説明

磁気シールド装置

【課題】従来の構造上の脆弱性の問題を解決し、移動や衝撃にも耐える構造を有する、軽量で高強度の筒状とされる磁気シールド装置を提供する。
【解決手段】両端が開口した筒状とされる磁気シールド装置1は、基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層2と外側炭素繊維強化複合材層3を備え、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3との間に磁性体にて形成される磁性体層11を固定配置し、磁性体層11は、コイル導体21(21a、21b)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、磁気シェイキングを利用した磁気シールド装置に関し、例えば、磁気計測、生体磁気計測、食品中の異物検出、脳磁界計測、精密物理計測、磁気センサの校正などにおいて好適に利用し得る。又、本発明は、使用開始に先立って交流磁界を流し消磁することによって地磁気に対して大きなシールド効果を有する磁気シールド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、高次元脳機能解明のための脳磁界計測、超電導エレクトロニクス、サブミクロンオーダーの微細加工技術が要求される半導体工場における電子線描画装置などでは、磁気シールドが必須である。
【0003】
磁気シールド性能を向上させる手段として、磁性体にシェイキングと呼ばれる保磁力程度の振幅を持つ交流磁界(即ち、シェイキング磁界)を重畳して印加すると、磁性体の増分透磁率を実効的に高めることができる、所謂、磁気シェイキングがあり、例えば特許文献1には、この磁気シェイキングを利用した磁気シールド法が記載されている。この方法の原理を使用した磁気シールド装置は、直流から商用電力の数次の高調波周波数帯域まで高いシールド性能を持つ。この方法を実施する磁気シールド装置の一例を図13に示す。
【0004】
本例にて、磁気シールド装置100は、図13に示すように、紙、樹脂、FRP材(繊維強化樹脂)などで作製される両端が開口した円筒状の支持体101に角形磁化特性を有する磁性体薄膜を巻き付けて磁性体層102を形成し、この磁性体層102が形成された円筒体の回りにトロイダル状にコイル103を巻回して設け、コイル103には、磁性体層102に、10KHz以下であり、下限値としては特に限定されるものではないが、例えば、商用周波数の50Hz程度以上のシェイキング磁界を与えるためにシェイキング電流が印加される。
【0005】
このような構成の磁気シールド装置100によれば、磁性体層102には、微弱磁界に対しても磁気シェイキングにより高い増分透磁率が付与され、円筒体の径方向の磁界に対して大きなシールド効果が得られ、上述のような、例えば、脳磁界計測などにも有効に使用することができる。
【0006】
また、上記磁気シールド装置100は、両端が開口した円筒形状という、設計、製造が容易な形状とされている。
【0007】
本発明者らも又、軽量高性能磁気シールドの開発を行っているが、Co系の無磁歪組成アモルファス磁性薄帯(Metglas2705M)は、as cast(熱処理なし)で高い角形磁化特性を持ち優れた磁気シェイキング特性を示す材料の1つであることに注目している。
【特許文献1】特公平3−66839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このようなアモルファス磁性薄帯を円筒体の周りに巻き付け、シールド円筒を製作していたが未だ構造上脆弱であった。
【0009】
つまり、その構造は、厚さ20μm程度、幅5cm程度のテープ状の薄帯を円筒体に巻いて構成しなければならず、機械的振動や、移動に対して巻かれた薄帯がずれて性能が劣化する心配があった。
【0010】
更には、円筒体を横に置くとき薄帯の巻かれたところを支えると、薄帯自身は弾性特性を持つが、形状が撓んで性能が低下すると言った問題があった。
【0011】
また、RF帯の高周波電磁雑音に対しては、良導体が高いシールド性能を示すので、導電性材料で円筒状のものを作り、これと組み合わせることが必要であった。
【0012】
そこで、本発明者らは、構造体としてFRP材、即ち、繊維強化樹脂(複合材)、特に、高い導電性を有し、高い周波数において誘導電流によるシールド効果が期待できる炭素繊維強化複合材に着目した。
【0013】
本発明は、斯かる本発明者らの新規な知見に基づきなされたものである。
【0014】
本発明の目的は、従来の構造上の脆弱性の問題を解決し、移動や衝撃にも耐える構造を有する、軽量で高強度の筒状とされる磁気シールド装置を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、筒状形態とされる基体と一体化した構造とされ、構造体が繊維強化複合材、特に、導電性を持つ炭素繊維強化複合材にて形成することによって、同時に導電性の筒状基体を形成することができ、地磁気に対し、また、低周波磁界にも高周波磁界にも優れたシールドを可能とした磁気シールド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は本発明に係る磁気シールド装置にて達成される。要約すれば、本発明によれば、少なくとも一方が開口した筒状とされる磁気シールド装置であって、
基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層を備え、
前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間に磁性体にて形成される少なくとも1層の磁性体層を固定配置し、
前記磁性体層の少なくとも1層の磁性体層は、コイル導体を備えていることを特徴とする磁気シールド装置が提供される。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、前記コイル導体にはシェイキング電流を印加する。このとき、前記磁性体は、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材とされる。
【0018】
本発明の他の実施態様によれば、前記コイル導体には消磁用電流を印加する。このとき、前記磁性体は、低保磁力、高透磁率を有する磁性材である。
【0019】
第2の本発明によれば、少なくとも一方が開口した筒状とされる磁気シールド装置であって、
基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層を備え、
前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間に磁性体にて形成される少なくとも1層の磁性体層を固定配置し、
前記磁性体層の少なくとも1層の磁性体層は、磁気シェイキングすることを特徴とする磁気シールド装置が提供される。
【0020】
第2の本発明の一実施態様によると、前記磁性体層は複数層からなり、前記磁気シェイキングする前記磁性体層と前記内側繊維強化複合材層との間に磁気シェイキングしない磁性体層を配置する。
【0021】
第2の本発明の他の実施態様によると、前記磁気シェイキングしない磁性体層を形成する磁性体は、アモルファス磁性材、パーマロイ系磁性材、又は鉄系微結晶材である。他の実施態様によると、この前記磁気シェイキングしない磁性体層を形成する磁性体は、薄い板状の前記磁性材を螺旋状に巻いた構造及び/又は軸線方向に沿って平行に配置した構造、又は、クロスに編んだ構造とされる。
【0022】
第2の本発明の他の実施態様によると、前記磁気シェイキングしない磁性体層には、消磁コイルを設けることができる。
【0023】
第2の本発明の他の実施態様によると、前記磁気シェイキングする磁性体層を形成する磁性体は、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材である。他の実施態様によると、前記保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材は、角形磁化特性を有したアモルファス磁性材、珪素鋼板材、鉄系微結晶材又はパーマロイ系磁性材である。他の実施態様によると、前記磁気シェイキングする磁性体層を形成する磁性体は、螺旋状に巻いた構造又は軸線方向に沿って平行に配置した構造とされる。
【0024】
第2の本発明の他の実施態様によると、前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間にスペース材を設け、
前記磁気シェイキングする磁性体層は、前記磁性体を前記スペース材の周面に配設することによって形成される。
【0025】
第2の本発明の他の実施態様によると、前記磁気シェイキングする磁性体層は、各磁性体層毎にコイルを設け、磁気シェイキングを受ける。又、他の実施態様によると、前記磁気シェイキングする磁性体層は、隣接した前記磁性体層の磁性体が螺旋状に巻いた構造とされる場合には、共通するコイルにて磁気シェイキングを受ける。
【0026】
第3の本発明によると、少なくとも一方が開口した筒状とされる磁気シールド装置であって、
基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層を備え、
前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間に磁性体にて形成される複数の磁性体層をスペース材にて固定配置し、
前記磁性体層は、前記内側繊維強化複合材層から前記外側繊維強化複合材層へと順に、第1の磁性体層、第2の磁性体層、及び、第3の磁性体層を有し、
前記内側繊維強化複合材層に隣接した前記第1の磁性体層は、磁気シェイキングしない磁性体層であり、前記第2及び第3の磁性体層は、磁気シェイキングする磁性体層であることを特徴とする磁気シールド装置が提供される。
【0027】
第3の本発明の一実施態様によると、前記内側繊維強化複合材層に隣接した前記第1の磁性体層には、消磁用コイルを巻回する。
【0028】
第3の本発明の他の実施態様によると、前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間に第1及び第2スペース材を有し、
前記第1の磁性体層を形成する磁性体は、アモルファス磁性材、パーマロイ系磁性材、又は鉄系微結晶材であり、前記第2及び第3の磁性体層を形成する磁性体は、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材であって、
前記第1及び第2の磁性体層を形成する磁性体は、それぞれ前記第1スペース材の内周面及び外周面を覆うようにして配設し、第3の磁性体層を形成する磁性体は、前記第2スペース材の外周面を覆うようにして配設する。
【0029】
第3の本発明の他の実施態様によると、前記保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材は、角形磁化特性を有したアモルファス磁性材、珪素鋼板材、鉄系微結晶材又はパーマロイ系磁性材である。
【0030】
第3の本発明の他の実施態様によると、前記第2の磁性体層を形成する磁性体は、前記第1スペース材の外周面に軸線方向に少しずつずらして螺旋状にて巻回され、前記第1及び第3磁性体層を形成する磁性体は、前記第1スペース材の内周面及び前記第2スペース材の外周面に軸線方向に沿って平行に配置される。
【0031】
第3の本発明の他の実施態様によると、第1のコイル線材が、前記第1スペース材の外周と、第2スペース材の内周とに配置され、前記第2の磁性体層を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に巻回され、
第2のコイル線材が、前記第2のスペース材の外周と、前記第3の磁性体層の外周とに配置され、前記第3の磁性体層を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に巻回される。
【0032】
第3の本発明の他の実施態様によると、コイル線材が、前記第1スペース材の外周と、前記第3の磁性体層の外周とに配置され、前記第2及び第3の磁性体層を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に巻回される。
【0033】
上記各本発明にて、一実施態様によると、前記繊維強化複合材層は、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸された繊維強化複合材にて形成され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、又は、鋼繊維、チタン繊維などの金属繊維を一種、又は、複数種混入して使用する。このとき、一実施態様によれば、前記強化繊維層の繊維目付は、30〜1500g/mである。
【0034】
上記各本発明にて、他の実施態様によると、前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、又は、フェノール樹脂である。
【0035】
上記各本発明にて、他の実施態様によると、前記スペース材は、ガラス繊維、若しくは、アラミド、PBO、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維を一種、又は、複数種混入して製作された繊維強化複合材、又は、樹脂発泡体若しくはハニカム構造体である。
【0036】
上記各本発明にて、他の実施態様によると、前記内側繊維強化複合材層に隣接した前記第1の磁性体層は、軸線方向一端から距離(L1)の位置にて円周方向全周にわたってスリットが形成されている。他の実施態様によると、前記スリットが形成された距離(L1)は、前記第1の磁性体層の軸線中心からの半径を(d)としたとき、
0.75d≦L1≦d
である。
【0037】
上記各本発明にて、他の実施態様によると、前記第1の磁性体層より半径方向外方に位置した前記第2の磁性体層は、前記第1の磁性体層と同じ軸線方向一端から距離(L2)の位置にて円周方向全周にわたってスリットが形成されている。他の実施態様によると、前記スリットが形成された距離(L2)は、前記第1のスリットの距離(L1)に対して、
(1/2)L1≦L2≦(3/4)L1
である。
【0038】
第4の本発明によると、上記いずれかの構成の磁気シールド装置から選択される複数の磁気シールド装置を互いに嵌着して組み立てられたことを特徴とする磁気シールド装置が提供される。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、従来の構造上の脆弱性の問題を解決し、移動や衝撃にも耐える構造を有する、軽量で高強度の筒状とされる磁気シールド装置を提供することができる。更に、本発明の磁気シールド装置は、例えば円筒状のような筒状形態とされる基体と一体化した構造とされ、繊維強化複合材、特に、特に、構造体が導電性を持つ炭素繊維強化複合材にて形成することによって、同時に導電性の筒状基体を形成することができ、地磁気に対し、又、低周波磁界にも高周波磁界にも優れたシールドを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、少なくとも一方が開口した筒状とされる磁気シールド装置であって、基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層を備えている。また、内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層との間に磁性体にて形成される少なくとも1層の磁性体層が固定配置され、この磁性体層の少なくとも1層の磁性体層には、コイル導体が配設される。
【0041】
本発明の一態様によれば、コイル導体にはシェイキング電流が印加され、又、他の態様によれば、消磁用電流が印加される。
【0042】
コイル導体にシェイキング電流が印加される場合には、磁性体層の磁性体は、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材で形成され、また、コイル導体に消磁用電流が印加される場合には、磁性体層の磁性体は、低保磁力、高透磁率を有する磁性材で形成される。
【0043】
本発明の磁気シールド装置は、磁性体層に常時交流磁界を流すことにより、磁気シェイキングによる低周波磁界にも高周波磁界にも優れたシールドを可能とすると共に、使用の開始時点のみ交流磁界を流し、つまり、磁性体層を消磁することにより、地磁気に対しては大きなシールド効果を提供することができる。
【0044】
このように、本発明の磁気シールド装置は、消磁と磁気シェイキングを達成することができる。
【0045】
つまり、本発明は、基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層を備えた構成とされ、
(1)1つ以上の磁性体層が、低保磁力、高透磁率を有する磁性材で形成され、各磁性体層には、個々に、或いは、共通にコイルを備えることによって、磁性体層は、消磁作用を達成することができる。
(2)2つ以上の磁性体層を備えている場合には、磁性体層は、低保磁力、高透磁率を有する磁性材にて形成た磁性体層と、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材にて形成された磁性体層とを備え、更に、各磁性体層は、個々に、或いは、共通にコイルを備えることによって、消磁と磁気シェイキングを達成することができる。
(3)1つ以上の磁性体層が、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材にて形成され、各磁性体層には、個々に、或いは、共通にコイルを備えることによって、磁性体層は、磁気シェイキングを達成することができる。
【0046】
以下、本発明に係る磁気シールド装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0047】
実施例1
図1及び図2に、本発明に係る磁気シールド装置の一実施例を示す。本実施例にて、少なくとも一方が開口した筒状とされる磁気シールド装置1は、両端が開口した円筒状であるとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0048】
つまり、本実施例にて、磁気シールド装置1は、基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3を備えている。内側繊維強化複合材層2の内径(D)は、370mmとされたが、これに限定されるものではない。長さ(L)は任意に作製し得るが、本実施例では、L=1000mmとした。
また、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3との間には、磁性体にて形成される少なくとも1層以上の磁性体層が、接着剤などにて固定配置される。磁性体層が複数層配置された場合には、少なくとも1層の磁性体層は、磁気シェイキングする。
【0049】
本実施例では、1層の磁性体層11が配置されており、樹脂などを用いて内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3との間に一体的に固定される。この磁性体層11は磁気シェイキングを受ける。この点については後で詳しく説明する。
【0050】
内側及び外側繊維強化複合材層2、3は、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸された繊維強化樹脂、即ち、繊維強化複合材(FRP材)で形成され、繊維強化複合材に使用される強化繊維の形態は、一方向に引き揃えられたUD形状、2軸に織られた平織り及び朱子織り形状、又は3軸に織られた3軸織り形状が単独で、又は、複数組み合わされて使用することができる。
【0051】
強化繊維としては、炭素繊維が好ましいが、その他に、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、又は、鋼繊維、チタン繊維などの金属繊維を一種、又は、複数種混入して使用することができる。
【0052】
又、マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、又は、フェノール樹脂のいずれかが使用される。
【0053】
繊維強化複合材の繊維体積含有率は、30〜70%、通常、50〜60%とされる。
【0054】
又、本実施例では、内側及び外側繊維強化複合材層2、3は、磁気シールド装置1に所望される剛性、強度などによって種々に変更し得るが、強化繊維層の繊維目付が30〜1500g/mとされ、通常、その厚さ(T1)及び(T2)としては、厚さ(T1)及び(T2)=1.0〜10.0mm、通常、2.0mm程度とされ、所望の性能を達成し得る。
【0055】
このような繊維強化複合材は、移動や衝撃にも耐える軽量で高強度であるという特長を有すると共に、特に、強化繊維として炭素繊維を使用した場合には、炭素繊維強化複合材は高い導電性を持つ。
【0056】
即ち、炭素繊維強化複合材は、例えば、体積抵抗率が1.5×10−3〜5.0×10−4Ω・cm、通常、2.0×10−3Ω・cm程度とされ、導電性を有しており、低周波磁界にも高周波磁界にも優れたシールド特性を発揮することができる。特に、高い周波数において誘導電流によるシールド効果が期待できる。
【0057】
本実施例では、磁気シェイキングする磁性体層11は、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材が使用される。特に、角形磁化特性を有したCo系アモルファス磁性材、例えば、メットグラス2705Mが好適に使用される。また、珪素鋼板材、鉄系微結晶材(鉄を主成分とする微結晶材)、又は、ミューメタルや4−79モリブデンパーマロイなどのパーマロイ系磁性材(Ni、鉄を主成分とする結晶質合金)なども使用可能である。
【0058】
磁性体層11の厚さとしては、10μm以上、2mm以下、好ましくは、15μm以上、500μm以下とされる。本実施例では、磁性体層11を形成する磁性体として、例えば幅5cm、厚み20μmのメットグラス2705Mを使用した。
【0059】
更に具体的には、磁性体層11を形成する磁性薄帯は、ヘリカル(螺旋状)構造にて、或いは、磁性薄帯を軸線方向に沿って平行に配置する構造にて、円筒状に形成した。
【0060】
例えば、螺旋状構造とは、例えば幅5cm、厚み20μmのメットグラス2705Mのテープ(リボン)を、直径40cmの場合に、一回転にて軸線方向に5cm程度進むような螺旋構造(即ち、中心軸線からの傾斜角度が82°〜85°)にて重ね巻きとすることもでき、更には、軸線に対して45°程度傾斜した態様にて螺旋状に巻き付けることもできる。
【0061】
また、円筒状の磁性体層11には、磁気シェイキング電流を流すためのコイル導体、即ち、線状とされるコイル導体(コイル線材)21a、21bを使用してコイル21が巻回される。本実施例では、コイル21(21a、21b)は、図1及び図2に示すように、磁性体層11を軸線方向に沿って巻回するようにトロイダル状に巻回される。
【0062】
別法として、図3(a)、(b)に示すように、円筒状磁性体層11の内周面にコイル線材21aを螺旋状に巻き付け、磁性体層11の外周面にコイル線材21bを螺旋状に巻き付け、コイル線材21a、21bを円筒状磁性体層11の一端で結合し、コイル21の内周側と外周側とで電流の向きが異なるようにした。
【0063】
磁性体層11に巻回されるコイル線材21a、21bとしては、本実施例では、平角銅線を使用し、互いに隣接する線材が円周方向に均等となるようにして、即ち、本実施例では、互いに離間角度(α)が10°となるようにして配置した。また、磁性体層11のコイル線材21a、21bは、半径方向に整列して配置されている。
【0064】
勿論、コイル21は、丸形導線を使用しても良く、磁性体層11を巻回するコイル21の材料、配置態様は、上記構成に限定されるものではない。
【0065】
また、コイル21を磁性体層11の周りに巻回する時、コイル21と磁性体層11との間の電気的絶縁を確保するために、両者の間に絶縁層40(後述の図5に拡大図で示す)を設けるのが好ましい。絶縁層40としては、例えば、樹脂フィルム、ガラス繊維を使用したガラス繊維強化樹脂(複合材)、或いは、アラミド、PBO、ポリエステル繊維等の有機繊維で強化された樹脂(複合材)などでも良い。
【0066】
本実施例によれば、磁性体層11のシェイキング磁界発生用コイル21には、磁性体層11に、例えば商用周波数の50Hz以上、10KHz以下のシェイキング磁界を与えるように、シェイキング電流が供給される。
【0067】
上述のように、本実施例の磁気シールド装置1は、内側繊維強化複合材層/磁性体層/外側繊維強化複合材層のサンドイッチ構造であって、磁気シェイキングによって、磁性薄帯、即ち、アモルファス磁性薄帯の透磁率は、30万〜40万が得られる。この点に関して、次に、実験例に則して、更に詳しく説明する。
【0068】
実験例
本実験例では、繊維強化複合材としては強化繊維として炭素繊維を使用し、種々の条件で炭素繊維強化複合材と、アモルファス磁性薄帯を一体成形した、図1及び図2に示すような円筒サンプルを試作し、磁化曲線、磁気シェイキング特性を評価した。
【0069】
内側炭素繊維強化複合材層2/磁性体層11/外側炭素繊維強化複合材層3のサンドイッチ構造を有した円筒体の試料を2種類(1A、1B)、作製した。内径(D)が37cm、幅(L)が7〜8cmであった。
【0070】
円筒体試料1A、1Bは、内側及び外側炭素繊維強化複合材層2、3は、炭素繊維が一方向に配列された一方向配列炭素繊維シートにマトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂が含浸された炭素繊維プリプレグシートを10枚積層して形成した。繊維体積含有率は60%、厚さは約2mm(繊維目付250g/m)であった。
【0071】
また、磁性体層11としては、幅5cm、厚さ20μmメットグラス2705Mアモルファステープ(as cast)を用いた。
【0072】
試料の製造は、先ず、マンドレルMに炭素繊維強化複合材を巻き付け、約2mmの内側炭素繊維強化複合材層2を形成した。次いで、この内側炭素繊維強化複合材層2の外周にアモルファステープを螺旋状に10層重ね巻きし、磁性体層11を形成した。磁性体層11の厚さは、約0.2mmであった。その後、磁性体層11の外周に炭素繊維強化複合材を巻き付け、外側炭素繊維強化複合材層3を作製した。外側炭素繊維強化複合材層3の厚さは約2mmであった。
【0073】
尚、内側炭素繊維強化複合材層2と磁性体層11との間、及び、磁性体層11と、外側炭素繊維強化複合材層3との間にコイル線材21a、21bを配置し、磁性体層11の回りにコイル12をトロイダル状に巻き付けた。
【0074】
ここで、第1の円筒体試料1Aは、エポキシ樹脂が常温硬化型のものであり、第2の円筒体試料1Bは、エポキシ樹脂が熱硬化型のものであった。従って、第1の試料1Aは、常温で養生して硬化させたが、第2の試料1Bは、200℃程度に加熱して樹脂を硬化させた。
【0075】
実験の結果は、次の通りであった。
【0076】
直流磁化曲線の測定から、常温硬化により作製した第1の試料1Aでは保磁力は、10mOe(0.79A/m)程度であり、as castの状態と殆ど変化していなかった。しかし、残留磁束密度はas castの70%程度であり、固化時に何らかの応力が発生したものと思われる。
【0077】
熱硬化により作製した第2の試料1Bは、硬化時のマンドレルMの熱膨張、冷却時の樹脂の熱収縮、一方、炭素繊維の熱収縮は極めてわずか、という複雑な応力発生の要因がある。このような要因の結果、残留磁束密度as castの40%程度に減少していた。また、保磁力にも40%程度増加が見られた。
【0078】
図4は、常温硬化の第1試料20A及び熱硬化の第2試料20Bの磁気シェイキング特性を示す。測定周波数は10Hz、測定磁界振幅は0.05A/m、シェイキング磁界は1kHzとし、その振幅に対して実効的な透磁率を求めた。シェイキング下での10Hz成分は50Hzのローパスフィルタ後、ロックインアンプにて計測した。
【0079】
メットグラス2705Mアモルファステープ(as cast)試料は、増分透磁率が50万超程度まで達するので、本実験例の試料ではおよそその8〜6割程度はあり、十分なシールド効果が達成されている。
【0080】
上記実施例では、本発明の磁気シールド装置は、円筒形状としたが、長円形、楕円形、矩形、その他種々の筒状形態とし得る。
【0081】
本実施例によれば、上述したように、従来の構造上の脆弱性の問題を解決し、移動や衝撃にも耐える構造を有する、軽量で高強度の筒状とされる磁気シールド装置が提供される。また、本実施例の磁気シールド装置は、例えば円筒状のような筒状形態とされる基体と一体化した構造とされ、特に、構造体を導電性を持つ炭素繊維強化複合材にて形成することによって、同時に導電性の筒状基体を形成することができ、低周波磁界にも高周波磁界にも優れたシールドが達成される。
【0082】
実施例2
図5に、本発明の磁気シールド装置1の他の実施例を示す。
【0083】
本実施例では、図1に示す実施例1の磁気シールド装置と同様の構成とされるが、ただ、磁気シェイキングする前記磁性体層11と前記内側繊維強化複合材層2との間に磁気シェイキングしない磁性体層12を配置した狭スペース多重シェル構造とされる点で異なる。従って、実施例1と同様の構成及び機能をなす部材に関しては、同じ参照番号を付し、実施例1の説明を援用して、ここでの再度の説明は省略する。
【0084】
本実施例では、磁気シールド装置1は、実施例1と同様に、基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3を備えている。内側繊維強化複合材層2の内径(D)は、370mmとされたが、これに限定されるものではない。長さ(L)は任意に作製し得るが、本実施例では、L=1000mmとした。
【0085】
また、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3との間には、実施例1と同じ磁気シェイキングする第1磁性体層11の他に、本実施例では、内側繊維強化複合材層2に隣接して、磁気シェイキングしない第2の磁性体層12を備えており、これら磁性体層11、12は、スペース材層31にて上記基体としての内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3に、接着剤などにて一体的に固定配置されている。
【0086】
更に説明すると、磁気シールド装置1は、最内層から最外層へと順に、円筒状とされる内側繊維強化複合材層2、第2の磁性体層12、スペース材層31、第1の磁性体層11、及び円筒状とされる外側繊維強化複合材層3が積層されて構成される。
【0087】
本実施例では、磁気シェイキングしない第2の磁性体層12を形成する磁性体としては、低保磁力、高透磁率のアモルファス磁性材、例えば、メットグラス2714A、更には、パーマロイ系磁性材、又は、鉄系微結晶材(鉄を主成分とする微結晶材)とすることができる。
【0088】
磁性体層12も又、その厚さとしては、10μm以上、2mm以下、好ましくは、15μm以上、500μm以下とされる。
【0089】
また、第2の磁性体層12の磁性体は、例えば薄い板状の上記磁性材を使用し、螺旋状に巻いた構造、又は、軸線方向に沿って平行に配置した構造、又は、螺旋状に巻いた構造と軸線方向に沿って平行に配置した構造を重ねて有した構造、更には、クロスに編んだ構造とすることができる。特に、半径方向の磁気シールドが強く要求される場合には、磁性体を螺旋状に巻いて第2の磁性体層12を形成することが有効であり、軸線方向に沿った磁気シールドが強く要求される場合には、磁性体を軸線方向に沿って平行に配置して第2の磁性体層12を形成することが有効である。従って、半径方向及び軸線方向の磁気シールドが要求される場合には、螺旋状に巻いた構造と軸線方向に沿って平行に配置した構造を重ねて有した構造、又は、クロスに編んだ構造にて、第2の磁性体層12を形成することが有効である。
【0090】
図6に示すように、本実施例にて、前記磁気シェイキングしない磁性体層12には、消磁コイル22(22a、22b)を設けることもできる。磁性体層12に対する消磁コイル22の巻回方法は、実施例1にて磁性体層11に設けたコイル21と同様にして巻回することができる。即ち、図2に示すと同様に、磁性体層12にトロイダル状に巻回したコイルを作製することもでき、又、図3に示すように、螺旋状に巻回したコイルを作製することもできる。
【0091】
消磁コイル22に印加する、即ち、コイル線材22a、22bに通電する消磁用電流としては、例えば商用周波数の50Hz或いは60Hzでよく、また、1kHzであっても良い。ただ、電流は、シェイキング電流の数倍程度が必要とされる。
【0092】
消磁用電流の印加は、装置使用前に一度、或いは、毎日朝に一度位でよく、印加時間も数秒あればよい。つまり、消磁電流は、大きな電流から暫時0まで減衰振動的に与えられ、必要な時間は緩やかに減衰させるのに必要な時間である。従って、数十Hzであれば、僅かに数秒でよい。
【0093】
スペース材層31を形成するスペース材は、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維を、一種又は複数混入して製作された繊維強化複合材とすることができる。更には、樹脂発泡体、例えば、ウレタンフォーム、又は、樹脂或いはアルミニウムなどで作製されたハニカム構造体などが好適に使用可能である。スペース材層31の厚さ(T3)としては、2〜20mmとされ、本実施例では、スペース材層の厚さ(T3)としては5mmとした。
【0094】
図6に示す消磁コイル22を形成するために、内側繊維強化複合材層2とスペース材層31との間に消磁コイル22が入れる程度の空隙(T3)、例えば1〜2mm程度が形成されるのが好ましいが、消磁コイル22を設けない場合には必要ない。ただ、内側繊維強化複合材層2に強化繊維として炭素繊維を使用した場合などのように内側繊維強化複合材層2が導電性とされる場合には、消磁コイル22と内側繊維強化複合材層2との間、および、消磁コイル22と磁性材層12との間に、図示しては以内が、上記と同様の絶縁層40(図5)を設けるのが好ましい。
【0095】
本実施例によると、第1及び第2の磁性体層11、12を形成する磁性薄帯は、例えば、支持体としてのスペース材31を利用して形成することができ、例えば、スペース材31の内周面及び外周面を覆うようにして配設することができる。
【0096】
更に具体的には、例えば、第1の磁性体層11を形成する磁性薄帯は、実施例1にて説明したように、スペース材31の外周面にヘリカル構造にて、即ち、スペース材31の外周面に軸線方向に沿って少しずつずらしながら螺旋状にて巻回することができる。また、他の磁性体層12は、磁性薄帯を軸線方向に沿って平行に配置することができる。
【0097】
本実施例においても、実施例1と同様の作用効果を達成し得る。
【0098】
実施例3
図7に、本発明の磁気シールド装置1の他の実施例を示す。
【0099】
本実施例では、図5に示す実施例2の磁気シールド装置と同様の狭スペース多重シェル構造とされ、更に、磁気シェイキングする第1の磁性体層11と同様の磁気シェイキングする第2の磁性体層13が前記第1の磁性体層11と磁気シェイキングしない前記磁性体層12との間に、スペース材層32を追加することにより配置した構成とされる点で異なる。従って、実施例1、実施例2と同様の構成及び機能をなす部材に関しては、同じ参照番号を付し、実施例1、実施例2の説明を援用して、ここでの再度の説明は省略する。
【0100】
つまり、本実施例では、磁気シールド装置1は、実施例1、実施例2と同様に、基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3を備えている。なお、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3を構成する繊維強化複合材を、特に、構造体が導電性を持つ炭素繊維強化複合材にて形成することによって、同時に導電性の筒状基体を形成することができ、低周波磁界にも高周波磁界にも優れたシールドが達成される。
【0101】
また、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3との間には、磁性体にて形成される磁性体層を3層、本実施例では磁気シェイキングしない磁性体層12と、磁気シェイキングする第1及び第2の磁性体層11、13を備えており、これら磁性体層11、12、13は、スペース材31、32にて上記基体としての内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3に一体的に接着剤にて固定配置されている。
【0102】
本実施例では、先の実施例1、2と同様に、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3は、円筒状とされ、また、内側繊維強化複合材層2の内径(D)は、370mmとされたが、これに限定されるものではない。長さ(L)は任意に作製し得るが、本実施例では、L=1000mmとした。
【0103】
本実施例にて追加された磁気シェイキングする磁性体層13は、本実施例では、支持体としての第2スペース材32の外周面を覆うようにして配設され、第2スペース材32の内周面には、実施例2の場合と同様に、磁気シェイキングしない磁性体層12が配設される。また、磁気シェイキングする磁性体層11の磁性体は、支持体としての第1スペース材31の外周面を覆うようにして配設する。
【0104】
更に具体的には、特に、磁気シェイキングする磁性体層13を形成する磁性体は、第2スペース材32の外周面にヘリカル構造にて、即ち、第2スペース材32の外周面に円周方向に少しずつずらして螺旋状にて巻回される。他の磁気シェイキングする磁性体層11及び磁気シェイキングしない磁性体層12は、磁性体を軸線方向に沿って平行に配置することができる。
【0105】
磁性体層13は、上述の磁性体層11を形成する磁性体にて形成され、その厚さとしては、他の磁性体層11、12の磁性体と同様に、10μm以上、2mm以下、好ましくは、15μm以上、500μm以下とされる。
【0106】
第2スペース材層32は、先の実施例で説明した第1スペース材31と同様に、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維を、一種又は複数種混入して製作された繊維強化複合材とすることができ、更には、樹脂発泡体、例えば、ウレタンフォーム、又は、樹脂或いはアルミニウムなどで作製されたハニカム構造体などが使用される。スペース材層32の厚さ(T5)としては、2〜20mmとされ、本実施例では、スペース材層の厚さ(T5)としては5mmとした。
【0107】
また、磁気シェイキングする磁性体層13には、磁気シェイキング電流を流すためのコイル23(23a、23b)が巻回される。本実施例では、磁性体層13を軸線方向に沿って巻回するようにして磁気シェイキングのためのコイル23がトロイダル状に巻回される。
【0108】
つまり、本実施例では、コイル線材23a、23bが、第2のスペース材32の外周と、第1のスペース材31の内周とに配置され、磁性体層13を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に巻回された。また、実施例2で説明したように、コイル線材21a、21bが、第1のスペース材31の外周と、磁気シェイキングする磁性体層11の外周とに配置され、磁性体層11を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に巻回されている。
【0109】
従って、本実施例では、磁気シェイキングのためのコイル線材21a、21b、23a、23bをトロイダル巻きで配置することができ、少ない電流で必要なシェイキング磁界を漏洩しないようにしながら磁性体層に与えることができる。
【0110】
各磁性体層11、12に巻回されるコイル線材21a、21b、23a、23bとしては、図1に示すように、本実施例では、平角銅線を使用し、互いに隣接する線材が円周方向に均等となるようにして、即ち、本実施例では、互いに離間角度(α)が10°となるようにして配置される。また、各磁性体層11、13のコイル線材21a、21b、23a、23bは、半径方向に整列して配置されている。しかしながら、各磁性体層11、13を巻回するコイル21、23の材料、形状、配置態様は、上記構成に限定されるものではない。
【0111】
また、コイルの巻回方法も又、上記方法に限定されるものではなく、例えば、別法として、図8に示すように、上記第1のスペース材31の内周及び外周に配置されたコイル線材21a、23bは省略して、第2のスペース材32外周と磁性体層11の外周とに配置されたコイル線材24a、24bにて、磁性体層11、13を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に共通に巻回することも可能である。
【0112】
各磁性体層11、13の上記シェイキング磁界発生用コイル21、23は直列に接続して共通の交流電源(図示せず)に接続され、交流電源から各磁性体層11、13に所定の周波数のシェイキング磁界を与えるために所定の周波数のシェイキング電流が印加される。勿論、各シェイキング磁界発生用コイル21、23は、それぞれ別々の交流電源に接続することもできる。
【0113】
本実施例によれば、各磁性体層のシェイキング磁界発生用コイルには、磁性体層に、例えば商用周波数の50Hz以上、10KHz以下のシェイキング磁界を与えるように、シェイキング電流が供給される。
【0114】
本実施例では、上述のように、磁性体層11、13には、磁気シェイキングを施すが、最内層の、即ち、磁性体層12には、磁気シェイキングを施さない。
【0115】
上述のように、磁性体層12は、円筒の半径方向、又は、軸線方向、又は、半径及び軸線方向への磁束線漏れを防止するためのものであるが、本実施例にても、磁気シェイキングしない磁性体層12には、図6を参照して実施例2で説明したように、消磁コイル22(22a、22b)を設けることもできる。磁性体層12に対する消磁コイル22の巻回方法は、実施例1にて磁性体層11に設けたコイル21と同様にして巻回することができる。即ち、図2に示すと同様に、磁性体層12にトロイダル状に巻回したコイルを作製することもでき、又、図3に示すように、螺旋状に巻回したコイルを作製することもできる。
【0116】
従って、この場合には、内側繊維複合材層2と第2のスペース材層32との間に消磁用コイル(図示せず)が入れる程度の空隙(T3)、例えば1〜2mm程度が形成される。
【0117】
上述のように、本実施例の上記構成の磁気シールド装置1によれば、磁気シェイキングする複数の磁性体層11、12、即ち、シェルを同心状に配置し、狭スペース多重シェル構造とすることによって、高いシールド比を得ることができる。
【0118】
ここで、複数の磁性体層、即ち、シェルを持つ場合のシールド作用について説明すると次の通りである。
【0119】
一般に、1番目のシェルの内径をD1、シェルの厚みをt1、磁性体の比透磁率をur1とすれば、半径方向磁界に対するシールド比s1は、
s1=1+ur1*t1/D1
である。
【0120】
2番目、3番目のシェルについてもそれらが単一である時は同様の式となる。
【0121】
1番目、2番目のシェルが同心状に組み合わされた時のシールド比S2は、2番目のシェルの内径をD2、シェルの厚みをt2、磁性体の比透磁率をur2、半径方向磁界に対するシールド比をs2とすれば、上述のように、
s2=1+ur2*t2/D2
であり、
S2=1+s1+s2+(1−(D1/D2))s1*s2
となる。
【0122】
狭スペースであるために第4項の係数は小さくなるが、磁気シェイキングによって、s1、s2が大きくされているのでこの積の項の効果がそれでも大きく現れる。その結果、高いシールド比が得られる。一方、パーマロイでは、スペースを開けることが必要となり、その効果が低減する。
【0123】
又、本実施例の磁気シールド装置1は、内側繊維強化複合材層/磁性体層/外側繊維強化複合材層のサンドイッチ構造であって、磁気シェイキングによって、磁性薄帯、即ち、アモルファス磁性薄帯の透磁率は、30万〜40万が得られる。この点に関しては、実施例1で実験例に則して説明した通りである。
【0124】
本実施例によると、磁性体層は3重とされ、最内層の磁性体層12は磁気シェイキングは施さないが、最内層の磁性体層12は単純な円筒体ではなく、図9に示すように、軸方向の所定位置に全周にわたってスリットSL1(第1のスリット)が形成される。
【0125】
この第1のスリットSL1の位置は、磁性体層円筒体12の開口部一端1Eからの距離(L1)は、円筒体12の軸線中心O1からの距離、即ち、半径(d)の大きさから半径の0.75倍くらい、即ち、0.75d≦L1≦dの位置に、幅(W1)が5mm程度とされる。
【0126】
図10に、スリット距離L1を、10cm、46cmとした場合と、スリットを形成しなかった場合の軸線方向位置と、シールド比との関係を示す。
【0127】
図10から、本実施例のようにスリットSL1を形成した構造により、軸方向から来る磁界に対して高いシールド比を持つことが分かる。
【0128】
また、磁性体層の長さが同じ長さであれば、内側の磁性体層を通じてシールド内の磁界が抜けてしまう。通常は、内側の磁性体層の長さを順に短くする必要があるが、しかし、同時にシェイキング磁界が漏れないように内側に磁性体層を配置する必要がある。この2点を満足するための方策として、スリットSL1が形成される。
【0129】
このために、本実施例によれば、軸方向外部磁界に対しては磁性体層を短くしたことと同じ効果を与える。又、単に短くすると、段差が付いてその後の製作がし難くなる。
【0130】
磁性体層13は、上述したように、望ましくは、半径方向からの磁界に対して高いシールド比を持つように、ヘリカル構造にて巻回され、磁気シェイキングを施すものであるが、この磁性体層13にも磁性体層12と同様に、スリットSL2(第2のスリット)が形成される。
【0131】
この第2のスリットSL2の位置は、上述と同じ磁性体層円筒体12、13の開口部一端1Eからの距離(L2)は、上記第1のスリットSL1の距離L1の1/2〜3/4、即ち、(1/2)L1≦L2≦(3/4)L1の位置が好ましく、また、幅(W2)は5mm程度とされる。
【0132】
最外層に位置した磁性体層11は、磁気シェイキングが施され、スリットは設けられていない。
【0133】
上記実施例では、本発明の磁気シールド装置は、円筒形状としたが、長円形、楕円形、矩形、その他種々の筒状形態とし得る。
【0134】
本実施例によれば、実施例1、2と同様に、従来の構造上の脆弱性の問題を解決し、移動や衝撃にも耐える構造を有する、軽量で高強度の筒状とされる磁気シールド装置が提供される。また、本実施例の磁気シールド装置は、例えば円筒状のような筒状形態とされる基体と一体化した構造とされ、特に、構造体を導電性を持つ炭素繊維強化複合材にて形成することによって、同時に導電性の筒状基体を形成することができ、低周波磁界にも高周波磁界にも優れたシールドが達成される。
【0135】
実施例4
図11に、本発明の磁気シールド装置1の他の実施例を示す。
【0136】
本実施例では、先の実施例に示す磁気シールド装置と同様の狭スペース多重シェル構造とされ、更に、実施例3で説明した磁気シェイキングする磁性体層13と同様の磁気シェイキングする第3の磁性体層14が、磁気シェイキングする前記第1の磁性体層11と、磁気シェイキングする第2の磁性体層13との間に、スペース材33を追加することにより配置した構成とされる点で異なる。従って、実施例1、実施例2、実施例3と同様の構成及び機能をなす部材に関しては、同じ参照番号を付し、実施例1、実施例2、実施例3の説明を援用して、ここでの再度の説明は省略する。
【0137】
つまり、本実施例では、磁気シールド装置1は、実施例1、実施例2、実施例3と同様に、基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3を備えている。なお、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3を構成する繊維強化複合材を、特に、構造体が導電性を持つ炭素繊維強化複合材にて形成することによって、同時に導電性の筒状基体を形成することができ、低周波磁界にも高周波磁界にも優れたシールドが達成される。
【0138】
また、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3との間には、磁性体にて形成される磁性体層を4層、本実施例では磁気シェイキングしない磁性体層12と、磁気シェイキングする第1、第2、第3の磁性体層11、13、14を備えており、これら磁性体層11、12、13、14は、スペース材31、32、33にて上記基体としての内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3に一体的に接着剤にて固定配置されている。
【0139】
本実施例では、先の実施例1、2、3と同様に、内側繊維強化複合材層2と外側繊維強化複合材層3は、円筒状とされ、また、内側繊維強化複合材層2の内径(D)は、370mmとされたが、これに限定されるものではない。長さ(L)は任意に作製し得るが、本実施例では、L=1000mmとした。
【0140】
本実施例にて追加された磁気シェイキングする磁性体層14は、本実施例では、支持体としての第3スペース材33の外周面を覆うようにして配設される。その他は、実施例3と同様の構成とされる。
【0141】
特に、本実施例にて、半径方向の磁気シールドが要求される場合には、磁気シェイキングする磁性体層11、13、14は、その磁性体が、例えば、第1、第2、第3スペース材31、32、33の外周面にヘリカル構造にて、即ち、各スペース材31、32、33の外周面に円周方向に少しずつずらして螺旋状にて巻回される。
【0142】
例えば、螺旋状構造とは、実施例1で説明したように、例えば幅5cm、厚み20μmの磁性薄帯を、直径40cmの場合に、一回転にて軸線方向に5cm程度進むような螺旋構造(即ち、中心軸線からの傾斜角度が82°〜85°)にて重ね巻きとすることもでき、更には、軸線に対して45°程度傾斜した態様にて螺旋状に巻き付けることもできる。
【0143】
又、もし、軸線方向の磁気シールドが要求される場合には、最も外層に位置した磁気シェイキングする磁性体層11は、例えば、第1スペース材31の外周面に軸線方向に平行に配置した構造にて配置される。
【0144】
磁性体層14も、他の磁性体層11、13と同じ磁性体にて作製することができ、その厚さとしては、他の磁性体層11、12、13の磁性体と同様に、10μm以上、2mm以下、好ましくは、15μm以上、500μm以下とされる。
【0145】
第3スペース材層33は、先の実施例で説明した第1、第2スペース材31、32と同様に、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維を一種又は複数混入して製作された繊維強化複合材、更には、樹脂発泡体、例えば、ウレタンフォーム、又は、樹脂或いはアルミニウムなどで作製されたハニカム構造体などが使用される。スペース材層33の厚さ(T6)としては、2〜20mmとされ、本実施例では、スペース材層の厚さ(T6)としては5mmとした。
【0146】
また、本実施例では、上述のように、磁気シェイキングする磁性体層11、13、14は、その磁性体が、ヘリカル構造にて巻回されたために、磁性体層14には個別にコイルを巻回することはせず、コイル25が共用された。
【0147】
つまり、コイル線材25a、25bが、第1のスペース材31の外周と、第2のスペース材32の内周とに配置され、磁性体層11、13、14を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に共通に巻回された。
【0148】
勿論、磁気シェイキングする磁性体層14には、図示してはいないが、磁気シェイキング電流を流すためのコイル(図示せず)を個別に巻回することもできる。
【0149】
本実施例においても、磁性体層11、13、14に、例えば商用周波数の50Hz以上、10KHz以下のシェイキング磁界を与えるように、シェイキング電流が供給される。
【0150】
なお、磁性体層14と同等の作用を持つ磁性体層を更に増やしても良い。
【0151】
また、本実施例においても、磁性体層12、13に対して、実施例3にて図9を参照して説明したスリット構造を適用することができる。
【0152】
実施例5
上記実施例では、本発明の磁気シールド装置1は、
(1)1つ以上の磁性体層が、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材にて形成され、各磁性体層には、個々に、或いは、共通にコイルを備えることによって、磁性体層は、磁気シェイキングを達成する。或いは、
(2)2つ以上の磁性体層を備えている場合には、磁性体層は、低保磁力、高透磁率を有する磁性材にて形成た磁性体層と、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材にて形成された磁性体層とを備え、更に、各磁性体層は、個々に、或いは、共通にコイルを備えることによって、消磁と磁気シェイキングを達成する。
構成について説明したが、本発明の磁気シールド装置の他の実施例によれば、1つ以上の磁性体層を、低保磁力、高透磁率を有する磁性材で形成し、各磁性体層には、個々に、或いは、共通にコイルを備える構成とすることができる。
【0153】
この実施例の磁気シールド装置は、地磁気に対して大きなシールド効果を有することができる。
【0154】
実施例6
図12に示すように、上記実施例1〜5にて説明した磁気シールド装置1は、互いに、内層として、或いは、外層として嵌着して組み立て、一つの磁気シールド装置を形成することもできる。このとき、各磁気シールド装置は同じ層構成の装置であっても良く、或いは、例えば、図1に示す構成の磁気シールド装置1aと、図5に示す構成の磁気シールド装置1bと、図6に示す構成の磁気シールド装置1cと、いったように、異なる層構成とされる磁気シールド装置を互いに嵌着して一つの磁気シールド装置1を形成することもできる。
【0155】
この場合には、磁気シールド装置1を構成する磁気シールド装置1a、1b、1cは、図12に示すように、その長さLa、Lb、Lcが、内層に行くに従って磁気シールド装置の長さを短くするのがよい。即ち、La≧Lb≧Lcである。これによって、組み合わせられる各磁気シールド装置1a、1b、1cに対しては、実施例3、実施例4で説明したスリット構造は、必ずしも採用する必要はない。
【0156】
本実施例の組み合わせられた磁気シールド装置も、先の実施例で説明した磁気シールド装置と同様の作用効果を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の磁気シールド装置の一実施例の概略構成横断面図である。
【図2】内側繊維強化複合材層/磁性体層/外側繊維強化複合材層のサンドイッチ構造を有した本発明の磁気シールド装置の一実施例の斜視図である。
【図3】コイルの磁性体層に対する螺旋状巻回態様を説明する図である。
【図4】内側繊維強化複合材層/磁性体層/外側繊維強化複合材層のサンドイッチ構造の磁気シェイキング性能を説明する図である。
【図5】本発明の磁気シールド装置の他の実施例の概略構成横断面図である。
【図6】本発明の磁気シールド装置の他の実施例の概略構成横断面図である。
【図7】本発明の磁気シールド装置の他の実施例の概略構成横断面図である。
【図8】本発明の磁気シールド装置の他の実施例の概略構成横断面図である。
【図9】本発明の磁気シールド装置の一端部を示す概略構成縦断面図である。
【図10】磁性体層に形成するスリットの効果を説明するための軸方向位置と磁気シールドの関係を示す図である。
【図11】本発明の磁気シールド装置の他の実施例の概略構成横断面図である。
【図12】本発明の磁気シールド装置の他の実施例の分解斜視図である。
【図13】従来の磁気シールド装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0158】
1 磁気シールド装置
2 内側繊維強化複合材層
3 外側繊維強化複合材層
11、13、14 磁気シェイキングする磁性体層
12 磁気シェイキングしない磁性体層
21、22、23、24 コイル
31、32、33 スペース材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が開口した筒状とされる磁気シールド装置であって、
基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層を備え、
前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間に磁性体にて形成される少なくとも1層の磁性体層を固定配置し、
前記磁性体層の少なくとも1層の磁性体層は、コイル導体を備えていることを特徴とする磁気シールド装置。
【請求項2】
前記コイル導体にはシェイキング電流を印加することを特徴とする請求項1の磁気シールド装置。
【請求項3】
前記磁性体は、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材であることを特徴とする請求項2の磁気シールド装置。
【請求項4】
前記コイル導体には消磁用電流を印加することを特徴とする請求項1の磁気シールド装置。
【請求項5】
前記磁性体は、低保磁力、高透磁率を有する磁性材であることを特徴とする請求項4の磁気シールド装置。
【請求項6】
少なくとも一方が開口した筒状とされる磁気シールド装置であって、
基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層を備え、
前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間に磁性体にて形成される少なくとも1層の磁性体層を固定配置し、
前記磁性体層の少なくとも1層の磁性体層は、磁気シェイキングすることを特徴とする磁気シールド装置。
【請求項7】
前記磁性体層は複数層からなり、前記磁気シェイキングする前記磁性体層と前記内側繊維強化複合材層との間に磁気シェイキングしない磁性体層を配置したことを特徴とする請求項6の磁気シールド装置。
【請求項8】
前記磁気シェイキングしない磁性体層を形成する磁性体は、アモルファス磁性材、パーマロイ系磁性材、又は鉄系微結晶材であることを特徴とする請求項7の磁気シールド装置。
【請求項9】
前記磁気シェイキングしない磁性体層を形成する磁性体は、薄い板状の前記磁性材を螺旋状に巻いた構造及び/又は軸線方向に沿って平行に配置した構造、又は、クロスに編んだ構造とされることを特徴とする請求項7又は8の磁気シールド装置。
【請求項10】
前記磁気シェイキングしない磁性体層には、消磁コイルを設けたことを特徴とする請求項7〜9のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項11】
前記磁気シェイキングする磁性体層を形成する磁性体は、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材であることを特徴とする請求項6〜10のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項12】
前記保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材は、角形磁化特性を有したアモルファス磁性材、珪素鋼板材、鉄系微結晶材又はパーマロイ系磁性材であることを特徴とする請求項11の磁気シールド装置。
【請求項13】
前記磁気シェイキングする磁性体層を形成する磁性体は、螺旋状に巻いた構造又は軸線方向に沿って平行に配置した構造とされることを特徴とする請求項11又は12の磁気シールド装置。
【請求項14】
前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間にスペース材を設け、
前記磁気シェイキングする磁性体層は、前記磁性体を前記スペース材の周面に配設することによって形成されることを特徴とする請求項6〜13のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項15】
前記磁気シェイキングする磁性体層は、各磁性体層毎にコイルを設け、磁気シェイキングを受けることを特徴とする請求項6〜14の磁気シールド装置。
【請求項16】
前記磁気シェイキングする磁性体層は、隣接した前記磁性体層の磁性体が螺旋状に巻いた構造とされる場合には、共通するコイルにて磁気シェイキングを受けることを特徴とする請求項13又は14の磁気シールド装置。
【請求項17】
少なくとも一方が開口した筒状とされる磁気シールド装置であって、
基体として、最内層と最外層にそれぞれ筒状とされる内側繊維強化複合材層と外側繊維強化複合材層を備え、
前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間に磁性体にて形成される複数の磁性体層をスペース材にて固定配置し、
前記磁性体層は、前記内側繊維強化複合材層から前記外側繊維強化複合材層へと順に、第1の磁性体層、第2の磁性体層、及び、第3の磁性体層を有し、
前記内側繊維強化複合材層に隣接した前記第1の磁性体層は、磁気シェイキングしない磁性体層であり、前記第2及び第3の磁性体層は、磁気シェイキングする磁性体層であることを特徴とする磁気シールド装置。
【請求項18】
前記内側繊維強化複合材層に隣接した前記第1の磁性体層には、消磁用コイルを巻回したことを特徴とする請求項17の磁気シールド装置。
【請求項19】
前記内側繊維強化複合材層と前記外側繊維強化複合材層との間に第1及び第2スペース材を有し、
前記第1の磁性体層を形成する磁性体は、アモルファス磁性材、パーマロイ系磁性材、又は鉄系微結晶材であり、前記第2及び第3の磁性体層を形成する磁性体は、保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材であって、
前記第1及び第2の磁性体層を形成する磁性体は、それぞれ前記第1スペース材の内周面及び外周面を覆うようにして配設し、第3の磁性体層を形成する磁性体は、前記第2スペース材の外周面を覆うようにして配設することを特徴とする請求項17又は18の磁気シールド装置。
【請求項20】
前記保磁力近辺での微分透磁率が大きい磁性材は、角形磁化特性を有したアモルファス磁性材、珪素鋼板材、鉄系微結晶材又はパーマロイ系磁性材であることを特徴とする請求項19の磁気シールド装置。
【請求項21】
前記第2の磁性体層を形成する磁性体は、前記第1スペース材の外周面に軸線方向に少しずつずらして螺旋状にて巻回され、前記第1及び第3磁性体層を形成する磁性体は、前記第1スペース材の内周面及び前記第2スペース材の外周面に軸線方向に沿って平行に配置されることを特徴とする請求項17〜20のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項22】
第1のコイル線材が、前記第1スペース材の外周と、第2スペース材の内周とに配置され、前記第2の磁性体層を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に巻回され、
第2のコイル線材が、前記第2のスペース材の外周と、前記第3の磁性体層の外周とに配置され、前記第3の磁性体層を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に巻回されることを特徴とする請求項17〜20のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項23】
コイル線材が、前記第1スペース材の外周と、前記第3の磁性体層の外周とに配置され、前記第2及び第3の磁性体層を軸線方向に取り巻くようにしてトロイダル状に巻回されることを特徴とする請求項17〜20のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項24】
前記繊維強化複合材層は、強化繊維にマトリックス樹脂が含浸された繊維強化複合材にて形成され、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又は、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール)、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維、又は、鋼繊維、チタン繊維などの金属繊維を一種、又は、複数種混入して使用することを特徴とする請求項1〜23のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項25】
前記強化繊維層の繊維目付は、30〜1500g/mであることを特徴とする請求項24の磁気シールド装置。
【請求項26】
前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、又は、フェノール樹脂であることを特徴とする請求項24又は25の磁気シールド装置。
【請求項27】
前記スペース材は、ガラス繊維、若しくは、アラミド、PBO、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの有機繊維を一種、又は、複数種混入して製作された繊維強化複合材、又は、樹脂発泡体若しくはハニカム構造体であることを特徴とする請求項14〜26のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項28】
前記内側繊維強化複合材層に隣接した前記第1の磁性体層は、軸線方向一端から距離(L1)の位置にて円周方向全周にわたってスリットが形成されていることを特徴とする請求項1〜27のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項29】
前記スリットが形成された距離(L1)は、前記第1の磁性体層の軸線中心からの半径を(d)としたとき、
0.75d≦L1≦d
であることを特徴とする請求項28の磁気シールド装置。
【請求項30】
前記第1の磁性体層より半径方向外方に位置した前記第2の磁性体層は、前記第1の磁性体層と同じ軸線方向一端から距離(L2)の位置にて円周方向全周にわたってスリットが形成されていることを特徴とする請求項1〜29のいずれかの項に記載の磁気シールド装置。
【請求項31】
前記スリットが形成された距離(L2)は、前記第1のスリットの距離(L1)に対して、
(1/2)L1≦L2≦(3/4)L1
であることを特徴とする請求項30の磁気シールド装置。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれかの項に記載の磁気シールド装置から選択される複数の磁気シールド装置を互いに嵌着して組み立てられたことを特徴とする磁気シールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−261618(P2006−261618A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80770(P2005−80770)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年(平成16年)9月21日 社団法人日本応用磁気学会発行の「第28回 日本応用磁気学会学術講演概要集」に発表
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(599104369)日鉄コンポジット株式会社 (51)
【Fターム(参考)】