磁気カップリング装置
【課題】隔壁部の強度を向上させつつ、隔壁部での渦電流の発生を十分に抑制することによって、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することが可能な磁気カップリング装置を提供する。
【解決手段】この磁気カップリング装置100は、磁石部12を含む負荷側回転体10と、磁石部12と磁気カップリングする磁石部22を含む駆動源側回転体20と、負荷側回転体10と駆動源側回転体20との間で、かつ、磁石部12に対向する位置に配置され、負荷側回転体10と駆動源側回転体20とを隔離する隔壁部とを備え、隔壁部は、非磁性の樹脂材料からなる壁部34と、回転方向Bに沿って磁石部12の2倍の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる12枚の補強板33とを含む。
【解決手段】この磁気カップリング装置100は、磁石部12を含む負荷側回転体10と、磁石部12と磁気カップリングする磁石部22を含む駆動源側回転体20と、負荷側回転体10と駆動源側回転体20との間で、かつ、磁石部12に対向する位置に配置され、負荷側回転体10と駆動源側回転体20とを隔離する隔壁部とを備え、隔壁部は、非磁性の樹脂材料からなる壁部34と、回転方向Bに沿って磁石部12の2倍の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる12枚の補強板33とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気カップリング装置に関し、特に、第1回転体と第2回転体との間に配置される隔壁部を備える磁気カップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気カップリング装置では、互いに磁気カップリングする第1回転体と第2回転体とを隔離するために、第1回転体と第2回転体との間に非磁性の金属材料からなる隔壁部が配置されている。しかしながら、磁気カップリング装置の駆動時に、金属材料からなる隔壁部に渦電流が発生することに起因して駆動力を伝達する際のエネルギ損失が増大するという不都合がある。そこで、従来、渦電流の発生を抑制しつつ隔壁部の強度を維持するために、非磁性で、かつ、電気抵抗の高い樹脂材料からなる壁部と、補強のための金属製の補強材とを含む隔壁部を備えた磁気カップリング装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、表面に円周状に配置された永久磁石を含む円盤状の駆動側回転体と、駆動側回転体と対向する位置に配置されるとともに、永久磁石と磁気カップリングする円盤状の従動側回転体と、駆動側回転体と従動側回転体との間に配置された円盤状の隔壁体とを備えるマグネットカップリングポンプ(磁気カップリング装置)が開示されている。このマグネットカップリングポンプの隔壁体は、非磁性のオーステナイト系ステンレスからなる補強部と、非磁性の樹脂材料からなる壁部とから構成されている。また、補強部は、円環状の外枠と、外枠の内側に格子状に形成された網部とを有しているとともに、壁部は、補強部の網部を覆うように形成されている。なお、上記特許文献1には、補強部の網部の格子の大きさなどの詳細な構成については、開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−26429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているステンレスからなる補強部の網部を設けたとしても、網部における渦電流の発生を十分に抑制することが困難であるという問題点(課題)がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、隔壁部の強度を向上させつつ、隔壁部での渦電流の発生を十分に抑制することによって、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することが可能な磁気カップリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による磁気カップリング装置は、異なる磁極が回転方向に沿って交互に配置される第1磁石部を含む第1回転体と、第1磁石部と磁気カップリングする第2磁石部またはヨークのいずれか一方を含み、第1回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された第2回転体と、第1回転体と第2回転体との間で、かつ、第1磁石部に対向する位置に配置され、第1回転体と第2回転体とを隔離する隔壁部とを備え、隔壁部は、非磁性の樹脂材料からなる壁部と、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部とを含む。
【0008】
この発明の一の局面による磁気カップリング装置では、上記のように、第1磁石部に対向する位置に配置される隔壁部が、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部を含むことによって、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量または第1磁石部および第2磁石部からの磁束の総量は、第1回転体が回転することによって、あまり変化しない。すなわち、隔壁部の複数の補強部を第1磁石部の偶数倍の磁極おきに配置する場合、初期状態(ある時点での状態)では、補強部同士に挟まれる領域に、第1磁石部の一方磁極(たとえば、N極)と、他方磁極(たとえば、S極)とが共に同じ整数倍分ずつ位置している。この状態では、整数倍のN極と整数倍のS極とが同じ面積で存在しているので、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量(ベクトル量)または第1磁石部および第2磁石部からの磁束の総量は、略ゼロである。そして、初期状態から第1回転体を1磁極分回転させた場合には、初期状態と同様に、補強部同士に挟まれる領域に、第1磁石部の他方磁極(N極)と、一方磁極(S極)とが共に同じ整数倍分ずつだけ位置する。この状態でも、整数倍のN極と整数倍のS極とが同じ面積で存在しているので、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量(ベクトル量)または第1磁石部および第2磁石部からの磁束の総量は、略ゼロである。つまり、回転前後において、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量はほとんど変化しない。なお、本発明では、第1回転体または第2回転体のいずれか一方のみが回転可能に構成されてもよいし、第1回転体および第2回転体の両方が回転可能に構成されてもよい。
【0009】
このように、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量または第1磁石部および第2磁石部からの磁束の総量がほとんど変化しない場合には、磁束の変化を打ち消す方向に渦電流が発生するのが十分に抑制される。この結果、隔壁部が、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部を含むことによって、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0010】
また、この発明の一の局面による磁気カップリング装置では、上記のように、回転方向に沿って複数の補強部を配置することによって、回転方向と交差する方向に延びるように補強部を構成することができるので、隔壁部の強度を向上させることができる。
【0011】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部は、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに略同一間隔で配置されている。このように構成すれば、略同一間隔で配置された複数の補強部によって、隔壁部全体を均等に補強することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第1磁石部では、異なる磁極が回転方向に沿って所定の角度間隔ごとに交互に配置されており、複数の補強部は、回転方向に沿って第1磁石部の磁極における所定の角度間隔の偶数倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている。このように異なる磁極が回転方向に沿って所定の角度間隔ごとに交互に配置されている第1磁石部を用いた磁気カップリング装置においても、複数の補強部を、回転方向に沿って第1磁石部の磁極における所定の角度間隔の偶数倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのを十分に抑制しつつ、隔壁部を効果的に補強することができる。
【0013】
上記複数の補強部が所定の角度間隔の偶数倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部は、回転方向に沿って第1磁石部の磁極における所定の角度間隔の2倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている。このように構成すれば、補強部同士の間隔をより近づけることができるので、隔壁部をさらに効果的に補強することができる。
【0014】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部の各々の端部を連結する連結部をさらに備える。このように構成すれば、補強部と補強部の各々の端部を連結する連結部とによって、隔壁部をより補強することができる。また、連結部を介して、渦電流が一対の補強部に流れるように構成される場合であっても、第1磁石部に対向する位置に配置される隔壁部が、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部を含むことによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0015】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部は、回転方向に沿った円の全周の3%以上20%以下の部分を覆うように、回転方向と交差する方向に延びている。このように構成すれば、複数の補強部が回転方向に沿った円の全周の3%以上の部分を覆うことによって、補強部による補強が不十分であることに起因して隔壁部の強度が低下するのを抑制することができる。また、複数の補強部が回転方向に沿った円の全周の20%以下の部分を覆うことによって、磁束の変化が生じた場合であっても、補強部に発生する渦電流を小さくすることができるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、壁部の厚みは、複数の補強部の各々の厚みよりも小さい。このように構成すれば、補強部の厚みを大きくして隔壁部を十分に補強しつつ、壁部の厚みを小さくして隔壁部全体の厚みを小さくすることができる。
【0017】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、隔壁部の壁部は、回転方向に沿って円筒状に形成されており、複数の補強部は、円筒状の壁部の内側面または外側面で円筒の延びる方向に沿って延びるように形成されている。このように構成すれば、円筒形の磁気カップリング装置において、円筒状の壁部の内側面または外側面で円筒の延びる方向(軸方向)に沿って延びるとともに、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに配置された複数の補強部によって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、円筒形の磁気カップリング装置において、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、第1回転体および第2回転体のいずれか一方は、円筒状に形成されているとともに、第1回転体および第2回転体のいずれか他方は、円筒状の第1回転体と第2回転体とで円筒状の隔壁部を挟み込むように、円筒状の第1回転体および第2回転体のいずれか一方の内側に配置されており、第1磁石部の異なる磁極は、第2回転体と対向する側面において、円筒の延びる方向に沿って延びるとともに、回転方向に沿って交互に配置されている。このように構成すれば、円筒形の磁気カップリング装置において、円筒状の壁部の内側面または外側面で円筒の延びる方向に沿って延びる複数の補強部と、円筒の延びる方向に沿って延びるように配置された第1磁石部とを互いに対向する位置に容易に配置することができる。
【0019】
上記隔壁部の壁部が円筒状に形成されている磁気カップリング装置において、好ましくは、円筒状の壁部の端部に配置され、第1回転体と第2回転体とを隔離する円盤状の蓋部をさらに備える。このように構成すれば、円筒形の磁気カップリング装置において、隔壁部と円盤状の蓋部とによって、第1回転体と第2回転体とを隔離することができる。
【0020】
上記円盤状の蓋部をさらに備える磁気カップリング装置において、好ましくは、蓋部は、金属材料からなるとともに、複数の補強部の各々の端部が溶接されることにより、複数の補強部の各々の端部を連結する連結部である。このように構成すれば、補強部と補強部の各々の端部を連結する蓋部とによって、隔壁部をより補強することができる。また、蓋部を介して、渦電流が一対の補強部に流れるように構成される場合であっても、第1磁石部に対向する位置に配置される隔壁部が、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部を含むことによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0021】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部の各々は、金属製の板材からなる。このように構成すれば、補強部の厚みを小さくしつつ、補強部の厚み方向に直交する方向の幅を大きくすることができるので、補強部の厚みが大きくなるのを抑制しつつ、隔壁部を効果的に補強することができる。
【0022】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部の各々は、金属製の線材からなる。このように構成すれば、容易に、複数の補強部を回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置することができる。
【0023】
この場合、好ましくは、複数の補強部の各々は、複数の金属製の線材からなる。このように構成すれば、複数の金属製の線材を1つの補強部として用いることによって、各々の補強部の強度を向上させることができる。また、厚み方向に直交する方向に沿うように線材を並べることによって、複数の金属製の線材からなる補強部の厚みを大きくすることなく、補強部の強度を向上させることができる。また、線材の数を異ならせることにより、容易に、壁部の補強度合を異ならせることができる。
【0024】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、第1回転体および第2回転体は、互いに対向するように円盤状に形成されており、第1磁石部の異なる磁極は、第2回転体と対向する表面において、回転方向に沿って交互に配置されており、複数の補強部は、回転方向に沿った円の中心から半径方向に延びるように形成されているとともに、壁部は、少なくとも複数の補強部の間を覆うように形成されている。このように構成すれば、円盤形の磁気カップリング装置において、回転方向に沿った円の中心から半径方向に延びるように形成されるとともに、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに配置された複数の補強部によって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、円盤形の磁気カップリング装置において、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0025】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、補強部は、非磁性のステンレスからなる。このように構成すれば、伝達トルクが変動することを抑制することができるとともに、補強部が腐食するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置を示した断面図である。
【図2】図1の900−900線に沿った磁気カップリング装置の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の初期状態における補強部周辺を示した断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の隔離部を示した斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の隔離部を示した分解斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の初期状態における補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の1磁極分回転させた状態における補強部周辺を示した断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の1磁極分回転させた状態における補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図9】比較例1による磁気カップリング装置の金属部材周辺を示した断面図である。
【図10】比較例2による磁気カップリング装置の初期状態における補強部周辺を示した断面図である。
【図11】比較例2による磁気カップリング装置の初期状態における補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図12】比較例3による磁気カップリング装置の補強部周辺を示した断面図である。
【図13】比較例2による磁気カップリング装置の1磁極分回転させた状態における補強部周辺を示した断面図である。
【図14】比較例2による磁気カップリング装置の1磁極分回転させた状態における補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図15】本発明の第1実施形態の第1変形例による磁気カップリング装置の補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図16】本発明の第2実施形態による磁気カップリング装置における補強部周辺を示した断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態による磁気カップリング装置を示した断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態による磁気カップリング装置の磁石部を示した側面図である。
【図19】本発明の第3実施形態による磁気カップリング装置の補強部材を示した断面図である。
【図20】本発明の第3実施形態による磁気カップリング装置の壁部を示した断面図である。
【図21】本発明の第1実施形態の第2変形例による磁気カップリング装置を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
まず、図1〜図8を参照して、本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置100について説明する。
【0029】
本発明の第1実施形態による円筒形の磁気カップリング装置100は、図1に示すように、図示しない負荷部に駆動力を伝達する負荷側部1と、図示しない駆動源から駆動力が伝達されるとともに、駆動力を負荷側部1に伝達する駆動源側部2と、負荷側部1側の空間と駆動源側部2側の空間とを隔離する隔離部材3とを備えている。また、負荷側部1および駆動源側部2は、共に、X方向に延びる回転軸線Aを回転中心として回転可能に構成されている。一方、隔離部材3は回転および移動を行わないように固定されている。また、負荷側部1側の空間は、駆動源側部2側の空間よりも気圧(内圧)が高くなるように構成されている。
【0030】
負荷側部1は、駆動部などからなる図示しない負荷部に一方端部側(X1側)が接続され、X1側に延びる軸部1aと、軸部1aの他方端部側(X2側)に接続された負荷側回転体10とを含んでいる。また、駆動源側部2は、図示しない駆動源に一方端部側(X2側)が接続され、X2側に延びる軸部2aと、軸部2aの他方端部側(X1側)に接続された駆動源側回転体20とを含んでいる。なお、負荷側回転体10および駆動源側回転体20は、それぞれ、本発明の「第2回転体」および「第1回転体」の一例である。
【0031】
負荷側回転体10は、ホイール部11と磁石部12とを含むとともに、駆動源側回転体20は、円筒部21と磁石部22とを含んでいる。ホイール部11は、回転軸線Aを中心とする円盤状に形成されているとともに、円筒部21は、回転軸線Aを中心とするとともに、X1側に開口を有する円筒状に形成されている。また、ホイール部11は、円盤の外周に沿うように形成されるとともに、X方向に延びるように形成された接触部11aを有している。この接触部11aの外周面11bには、磁石部12が配置されるように構成されている。また、ホイール部11の接触部11aおよび円筒部21の内周面は、共に、SS400などの一般的な炭素鋼などの強磁性体を含む部材からなり、ヨークとしての機能を有している。また、駆動源側回転体20の円筒部21の内側に、負荷側回転体10のホイール部11と磁石部12とが配置されている。なお、磁石部12および22は、それぞれ、本発明の「第2磁石部」および「第1磁石部」の一例である。
【0032】
また、図2に示すように、磁石部12では、略同一の形状を有する12個の磁石にて形成されるN極12aと、同様に12個の磁石にて形成されるS極12bとが、回転軸線Aを中心とする円周(回転)方向Bに沿って交互に配置されている。また、図1に示すように、12個のN極12aと12個のS極12bとは、ホイール部11の外周面11bでX方向に延びるように配置されている。また、図2に示すように、磁石部22では、略同一の形状を有する12個の磁石にて形成されるN極22aと12個の磁石にて形成されるS極22bとが、回転方向Bに沿って交互に配置されている。また、図1に示すように、12個のN極22aと12個のS極22bとは、円筒部21の内周面21aでX方向に延びるように配置されている。
【0033】
つまり、磁石部12および22は、共に24個の磁極を有するとともに、磁極同士が約15度の角度α1おきに略同一角度間隔で配置されている。また、N極12a、S極12b、N極22aおよびS極22bは、ホイール部11および円筒部21の半径方向(回転方向Bに直交し、かつ、回転軸線Aから放射状に延びる方向)において、略同様の厚みを有している。
【0034】
また、磁石部12と磁石部22とは、互いに磁気カップリングするように構成されている。具体的には、図3に示すように、磁気カップリング装置100の初期状態において、磁石部12のN極12aと磁石部22のS極22bとが互いに対向するとともに、磁石部12のS極12bと磁石部22のN極22aとが互いに対向するように構成されている。そして、図2に示すように、駆動源側回転体20(図1参照)が回転軸線A回りに回転した際に、負荷側回転体10(図1参照)の磁石部12のS極12bが、対向する磁石部22のN極22aに対して少しずれた状態で従動して、回転方向Bに沿って回転移動する。同様に、磁石部12のN極12aが、対向する磁石部22のS極22bに対して少しずれた状態で従動して、回転方向Bに沿って回転移動することによって、負荷側回転体10が駆動源側回転体20と共に回転軸線A回りに回転する。この結果、駆動源側回転体20の回転軸線A回りの駆動力が、負荷側回転体10の回転軸線A回りの駆動力として伝達されるように構成されている。
【0035】
隔離部材3は、図1に示すように、フレーム部3aと、後述するネジ4によってフレーム部3aに固定される隔離部30とを含んでいる。このフレーム部3aには、後述する鍔部31の貫通孔31aに対応する位置にネジ穴3bが設けられている。また、図4および図5に示すように、隔離部30は、負荷側(X1側)に配置されて円環状に形成された鍔部31と、駆動源側(X2側)に配置されて円盤状に形成された蓋部32と、回転軸線Aの延びる方向(X方向)に延びる12枚の補強板33と、補強板33の内側に配置されるとともに、X方向に延びる円筒状の壁部34とを有している。なお、鍔部31および蓋部32は、本発明の「連結部」の一例である。また、補強板33は、本発明の「補強部」の一例である。
【0036】
鍔部31、蓋部32および補強板33は、共に、非磁性のオーステナイト系ステンレスからなる。また、壁部34は、耐薬品性を有するフッ素樹脂、塩化ビニル、または、ABS樹脂などの非磁性の樹脂材料からなる。ここで、壁部34が樹脂材料からなることによって、壁部34は電気抵抗が大きい。これにより、磁石部12および22が回転することにより壁部34を通過する磁束が変化したとしても、電磁誘導による渦電流は壁部34においてほとんど発生しないように構成されている。
【0037】
また、鍔部31と補強板33とは、補強板33のX1側で互いに溶接されているとともに、蓋部32と補強板33とは、補強板33のX2側で互いに溶接されている。これにより、鍔部31および蓋部32によって12枚の補強板33は互いに連結されている。
【0038】
また、円筒状の壁部34は、鍔部31の内周面および円盤状の蓋部32の内周面よりも若干半径方向に小さく形成されている。したがって、壁部34は、補強板33に対応するように、鍔部31と蓋部32とに挟まれる位置に配置されている。そしてこの状態で、補強板33は、壁部34の外側面に円筒の延びる方向(X方向)に沿って延びるように配置されている。
【0039】
また、図1に示すように、補強板33と壁部34とは、負荷側回転体10と駆動源側回転体20との間に挟み込まれるように、駆動源側回転体20の円筒部21の内側に配置されている。また、補強板33と壁部34とは、負荷側回転体10の磁石部12と駆動源側回転体20の磁石部22とが半径方向に対向する位置に配置されている。ここで、12枚の補強板33は、負荷側回転体10の磁石部12に対して半径方向に所定の空隙を隔てた位置に配置されているとともに、壁部34は、駆動源側回転体20の磁石部22に対して半径方向に所定の空隙を隔てた位置に配置されている。この結果、補強板33および壁部34は、負荷側回転体10および駆動源側回転体20と非接触の状態で、負荷側回転体10と駆動源側回転体20との間に挟まれるように配置されている。
【0040】
また、補強板33と壁部34とは、X方向に略同一の長さを有するように形成されている。また、補強板33は、半径方向に約5mmの厚みt1を有する板材からなるとともに、壁部34は、半径方向に約1mmの厚みt2を有している。つまり、壁部34の厚みt2は、補強板33の厚みt1よりも小さい。
【0041】
また、図4に示すように、鍔部31には、回転方向Bに沿って所定の距離を隔てて複数の貫通孔31aが設けられている。これにより、図1に示すように、ネジ4が貫通孔31aに螺合されることによって隔離部30がフレーム部3aに固定されている。
【0042】
ここで、第1実施形態では、図2に示すように、12枚の補強板33の各々は、回転方向Bに沿って約30度の角度α2でおきに略同一角度間隔で配置されている。つまり、12枚の補強板33は、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置されている。ここで、図3および図6に示す初期状態では、ある補強板33と隣接する補強板33とに挟まれる領域C(図6参照)には、磁石部22のN極22aに対向する領域と、S極22bに対向する領域とが含まれている。この際、N極22aに対向する領域とS極22bに対向する領域とは、共に、回転方向Bに長さL1を有している。つまり、N極22aから発せられる磁束と、S極22bに向かう磁束とが略同一であるので、領域Cを通過する磁束の総量(ベクトル量)は、略ゼロである。
【0043】
そして、図3および図6に示す初期状態から、図7および図8のように、負荷側回転体10および駆動源側回転体20を1磁極分(約15度)回転させた場合には、図8に示すように、領域Cには、S極22bに対向する領域と、N極22aに対向する領域とが含まれている。この際、N極22aに対向する領域とS極22bに対向する領域とは、共に、回転方向Bに長さL1を有している。つまり、領域Cを通過する磁束の総量は、初期状態と同様に、略ゼロである。この結果、負荷側回転体10および駆動源側回転体20の回転軸線A回りの回転状態にかかわらず、領域Cを通過する磁束の総量はあまり変化しない。
【0044】
また、図3に示すように、12枚の補強板33の各々は、補強板33が配置される回転方向Bに沿った円において、約6度の角度α3の円周を占めるように配置されている。つまり、12枚の補強板33の各々は、約6度の角度α3分の円弧に対応する回転方向Bの幅を有するように構成されている。この結果、12枚の補強板33が約72度(=6×12)の角度分の円弧を占めることによって、12枚の補強板33は、回転方向Bに沿った円の全周の約20%(=(72/360)×100)を占めるように配置されている。これにより、12枚の補強板33は、円筒状の壁部34の約20%を覆った状態で、X方向に延びるように配置されている。
【0045】
第1実施形態では、上記のように、12枚の補強板33を、円周(回転)方向Bに沿って、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生することを十分に抑制することができるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。この結果、駆動源側回転体20から負荷側回転体10に効率よく駆動力を伝達することができるとともに、駆動力の大きさが変動することを抑制することもできる。また、略同一の角度間隔で配置された12枚の補強板33によって、補強部33と壁部34とから構成される隔壁部全体を均等に補強することができる。また、補強板33同士の間隔を近づけることができるので、隔壁部をさらに効果的に補強することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、回転方向Bに沿って12枚の補強板33を配置することによって、回転方向Bと交差する方向(X方向)に延びるように補強板33を構成することができるので、隔壁部の強度を向上させることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、壁部34が非磁性の樹脂材料からなることによって、電気抵抗の高い壁部34では渦電流がほとんど発生しないので、エネルギ損失をほとんど発生させることなく、負荷側回転体10と駆動源側回転体20とを隔離することができる。また、補強板33が、非磁性のオーステナイト系ステンレスからなることによって、強度が比較的弱い樹脂材料からなる壁部34を含む隔壁部を補強することができる。また、セラミックスなどを補強板33として用いる場合と比べて、金属材料を補強板33として用いることによって、壁部34の所定の位置に配置可能なように補強板33を容易に加工することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、12枚の補強板33の端部をそれぞれ接続する鍔部31と蓋部32とが設けられており、渦電流が一対の補強板33に流れるように構成される場合であっても、磁石部12および22に対向する位置に、12枚の補強板33を、回転方向Bに沿って、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。また、12枚の補強板33と、補強板33の各々の端部を連結する鍔部31と蓋部32とによって、隔壁部をより補強することができる。また、円盤状の蓋部32によって負荷側回転体10と駆動源側回転体20とを隔離することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、12枚の補強板33を、円筒状の壁部34において、回転方向Bに沿った円の全周の約20%を覆った状態で、X方向に延びるように配置することによって、補強板33による補強が不十分であることに起因して隔壁部の強度が低下するのを抑制することができる。また、磁束の変化が生じた場合であっても、補強板33に発生する渦電流を小さくすることができるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、壁部34の厚みt2を補強板33の厚みt1よりも小さくすることによって、補強板33の厚みt1を大きくして隔壁部を十分に補強しつつ、壁部34の厚みt2を小さくして補強板33および壁部34の合計の厚み(t1+t2)を小さくすることができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、壁部34をX方向に延びる円筒状に形成するとともに、12枚の補強板33を壁部34の外側面でX方向に沿って延びるように形成することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、円筒形の磁気カップリング装置100において、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、駆動源側回転体20の円筒部21の内側に負荷側回転体10のホイール部11と磁石部12とを配置するとともに、磁石部12の12個のN極12aと12個のS極12bとを、回転軸線Aを中心とする回転方向Bに沿って交互に配置し、磁石部22の12個のN極22aと12個のS極22bとを、回転方向Bに沿って交互に配置することによって、円筒形の磁気カップリング装置100において、円筒状の壁部34の外側面でX方向に延びる複数の補強板33と、X方向に延びるように配置された磁石部12および22とを互いに対向する位置に容易に配置することができる。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、鍔部31と補強板33とを補強板33のX1側で互いに溶接するとともに、蓋部32と補強板33とを補強板33のX2側で互いに溶接することによって、鍔部31および蓋部32を介して、渦電流が一対の補強板33に流れるように構成される場合であっても、12枚の補強板33を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、上記のように、補強板33を非磁性のオーステナイト系ステンレスの板材からなるように構成することによって、補強板33が線材からなる場合よりも、補強板33の厚みt1を小さくしつつ、補強板33のX方向の幅を大きくすることができるので、補強板33の厚みt1が大きくなるのを抑制しつつ、隔壁部を効果的に補強することができる。また、オーステナイト系ステンレスを補強板33として用いることによって、駆動源側回転体20から負荷側回転体10に伝達される伝達トルクが変動することを抑制することができるとともに、補強板33が腐食するのを抑制することができる。
【0055】
(実施例)
次に、本発明の効果を確認するために行った磁気カップリング装置100のシミュレーションについて説明する。具体的には、上記第1実施形態に対応する実施例の磁気カップリング装置100と、実施例に対する比較例1〜4の磁気カップリング装置とについて、エネルギ損失のシミュレーションおよび強度のシミュレーションを行った。
【0056】
ここで、実施例の磁気カップリング装置100は、図1〜図8に示す上記第1実施形態と同様の構成を有するように想定した。つまり、磁石部12および22では、共に、12個のN極12a(22a)と12個のS極12b(22b)とが、15度の角度α1おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。また、隔離部30の12枚の補強板33が、30度の角度α2おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。つまり、隔離部30の12枚の補強板33が、磁石部12および22における磁極間の角度α1の2倍の角度間隔おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。さらに、12枚の補強板33の各々が、6度の角度α3分の円弧に対応する回転方向Bの幅を有するように構成することによって、12枚の補強板33が、回転方向Bに沿った円の全周の20%を覆うように想定した。
【0057】
また、実施例に対する比較例1の磁気カップリング装置200として、図9に示すように、第1実施形態の補強板33および壁部34の代わりに、円筒状の金属部材235を用いる場合を想定した。つまり、金属部材235が円周の全体(360度)に配置されるように想定した。
【0058】
また、実施例に対する比較例2の磁気カップリング装置300として、図10および図11に示すように、隔離部330の補強板333が、1磁極ごとに配置されるように想定した。具体的には、24枚の補強板333が、15度の角度α1おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。つまり、隔離部330の24枚の補強板333が、磁石部12および22における磁極間の角度α1と同一角度間隔おきに配置されるように想定した。また、24枚の補強板333の各々が、3度の角度α4分の円弧に対応する回転方向Bの幅を有するように構成することによって、24枚の補強板333が、回転方向Bに沿った円の全周の20%を覆うように想定した。
【0059】
また、実施例に対する比較例3の磁気カップリング装置400として、図12に示すように、隔離部430の24枚の補強板433が、15度の角度α1おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。つまり、比較例2と同様に、隔離部430の24枚の補強板433が、磁石部12および22における磁極間の角度α1と同一角度間隔おきに配置されるように想定した。また、24枚の補強板433の各々が、6度の角度α3分の円弧に対応する回転方向Bの幅を有するように構成することによって、24枚の補強板433が、回転方向Bに沿った円の全周の40%を覆うように想定した。
【0060】
また、実施例に対する比較例4の磁気カップリング装置として、補強板が回転軸線A(軸方向)に沿って延びるように配置されている実施例、比較例2および3の磁気カップリング装置100(300、400)とは異なり、補強板が回転軸線A(図4参照)に直交するように形成された比較例4を想定した。つまり、12枚の補強板の各々が回転軸線Aを中心とするとともに、回転軸線Aに直交する円環状に形成されているとともに、X方向に所定の間隔を隔てて配置されているように想定した。
【0061】
なお、実施例および比較例2〜4の補強板と比較例1の金属部材235とが、共にオーステナイト系ステンレスであるSUS304からなるように想定した。
【0062】
(エネルギ損失のシミュレーション)
そして、実施例の磁気カップリング装置と、比較例1〜4の磁気カップリング装置とにおいて、補強板または金属部材における渦電流の発生状況をシミュレーションすることによって、磁気カップリング装置におけるエネルギ損失を求めた。
【0063】
エネルギ損失のシミュレーションの結果としては、比較例1の磁気カップリング装置200におけるエネルギ損失を100とした場合に、実施例の磁気カップリング装置100におけるエネルギ損失は3となった。また、比較例2の磁気カップリング装置300におけるエネルギ損失は17となり、比較例3の磁気カップリング装置400におけるエネルギ損失は33となった。また、比較例4の磁気カップリング装置におけるエネルギ損失は3となり、実施例と同じエネルギ損失であった。この結果から、実施例の磁気カップリング装置100のように、隔離部30の12枚の補強板33を、磁石部12および22における磁極間の角度α1の2倍の角度間隔おきに同一角度間隔で配置することによって、比較例1の磁気カップリング装置200と比べて、エネルギ損失を飛躍的に減少させられる結果を得ることができた。一方、比較例2の磁気カップリング装置300および比較例3の磁気カップリング装置400のように、隔離部330(430)の24枚の補強板333(433)を、磁石部12および22における磁極間の角度α1と同一角度間隔おきに配置した場合、比較例1の磁気カップリング装置200よりもエネルギ損失は減少した一方、実施例ほどにはエネルギ損失を減少させられないという結果を得た。
【0064】
上記エネルギ損失のシミュレーションの結果から、以下の点が考察される。実施例の磁気カップリング装置100では、図3および図6〜図8に示すように、負荷側回転体10および駆動源側回転体20の回転にかかわらず、領域Cを通過する磁束の総量(ベクトル量)はあまり変化しなかったので、補強板33に渦電流が発生するのを十分に抑制することができたと考えられる。一方、比較例2の磁気カップリング装置300においては、図10および図11に示す初期状態では、ある補強板333と隣接する補強板333とに挟まれる領域Dには、S極22bに対向する領域が形成されている。この際、S極22bに対向する領域は、回転方向Bに長さL1を有している。一方、領域Dには、磁石部22のN極22aに対向する領域は形成されていない。つまり、領域Dを通過する磁束は、S極22bに向かう磁束である。そして、図10および図11に示す初期状態から、図13および図14のように、負荷側回転体10(図1参照)および駆動源側回転体20(図1参照)を1磁極分(約15度)回転させた場合には、図14に示すように、領域Dには、磁石部22のN極22aに対向する領域が形成される。一方、領域Dには、S極22bに対向する領域は形成されていない。つまり、領域Dを通過する磁束は、N極22aから発せられる磁束である。この結果、負荷側回転体10および駆動源側回転体20の回転により、領域Dを通過する磁束がS極22bに向かう磁束から、N極22aから発せられる磁束に大幅に変化したため、磁束の変化に起因して電磁誘導により補強板333に渦電流が発生したものと推測される。一方、比較例4は補強板33の向きが異なるだけであったので、エネルギ損失の点からは実施例と大きく変わらなかったと推測される。
【0065】
なお、比較例1の磁気カップリング装置200に比べて、比較例2の磁気カップリング装置300および比較例3の磁気カップリング装置400のエネルギ損失が減少した。これは、比較例1の磁気カップリング装置200では、渦電流は金属部材235の全体に発生した一方、比較例2の磁気カップリング装置300および比較例3の磁気カップリング装置400では、渦電流は壁部34の一部にだけ配置された金属製の補強板333(433)に発生したので、比較例2および比較例3では、発生する渦電流を減少させることができたからであると考えられる。この点は、24枚の補強板333が20%を覆う比較例2が、24枚の補強板433が比較例2よりも大きな面積(約40%)を覆う比較例3よりも、発生する渦電流を減少させることができ、エネルギ損失を減少させることができた点からも明らかであると考えられる。
【0066】
(強度のシミュレーション)
また、実施例および比較例1〜4について、磁気カップリング装置の使用圧力とした圧力の3倍の破壊圧力が負荷側回転体側に内圧として加えられるように設定することにより、隔壁部の強度についてのシミュレーション(安全評価)を行った。
【0067】
強度のシミュレーションの結果としては、実施例の破壊圧力を100とした場合に、比較例1〜3の破壊圧力は100であった。つまり、実施例および比較例1〜3の隔壁部は、圧力の3倍の破壊圧力であっても耐えること可能な強度を有していると推測される。一方、比較例4の破壊圧力は60であった。つまり、比較例4の隔壁部は、実施例および比較例1〜3の隔壁部と比べて、60%の強度しか有していないため、強度が不十分であると推測される。この結果、実施例のように、回転方向Bに沿って12枚の補強板33を配置することによって、補強板が回転方向Bに直交して配置されている比較例4よりも、隔壁部の強度を向上させることが可能であると考えられる。
【0068】
(第1実施形態の第1変形例)
次に、図1および図15を参照して、本発明の第1実施形態の第1変形例について説明する。この第1実施形態の第1変形例による磁気カップリング装置500では、上記第1実施形態とは異なり、隔離部530の複数の補強板533が磁石部22の延びる方向に対して傾斜している場合について説明する。なお、補強板533は、本発明の「補強部」の一例である。
【0069】
本発明の第1実施形態の第1変形例による磁気カップリング装置500では、図15に示すように、隔離部530の補強板533の各々は、X方向に対して所定の角度で傾斜する方向に延びるように形成されている。つまり、補強板533の各々は、X方向に磁極が延びるように形成された磁石部22に対して傾斜した方向に延びるように形成されている。ここで、ある補強板533と隣接する補強板533とに挟まれる領域Eでは、N極22aに対向する領域とS極22bに対向する領域とが略同一の面積になるように構成されている。これにより、領域Eを通過する磁束の総量(ベクトル量)は、N極22aから発せられる磁束とS極22bに向かう磁束とが略同一であるので、磁石部22の円周(回転)方向Bへの移動にかかわらず、あまり変化しない。
【0070】
ここで、N極22aとS極22bとが切り替わる部分が補強板533を通過する際に、磁束の変化が生じて補強板533には渦電流が多少発生する。しかしながら、補強板533がX方向に対して所定の角度で傾斜する方向に延びることによって、補強板533の一部分のみがN極22aとS極22bとが切り替わる部分と対向するように構成され、磁石部12および22が傾斜(スキュー)して配置された場合と同様の効果が得られる。これにより、補強板533の一部分だけに渦電流が発生するように構成することが可能になるので、補強板533をX方向に延びるように形成する場合と比べて、磁束の変化が緩やかになりエネルギ損失をより抑制することが可能である。この結果、磁束の変化が円滑になって効率よく駆動力を伝達することが可能になるとともに、駆動力の大きさが変動することを抑制することも可能になる。
【0071】
また、隔離部530の補強板533ではなく磁石部12および22が、X方向に対して所定の角度で傾斜する方向に延びるように形成されていてもよい。つまり、磁石部12および22の各々が、X方向に延びるように形成された補強板533に対して傾斜した方向に延びるように形成されてもよい。さらに好ましくは、補強板533と磁石部12および22とが、共に、X方向に対して所定の角度で傾斜する方向に延びるように形成されているのがよい。なお、第1実施形態の第1変形例のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0072】
なお、第1実施形態の第1変形例の効果は、第1実施形態と同様である。
【0073】
(第2実施形態)
次に、図16を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態による磁気カップリング装置600では、上記第1実施形態とは異なり、隔離部630の補強部633の各々が複数の金属製の線材636からなる場合について説明する。なお、補強部633は、本発明の「隔壁部」の一例である。
【0074】
本発明の第2実施形態による磁気カップリング装置600では、図16に示すように、隔離部630は、複数の線材636を有している。この線材636は、5本ごとに回転方向Bに沿って近接して配置されており、5本の線材636を一群とすることによって、補強部633が構成されている。そして、5本の線材636から構成される補強部633は、約30度の角度α2でおきに略同一角度間隔で配置されている。つまり、補強部633は、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0075】
第2実施形態では、上記のように、5本の線材636を一群とする補強部633を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。また、容易に、複数の線材636を回転方向Bに沿って磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔の2倍の角度間隔おきに各々配置することができる。
【0076】
また、第2実施形態では、上記のように、5本の線材636を1つの補強部633として用いることによって、各々の補強部633の強度を容易に向上させることができる。また、回転方向Bに沿うように5本の線材636を並べることによって、5本の線材636からなる補強部633の半径方向の厚みを大きくすることなく、補強部633の強度を向上させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0077】
(第3実施形態)
次に、図17〜図20を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態による磁気カップリング装置700では、上記第1実施形態と異なり、負荷側回転体710と駆動源側回転体720とが回転軸線Aの延びる方向に対向する場合について説明する。なお、負荷側回転体710および駆動源側回転体720は、それぞれ、本発明の「第2回転体」および「第1回転体」の一例である。
【0078】
本発明の第3実施形態による円盤形の磁気カップリング装置700では、図17に示すように、負荷側部701の負荷側回転体710は、円盤部711と磁石部712とを含むとともに、駆動源側部702の駆動源側回転体720は、円盤部721と磁石部722とを含んでいる。円盤部711および721は、共に、SS400などの一般的な炭素鋼などの強磁性体を含む部材からなり、ヨークとしての機能を有している。
【0079】
また、円盤部711および721は、共に、回転軸線Aを中心とする円盤状に形成されている。また、円盤部711のX2側の表面と円盤部721のX1側の表面とには、それぞれ、磁石部712および722が配置されており、互いに対向するように構成されている。また、円盤部711のX1側の表面および円盤部721のX2側の表面には、それぞれ、軸部1aおよび2aが接続されている。
【0080】
また、図18に示すように、磁石部712では、略同一の形状を有する6個のN極712aと6個のS極712bとが、回転軸線Aを中心とする円周(回転)方向Bに沿って交互に配置されている。また、磁石部722では、磁石部712と同様に、略同一の形状を有する6個のN極722aと6個のS極722bとが、回転軸線Aを中心とする回転方向Bに沿って交互に配置されている。つまり、磁石部712および722は、共に12個の磁極を有するとともに、磁極同士が約30度の角度α5おきに略同一角度間隔で形成されている。
【0081】
また、図17に示すように、磁石部712と磁石部722とは、互いの磁極が対向することによって、互いに磁気カップリングするように構成されている。これにより、駆動源側回転体720の回転軸線A回りの駆動力が、負荷側回転体710の回転軸線A回りの駆動力として伝達されるように構成されている。
【0082】
また、磁気カップリング装置700の隔離部材703は、フレーム部703aと、ネジ4によってフレーム部703aにX1側から固定される隔離部730とを含んでいる。このフレーム部703aには、後述する補強部材733のネジ穴733eと壁部734のネジ穴734aとに対応する位置にネジ穴703bが設けられている。また、隔離部730は、負荷側回転体710および駆動源側回転体720と非接触の状態で、X方向において、負荷側回転体710と駆動源側回転体720との間に挟まれるように配置されている。
【0083】
また、隔離部730は、非磁性のオーステナイト系ステンレスからなる補強部材733と、非磁性の樹脂材料からなる壁部734とを有している。この補強部材733および壁部734は、図19および図20に示すように、共に、回転軸線Aを中心とする円盤状に形成されている。また、図17に示すように、補強部材733および壁部734は、回転軸線Aに直交する平面において略同一の大きさを有している。なお、壁部734は、本発明の「隔壁部」の一例である。
【0084】
円盤状の補強部材733は、図19に示すように、回転軸線Aを中心とする円環部733aと、回転軸線Aを中心とするとともに、円環部733aの内側に配置される内側部733bと、円環部733aと内側部733bとを接続するように、半径方向に延びる6つの接続部733cとを有している。これにより、円環部733aと内側部733bとの間には、6つの扇形状の穴部733dが形成されている。また、円環部733aには、回転方向Bに沿って所定の距離を隔てて複数のネジ穴733eが設けられている。なお、接続部733cは、本発明の「補強部」の一例である。
【0085】
ここで、第3実施形態では、6つの接続部733cの各々は、回転方向Bに沿って約60度の角度α6でおきに略同一角度間隔で配置されている。つまり、6つの接続部733cは、磁石部712および722の磁極ごとの角度間隔(角度α5)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置されている。これにより、負荷側回転体710および駆動源側回転体720の回転軸線A回りの回転(図17参照)にかかわらず、6つの穴部733dの各々を通過する磁束の総量(ベクトル量)はあまり変化しないように構成されている。
【0086】
また、図20に示すように、円盤状の壁部734には、回転方向Bに沿って所定の距離を隔てて複数のネジ穴734aが設けられている。これにより、図17に示すように、ネジ4によって円盤状の補強部材733および壁部734がフレーム部703aに固定されるように構成されている。この結果、補強部材733の6つの扇形状の穴部733dに対応する位置に壁部734が位置することによって、壁部734が補強部材733の間に位置する穴部733dの各々を覆うように配置されている。なお、第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0087】
第3実施形態では、上記のように、磁石部712の6個のN極712aと6個のS極712bとを、回転軸線Aを中心とする円周(回転)方向Bに沿って交互に配置し、磁石部722の6個のN極722aと6個のS極722bとを、回転方向Bに沿って交互に配置する。また、6つの接続部733cを、磁石部712および722の磁極ごとの角度間隔(角度α5)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、円盤形の磁気カップリング装置700において、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0088】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0089】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、磁石部12(712)と磁石部22(722)とが対向するように配置した例を示したが、図21に示す第1実施形態の第2変形例の磁気カップリング装置800のように、第1実施形態のホイール部11および磁石部12の代わりに磁性体からなるヨーク811を負荷側回転体810に配置してもよい。なお、負荷側回転体810は、本発明の「第2回転体」の一例である。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、補強板33(補強板533、補強部633)を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置するとともに、上記第3実施形態では、接続部733cを、磁石部712および722の磁極ごとの角度間隔(角度α5)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強部を磁石部の磁極ごとの角度間隔の4倍以上の偶数倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置してもよい。また、補強部を磁石部の磁極ごとの角度間隔の2倍の角度間隔で配置した状態から、任意の補強部を取り外すことによって、補強部同士の角度間隔を異ならせてもよい。これによっても、補強部同士の角度間隔は、磁石部の磁極ごとの角度間隔の偶数倍の角度間隔になる。この結果、補強部を磁石部の磁極ごとの角度間隔の2倍の角度間隔おきに配置する場合と比べて、補強部の数を減少させることが可能になるので、渦電流の発生をより抑制することが可能になる。この結果、駆動力を伝達する際のエネルギ損失をより抑制することが可能である。
【0091】
また、上記第1実施形態では、12枚の補強板33を、円筒状の壁部34において、回転方向Bに沿った円の全周の約20%を覆った状態で、X方向に延びるように配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強板33を、回転方向Bに沿った円の全周の約20%よりも大きい領域または約20%よりも小さい領域を覆った状態で、X方向に延びるように配置してもよい。この際、補強板33を、回転方向Bに沿った円の全周の約3%以上約20%未満を覆う状態で、X方向に延びるように配置するのが好ましい。
【0092】
また、上記第1実施形態では、補強板33の厚みt1を約5mmにするとともに、壁部34の厚みt2を約1mmの厚みt2にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強板33の厚みt1および壁部34の厚みt2は特に限定されない。なお、壁部34の厚みt2は、補強板33の厚みt1よりも小さい方が好ましい。具体的には、補強板33の厚みt1を約4mm以上約5mm以下にするとともに、壁部34の厚みt2を約1mm以上約2mm以下にするのが好ましい。
【0093】
また、上記第2実施形態では、5本ごとの線材636を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1本以上の線材636を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置すればよく、線材636の数は特に限定されない。なお、線材636の数を異ならせることにより、容易に、隔壁部の補強度合を異ならせることが可能である。
【0094】
また、上記第2実施形態では、線材636を5本ごとに回転方向Bに沿って近接させて配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転方向Bと直交する半径方向に沿って並ぶように複数の線材636を配置してもよい。
【0095】
また、上記第1実施形態では、補強板33を、壁部34の外側面で円筒の延びるX方向に沿って延びるように配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強板33を、壁部34の内側面で円筒の延びるX方向に沿って延びるように配置してもよい。この場合、駆動源側部2側の空間は、負荷側部1側の空間よりも気圧(内圧)が低い方が、壁部34を補強板33に押し付けることが可能な点から好ましい。
【0096】
また、上記第1および第2実施形態では、磁石部12および22を、共に24個の磁極を有する例を示し、上記第3実施形態では、磁石部712および722を、共に12個の磁極を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石部の磁極は、24個または12個の磁極に限られず、偶数個であればよい。
【0097】
また、上記第1および第2実施形態では、壁部34の補強として回転軸線Aに沿って延びる補強板33(533)および線材636のみを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強板33(533)および線材636がX方向に長い場合などには、補強板33(533)および線材636に加えて、さらに、回転軸線Aに直交する円環状の補強リングを補強板33(533)および線材636を囲むように配置することによって、壁部34の強度をより向上させてもよい。
【0098】
また、上記第1〜第3実施形態では、補強板33(533)、線材636および補強部材733が、共に、オーステナイト系ステンレスからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、補強部をハステロイからなるように構成してもよい。
【0099】
また、上記第1および第2実施形態では、補強板33(533)および線材636が回転軸線Aに沿ってX方向に延びるように形成された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強部は、回転軸線Aに対して傾斜する方向に延びるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0100】
10、710、810 負荷側回転体(第2回転体)
12、712 磁石部(第2磁石部)
20、720 駆動源側回転体(第1回転体)
22、722 磁石部(第1磁石部)
31 鍔部(連結部)
32 蓋部(連結部)
33、533 補強板(隔壁部、補強部)
34、734 壁部(隔壁部)
100、500、600、700、800 磁気カップリング装置
633 補強部(隔壁部)
636 線材
733c 接続部(隔壁部、補強部)
811 ヨーク
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気カップリング装置に関し、特に、第1回転体と第2回転体との間に配置される隔壁部を備える磁気カップリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気カップリング装置では、互いに磁気カップリングする第1回転体と第2回転体とを隔離するために、第1回転体と第2回転体との間に非磁性の金属材料からなる隔壁部が配置されている。しかしながら、磁気カップリング装置の駆動時に、金属材料からなる隔壁部に渦電流が発生することに起因して駆動力を伝達する際のエネルギ損失が増大するという不都合がある。そこで、従来、渦電流の発生を抑制しつつ隔壁部の強度を維持するために、非磁性で、かつ、電気抵抗の高い樹脂材料からなる壁部と、補強のための金属製の補強材とを含む隔壁部を備えた磁気カップリング装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、表面に円周状に配置された永久磁石を含む円盤状の駆動側回転体と、駆動側回転体と対向する位置に配置されるとともに、永久磁石と磁気カップリングする円盤状の従動側回転体と、駆動側回転体と従動側回転体との間に配置された円盤状の隔壁体とを備えるマグネットカップリングポンプ(磁気カップリング装置)が開示されている。このマグネットカップリングポンプの隔壁体は、非磁性のオーステナイト系ステンレスからなる補強部と、非磁性の樹脂材料からなる壁部とから構成されている。また、補強部は、円環状の外枠と、外枠の内側に格子状に形成された網部とを有しているとともに、壁部は、補強部の網部を覆うように形成されている。なお、上記特許文献1には、補強部の網部の格子の大きさなどの詳細な構成については、開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−26429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているステンレスからなる補強部の網部を設けたとしても、網部における渦電流の発生を十分に抑制することが困難であるという問題点(課題)がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、隔壁部の強度を向上させつつ、隔壁部での渦電流の発生を十分に抑制することによって、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することが可能な磁気カップリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による磁気カップリング装置は、異なる磁極が回転方向に沿って交互に配置される第1磁石部を含む第1回転体と、第1磁石部と磁気カップリングする第2磁石部またはヨークのいずれか一方を含み、第1回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された第2回転体と、第1回転体と第2回転体との間で、かつ、第1磁石部に対向する位置に配置され、第1回転体と第2回転体とを隔離する隔壁部とを備え、隔壁部は、非磁性の樹脂材料からなる壁部と、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部とを含む。
【0008】
この発明の一の局面による磁気カップリング装置では、上記のように、第1磁石部に対向する位置に配置される隔壁部が、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部を含むことによって、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量または第1磁石部および第2磁石部からの磁束の総量は、第1回転体が回転することによって、あまり変化しない。すなわち、隔壁部の複数の補強部を第1磁石部の偶数倍の磁極おきに配置する場合、初期状態(ある時点での状態)では、補強部同士に挟まれる領域に、第1磁石部の一方磁極(たとえば、N極)と、他方磁極(たとえば、S極)とが共に同じ整数倍分ずつ位置している。この状態では、整数倍のN極と整数倍のS極とが同じ面積で存在しているので、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量(ベクトル量)または第1磁石部および第2磁石部からの磁束の総量は、略ゼロである。そして、初期状態から第1回転体を1磁極分回転させた場合には、初期状態と同様に、補強部同士に挟まれる領域に、第1磁石部の他方磁極(N極)と、一方磁極(S極)とが共に同じ整数倍分ずつだけ位置する。この状態でも、整数倍のN極と整数倍のS極とが同じ面積で存在しているので、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量(ベクトル量)または第1磁石部および第2磁石部からの磁束の総量は、略ゼロである。つまり、回転前後において、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量はほとんど変化しない。なお、本発明では、第1回転体または第2回転体のいずれか一方のみが回転可能に構成されてもよいし、第1回転体および第2回転体の両方が回転可能に構成されてもよい。
【0009】
このように、補強部同士に挟まれる領域における第1磁石部からの磁束の総量または第1磁石部および第2磁石部からの磁束の総量がほとんど変化しない場合には、磁束の変化を打ち消す方向に渦電流が発生するのが十分に抑制される。この結果、隔壁部が、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部を含むことによって、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0010】
また、この発明の一の局面による磁気カップリング装置では、上記のように、回転方向に沿って複数の補強部を配置することによって、回転方向と交差する方向に延びるように補強部を構成することができるので、隔壁部の強度を向上させることができる。
【0011】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部は、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに略同一間隔で配置されている。このように構成すれば、略同一間隔で配置された複数の補強部によって、隔壁部全体を均等に補強することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第1磁石部では、異なる磁極が回転方向に沿って所定の角度間隔ごとに交互に配置されており、複数の補強部は、回転方向に沿って第1磁石部の磁極における所定の角度間隔の偶数倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている。このように異なる磁極が回転方向に沿って所定の角度間隔ごとに交互に配置されている第1磁石部を用いた磁気カップリング装置においても、複数の補強部を、回転方向に沿って第1磁石部の磁極における所定の角度間隔の偶数倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのを十分に抑制しつつ、隔壁部を効果的に補強することができる。
【0013】
上記複数の補強部が所定の角度間隔の偶数倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部は、回転方向に沿って第1磁石部の磁極における所定の角度間隔の2倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている。このように構成すれば、補強部同士の間隔をより近づけることができるので、隔壁部をさらに効果的に補強することができる。
【0014】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部の各々の端部を連結する連結部をさらに備える。このように構成すれば、補強部と補強部の各々の端部を連結する連結部とによって、隔壁部をより補強することができる。また、連結部を介して、渦電流が一対の補強部に流れるように構成される場合であっても、第1磁石部に対向する位置に配置される隔壁部が、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部を含むことによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0015】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部は、回転方向に沿った円の全周の3%以上20%以下の部分を覆うように、回転方向と交差する方向に延びている。このように構成すれば、複数の補強部が回転方向に沿った円の全周の3%以上の部分を覆うことによって、補強部による補強が不十分であることに起因して隔壁部の強度が低下するのを抑制することができる。また、複数の補強部が回転方向に沿った円の全周の20%以下の部分を覆うことによって、磁束の変化が生じた場合であっても、補強部に発生する渦電流を小さくすることができるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、壁部の厚みは、複数の補強部の各々の厚みよりも小さい。このように構成すれば、補強部の厚みを大きくして隔壁部を十分に補強しつつ、壁部の厚みを小さくして隔壁部全体の厚みを小さくすることができる。
【0017】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、隔壁部の壁部は、回転方向に沿って円筒状に形成されており、複数の補強部は、円筒状の壁部の内側面または外側面で円筒の延びる方向に沿って延びるように形成されている。このように構成すれば、円筒形の磁気カップリング装置において、円筒状の壁部の内側面または外側面で円筒の延びる方向(軸方向)に沿って延びるとともに、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに配置された複数の補強部によって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、円筒形の磁気カップリング装置において、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、第1回転体および第2回転体のいずれか一方は、円筒状に形成されているとともに、第1回転体および第2回転体のいずれか他方は、円筒状の第1回転体と第2回転体とで円筒状の隔壁部を挟み込むように、円筒状の第1回転体および第2回転体のいずれか一方の内側に配置されており、第1磁石部の異なる磁極は、第2回転体と対向する側面において、円筒の延びる方向に沿って延びるとともに、回転方向に沿って交互に配置されている。このように構成すれば、円筒形の磁気カップリング装置において、円筒状の壁部の内側面または外側面で円筒の延びる方向に沿って延びる複数の補強部と、円筒の延びる方向に沿って延びるように配置された第1磁石部とを互いに対向する位置に容易に配置することができる。
【0019】
上記隔壁部の壁部が円筒状に形成されている磁気カップリング装置において、好ましくは、円筒状の壁部の端部に配置され、第1回転体と第2回転体とを隔離する円盤状の蓋部をさらに備える。このように構成すれば、円筒形の磁気カップリング装置において、隔壁部と円盤状の蓋部とによって、第1回転体と第2回転体とを隔離することができる。
【0020】
上記円盤状の蓋部をさらに備える磁気カップリング装置において、好ましくは、蓋部は、金属材料からなるとともに、複数の補強部の各々の端部が溶接されることにより、複数の補強部の各々の端部を連結する連結部である。このように構成すれば、補強部と補強部の各々の端部を連結する蓋部とによって、隔壁部をより補強することができる。また、蓋部を介して、渦電流が一対の補強部に流れるように構成される場合であっても、第1磁石部に対向する位置に配置される隔壁部が、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部を含むことによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0021】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部の各々は、金属製の板材からなる。このように構成すれば、補強部の厚みを小さくしつつ、補強部の厚み方向に直交する方向の幅を大きくすることができるので、補強部の厚みが大きくなるのを抑制しつつ、隔壁部を効果的に補強することができる。
【0022】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、複数の補強部の各々は、金属製の線材からなる。このように構成すれば、容易に、複数の補強部を回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置することができる。
【0023】
この場合、好ましくは、複数の補強部の各々は、複数の金属製の線材からなる。このように構成すれば、複数の金属製の線材を1つの補強部として用いることによって、各々の補強部の強度を向上させることができる。また、厚み方向に直交する方向に沿うように線材を並べることによって、複数の金属製の線材からなる補強部の厚みを大きくすることなく、補強部の強度を向上させることができる。また、線材の数を異ならせることにより、容易に、壁部の補強度合を異ならせることができる。
【0024】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、第1回転体および第2回転体は、互いに対向するように円盤状に形成されており、第1磁石部の異なる磁極は、第2回転体と対向する表面において、回転方向に沿って交互に配置されており、複数の補強部は、回転方向に沿った円の中心から半径方向に延びるように形成されているとともに、壁部は、少なくとも複数の補強部の間を覆うように形成されている。このように構成すれば、円盤形の磁気カップリング装置において、回転方向に沿った円の中心から半径方向に延びるように形成されるとともに、回転方向に沿って第1磁石部の偶数個の磁極おきに配置された複数の補強部によって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、円盤形の磁気カップリング装置において、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0025】
上記一の局面による磁気カップリング装置において、好ましくは、補強部は、非磁性のステンレスからなる。このように構成すれば、伝達トルクが変動することを抑制することができるとともに、補強部が腐食するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置を示した断面図である。
【図2】図1の900−900線に沿った磁気カップリング装置の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の初期状態における補強部周辺を示した断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の隔離部を示した斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の隔離部を示した分解斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の初期状態における補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の1磁極分回転させた状態における補強部周辺を示した断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置の1磁極分回転させた状態における補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図9】比較例1による磁気カップリング装置の金属部材周辺を示した断面図である。
【図10】比較例2による磁気カップリング装置の初期状態における補強部周辺を示した断面図である。
【図11】比較例2による磁気カップリング装置の初期状態における補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図12】比較例3による磁気カップリング装置の補強部周辺を示した断面図である。
【図13】比較例2による磁気カップリング装置の1磁極分回転させた状態における補強部周辺を示した断面図である。
【図14】比較例2による磁気カップリング装置の1磁極分回転させた状態における補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図15】本発明の第1実施形態の第1変形例による磁気カップリング装置の補強部と磁石部との対向状況を示した模式図である。
【図16】本発明の第2実施形態による磁気カップリング装置における補強部周辺を示した断面図である。
【図17】本発明の第3実施形態による磁気カップリング装置を示した断面図である。
【図18】本発明の第3実施形態による磁気カップリング装置の磁石部を示した側面図である。
【図19】本発明の第3実施形態による磁気カップリング装置の補強部材を示した断面図である。
【図20】本発明の第3実施形態による磁気カップリング装置の壁部を示した断面図である。
【図21】本発明の第1実施形態の第2変形例による磁気カップリング装置を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
(第1実施形態)
まず、図1〜図8を参照して、本発明の第1実施形態による磁気カップリング装置100について説明する。
【0029】
本発明の第1実施形態による円筒形の磁気カップリング装置100は、図1に示すように、図示しない負荷部に駆動力を伝達する負荷側部1と、図示しない駆動源から駆動力が伝達されるとともに、駆動力を負荷側部1に伝達する駆動源側部2と、負荷側部1側の空間と駆動源側部2側の空間とを隔離する隔離部材3とを備えている。また、負荷側部1および駆動源側部2は、共に、X方向に延びる回転軸線Aを回転中心として回転可能に構成されている。一方、隔離部材3は回転および移動を行わないように固定されている。また、負荷側部1側の空間は、駆動源側部2側の空間よりも気圧(内圧)が高くなるように構成されている。
【0030】
負荷側部1は、駆動部などからなる図示しない負荷部に一方端部側(X1側)が接続され、X1側に延びる軸部1aと、軸部1aの他方端部側(X2側)に接続された負荷側回転体10とを含んでいる。また、駆動源側部2は、図示しない駆動源に一方端部側(X2側)が接続され、X2側に延びる軸部2aと、軸部2aの他方端部側(X1側)に接続された駆動源側回転体20とを含んでいる。なお、負荷側回転体10および駆動源側回転体20は、それぞれ、本発明の「第2回転体」および「第1回転体」の一例である。
【0031】
負荷側回転体10は、ホイール部11と磁石部12とを含むとともに、駆動源側回転体20は、円筒部21と磁石部22とを含んでいる。ホイール部11は、回転軸線Aを中心とする円盤状に形成されているとともに、円筒部21は、回転軸線Aを中心とするとともに、X1側に開口を有する円筒状に形成されている。また、ホイール部11は、円盤の外周に沿うように形成されるとともに、X方向に延びるように形成された接触部11aを有している。この接触部11aの外周面11bには、磁石部12が配置されるように構成されている。また、ホイール部11の接触部11aおよび円筒部21の内周面は、共に、SS400などの一般的な炭素鋼などの強磁性体を含む部材からなり、ヨークとしての機能を有している。また、駆動源側回転体20の円筒部21の内側に、負荷側回転体10のホイール部11と磁石部12とが配置されている。なお、磁石部12および22は、それぞれ、本発明の「第2磁石部」および「第1磁石部」の一例である。
【0032】
また、図2に示すように、磁石部12では、略同一の形状を有する12個の磁石にて形成されるN極12aと、同様に12個の磁石にて形成されるS極12bとが、回転軸線Aを中心とする円周(回転)方向Bに沿って交互に配置されている。また、図1に示すように、12個のN極12aと12個のS極12bとは、ホイール部11の外周面11bでX方向に延びるように配置されている。また、図2に示すように、磁石部22では、略同一の形状を有する12個の磁石にて形成されるN極22aと12個の磁石にて形成されるS極22bとが、回転方向Bに沿って交互に配置されている。また、図1に示すように、12個のN極22aと12個のS極22bとは、円筒部21の内周面21aでX方向に延びるように配置されている。
【0033】
つまり、磁石部12および22は、共に24個の磁極を有するとともに、磁極同士が約15度の角度α1おきに略同一角度間隔で配置されている。また、N極12a、S極12b、N極22aおよびS極22bは、ホイール部11および円筒部21の半径方向(回転方向Bに直交し、かつ、回転軸線Aから放射状に延びる方向)において、略同様の厚みを有している。
【0034】
また、磁石部12と磁石部22とは、互いに磁気カップリングするように構成されている。具体的には、図3に示すように、磁気カップリング装置100の初期状態において、磁石部12のN極12aと磁石部22のS極22bとが互いに対向するとともに、磁石部12のS極12bと磁石部22のN極22aとが互いに対向するように構成されている。そして、図2に示すように、駆動源側回転体20(図1参照)が回転軸線A回りに回転した際に、負荷側回転体10(図1参照)の磁石部12のS極12bが、対向する磁石部22のN極22aに対して少しずれた状態で従動して、回転方向Bに沿って回転移動する。同様に、磁石部12のN極12aが、対向する磁石部22のS極22bに対して少しずれた状態で従動して、回転方向Bに沿って回転移動することによって、負荷側回転体10が駆動源側回転体20と共に回転軸線A回りに回転する。この結果、駆動源側回転体20の回転軸線A回りの駆動力が、負荷側回転体10の回転軸線A回りの駆動力として伝達されるように構成されている。
【0035】
隔離部材3は、図1に示すように、フレーム部3aと、後述するネジ4によってフレーム部3aに固定される隔離部30とを含んでいる。このフレーム部3aには、後述する鍔部31の貫通孔31aに対応する位置にネジ穴3bが設けられている。また、図4および図5に示すように、隔離部30は、負荷側(X1側)に配置されて円環状に形成された鍔部31と、駆動源側(X2側)に配置されて円盤状に形成された蓋部32と、回転軸線Aの延びる方向(X方向)に延びる12枚の補強板33と、補強板33の内側に配置されるとともに、X方向に延びる円筒状の壁部34とを有している。なお、鍔部31および蓋部32は、本発明の「連結部」の一例である。また、補強板33は、本発明の「補強部」の一例である。
【0036】
鍔部31、蓋部32および補強板33は、共に、非磁性のオーステナイト系ステンレスからなる。また、壁部34は、耐薬品性を有するフッ素樹脂、塩化ビニル、または、ABS樹脂などの非磁性の樹脂材料からなる。ここで、壁部34が樹脂材料からなることによって、壁部34は電気抵抗が大きい。これにより、磁石部12および22が回転することにより壁部34を通過する磁束が変化したとしても、電磁誘導による渦電流は壁部34においてほとんど発生しないように構成されている。
【0037】
また、鍔部31と補強板33とは、補強板33のX1側で互いに溶接されているとともに、蓋部32と補強板33とは、補強板33のX2側で互いに溶接されている。これにより、鍔部31および蓋部32によって12枚の補強板33は互いに連結されている。
【0038】
また、円筒状の壁部34は、鍔部31の内周面および円盤状の蓋部32の内周面よりも若干半径方向に小さく形成されている。したがって、壁部34は、補強板33に対応するように、鍔部31と蓋部32とに挟まれる位置に配置されている。そしてこの状態で、補強板33は、壁部34の外側面に円筒の延びる方向(X方向)に沿って延びるように配置されている。
【0039】
また、図1に示すように、補強板33と壁部34とは、負荷側回転体10と駆動源側回転体20との間に挟み込まれるように、駆動源側回転体20の円筒部21の内側に配置されている。また、補強板33と壁部34とは、負荷側回転体10の磁石部12と駆動源側回転体20の磁石部22とが半径方向に対向する位置に配置されている。ここで、12枚の補強板33は、負荷側回転体10の磁石部12に対して半径方向に所定の空隙を隔てた位置に配置されているとともに、壁部34は、駆動源側回転体20の磁石部22に対して半径方向に所定の空隙を隔てた位置に配置されている。この結果、補強板33および壁部34は、負荷側回転体10および駆動源側回転体20と非接触の状態で、負荷側回転体10と駆動源側回転体20との間に挟まれるように配置されている。
【0040】
また、補強板33と壁部34とは、X方向に略同一の長さを有するように形成されている。また、補強板33は、半径方向に約5mmの厚みt1を有する板材からなるとともに、壁部34は、半径方向に約1mmの厚みt2を有している。つまり、壁部34の厚みt2は、補強板33の厚みt1よりも小さい。
【0041】
また、図4に示すように、鍔部31には、回転方向Bに沿って所定の距離を隔てて複数の貫通孔31aが設けられている。これにより、図1に示すように、ネジ4が貫通孔31aに螺合されることによって隔離部30がフレーム部3aに固定されている。
【0042】
ここで、第1実施形態では、図2に示すように、12枚の補強板33の各々は、回転方向Bに沿って約30度の角度α2でおきに略同一角度間隔で配置されている。つまり、12枚の補強板33は、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置されている。ここで、図3および図6に示す初期状態では、ある補強板33と隣接する補強板33とに挟まれる領域C(図6参照)には、磁石部22のN極22aに対向する領域と、S極22bに対向する領域とが含まれている。この際、N極22aに対向する領域とS極22bに対向する領域とは、共に、回転方向Bに長さL1を有している。つまり、N極22aから発せられる磁束と、S極22bに向かう磁束とが略同一であるので、領域Cを通過する磁束の総量(ベクトル量)は、略ゼロである。
【0043】
そして、図3および図6に示す初期状態から、図7および図8のように、負荷側回転体10および駆動源側回転体20を1磁極分(約15度)回転させた場合には、図8に示すように、領域Cには、S極22bに対向する領域と、N極22aに対向する領域とが含まれている。この際、N極22aに対向する領域とS極22bに対向する領域とは、共に、回転方向Bに長さL1を有している。つまり、領域Cを通過する磁束の総量は、初期状態と同様に、略ゼロである。この結果、負荷側回転体10および駆動源側回転体20の回転軸線A回りの回転状態にかかわらず、領域Cを通過する磁束の総量はあまり変化しない。
【0044】
また、図3に示すように、12枚の補強板33の各々は、補強板33が配置される回転方向Bに沿った円において、約6度の角度α3の円周を占めるように配置されている。つまり、12枚の補強板33の各々は、約6度の角度α3分の円弧に対応する回転方向Bの幅を有するように構成されている。この結果、12枚の補強板33が約72度(=6×12)の角度分の円弧を占めることによって、12枚の補強板33は、回転方向Bに沿った円の全周の約20%(=(72/360)×100)を占めるように配置されている。これにより、12枚の補強板33は、円筒状の壁部34の約20%を覆った状態で、X方向に延びるように配置されている。
【0045】
第1実施形態では、上記のように、12枚の補強板33を、円周(回転)方向Bに沿って、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生することを十分に抑制することができるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。この結果、駆動源側回転体20から負荷側回転体10に効率よく駆動力を伝達することができるとともに、駆動力の大きさが変動することを抑制することもできる。また、略同一の角度間隔で配置された12枚の補強板33によって、補強部33と壁部34とから構成される隔壁部全体を均等に補強することができる。また、補強板33同士の間隔を近づけることができるので、隔壁部をさらに効果的に補強することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、回転方向Bに沿って12枚の補強板33を配置することによって、回転方向Bと交差する方向(X方向)に延びるように補強板33を構成することができるので、隔壁部の強度を向上させることができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、壁部34が非磁性の樹脂材料からなることによって、電気抵抗の高い壁部34では渦電流がほとんど発生しないので、エネルギ損失をほとんど発生させることなく、負荷側回転体10と駆動源側回転体20とを隔離することができる。また、補強板33が、非磁性のオーステナイト系ステンレスからなることによって、強度が比較的弱い樹脂材料からなる壁部34を含む隔壁部を補強することができる。また、セラミックスなどを補強板33として用いる場合と比べて、金属材料を補強板33として用いることによって、壁部34の所定の位置に配置可能なように補強板33を容易に加工することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、12枚の補強板33の端部をそれぞれ接続する鍔部31と蓋部32とが設けられており、渦電流が一対の補強板33に流れるように構成される場合であっても、磁石部12および22に対向する位置に、12枚の補強板33を、回転方向Bに沿って、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。また、12枚の補強板33と、補強板33の各々の端部を連結する鍔部31と蓋部32とによって、隔壁部をより補強することができる。また、円盤状の蓋部32によって負荷側回転体10と駆動源側回転体20とを隔離することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、12枚の補強板33を、円筒状の壁部34において、回転方向Bに沿った円の全周の約20%を覆った状態で、X方向に延びるように配置することによって、補強板33による補強が不十分であることに起因して隔壁部の強度が低下するのを抑制することができる。また、磁束の変化が生じた場合であっても、補強板33に発生する渦電流を小さくすることができるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0050】
また、第1実施形態では、上記のように、壁部34の厚みt2を補強板33の厚みt1よりも小さくすることによって、補強板33の厚みt1を大きくして隔壁部を十分に補強しつつ、壁部34の厚みt2を小さくして補強板33および壁部34の合計の厚み(t1+t2)を小さくすることができる。
【0051】
また、第1実施形態では、上記のように、壁部34をX方向に延びる円筒状に形成するとともに、12枚の補強板33を壁部34の外側面でX方向に沿って延びるように形成することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、円筒形の磁気カップリング装置100において、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0052】
また、第1実施形態では、上記のように、駆動源側回転体20の円筒部21の内側に負荷側回転体10のホイール部11と磁石部12とを配置するとともに、磁石部12の12個のN極12aと12個のS極12bとを、回転軸線Aを中心とする回転方向Bに沿って交互に配置し、磁石部22の12個のN極22aと12個のS極22bとを、回転方向Bに沿って交互に配置することによって、円筒形の磁気カップリング装置100において、円筒状の壁部34の外側面でX方向に延びる複数の補強板33と、X方向に延びるように配置された磁石部12および22とを互いに対向する位置に容易に配置することができる。
【0053】
また、第1実施形態では、上記のように、鍔部31と補強板33とを補強板33のX1側で互いに溶接するとともに、蓋部32と補強板33とを補強板33のX2側で互いに溶接することによって、鍔部31および蓋部32を介して、渦電流が一対の補強板33に流れるように構成される場合であっても、12枚の補強板33を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、上記のように、補強板33を非磁性のオーステナイト系ステンレスの板材からなるように構成することによって、補強板33が線材からなる場合よりも、補強板33の厚みt1を小さくしつつ、補強板33のX方向の幅を大きくすることができるので、補強板33の厚みt1が大きくなるのを抑制しつつ、隔壁部を効果的に補強することができる。また、オーステナイト系ステンレスを補強板33として用いることによって、駆動源側回転体20から負荷側回転体10に伝達される伝達トルクが変動することを抑制することができるとともに、補強板33が腐食するのを抑制することができる。
【0055】
(実施例)
次に、本発明の効果を確認するために行った磁気カップリング装置100のシミュレーションについて説明する。具体的には、上記第1実施形態に対応する実施例の磁気カップリング装置100と、実施例に対する比較例1〜4の磁気カップリング装置とについて、エネルギ損失のシミュレーションおよび強度のシミュレーションを行った。
【0056】
ここで、実施例の磁気カップリング装置100は、図1〜図8に示す上記第1実施形態と同様の構成を有するように想定した。つまり、磁石部12および22では、共に、12個のN極12a(22a)と12個のS極12b(22b)とが、15度の角度α1おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。また、隔離部30の12枚の補強板33が、30度の角度α2おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。つまり、隔離部30の12枚の補強板33が、磁石部12および22における磁極間の角度α1の2倍の角度間隔おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。さらに、12枚の補強板33の各々が、6度の角度α3分の円弧に対応する回転方向Bの幅を有するように構成することによって、12枚の補強板33が、回転方向Bに沿った円の全周の20%を覆うように想定した。
【0057】
また、実施例に対する比較例1の磁気カップリング装置200として、図9に示すように、第1実施形態の補強板33および壁部34の代わりに、円筒状の金属部材235を用いる場合を想定した。つまり、金属部材235が円周の全体(360度)に配置されるように想定した。
【0058】
また、実施例に対する比較例2の磁気カップリング装置300として、図10および図11に示すように、隔離部330の補強板333が、1磁極ごとに配置されるように想定した。具体的には、24枚の補強板333が、15度の角度α1おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。つまり、隔離部330の24枚の補強板333が、磁石部12および22における磁極間の角度α1と同一角度間隔おきに配置されるように想定した。また、24枚の補強板333の各々が、3度の角度α4分の円弧に対応する回転方向Bの幅を有するように構成することによって、24枚の補強板333が、回転方向Bに沿った円の全周の20%を覆うように想定した。
【0059】
また、実施例に対する比較例3の磁気カップリング装置400として、図12に示すように、隔離部430の24枚の補強板433が、15度の角度α1おきに同一角度間隔で配置されるように想定した。つまり、比較例2と同様に、隔離部430の24枚の補強板433が、磁石部12および22における磁極間の角度α1と同一角度間隔おきに配置されるように想定した。また、24枚の補強板433の各々が、6度の角度α3分の円弧に対応する回転方向Bの幅を有するように構成することによって、24枚の補強板433が、回転方向Bに沿った円の全周の40%を覆うように想定した。
【0060】
また、実施例に対する比較例4の磁気カップリング装置として、補強板が回転軸線A(軸方向)に沿って延びるように配置されている実施例、比較例2および3の磁気カップリング装置100(300、400)とは異なり、補強板が回転軸線A(図4参照)に直交するように形成された比較例4を想定した。つまり、12枚の補強板の各々が回転軸線Aを中心とするとともに、回転軸線Aに直交する円環状に形成されているとともに、X方向に所定の間隔を隔てて配置されているように想定した。
【0061】
なお、実施例および比較例2〜4の補強板と比較例1の金属部材235とが、共にオーステナイト系ステンレスであるSUS304からなるように想定した。
【0062】
(エネルギ損失のシミュレーション)
そして、実施例の磁気カップリング装置と、比較例1〜4の磁気カップリング装置とにおいて、補強板または金属部材における渦電流の発生状況をシミュレーションすることによって、磁気カップリング装置におけるエネルギ損失を求めた。
【0063】
エネルギ損失のシミュレーションの結果としては、比較例1の磁気カップリング装置200におけるエネルギ損失を100とした場合に、実施例の磁気カップリング装置100におけるエネルギ損失は3となった。また、比較例2の磁気カップリング装置300におけるエネルギ損失は17となり、比較例3の磁気カップリング装置400におけるエネルギ損失は33となった。また、比較例4の磁気カップリング装置におけるエネルギ損失は3となり、実施例と同じエネルギ損失であった。この結果から、実施例の磁気カップリング装置100のように、隔離部30の12枚の補強板33を、磁石部12および22における磁極間の角度α1の2倍の角度間隔おきに同一角度間隔で配置することによって、比較例1の磁気カップリング装置200と比べて、エネルギ損失を飛躍的に減少させられる結果を得ることができた。一方、比較例2の磁気カップリング装置300および比較例3の磁気カップリング装置400のように、隔離部330(430)の24枚の補強板333(433)を、磁石部12および22における磁極間の角度α1と同一角度間隔おきに配置した場合、比較例1の磁気カップリング装置200よりもエネルギ損失は減少した一方、実施例ほどにはエネルギ損失を減少させられないという結果を得た。
【0064】
上記エネルギ損失のシミュレーションの結果から、以下の点が考察される。実施例の磁気カップリング装置100では、図3および図6〜図8に示すように、負荷側回転体10および駆動源側回転体20の回転にかかわらず、領域Cを通過する磁束の総量(ベクトル量)はあまり変化しなかったので、補強板33に渦電流が発生するのを十分に抑制することができたと考えられる。一方、比較例2の磁気カップリング装置300においては、図10および図11に示す初期状態では、ある補強板333と隣接する補強板333とに挟まれる領域Dには、S極22bに対向する領域が形成されている。この際、S極22bに対向する領域は、回転方向Bに長さL1を有している。一方、領域Dには、磁石部22のN極22aに対向する領域は形成されていない。つまり、領域Dを通過する磁束は、S極22bに向かう磁束である。そして、図10および図11に示す初期状態から、図13および図14のように、負荷側回転体10(図1参照)および駆動源側回転体20(図1参照)を1磁極分(約15度)回転させた場合には、図14に示すように、領域Dには、磁石部22のN極22aに対向する領域が形成される。一方、領域Dには、S極22bに対向する領域は形成されていない。つまり、領域Dを通過する磁束は、N極22aから発せられる磁束である。この結果、負荷側回転体10および駆動源側回転体20の回転により、領域Dを通過する磁束がS極22bに向かう磁束から、N極22aから発せられる磁束に大幅に変化したため、磁束の変化に起因して電磁誘導により補強板333に渦電流が発生したものと推測される。一方、比較例4は補強板33の向きが異なるだけであったので、エネルギ損失の点からは実施例と大きく変わらなかったと推測される。
【0065】
なお、比較例1の磁気カップリング装置200に比べて、比較例2の磁気カップリング装置300および比較例3の磁気カップリング装置400のエネルギ損失が減少した。これは、比較例1の磁気カップリング装置200では、渦電流は金属部材235の全体に発生した一方、比較例2の磁気カップリング装置300および比較例3の磁気カップリング装置400では、渦電流は壁部34の一部にだけ配置された金属製の補強板333(433)に発生したので、比較例2および比較例3では、発生する渦電流を減少させることができたからであると考えられる。この点は、24枚の補強板333が20%を覆う比較例2が、24枚の補強板433が比較例2よりも大きな面積(約40%)を覆う比較例3よりも、発生する渦電流を減少させることができ、エネルギ損失を減少させることができた点からも明らかであると考えられる。
【0066】
(強度のシミュレーション)
また、実施例および比較例1〜4について、磁気カップリング装置の使用圧力とした圧力の3倍の破壊圧力が負荷側回転体側に内圧として加えられるように設定することにより、隔壁部の強度についてのシミュレーション(安全評価)を行った。
【0067】
強度のシミュレーションの結果としては、実施例の破壊圧力を100とした場合に、比較例1〜3の破壊圧力は100であった。つまり、実施例および比較例1〜3の隔壁部は、圧力の3倍の破壊圧力であっても耐えること可能な強度を有していると推測される。一方、比較例4の破壊圧力は60であった。つまり、比較例4の隔壁部は、実施例および比較例1〜3の隔壁部と比べて、60%の強度しか有していないため、強度が不十分であると推測される。この結果、実施例のように、回転方向Bに沿って12枚の補強板33を配置することによって、補強板が回転方向Bに直交して配置されている比較例4よりも、隔壁部の強度を向上させることが可能であると考えられる。
【0068】
(第1実施形態の第1変形例)
次に、図1および図15を参照して、本発明の第1実施形態の第1変形例について説明する。この第1実施形態の第1変形例による磁気カップリング装置500では、上記第1実施形態とは異なり、隔離部530の複数の補強板533が磁石部22の延びる方向に対して傾斜している場合について説明する。なお、補強板533は、本発明の「補強部」の一例である。
【0069】
本発明の第1実施形態の第1変形例による磁気カップリング装置500では、図15に示すように、隔離部530の補強板533の各々は、X方向に対して所定の角度で傾斜する方向に延びるように形成されている。つまり、補強板533の各々は、X方向に磁極が延びるように形成された磁石部22に対して傾斜した方向に延びるように形成されている。ここで、ある補強板533と隣接する補強板533とに挟まれる領域Eでは、N極22aに対向する領域とS極22bに対向する領域とが略同一の面積になるように構成されている。これにより、領域Eを通過する磁束の総量(ベクトル量)は、N極22aから発せられる磁束とS極22bに向かう磁束とが略同一であるので、磁石部22の円周(回転)方向Bへの移動にかかわらず、あまり変化しない。
【0070】
ここで、N極22aとS極22bとが切り替わる部分が補強板533を通過する際に、磁束の変化が生じて補強板533には渦電流が多少発生する。しかしながら、補強板533がX方向に対して所定の角度で傾斜する方向に延びることによって、補強板533の一部分のみがN極22aとS極22bとが切り替わる部分と対向するように構成され、磁石部12および22が傾斜(スキュー)して配置された場合と同様の効果が得られる。これにより、補強板533の一部分だけに渦電流が発生するように構成することが可能になるので、補強板533をX方向に延びるように形成する場合と比べて、磁束の変化が緩やかになりエネルギ損失をより抑制することが可能である。この結果、磁束の変化が円滑になって効率よく駆動力を伝達することが可能になるとともに、駆動力の大きさが変動することを抑制することも可能になる。
【0071】
また、隔離部530の補強板533ではなく磁石部12および22が、X方向に対して所定の角度で傾斜する方向に延びるように形成されていてもよい。つまり、磁石部12および22の各々が、X方向に延びるように形成された補強板533に対して傾斜した方向に延びるように形成されてもよい。さらに好ましくは、補強板533と磁石部12および22とが、共に、X方向に対して所定の角度で傾斜する方向に延びるように形成されているのがよい。なお、第1実施形態の第1変形例のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0072】
なお、第1実施形態の第1変形例の効果は、第1実施形態と同様である。
【0073】
(第2実施形態)
次に、図16を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態による磁気カップリング装置600では、上記第1実施形態とは異なり、隔離部630の補強部633の各々が複数の金属製の線材636からなる場合について説明する。なお、補強部633は、本発明の「隔壁部」の一例である。
【0074】
本発明の第2実施形態による磁気カップリング装置600では、図16に示すように、隔離部630は、複数の線材636を有している。この線材636は、5本ごとに回転方向Bに沿って近接して配置されており、5本の線材636を一群とすることによって、補強部633が構成されている。そして、5本の線材636から構成される補強部633は、約30度の角度α2でおきに略同一角度間隔で配置されている。つまり、補強部633は、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0075】
第2実施形態では、上記のように、5本の線材636を一群とする補強部633を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。また、容易に、複数の線材636を回転方向Bに沿って磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔の2倍の角度間隔おきに各々配置することができる。
【0076】
また、第2実施形態では、上記のように、5本の線材636を1つの補強部633として用いることによって、各々の補強部633の強度を容易に向上させることができる。また、回転方向Bに沿うように5本の線材636を並べることによって、5本の線材636からなる補強部633の半径方向の厚みを大きくすることなく、補強部633の強度を向上させることができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0077】
(第3実施形態)
次に、図17〜図20を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態による磁気カップリング装置700では、上記第1実施形態と異なり、負荷側回転体710と駆動源側回転体720とが回転軸線Aの延びる方向に対向する場合について説明する。なお、負荷側回転体710および駆動源側回転体720は、それぞれ、本発明の「第2回転体」および「第1回転体」の一例である。
【0078】
本発明の第3実施形態による円盤形の磁気カップリング装置700では、図17に示すように、負荷側部701の負荷側回転体710は、円盤部711と磁石部712とを含むとともに、駆動源側部702の駆動源側回転体720は、円盤部721と磁石部722とを含んでいる。円盤部711および721は、共に、SS400などの一般的な炭素鋼などの強磁性体を含む部材からなり、ヨークとしての機能を有している。
【0079】
また、円盤部711および721は、共に、回転軸線Aを中心とする円盤状に形成されている。また、円盤部711のX2側の表面と円盤部721のX1側の表面とには、それぞれ、磁石部712および722が配置されており、互いに対向するように構成されている。また、円盤部711のX1側の表面および円盤部721のX2側の表面には、それぞれ、軸部1aおよび2aが接続されている。
【0080】
また、図18に示すように、磁石部712では、略同一の形状を有する6個のN極712aと6個のS極712bとが、回転軸線Aを中心とする円周(回転)方向Bに沿って交互に配置されている。また、磁石部722では、磁石部712と同様に、略同一の形状を有する6個のN極722aと6個のS極722bとが、回転軸線Aを中心とする回転方向Bに沿って交互に配置されている。つまり、磁石部712および722は、共に12個の磁極を有するとともに、磁極同士が約30度の角度α5おきに略同一角度間隔で形成されている。
【0081】
また、図17に示すように、磁石部712と磁石部722とは、互いの磁極が対向することによって、互いに磁気カップリングするように構成されている。これにより、駆動源側回転体720の回転軸線A回りの駆動力が、負荷側回転体710の回転軸線A回りの駆動力として伝達されるように構成されている。
【0082】
また、磁気カップリング装置700の隔離部材703は、フレーム部703aと、ネジ4によってフレーム部703aにX1側から固定される隔離部730とを含んでいる。このフレーム部703aには、後述する補強部材733のネジ穴733eと壁部734のネジ穴734aとに対応する位置にネジ穴703bが設けられている。また、隔離部730は、負荷側回転体710および駆動源側回転体720と非接触の状態で、X方向において、負荷側回転体710と駆動源側回転体720との間に挟まれるように配置されている。
【0083】
また、隔離部730は、非磁性のオーステナイト系ステンレスからなる補強部材733と、非磁性の樹脂材料からなる壁部734とを有している。この補強部材733および壁部734は、図19および図20に示すように、共に、回転軸線Aを中心とする円盤状に形成されている。また、図17に示すように、補強部材733および壁部734は、回転軸線Aに直交する平面において略同一の大きさを有している。なお、壁部734は、本発明の「隔壁部」の一例である。
【0084】
円盤状の補強部材733は、図19に示すように、回転軸線Aを中心とする円環部733aと、回転軸線Aを中心とするとともに、円環部733aの内側に配置される内側部733bと、円環部733aと内側部733bとを接続するように、半径方向に延びる6つの接続部733cとを有している。これにより、円環部733aと内側部733bとの間には、6つの扇形状の穴部733dが形成されている。また、円環部733aには、回転方向Bに沿って所定の距離を隔てて複数のネジ穴733eが設けられている。なお、接続部733cは、本発明の「補強部」の一例である。
【0085】
ここで、第3実施形態では、6つの接続部733cの各々は、回転方向Bに沿って約60度の角度α6でおきに略同一角度間隔で配置されている。つまり、6つの接続部733cは、磁石部712および722の磁極ごとの角度間隔(角度α5)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置されている。これにより、負荷側回転体710および駆動源側回転体720の回転軸線A回りの回転(図17参照)にかかわらず、6つの穴部733dの各々を通過する磁束の総量(ベクトル量)はあまり変化しないように構成されている。
【0086】
また、図20に示すように、円盤状の壁部734には、回転方向Bに沿って所定の距離を隔てて複数のネジ穴734aが設けられている。これにより、図17に示すように、ネジ4によって円盤状の補強部材733および壁部734がフレーム部703aに固定されるように構成されている。この結果、補強部材733の6つの扇形状の穴部733dに対応する位置に壁部734が位置することによって、壁部734が補強部材733の間に位置する穴部733dの各々を覆うように配置されている。なお、第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0087】
第3実施形態では、上記のように、磁石部712の6個のN極712aと6個のS極712bとを、回転軸線Aを中心とする円周(回転)方向Bに沿って交互に配置し、磁石部722の6個のN極722aと6個のS極722bとを、回転方向Bに沿って交互に配置する。また、6つの接続部733cを、磁石部712および722の磁極ごとの角度間隔(角度α5)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置することによって、渦電流が発生するのが十分に抑制されるので、円盤形の磁気カップリング装置700において、駆動力を伝達する際のエネルギ損失を抑制することができる。なお、第3実施形態のその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0088】
なお、今回開示された実施形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態および実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0089】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、磁石部12(712)と磁石部22(722)とが対向するように配置した例を示したが、図21に示す第1実施形態の第2変形例の磁気カップリング装置800のように、第1実施形態のホイール部11および磁石部12の代わりに磁性体からなるヨーク811を負荷側回転体810に配置してもよい。なお、負荷側回転体810は、本発明の「第2回転体」の一例である。
【0090】
また、上記第1および第2実施形態では、補強板33(補強板533、補強部633)を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置するとともに、上記第3実施形態では、接続部733cを、磁石部712および722の磁極ごとの角度間隔(角度α5)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強部を磁石部の磁極ごとの角度間隔の4倍以上の偶数倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置してもよい。また、補強部を磁石部の磁極ごとの角度間隔の2倍の角度間隔で配置した状態から、任意の補強部を取り外すことによって、補強部同士の角度間隔を異ならせてもよい。これによっても、補強部同士の角度間隔は、磁石部の磁極ごとの角度間隔の偶数倍の角度間隔になる。この結果、補強部を磁石部の磁極ごとの角度間隔の2倍の角度間隔おきに配置する場合と比べて、補強部の数を減少させることが可能になるので、渦電流の発生をより抑制することが可能になる。この結果、駆動力を伝達する際のエネルギ損失をより抑制することが可能である。
【0091】
また、上記第1実施形態では、12枚の補強板33を、円筒状の壁部34において、回転方向Bに沿った円の全周の約20%を覆った状態で、X方向に延びるように配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強板33を、回転方向Bに沿った円の全周の約20%よりも大きい領域または約20%よりも小さい領域を覆った状態で、X方向に延びるように配置してもよい。この際、補強板33を、回転方向Bに沿った円の全周の約3%以上約20%未満を覆う状態で、X方向に延びるように配置するのが好ましい。
【0092】
また、上記第1実施形態では、補強板33の厚みt1を約5mmにするとともに、壁部34の厚みt2を約1mmの厚みt2にした例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強板33の厚みt1および壁部34の厚みt2は特に限定されない。なお、壁部34の厚みt2は、補強板33の厚みt1よりも小さい方が好ましい。具体的には、補強板33の厚みt1を約4mm以上約5mm以下にするとともに、壁部34の厚みt2を約1mm以上約2mm以下にするのが好ましい。
【0093】
また、上記第2実施形態では、5本ごとの線材636を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1本以上の線材636を、磁石部12および22の磁極ごとの角度間隔(角度α1)の2倍の角度間隔おきに、略同一の角度間隔で配置すればよく、線材636の数は特に限定されない。なお、線材636の数を異ならせることにより、容易に、隔壁部の補強度合を異ならせることが可能である。
【0094】
また、上記第2実施形態では、線材636を5本ごとに回転方向Bに沿って近接させて配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転方向Bと直交する半径方向に沿って並ぶように複数の線材636を配置してもよい。
【0095】
また、上記第1実施形態では、補強板33を、壁部34の外側面で円筒の延びるX方向に沿って延びるように配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強板33を、壁部34の内側面で円筒の延びるX方向に沿って延びるように配置してもよい。この場合、駆動源側部2側の空間は、負荷側部1側の空間よりも気圧(内圧)が低い方が、壁部34を補強板33に押し付けることが可能な点から好ましい。
【0096】
また、上記第1および第2実施形態では、磁石部12および22を、共に24個の磁極を有する例を示し、上記第3実施形態では、磁石部712および722を、共に12個の磁極を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、磁石部の磁極は、24個または12個の磁極に限られず、偶数個であればよい。
【0097】
また、上記第1および第2実施形態では、壁部34の補強として回転軸線Aに沿って延びる補強板33(533)および線材636のみを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強板33(533)および線材636がX方向に長い場合などには、補強板33(533)および線材636に加えて、さらに、回転軸線Aに直交する円環状の補強リングを補強板33(533)および線材636を囲むように配置することによって、壁部34の強度をより向上させてもよい。
【0098】
また、上記第1〜第3実施形態では、補強板33(533)、線材636および補強部材733が、共に、オーステナイト系ステンレスからなる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、補強部をハステロイからなるように構成してもよい。
【0099】
また、上記第1および第2実施形態では、補強板33(533)および線材636が回転軸線Aに沿ってX方向に延びるように形成された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、補強部は、回転軸線Aに対して傾斜する方向に延びるように形成してもよい。
【符号の説明】
【0100】
10、710、810 負荷側回転体(第2回転体)
12、712 磁石部(第2磁石部)
20、720 駆動源側回転体(第1回転体)
22、722 磁石部(第1磁石部)
31 鍔部(連結部)
32 蓋部(連結部)
33、533 補強板(隔壁部、補強部)
34、734 壁部(隔壁部)
100、500、600、700、800 磁気カップリング装置
633 補強部(隔壁部)
636 線材
733c 接続部(隔壁部、補強部)
811 ヨーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる磁極が回転方向に沿って交互に配置される第1磁石部を含む第1回転体と、
前記第1磁石部と磁気カップリングする第2磁石部またはヨークのいずれか一方を含み、前記第1回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体との間で、かつ、前記第1磁石部に対向する位置に配置され、前記第1回転体と前記第2回転体とを隔離する隔壁部とを備え、
前記隔壁部は、非磁性の樹脂材料からなる壁部と、前記回転方向に沿って前記第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部とを含む、磁気カップリング装置。
【請求項2】
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿って前記第1磁石部の偶数個の磁極おきに略同一間隔で配置されている、請求項1に記載の磁気カップリング装置。
【請求項3】
前記第1磁石部では、異なる磁極が前記回転方向に沿って所定の角度間隔ごとに交互に配置されており、
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿って前記第1磁石部の磁極における前記所定の角度間隔の偶数倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている、請求項2に記載の磁気カップリング装置。
【請求項4】
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿って前記第1磁石部の磁極における前記所定の角度間隔の2倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている、請求項3に記載の磁気カップリング装置。
【請求項5】
前記複数の補強部の各々の端部を連結する連結部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項6】
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿った円の全周の3%以上20%以下の部分を覆うように、前記回転方向と交差する方向に延びている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項7】
前記壁部の厚みは、前記複数の補強部の各々の厚みよりも小さい、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項8】
前記隔壁部の壁部は、前記回転方向に沿って円筒状に形成されており、
前記複数の補強部は、前記円筒状の壁部の内側面または外側面で円筒の延びる方向に沿って延びるように形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項9】
前記第1回転体および前記第2回転体のいずれか一方は、円筒状に形成されているとともに、前記第1回転体および前記第2回転体のいずれか他方は、前記円筒状の第1回転体と前記第2回転体とで前記円筒状の隔壁部を挟み込むように、前記円筒状の前記第1回転体および前記第2回転体のいずれか一方の内側に配置されており、
前記第1磁石部の前記異なる磁極は、前記第2回転体と対向する側面において、円筒の延びる方向に沿って延びるとともに、前記回転方向に沿って交互に配置されている、請求項8に記載の磁気カップリング装置。
【請求項10】
前記円筒状の壁部の端部に配置され、前記第1回転体と前記第2回転体とを隔離する円盤状の蓋部をさらに備える、請求項8または9に記載の磁気カップリング装置。
【請求項11】
前記蓋部は、金属材料からなるとともに、前記複数の補強部の各々の端部が溶接されることにより、前記複数の補強部の各々の端部を連結する連結部である、請求項10に記載の磁気カップリング装置。
【請求項12】
前記複数の補強部の各々は、金属製の板材からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項13】
前記複数の補強部の各々は、金属製の線材からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項14】
前記複数の補強部の各々は、複数の前記金属製の線材からなる、請求項13に記載の磁気カップリング装置。
【請求項15】
前記第1回転体および前記第2回転体は、互いに対向するように円盤状に形成されており、
前記第1磁石部の前記異なる磁極は、前記第2回転体と対向する表面において、前記回転方向に沿って交互に配置されており、
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿った円の中心から半径方向に延びるように形成されているとともに、前記壁部は、少なくとも前記複数の補強部の間を覆うように形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項16】
前記補強部は、非磁性のステンレスからなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項1】
異なる磁極が回転方向に沿って交互に配置される第1磁石部を含む第1回転体と、
前記第1磁石部と磁気カップリングする第2磁石部またはヨークのいずれか一方を含み、前記第1回転体に対して非接触の状態で相対的に回転可能に配置された第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体との間で、かつ、前記第1磁石部に対向する位置に配置され、前記第1回転体と前記第2回転体とを隔離する隔壁部とを備え、
前記隔壁部は、非磁性の樹脂材料からなる壁部と、前記回転方向に沿って前記第1磁石部の偶数個の磁極おきに各々配置され、非磁性の金属材料からなる複数の補強部とを含む、磁気カップリング装置。
【請求項2】
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿って前記第1磁石部の偶数個の磁極おきに略同一間隔で配置されている、請求項1に記載の磁気カップリング装置。
【請求項3】
前記第1磁石部では、異なる磁極が前記回転方向に沿って所定の角度間隔ごとに交互に配置されており、
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿って前記第1磁石部の磁極における前記所定の角度間隔の偶数倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている、請求項2に記載の磁気カップリング装置。
【請求項4】
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿って前記第1磁石部の磁極における前記所定の角度間隔の2倍の間隔おきに略同一角度間隔で配置されている、請求項3に記載の磁気カップリング装置。
【請求項5】
前記複数の補強部の各々の端部を連結する連結部をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項6】
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿った円の全周の3%以上20%以下の部分を覆うように、前記回転方向と交差する方向に延びている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項7】
前記壁部の厚みは、前記複数の補強部の各々の厚みよりも小さい、請求項1〜6のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項8】
前記隔壁部の壁部は、前記回転方向に沿って円筒状に形成されており、
前記複数の補強部は、前記円筒状の壁部の内側面または外側面で円筒の延びる方向に沿って延びるように形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項9】
前記第1回転体および前記第2回転体のいずれか一方は、円筒状に形成されているとともに、前記第1回転体および前記第2回転体のいずれか他方は、前記円筒状の第1回転体と前記第2回転体とで前記円筒状の隔壁部を挟み込むように、前記円筒状の前記第1回転体および前記第2回転体のいずれか一方の内側に配置されており、
前記第1磁石部の前記異なる磁極は、前記第2回転体と対向する側面において、円筒の延びる方向に沿って延びるとともに、前記回転方向に沿って交互に配置されている、請求項8に記載の磁気カップリング装置。
【請求項10】
前記円筒状の壁部の端部に配置され、前記第1回転体と前記第2回転体とを隔離する円盤状の蓋部をさらに備える、請求項8または9に記載の磁気カップリング装置。
【請求項11】
前記蓋部は、金属材料からなるとともに、前記複数の補強部の各々の端部が溶接されることにより、前記複数の補強部の各々の端部を連結する連結部である、請求項10に記載の磁気カップリング装置。
【請求項12】
前記複数の補強部の各々は、金属製の板材からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項13】
前記複数の補強部の各々は、金属製の線材からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項14】
前記複数の補強部の各々は、複数の前記金属製の線材からなる、請求項13に記載の磁気カップリング装置。
【請求項15】
前記第1回転体および前記第2回転体は、互いに対向するように円盤状に形成されており、
前記第1磁石部の前記異なる磁極は、前記第2回転体と対向する表面において、前記回転方向に沿って交互に配置されており、
前記複数の補強部は、前記回転方向に沿った円の中心から半径方向に延びるように形成されているとともに、前記壁部は、少なくとも前記複数の補強部の間を覆うように形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【請求項16】
前記補強部は、非磁性のステンレスからなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の磁気カップリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−38952(P2013−38952A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173880(P2011−173880)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]