説明

磁気カードリーダ及び磁気データ読取方法

【課題】ノイズ等の外乱によるエラーデータをできる限り排除して、磁気データを読み取る際の安定性を高めるとともに、ユーザの操作性を向上させる。
【解決手段】カード4に記録された磁気データを磁気ヘッド5で読み取る磁気カードリーダ1において、磁気ヘッド5で読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較する比較部と、比較部でデータ数が所定の閾値以下である場合にエラーデータとして判定する判定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やプラスチックなどのカード状媒体に記録されている磁気データの読み取り又は書き込みを行う磁気カードリーダ及び磁気データ読取方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、クレジットカード,プリペイドカード又はキャッシュカード等のカード状媒体に形成された磁気ストライプには、例えば固有情報等の磁気データが記録されている。磁気データをカード状媒体に記録する際には、例えば、2種類の周波数の組み合わせからなるFM変調方式(F2F方式)が用いられる。FM変調方式で記録された磁気データを再生するにあたって、カード状媒体の磁気ストライプに対して相対的に磁気ヘッドを摺動させ、磁気データをアナログ信号として取得した後、デジタル信号に変換(復調)したものがCPU(デコード部)に取り込まれる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された磁気カードリーダは、磁気ヘッドから出力され、増幅部で増幅されたアナログ信号を、F2F復調部で復調し、カード走行信号、クロック信号及びデータ信号を出力する。また、この磁気カードリーダは、磁気カードの読み込み開始時にハードウェア的にビットデータを数ビット廃棄(オミット)することによって、動作初期の不安定要素を取り除いている。この不安定要素には、磁気カードが磁気ヘッドと当接した際に生じる機械的な振動や周囲環境による電気的ノイズなどが含まれる。より具体的には、アナログ信号の先頭にノイズが存在する場合、磁気カードリーダのF2F復調部は、ノイズをプリアンブルの先頭であると判断して読み捨て動作を行う。なお、オミットするデータ数(ビット数)(以下、「オミット数」とする。)は、実験的・経験的な蓄積に基づいて最適値に設定される。
【0004】
【特許文献1】特開2007−250142号公報(段落番号[0015])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、予め定められたオミット数で一律にオミットするだけとなると、磁気データを読み取る際の安定性に欠ける。すなわち、オミット数を大きくすれば、耐エラー性は向上するが、あまりに大きくし過ぎると、逆に有効データまでオミットしてしまう虞がある。実際のところ、上述したように、実験的・経験的な蓄積に基づいて最適値に設定されるが、オミットしたデータは再生できないため、可能な限りハードウェアによるオミット数は少なくするのが望ましい(しかし、オミット数を極端に少なくしただけだと、逆に耐エラー性が低下する)。
【0006】
また、例えばノイズ等の影響によって、オミット数以上のエラーデータがあった場合、次の処理が進んでしまう、という問題もある。具体的には、ハードウェアオミット数(予め定められたデータ(ビット数))を超えるエラーデータを読み込んだ場合、超えた部分については成否の判断がなく、次の処理へ進んでしまう。そして、この超えた部分のエラーデータが検出されるのは、デコード処理の終了後、磁気カードリーダに接続された上位装置において、である。したがって、上位装置でエラーが検出された場合には、ユーザに再操作(例えば人為的な操作)を要求することになり、操作性が劣ることになる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノイズ等の外乱によるエラーデータをできる限り排除して、磁気データを読み取る際の安定性を高めるとともに、ユーザの操作性を向上させることが可能な磁気カードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1) カード状媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る磁気カードリーダにおいて、前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較する比較部と、前記比較部で前記データ数が前記所定の閾値以下である場合にエラーデータとして判定する判定部と、を備える磁気カードリーダ。
【0010】
本発明によれば、磁気カードリーダに、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較する比較部と、この比較部でデータ数が所定の閾値以下である場合にエラーデータとして判定する判定部と、を設けることとしたので、磁気カードリーダが外乱の大きい悪環境下で使用された場合においても、磁気データを読み取る際の安定性及びユーザの操作性を高めることができる。
【0011】
すなわち、比較部及び判定部の両機能によるソフトウェア的な閾値判定処理を行うことによって、エラーデータを簡易に排除することができる。また、従来のように、有効データまでオミットしてしまうことを防ぎ、ひいては磁気データを読み取る際の安定性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る磁気カードリーダでは、比較部において、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データの"データ数"を所定の閾値と比較し、その結果を用いて判定部でエラーデータか否かを判定している。これにより、磁気データに対してデコード処理を施す前に、エラーデータか否かを判定することができるため、磁気カードリーダから上位装置にエラー通知を行う必要がない。したがって、上位装置でユーザに再操作を要求する必要がなくなり、ひいては操作性を向上させることができる。
【0013】
(2) 前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのうち、予め定めた所定のデータ数を廃棄する廃棄部を備えることを特徴とする磁気カードリーダ。
【0014】
本発明によれば、磁気カードリーダに、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのうち、予め定めた所定のデータ数(オミット数)を廃棄する廃棄部を設けることとしたので、廃棄部において予め定められたビット数で一律にオミットしつつ、上述した比較部及び判定部の両機能によるソフトウェア的な閾値判定処理を行うことができる。したがって、廃棄部においてオミットするデータ数(ビット数)(ハードウェアによるオミット数)を最小限にすることで、廃棄部は、動作初期の機械的な不安定部分の除去に特化させつつ、比較部及び判定部は、周囲環境による電気ノイズの除去に特化させることができ、磁気データを読み取る際の安定性を更に向上させることができる。なお、ここでいう「廃棄」とは、データを削除することは勿論、データを削除することなくソフトウェア的に無視する(有効なデータとして扱わない)ことも含むものとする。
【0015】
(3) 前記所定の閾値は、カード状媒体の長手方向に一列に記録された磁気データの全データ数のうち、上位装置で処理可能な所定のデータ数であることを特徴とする磁気カードリーダ。
【0016】
本発明によれば、上述した所定の閾値は、カード状媒体の長手方向に一列に記録された磁気データの全データ数のうち、上位装置で処理可能な所定のデータ数であることとしたので、比較部及び判定部によって、全データ数の上位装置で処理可能な所定のデータ数に相当する磁気データを検出した場合には、正常なデータリードが行われたと判断することができる。周囲環境による電気ノイズは、経験的に、上記所定のデータ数より少ないデータ数であることが多いので、正常データとエラーデータを効果的に峻別することができる。
【0017】
(4) 前記カード状媒体は、磁気データが記録された複数列のトラックを備え、前記比較部は、前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を、前記トラックごとに所定の閾値と比較することを特徴とする磁気カードリーダ。
【0018】
本発明によれば、上述した比較部によって、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を、カード状媒体のトラックごとに所定の閾値と比較することとしたので、所定の閾値を超えるデータ数が検出された場合には正常データとして扱い(例えば、そのデータを上位装置へ送信し)、所定の閾値を超えないデータ数が検出された場合には外乱によるエラーデータとして扱うことができる。その結果、正常データとエラーデータが混在した状態であっても、正常データを取り出すことができ、ひいてはユーザによる再操作の発生頻度を削減し、操作性の向上に寄与することができる。
【0019】
(5) 前記判定部によってエラーデータと判定されたデータは廃棄されることを特徴とする磁気カードリーダ。
【0020】
本発明によれば、上述した判定部によってエラーデータと判定されたデータは廃棄されることとしたので、エラー通知が頻繁に上位装置に送信されるのを防ぐことができ、ひいてはユーザの操作性を向上させることができる。なお、ここでいう「廃棄」も、上述同様に、データを削除することは勿論、データを削除することなくソフトウェア的に無視する(有効なデータとして扱わない)ことも含むものとする。
【0021】
(6) カード状媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る磁気データ読取方法において、前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較し、前記データ数が前記所定の閾値以下である場合にエラーデータとして判定することを特徴とする磁気データ読取方法。
【0022】
本発明によれば、カード状媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る磁気データ読取方法で、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較し、そのデータ数が所定の閾値以下である場合にエラーデータとして判定することとしたので、上述同様、磁気データを読み取る際の安定性及びユーザの操作性を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較した後、エラーデータか否かを判定することとしているので、磁気カードリーダが外乱の大きい悪環境下で使用された場合においても、磁気データを読み取る際の安定性及びユーザの操作性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダ1の概要を示す模式図である。
【0026】
図1において、磁気カードリーダ1は、スワイプ方向と直交する面の断面形状がほぼコ字形状をなし、カード走行路を形成するフレーム2と、このフレーム2の一部(底部)として形成される走行基準面3と、カード4(カード状媒体の一例)上の磁気ストライプ41に記録されている磁気データの読み取り又は書き込みを行う磁気ヘッド5と、を有している。図中の両方向矢印で示すように、磁気カードリーダ1では、カード4を走行基準面3に沿って手動走行(スワイプ)させることで、磁気データの読み取りを行う。なお、本実施形態では、読取専用の磁気ヘッド5を用いているが、読取機能及び書込機能をもった磁気ヘッドを用いても構わない。また、本明細書でいう「スワイプ」とは、カード状記録媒体を磁気カードリーダ1のガイド(カード走行路)に沿って手動でさっと走らせる動作をいう。
【0027】
磁気ヘッド5は、カード走行路に臨むように配置されている。そして、カード4上の磁気データに係る信号を再生する。具体的には、磁気ヘッド5は、カード4表面上の磁気ストライプ41に接触・摺動することによって、その磁気ストライプ41に記録された磁気データを読み取り、その磁気データに係る再生信号を生成する。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダ1の電気的構成を示すブロック図である。
【0029】
図2において、本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダ1は、主として、磁気ヘッド5と、CPU101と、AMP回路102と、復調回路103と、RAM104と、ROM105と、を備えている。なお、RAM104及びROM105は、CPU101内に組み込まれていてもよい(内蔵ROM等)。一般に、ROM105には、磁気カードリーダ1の基本機能を支える基本プログラムが格納されており、RAM104は、CPU101のワーキングエリアとして機能する。また、本実施形態では、磁気ストライプ41上において、カード4の長手方向(図1中の両方向矢印)に沿って複数列の(磁気)トラックが設けられているため、磁気ヘッド5はマルチチャンネルのタイプのものとなっているが、単一チャンネルのタイプのものでもよい。
【0030】
CPU101は、磁気カードリーダ1の制御中枢を司るものであって、磁気カードリーダ1の統合的な制御を行う。磁気ヘッド5による再生信号は、AMP(増幅)回路102において増幅・波形整形され、復調回路103において復調された後(読み取り信号の2値化などを行った後)、CPU101に送られる。
【0031】
また、CPU101は、上位装置10と、I/F回路(図示せず)を介して通信する。上位装置10において、CPU110は、デコーダ106を利用して2値のデジタルデータに対して復号処理を行う。その結果、上位装置10は、磁気データの内容を取得することができる。
【0032】
ここで、本実施形態に係る磁気カードリーダ1では、CPU101,RAM104,及びROM105等の電気要素によって、「比較部」及び「判定部」が構成されている。より具体的に説明すると、ROM105には、磁気ヘッド5で読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較する比較プログラムと、データ数が所定の閾値以下である場合にエラーデータとして判定する判定プログラムとが格納されており、CPU101は、RAM104をワーキングエリアとしつつ、これらのプログラムを実行することで、「比較部」及び「判定部」の機能を実現する。なお、本実施形態では、所定の閾値は、RAM104に記憶されているが、例えば別途設けられたEEPROMなどのメモリに記憶させてもよい。また、所定の閾値として、カード4の長手方向に一列に記録された磁気データの全データ数のうち、上位装置で処理可能な所定のデータ数であり、本実施形態では、経験的に、全データ数の凡そ1/3を採用する。経験的に、全データ数の凡そ1/3のデータ数以上であれば、上位装置に送信した場合でも、何らかの処理が可能なデータ数となっている。また、周囲環境による電気ノイズは、経験的に、カード状媒体の長手方向に一列に記録された磁気データの全データ数のうち、約1/3より少ないデータ数であることが多い。そこで、約1/3を閾値と設定している。なお、「磁気データの全データ数」とは、ハードウェアによるオミット数を除いた値である。
【0033】
また、ROM105には、磁気ヘッド5で読み取って得た磁気データのうち、予め定めた所定のデータ数(例えば16ビット程度)を廃棄する廃棄プログラムも格納されており、CPU101は、RAM104をワーキングエリアとしつつ、このプログラムを実行する。したがって、「廃棄部」も、CPU101,RAM104,及びROM105等の電気要素によって構成されている。以下、このような電気的構成に基づいて、磁気データ読取方法の流れについて詳述する。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態に係る磁気データ読取方法の流れを示すフローチャートである。
【0035】
図3において、まず、初期化及びリード待ち処理が行われる(ステップS1)。具体的には、磁気カードリーダ1のCPU101は、ROM105に格納された初期化プログラムを実行した後、カード4がスワイプされるまで待機する。
【0036】
次に、カード4が磁気ヘッド5に接触すると、ハードウェアによるオミット処理が行われる(ステップS2)。具体的には、磁気カードリーダ1のCPU101は、磁気ヘッド5,AMP回路102,及び復調回路103を通じて得られたデジタルデータに対し、上述した廃棄プログラムを実行し、機械的に不安定な部分のデータ数(数ビット(本実施形態では16ビット))をオミットする。その後、検出した磁気データをバッファ(RAM104)に格納する。すなわち、バッファに格納された磁気データは、カード状媒体の長手方向に一列に記録された磁気データの全データ数としている。
【0037】
なお、本実施形態では、磁気ストライプ41は複数のトラックを有するため、全トラックのデータをバッファに格納する。また、磁気リード終了後に、各トラックの読み込んだデータ数(ビット数)を(RAM104の他の領域などに)記憶しておく。
【0038】
次に、ソフトウェアによる閾値判定処理が行われる(ステップS3)。具体的には、磁気カードリーダ1のCPU101は、上述した比較プログラム及び判定プログラムを実行する。その結果、全トラックの読み込んだデータ数(ビット数)が、設定された閾値以下か否かが判断される(ステップS4)。全トラックの読み込んだデータ数が、予め設定された閾値以下の場合には(ステップS4:YES)、エラーデータとして判定され、外乱によるエラーリードとしてデータを廃棄し、ステップS5のデータ処理は行われない。この場合、処理はステップS1に移される。このように、磁気カードリーダ1が外乱の大きい悪環境下で使用された場合においても(閾値以下のデータしかリードしなかったトラックが多い場合においても)、上位装置10に対して頻繁にエラー通知がなされるのを防いでいる。
【0039】
一方で、一箇所でも閾値を超えるデータ数を読み込んだトラックがあれば(ステップS4:NO)、ステップS5のデータ処理に移行する。具体的には、磁気カードリーダ1のCPU101は、上位装置10に対してデコード前のデータを送信する。
【0040】
ここで、上位装置10に対してデコード前のデータを送信する際、閾値以下のデータ数しかリードしなかったトラックについては送信を行わない(データを廃棄する)。このようにして、閾値を超えるデータ数をリードしたトラックについてのみ上位装置10に送信するようにしている。
【0041】
最後に、上位装置10へのデータ送信が完了したら、初期化され、すなわち、CPU101は、全バッファ(RAM104)をクリアして、次のデータリードに備える。一方、上位装置10側では、デコーダ106によって、CPU110は磁気データの内容を取得する。
【0042】
[実施形態の主な効果]
以上説明したように、本実施形態に係る磁気カードリーダ1によれば、ハードウェアによるオミット処理(図3のステップS2)と、ソフトウェアによる閾値判定処理(図3のステップS3,ステップS4)とを設けることとしたので、ノイズ等の外乱によるエラーデータを可能な限り排除し、かつ、有効なデータは再生可能な構成にすることができる。その結果、安定して磁気データを読み込むことができ、ひいては磁気データを読み取る際の安定性を向上させることができる。
【0043】
また、上位装置10に対して頻繁にエラー通知がなされるのを防ぐことで(図3のステップS4:YES)、上位装置10でユーザに再操作を要求する必要がなくなり、ユーザの操作性を向上することができる。また、正常データとエラーデータが混在した状態でも、正常データを取り出すので(図3のステップS5)、スワイプ回数を削減することができ、この点においても操作性を向上することができる。
【0044】
また、予め定められたオミット数でハードウェア的に一律にオミットする場合には、そのオミット数を変更するには回路変更が必要になる。しかし、本実施形態に係る磁気カードリーダ1によれば、閾値の変更は(変更タイミング、たとえば初期設定時や稼動時等も含めて)容易であり、環境変化に柔軟に対応することができる。
【0045】
また、ハードウェア的に一律にオミットするオミット数は最小限にすることで、廃棄部の機能を、動作初期の機械的な不安定部分の除去に特化させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、カード4の長手方向に一列に記録された磁気データの全データ数の上位装置で処理可能な所定のデータ数、たとえば、約1/3以上に相当する(磁気)データ数を検出した場合には、正常なデータリードが行われたと判断するようにしているので(図3のステップS4:NO)、正常データとエラーデータを効果的に峻別することができる。
【0047】
さらに、複数列のトラックを有するカード4に対しても、比較部は、磁気ヘッド5で読み取って得た磁気データのデータ数をトラックごとに所定の閾値 と比較することしているので、閾値を超えるデータ数をリードしたトラックについてのみ上位装置10に送信することができ、上位装置10への不必要なデータ送信(エラー通知)を防ぐことができる。
【0048】
[変形例]
図4は、本発明の他の実施の形態に係る磁気カードリーダ1'の電気的構成を示すブロック図である。
【0049】
図4に示す磁気カードリーダ1'は、図2に示す磁気カードリーダ1と異なり、デコーダ106を有している。すなわち、図4では、デコード処理は、上位装置10'側ではなく、磁気カードリーダ1'で行うようにしている。このような場合であっても、デコード処理が行われる前に、ソフトウェアによる閾値処理によって、エラーデータか否かを判定することができるので、上位装置10'への不必要なデータ送信(エラー通知)を防ぐことができる。
【0050】
また、磁気カードリーダ1に学習機能を設けることによって、自律的に閾値を最適化することもできる。より具体的に説明すると、磁気カードリーダ1を所定の場所へ設置した当初は、設定された初期値で閾値判断を行うが、設置環境は様々で、必ずしもその設置場所に対して初期値が最適とはいえない場合がある。そこで、エラー検出した際に、対象データ数を記憶し、現在設定されている閾値と比較し、差が少ない場合は閾値を段階的に大きくする。閾値には上限を設けており、上限に達した場合は、何らかの通知機能を、たとえば、LED等を発光させる、または指令コマンドを上位装置に発信する等の機能を、磁気カードリーダに持たせ、磁気カードリーダの設置環境の改善を促す仕組みを持たせるようにしてもよい。
【0051】
また、閾値の変更方法については、静的なものでも動的なものでもよい。例えば、磁気カードリーダ初期設定時にディップスイッチ等を用いて閾値を設定する、静的な設定でもよいし、磁気カードリーダ稼動中でも閾値を変更することができるように、コマンド等による動的な設定でもよい。これらによって、環境状態の急変に柔軟な対応をすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、スワイプ式磁気カードリーダであるが、これに限定されるものではなく、他の手動式カードリーダであってもよいし、手動式以外のモータ駆動式カードリーダであってもよい。
【0053】
本実施形態において、ハードウェアによるオミット処理を行っているが、このオミット処理を実施しなくてもよい。この場合には、カード4の全長に一列に記録された全磁気データ、すなわち、オミット数を含めた磁気データのデータ数の約1/3(上位装置で処理可能な所定のデータ数)を閾値と設定してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、動作初期の機械的な不安定部分の除去としてハードウェアによるオミット処理を行ったが、これに限定されるものではない。たとえば、この最初のオミット処理をソフトウェアによるオミット処理とし、2段階でソフトウェアによる処理、すなわち、ソフトウェアによるオミット処理し、その後、ソフトウェアによる閾値処理をしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る磁気カードリーダ及び磁気データ読取方法は、磁気データを読み取る際の安定性を高めるとともに、ユーザの操作性を向上させることが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダの概要を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る磁気カードリーダの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る磁気データ読取方法の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る磁気カードリーダの電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0057】
1 磁気カードリーダ
2 フレーム
3 走行基準面
4 カード
5 磁気ヘッド
101 CPU
102 増幅(AMP)回路
103 復調回路
104 RAM
105 ROM
106 デコーダ
110 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る磁気カードリーダにおいて、
前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較する比較部と、前記比較部で前記データ数が前記所定の閾値以下である場合にエラーデータとして判定する判定部と、を備える磁気カードリーダ。
【請求項2】
前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのうち、予め定めた所定のデータ数を廃棄する廃棄部を備えることを特徴とする請求項1記載の磁気カードリーダ。
【請求項3】
前記所定の閾値は、カード状媒体の長手方向に一列に記録された磁気データの全データ数のうち、上位装置で処理可能な所定のデータ数であることを特徴とする請求項1又は2記載の磁気カードリーダ。
【請求項4】
前記カード状媒体は、磁気データが記録された複数列のトラックを備え、
前記比較部は、前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を、前記トラックごとに所定の閾値と比較することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の磁気カードリーダ。
【請求項5】
前記判定部によってエラーデータと判定されたデータは廃棄されることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の磁気カードリーダ。
【請求項6】
カード状媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る磁気データ読取方法において、
前記磁気ヘッドで読み取って得た磁気データのデータ数を所定の閾値と比較し、前記データ数が前記所定の閾値以下である場合にエラーデータとして判定することを特徴とする磁気データ読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−86124(P2010−86124A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252194(P2008−252194)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】