磁気カード及び磁気カードの製造方法
【課題】多孔質基材の質感を生かしつつ、磁気記録媒体層の磁気特性を良好に保つことが可能な磁気カードを提供すること。
【解決手段】カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードであって、 カード基材は、磁気記録媒体層配置面の磁気記録媒体層配置領域以外の少なくとも一部の領域において凹凸面が露出した多孔質基材が用いられており、磁気記録媒体層と多孔質基材との間に、少なくとも多孔質基材表面の磁気記録媒体層配置領域を覆い、該多孔質基材に一部が含浸した平坦化層が積層されていることを特徴とする磁気カードとする。
【解決手段】カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードであって、 カード基材は、磁気記録媒体層配置面の磁気記録媒体層配置領域以外の少なくとも一部の領域において凹凸面が露出した多孔質基材が用いられており、磁気記録媒体層と多孔質基材との間に、少なくとも多孔質基材表面の磁気記録媒体層配置領域を覆い、該多孔質基材に一部が含浸した平坦化層が積層されていることを特徴とする磁気カードとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードは、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、又はドアの錠等に広く利用されている。磁気カードは、日常頻繁に利用されるものであるため、主として剛性のある樹脂製基材が用いられている。このカードの基材としては、磁気記録媒体層等の表面に凹凸が表れ得るものを面一状に埋設することを考慮して、熱可塑性樹脂が用いられてきた。例えば特許文献1ではコア基材とコア基材の表裏にオーバーシートを有し、オーバーシートに磁気記録媒体層を埋設させた構成が開示されている。
【0003】
しかし、近年、使用済みカードの廃棄時における自然環境への配慮、即ち樹脂製品の高温焼却処理や、地中における分解性が低い樹脂材料の埋め立て処理等の回避の観点から、剛性を有するように加工された天然素材の紙基材を用いたカードが用いられるようになってきている。このような紙基材を用いた情報記録カードとしては、上記カードの関連技術として、下記特許文献2に開示されたものが知られている。
【0004】
特許文献2に開示された情報記録カードは、所定の厚さのバルカナイズド・ファイバにより形成されたシート状のコア基材に、ICチップ埋設用の凹部を切削機で形成し、該凹部にICチップを配置してホットメルト接着剤等で固着されて形成されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−270176号公報
【特許文献2】特許第3520490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしバルカナイズド・ファイバのような紙基材(多孔質基材)は、木材や綿繊維により形成されているため、表面が粗くなる。このため磁気カードの場合、製造上の問題が生じていた。すなわち、表面が粗い多孔質基材に磁気記録媒体層を貼着した場合には、磁気記録媒体層に該紙基材の凹凸が現れてしまい、磁気記録媒体層の平坦性を確保できないために、磁気記録媒体層の磁気特性が悪化し、情報の正確な出入力が図りにくくなってしまう。
【0007】
そこで本願発明の課題は、多孔質基材の質感を生かしつつ、磁気記録媒体層の磁気特性を良好に保つことが可能な磁気カード及び磁気カードの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために為された第1の発明は、カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードであって、カード基材は、少なくとも磁気記録媒体層配置面に多孔質基材が用いられており、磁気記録媒体層と多孔質基材との間に、多孔質基材表面の磁気記録媒体層配置領域を覆い、該多孔質基材に一部が含浸した平坦化層が積層され、磁気記録媒体層配置面の少なくとも一部の領域において多孔質基材の凹凸が露出していることを特徴とする磁気カードである。
第2の発明は、上記第1の発明において、平坦化層が、硬化性樹脂層を含むことを特徴とする磁気カードである。
第3の発明は、上記第2の発明において、硬化性樹脂層に、紫外線硬化性樹脂を用いたことを特徴とする記載の磁気カードである。
第4の発明は、上記第2又は3の発明において、平坦化層が、多孔質基材との界面に形成された前記硬化性樹脂層と、該硬化性樹脂層と磁気記録媒体層との間に設けられた中間層からなることを特徴とする磁気カードである。
第5の発明は、上記第1〜4の発明において、カード基材が、多孔質基材からなる単一基材であることを特徴とする磁気カードである。
第6の発明は、上記第1〜5の発明において、多孔質基材表面の平坦化層を形成していない領域の算術平均粗さRaが10μmより大きく、50μm以下であり、平坦化層上の算術平均粗さRaが5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気カード。
第7の発明は、カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードの製造方法であって、少なくとも1面が多孔質基材であるカード基材の多孔質基材面に硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程と、硬化性樹脂パターンを硬化させる工程と、磁気記録媒体層を硬化性樹脂パターン上に貼着する工程と、を有する磁気カードの製造方法である。
第8の発明は、上記第7の発明において、硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程に、スクリーン印刷を用いることを特徴とする磁気カードの製造方法である。
第9の発明は、上記第7又は8の発明において、前記硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程後、前記磁気記録媒体層を貼着する工程の前に、中間層を形成する工程を有することを特徴とする磁気カードの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の構成によれば、まず凹凸面が露出した多孔質基材をカード基材に用いた場合であっても、磁気記録媒体層配置領域に多孔質基材の凹凸を充填し、平滑な表面を有する平坦化層が設けられているので、多孔質基材の質感を生かしつつ、磁気記録媒体層の磁気特性を損なうことのない磁気カードが実現できる。
さらに平坦化層に硬化性樹脂層を含むことで、多孔質基材への含浸とレベリング、すなわち平坦化が容易であり、また特に紫外線硬化性樹脂を用いることで、平滑性に優れた平坦化層とすることができる。
さらに硬化性樹脂層と磁気記録媒体層との間に中間層を設けることで、材料の選択性が広がり、平滑性を保ちつつ磁気記録媒体層と平坦化層の密着性を向上することができる。
さらにカード基材を、本発明では、上述のように平坦化層を設けることで、剛性が高い多孔質基材でも磁気特性を損なうことのなく磁気カード形成できるので、多孔質基材からなる単一基材で構成することで、製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態として示した磁気カードの斜視図であり、(b)は、(a)の破線Sでの断面を示した模式図である。
【図2】本発明に係るカード基材の例を示す模式図である。
【図3】本発明を説明するための比較例の断面模式図である。
【図4】本発明磁気カードの一実施形態を示す断面模式図である。
【図5】本発明磁気カードの一実施形態を示す断面模式図である。
【図6】本発明磁気カードの一実施形態を示す断面模式図である。
【図7】本発明磁気カードの製造方法の一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態として示した磁気カード1の斜視図であり、同図(b)は、(a)の本発明の実施形態の破線Sでの断面を示した模式図である。図1では、カード基材2の一方の面にストライプ状の磁気記録媒体層3を配置した構成である。磁気記録媒体層3の配置構成については、図1の構成に限定されるものではない。両面に配置してもよく、一面に複数の磁気記録媒体層3を配置してもよい。また磁気記録媒体層3以外の構成をカード基材に加えても良い。例えば後述するようにICチップをカード基材に埋設したIC兼磁気カードとしても良い。本発明の磁気カード1は、例えばJIS X 6301:2005、ISO/IEC7810で規定されるID−1カード等の磁気記録層を有する媒体として用いることができる。
【0012】
本発明の実施の形態に係るカード基材2は、少なくとも磁気記録媒体層3の配置面が、多孔質基材からなる。また、多孔質基材の意匠性を生かすために、カード基材の磁気記録媒体層3配置面の磁気記録媒体層3を配置する多孔質基材表面の領域(磁気記録媒体層配置領域)以外の全てあるいは一部の領域において、多孔質基材の凹凸面が露出している。ここで多孔質基材とは、紙基材等の繊維性材料や微小な空隙を有する多孔性材料を含むことで、表面に凹凸を有する基材である。このような多孔質基材としては、例えばteslin(登録商標:PPGインダストリーズ製)やユポ(登録商標:ユポ・コーポレーション製)等のポリオレフィン系多孔質基材やその他発泡プラスチックフィルムや生分解が可能な紙基材やポリ乳酸などの生分解製樹脂からなる多孔質基材が挙げられる。紙基材としては木材パルプ、木綿パルプ等の天然繊維からなるものを用いることができる。磁気記録媒体層配置領域には平坦化層5が設けられ、平坦化層5上に磁気記録媒体層3が形成されている。
【0013】
カード基材2の構成としては、図2(a)のように剛性の高いコア基材2aの片面又は両面に外装基材2bとして多孔質基材を張り合わせたものや、図2(b)のように剛性の高い多孔質基材の単一基材2cからなるものが挙げられる。カード基材2の諸特性は、JIS X 6301:2005(ISO/IEC 7810:2003対応)等の規格を満たすものであれば特に制限はない。また、カード基材2表面にザグリ加工を施して外部端子付ICモジュールを埋設し、接触式IC兼磁気カードとしてもよい。あるいは、コア基材2aと外装基材2bからなる構成の場合には、非接触型のICインレットを有するコア基材を用いて非接触IC兼磁気カードとしてもよい。
【0014】
カード基材2の材料のうち、少なくともコア基材2aあるいは単一基材2cの材料としては剛性の高い材料を用いることが望ましい。その例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の一般的な樹脂材料、ポリ乳酸などの生分解性樹脂や、剛性を有するように加工された紙基材を用いることができる。外装基材2bとしては、例えばteslin(登録商標:PPGインダストリーズ製)やユポ(登録商標:ユポ・コーポレーション製)等のポリオレフィン系多孔質基材やその他発泡プラスチックフィルムやセルロースなどの生分解性の繊維を主成分とする紙基材やポリ乳酸などの生分解性樹脂からなる多孔質基材が挙げられる。特に生分解性材料のコア基材2aと、多生分解性材料の孔質基材による外装基材2bとでカード基材2を構成すれば、生分解性の材料のみでカード基材を構成することができる。
【0015】
一方、本発明では後述するように所定の平坦化層を設けることで、凹凸を有し、剛性が高い多孔質基材でも、磁気記録媒体層配置領域の研磨等を行わずに、磁気特性を損なうことのなく磁気カード形成できるので、多孔質基材からなる単一基材で構成することで、磁気カードの製造コストを下げることができる。特に、バルカナイズド・ファイバのように剛性の高い生分解性の多孔質基材を用いれば、単一基材2cとしてカード基材2を構成できることから、環境及び製造コストの両面から好ましい。上述のJIS X 6301:2005によれば、カード基材の剛性(静的曲げ強さ)はJIS X 6305-1:2003に規定された試験での荷重によって生じる変形が13mm〜35mmであれば良いので、このような剛性を持つ多孔質基材を採用することで、好適に単一基材でカード基材を構成することができる。
★基材の具体的な構成は、他社の実施の可能性も考慮するといろいろと考えられると思いますので、バリエーションを記載してみました。適宜加除修正願います。
【0016】
磁気カード1表面に露出する多孔質基材面は、平坦化層表面粗さをある程度均一にするためにプレス加工、カレンダー加工を施しても良い。また防水、環境耐性向上のため、カード表面に表面処理や保護層を施してもよい。カード面の意匠として絵柄層を設けても良い。表面処理や絵柄層形成の工程は、平坦化層5の形成前あるいは磁気記録媒体層形成後に行うことができる。ただし多孔質基材の凹凸等の質感を損なわない、言い換えると少なくとも「凹凸面が露出している」範囲とする。具体的には、多孔質基材の表面粗さが最大高さRmaxで50μmあるいは中心線平均粗さRaで10μmよりも大きい状態、特に一般的な紙基材の表面粗さである、Raが10μmより大きく、50μm以下となるよう保持された範囲とすることが好ましい。
【0017】
多孔質基材は、上述のように表面に凹凸を生じるために独特の質感を備えるが、磁気カードを多孔質基材表面に貼着する場合、この凹凸により、磁気記録媒体層2の平滑性が損なわれてしまう。これは、図3に示すように、磁気記録媒体層を多孔質基材上に配置する際に、磁気記録媒体層を多孔質基材に重ねてプレスするため、基材の凹凸の影響を受けてしまうからである。例えば、バルカナイズド・ファイバを単一のカード基材に用いた場合、その剛性高いために、表面をプレスしても表面粗さは、最大高さRmaxで50μm、中心線平均粗さRaで9μmを超えてしまう。このため、多孔質基材上に貼着した磁気記録媒体層の平滑性が低下し、磁気特性が悪化してしまう。これは、特に剛性の高い基材の場合には平坦化することが困難であるために問題となる。
【0018】
そこで本発明では、磁気記録媒体層3を配置する多孔質基材表面の領域(磁気記録媒体層配置領域)に、平坦化層5を設けておくことで、磁気記録媒体層配置面を平坦化し、磁気記録媒体層を平滑な状態で形成することが可能としている。図4の本発明構成例に示すように、平坦化層5は、少なくとも磁気記録媒体層配置領域に対応する多孔質基材表面の領域に形成される。対応する領域は、少なくとも磁気記録媒体層配置領域を覆い、磁気記録媒体層配置領域との面積比で110%以下、より好ましくは105%以下であることが好ましい。また平坦化層表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで5μm以下、最大高さRmaxで10μm以下であることが望ましい。
【0019】
平坦化層5は、単層でも良く、後述のように多層積層しても良い。平坦化層5は、アクリル系、ポリエステル系等の各種樹脂材等、磁気記録媒体層の磁気特性を阻害しない材料であれば良く、公知一般のパターン形成方法により形成することができる。中でも多孔質基材に接して設けられる層については、液状の形成材料を磁気記録媒体層配置領域に塗布し、これを硬化させて形成することが好ましい。例えば、光や熱で硬化する硬化性樹脂を液状の形成材料(インキ)としてスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷法によりパターン印刷する。インキのレベリング作用により、多孔質基材の凹凸に影響されずに表面が平滑化された平坦化層を形成することができる。また多孔質基材上に印刷するため、多孔質基材の平坦化層との界面において、平坦化層の一部が多孔質基材に含浸させることができる。本発明における含浸とは、液状の材料(平坦化層材料)により繊維間や微小孔を充填していることを意味している。ただし多孔質基材の表面から平坦化層が浸透した領域において繊維間や微小孔が充填されていれば良い。これにより繊維間や微小孔が平坦化層材料で埋められるので、繊維や微小孔に起因する凹凸が抑制され、かつ密着性の良い平坦化層が形成できる。このように、本発明の磁気カードは、平坦化層によってカード基材表面の凹凸が緩和されている。これは特に磁気記録媒体層を圧着して設ける場合に効果的である。一般的に接着層のみを介して凹凸面に貼着した場合と異なり、予め多孔質基材の凹凸を平滑化するように凹凸を充填しつつ硬化させているため、加圧しても磁気記録媒体層にカード基材表面の凹凸の影響を与えることがない。
【0020】
上述のように塗布された硬化性樹脂インキは多孔質基材に含浸していくため、インキが全て含浸しきってしまうと、逆に凹凸が露出してしまうおそれがある。このため硬化性樹脂層6の一部は含浸させずに多孔質基材上に嵩高に盛られ、レベリングされた状態で硬化させることが望ましい。言い換えると、硬化性樹脂層は、多孔質基材側で含浸し、反対側では多孔質基材の表面が平坦となるように凹凸を被覆している。このため、特に硬化速度の速い紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。硬化性樹脂層6の硬化後の平均膜厚は、少なくとも多孔質基材の中心線平均粗さRaよりも大きいことが好ましい。Raよりも小さいと凹凸が露出してしまう。しかし膜厚が大きいとカード基材上で磁気記録媒体層3がカード基材上に突出して使用時に磁気記録媒体層を損傷するおそれがある。硬化性樹脂層6の形成方法としては、塗布膜厚や多孔質基材への印刷特性の点から、スクリーン印刷法を用いて1回、又は重ね刷りで印刷することが好ましい。
【0021】
さらに、図5の本発明構成例に示すように、平坦化層5を多孔質基材に接して設けられた硬化樹脂層6と、硬化樹脂層6上の中間層7からなる構成としても良い。中間層7は、硬化樹脂層6上に別の層として形成するので、硬化性樹脂以外の材料を選択することも可能である。例えば溶剤に溶解させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂等の各種樹脂材料のインキでスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷法によりパターン形成することができる。磁気記録媒体層3との密着性が良いものを中間層として選択することで、磁気記録媒体層3の平坦化層への密着性を向上させることができる。中間層7の膜厚としては1〜5μm程度が好ましい。
【0022】
磁気記録媒体層3は、γ型酸化鉄(III),二酸化クロム,コバルト添加の酸化鉄等の磁性体材料を用いた記録媒体であり、磁気カードにおける情報の読み取り・書き取り領域である。磁気記録媒体層3の構成としては、PETフィルム等の保護フィルム上に磁気記録材料を塗布して磁性体薄膜を形成し、当該磁性体薄膜からなる記録層の両面を保護フィルムで挟んでテープ状としたものが挙げられる。
【0023】
図6は、磁気記録媒体層3を平坦化層上に形成する工程における、テープ状の磁気記録媒体層3の長尺方向と平行な断面での模式図である。図6に示すように、上述のテープ状の磁気記録媒体を、接着層3’有する接着面を接触させ、加熱圧着により平坦化層上に貼着することができる。加熱圧着あるいは磁気記録媒体層3形成後のプレスにより、図7の本発明の磁気カード断面模式図が示すように、磁気記録媒体層3部分の膜厚を圧縮して磁気記録媒体層3と多孔質基材表面の段差を緩和することができる。しかし形成方法としてはこれに限られるものではなく、例えば磁性体材料の塗布又は蒸着により形成しても良い。カード基材上に設けられた磁気記録媒体層3の磁気特性がJIS X 6305-2:2010(ISO/IEC 10373-2:2006対応)等に定められる特性を満たすことが好ましい。
【0024】
なお磁気記録媒体層3を加圧してカード基材の平坦化層上に貼り合わせる場合には、圧着時の加圧により平坦化層にクラックを生じさせないように平坦化層にある程度の柔軟性を有する材料を選択することが好ましい。
【0025】
カード基材3はその片面あるいは両面に絵柄層を形成してもよい。絵柄層は前述したように凹凸表面を露出させた状態を保持する膜厚とするか、あるいは凹凸面露出領域と、絵柄層領域のそれぞれがカード基材表面に現れるように印刷形成してもよい。絵柄印刷層はオフセット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等を用いて形成することができる。インキはUV硬化性インキ、油性インキ、水性インキ等を用いることができるがこれに限られるものではない。
【0026】
本発明では、磁気記録層を配置したカード基材シートを作成し、打ち抜き加工により個々のカードサイズに個片化してもよいし、予め個片化したカード基材を用いて積層してもよい。個片化の方法としては雄雌型のパンチや刃などにより切り出す方法を用いることができる。
【実施例】
【0027】
<実施例1>
以下、本発明の具体的な実施例を示す。なお、表面粗さの測定はJIS B0601:2001に基づくものとする。表面粗さの範囲は、10点測定したうちの最大値最小値を示す。
まずカード基材2として、生分解性の多孔質単一基材として厚み0.8mmのバルカナイズド・ファイバ基材(北越製紙製)を用い、このバルカナイズド・ファイバ基材をプレスしてバルカナイズド・ファイバ表面の凹凸を緩和した。プレス前のカード基材2の表面粗さRmaxが70〜76μmに対してプレス後のカード基材2の表面粗さRmaxは56〜59μmであった。
【0028】
次に、磁気記録媒体層3を配置する領域に、ポリエステル系UV硬化型樹脂塗液をスクリーン印刷法により硬化後の膜厚が約20μmとなるようにパターン印刷し、紫外線を照射して硬化し、硬化樹脂層6とした。
【0029】
次に、磁気記録層として厚さ20μmの接着層を有する磁気ストライプ(トッパン・TDKレーベル社製)を用いて、加熱温度120℃、プレス圧力2.0N/mm2で硬化樹脂層6上に加熱圧着した。
【0030】
以上の工程で作製した磁気カード1の磁気記録媒体層3表面の表面粗さを測定したところ、Raが0.3μm、Rmaxが2〜6μmであった。この磁気カードはISO/IEC 10373-2:2006の磁気特性を満たすものであった。
【0031】
<実施例2>
まずカード基材2として、生分解性の多孔質単一基材として厚み0.8mmのバルカナイズド・ファイバ基材(北越製紙製)を用い、このバルカナイズド・ファイバ基材をプレスしてバルカナイズド・ファイバ表面の凹凸を緩和した。プレス前のカード基材2の表面粗さRmaxが70〜76μmに対してプレス後のカード基材2の表面粗さRmaxは56〜59μmであった。
【0032】
次に、磁気記録媒体層3を配置する領域に、ポリエステル系UV硬化型樹脂塗液をスクリーン印刷法により硬化後の膜厚が約20μmとなるようにパターン印刷し、紫外線を照射して硬化し、硬化樹脂層6とした。さらに硬化樹脂層6上に、溶剤型アクリル系塗布液をスクリーン印刷法により約2μmとなるようにパターン印刷し、加熱乾燥により硬化させて、中間層7とした。
【0033】
次に、磁気記録層として厚さ20μmの接着層を有する磁気ストライプ(トッパン・TDKレーベル社製)を用いて、加熱温度120℃、プレス圧力2.0N/mm2で硬化樹脂層6上に加熱圧着した。
【0034】
以上の工程で作製した磁気カード1の磁気記録媒体層3表面の表面粗さを測定したところ、Raが0.3μm、Rmaxが2〜6μmであった。この磁気カードはISO/IEC 10373-2:2006の磁気特性を満たすものであった。
【0035】
<比較例>
比較例として、硬化樹脂層6を設けずにバルカナイズド・ファイバ基材上に直接磁気記録媒体層を貼着した以外は同じ工程で磁気カードを作製した。作製した磁気カードの磁気記録媒体層表面の表面粗さを測定したところ、Raが2.8μm、Rmaxが35〜59μmであった。この磁気カードはISO/IEC 10373-2:2006の磁気特性を満たさなかった。
【符号の説明】
【0036】
1・・・磁気カード
2・・・カード基材
2a・コア基材
2b・外装基材
2c・単一基材
3・・・磁気記録媒体層
3’・・接着層
5・・・平坦化層
6・・硬化樹脂層
7・・中間層
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カードに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気カードは、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、又はドアの錠等に広く利用されている。磁気カードは、日常頻繁に利用されるものであるため、主として剛性のある樹脂製基材が用いられている。このカードの基材としては、磁気記録媒体層等の表面に凹凸が表れ得るものを面一状に埋設することを考慮して、熱可塑性樹脂が用いられてきた。例えば特許文献1ではコア基材とコア基材の表裏にオーバーシートを有し、オーバーシートに磁気記録媒体層を埋設させた構成が開示されている。
【0003】
しかし、近年、使用済みカードの廃棄時における自然環境への配慮、即ち樹脂製品の高温焼却処理や、地中における分解性が低い樹脂材料の埋め立て処理等の回避の観点から、剛性を有するように加工された天然素材の紙基材を用いたカードが用いられるようになってきている。このような紙基材を用いた情報記録カードとしては、上記カードの関連技術として、下記特許文献2に開示されたものが知られている。
【0004】
特許文献2に開示された情報記録カードは、所定の厚さのバルカナイズド・ファイバにより形成されたシート状のコア基材に、ICチップ埋設用の凹部を切削機で形成し、該凹部にICチップを配置してホットメルト接着剤等で固着されて形成されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−270176号公報
【特許文献2】特許第3520490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしバルカナイズド・ファイバのような紙基材(多孔質基材)は、木材や綿繊維により形成されているため、表面が粗くなる。このため磁気カードの場合、製造上の問題が生じていた。すなわち、表面が粗い多孔質基材に磁気記録媒体層を貼着した場合には、磁気記録媒体層に該紙基材の凹凸が現れてしまい、磁気記録媒体層の平坦性を確保できないために、磁気記録媒体層の磁気特性が悪化し、情報の正確な出入力が図りにくくなってしまう。
【0007】
そこで本願発明の課題は、多孔質基材の質感を生かしつつ、磁気記録媒体層の磁気特性を良好に保つことが可能な磁気カード及び磁気カードの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために為された第1の発明は、カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードであって、カード基材は、少なくとも磁気記録媒体層配置面に多孔質基材が用いられており、磁気記録媒体層と多孔質基材との間に、多孔質基材表面の磁気記録媒体層配置領域を覆い、該多孔質基材に一部が含浸した平坦化層が積層され、磁気記録媒体層配置面の少なくとも一部の領域において多孔質基材の凹凸が露出していることを特徴とする磁気カードである。
第2の発明は、上記第1の発明において、平坦化層が、硬化性樹脂層を含むことを特徴とする磁気カードである。
第3の発明は、上記第2の発明において、硬化性樹脂層に、紫外線硬化性樹脂を用いたことを特徴とする記載の磁気カードである。
第4の発明は、上記第2又は3の発明において、平坦化層が、多孔質基材との界面に形成された前記硬化性樹脂層と、該硬化性樹脂層と磁気記録媒体層との間に設けられた中間層からなることを特徴とする磁気カードである。
第5の発明は、上記第1〜4の発明において、カード基材が、多孔質基材からなる単一基材であることを特徴とする磁気カードである。
第6の発明は、上記第1〜5の発明において、多孔質基材表面の平坦化層を形成していない領域の算術平均粗さRaが10μmより大きく、50μm以下であり、平坦化層上の算術平均粗さRaが5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気カード。
第7の発明は、カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードの製造方法であって、少なくとも1面が多孔質基材であるカード基材の多孔質基材面に硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程と、硬化性樹脂パターンを硬化させる工程と、磁気記録媒体層を硬化性樹脂パターン上に貼着する工程と、を有する磁気カードの製造方法である。
第8の発明は、上記第7の発明において、硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程に、スクリーン印刷を用いることを特徴とする磁気カードの製造方法である。
第9の発明は、上記第7又は8の発明において、前記硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程後、前記磁気記録媒体層を貼着する工程の前に、中間層を形成する工程を有することを特徴とする磁気カードの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の構成によれば、まず凹凸面が露出した多孔質基材をカード基材に用いた場合であっても、磁気記録媒体層配置領域に多孔質基材の凹凸を充填し、平滑な表面を有する平坦化層が設けられているので、多孔質基材の質感を生かしつつ、磁気記録媒体層の磁気特性を損なうことのない磁気カードが実現できる。
さらに平坦化層に硬化性樹脂層を含むことで、多孔質基材への含浸とレベリング、すなわち平坦化が容易であり、また特に紫外線硬化性樹脂を用いることで、平滑性に優れた平坦化層とすることができる。
さらに硬化性樹脂層と磁気記録媒体層との間に中間層を設けることで、材料の選択性が広がり、平滑性を保ちつつ磁気記録媒体層と平坦化層の密着性を向上することができる。
さらにカード基材を、本発明では、上述のように平坦化層を設けることで、剛性が高い多孔質基材でも磁気特性を損なうことのなく磁気カード形成できるので、多孔質基材からなる単一基材で構成することで、製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態として示した磁気カードの斜視図であり、(b)は、(a)の破線Sでの断面を示した模式図である。
【図2】本発明に係るカード基材の例を示す模式図である。
【図3】本発明を説明するための比較例の断面模式図である。
【図4】本発明磁気カードの一実施形態を示す断面模式図である。
【図5】本発明磁気カードの一実施形態を示す断面模式図である。
【図6】本発明磁気カードの一実施形態を示す断面模式図である。
【図7】本発明磁気カードの製造方法の一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態として示した磁気カード1の斜視図であり、同図(b)は、(a)の本発明の実施形態の破線Sでの断面を示した模式図である。図1では、カード基材2の一方の面にストライプ状の磁気記録媒体層3を配置した構成である。磁気記録媒体層3の配置構成については、図1の構成に限定されるものではない。両面に配置してもよく、一面に複数の磁気記録媒体層3を配置してもよい。また磁気記録媒体層3以外の構成をカード基材に加えても良い。例えば後述するようにICチップをカード基材に埋設したIC兼磁気カードとしても良い。本発明の磁気カード1は、例えばJIS X 6301:2005、ISO/IEC7810で規定されるID−1カード等の磁気記録層を有する媒体として用いることができる。
【0012】
本発明の実施の形態に係るカード基材2は、少なくとも磁気記録媒体層3の配置面が、多孔質基材からなる。また、多孔質基材の意匠性を生かすために、カード基材の磁気記録媒体層3配置面の磁気記録媒体層3を配置する多孔質基材表面の領域(磁気記録媒体層配置領域)以外の全てあるいは一部の領域において、多孔質基材の凹凸面が露出している。ここで多孔質基材とは、紙基材等の繊維性材料や微小な空隙を有する多孔性材料を含むことで、表面に凹凸を有する基材である。このような多孔質基材としては、例えばteslin(登録商標:PPGインダストリーズ製)やユポ(登録商標:ユポ・コーポレーション製)等のポリオレフィン系多孔質基材やその他発泡プラスチックフィルムや生分解が可能な紙基材やポリ乳酸などの生分解製樹脂からなる多孔質基材が挙げられる。紙基材としては木材パルプ、木綿パルプ等の天然繊維からなるものを用いることができる。磁気記録媒体層配置領域には平坦化層5が設けられ、平坦化層5上に磁気記録媒体層3が形成されている。
【0013】
カード基材2の構成としては、図2(a)のように剛性の高いコア基材2aの片面又は両面に外装基材2bとして多孔質基材を張り合わせたものや、図2(b)のように剛性の高い多孔質基材の単一基材2cからなるものが挙げられる。カード基材2の諸特性は、JIS X 6301:2005(ISO/IEC 7810:2003対応)等の規格を満たすものであれば特に制限はない。また、カード基材2表面にザグリ加工を施して外部端子付ICモジュールを埋設し、接触式IC兼磁気カードとしてもよい。あるいは、コア基材2aと外装基材2bからなる構成の場合には、非接触型のICインレットを有するコア基材を用いて非接触IC兼磁気カードとしてもよい。
【0014】
カード基材2の材料のうち、少なくともコア基材2aあるいは単一基材2cの材料としては剛性の高い材料を用いることが望ましい。その例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の一般的な樹脂材料、ポリ乳酸などの生分解性樹脂や、剛性を有するように加工された紙基材を用いることができる。外装基材2bとしては、例えばteslin(登録商標:PPGインダストリーズ製)やユポ(登録商標:ユポ・コーポレーション製)等のポリオレフィン系多孔質基材やその他発泡プラスチックフィルムやセルロースなどの生分解性の繊維を主成分とする紙基材やポリ乳酸などの生分解性樹脂からなる多孔質基材が挙げられる。特に生分解性材料のコア基材2aと、多生分解性材料の孔質基材による外装基材2bとでカード基材2を構成すれば、生分解性の材料のみでカード基材を構成することができる。
【0015】
一方、本発明では後述するように所定の平坦化層を設けることで、凹凸を有し、剛性が高い多孔質基材でも、磁気記録媒体層配置領域の研磨等を行わずに、磁気特性を損なうことのなく磁気カード形成できるので、多孔質基材からなる単一基材で構成することで、磁気カードの製造コストを下げることができる。特に、バルカナイズド・ファイバのように剛性の高い生分解性の多孔質基材を用いれば、単一基材2cとしてカード基材2を構成できることから、環境及び製造コストの両面から好ましい。上述のJIS X 6301:2005によれば、カード基材の剛性(静的曲げ強さ)はJIS X 6305-1:2003に規定された試験での荷重によって生じる変形が13mm〜35mmであれば良いので、このような剛性を持つ多孔質基材を採用することで、好適に単一基材でカード基材を構成することができる。
★基材の具体的な構成は、他社の実施の可能性も考慮するといろいろと考えられると思いますので、バリエーションを記載してみました。適宜加除修正願います。
【0016】
磁気カード1表面に露出する多孔質基材面は、平坦化層表面粗さをある程度均一にするためにプレス加工、カレンダー加工を施しても良い。また防水、環境耐性向上のため、カード表面に表面処理や保護層を施してもよい。カード面の意匠として絵柄層を設けても良い。表面処理や絵柄層形成の工程は、平坦化層5の形成前あるいは磁気記録媒体層形成後に行うことができる。ただし多孔質基材の凹凸等の質感を損なわない、言い換えると少なくとも「凹凸面が露出している」範囲とする。具体的には、多孔質基材の表面粗さが最大高さRmaxで50μmあるいは中心線平均粗さRaで10μmよりも大きい状態、特に一般的な紙基材の表面粗さである、Raが10μmより大きく、50μm以下となるよう保持された範囲とすることが好ましい。
【0017】
多孔質基材は、上述のように表面に凹凸を生じるために独特の質感を備えるが、磁気カードを多孔質基材表面に貼着する場合、この凹凸により、磁気記録媒体層2の平滑性が損なわれてしまう。これは、図3に示すように、磁気記録媒体層を多孔質基材上に配置する際に、磁気記録媒体層を多孔質基材に重ねてプレスするため、基材の凹凸の影響を受けてしまうからである。例えば、バルカナイズド・ファイバを単一のカード基材に用いた場合、その剛性高いために、表面をプレスしても表面粗さは、最大高さRmaxで50μm、中心線平均粗さRaで9μmを超えてしまう。このため、多孔質基材上に貼着した磁気記録媒体層の平滑性が低下し、磁気特性が悪化してしまう。これは、特に剛性の高い基材の場合には平坦化することが困難であるために問題となる。
【0018】
そこで本発明では、磁気記録媒体層3を配置する多孔質基材表面の領域(磁気記録媒体層配置領域)に、平坦化層5を設けておくことで、磁気記録媒体層配置面を平坦化し、磁気記録媒体層を平滑な状態で形成することが可能としている。図4の本発明構成例に示すように、平坦化層5は、少なくとも磁気記録媒体層配置領域に対応する多孔質基材表面の領域に形成される。対応する領域は、少なくとも磁気記録媒体層配置領域を覆い、磁気記録媒体層配置領域との面積比で110%以下、より好ましくは105%以下であることが好ましい。また平坦化層表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで5μm以下、最大高さRmaxで10μm以下であることが望ましい。
【0019】
平坦化層5は、単層でも良く、後述のように多層積層しても良い。平坦化層5は、アクリル系、ポリエステル系等の各種樹脂材等、磁気記録媒体層の磁気特性を阻害しない材料であれば良く、公知一般のパターン形成方法により形成することができる。中でも多孔質基材に接して設けられる層については、液状の形成材料を磁気記録媒体層配置領域に塗布し、これを硬化させて形成することが好ましい。例えば、光や熱で硬化する硬化性樹脂を液状の形成材料(インキ)としてスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷法によりパターン印刷する。インキのレベリング作用により、多孔質基材の凹凸に影響されずに表面が平滑化された平坦化層を形成することができる。また多孔質基材上に印刷するため、多孔質基材の平坦化層との界面において、平坦化層の一部が多孔質基材に含浸させることができる。本発明における含浸とは、液状の材料(平坦化層材料)により繊維間や微小孔を充填していることを意味している。ただし多孔質基材の表面から平坦化層が浸透した領域において繊維間や微小孔が充填されていれば良い。これにより繊維間や微小孔が平坦化層材料で埋められるので、繊維や微小孔に起因する凹凸が抑制され、かつ密着性の良い平坦化層が形成できる。このように、本発明の磁気カードは、平坦化層によってカード基材表面の凹凸が緩和されている。これは特に磁気記録媒体層を圧着して設ける場合に効果的である。一般的に接着層のみを介して凹凸面に貼着した場合と異なり、予め多孔質基材の凹凸を平滑化するように凹凸を充填しつつ硬化させているため、加圧しても磁気記録媒体層にカード基材表面の凹凸の影響を与えることがない。
【0020】
上述のように塗布された硬化性樹脂インキは多孔質基材に含浸していくため、インキが全て含浸しきってしまうと、逆に凹凸が露出してしまうおそれがある。このため硬化性樹脂層6の一部は含浸させずに多孔質基材上に嵩高に盛られ、レベリングされた状態で硬化させることが望ましい。言い換えると、硬化性樹脂層は、多孔質基材側で含浸し、反対側では多孔質基材の表面が平坦となるように凹凸を被覆している。このため、特に硬化速度の速い紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい。硬化性樹脂層6の硬化後の平均膜厚は、少なくとも多孔質基材の中心線平均粗さRaよりも大きいことが好ましい。Raよりも小さいと凹凸が露出してしまう。しかし膜厚が大きいとカード基材上で磁気記録媒体層3がカード基材上に突出して使用時に磁気記録媒体層を損傷するおそれがある。硬化性樹脂層6の形成方法としては、塗布膜厚や多孔質基材への印刷特性の点から、スクリーン印刷法を用いて1回、又は重ね刷りで印刷することが好ましい。
【0021】
さらに、図5の本発明構成例に示すように、平坦化層5を多孔質基材に接して設けられた硬化樹脂層6と、硬化樹脂層6上の中間層7からなる構成としても良い。中間層7は、硬化樹脂層6上に別の層として形成するので、硬化性樹脂以外の材料を選択することも可能である。例えば溶剤に溶解させたアクリル系樹脂、ビニル系樹脂等の各種樹脂材料のインキでスクリーン印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷法によりパターン形成することができる。磁気記録媒体層3との密着性が良いものを中間層として選択することで、磁気記録媒体層3の平坦化層への密着性を向上させることができる。中間層7の膜厚としては1〜5μm程度が好ましい。
【0022】
磁気記録媒体層3は、γ型酸化鉄(III),二酸化クロム,コバルト添加の酸化鉄等の磁性体材料を用いた記録媒体であり、磁気カードにおける情報の読み取り・書き取り領域である。磁気記録媒体層3の構成としては、PETフィルム等の保護フィルム上に磁気記録材料を塗布して磁性体薄膜を形成し、当該磁性体薄膜からなる記録層の両面を保護フィルムで挟んでテープ状としたものが挙げられる。
【0023】
図6は、磁気記録媒体層3を平坦化層上に形成する工程における、テープ状の磁気記録媒体層3の長尺方向と平行な断面での模式図である。図6に示すように、上述のテープ状の磁気記録媒体を、接着層3’有する接着面を接触させ、加熱圧着により平坦化層上に貼着することができる。加熱圧着あるいは磁気記録媒体層3形成後のプレスにより、図7の本発明の磁気カード断面模式図が示すように、磁気記録媒体層3部分の膜厚を圧縮して磁気記録媒体層3と多孔質基材表面の段差を緩和することができる。しかし形成方法としてはこれに限られるものではなく、例えば磁性体材料の塗布又は蒸着により形成しても良い。カード基材上に設けられた磁気記録媒体層3の磁気特性がJIS X 6305-2:2010(ISO/IEC 10373-2:2006対応)等に定められる特性を満たすことが好ましい。
【0024】
なお磁気記録媒体層3を加圧してカード基材の平坦化層上に貼り合わせる場合には、圧着時の加圧により平坦化層にクラックを生じさせないように平坦化層にある程度の柔軟性を有する材料を選択することが好ましい。
【0025】
カード基材3はその片面あるいは両面に絵柄層を形成してもよい。絵柄層は前述したように凹凸表面を露出させた状態を保持する膜厚とするか、あるいは凹凸面露出領域と、絵柄層領域のそれぞれがカード基材表面に現れるように印刷形成してもよい。絵柄印刷層はオフセット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等を用いて形成することができる。インキはUV硬化性インキ、油性インキ、水性インキ等を用いることができるがこれに限られるものではない。
【0026】
本発明では、磁気記録層を配置したカード基材シートを作成し、打ち抜き加工により個々のカードサイズに個片化してもよいし、予め個片化したカード基材を用いて積層してもよい。個片化の方法としては雄雌型のパンチや刃などにより切り出す方法を用いることができる。
【実施例】
【0027】
<実施例1>
以下、本発明の具体的な実施例を示す。なお、表面粗さの測定はJIS B0601:2001に基づくものとする。表面粗さの範囲は、10点測定したうちの最大値最小値を示す。
まずカード基材2として、生分解性の多孔質単一基材として厚み0.8mmのバルカナイズド・ファイバ基材(北越製紙製)を用い、このバルカナイズド・ファイバ基材をプレスしてバルカナイズド・ファイバ表面の凹凸を緩和した。プレス前のカード基材2の表面粗さRmaxが70〜76μmに対してプレス後のカード基材2の表面粗さRmaxは56〜59μmであった。
【0028】
次に、磁気記録媒体層3を配置する領域に、ポリエステル系UV硬化型樹脂塗液をスクリーン印刷法により硬化後の膜厚が約20μmとなるようにパターン印刷し、紫外線を照射して硬化し、硬化樹脂層6とした。
【0029】
次に、磁気記録層として厚さ20μmの接着層を有する磁気ストライプ(トッパン・TDKレーベル社製)を用いて、加熱温度120℃、プレス圧力2.0N/mm2で硬化樹脂層6上に加熱圧着した。
【0030】
以上の工程で作製した磁気カード1の磁気記録媒体層3表面の表面粗さを測定したところ、Raが0.3μm、Rmaxが2〜6μmであった。この磁気カードはISO/IEC 10373-2:2006の磁気特性を満たすものであった。
【0031】
<実施例2>
まずカード基材2として、生分解性の多孔質単一基材として厚み0.8mmのバルカナイズド・ファイバ基材(北越製紙製)を用い、このバルカナイズド・ファイバ基材をプレスしてバルカナイズド・ファイバ表面の凹凸を緩和した。プレス前のカード基材2の表面粗さRmaxが70〜76μmに対してプレス後のカード基材2の表面粗さRmaxは56〜59μmであった。
【0032】
次に、磁気記録媒体層3を配置する領域に、ポリエステル系UV硬化型樹脂塗液をスクリーン印刷法により硬化後の膜厚が約20μmとなるようにパターン印刷し、紫外線を照射して硬化し、硬化樹脂層6とした。さらに硬化樹脂層6上に、溶剤型アクリル系塗布液をスクリーン印刷法により約2μmとなるようにパターン印刷し、加熱乾燥により硬化させて、中間層7とした。
【0033】
次に、磁気記録層として厚さ20μmの接着層を有する磁気ストライプ(トッパン・TDKレーベル社製)を用いて、加熱温度120℃、プレス圧力2.0N/mm2で硬化樹脂層6上に加熱圧着した。
【0034】
以上の工程で作製した磁気カード1の磁気記録媒体層3表面の表面粗さを測定したところ、Raが0.3μm、Rmaxが2〜6μmであった。この磁気カードはISO/IEC 10373-2:2006の磁気特性を満たすものであった。
【0035】
<比較例>
比較例として、硬化樹脂層6を設けずにバルカナイズド・ファイバ基材上に直接磁気記録媒体層を貼着した以外は同じ工程で磁気カードを作製した。作製した磁気カードの磁気記録媒体層表面の表面粗さを測定したところ、Raが2.8μm、Rmaxが35〜59μmであった。この磁気カードはISO/IEC 10373-2:2006の磁気特性を満たさなかった。
【符号の説明】
【0036】
1・・・磁気カード
2・・・カード基材
2a・コア基材
2b・外装基材
2c・単一基材
3・・・磁気記録媒体層
3’・・接着層
5・・・平坦化層
6・・硬化樹脂層
7・・中間層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードであって、
カード基材は、少なくとも磁気記録媒体層配置面に多孔質基材が用いられており、
磁気記録媒体層と多孔質基材との間に、多孔質基材表面の磁気記録媒体層配置領域を覆い、該多孔質基材に一部が含浸した平坦化層が積層され、
磁気記録媒体層配置面の少なくとも一部の領域において多孔質基材の凹凸が露出していることを特徴とする磁気カード。
【請求項2】
前記平坦化層は、硬化性樹脂層を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気カード。
【請求項3】
前記硬化性樹脂層に、紫外線硬化性樹脂を用いたことを特徴とする請求項2に記載の磁気カード。
【請求項4】
前記平坦化層は、多孔質基材との界面に形成された前記硬化性樹脂層と、該硬化性樹脂層と磁気記録媒体層との間に設けられた中間層からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁気カード。
【請求項5】
前記カード基材が、多孔質基材からなる単一基材であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気カード。
【請求項6】
前記多孔質基材表面の平坦化層を形成していない領域の算術平均粗さRaが10μmより大きく、50μm以下であり、平坦化層上の算術平均粗さRaが5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気カード。
【請求項7】
カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードの製造方法であって、
少なくとも1面が多孔質基材であるカード基材の多孔質基材面に硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程と、
硬化性樹脂パターンを硬化させる工程と、
磁気記録媒体層を硬化性樹脂パターン上に貼着する工程と、
を有する磁気カードの製造方法。
【請求項8】
前記硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程に、スクリーン印刷を用いることを特徴とする請求項7又は8に記載の磁気カードの製造方法。
【請求項9】
前記硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程後、前記磁気記録媒体層を貼着する工程の前に、中間層を形成する工程を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の磁気カードの製造方法。
【請求項1】
カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードであって、
カード基材は、少なくとも磁気記録媒体層配置面に多孔質基材が用いられており、
磁気記録媒体層と多孔質基材との間に、多孔質基材表面の磁気記録媒体層配置領域を覆い、該多孔質基材に一部が含浸した平坦化層が積層され、
磁気記録媒体層配置面の少なくとも一部の領域において多孔質基材の凹凸が露出していることを特徴とする磁気カード。
【請求項2】
前記平坦化層は、硬化性樹脂層を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気カード。
【請求項3】
前記硬化性樹脂層に、紫外線硬化性樹脂を用いたことを特徴とする請求項2に記載の磁気カード。
【請求項4】
前記平坦化層は、多孔質基材との界面に形成された前記硬化性樹脂層と、該硬化性樹脂層と磁気記録媒体層との間に設けられた中間層からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の磁気カード。
【請求項5】
前記カード基材が、多孔質基材からなる単一基材であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気カード。
【請求項6】
前記多孔質基材表面の平坦化層を形成していない領域の算術平均粗さRaが10μmより大きく、50μm以下であり、平坦化層上の算術平均粗さRaが5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気カード。
【請求項7】
カード基材に磁気記録媒体層を配置した磁気カードの製造方法であって、
少なくとも1面が多孔質基材であるカード基材の多孔質基材面に硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程と、
硬化性樹脂パターンを硬化させる工程と、
磁気記録媒体層を硬化性樹脂パターン上に貼着する工程と、
を有する磁気カードの製造方法。
【請求項8】
前記硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程に、スクリーン印刷を用いることを特徴とする請求項7又は8に記載の磁気カードの製造方法。
【請求項9】
前記硬化性樹脂パターンを塗布形成する工程後、前記磁気記録媒体層を貼着する工程の前に、中間層を形成する工程を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の磁気カードの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−48769(P2012−48769A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186995(P2010−186995)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]