説明

磁気センサおよびそれを用いる生体磁気計測装置

【課題】生体内に生じた微弱電流などによる微弱な磁束を計測する磁気センサにおいて、入力初段で環境磁場を効率良く低減してSN比を向上する。
【解決手段】強磁性体を有する相互に等しい一対の磁気検出素子301a,302aを用い、それらを検出磁束Bと平行に、さらに磁化容易軸3011a,3021aが前記検出磁束Bと直交し、かつ互いの磁化容易軸3011a,3021aが直交するように、前記検出磁束Bの方向に互いに間隔を開けて配置する。したがって、地磁気などの広範に均等に到来する環境磁場(外部磁束)BNに対してはほぼ等しい磁束(図では各5本)が入力するのに対して、生体からの信号磁束BSは、生体に近い方の素子301aに磁束(図では9本)を吸収され、透磁路の出口で発散する。したがって、素子301a,302aの出力の差動を取ることで、環境磁場を効率良く低減してSN比を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳磁計測に代表される生体磁気計測などのために用いられる磁気センサおよびそれを用いる生体磁気計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記脳磁計測に代表される生体磁気計測に使用できるほど高感度な磁気センサは、SQUID(Superconducting QUantum Interference Device:超伝導磁束量子干渉計)が、現在唯一であり、10−15T程の感度が実用レベルで実現されて、脳磁計や脊髄磁場などを診断する装置が既に実用化されている。
【0003】
前記SQUIDの概略的な測定メカニズムは、位相の異なる超伝導体を障壁層を介して接合(Josephson接合)すると、それらの超伝導体間にトンネル電流が流れ、そのトンネル電流は、接合面内を貫く磁束が磁束量子の整数倍のとき弱め合い、それ以外のとき強め合うというFraunhofer型の量子干渉効果を利用するものである。このような性質をJosephson効果と称し、1個以上のJosephson接合を超伝導ループでつないだデバイスを、前記SQUIDと称する。
【0004】
そして、現在のところ実用化されているほとんどのSQUID素子はニオブ(Nb)で作られており、SQUID素子として働かせるためにはこのニオブを上述のように超伝導状態にする必要があり、ニオブの超伝導転移温度が9.2Kであることから、液体ヘリウムでの冷却が必要となる。その為、実際の測定に際しては、ポットに液体ヘリウムを循環させて10K程の低温に冷却する一方、そのポットの底にある凹面内には前記SQUID素子を多数並べて固定しておき、その凹面に被験者の頭を入れて測定に供している。
【0005】
このようなSQUIDセンサおよびそれを用いた脳磁計測装置として、特許文献1〜5などが提案されている。特に特許文献1で示されるように、SQUIDは、液体ヘリウムによる冷却のため、冷凍機等、磁気センサ以外の付帯設備が多く、装置が高価であるとともに、スペースも嵩み、しかも高価なヘリウムガスが蒸散で消耗するので、ランニングコストも大変高いといった問題がある。また、前記Josephson素子の故障時には、一旦前記液体ヘリウムの抜き取りが必要になるなど、メンテナンスの負担も大きい。
【0006】
一方、センサ部分の構造としては、Josephson素子を用いたSQUID部分に生体磁場による発生電流を導くための直径2cmほどの検出コイルを、液体ヘリウムを入れるポットの底面に配置する構造となるので、検出素子をアレイ状にした場合はポットも含めて非常に大きな検出部が形成される。このような大きな構成のため、検出素子数を多くしようとしても、脳や心臓の周りには、せいぜい200〜300個程度しか並べることができず、生体磁場検出の空間分解能を高めることはできないという問題がある。
【0007】
また、前記ポットは、被検者の頭に柔軟に沿う構造ではなく、単に硬い凹面部に頭を入れるだけの構造であるので、頭皮と凹面とは密着できず、隙間を生じる。しかも、凹面に頭が密着したとしても、冷却されているセンサと頭部との断熱のために、3〜4cmもの真空断熱層の厚みがあり、その分、SQUIDセンサは被検査部位から離れる。したがって、SQUIDセンサは、単体では磁気感度が高いにも関わらず、被検査部位から離れて配置されているためセンサに入る磁場が弱くなり、かつ、隣接する磁場が交錯して1つのSQUIDに入力されるので、これによってさらに、位置分解能が大きく低下するという問題がある。さらにまた、計測毎に姿勢が変わったり、計測中に体動があると、脳とSQUIDセンサとの位置関係が変わってしまい、大きな計測誤差の発生要因となるので、被験者に静止を要求するという問題もある。
【0008】
一方、常温で微弱な磁気計測のできるMI(磁気インピーダンス)素子を用いた心磁界計測の例が、非特許文献1で示されている。このような手法を用いると、センサの冷却が不要となるので、SQUIDのような制約がなくなり、直接人体にこれらの素子を密着させることが可能になる。密着することで位置ずれを回避でき、位置分解能の向上が達成され、かつ断熱層が不要になることから、近接しての測定が可能になり、隣接する磁場が交差する前のより位置分解能の高い状態でかつ強い磁場での計測も可能となる。こうして、測定装置としての分解能の向上を達成することができる。
【0009】
なお、本件明細書で言う「常温」とは、冷媒を使わないことを意味し、全く冷却装置を持たない場合だけでなく、ペルチェ素子などを使った簡素な空冷装置を使った場合を含み、検出素子の使用環境が室温であることを意味する。したがって、いわゆる高温超伝導領域(−196℃前後)は含まないものとする。また、本件明細書で言う「高感度」とは、1pT(10−12T)以下の微弱な磁気を検出する能力を有すること、または生体磁気の計測を可能とする感度を有していることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−193364号公報
【特許文献2】特開2004−65605号公報
【特許文献3】特開2007−17248号公報
【特許文献4】特開平2−40578号公報
【特許文献5】特開平3−1839号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】”A Measurement of Magnetocardiogram(MCG) by Planar Type Sensor using CoNbZr FILM”Y.Ohtomo,S.Yabukami,K.Kato,T.Ozwa and I,Arai(Journal of Magnetics Society of Japan Vol.33,No.3,2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記SQUIDが用いられる脳磁計や心磁計などの微弱な生体磁気(地磁気の百万〜1億分の1の磁場)の検出において、特に検出素子入力の初段検出部にこのような環境磁場を低減する工夫が重要かつ必要であり、このような工夫無くして実用的な生体磁気計測は不可能である。検出素子が高感度であるほど、入力初段の検出部でのノイズ除去が高いSN比を確保する上で非常に重要である。
【0013】
本発明の目的は、入力初段で環境磁場を効率良く低減してSN比を向上することができる磁気センサおよびそれを用いる生体磁気計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の磁気センサは、強磁性体を用い、相互に等しい一対の磁気検出素子と、出力端とを有する磁気センサであって、前記一対の磁気検出素子は、その磁化容易軸の方向が検出磁束に対して直交し、かつ互いの磁化容易軸が直交するように、前記検出磁束の方向に互いに間隔を開けて配置され、前記出力端は、前記一対の磁気検出素子の検出結果の差分を得ることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、生体内に生じた微弱電流などによる微弱な磁束を計測する磁気センサにおいて、常温域で計測が可能な、たとえばTMR(トンネル磁気抵抗)素子、GMR(巨大磁気抵抗)素子、或いはMI(磁気インピーダンス)素子などの強磁性体を用いる磁気検出素子を、2つを一対で使用する。そして、その2つの磁気検出素子が、検出磁束の方向(生体の場合、生体表面から遠ざかる方向)に互いに間隔を開けて積層され、前記検出磁束に対して磁化容易軸の方向が略直交しており、かつ互いの磁化容易軸が直交するように配置される。すなわち、生体の場合、該生体の内部で発生された検出磁束は、生体表面に対して略垂直に外部に放射され、前記磁気検出素子の磁化容易軸は、前記生体表面と平行に設けられることになる。ただし、前記2つの磁気検出素子の磁化容易軸は、前記生体表面と平行な面内で、互いに直交するように設けられる。一方、該磁気センサの出力は、前記2つの磁気検出素子の検出結果の差分とする。
【0016】
ここで、前記生体等、微弱な磁束の発生源が発生する検出磁束は、その表面から比較的近い位置で磁束のループを形成し、表面から比較的近い方の磁気検出素子は通過しても、前記ループによって比較的遠い方の磁気検出素子を通過する磁束の割合が少なくなる。これに対して、地磁気や環境磁場などの生体外の環境などによる比較的大きな磁束(ノイズ)は、前記2つの磁気検出素子を、ほぼ共通に通過する。したがって、出力端で前記2つの磁気検出素子の検出結果の差分を取ることで、入力初段で環境磁場(ノイズ)を効率良く低減してSN比を向上することができる。こうして、強磁性体を用いた常温磁気検出素子から成る該磁気センサでは、低コストかつ高感度に、微弱な磁束を測定することができる。
【0017】
また、本発明の磁気センサでは、前記磁気検出素子は、トンネル磁気抵抗素子であることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、液化ガスによる冷却を行わず、常温域で微弱な磁気計測が可能な磁気検出素子としてトンネル磁気抵抗素子を用いることで、より高感度化することができる。
【0019】
さらにまた、本発明の磁気センサでは、前記磁気検出素子は、磁気インピーダンス素子であることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、常温域で微弱な磁気計測が可能な磁気検出素子として磁気インピーダンス素子を用いることで、構造を簡略化することができる。
【0021】
また、本発明の磁気センサでは、前記一対の磁気検出素子における検出磁束方向の間隔は、0.5〜20mmであることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、前記磁気検出素子がトンネル磁気抵抗素子または磁気インピーダンス素子である場合、磁束は強磁性体の中を通るので、SQUIDのような真空中を通る場合に比べて、減衰は1/2000程度となる。したがって、2つの磁気検出素子が近接し過ぎると、該2つの磁気検出素子を通過する検出磁束も略等しくなる。
【0023】
そこで前記2つの磁気検出素子の検出磁束方向の間隔を前記0.5〜20mmとすることで、検出磁束に対して良好な感度を得ることができる。
【0024】
さらにまた、本発明の磁気センサは、相互に等しい一対の磁気検出素子と、出力端とを有する磁気センサであって、各磁気検出素子は、圧電素子と、前記圧電素子によって検出磁束中で振動されて起電力を得る導体とを備える圧電センサ式のセンサから成り、前記一対の磁気検出素子は、前記検出磁束の方向に互いに間隔を開けて配置され、前記出力端は、前記一対の磁気検出素子の検出結果の差分を得ることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、生体内に生じた微弱電流などによる微弱な磁束を計測する磁気センサにおいて、常温域で計測が可能な圧電振動方式の磁気検出素子を、2つを一対で使用する。前記圧電振動方式の磁気検出素子は、圧電素子によって導体を検出磁束中で振動させて起電力を得るものである。そして、その2つの磁気検出素子が、検出磁束の方向(生体の場合、生体表面から遠ざかる方向)に互いに間隔を開けて積層される。すなわち、生体の場合、該生体の内部で発生された検出磁束は、生体表面に対して略垂直に外部に放射され、前記導体は、前記生体表面と平行に設けられることになる。そして、該磁気センサの出力は、前記2つの磁気検出素子の検出結果の差分とする。
【0026】
ここで、前記生体等、微弱な磁束の発生源が発生する検出磁束は、その表面から比較的近い位置で磁束のループを形成し、表面から比較的近い方の磁気検出素子は通過しても、前記ループによって比較的遠い方の磁気検出素子を通過する磁束の割合が少なくなる。これに対して、地磁気や環境磁場などの生体外の環境などによる比較的大きな磁束(ノイズ)は、前記2つの磁気検出素子を、ほぼ共通に通過する。したがって、出力端で前記2つの磁気検出素子の検出結果の差分を取ることで、入力初段で環境磁場(ノイズ)を効率良く低減してSN比を向上することができる。こうして、常温域で微弱な磁気計測が可能な磁気検出素子として圧電センサ式のセンサを用いることで、構造を簡略化することができる。
【0027】
また、本発明の磁気センサでは、前記検出磁束は、生体内に生じた微弱電流によるものであることを特徴とする。
【0028】
上記の構成によれば、従来の生体内の微弱電流の測定装置であるSQUIDのような液化ガスによる冷却が不要で、かつ磁気検出素子が直接磁束を検出するので、ピックアップコイルが不要となり、コストやスペースを大幅に削減することができるとともに、メンテナンス作業も格段に軽減することができる。また、前記SQUIDで必要な断熱部材が不要になり、センサと生体との距離を近付け、該SQUIDで見られるような位置ずれの発生を抑えることができるとともに、磁束の交差も最小限に抑えられ、さらにセンサが小型で多数のセンサを設けることが可能になるので、位置分解能を向上することもできる。さらにまた、前記SQUIDのような部屋全体を磁気シールドするのではなく、被測定部周辺のみをシールドすればよく、磁気シールドのコストも格段に削減することができるとともに、測定に係る自由度を向上することができる。
【0029】
さらにまた、本発明の磁気センサでは、積層される前記一対の磁気検出素子の内、生体側の磁気検出素子の生体側に、強磁性体から成り、前記検出磁束に対して磁化容易軸の方向が平行であり、かつ生体側に拡径して形成される磁束集束ホーンをさらに備えることを特徴とする。
【0030】
上記の構成によれば、前記磁気検出素子がトンネル磁気抵抗素子や磁気インピーダンス素子である場合、該磁気検出素子は板状に形成され、前記生体からの検出磁束に対して、前述のように磁化容易軸の方向を直交させると、前記の板を生体上に立設させることになり、磁束は板の厚み部分からしか取り込めなくなる。また、前記磁気検出素子が圧電センサである場合は、駆動用の大面積の圧電素子に比べて磁束検出用の導体の面積は非常に小さい。このため、生体側に磁束集束ホーンを設けることで、生体表面からの磁束を飛躍的に多く取り込むことができる。
【0031】
また、本発明の生体磁気計測装置は、生体に被着される複数の前記の磁気センサと、前記各磁気センサの測定結果から、前記生体内に生じた微弱電流に関する情報を収集する計測装置本体と、前記生体に被着された磁気センサ上を覆い、外部磁場からシールドする被覆部材とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の磁気センサおよびそれを用いる生体磁気計測装置は、入力初段で環境磁場(ノイズ)を効率良く低減してSN比を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の一形態に係る生体磁気計測装置の使用状態を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施の他の形態に係る生体磁気計測装置の使用状態を模式的に示す正面図である。
【図3】前記生体磁気計測装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図3におけるインタフェイスの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】センサプラットフォームボードの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】被験者の頭部のMRI画像に位置マーカによるマーキング位置を重ね合わせて示す図である。
【図7】被験者の頭部の外形状を把握するための位置マーカの図である。
【図8】前記頭部の外形状を示す各位置マーカと、測定された電流の発生源(患部位置)ならびに向きおよび大きさを示すベクトルとを合成した脳磁図を示す図である。
【図9】本発明に係る磁気センサ素子の概念を模式的に示す斜視図である。
【図10】トンネル磁気抵抗素子における磁化容易軸の回転について説明するための図である。
【図11】図9で示す磁気センサ素子が、トンネル磁気抵抗素子または磁気インピーダンス素子の場合の磁気センサ素子の1素子の具体的構成を示す斜視図である。
【図12】図11で示す磁気センサ素子を実際の磁気センサに適用した場合の構造を示す図である。
【図13】図11で示す磁気センサ素子を実際の磁気センサに適用した場合の他の構造を示す図である。
【図14】磁気検出素子としてトンネル磁気抵抗素子を用いた場合における信号処理回路の具体的な一構成例のブロック図である。
【図15】磁気検出素子として磁気インピーダンス素子を用いた場合における信号処理回路の具体的な一構成例のブロック図である。
【図16】図15の等価回路である。
【図17】圧電振動方式のセンサの原理を説明するための斜視図である。
【図18】図9で示す磁気センサ素子が、圧電振動方式のセンサである場合の磁気センサ素子の1素子の具体的構成を示す斜視図である。
【図19】図18で示す磁気センサ素子を実際の磁気センサに適用した場合の構造を示す図である。
【図20】図18で示す磁気センサ素子を実際の磁気センサに適用した場合の他の構造を示す図である。
【図21】磁気検出素子として圧電振動方式の素子を用いた場合における信号処理回路の具体的な一構成例のブロック図である。
【図22】本発明の実施のさらに他の形態に係る生体磁気計測装置の使用状態を模式的に示す断面図である。
【図23】本発明の実施のさらに他の形態に係る生体磁気計測装置の使用状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(実施の形態1,2)
図1は、本発明の実施の一形態に係る生体磁気計測装置1の使用状態を模式的に示す図である。本実施の形態の生体磁気計測装置1は、被験者2の頭部21から発せられる磁気を計測して脳磁図を得るものとする。詳しくは、この生体磁気計測装置1は、脳の神経細胞が興奮したときに流れる電流から生じる磁場を測定し、たとえばてんかんの発作がどこで起っているか、脳の手術でどこまで(細胞が死んでいて)切除してよいかなどを判定するために用いられる。
【0035】
この生体磁気計測装置1では、被験者2の頭部21には、センサユニット3が被せられる。センサユニット3は、非磁性の材料で、いわゆる目出し帽(頭巾、バラクダ)型に形成される支持体31に、多数のセンサプラットフォームボード32が並べて搭載されて成る。これにより、前記支持体31の表裏何れかの面上に、多数のセンサプラットフォームボード32が、所定の間隔で分布することとなる。そして、支持体31の内面を頭部21の表面に沿って押し当てるようにして、センサユニット3が被験者2の頭部21に被せられることで、前記頭部21の表面から等間隔に(密着或いは支持体31の厚みを介して)、前記センサプラットフォームボード32のセンサ面が沿うことになる。前記センサプラットフォームボード32は、液化ガスによる冷却を必要とせず、常温域で、微弱な磁気計測が可能な、後述の各種の磁気センサ素子の集合体である。
【0036】
前記支持体31における被験者2の目22部分の開口33は、被験者2の心的影響等を考慮したもので、測定部位などの事情によっては、特に設けられなくてもよい。その場合、前頭部、後頭部および側頭部のほか、顔面部から発せられる脳磁気を計測することも可能となる。
【0037】
図2は、本発明の実施の他の形態に係る生体磁気計測装置1’の使用状態を模式的に示す正面図である。本実施の形態の生体磁気計測装置1’は、被験者2の胸部26や腹部27から発せられる磁気を計測するものである。被測定部が胸部26の場合には、心臓28の筋電位(収縮のパルス)を測定し、たとえばその測定結果をCTやMRIなどと重ねることで、心臓28の動作に異常が無いか確認することができる。また、被測定部が腹部27の場合には、安静時の妊婦の胎児の心臓から発生する磁場などを計測でき、胎児の心臓の動きが分り、出産前検査などに用いることができ、或いは、脊髄の損傷を確認することができる。
【0038】
そのため、センサユニット3’は、腹巻き状の支持体31’の表裏何れかの面上に、多数のセンサプラットフォームボード32が、所定の間隔で配置されて構成される。椅子に座った状態や立った状態など、被験者2の上体を起こして測定を行う場合は、支持体31‘に、肩紐状の固定具34が設けられ、ずり落ちないように構成して、生体との密着を高めることも好ましい。
【0039】
図3は、上述のように構成される生体磁気計測装置1,1’の電気的構成を示すブロック図である。これらの生体磁気計測装置1,1’は、前記センサユニット3,3’と、演算装置5と、インタフェイス6とを備えて構成される。演算装置5は、パーソナルコンピュータなどから成り、センサユニット3,3’と、インタフェイス6を介して接続される。センサユニット3,3’とインタフェイス6との間は、ケーブル7で接続されており、ケーブル7の届く範囲でセンサユニット3を自由に移動可能であり、向きを自由に変えることができる。ケーブル7は、電源線71と、信号線72とを備えている。
【0040】
図4は、インタフェイス6の電気的構成を示すブロック図である。インタフェイス6は、PCI・バス・コントローラ61と、コマンド変換・バッファ・コントローラ62と、SRAM63と、シリアルインタフェイスドライバ64とを備えて構成される。PCI・バス・コントローラ61は、演算装置5とコマンド変換・バッファ・コントローラ62との間の通信を行う。コマンド変換・バッファ・コントローラ62は、演算装置5からのコマンドを各センサユニット3へ送信するとともに、各センサユニット3からシリアル信号で送信されてきた計測結果を適宜展開し、SRAM63に書込んでゆくとともに、演算装置5からの読出し要求に応えて、SRAM63の記憶内容を読出して演算装置5へ送信する。シリアルインタフェイスドライバ64は、コマンド変換・バッファ・コントローラ62と、各センサプラットフォームボード32との間の通信を行う。
【0041】
図5は、各センサプラットフォームボード32の電気的構成を示すブロック図である。センサプラットフォームボード32には、アレイ状に配列された数mm角の磁気センサ素子を複数個含む磁気センサアレイモジュール321,321,・・・が電気的に接続されるとともに、機械的に固定されている。そして、このセンサプラットフォームボード32にはまた、コントローラ322と、RAM323と、増幅・変換回路324,324,・・・とを備える。増幅・変換回路324は、磁気センサアレイモジュール321毎に設けられ、磁気センサアレイモジュール321と1対1で接続されている。増幅・変換回路324は、磁気センサアレイモジュール321からの出力信号の増幅などを行う後述の信号処理回路324aと、前記信号処理回路324aの出力をデジタル信号に変換してコントローラ322に入力するA/D変換器324bとを有する。RAM323は、コントローラ322に入力された情報やコントローラ322が演算した情報を記憶する記憶装置である。
【0042】
コントローラ322は、演算装置5からのコマンドを受信して計測を開始し、磁気センサアレイモジュール321を稼動し、その出力信号を順次増幅・変換回路324を介して取込み、RAM323に記憶してゆく。その後、コントローラ322は、適宜のタイミングで(演算装置5からのポーリングに応答したり、各コントローラ322に予め定められている時刻に)、択一的に前記磁気センサアレイモジュール321の出力信号を、所定のフォーマットによるシリアル通信で、信号線72を介して演算装置5に送出する。
【0043】
計測装置本体である演算装置5は、前記各磁気センサアレイモジュール321の出力信号から、前記生体内に生じた微弱電流に関する情報、たとえば発生位置から、流れた位置や大きさなどの情報を収集する。その後、CTやMRI等により得られた被験者2の頭部21や胸部26の立体トモグラフ情報に対して、各磁気センサアレイモジュール321の生体(被験者2の頭部21や胸部26)上での被着位置と脳磁や心磁の強度の計測結果とを重ねることにより、被験者2の脳や心臓28における磁場信号分布を明確に対応付けることができる。その重ね合わせには、複数の位置マーカを用いることが、高い位置精度を得るには必要である。
【0044】
具体的には、各磁気センサアレイモジュール321の前記被着位置は、磁気センサアレイモジュール32毎に演算装置5で認識されていることが必要であるが、人為的に各磁気センサアレイモジュール321を予め定められた被着位置に被着するか、または、生体上に各磁気センサアレイモジュール321を被着した上でその被着位置を計測して演算装置5に入力すればよい。
【0045】
その磁気センサアレイモジュール321の生体(頭部21や胸部26)上での位置計測には、3次元計測装置を用いることが好ましい。そして、その3次元測定結果と、CT画像やMRI画像との対応付けを行うために、アライメント用の前記マーカが生体(頭部21や胸部26)における診断の邪魔にならない箇所に2〜3個取付けられ、その場所が前記光学式3次元計測装置やCT、MRIなどで予め測定される。図6には、前記頭部21のMRI画像に前記位置マーカによるマーキング位置MKを、重ね合わせて示す。
【0046】
一方、この位置マーカは、前記センサユニット3,3’でも認識される必要があり、具体的な位置マーカとして、小さなコイルのシールを用いることができる。そして、磁気計測中にマーキングの時だけこのコイルに通電して微弱な磁場を発生することで、その磁場発生位置がセンサユニット3,3’で計測されてマーキングされ、前記3次元測定結果と、CT画像などとの重ね合わせの指標にすることができる。
【0047】
さらに、前記磁気計測の際には、前記位置マーカと同様のコイルから成る位置マーカが、頭部21や胸部26の外形状の把握が可能になる十数〜数十個程度、要所に取付けられて、該生体磁気計測装置1で磁気計測が行われ、その計測開始または終了時に演算装置5などによって前記各位置マーカに順次通電され、磁場発生位置を捉えることで、前記外形状を把握することができる。これにより、脳磁図や心磁図が描けるようになる。図7は、前記被験者2の頭部21の外形状を把握するための位置マーカの図である。以上の非常に簡単なステップで、断層3次元画像と、脳磁図や心磁図との重ねあわせが可能になり、高位置精度で脳機能や心機能の解析が可能になる。
【0048】
ここで、MRI画像やCT画像の重ね合わせは、位相限定相関法(POC)を3次元に拡張することで行うことができる。すなわち、画像中に骨が含まれるボクセルを基準点とし、その基準点を3次元ブロックマッチングによってサブボクセル精度で対応付けを行うことで、高速高精度な位置合わせを行うことができる。このような手法は、「3次元位相限定相関法に基づく高精度ボリュームレジストレーション」、田島裕一郎他 FIT 2009 頁:95-102 特殊号:講演論文集 第2分冊に詳しく示されている。
【0049】
一方、本実施の形態では、マーキングの手順を拘束するものではなく、各磁気センサアレイモジュール321の位置と断層写真の位置とを画像計測するなど、他の方法で重ね合わせる場合においても適用可能である。たとえば、他の実施の形態として、前記3次元計測装置を用いない場合には、透視効果の高いCTスキャンなどで、磁気センサアレイモジュール321の位置と生体(頭部21や胸部26)の位置とを同時に計測することで、前記位置計測を行うことができる。そのような実施の形態では、CTスキャン情報に磁気センサアレイモジュール321もしくはセンサプラットフォームボード32の情報が得られるので、センサと生体との位置計測と、以下の生体磁気計測とを連続的に行うことで、正確な3次元情報として情報をリンクできる。
【0050】
こうしてマーカ位置が計測されると、実際の生体磁気計測が開始され、先ず、生体磁気計測装置1,1’全体に電源が投入され、各磁気センサアレイモジュール321にも電流が印加される。これによって、被験者2の頭部21や胸部26から発生される磁束の影響を受けて、前記磁気センサアレイモジュール321中の各磁気センサ素子から出力信号が導出される。
【0051】
次に、オペレータにより、演算装置5に計測実行コマンドが入力される。すると、演算装置5は、計測実行コマンドをn個のセンサプラットフォームボード32に送出する。各センサプラットフォームボード32にあっては、計測実行コマンドをコントローラ322が受信する。コントローラ322は、増幅・変換回路324を介して、デジタル化された各磁気センサアレイモジュール321からの出力信号を受け、これを各磁気センサアレイモジュール321のアドレス情報を特定する情報にリンクさせた所定のフォーマットで生体磁気計測情報として演算装置5に送出する。
【0052】
演算装置5は、各コントローラ322からの生体磁気計測情報を解析して、被検者2の頭部21や胸部26上の位置と磁気の強さと方向との組み合わせからなる脳磁図や心磁図を演算し、画像情報化して表示装置51に出力する。また、演算装置5は、生体磁気計測情報の画像と、前述の被検者2の頭部21や胸部26のMRI画像や外形の3次元スキャン画像等との位置を合わせた合成画像を生成し、表示装置51に表示出力する。図8には、前記頭部21の外形状を示す各位置マーカと、測定された電流の発生源(患部位置)ならびに向きおよび大きさを示すベクトルとを合成した脳磁図を示す。
【0053】
前記計測実行コマンドは、コマンドが入力される度に演算装置5が計測を実行するものであってもよいが、計測開始コマンドと計測終了コマンドとから構成されるものでもよい。その場合、演算装置5は、計測開始コマンドと計測終了コマンドとの間の期間において、一定の時間レートで計測を実行し、リアルタイムに変化する脳磁図や心磁図を表示装置51に表示することが有効である。また、生体磁気計測情報や、脳磁図や心磁図の情報、表示のために生成された画像情報は、演算装置5から読出可能に記録しておき、表示装置51に表示や再生を可能にしておくことが好ましい。
【0054】
上述のように構成される生体磁気計測装置1,1’において、本実施の形態では、前記磁気センサアレイモジュール321中の各磁気センサ素子が、前述のように、液化ガスによる冷却を必要とせず、常温域で微弱な磁気計測が可能な素子であり、以下のように構成される。図9は、本実施の形態の磁気センサ素子30の概念を模式的に示す斜視図である。本実施の形態の磁気センサ素子30は、相互に等しい一対の磁気検出素子301,302を有し、前記一対の磁気検出素子301,302が、検出磁束Bの方向に互いに間隔を開けて配置されるとともに、前記一対の磁気検出素子301,302の検出結果の差分が出力とされる。
【0055】
(実施例1,2)
前記の磁気センサ素子30には、先ずトンネル磁気抵抗(TMR)素子または磁気インピーダンス(MI)素子を用いることができる。その検出原理においては、強磁性体を用いており、外部磁場を材料内に収束させて磁束密度を高め、以下に詳述するように、その強磁性体の磁化容易軸が回転するという現象を基本としている。前述の非特許文献1は、前記磁気インピーダンス素子の生体の磁気計測への適用例であるが、上述のような本発明の特徴は備えていない。
【0056】
先ず、前記磁化容易軸の回転について説明する。スパッタなどで、図10で示されるように、数μm以下の厚みに成膜されたアモルファス金属(CoNbZr)などの強磁性体101(図10では、成膜に用いた基板を引き剥がしている)が、磁界104の中で加熱冷却されると、磁気モーメントを揃えて磁化容易軸102,103を設定することができる。検出すべき外部磁界Bに対して、この磁化容易軸102,103が直交する方向に配置されると、外部磁界Bに沿う方向へ磁化容易軸が参照符号102’,103’のように回転する。
【0057】
この現象によって、磁気インピーダンス方式の素子では、高周波電流Iにおいて発生する磁界の透磁率変化による回路インピーダンスの変化から、外部磁界Bを検出している。図10は、強磁性体101の中に高周波電流Iを流す方式を示しているが、高周波回路を別にして強磁性体薄膜を回路上に絶縁して貼り付ける方式もある。この場合も同様に、外部磁界Bによる強磁性体101の磁化容易軸102,103の回転により、誘導起電流が変化して高周波電流が変動することで、微弱な外部磁界Bが検出される。また、インピーダンス変化の検出は、直接インピーダンスを測定するのではなく、高周波電流Iの位相ズレをヘテロダイン検出することで行われており、これによって検出感度を向上することができる。どちらの場合の素子も、その磁化容易軸102,103が外部磁界Bに対して直交する向きに配置されて外部磁界Bを検出することで、最も感度が高くなる。
【0058】
また、トンネル磁気抵抗方式の素子は、磁化容易軸をもった強磁性体に酸化マグネシウムやアルミナなどの数nmの厚みの絶縁層を介して、磁化方向を固定した強磁性体が積層されて構成されており、両強磁性体間に電圧をかけることで、磁化固定軸と磁化容易軸との成す角度に応じて絶縁層を通るトンネル電流が大きく変動して流れ、この電流によって微小な外部磁界Bを検出している。前記の磁化容易軸と磁化固定軸との成す角度において、両方向が一致したときが最もトンネル電流が大きく、反対向きとなったときが最もトンネル電流が小さくなり、この180度の回転角でほぼ正弦波的にトンネル電流は変化する。したがって、磁化固定軸に対して磁化容易軸の向きが直交する場合が、最もトンネル電流の変化として感度良く捉えることができる。これらの磁気インピーダンス素子およびトンネル磁気抵抗素子は、板状の形態をした強磁性体の断面が透過磁束の開口部となる。
【0059】
しかしながら、これらの強磁性体を用いた常温磁気検出素子は、小型で感度が高いとはいえ、SQUID程の検出感度には達しておらず、これを単独で直接生体磁気などの微弱な磁気検出に使うことはできない。そのため、地磁気や環境磁場などのノイズを低減することが、検出感度を相対的に高める上で特に重要となり、ノイズ低減の工夫が実使用においては不可避である。そこで本実施の形態の常温高感度磁気検出素子における、外部ノイズ磁界の除去方法を以下に詳述する。
【0060】
前述の図9は、本発明の概念を示す模式図であり、図11は、前記トンネル磁気抵抗素子または磁気インピーダンス素子の場合の磁気センサ素子の1素子の構成を示す斜視図である。前述のように、相互に等しい一対の磁気検出素子301,302には、強磁性体を有する磁気検出素子301a,302aを用い、該一対の磁気検出素子301a,302aは、検出磁束Bと平行に、さらにその磁化容易軸3011a,3021aの方向が前記検出磁束Bと直交し、かつ互いの磁化容易軸3011a,3021aが直交するように、前記検出磁束Bの方向に互いに間隔を開けて配置される。さらにまた、前記磁化容易軸3011a,3021aに対して、磁化固定軸3012a,3022aは、検出磁束Bを最も感度良く検出するために、直交して、すなわち該磁化固定軸3012a,3022aが検出磁束Bと平行に設けられる。図11では、磁化固定軸3012a,3022aの方向は、互いに逆向きとなっているが、同じ方向でもよい。
【0061】
こうして、磁気検出素子301a,302aが検出磁束Bと略平行に、かつその磁化固定軸3012a,3022aも検出磁束Bと略平行に配置されることで、外部からのノイズとして、地磁気などの広範に均等に到来する環境磁場(外部磁束)BNがあると、両磁気検出素子301a,302aの磁化固定された強磁性体にはそれぞれほぼ等しい数の磁束(図では各5本)が入力する。ここで、前述のように磁化固定軸3012a,3022aの方向は一致しているが向きは逆となっていることで、誘導起電流やトンネル電流の変化量はそれぞれの検出素子間で逆向きかつ同じ大きさとなる。したがって、センサ出力端に2つの磁気検出素子301a,302aを直列に接続して出力を加算すれば、その抵抗平均値はほぼ一定となり、出力電流はほとんど変わらない。なお、磁化固定軸3012a,3022aの向きを同じにした場合、両磁気検出素子301a,302aの外部ノイズ磁場BNによる電流変化が同じ向きに現れるので、この場合は両磁気検出素子301a,302aの出力電流の差動をとって検出電流とすれば、ゼロとなって外部ノイズ磁場BNの影響をキャンセルすることができる。
【0062】
これに対して、検出すべき信号磁束BSは、生体に近い方の磁気検出素子301aに磁束(図では9本)を吸収され、透磁路の出口で発散する。その直後にある生体から遠い方の磁気検出素子302aには、発散した磁束の一部のみ(図では1本)が吸収されるだけなので、両磁気検出素子301a,302a間の出力電流には大きな差を生じる。したがって、これらの加算をとっても差動をとっても、信号電流として検出することができる。
【0063】
そして、磁気検出素子301a,302a間では、磁束の入力面(磁化固定軸3012a,3022a)を直交する配置とすることで、磁気感度を最大にすることができる。すなわち、生体から遠い方の磁気検出素子302aにおいて、近い方の磁気検出素子301aに重ならない部分では、磁路を形成する部材が無いために生体からの微弱な磁束BSが届かず、前記磁気検出素子301aとの差分が顕著に現れるためである。
【0064】
また、2つの磁気検出素子301a,302aにおける検出磁束B方向の間隔は、0.5〜20mmであることが好ましい。これは、該磁気検出素子301a,302aがトンネル磁気抵抗素子または磁気インピーダンス素子である場合、磁束Bは強磁性体の中を通るので、SQUIDのような真空中を通る場合に比べて、減衰が1/2000程度に少なくなり、該2つの磁気検出素子301a,302aが近接し過ぎると、該2つの磁気検出素子301a,302aを通過する検出磁束が略等しくなるためである。そこで前記のように2つの磁気検出素子301a,302aの検出磁束B方向の間隔を前記0.5〜20mmとすることで、検出磁束Bに対して、さらに良好な感度を得ることができる。
【0065】
こうして、液化ガスによる冷却を行わず、常温域で微弱な磁気計測が可能な前記磁気検出素子301a,302aとして、トンネル磁気抵抗素子を用いることで、より高感度化することができ、また磁気インピーダンス素子を用いることで、構造を簡略化することができる。
【0066】
そして、前記トンネル磁気抵抗素子または磁気インピーダンス素子を用いる磁気検出素子301a,302aは、実際の前記磁気センサ30への適用にあたって、図12で示すように、ゴムなどの生体に密着し、非磁性の材料から成る柔軟な支持体31に、相互に直交するように積層して埋め込まれる。そして、数mm角の一対の磁気検出素子301a,302aが、適宜複数対組み合わせられて、前記磁気センサアレイモジュール321を構成する。したがって、各磁気検出素子301a,302aと頭皮との位置関係は、柔軟な支持体31によって密着されているので、体動によって動くことはなく、一度マーキング検出するだけで、得られた脳磁診断情報などをMRIなどによる頭部立体トモグラフ画像に精度良く重ねることができる。また、被験者21が、センサユニット3を装着すると、柔軟な支持体31で覆われ、その沈み込みにより、センサプラットフォームボード32が頭部21に密着される。
【0067】
好ましくは、図13で示すように、積層される前記一対の磁気検出素子301a,302aの内、生体側の磁気検出素子301aの生体側に、強磁性体から成り、前記検出磁束Bに対して磁化容易軸303aの方向が平行であり、かつ生体側に拡径して形成される磁束集束ホーン303をさらに備えることである。
【0068】
このように構成することで、前記磁気検出素子301a,302aがトンネル磁気抵抗素子や磁気インピーダンス素子である場合、該磁気検出素子301a,302aは板状に形成され、前記生体からの検出磁束Bに対して、前述のように磁化容易軸3011a,3021aの方向を直交させると、前記の板を生体上に立設させることになり、磁束Bは板の厚み部分からしか取り込めなくなるのに対して、生体側に前記磁束集束ホーン303を設けることで、生体表面からの磁束BSを飛躍的に多く取り込むことができる。
【0069】
図14は、常温域で微弱な磁気計測が可能な前記磁気検出素子301a,302aとして、トンネル磁気抵抗素子を用いた場合における前記信号処理回路324aの具体的な一構成例である信号処理回路324a1のブロック図である。磁気検出素子301a,302aとしてトンネル磁気抵抗素子を用いる場合には、信号処理回路324a1は、各トンネル磁気抵抗素子(301a,302a)のトンネル電流をオペアンプOP1,OP2でそれぞれ電圧変換し、各オペアンプOP1,OP2の出力をオペアンプOP3によって差動増幅して、センサ出力端である該オペアンプOP3の出力端から、差動電圧出力を得ることができる。
【0070】
これによって、前述のように、地磁気などの遠方からの環境磁界BNは同相のトンネル電流変化となるので、キャンセルされて出力に表れないのに対して、信号磁界BSは2つのトンネル磁気抵抗素子(301a,302a)で透過量が異なるので、両素子の出力の差動を取ることで、出力信号に残すことができる。こうして、前記信号処理回路324a1は、ノイズ磁界BNをキャンセルした高いSN比を有する信号電圧を得ることができる。
【0071】
また、図15は、常温域で微弱な磁気計測が可能な前記磁気検出素子301a,302aとして、磁気インピーダンス素子を用いた場合における前記信号処理回路324aの具体的な一構成例である信号処理回路324a2のブロック図である。また、図16には、この図15の等価回路を示す。磁気検出素子301a,302aとして磁気インピーダンス素子を用いる場合には、信号処理回路324a2の高周波発振器OS1からの高周波が、上下の各磁気インピーダンス素子(301a,302a)の回路に、同位相・同振幅で入力される。各磁気インピーダンス素子(301a,302a)は、近接平行回路であることと、強磁性材料がシールドするので、該回路からの電磁放射は少ない。そして、図16のブリッジ回路で示すように、両素子間でのインピーダンスRx1,Rx2に差があるときに、電圧差と位相差とが発生し、該信号処理回路324a2の出力として、検出回路M1で検出し、その出力端から出力することができる。
【0072】
以上のように、本実施例の磁気センサである磁気検出素子301a,302aは、生体内に生じた微弱電流による微弱な磁束を計測するために、特に液化ガスによる冷却を行わず、常温域で計測が可能で、強磁性体を用いるトンネル磁気抵抗素子または磁気インピーダンス素子を、2つを一対で使用する。そして、その2つの磁気検出素子301a,302aは、検出磁束Bの方向に互いに間隔を開けて積層され、その積層状態は、前記検出磁束Bに対して磁化容易軸3011a,3021aの方向が略直交に、かつ互いの磁化容易軸3011a,3021aが直交するように配置される。さらに、該磁気センサの出力として、前記2つの磁気検出素子301a,302aの検出結果の差分を用いる。
【0073】
したがって、前記生体が発生する微弱な検出磁束BSは、生体の表面から比較的近い位置で磁束のループを形成し、表面から比較的近い方の磁気検出素子301aは通過しても、前記ループによって比較的遠い方の磁気検出素子302aを通過する磁束の割合が少なくなる。これに対して、地磁気や環境磁場などの生体外の環境などによる比較的大きな磁束(ノイズ)BNは、前記2つの磁気検出素子301a,302aを、ほぼ共通に通過する。これによって、該磁気センサの出力として、前記のように2つの磁気検出素子301a,302aの検出結果の差分を用いることで、入力初段で環境磁場(ノイズ)BNを効率良く低減してSN比を向上することができる。こうして、強磁性体を用いた常温磁気検出素子301a,302aから成る該磁気センサ3,3’では、低コストかつ高感度に、微弱な磁束を測定することができる。
【0074】
また、該磁気センサ3,3’では、従来の生体内の微弱電流の測定装置であるSQUIDのような液化ガスによる冷却が不要で、かつ磁気検出素子301a,302aが直接磁束Bを検出するので、ピックアップコイルが不要となり、コストやスペースを大幅に削減することができるとともに、メンテナンスの負担も格段に軽減することができる。また、該磁気センサ3,3’では、前記SQUIDで必要な断熱部材が不要になり、センサと生体との距離を近付け、SQUIDで見られるような位置ずれの発生を抑えることができるとともに、磁束の交差も最小限に抑えられ、さらにセンサが小型で多数のセンサを設けることが可能になるので、位置分解能を向上することもできる。さらにまた、該磁気センサ3,3’では、前記SQUIDのような部屋全体の大掛かりな磁気シールドが不要になり、磁気シールドのコストも格段に削減することができるとともに、測定に係る自由度を向上することができる。
【0075】
(実施例3)
一方、常温域で微弱な磁気計測が可能な前記磁気検出素子301,302として用いられる圧電振動方式のセンサは、図17に示すように、板状のPZTなどの圧電材料111を伸縮振動させ、検出電極112を外部磁界Bとは垂直方向Vに往復移動させることにより、フレミングの法則から誘導起電圧Voutを発生させ、その振幅から外部磁界Bの大きさを検出するものである。PZTの分極方向と外部磁界Bの方向とを、板面に垂直方向(図中、θ=0)とすると、磁束を横切る開口面積を最大にできるので、前記誘導起電圧Voutの発生効率を高めることができる。
【0076】
具体的に圧電振動方式の素子の場合は、前述の図9の模式図に類似して、図18に示すように、相互に等しい一対の磁気検出素子301b,302bを有し、前記一対の磁気検出素子301b,302bが検出磁束B方向に互いに間隔を開けて配置される。そして、前記検出電極112の両開口部を外部磁束BNが透過することで、同じ大きさの誘導起電圧が発生するのに対して、信号磁束BSは、発生源が開口部から近いため被検体に近い下方の磁気検出素子301bの開口を通過後、急速に閉じようとして外側へ広がるので、上方の磁気検出素子302bの開口を通る磁束は急激に減少する。したがって前述と同様に、上下の開口で発生するそれぞれの誘導起電圧の差分を用いることで、外部磁束BNによる電圧成分は除去され、高いSN比を有する信号起電圧を得ることができる。さらに、検出電極112が強磁性体材料であるか、強磁性体材料を貼り付けてある場合は、下からの信号磁束BSが上の磁気検出素子302bの検出電極112に引っ張られやすいので、該検出電極112の長手方向の向きを図11と同様に直交配置にすると、該磁気センサ3,3’のSN比をより向上させることができる。
【0077】
そして、このような圧電振動方式の磁気検出素子301b,302bを、実際の前記磁気センサ3,3’に適用する場合、前記図12と同様に図19で示すように、ゴムなどの生体に密着し、非磁性の材料から成る柔軟な支持体31,31’に、該磁気検出素子301b,302bが積層して埋め込まれる。そして、数mm角の一対の該磁気検出素子301b,302bが、適宜複数対組み合わせられて、前記磁気センサアレイモジュール321を構成する。図19では、一対の磁気検出素子301b,302bを直交配置している。
【0078】
また好ましくは、図13と同様に図20で示すように、積層される前記一対の磁気検出素子301b,302bの内、生体側の磁気検出素子301bの生体側に、強磁性体から成り、前記検出磁束Bに対して磁化容易軸303aの方向が平行であり、かつ生体側に拡径して形成される磁束集束ホーン303がさらに設けられる。特に、磁気検出素子301,302がこの圧電振動方式の磁気検出素子301b,302bである場合は、駆動用の大面積の圧電素子111に比べて、磁束検出用の検出電極112の面積は非常に小さいので、この磁束集束ホーン303を設けることが好適である。
【0079】
図21は、前記図18で示す圧電振動方式の磁気検出素子301b,302bを用いた場合における前記信号処理回路324aの具体的な一構成例である信号処理回路324a3のブロック図である。圧電振動方式では、図18で示すように、2枚の磁気検出素子301b,302bの検出電極112を上下に重ね、信号処理回路324a3の高周波発振器OS2から、それぞれの圧電素子111に振動駆動電圧を加えて、同位相・同振幅で振動させる。検出磁場Bは下方より入り、ここで前記検出電極112の配線を上方の磁気検出素子302bと下方の磁気検出素子301bとで異符号同志に結線しておくことで、それぞれの誘導起電圧の同相成分がキャンセルされ、差動成分のみが両端電圧として出力される。その出力をOPアンプなどで受けて、演算回路またはデジタル数値で差動を取ってもよいが、このように異符号端子で結線することにより、該信号処理回路324a3の出力として、電圧計M2によって、極めて簡素に差動出力を得ることができ、その出力端から出力することができる。キャンセルされた同相電圧は、地磁気などの環境磁界BNによるノイズ成分であり、残った差動電圧は信号磁界BSによるものである。勿論、個々の磁気検出素子301b,302bの出力を前記OPアンプで受けて、オフセットやバイアス調整、ゲインマッチングを行ってもよいが、素子数と消費電力、ならびにコストが増える。前述のように、2つの検出電極112の配置は、長手方向を直交に配置すると、検出信号のみ同相性が低下するので、さらにSN比を大きく取ることができる。
【0080】
こうして、液化ガスによる冷却を行わず、常温域で微弱な磁気計測が可能な磁気検出素子301,302として、圧電振動方式の磁気検出素子301b,302bを用いることで、構造を簡略化することができる。
【0081】
具体的に本実施の形態とSQUIDとの比較として、SQUIDでは、磁気検出素子となるピックアップコイルが、20mm×20mm×高さ200mmの形状を有するので、被験者2の頭部21の周囲には、200〜400個程しか設けることができない。これに対して、本実施の形態では、磁気検出素子301,302が直接磁束を検出するので、ピックアップコイルが不要となり、上下に並べても5mm×5mm×高さ40mmと小さく、かつ液体ヘリウムなどの冷媒による冷却を必要としないので、検査部位に密着する柔軟な材料(支持部材31,31’)に、直接1200個程度の磁気検出素子を並べることができる。
【0082】
これにより、検査部位に密着する側の磁気検出素子301は、従来より磁束発生源との距離がほぼ1/3以下になるので、信号磁束BSの強度では9倍高くなって、該信号磁束BSを明瞭に捕捉することができる。しかも、従来のピックアップコイルでは上側の磁気検出素子の磁束発生源からの距離が下側の磁気検出素子に比べて3倍程度であったのが、本実施の形態では、素子の大きさが小さいにも拘わらず約5倍と大きくできるので、上下の磁気検出素子302,301間での信号磁束BSの検出強度の比は、従来の1/9から1/25と大きくなる。一方、地磁気や環境磁場などの遠方からの外部磁束BNは、本実施の形態の磁気検出素子301,302では間隔が従来の1/4〜1/5程度と近いので、その空間的な姿勢によらず、ほとんど均等に透過し、両磁気検出素子301,302間でほぼ同じ大きさの信号レベルを発生することができる。
【0083】
以上の本実施の形態による効果から、上下の両磁気検出素子301,302間の出力の差動を取ることで、信号磁束BSのSN比は従来のピックアップコイルによる場合よりも10倍以上に向上することができる。また、磁気センサ3,3’の大きさを小さく維持したまま、柔軟な材料に1000個を越える数を配置できることで、検査部位に密着して高分解能・高感度・高SN比を実現することができ、脳磁計測における格段に詳細な診断情報と診断の確実性・信頼性をもたらすことが可能となる。前記磁気センサ素子30の適用範囲は、脳磁計に限ったものではなく、心磁計や脊髄磁場診断などにおいても全く同様の効果を生むものであり、限定されない。
【0084】
なお、磁気検出素子301,302の熱雑音を低減するために簡易冷却が必要な場合は、これらの磁気検出素子301,302の平面部にペルチェ素子を直接貼り付けて冷却を行うようにしてもよく、或いは熱伝導性が良い銅やアルミ合金などを介して冷却を行うようにしてもよい。
【0085】
(実施の形態3)
図22および図23は、本発明の実施のさらに他の形態に係る生体磁気計測装置1a,1a’の使用状態を模式的に示す断面図である。これらの生体磁気計測装置1a,1a’は、前述の生体磁気計測装置1,1’に類似しており、それぞれ脳磁図および心磁図を得ることができる。本実施の形態の生体磁気計測装置1a,1a’では、上述のようにしてセンサユニット3,3’を被験者2の頭部21や胸部26に装着した上に、磁気シールドを行う被覆部材4,4’を装着し、計測を実行する。なお、この被覆部材4,4’に併用して、被験者2を囲むように、磁気シールド室を形成してもよい。ただし、その場合の磁気シールド室は、前述のSQUIDに用いられるような大掛かりなものではなく、簡易なものでよい。
【0086】
前記被覆部材4は、前頭部、後頭部および側頭部に加えて、頬、鼻、口、目、顎または頸の少なくとも1つを覆うこととする。図22の例では、前記被覆部材4は、それらの総てを覆う、いわゆるフルフェイスのヘルメット(頭部を衝撃などから保護するために被る防護帽)の形状を呈しているものとする。なお、目や口については、前述の支持体31の開口33に対応する。
【0087】
一方、センサユニット3’に対応して、被覆部材4’は、前記胸部26や胴部27に適した円筒形状に形成される。残余の演算装置5などの構成は、前述の生体磁気計測装置1,1’と同様であり、その説明を省略する。特に被覆部材4’では、磁気センサである前記センサプラットフォームボード32が内張りされている。そして、この被覆部材4’は、磁気シールドを行う外側の筒状体から成り、その内側に充填される緩衝用の内装体が前記支持体31’となる。また、このセンサユニット3’は、2つの部材3a’,3b’から構成されており、たとえば図23で示すように、楕円の軸直角断面の長径線で、すなわち被験者2の前後に分割可能となっている。分割された2つの部材3a’,3b’は、一端側がヒンジなどで連結され、他端側がフックなどで締着され、或いは両端共フックなどで締着されてもよい。
【0088】
したがって、必要に応じてこれらの被覆部材4,4’を着用することで、外乱磁束BNをより確実に遮断し、測定精度を向上することができる。また、被測定部が頭部21である場合に、前記被覆部材4が、いわゆるヘルメットの形状を呈していることで、被験者2は被覆部材4を被るだけで、磁気シールドを行うことができ、被覆部材4の装着が容易である。
【0089】
前記被覆部材4,4’としては、一般に用いられているパーマロイのシールドが好適である。その場合、前記パーマロイの薄層が鋳物で成型され、水素雰囲気下で焼き鈍ますことで歪みの除かれたものが複数層積層されて該被覆部材4,4’が形成される。このため、該被覆部材4,4’は、左右に半割れや上下に分離した状態などで成型されたパーツが、接着や他の支持体によって、前記ヘルメット形状などに組上げられて構成される。
【0090】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ充分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を著しく逸脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0091】
1,1’;1a,1a’ 生体磁気計測装置
2 被験者
21 頭部
22 目
26 胸部
27 腹部
28 心臓
3,3’ センサユニット
30 磁気センサ素子
301,302;301a,302a,301b,302b 磁気検出素子
3011a,3021a 磁化容易軸
3012a,3022a 磁化固定軸
303 磁束集束ホーン
303a 磁化容易軸
31,31’ 支持体
32 センサプラットフォームボード
321 磁気センサアレイモジュール
322 コントローラ
323 RAM
324 増幅・変換回路
324a;324a1,324a2,324a3 信号処理回路
324b A/D変換器
33 開口
4,4’ 被覆部材
5 演算装置
51 表示装置
6 インタフェイス
61 PCI・バス・コントローラ
62 コマンド変換・バッファ・コントローラ
63 SRAM
64 シリアルインタフェイスドライバ
7 ケーブル
71 電源線
72 信号線
101 強磁性体
102,103 磁化容易軸
111 圧電材料
112 検出電極
113 駆動電極
B 検出磁束
BN 外部磁束
BS 信号磁束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体を用い、相互に等しい一対の磁気検出素子と、出力端とを有する磁気センサであって、
前記一対の磁気検出素子は、その磁化容易軸の方向が検出磁束に対して直交し、かつ互いの磁化容易軸が直交するように、前記検出磁束の方向に互いに間隔を開けて配置され、
前記出力端は、前記一対の磁気検出素子の検出結果の差分を得ることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記磁気検出素子は、トンネル磁気抵抗素子であることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記磁気検出素子は、磁気インピーダンス素子であることを特徴とする請求項1記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記一対の磁気検出素子における検出磁束方向の間隔は、0.5〜20mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項5】
相互に等しい一対の磁気検出素子と、出力端とを有する磁気センサであって、
各磁気検出素子は、圧電素子と、前記圧電素子によって検出磁束中で振動されて起電力を得る導体とを備える圧電センサ式のセンサから成り、
前記一対の磁気検出素子は、前記検出磁束の方向に互いに間隔を開けて配置され、
前記出力端は、前記一対の磁気検出素子の検出結果の差分を得ることを特徴とする磁気センサ。
【請求項6】
前記検出磁束は、生体内に生じた微弱電流によるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気センサ。
【請求項7】
積層される前記一対の磁気検出素子の内、生体側の磁気検出素子の生体側に、強磁性体から成り、前記検出磁束に対して磁化容易軸の方向が平行であり、かつ生体側に拡径して形成される磁束集束ホーンをさらに備えることを特徴とする請求項6記載の磁気センサ。
【請求項8】
生体に被着される複数の前記請求項6または7記載の磁気センサと、
前記各磁気センサの測定結果から、前記生体内に生じた微弱電流に関する情報を収集する計測装置本体と、
前記生体に被着された磁気センサ上を覆い、外部磁場からシールドする被覆部材とを含むことを特徴とする生体磁気計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−152515(P2012−152515A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16701(P2011−16701)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】