説明

磁気ギアおよびその製造方法

【課題】この発明は、周方向に隣り合う固定子磁極片間に径方向に貫通する通風路を形成し、第1回転子および第2回転子での発熱を外気により効果的に冷却できる磁気ギアおよびその製造方法を得る。
【解決手段】第1回転軸2に固着され、多極の起磁力を持つ第1回転子4と、第1回転軸2と同軸の第2回転軸3に固着されて第1回転子4と軸方向に並んで配設され、多極の起磁力を持つ第2回転子7と、軸方向に並んで配設された第1回転子4および第2回転子7を囲繞するように配設される固定子12と、を備えている。固定子12は、軸方向に並んで配設された第1回転子4および第2回転子7の軸方向両側に配設される一対の磁極片支持板13と、それぞれ、一対の磁極片支持板13間に渡され、周方向に所定の隙間を確保して周方向に所定のピッチで配列され、両端側を該一対の磁極片支持板13に固定された複数の固定子磁極片22と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば風力などによるブレードが受ける回転トルクを増速して発電機に伝達する際に用いられる磁気ギアおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、起磁力を変調する固定子を高速回転子と低速回転子との間に設け、外部からの回転トルクを非接触で伝達して、回転速度を変えることができる磁気ギアが、多く提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、異なる極対数の永久磁石対を有し、同軸に配される一対の回転軸のそれぞれに固定されて、軸方向に並んで配列された高速回転子および低速回転子と、強磁性磁極片が周方向に均一に配列され、非磁性シェル内に挿入されてエアギャップを介して高速回転子と低速回転子を囲繞するように配設された固定子と、を有する、いわゆるタンデム型の従来の磁気ギアが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Li Yong, Xing Jingwei, Peng Kerong and Lu Yongping; "Principle and Simulation Analysis of a Novel Structure Magnetic Gear", Electrical Machine and Systems, 2008. ICEMS 2008. International Conference on Publication (2008), p. 3845-3849
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の磁気ギアの固定子は、非磁性材料で作製され、内周側に開口するスロットが等角ピッチに配設された円筒状の磁極片支持部材と、各スロットに収納、保持された磁極片と、から構成されている。そこで、高速回転子および低速回転子の外周側が磁極片支持部材およびシェルに覆われ、高速回転子および低速回転子での発熱を外気により効果的に冷却できないという課題があった。
【0006】
また、従来の磁気ギアは、高速回転子および低速回転子のヨークの外周面に固着された磁石部材を着磁した後、高速回転子および低速回転子を固定子内に挿入して組み立てられる。そこで、高速回転子および低速回転子を固定子内に挿入する際に、磁気吸引力が永久磁石と磁極片との間に発生するので、永久磁石が磁極片に接触し、永久磁石の割れや欠けが発生し、歩留まりが低下するとともに、組み立て作業性が低下するという課題もあった。上述の磁気吸引力の影響を緩和するために、エアギャップを広くすることも考えられるが、トルクが低減し、特性が悪化するという新たな問題が発生する。
【0007】
この発明の第1の目的は、周方向に隣り合う固定子磁極片間に径方向に貫通する通風路を形成し、第1回転子および第2回転子での発熱を外気により効果的に冷却できる磁気ギアを得ることである。
また、この発明の第2の目的は、軸方向に並んで配設された第1回転子および第2回転子の軸方向両側に一対の磁極片支持板を配し、固定子磁極片を外径側から所定のエアギャップを有するように一対の磁極片支持板間に渡して、固定子磁極片の両端を一対の磁極片支持板に固定するようにして、磁気吸引力に起因する永久磁石の割れや欠けの発生による歩留まりの低下を抑えることができるとともに、組み立て作業性の低下を抑えることができる磁気ギアの製造方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る磁気ギアは、第1回転軸に固着され、多極の起磁力を持つ第1回転子と、上記第1回転軸と同軸の第2回転軸に固着されて上記第1回転子と軸方向に並んで配設され、多極の起磁力を持つ第2回転子と、軸方向に並んで配設された上記第1回転子および上記第2回転子を囲繞するように配設される固定子と、を備えている。上記固定子は、軸方向に並んで配設された上記第1回転子および上記第2回転子の軸方向両側に配設される一対の磁極片支持板と、それぞれ、上記一対の磁極片支持板間に渡され、周方向に所定の隙間を確保して周方向に所定のピッチで配列され、両端側を該一対の磁極片支持板に固定された複数の固定子磁極片と、から構成されている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、複数の固定子磁極片が、一対の磁極片支持板間に渡され、周方向に所定の隙間を確保して周方向に所定のピッチで配列され、両端側を一対の磁極片支持板に固定されている。そこで、外気を固定子磁極片間の隙間から軸方向に並んで配設された第1回転子および第2回転子に供給し、第1回転子および第2回転子での発熱を効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアの構成を模式的に示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアを示す分解斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の支持構造を説明する斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の取り付け方法を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る磁気ギアの構成を模式的に示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る磁気ギアを示す分解斜視図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の支持構造を説明する斜視図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る磁気ギアを示す分解斜視図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る磁気ギアに適用される第1回転子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の磁気ギアの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアの構成を模式的に示す断面図、図2はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアを示す分解斜視図、図3はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の支持構造を説明する斜視図、図4はこの発明の実施の形態1に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の取り付け方法を説明する図である。
【0013】
図1乃至図3において、磁気ギア1は、第1回転軸2に固着された第1回転子4と、第1回転軸2と同軸の第2回転軸3に固着され、第1回転子4と軸方向に並んで配設される第2回転子7と、軸方向に並設された第1回転子4と第2回転子7との外周側に所定のエアギャップを有するように配設された固定子12と、を備えたタンデム型の磁気ギアである。
【0014】
第1回転軸2は、円柱状の第1ボス部2aと、第1ボス部2aの一端に同軸に一体成形された円筒状の軸受収納部2bと、第1ボス部2aの他端に同軸に一体成形された円柱状の第1軸部2cと、を備えている。第2回転軸3は、円柱状の第2ボス部3aと、第2ボス部3aの他端に同軸に一体成形された円柱状の第2軸部3bと、を備えている。
【0015】
第1回転子4は、第1軸挿通穴5aが軸心位置に形成された円環状の第1ヨーク部5と、それぞれ第1ヨーク部5の外周面に固着されて等角ピッチで配列された第1永久磁石6と、を備えている。周方向に配列された第1永久磁石6は、その外周面の極性がN極とS極とが交互になるように着磁配向される。ここでは、4極対の第1永久磁石6が第1ヨーク部5の外周面に周方向に等角ピッチに配列されている。この第1回転子4は、第1軸挿通穴5aに圧入された第1ボス部2aに固着されて高速回転子として動作する。
【0016】
第2回転子7は、第2軸挿通穴8aが軸心位置に形成された円環状の第2ヨーク部8と、それぞれ第2ヨーク部8の外周面に固着されて等角ピッチで配列された第2永久磁石9と、を備えている。周方向に配列された第2永久磁石9は、その外周面の極性がN極とS極とが交互になるように着磁配向される。ここでは、45極対の永久磁石9が第2ヨーク部8の外周面に周方向に等角ピッチに配列されている。この第2回転子7は、第2軸挿通穴8aに圧入された第2ボス部3aに固着されて低速回転子として動作する。
【0017】
固定子12は、例えば、それぞれアルミニウム、ステンレスなどの非磁性材料を用いて円板状に作製され、軸方向に所定距離離れて同軸に配設される一対の磁極片支持板13と、例えば、それぞれ電磁鋼板などの磁性薄板を積層して直方体に作製され、長さ方向を軸方向に揃えて一対の磁極片支持板13間に渡され、その両端側を一対の磁極片支持板13に保持されて、同心円上に等角ピッチで配列された49本の固定子磁極片22と、を備えている。
【0018】
磁極片支持板13の外周面には、固定子磁極片22の断面形状に略等しい長方形断面の溝形状を有する磁極片収納溝14が、それぞれ外径側に開口して、等角ピッチで周方向に49個形成されている。そして、ねじ穴15が、磁極片支持板13の各磁極片収納溝14の周方向両側に、径方向に離間して2個ずつ形成されている。磁極片取付板16は、穴形状を固定子磁極片22の断面形状に略等しい長方形とする磁極片挿通穴17を有する長方形の枠状に作製され、細長穴18が、磁極片挿通穴17の短辺方向の両側に、長辺方向に離間して、穴の長軸方向を長辺方向として、2個ずつ形成されている。さらに、第2軸受20が磁極片支持板13の軸心位置に形成された軸受保持穴19に圧入保持されている。なお、磁極片収納溝14の底面の内接円の直径は、第1および第2回転子4,7の外径より僅かに大径となっている。
【0019】
そして、第1回転子4が、第1回転軸2の第1軸部2cを一方の磁極片支持板13の軸受保持穴19内に保持された第2軸受20内に圧入して、一方の磁極片支持板13に回転可能に支持されている。同様に、第2回転子7が、第2回転軸3の第2軸部3bを他方の磁極片支持板13の軸受保持穴19内に保持された第2軸受20内に圧入して、他方の磁極片支持板13に回転可能に支持されている。そして、一対の磁極片支持板13が、同軸に、かつ軸方向に離間して配設され、第1回転子4および第2回転子7が、同軸に、かつ軸方向に並んで、互いに回転可能に配設される。さらに、第2ボス部3aの一端側が軸受収納部2bに第1軸受10を介して回転可能に連結され、軸方向に並設される第1回転子4および第2回転子7の組立体の剛性を高めている。
【0020】
固定子磁極片22は、その両端側を磁極片収納溝14内に挿入されて一対の磁極片支持板13間に渡されている。そして、磁極片取付板16が磁極片挿通穴17内に固定子磁極片22を挿入して磁極片支持板13から延出する固定子磁極片22の両端部に装着されている。さらに、締着部材としての取付ボルト23を細長穴18に差し込んでねじ穴15に締着し、固定子磁極片22の両端が一対の磁極片支持板13に固定されている。このとき、取付ボルト23を締着するに先立って、磁極片取付板13を細長穴18の長軸方向に移動させ、固定子磁極片22と第1回転子4および第2回転子7の間のエアギャップが調整される。
【0021】
つぎに、このように構成された磁気ギア1を組み立てるには、まず、未着時の第1永久磁石6を第1ヨーク部5の外周面に等角ピッチに配設して固着し、第1ボス部2aを第1ヨーク部5の軸心位置に形成された第1軸挿通穴5aに圧入した後、第1永久磁石6を着磁して、第1回転子4を作製する。同様に、未着時の第2永久磁石9を第2ヨーク部8の外周面に等角ピッチに配設して固着し、第2ボス部3aを第2ヨーク部8の軸心位置に形成された第2軸挿通穴8aに圧入した後、第2永久磁石9を着磁して、第2回転子7を作製する。
【0022】
ついで、1つの磁極片支持板13の軸心位置に形成された軸受保持穴19内に第2軸受20を圧入し、第1軸部2cを第2軸受20に圧入して、第1回転子4を磁極片支持板13に組み付ける。同様に、もう1つの磁極片支持板13の軸心位置に形成された軸受保持穴19内に第2軸受20を圧入し、第2軸部3bを第2軸受20に圧入して、第2回転子7を磁極片支持板13に組み付ける。
【0023】
ついで、第1回転軸2の軸受収納部2b内に第1軸受10を圧入し、第2回転軸3の第2ボス部3aを第1軸受10に圧入して、第1回転軸2と第2回転軸3とを互いに回転可能に連結する。これにより、第1回転子4および第2回転子7が、同軸に、かつ軸方向に並んで、第1回転軸2および第2回転軸3を介して一対の磁極片支持板13に回転可能に支持される。
【0024】
ついで、磁極片収納溝14が軸方向に相対するように一対の磁極片支持板13を位置決めする。そして、図4に示されるように、磁極片取付板16を固定子磁極片22の両端部に装着し、固定子磁極片22を第1回転子4および第2回転子7の外径側から相対する磁極片収納溝14の各対に収納する。ついで、取付ボルト23を細長穴18に差し込んでねじ穴15に締着し、固定子磁極片22の両端を一対の磁極片支持板13に固定し、磁気ギア1が組み立てられる。このとき、取付ボルト23の締着に先立って、磁極片取付板13を細長穴18の長軸方向に移動させ、固定子磁極片22の径方向位置、すなわち固定子磁極片22と第1回転子4および第2回転子7との間のエアギャップの調整が行われる。
【0025】
このように構成された磁気ギア1は、例えば風力などによるブレード(図示せず)が受ける回転トルクが第2軸部3bに伝達され、第2回転子7が回転駆動される。そして、第2回転子7の第2永久磁石9が発生する多極の起磁力が、第2回転子7の外周側にエアギャップを介して周方向に配列された固定子磁極片22により第1回転子4の極成分を同じくする起磁力に変換される。これにより、固定子磁極片22の内周側にエアギャップを介して配設された第1回転子4が回転駆動される。
【0026】
ここで、この種の磁気ギアにおいては、第1回転子4の極対数をN、第2回転子7の極対数をNとしたとき、固定子磁極片22の数Nが式(1)を満たしていれば、第1回転子4の速度は第2回転子7の速度のN/N倍となる。
=N±N・・・式(1)
なお、式(1)において、+は第1回転子4と第2回転子7の回転方向が逆方向の場合であり、−は第1回転子4と第2回転子7の回転方向が同方向の場合である。
【0027】
この磁気ギア1では、第1回転子4が4極対であり、第2回転子7が45極対であり、固定子磁極片22の数が49個(=45+4)であるので、式(1)を満たし、第1回転子4は11.25(=45/4)倍に増速されて、第2回転子7と逆の回転方向に回転駆動される。
【0028】
この実施の形態1によれば、固定子磁極片22が、同軸に軸方向に並設された第1回転子4および第2回転子7の軸方向両側に配設された一対の磁極片支持板13間に架設されて、第1回転子4および第2回転子7の外周側に周方向に所定のピッチで配列されているので、周方向に隣り合う固定子磁極片22間に隙間が確保される。そこで、固定子磁極片22間の隙間を介して外気を第1回転子4および第2回転子7に供給できるので、第1回転子4および第2回転子7を外気により効果的に冷却できる。これにより、第1永久磁石6および第2永久磁石9の減磁を誘発する第1回転子4および第2回転子7の過度の温度上昇が抑えられるので、第1永久磁石6および第2永久磁石9の減磁による特性劣化が抑えられ、トルクを向上させることができる。
【0029】
また、同軸に軸方向に並設された第1回転子4および第2回転子7の軸方向両側に一対の磁極片支持板13を配設し、固定子磁極片22を第1回転子4および第2回転子7の外径側から一対の磁極片支持板13間に架設している。そこで、固定子磁極片22は、第1永久磁石6および第2永久磁石9の磁気吸引力により第1永久磁石6および第2永久磁石9側に引き寄せられ、その両端側が一対の磁極片支持板13に当接して、第1永久磁石6および第2永久磁石9側へのそれ以上の接近が阻止される。したがって、磁気ギア1の組み立て時に、固定子磁極片22が第1永久磁石6および第2永久磁石9に当たることに起因する第1永久磁石6および第2永久磁石9の損傷の発生をなくすことができ、歩留まりを高めることができる。さらに、磁気吸引力の影響を受けながら第1回転子4および第2回転子7を固定子12内に挿入するという煩雑な工程がなくなるので、磁気ギア1の組み立て作業性を大幅に向上させることができる。
【0030】
底面が第1回転子4および第2回転子7の外周面より外径側に位置する磁極片収納溝14を磁極片支持板13の外周に形成し、固定子磁極片22の端部側を収納するようにしているので、固定子磁極片22の架設時に、固定子磁極片22の端部側が磁極片収納溝14に収納され、固定子磁極片22と第1および第2永久磁石4,7との衝突が確実に回避され、歩留まりを一層高めることができる。
【0031】
穴の長軸方向を長辺方向とする細長穴18が磁極板取付板16に形成され、磁極片支持板13に対する磁極板取付板16の径方向位置が調整可能になっているので、各固定子磁極片22と第1回転子4および第2回転子7との間のエアギャップを高精度に調整できる。そこで、エアギャップの周方向における均一性を確保できるので、固定子磁極片22と第1回転子4および第2回転子7との間に発生する磁気吸引力が周方向に関して均一となる。これにより、偏荷重が第1回転子4および第2回転子7に作用することがなく、磁気ギア1の機械的信頼性が高められる。また、磁極片収納溝14の加工精度を高める必要がなく、磁極片支持板13のコストを低減できる。さらに、エアギャップを過度に広げる必要がなく、トルクの低減が抑えられる。
【0032】
なお、上記実施の形態1では、磁極片取付板を細長穴の長軸方向に移動させて、固定子磁極片と第1回転子および第2回転子との間のエアギャップの調整を行うものとしているが、磁極片収納溝の底面の内接円の直径を高精度に加工すれば、エアギャップの調整作業を省略できる。
【0033】
また、上記実施の形態1では、未着時の第1永久磁石および第2永久磁石を第1ヨーク部および第2ヨーク部の外周面に等角ピッチに配設して固着し、第1回転軸および第2回転軸を第1ヨーク部および第2ヨーク部に組み付けた後、第1永久磁石および第2永久磁石を着磁して、第1回転子および第2回転子を作製するものとしているが、第1永久磁石および第2永久磁石の着磁方法はこれに限定されるものではなく、例えば第1回転子および第2回転子を第1回転軸および第2回転軸を介して一対の磁極片支持板に回転可能に組み付けた後、第1永久磁石および第2永久磁石を着磁してもよい。
【0034】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る磁気ギアの構成を模式的に示す断面図、図6はこの発明の実施の形態2に係る磁気ギアを示す分解斜視図、図7はこの発明の実施の形態2に係る磁気ギアにおける固定子磁極片の支持構造を説明する斜視図である。
【0035】
図5乃至図7において、磁極片支持板13Aは、各磁極片収納溝14の径方向内側から軸方向に延設された架台24と、軸方向を径方向として架台24に回転可能に装着されたエアギャップ調整ボルト25と、を備える。磁極片取付板16Aは、長方形枠状の一方の短辺側から磁極片挿通穴17の断面と直交する方向に延設された支持腕26と、穴方向を細長穴18の長軸方向として支持腕26に形成されたねじ穴27と、を備える。そして、磁極片取付板16Aが、磁極片挿通穴17内に磁極片支持板13Aから延出する固定子磁極片22の端部に装着され、エアギャップ調整ボルト25が支持腕26に形成されたねじ穴27に螺着されている。さらに、取付ボルト23が細長穴18に差し込まれてねじ穴15に締着され、固定子磁極片22の両端が一対の磁極片支持板13Aに固定されている。ここで、架台24、エアギャップ調整ボルト25、支持腕26、ねじ穴27がエアギャップ調整手段を構成している。
なお、他の構成は、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0036】
このように構成された磁気ギア1Aは、架台24に回転可能に装着されたエアギャップ調整ボルト25が、磁極片支持板13Aから延出する固定子磁極片22の端部に装着された磁極片取付板16Aの支持腕26に形成されたねじ穴27に螺着されている。そこで、取付ボルト23の締着に先だって、エアギャップ調整ボルト25を回すことで、磁極片支持板13Aを径方向に移動させることができる。これにより、固定子磁極片22と第1回転子4および第2回転子7との間のエアギャップを高精度に調整できるので、エアギャップの周方向における均一性をより高めることができる。さらに、エアギャップをより小さくすることができ、トルクを増大することができる。
【0037】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係る磁気ギアを示す分解斜視図、図9はこの発明の実施の形態3に係る磁気ギアに適用される第1回転子を示す斜視図である。
【0038】
図8および図9において、第1回転子30は、例えば、電磁鋼板などの磁性薄板を積層して作製され、径方向に延在する突極32が周方向に等角ピッチで8つ配設され、軸挿通穴33が軸心位置に形成された第1ヨーク部31と、それぞれ導体線を突極32に巻回して作製された集中巻コイル35からなる界磁巻線34と、を備えている。つまり、第1回転子30は、界磁巻線34により界磁する界磁突極型回転子である。
なお、この実施の形態3では、第1永久磁石6により界磁する第1回転子4に代えて界磁巻線34により界磁する第1回転子30を用いている点を除いて、上記実施の形態1と同様に構成されている。
【0039】
このように構成された磁気ギア1Bでは、隣り合う集中巻コイル35に逆向きの界磁電流を通電することにより、N極とS極とが周方向に交互に配列された4極対の界磁磁極が形成されるので、第1回転子30は、上述の第1回転子4と同様に動作する。また、この磁気ギア1Bは、上記実施の形態1による磁気ギア1と同様に組み立てられる。
【0040】
この磁気ギア1Bにおいても、周方向に隣り合う固定子磁極片22間に隙間が確保されているので、固定子磁極片22間の隙間を介して外気を第1回転子30および第2回転子7に供給でき、第1回転子30および第2回転子7を外気により効果的に冷却できる。これにより、第1回転子30の過度の温度上昇が抑えられるので、界磁巻線34に通電する界磁電流を大きくすることができ、トルクを向上させることができる。また、第2回転子7の過度の温度上昇が抑えられるので、第2永久磁石9の減磁による特性劣化が抑えられ、トルクを向上させることができる。
したがって、この実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0041】
なお、上記実施の形態3では、高速回転子に相当する第1回転子を界磁巻線により界磁する界磁突極型回転子で構成するものとしているが、低速回転子に相当する第2回転子を界磁巻線により界磁する界磁突極型回転子で構成してもよく、高速および低速回転子に相当する第1および第2回転子を界磁巻線により界磁する界磁突極型回転子で構成してもよい。
また、上記各実施の形態では、磁極片支持板を非磁性材料で作製するものとしているが、磁極片支持板の材料は非磁性材料に限定されず、磁性材料でもよい。
また、上記各実施の形態では、第1回転軸を出力軸とし、第2回転軸を入力軸として説明しているが、第1回転軸を入力軸とし、第2回転軸を出力軸としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1,1A,1B 磁気ギア、2 第1回転軸、3 第2回転軸、4 第1回転子、6 第1永久磁石、7 第2回転子、9 第2永久磁石、12 固定子、13,13A 磁極片支持板、14 磁極片収納溝、16,16A 磁極片取付板、18 細長穴、22 固定子磁極片、23 取付ボルト(締着部材)、24 架台(エアギャップ調整手段)、25 エアギャップ調整ボルト(エアギャップ調整手段)、26 支持腕(エアギャップ調整手段)、27 ねじ穴(エアギャップ調整手段)、30 第1回転子、34 界磁巻線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸に固着され、多極の起磁力を持つ第1回転子と、
上記第1回転軸と同軸の第2回転軸に固着されて上記第1回転子と軸方向に並んで配設され、多極の起磁力を持つ第2回転子と、
軸方向に並んで配設された上記第1回転子および上記第2回転子を囲繞するように配設される固定子と、を備え、
上記固定子は、
軸方向に並んで配設された上記第1回転子および上記第2回転子の軸方向両側に配設される一対の磁極片支持板と、
それぞれ、上記一対の磁極片支持板間に渡され、周方向に所定の隙間を確保して周方向に所定のピッチで配列され、両端側を該一対の磁極片支持板に固定された複数の固定子磁極片と、から構成されていることを特徴とする磁気ギア。
【請求項2】
それぞれ、外周側に開口し、かつ底面を上記第1回転子および上記第2回転子の外周面より径方向外方に位置させて、軸方向に相対するように上記一対の磁極片支持板のそれぞれに周方向に上記所定のピッチで形成された磁極片収納溝と、
軸方向に相対する上記磁極片収納溝内に収納された上記固定子磁極片の両端部に装着される磁極片取付板と、
上記磁極片取付板を上記一対の磁極片支持板に締着固定する締着部材と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の磁気ギア。
【請求項3】
上記磁極片取付板は、上記締着部材による締着を緩めたときに、径方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の磁気ギア。
【請求項4】
上記締着部材による締着を緩めたときに、上記磁極片取付板を径方向に移動させるエアギャップ調整手段を備えていることを特徴とする請求項3記載の磁気ギア。
【請求項5】
上記第1回転子および上記第2回転子の少なくとも一方が、永久磁石により界磁する回転子により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の磁気ギア。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気ギアの製造方法であって、
上記第1回転子と上記第2回転子とを同軸に、かつ軸方向に並んで配設し、上記一対の磁極片支持板を軸方向に並んで配設された上記第1回転子および上記第2回転子の軸方向両側に配設する工程と、
上記複数の固定子磁極片のそれぞれを、軸方向に並んで配設された上記第1回転子および上記第2回転子の外径側から上記一対の磁極片支持板間に渡して、該固定子磁極片の両端側を該一対の磁極片支持板に固定する工程と、を備えていることを特徴とする磁気ギアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−59177(P2013−59177A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195219(P2011−195219)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】