧ゼロでの期間が生じ、半導体スイッチのスイッチングを容易にすることが出来る。単相インバータの電圧源コンデンサ7が従来のPWMコンバータと異なり大幅に小さな容量になっていることが本発明の特徴である。
【0023】
コンデンサ7の電圧が振動することから、直流回路との結合には、振動周波数から見て十分平滑する直流インダクタンス3を以ってする。振動周波数はω0の2倍で、電圧は交流電圧の平均値程度である。
したがって、直流電源2の電圧は、従来のPWMインバータの電圧源より小さくても逆変換可能である。
【0024】
直流電源2には種々の電池やエンジン発電機の直流出力、燃料電池などの単独または複合でよく、さらに直流負荷も接続されるが、ここでは充電・放電が可能なリチウムイオン二次電池を想定して説明をする。
【0025】
交流インダクタンス4を介して交流電源6に接続される。電流波形を整形するために大きなリアクタンスを必要としている。本実施例では、リアクタンス電圧が50%から100%を選択する。このインダクタンスはトランスを介して交流系統に接続するなら、トランスの漏れを利用してもよいので新たな損失が増えることは少ない。
【0026】
交流インダクタンス4は交流負荷と交流スイッチ5を介して交流電源6に接続してある。交流スイッチ5は上流の交流電力に停電などの異常がある場合、交流電源6から切り離しても、交流負荷を運転し続けることが出来るようにしている。
また、二次電池2に充電放電の必要の無い場合には、直流インダクタンス3を直流スイッチ11で切り離して、磁気エネルギー回生スイッチを単独で共振電圧源として運転し、交流電源6の位相に対して進みまたは遅れの無効電力を系統から受電するようにできる。
【0027】
制御装置は、交流電源6の電圧位相を検出する機能と、4つの半導体スイッチ(SW1〜SW4)に必要なゲート信号を送る機能を持つ。タスキがけのペア半導体(SW1-SW3、SW2-SW4)に同時に信号を送るが、上下の半導体に同時にオン信号は送らない。コンデンサ電圧が短絡するからである。オンの間にもペアのスイッチの片方のゲートを停止するとコンデンサの放電充電が停止し、電圧波形の整形が可能である。ゲート信号の位相は、交流電圧の位相より遅れて制御すると、電力が交流から直流に変換される順変換モードに、進んでいる場合は逆変換モードになる。順変換/逆変換は、位相の進みから遅れへと連続的に制御することが出来る。図4に交流電源電圧とゲート信号の関係を示す。
【0028】
制御装置の機能は、図9に示すが、インターネットなどの通信回線8により、外部集中制御拠点9のサーバーと連係して、充電電力の増減をダイナミックに行うことが可能になる。その効果は、特許文献1においては電気温水器を例に説明したが、自然エネルギー、例えば風力発電や太陽光発電のように、数十秒の周期で時間的に変化する発電装置において、本発明の充電電源(二次電池)もその緩衝となる変動負荷となりうるものである。二次電池の充電電力は時間変化しても問題なく、最終的には充電された積算エネルギーだけに関心があるからである。
【0029】
この場合、電力網、あるいは、電力事業者は、発電電力による系統周波数維持のための運転、すなわちLFC制御を軽減することが出来る。例えばプラグイン・ハイブリッド自動車が多数普及した場合、本発明に係る交流/直流電力変換装置によってガレージにおいて充電中にインターネットを介して集中制御することで、夜間の電力系統の安定に寄与し、LFC制御のために発電設備、故障時予備の発電設備が不要になり、さらに太陽光発電、風力発電の変動緩衝にもなることが期待される。
将来、電力市場化が進めば、例えば、風力事業者から、この外部集中制御拠点9を介してリアルタイムに電力の発生と同量の消費を行い、電力系統は通過するのみの、電力の直接売買も可能になる。
【0030】
外部集中制御拠点9は、多数の交流/直流電力変換装置のデータを収集し、電力系統のデータなどから、最適な運転制御データを個々の交流/直流電力変換装置に送るものである。
[実施例のシミュレーション]
【0031】
シミュレーションによる解析結果を示す。回路定数は以下の通りである。
1.逆導通型半導体スイッチ S1,S2,S3,S4(P−MOSFETで損失は無視している)
2.直流電源(二次電池)100V、または140V
3.直流インダクタンス 120mH、
4.交流インダクタンス 30mH
6.交流電源 50Hz,ピーク値141V、
7.電圧源コンデンサ 150μF
【0032】
ゲート信号の電圧位相の関係、進み角度60度の場合を図4に示す。
直流から交流への逆変換時140Vで逆変換進み角度30度の場合を図5に示す。
直流から交流への逆変換時100Vで逆変換進み角度30度の場合を図6に示す。
交流から直流への順変換時140Vで逆変換遅れ角度30度の場合を図7に示す。
交流から直流への順変換時100Vで逆変換遅れ角度30度の場合を図8に示す。
表1に位相制御による電力制御を示す。
【表1】
【0033】
直流の電圧が交流の実効値、平均値まで下がっても逆変換可能である。従来は、PWM電圧は交流電圧のピーク電圧を必要とし、低いと遅れ力率になるので、図3に示すように、DCアップコンバータ10で昇圧している例が多かった。本発明によれば直流インダクタンス3のブーストアップ効果により、直流電圧が70%程度まで減少しても逆変換できる。
【0034】
停電時制御について、ゲート制御信号の位相制御のみで順変換から逆変換に切換えることができるのが本発明の特徴であるから、交流電源6が停電または瞬低時には、急遽、充電をやめて交流スイッチ5で交流電源6を遮断し、直流電源2より電力を逆変換して、交流負荷を運転し続けることができるので、そのために、交流スイッチ5の制御装置がある。
【0035】
ゲート制御信号の位相制御で交流から直流への順変換、その反対の逆変換を制御できるので、インターネットなどの通信機能により、外部の統合的外部集中制御拠点9の指令を受けて、電力系統または、マイクログリッドの電力安定化に寄与する機能を有することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
これから普及が期待される電気自動車、プラグイン・ハイブリッド自動車の充電システムに本発明の交流/直流電力変換装置が採用されれば、順変換/逆変換の双方向充放電が可能になり、今後、原子力化が進む電力系統にとって、夜間の周波数調整能力が不足すると考えられるが、従来の可変速揚水発電を援助するものになる。
【0037】
さらに、電力の市場化が進めば、風力発電業者の売電を電力市場から取引をして、風力発電量の変化に合わせて、リアルタイムに変化させて受電することで、電力系統には負担をかけず、送電線、配電線の借受料金である托送料を支払うことが可能であるなら、電気自動車の充電が、完全に風力エネルギーによっていると考えられるシステムが実現できる。電気自動車が完全に再生可能なエネルギーで運行できる。自然エネルギーの導入の促進になるビジネスモデルになる。または、夜間、原子力発電が主になった時間のみ、充電する電気自動車は、確実に炭酸ガスを出さないエネルギーで運行されると言える。
【0038】
これらのビジネスモデルの実現は外部の統合的外部集中制御拠点9が大きな役割を担う。外部の統合的外部集中制御拠点9は、電力系統の周波数制御ばかりではなく、地域に分散する全ての交流/直流電力変換装置(充電器)に接続される交流電圧と位相を把握しているので、地域の電圧変動を緩衝するように交流/直流電力変換装置を制御して充電放電させることで、地域の電力システム、分散マイクログリッドの電力安定化装置、電力貯蔵装置の役割を担う可能性がある。
【0039】
炭酸ガス排出権取引など今後の政策や経済モデルによって運用方法は種々考えられるが、その中核となるのが本発明の順逆双方向の交流/直流電力変換装置である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る交流/直流電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】従来のPWMインバータ・コンバータの構成を示す回路ブロック図である。
【図3】DCアップコンバータを備えたPWMインバータ・コンバータの構成を示す回路ブロック図である。
【図4】交流電源電圧と半導体スイッチゲート信号の位相関係を示す図である。
【図5】シミュレーション結果1(直流電圧140Vの逆変換インバータ運転、位相進み30度)を示す図である。
【図6】シミュレーション結果2(直流電圧100Vの逆変換インバータ運転、位相進み30度)を示す図である。
【図7】シミュレーション結果3(直流電圧140Vの順変換コンバータ運転、位相遅れ30度)を示す図である。
【図8】シミュレーション結果4(直流電圧100Vの順変換コンバータ運転、位相遅れ30度)を示す図である。
【図9】制御装置の機能ブロック図である。
【図10】磁気エネルギー回生スイッチの進歩を説明するための図である。
【図11】磁気エネルギー回生スイッチによる発振器から直流交流逆変換装置への進歩を説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 逆導通型半導体スイッチ
2 直流電源(二次電池)
3 直流インダクタンス
4 交流インダクタンス
5 交流スイッチ
6 交流電源
7 コンデンサ
8 外部通信網(インターネット)
9 外部集中制御拠点
11 直流スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として電気自動車、ハイブリッド自動車などの二次電池に、車庫において充電電源から充電するための充電器であって、交流電源から直流に順変換し、また直流から交流に逆変換する機能を有した磁気エネルギー回生スイッチを用いた交流/直流電力の可逆変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、運輸関係に掛かるエネルギーの半分近くを石油で賄っているが、電気自動車の普及は、石油に代わって原子力、さらに風力、太陽などの自然エネルギーからの炭酸ガス放出の少ない電力で賄える割合が増えることになるので、その普及が期待される。また、二次電池とエンジンの両方で走るハイブリッド自動車は、燃料消費を格段に抑えられるので、これも同様に期待されるが、電気の比率が大きいプラグイン・ハイブリッド車は、電気エネルギーを主とし、ガソリンエンジンは補助にして走る自動車であって、完全な電気自動車への橋渡し的存在かと考えられる。
【0003】
電気自動車の充電には、電力系統からの商用交流電源を使うが、各家庭まで配電線のインフラが整っているのでどこでも充電できる。家庭の車庫では、これらの二次電池を、主として夜間に充電することになるが、その充電器は、1台あたり数kWの容量であるものの、狭い地域に電力が集中すると地域の電圧や広域周波数の動揺をもたらすおそれがあるので、そのような問題を起こさないように運転制御するべきである。
【0004】
電気温水器などの不要不急の負荷に対して、インターネットを介してリアルタイムで集中制御すれば、風力などの変動電力に対する緩衝のために負荷調整電源と同じ役割となって、電力安定化を図る計画は、同じ出願人によってすでに提案されている(特許文献1)。
【0005】
さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車は、各家庭に電力貯蔵装置が配備されたに等しいので、必要に応じて直流から交流への逆変換を行えば、各家庭の需要負荷に対する非常用電源(UPS)となって、商用電力ラインの停電対策となることが出来る。
【特許文献1】特願2006−70444
【特許文献2】特許第3634982号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように期待される電気自動車であるが、従来のバッテリー充電器は、ダイオード整流器やサイリスタ整流器のように交流から直流への順変換のみを行っているので上記の目的には使えない。図2は従来のPWMインバータ・コンバータの構成を示す回路ブロック図であるが、図2に示すように、交流/直流の可逆電力変換はブリッジ構成のコンバータ1を用いて交流電源6の周波数より高速なオン・オフを行って方形波電圧波形(PWM:パルスワイズモジュレーションと言われる)の擬似交流電圧を発生させ、その擬似交流の位相を交流電源6に対して遅らせると順変換、進ませると逆変換となるが、交流インダクタンス4を介して交流電源6に接続していた。この場合、交流インダクタンス4の値はPWMの周波数が高周波のため、小さくてもよいという利点がある。
【0007】
PWMコンバータは高周波ノイズが発生するので、そのフィルタが必要となる。また、多数回の半導体スイッチのスイッチング損失のため、効率が落ち、さらに半導体の発熱除去のための装置が大型になっている。
【0008】
逆変換の場合、直流電圧が交流電圧の出力のピーク値以上である必要があり、直流電圧が二次電池2の放電に伴って低下すると、直流電圧を上昇させる必要がある。図3はDCアップコンバータを備えたPWMインバータ・コンバータの構成を示す回路ブロック図であり、例えば、図3のように二次電池2とコンデンサ7の間にDCアップコンバータ10で電圧調整をするなどの手段を講じる必要があった。電圧変動は大きく、リチウム二次電池では放電後は電圧が70%近くに低下する。
本発明は、上述のような従来の交流/直流電力の可逆変換装置の問題点に鑑み為されたものであり、DCアップコンバータによる電圧調整を不要とした効率の高い交流/直流電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、交流から直流への順変換、及び直流から交流への逆変換機能を備えた交流/直流電力変換装置に関し、本発明の上記目的は、4個の逆導通型半導体スイッチにて構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路の直流端子間に接続され、電流遮断時の磁気エネルギーを蓄積するコンデンサ7と、前記各逆導通型半導体スイッチのゲートに制御信号を与えて、前記各逆導通型半導体スイッチのオン/オフ制御を行う制御装置とを具備した磁気エネルギー回生双方向スイッチと、一端が交流電源6に接続され、他端が前記ブリッジ回路の交流端子に接続された交流インダクタンス4と、一端が直流電源の二次電池2に接続され、他端が前記ブリッジ回路の直流端子に接続された直流インダクタンス3とを備えるとともに、
前記コンデンサ7の静電容量Cと前記交流インダクタンス4のLとで決まる共振周波数が前記交流電源6の周波数よりも高くなるように前記C及び/又はLが設定され、前記制御装置は、前記交流電源6の電圧に同期して、前記逆導通型半導体スイッチのうち対角線上に位置するペアを同時にオン/オフさせ、かつ2組のペアが同時にオンすることのないように前記制御信号を制御するとともに、前記制御信号の位相を前記交流電源の位相よりも遅らせることによって前記順変換を、前記制御信号の位相を前記交流電源の位相よりも進ませることによって前記逆変換を行うことを特徴とする交流/直流電力変換装置によって達成される。
【0010】
また、本発明の上記目的は、前記交流インダクタンス4と前記交流電源6との間に前記制御装置によって開閉制御される交流スイッチ5を挿入し、前記制御装置が、前記交流電源6の停電または瞬低を検出した時に、前記交流スイッチ5を開いて前記交流電源6を遮断し、前記交流電源に替わる模擬の同期信号を発生させるとともに前記制御信号の位相を進ませることによって逆変換に切換え、前記二次電池2又は他の直流電源からの直流電力を逆変換して、交流負荷に交流電力を供給し続けることによって効果的に達成される。
【0011】
さらに、本発明の上記目的は、前記直流インダクタンス3と前記二次電池2との間、又は前記直流インダクタンス3と前記ブリッジ回路の直流端子との間に直流スイッチを挿入することにより、或いは、前記制御装置に、外部との通信を行う通信手段を備えることによって、さらに効果的に達成される。
【0012】
また、本発明は、前記交流/直流電力変換装置を用いた二次電池の充放電制御システムに関し、本発明の上記目的は、電力系統の交流電源及び直流電源の二次電池に接続された、1または複数の前記交流/直流電力変換装置と、外部集中制御拠点9のサーバーとがインターネット等の通信回線8を介して相互に通信可能に接続され、前記サーバーは前記電力系統の電力の需給状態を監視するとともに、前記二次電池の充電状態を監視し、
前記需給状態に応じて、前記制御装置に対して順変換又は逆変換の指令を送り、前記二次電池の充放電を制御することにより、前記電力系統の電力安定化を図ることを特徴とする二次電池の充放電制御システムによって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る交流/直流電力変換装置では、従来のPWMコンバータに比べて大きな交流インダクタンス4が必要になるが、その結果、原則的に1サイクル1パルスのオン・オフで電流波形は高調波が非常に少なくなる。若干、低次調波のひずみが残るものの、三相化すればこれも解消する。オン・オフ回数の減少によりスイッチング損失の大幅な低減が図れる。
【0014】
従来のPWMコンバータに比べDCリンク部のコンデンサのサイズ、容量が10分の1から20分の1に低減される。本発明のように磁気エネルギー回生スイッチの原理を用いるとDCリンクコンデンサ7は磁気エネルギーを蓄積するだけの容量でよいので、PWMコンバータに比べて小型にできる。
【0015】
コンデンサ静電容量Cと、交流インダクタンスLとで決まる共振周波数が交流電源周波数より高くなるように設定されているので、半導体スイッチはコンデンサ電圧がゼロ電圧でオフし、かつ電流はインダクタンスの存在によって急速には上がらない、いわゆる半導体スイッチにとって理想のゼロ電圧・ゼロ電流でのスイッチングが実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は特許文献2で開示した磁気エネルギー回生スイッチ1を用いて交流電源6との間においた交流インダクタンス4とコンデンサ7を半導体スイッチペア(SW1,SW3)と(SW2、SW4)を交互にオン・オフさせて、磁気エネルギーがコンデンサ7との間に行き来する共振振動が連続する。図10に、磁気エネルギー回生スイッチを直列に用いて、磁気エネルギーを蓄積するインダクタンスを駆動する回路を示す。
【0017】
図10には、すでに公知となっている磁気エネルギー回生スイッチ(MERS)とその双対回路(Dual MERS)をともに示すが、電圧源が電流源に、LはCに、直列は並列になる回路である。図11は、コンデンサに直流電流源を接続して、直流から電力を入力する交流電力発振回路と、さらに交流側に交流電源をつなぐ方式を示す。
【0018】
これらの磁気エネルギー回生スイッチの発展を経て、本発明は図1に示すように、直流から交流電力への可逆の変換が、最小の構成で、かつ、1サイクルに1回のオン・オフ制御しか行わないことで、スイッチング損を低減し、かつ、そのブリッジの直流コンデンサ7が交流電源6との結合用に設置した交流インダクタンス4との共振周波数を交流電源6の周波数に近く設定することで、オン・オフに伴う波形ひずみを抑制している。さらに交流インダクタンス4は電源周波数の直列フィルタを構成するので外部系統や交流負荷などからの高周波ノイズの侵入をなくすことが出来る。
またコンテンサ7と交流インダクタンス4とで決まる共振周波数を交流電源周波数より高く設定することで、コンデンサ7は毎回、放電のあと電圧がゼロになる期間が生じ、半導体スイッチにとって理想のゼロ電圧・ゼロ電流でのオン・オフが実現することでさらに抵損失になる。
【0019】
コンデンサ7の両端から直流電源2を直流インダクタンス3を介して結合することで、交流電源周波数の2倍の周波数で振動するコンデンサ7の平均電圧が直流電圧より高いときは順変換、逆に直流電圧より低いときは逆変換になる。振動するコンデンサ7の電圧は、半導体スイッチのゲート信号の位相を交流電源6の位相に対して進み、または遅れ制御をすることによって増減できる。
本発明では、従来の可逆コンバータで行われていたPWM制御は行わず、伴うノイズも無いので高調波フィルタが不要である。
【0020】
制御装置は、これらの電源の運転を行うばかりでなく、外部との通信を行う通信手段(図示せず)を備えており、インターネットなどの通信回線8を介して外部集中制御拠点9(サーバーで構成される。)へデータを送りまた指令を受け取る機能を持っており、外部からの指令によって充電電力を変化させて、その結果、地域の電力の安定化に寄与することができる。
【実施例1】
【0021】
図1に実施例を示すが、逆導通型半導体スイッチをブリッジ構成にして直流端子に磁気エネルギーを蓄積するコンテンサ7を接続する。このコンデンサ7は従来の単相インバータと異なり、容量が小さく磁気エネルギーを蓄積するだけであるため、電圧は各半サイクルでピークと電圧ゼロまで充放電する。
【0022】
充電放電の電流波形が交流電源6の角周波数ω0に近くなるように選択されるべきで、静電容量Cと交流インダクタンスLとの関係式は、
LC=ω0−2・・・・・・(1)
である。
さらに、Cの値を(1)式より若干小さくすることで、半サイクルの放電の後に、電圧ゼロでの期間が生じ、半導体スイッチのスイッチングを容易にすることが出来る。単相インバータの電圧源コンデンサ7が従来のPWMコンバータと異なり大幅に小さな容量になっていることが本発明の特徴である。
【0023】
コンデンサ7の電圧が振動することから、直流回路との結合には、振動周波数から見て十分平滑する直流インダクタンス3を以ってする。振動周波数はω0の2倍で、電圧は交流電圧の平均値程度である。
したがって、直流電源2の電圧は、従来のPWMインバータの電圧源より小さくても逆変換可能である。
【0024】
直流電源2には種々の電池やエンジン発電機の直流出力、燃料電池などの単独または複合でよく、さらに直流負荷も接続されるが、ここでは充電・放電が可能なリチウムイオン二次電池を想定して説明をする。
【0025】
交流インダクタンス4を介して交流電源6に接続される。電流波形を整形するために大きなリアクタンスを必要としている。本実施例では、リアクタンス電圧が50%から100%を選択する。このインダクタンスはトランスを介して交流系統に接続するなら、トランスの漏れを利用してもよいので新たな損失が増えることは少ない。
【0026】
交流インダクタンス4は交流負荷と交流スイッチ5を介して交流電源6に接続してある。交流スイッチ5は上流の交流電力に停電などの異常がある場合、交流電源6から切り離しても、交流負荷を運転し続けることが出来るようにしている。
また、二次電池2に充電放電の必要の無い場合には、直流インダクタンス3を直流スイッチ11で切り離して、磁気エネルギー回生スイッチを単独で共振電圧源として運転し、交流電源6の位相に対して進みまたは遅れの無効電力を系統から受電するようにできる。
【0027】
制御装置は、交流電源6の電圧位相を検出する機能と、4つの半導体スイッチ(SW1〜SW4)に必要なゲート信号を送る機能を持つ。タスキがけのペア半導体(SW1-SW3、SW2-SW4)に同時に信号を送るが、上下の半導体に同時にオン信号は送らない。コンデンサ電圧が短絡するからである。オンの間にもペアのスイッチの片方のゲートを停止するとコンデンサの放電充電が停止し、電圧波形の整形が可能である。ゲート信号の位相は、交流電圧の位相より遅れて制御すると、電力が交流から直流に変換される順変換モードに、進んでいる場合は逆変換モードになる。順変換/逆変換は、位相の進みから遅れへと連続的に制御することが出来る。図4に交流電源電圧とゲート信号の関係を示す。
【0028】
制御装置の機能は、図9に示すが、インターネットなどの通信回線8により、外部集中制御拠点9のサーバーと連係して、充電電力の増減をダイナミックに行うことが可能になる。その効果は、特許文献1においては電気温水器を例に説明したが、自然エネルギー、例えば風力発電や太陽光発電のように、数十秒の周期で時間的に変化する発電装置において、本発明の充電電源(二次電池)もその緩衝となる変動負荷となりうるものである。二次電池の充電電力は時間変化しても問題なく、最終的には充電された積算エネルギーだけに関心があるからである。
【0029】
この場合、電力網、あるいは、電力事業者は、発電電力による系統周波数維持のための運転、すなわちLFC制御を軽減することが出来る。例えばプラグイン・ハイブリッド自動車が多数普及した場合、本発明に係る交流/直流電力変換装置によってガレージにおいて充電中にインターネットを介して集中制御することで、夜間の電力系統の安定に寄与し、LFC制御のために発電設備、故障時予備の発電設備が不要になり、さらに太陽光発電、風力発電の変動緩衝にもなることが期待される。
将来、電力市場化が進めば、例えば、風力事業者から、この外部集中制御拠点9を介してリアルタイムに電力の発生と同量の消費を行い、電力系統は通過するのみの、電力の直接売買も可能になる。
【0030】
外部集中制御拠点9は、多数の交流/直流電力変換装置のデータを収集し、電力系統のデータなどから、最適な運転制御データを個々の交流/直流電力変換装置に送るものである。
[実施例のシミュレーション]
【0031】
シミュレーションによる解析結果を示す。回路定数は以下の通りである。
1.逆導通型半導体スイッチ S1,S2,S3,S4(P−MOSFETで損失は無視している)
2.直流電源(二次電池)100V、または140V
3.直流インダクタンス 120mH、
4.交流インダクタンス 30mH
6.交流電源 50Hz,ピーク値141V、
7.電圧源コンデンサ 150μF
【0032】
ゲート信号の電圧位相の関係、進み角度60度の場合を図4に示す。
直流から交流への逆変換時140Vで逆変換進み角度30度の場合を図5に示す。
直流から交流への逆変換時100Vで逆変換進み角度30度の場合を図6に示す。
交流から直流への順変換時140Vで逆変換遅れ角度30度の場合を図7に示す。
交流から直流への順変換時100Vで逆変換遅れ角度30度の場合を図8に示す。
表1に位相制御による電力制御を示す。
【表1】
【0033】
直流の電圧が交流の実効値、平均値まで下がっても逆変換可能である。従来は、PWM電圧は交流電圧のピーク電圧を必要とし、低いと遅れ力率になるので、図3に示すように、DCアップコンバータ10で昇圧している例が多かった。本発明によれば直流インダクタンス3のブーストアップ効果により、直流電圧が70%程度まで減少しても逆変換できる。
【0034】
停電時制御について、ゲート制御信号の位相制御のみで順変換から逆変換に切換えることができるのが本発明の特徴であるから、交流電源6が停電または瞬低時には、急遽、充電をやめて交流スイッチ5で交流電源6を遮断し、直流電源2より電力を逆変換して、交流負荷を運転し続けることができるので、そのために、交流スイッチ5の制御装置がある。
【0035】
ゲート制御信号の位相制御で交流から直流への順変換、その反対の逆変換を制御できるので、インターネットなどの通信機能により、外部の統合的外部集中制御拠点9の指令を受けて、電力系統または、マイクログリッドの電力安定化に寄与する機能を有することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
これから普及が期待される電気自動車、プラグイン・ハイブリッド自動車の充電システムに本発明の交流/直流電力変換装置が採用されれば、順変換/逆変換の双方向充放電が可能になり、今後、原子力化が進む電力系統にとって、夜間の周波数調整能力が不足すると考えられるが、従来の可変速揚水発電を援助するものになる。
【0037】
さらに、電力の市場化が進めば、風力発電業者の売電を電力市場から取引をして、風力発電量の変化に合わせて、リアルタイムに変化させて受電することで、電力系統には負担をかけず、送電線、配電線の借受料金である托送料を支払うことが可能であるなら、電気自動車の充電が、完全に風力エネルギーによっていると考えられるシステムが実現できる。電気自動車が完全に再生可能なエネルギーで運行できる。自然エネルギーの導入の促進になるビジネスモデルになる。または、夜間、原子力発電が主になった時間のみ、充電する電気自動車は、確実に炭酸ガスを出さないエネルギーで運行されると言える。
【0038】
これらのビジネスモデルの実現は外部の統合的外部集中制御拠点9が大きな役割を担う。外部の統合的外部集中制御拠点9は、電力系統の周波数制御ばかりではなく、地域に分散する全ての交流/直流電力変換装置(充電器)に接続される交流電圧と位相を把握しているので、地域の電圧変動を緩衝するように交流/直流電力変換装置を制御して充電放電させることで、地域の電力システム、分散マイクログリッドの電力安定化装置、電力貯蔵装置の役割を担う可能性がある。
【0039】
炭酸ガス排出権取引など今後の政策や経済モデルによって運用方法は種々考えられるが、その中核となるのが本発明の順逆双方向の交流/直流電力変換装置である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る交流/直流電力変換装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】従来のPWMインバータ・コンバータの構成を示す回路ブロック図である。
【図3】DCアップコンバータを備えたPWMインバータ・コンバータの構成を示す回路ブロック図である。
【図4】交流電源電圧と半導体スイッチゲート信号の位相関係を示す図である。
【図5】シミュレーション結果1(直流電圧140Vの逆変換インバータ運転、位相進み30度)を示す図である。
【図6】シミュレーション結果2(直流電圧100Vの逆変換インバータ運転、位相進み30度)を示す図である。
【図7】シミュレーション結果3(直流電圧140Vの順変換コンバータ運転、位相遅れ30度)を示す図である。
【図8】シミュレーション結果4(直流電圧100Vの順変換コンバータ運転、位相遅れ30度)を示す図である。
【図9】制御装置の機能ブロック図である。
【図10】磁気エネルギー回生スイッチの進歩を説明するための図である。
【図11】磁気エネルギー回生スイッチによる発振器から直流交流逆変換装置への進歩を説明するための図である。
【符号の説明】
【0041】
1 逆導通型半導体スイッチ
2 直流電源(二次電池)
3 直流インダクタンス
4 交流インダクタンス
5 交流スイッチ
6 交流電源
7 コンデンサ
8 外部通信網(インターネット)
9 外部集中制御拠点
11 直流スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流から直流への順変換、及び直流から交流への逆変換機能を備えた交流/直流電力変換装置であって、該交流/直流電力変換装置は、
4個の逆導通型半導体スイッチにて構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路の直流端子間に接続され、電流遮断時の磁気エネルギーを蓄積するコンデンサ(7)と、前記各逆導通型半導体スイッチのゲートに制御信号を与えて、前記各逆導通型半導体スイッチのオン/オフ制御を行う制御装置とを具備した磁気エネルギー回生双方向スイッチと、
一端が交流電源(6)に接続され、他端が前記ブリッジ回路の交流端子に接続された交流インダクタンス(4)と、
一端が直流電源の二次電池(2)に接続され、他端が前記ブリッジ回路の直流端子に接続された直流インダクタンス(3)と、
を備えるとともに、
前記コンデンサ(7)の静電容量Cと前記交流インダクタンス(4)のLとで決まる共振周波数が前記交流電源(6)の周波数よりも高くなるように前記C及び/又はLが設定され、
前記制御装置は、前記交流電源(6)の電圧に同期して、前記逆導通型半導体スイッチのうち対角線上に位置するペアを同時にオン/オフさせ、かつ2組のペアが同時にオンすることのないように前記制御信号を制御するとともに、前記制御信号の位相を前記交流電源の位相よりも遅らせることによって前記順変換を、前記制御信号の位相を前記交流電源の位相よりも進ませることによって前記逆変換を行うことを特徴とする交流/直流電力変換装置。
【請求項2】
前記交流インダクタンス(4)と前記交流電源(6)との間に前記制御装置によって開閉制御される交流スイッチ(5)を挿入し、
前記制御装置が、前記交流電源(6)の停電または瞬低を検出した時に、前記交流スイッチ(5)を開いて前記交流電源(6)を遮断し、前記交流電源に替わる模擬の同期信号を発生させるとともに前記制御信号の位相を進ませることによって逆変換に切換え、前記二次電池(2)又は他の直流電源からの直流電力を逆変換して、交流負荷に交流電力を供給し続けることを特徴とする請求項1に記載の交流/直流電力変換装置。
【請求項3】
前記直流インダクタンス(3)と前記二次電池(2)との間、又は前記直流インダクタンス(3)と前記ブリッジ回路の直流端子との間に直流スイッチを挿入したことを特徴とする請求項1又は2に記載の交流/直流電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置が、外部との通信を行う通信手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の交流/直流電力変換装置。
【請求項5】
電力系統の交流電源及び直流電源の二次電池に接続された、1または複数の前項に記載の交流/直流電力変換装置と、
外部集中制御拠点(9)のサーバーとがインターネット等の通信回線を介して相互に通信可能に接続され、
前記サーバーは前記電力系統の電力の需給状態を監視するとともに、前記二次電池の充電状態を監視し、
前記需給状態に応じて、前記制御装置に対して順変換又は逆変換の指令を送り、前記二次電池の充放電を制御することにより、前記電力系統の電力安定化を図ることを特徴とする二次電池の充放電制御システム。
【請求項1】
交流から直流への順変換、及び直流から交流への逆変換機能を備えた交流/直流電力変換装置であって、該交流/直流電力変換装置は、
4個の逆導通型半導体スイッチにて構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路の直流端子間に接続され、電流遮断時の磁気エネルギーを蓄積するコンデンサ(7)と、前記各逆導通型半導体スイッチのゲートに制御信号を与えて、前記各逆導通型半導体スイッチのオン/オフ制御を行う制御装置とを具備した磁気エネルギー回生双方向スイッチと、
一端が交流電源(6)に接続され、他端が前記ブリッジ回路の交流端子に接続された交流インダクタンス(4)と、
一端が直流電源の二次電池(2)に接続され、他端が前記ブリッジ回路の直流端子に接続された直流インダクタンス(3)と、
を備えるとともに、
前記コンデンサ(7)の静電容量Cと前記交流インダクタンス(4)のLとで決まる共振周波数が前記交流電源(6)の周波数よりも高くなるように前記C及び/又はLが設定され、
前記制御装置は、前記交流電源(6)の電圧に同期して、前記逆導通型半導体スイッチのうち対角線上に位置するペアを同時にオン/オフさせ、かつ2組のペアが同時にオンすることのないように前記制御信号を制御するとともに、前記制御信号の位相を前記交流電源の位相よりも遅らせることによって前記順変換を、前記制御信号の位相を前記交流電源の位相よりも進ませることによって前記逆変換を行うことを特徴とする交流/直流電力変換装置。
【請求項2】
前記交流インダクタンス(4)と前記交流電源(6)との間に前記制御装置によって開閉制御される交流スイッチ(5)を挿入し、
前記制御装置が、前記交流電源(6)の停電または瞬低を検出した時に、前記交流スイッチ(5)を開いて前記交流電源(6)を遮断し、前記交流電源に替わる模擬の同期信号を発生させるとともに前記制御信号の位相を進ませることによって逆変換に切換え、前記二次電池(2)又は他の直流電源からの直流電力を逆変換して、交流負荷に交流電力を供給し続けることを特徴とする請求項1に記載の交流/直流電力変換装置。
【請求項3】
前記直流インダクタンス(3)と前記二次電池(2)との間、又は前記直流インダクタンス(3)と前記ブリッジ回路の直流端子との間に直流スイッチを挿入したことを特徴とする請求項1又は2に記載の交流/直流電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置が、外部との通信を行う通信手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の交流/直流電力変換装置。
【請求項5】
電力系統の交流電源及び直流電源の二次電池に接続された、1または複数の前項に記載の交流/直流電力変換装置と、
外部集中制御拠点(9)のサーバーとがインターネット等の通信回線を介して相互に通信可能に接続され、
前記サーバーは前記電力系統の電力の需給状態を監視するとともに、前記二次電池の充電状態を監視し、
前記需給状態に応じて、前記制御装置に対して順変換又は逆変換の指令を送り、前記二次電池の充放電を制御することにより、前記電力系統の電力安定化を図ることを特徴とする二次電池の充放電制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−193817(P2008−193817A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26273(P2007−26273)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]