説明

磁気センサユニット

【課題】マグネットを覆うカバー板の剛性を下げることなく、媒体搬送面とマグネットの間のギャップを狭くすることができる磁気センサユニットを提供すること。
【解決手段】磁気センサユニット5は、読み取り対象の媒体2に磁界を与えるためのマグネット6、7と、マグネット6、7を覆っているカバー板11と、カバー板11のマグネット6、7とは反対側の表面を通過する媒体2の磁気パターンを読み取る磁気センサ装置8を有し、カバー板11は、表面14aに媒体搬送面11aが形成された表面側カバー板14と、表面側カバー板14の裏面14bに積層固定された裏面側カバー板15を備えた複合板であり、裏面側カバー板15にはマグネット6、7が装着あるいは挿入される装着孔154が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気インクで印刷が施された紙幣などの媒体の磁気パターンを検出するための磁気センサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気センサユニットとしては、媒体に着磁を行うマグネットと、マグネットによって着磁された媒体の磁気パターンを読み取る磁気センサ装置を有するものが知られている。特許文献1に記載の磁気センサユニットでは、マグネットは、表面が媒体を搬送するための媒体搬送面となっているカバーによって覆われている。同文献では、カバーによって媒体搬送面を規定することにより、媒体の搬送時における引っかかりを無くすとともに、媒体搬送面の磨耗を抑制している。また、カバーによってマグネットの脱落を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−163336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、カバーの厚さ寸法は媒体搬送面とマグネットの間のギャップとなっており、マグネットは、このギャップを介して媒体を着磁する。従って、カバーが厚ければ、その分、マグネットの発生磁界強度を強くしなければならず、マグネットとして磁力の強いマグネットや大型のマグネットなどの高価なマグネットが必要となる。これに対して、カバーを薄くして媒体搬送面とマグネットの間のギャップを狭くすれば、マグネットとして磁力の弱い小型で安価なマグネットを採用して装置の製造コストを抑えることができる。しかし、カバーを薄くすると、カバーの剛性が低下するので、剥離強度が下がり、カバーが剥がれやすくなるという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、マグネットを覆うカバー板を薄くした場合でも、カバー板の剛性を低下させることがない磁気センサユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の磁気センサユニットは、
読み取り対象の媒体に磁界を与えるためのマグネットと、
前記マグネットを覆っているカバー板と、
前記カバー板の前記マグネットとは反対側の表面を通過する前記媒体の磁気パターンを読み取る磁気センサ装置とを有し、
前記カバー板は、表面に媒体搬送面が形成された表面側カバー板と、当該表面側カバー板の裏面に積層固定した裏面側カバー板を備えた複合板であり、
前記裏面側カバー板には、前記マグネットが挿入される挿入孔が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、マグネットを覆っているカバー板は表面側カバー板と裏面側カバー板を備えた複合板として構成されている。従って、マグネットを覆う表面側カバー板を薄くして、媒体が搬送される表面側カバー板の表面と裏面側カバー板の挿入孔に挿入されるマグネットとの間のギャップを狭くした場合でも、カバー板全体としての剛性を確保することができる。この結果、カバー板の剥離強度の低下を抑制できるので、カバー板を磁気センサ装置を保持しているフレームなどに固定したときに、カバー板がフレームから剥がれてしまうことを回避できる。ここで、磁気センサユニットとしては、マグネットにより媒体搬送面を通過する媒体に着磁を行い、着磁された媒体の磁気パターンを読み取るもの、マグネットにより媒体搬送面を通過する媒体の周囲に磁界を形成し、媒体が磁気センサ装置を通過する際の磁界の変化を検出することにより媒体の磁気パターンを読み取るものがある。
【0008】
本発明において、前記磁気センサ装置を保持しているフレームを有し、前記カバー板は、前記挿入孔内に前記マグネットを保持した状態で前記フレームに固定されていることが望ましい。このようにすれば、カバー板上でマグネットを位置決めした状態で、マグネットをフレームに搭載することができる。
【0009】
また、本発明において、前記磁気センサ装置および前記マグネットを保持しているフレームを有し、前記カバー板は前記フレームに固定されていてもよい。このようにすれば、フレーム上でマグネットを位置決め固定することができる。
【0010】
本発明において、前記表面側カバー板は、前記裏面側カバー板よりも薄いことが望ましい。このようにすれば、挿入孔に挿入されたマグネットとカバー板の表面を通過する媒体とのギャップを狭くすることができるので、マグネットとして、磁力の弱い小型で安価なものを用いても、媒体の磁気パターンを検出することが可能となる。ここで、マグネットとして安価なものを用いれば、装置の製造コストを抑制できる。また、マグネットとして小型のものを用いれば、装置の小型化を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記マグネットは、前記挿入孔に挿入された状態で前記表面側カバー板の裏面に当接していることが望ましい。このようにすれば、媒体を搬送する媒体搬送面となっているカバー板の表面と、挿入孔に挿入されたマグネットとのギャップを表面側カバー板の板厚で規定できるので、ギャップ管理が安定する。
【0012】
本発明において、前記表面側カバー板と前記裏面側カバー板とは、拡散接合により一体化されていることが望ましい。例えば、表面側カバー板と裏面側カバー板とを接着剤により接合した場合には、表面側カバー板と裏面側カバー板の間に塗布される接着剤に起因して、裏面側カバー板に保持されるマグネットと表面側カバー板表面の媒体搬送面との間のギャップが広がったり、ばらついたりすることがある。これに対して、拡散接合によって表面側カバー板と裏面側カバー板を一体化しておけば、このようなギャップの広がりやばらつきを回避できる。また、表面側カバー板が裏面側カバー板から剥がれてしまうことを防止できる。
【0013】
本発明において、前記表面側カバー板と前記裏面側カバー板とは、同一の金属材料から形成されていることが望ましい。このようにすれば、表面側カバー板および裏面側カバー板が拡散接合に適するものとなる。
【0014】
本発明において、前記カバー板には、前記磁気センサ装置を当該カバー板の前記表面に露出させるための開口部が形成されていることが望ましい。このようにすれば、磁気センサ装置のセンサ面とカバー板の表面を搬送される媒体とを接近させること、或いは、磁気センサ装置のセンサ面と媒体が搬送されるカバー板の表面とを同一平面上に配置することが可能となるので、磁気センサ装置による媒体の磁気パターンの読み取り精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マグネットを覆っているカバー板は表面側カバー板と裏面側カバー板を備えた複合板として構成されており、その剛性が確保されている。従って、カバー板を磁気センサ装置を保持しているフレームなどに固定したときに、カバー板がフレームから剥がれ落ちてしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の磁気センサユニットを搭載する磁気パターン検出装置の説明図である。
【図2】本発明の磁気センサユニットの説明図である。
【図3】カバー板、表面側カバー板および裏面側カバー板の斜視図である。
【図4】磁気センサ素子の説明図である。
【図5】磁気センサ素子の励磁波形および検出波形である。
【図6】変形例1、2の磁気センサユニットの断面構成図である。
【図7】変形例3の磁気センサユニットの断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気センサユニットを搭載する磁気パターン検出装置を説明する。
【0018】
(全体構成)
図1は本発明を適用した磁気センサユニットを搭載する磁気パターン検出装置の要部構成を模式的に示す説明図である。図1に示すように、磁気パターン検出装置1は、銀行券、有価証券等のシート状の媒体2を媒体搬送経路3に沿って搬送する媒体搬送機構4と、媒体搬送経路3に設けられた磁気読み取り位置Aで媒体2の磁気パターンを検出する磁気センサユニット5を有している。
【0019】
磁気センサユニット5は、磁気読み取り位置Aを媒体搬送方向Xの第1方向X1から通過する媒体2に着磁を行う第1着磁用マグネット6と、磁気読み取り位置Aを第1方向X1とは逆の第2方向X2から通過する媒体2に着磁を行う第2着磁用マグネット7と、第1着磁用マグネット6或いは第2着磁用マグネット7によって着磁された状態で磁気読み取り位置Aを通過する媒体2の磁気パターンを読み取る磁気センサ装置8を備えている。磁気センサ装置8は着磁された媒体2にバイアス磁界を印加した状態として磁束を検出するものであり、磁気パターン検出装置1は磁気センサ装置8からの検出波形をリファレンス波形と照合することによって、媒体2の真偽判定や種類を判別する。
【0020】
(磁気センサユニットの構成)
図2、図3を参照して磁気センサユニット5を詳細に説明する。図2(a)は磁気センサユニット5における第1着磁用マグネット6、第2着磁用マグネット7および磁気センサ装置8のレイアウトを示す斜視図であり、図2(b)は磁気センサユニット5の断面構成図である。図3(a)はカバー板を下方から見た斜視図であり、図3(b)は表面側カバー板を下方から見た斜視図であり、図3(c)は裏面側カバー板を下方から見た斜視図である。なお、以下の説明では、便宜上、磁気センサユニット5の上下を図面の上下に従って説明する。
【0021】
磁気センサユニット5は、図2(a)に示すように、磁気センサ装置8を保持しているフレーム10と、このフレーム10の上端部分に取り付けられた矩形のカバー板11を備えている。カバー板11は、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7を保持すると共に、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7が磁気読み取り位置Aを通過する媒体2によって磨耗しないように、これら第1、第2着磁用マグネット6、7の上面を覆っている。
【0022】
フレーム10はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)などの非磁性の樹脂材料から形成されている。図2(b)に示すように、フレーム10の上端面101の媒体搬送方向Xの中央部分には、カバー板11を取り付けるための矩形の凹部102が形成されている。凹部102の媒体搬送方向Xの両側には外側に向かって下方に傾斜する傾斜面103が設けられている。なお、フレーム10は非磁性でなくてもよく、材質は金属製でもよい。
【0023】
凹部102は、一定深さであり、媒体搬送方向Xと直交する方向に一定幅で延びている。凹部102の媒体搬送方向Xの中央部分には磁気センサ装置8が構成されている。磁気センサ装置8の上端面はセンサ面8aとなっており、フレーム10の上端面101と同一平面上に位置している。磁気センサ装置8は、媒体搬送方向Xと直交する方向に所定のピッチで配列された複数の磁気センサ素子13を備えている。
【0024】
カバー板11は、表面14aに媒体2を搬送するための媒体搬送面11aが形成されている表面側カバー板14と、表面側カバー板14の裏面14bに積層固定された裏面側カバー板15とからなる複合板である。
【0025】
表面側カバー板14は、一定厚さの薄板の金属板であり、矩形の輪郭形状を備えている。また、表面側カバー板14は、媒体搬送方向Xの中央部分に矩形の開口部141を備えている。開口部141は、例えば、エッチングにより形成されている。本例では、表面側カバー板14の厚さ寸法は0.3mm以下、好ましくは0.1mm程度となっている。従って、表面側カバー板14は、所謂、「ペラペラ」な状態となっており、その剛性は著しく低下している。
【0026】
裏面側カバー板15は、表面側カバー板14よりも厚い金属板の板材であり、本例では裏面側カバー板15の厚さ寸法は0.3〜0.5mm程度である。裏面側カバー板15は、一定厚さであり、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7の厚さ寸法と同一の厚さ寸法を備えている。裏面側カバー板15の輪郭形状は表面側カバー板14の輪郭形状と同一であり、裏面側カバー板15は開口部141と重なる位置に、この開口部141と同一形状の開口部151を備えている。表面側カバー板14の開口部141と裏面側カバー板15の開口部151は、カバー板11の開口部111を構成する。
【0027】
また、裏面側カバー板15は、図3(c)に示すように、開口部151の第1方向X1の上流側に第1着磁用マグネット6を構成する複数のマグネット16を装着するための第1装着孔(挿入孔)152を備えており、開口部151の第2方向X2の上流側に第2着磁用マグネット7を構成する複数のマグネット16を装着するための第2装着孔(挿入孔)153を備えている。これら第1装着孔152および第2装着孔153は、それぞれ複数の装着孔154を備えており、各装着孔154は媒体搬送方向Xと直交する方向に所定のピッチで配列されている。開口部151、第1装着孔152および第2装着孔153は、例えば、エッチングにより形成されている。
【0028】
ここで、表面側カバー板14および裏面側カバー板15は、いずれもステンレス鋼製であり、これら表面側カバー板14と裏面側カバー板15は拡散接合されている。すなわち、表面側カバー板14と裏面側カバー板15は、密着させられた状態で加圧、加熱されて一体化されている。
【0029】
より詳細には、まず、第1のステンレス鋼板にエッチングによって複数の表面側カバー板14をその形状となるように形成し、第2のステンレス鋼板にエッチングによって複数の裏面側カバー板15をその形状となるように形成する。表面側カバー板14と裏面側カバー板15の形状の形成に際しては、各表面側カバー板14の一部分を第1のステンレス鋼板に繋げた状態とし、裏面側カバー板15の一部分を第2のステンレス鋼板に繋げた状態としておく。次に、第1のステンレス鋼板内の各表面側カバー板14と第2のステンレス鋼板内の各裏面側カバー板15を位置合わせして、これらを積層状態とする。その後に、積層状態となった第1のステンレス鋼板および第2のステンレス鋼板に圧力をかけながら、無酸素雰囲気中で高温にして、拡散接合させる。しかる後に、拡散接合された第1のステンレス鋼板および第2のステンレス鋼板から、形状形成されている各カバー板11を分離する。なお、第1のステンレス鋼板および第2のステンレス鋼板に圧力を加える治工具類としては、カバー板と接合しないカーボンなどを使用する。
【0030】
第1着磁用マグネット6は、第1装着孔152の各装着孔154に嵌め込まれた各マグネット16によって構成され、第2着磁用マグネット7は、第2装着孔153の各装着孔154に嵌め込まれた各マグネット16によって構成されている。第1着磁用マグネット6の各マグネット16は、媒体搬送方向Xと直交する方向に所定のピッチで配列されており、第2着磁用マグネット7の各マグネット16は媒体搬送方向Xと直交する方向に所定のピッチで配列されている。また、第1着磁用マグネット6のマグネット16と第2着磁用マグネット7のマグネット16は、媒体搬送方向Xから見たとき重なっている。
【0031】
各マグネット16は、フェライトやネオジウム磁石等の永久磁石であり、互いに同一の磁力を備えている。また、各マグネット16は、裏面側カバー板15の各装着孔154と嵌合する直方体形状をしており、互いに同一の形状を備えている。換言すれば、各装着孔154は、同一形状の各マグネット16に対応する形状を備えている。
【0032】
また、各マグネット16は、各装着孔154に嵌め込まれて、表面側カバー板14の裏面14bに当接した状態で裏面側カバー板15に保持される。各マグネット16が各装着孔154に保持された状態では、図2(b)に示すように、各マグネット16は、表面側カバー板14の側の部位と表面側カバー板14とは反対側の部位とでは異なる磁極となっており、表面側カバー板14の裏面14bに当接している面が媒体搬送面11aを搬送される媒体2に対する着磁面として機能する。ここで、各マグネット16は表面側カバー板14の裏面14bに当接しているので、媒体搬送面11aと各マグネット16のギャップは、表面側カバー板14の板厚によって規定されている。
【0033】
第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7を保持したカバー板11をフレーム10の凹部102に取り付けると、カバー板11の開口部111の内側に磁気センサ装置8のカバー板11の側の部位が挿入され、カバー板11の媒体搬送面11aと磁気センサ装置8のセンサ面8aが同一平面上に位置する。また、磁気センサ装置8の第1方向X1の上流側に第1着磁用マグネット6が配置され、磁気センサ装置8の第2方向X2の上流側に第2着磁用マグネット7が配置される。さらに、磁気センサ装置8は第1着磁用マグネット6と第2着磁用マグネット7の中間に位置し、磁気センサ装置8が保持している複数の磁気センサ素子13のそれぞれは、媒体搬送方向Xから見たときに、第1着磁用マグネット6のマグネット16および第2着磁用マグネット7のマグネット16と重なる。
【0034】
なお、本例では、図2(a)に示すように、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7のそれぞれにおいて、媒体搬送方向Xと直交する方向で隣り合うマグネット16同士は、互いに反対の向きに着磁されている。より具体的には、媒体搬送方向Xと直交する方向に配列された複数のマグネット16のうち、1つのマグネット16は媒体搬送面11aの側に位置する端部がN極に着磁され、媒体搬送面11aとは反対側に位置する端部はS極に着磁されており、このマグネット16に対して媒体搬送方向Xと直交する方向で隣り合うマグネット16は、媒体搬送面11aに位置する端部がS極に着磁され、媒体搬送面11aとは反対側に位置する端部はN極に着磁されている。
【0035】
また、本例では、図2(b)に示すように、媒体搬送方向Xで対向する第1着磁用マグネット6のマグネット16と第2着磁用マグネット7のマグネット16は、磁気センサ装置8を挟んで異なる極が対向している。より具体的には、媒体搬送方向Xで対向する第1着磁用マグネット6のマグネット16、および第2着磁用マグネット7のマグネット16のうち、一方の各マグネット16は媒体搬送面11aの側に位置する端部がN極に着磁されており、他方の各マグネット16は媒体搬送面11aに位置する端部がS極に着磁されている。なお、第1着磁用マグネット6との磁気センサ装置8との間の距離と、第2着磁用マグネット7と磁気センサ装置8との間の距離が等しくなっているので、磁気センサ装置8が配置されている位置では、第1着磁用マグネット6の磁界と第2着磁用マグネット7の磁界が中和している。
【0036】
(磁気センサ素子)
図4は磁気センサ装置8に搭載されている磁気センサ素子13の説明図である。磁気センサ素子13は、アモルファスあるいはパーマロイからなる薄板状のセンサコア131を備えており、センサコア131の厚さ方向を媒体搬送方向Xに向けて配置されている。センサコア131には、コイル線が巻き回されることにより、バイアス磁界を発生させるための励磁コイル132と、媒体2の磁気パターンを検出するための検出コイル133が構成されている。
【0037】
より詳細には、センサコア131は、胴部131aと、胴部131aの上端部の中央部分から媒体搬送面11aの側に突出した第1突部131bと、第1突部131bとは反対側で胴部131aの下端部の中央部分から下方に突出した第2突部131cと、胴部131aの上端部の第1突部131bの両側、および、胴部131aの下端部の第2突部131cの両側からそれぞれ突出した第3突部131dを備えている。励磁コイル132は、胴部131aにおいて、第1突部131bおよび第2突部131cと、第3突部131dとの間に挟まれている部位にコイル線が巻き回されることにより構成されている。検出コイル133は、第1突部131bにコイル線が巻き回されることにより構成されている。
【0038】
(磁気パターン検出装置の磁気パターン検出動作)
図1、図4および図5を参照して、磁気パターン検出装置の磁気パターン検出動作を説明する。図5(a)は磁気センサ素子13の励磁波形であり、図5(b)は磁気センサ素子13からの検出波形である。図1に示すように、磁気パターン検出装置1において媒体2が媒体搬送経路3を第1方向X1或いは第2方向X2に搬送されると、媒体2は磁気読み取り位置Aに至る前に第1着磁用マグネット6或いは第2着磁用マグネット7により着磁される。そして、着磁された媒体2は磁気センサ装置8による磁気読み取り位置Aを通過する。
【0039】
磁気センサ装置8では、図5(a)に示すように、励磁コイル132に交番電流が定電流で印加されており、センサコア131の周りには、図4において点線で示すバイアス磁界が形成されている。媒体2が磁気読み取り位置Aを搬送されると、検出コイル133からは、図5(b)に示す検出波形の信号が出力される。検出波形は、バイアス磁界および時間に対する微分的な信号となる。
【0040】
ここで、磁気センサ素子13からの検出波形の形状、ピーク値およびボトム値は、磁気パターンの形成に用いられている磁気インキの種類、磁気パターンの位置、および、形成されている磁気パターンの濃淡によって変化する。従って、かかる検出波形を、予め記憶保持しているリファレンス波形と照合することにより、媒体2の真偽判定および媒体2の種類の判別を行うことができる。
【0041】
(作用効果)
本例によれば、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7を覆っているカバー板11は表面側カバー板14と裏面側カバー板15を備えた複合板として構成されている。この結果、表面側カバー板14を薄くして、媒体搬送面11aとなっている表面側カバー板14の表面14aと、裏面側カバー板15の第1装着孔152および第2装着孔153に装着される各マグネット16との間のギャップを狭くした場合でも、カバー板11の全体としての剛性を確保することができ、カバー板11の剥離強度の低下を抑制できる。従って、カバー板11がフレーム10から剥がれてしまうことを回避できる。
【0042】
また、本例によれば、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7を構成している各マグネット16は、各装着孔154に挿入された状態で表面側カバー板14の裏面14bに当接している。この結果、媒体2が搬送される媒体搬送面11aと各マグネット16のギャップを表面側カバー板14の板厚によって規定することができるので、ギャップ管理が安定する。
【0043】
さらに、本例によれば、カバー板11を構成している表面側カバー板14は0.1mm程度と極めて薄く形成されており、媒体搬送面11aとマグネット16との間のギャップが狭い。この結果、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7として磁力の弱いものを用いることができる。すなわち、着磁用マグネットとして小型で安価なマグネット16を用いることができるので、装置の小型化および低コスト化を図ることができる。
【0044】
さらに、本例では、表面側カバー板14と裏面側カバー板15とは拡散接合によって一体化されているので、裏面側カバー板15に保持される第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7と媒体搬送面11aとの間のギャップを一定とすることができる。すなわち、表面側カバー板14と裏面側カバー板15とを接着剤により接合した場合には、表面側カバー板14と裏面側カバー板15の間に塗布される接着剤に起因して、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7と媒体搬送面11aとの間のギャップが広がったり、ばらついたりすることがあるが、拡散接合によれば、このようなギャップの広がりやばらつきを回避して、ギャップを一定とすることができる。
【0045】
また、拡散接合によれば、表面側カバー板14が裏面側カバー板15から剥がれてしまうことを防止できる。
【0046】
さらに、本例では、表面側カバー板14と裏面側カバー板15とは、同一の金属材料から形成されているので、これらを拡散接合により一体化するのに適している。
【0047】
また、本例では、各マグネット16は、第1装着孔152および第2装着孔153にそれぞれ嵌め込まれることよって、媒体2の媒体搬送方向X、および、媒体搬送方向Xと直交する方向の位置が規定されている。従って、各マグネット16は磁気センサ装置8の磁気センサ素子13に対して適切な位置に配置される。
【0048】
さらに、本例では、カバー板11には、磁気センサ装置8を媒体搬送面11aに露出させるための開口部111が形成されているので、磁気センサ装置8のセンサ面8aと媒体搬送面11aとを接近させること、或いは、磁気センサ装置8のセンサ面8aと媒体搬送面11aとを同一平面上に配置することが可能となり、磁気センサ装置8による媒体2の磁気パターンの読み取り精度を向上させることができる。
【0049】
(その他の実施の形態)
【0050】
図6は変形例1、2の磁気センサユニットの断面構成図である。図7は変形例3の磁気センサユニットの断面構成図である。なお、変形例1、2、3の磁気センサユニットは上記の磁気センサユニット5と対応する構成を備えているので、対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図6(a)に示す変形例1の磁気センサユニット5Aは、表面側カバー板14に開口部141を設けずに、磁気センサ装置8のセンサ面8aと媒体搬送面11aの間に表面側カバー板14を介在させた状態としたものである。このようにすれば、表面側カバー板14によって磁気センサ装置8を保護することができ、媒体2の紙粉や磁粉などが磁気センサ装置8に付着することを防止できる。
【0052】
また、上記の例では、磁気センサユニット5は、磁気センサ装置8の媒体搬送方向Xの一方側に第1着磁用マグネット6を備え、他方側に第2着磁用マグネット7を備えているが、着磁用マグネットを磁気センサ装置8の媒体搬送方向Xの一方側にのみ備えるものとしてもよい。図6(b)に示す変形例2の磁気センサユニット5Bでは、カバー板11を構成する裏面側カバー板15は、第1装着孔152のみを備えており、磁気センサユニット5Bは第1着磁用マグネット6のみを備えている。なお、このような磁気センサユニット5Bを搭載する磁気パターン検出装置1では、第1方向X1に搬送することにより、第1着磁用マグネット6によって媒体2に着磁を行い、磁気センサ装置8によって、磁気パターンを検出する。
【0053】
また、上記の例では、第1着磁用マグネット6および第2着磁用マグネット7を構成している各マグネット16はカバー板11に保持されているが、各マグネット16をフレーム10で保持してもよい。図7に示す変形例3の磁気センサユニット5Cは、各マグネット16がフレーム10に保持されている。より詳細には、フレーム10の凹部102の底面102aには、磁気センサ装置8の搭載部位の一方の側に第1着磁用マグネット6を構成する複数のマグネット16を装着するための複数のフレーム側装着孔104が形成されており、他方の側に第2着磁用マグネット7を構成する複数のマグネット16を装着するための複数のフレーム側装着孔104が形成されている。各マグネット16は、各フレーム側装着孔104に下側部分が挿入されることにより、フレーム10に保持されている。各マグネット16の上側部分は、凹部102の底面102aよりも上方に突出している。
【0054】
ここで、カバー板11は、フレーム10の上方から被せられてフレーム10に固定されている。カバー板11がフレーム10に被せられると、各マグネット16の上側部分が裏面側カバー板15の各装着孔154に挿入され、各マグネット16の上端は表面側カバー板14の裏面14bに当接した状態となる。本例では、各マグネット16は、フレーム側装着孔104によって位置決めされて固定されている。
【0055】
なお、上記の例では、裏面側カバー板15は、表面側カバー板14よりも厚くなっているが、裏面側カバー板15と表面側カバー板14を同じ厚さとしてもよい。また、表面側カバー板14を裏面側カバー板15よりも厚くしてもよい。さらに、上記の例では、表面側カバー板14と裏面側カバー板15はいずれもステンレス鋼製であったが、これらを異なる金属材料から形成して、接合してもよい。
【0056】
また、上記の例では、各マグネット16の上端を表面側カバー板14の裏面14bに当接させているが、各マグネット16を表面側カバー板14の裏面14bに当接させなくてもよい。さらに、上記の例では、各マグネット16は媒体搬送面11aの側が表面側カバー板14によって覆われているが、各マグネット16を媒体搬送面11aに露出させてもよい。この場合には、表面側カバー板14において、裏面側カバー板15の各装着孔154と重なる位置に開口部を設けておけばよい。また、この場合には、各マグネット16の媒体搬送面11aの側に位置する端部を、媒体搬送面11aと同一平面上に位置させてもよい。
【0057】
なお、上記の例では、磁気センサユニット5は着磁用マグネット6、7により媒体2に着磁を行い、着磁された媒体2の磁気パターンを読み取るものであるが、磁気センサユニットを、媒体2に磁界をかけて、媒体2が磁気読み取り位置Aを通過する際の磁界の変化を検出することにより媒体2の磁気パターンを読み取るものとすることもできる。この場合には、各マグネットは、着磁用ではなく、磁気読み取り位置Aにおいて媒体2の周囲に磁界を形成する磁界形成用として機能する。
【符号の説明】
【0058】
1・磁気パターン検出装置、2・媒体、3・媒体搬送経路、4・媒体搬送機構、5・5A・5B・5C・磁気センサユニット、6・第1着磁用マグネット、7・第2着磁用マグネット、8・磁気センサ装置、8a・センサ面、10・フレーム、11・カバー板、11a・媒体搬送面、13・磁気センサ素子、14・表面側カバー板、14a・表面、14b・裏面、15・裏面側カバー板、16・マグネット、101・上端面、102・凹部、102a・底面、103・傾斜面、104・フレーム側装着孔、111・開口部、131・センサコア、131a・胴部、131b・第1突部、131c・第2突部、131d・第3突部、132・励磁コイル、133・検出コイル、141・開口部、151・開口部、152・第1装着孔、153・第2装着孔、154・装着孔(挿入孔)、A・磁気読み取り位置、X・媒体搬送方向、X1・第1方向、X2・第2方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取り対象の媒体に磁界を与えるためのマグネットと、
前記マグネットを覆っているカバー板と、
前記カバー板の前記マグネットとは反対側の表面を通過する前記媒体の磁気パターンを読み取る磁気センサ装置とを有し、
前記カバー板は、表面に媒体搬送面が形成された表面側カバー板と、当該表面側カバー板の裏面に積層固定した裏面側カバー板を備えた複合板であり、
前記裏面側カバー板には、前記マグネットが挿入される挿入孔が形成されていることを特徴とする磁気センサユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記磁気センサ装置を保持しているフレームを有し、
前記カバー板は、前記挿入孔内に前記マグネットを保持した状態で前記フレームに固定されていることを特徴とする磁気センサユニット。
【請求項3】
請求項1において、
前記磁気センサ装置および前記マグネットを保持しているフレームを有し、
前記カバー板は、前記フレームに固定されていることを特徴とする磁気センサユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記表面側カバー板は、前記裏面側カバー板よりも薄いことを特徴とする磁気センサユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記マグネットは、前記挿入孔に挿入された状態で前記表面側カバー板の裏面に当接していることを特徴とする磁気センサユニット。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記表面側カバー板と前記裏面側カバー板とは、拡散接合により一体化されていることを特徴とする磁気センサユニット。
【請求項7】
請求項6において、
前記表面側カバー板と前記裏面側カバー板とは、同一の金属材料から形成されていることを特徴とする磁気センサユニット。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項において、
前記カバー板には、前記磁気センサ装置を当該カバー板の前記表面に露出させるための開口部が形成されていることを特徴とする磁気センサユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−137451(P2012−137451A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291482(P2010−291482)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】