磁気センサー、磁気検出装置、及び磁気ヘッド
【課題】微小領域からの磁束が検出可能であり、かつ素子抵抗の増大を抑制可能な磁気センサーを提供すること。
【解決手段】磁気センサーは、第一強磁性体12Aと、第二強磁性体12Bと、第一強磁性体12Aから第二強磁性体12Bまで延びるチャンネル7と、チャンネル7を覆う磁気シールドS2と、チャンネル7と磁気シールドS2との間に設けられた絶縁膜7bと、を備え、磁気シールドS2は、チャンネル7に向かって延びる貫通穴Hを有することを特徴とする。
【解決手段】磁気センサーは、第一強磁性体12Aと、第二強磁性体12Bと、第一強磁性体12Aから第二強磁性体12Bまで延びるチャンネル7と、チャンネル7を覆う磁気シールドS2と、チャンネル7と磁気シールドS2との間に設けられた絶縁膜7bと、を備え、磁気シールドS2は、チャンネル7に向かって延びる貫通穴Hを有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサー、磁気検出装置、及び磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部磁場を検出する種々の素子が知られており、例えば、ホール素子、MI(Magneto Impedance)素子、MR(Magneto Resistive)素子、GMR(Giant Magneto Resistive)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistive)素子、スピン蓄積型の素子(下記特許文献1参照)などが知られている。この種の磁場検出素子は、例えば、微小領域からの磁場を検知するHDDヘッドや、地磁気を検出するセンサーなどに用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−299467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のHDDヘッドに用いられる磁場検出素子において、より微小な領域から磁束を検出するには、素子を微細化するという方法が取られていた。しかしながら、素子の微細化技術には、限界が見え始めている。一方、素子を微細化することによって、素子抵抗が増大してしまい、低消費電力及び高速動作の障害となっていた。すなわち、微小領域からの磁束を検出可能とすることと、素子抵抗の増大を抑えることはトレードオフの関係であった。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、微小領域からの磁束が検出可能であり、かつ素子抵抗の増大を抑制可能な磁気センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の磁気センサーは、第一強磁性体と、第二強磁性体と、第一強磁性体から第二強磁性体まで延びるチャンネルと、チャンネルを覆う磁気シールドと、チャンネルと磁気シールドとの間に設けられた絶縁膜と、を備え、磁気シールドは、チャンネルに向かって延びる貫通穴を有することを特徴とする。
【0007】
上述の第一強磁性体及び第二強磁性体の一方は、チャンネルへスピンを注入するための注入電極として機能し、他方は、チャンネルからスピンを受け取るための受け取り電極として機能する。チャンネルは、第一強磁性体または第二強磁性体から注入されるスピンが伝導する部分として機能する。この磁気センサーでは、チャンネルを覆う磁気シールドに、チャンネルに向かって延びる貫通穴が設けられている。この貫通穴を通して外部磁場をチャンネルに印加すると、チャンネル内を伝導するスピンの向きは、印加磁場の軸周りに回転し、スピンはこの回転を伴いながら拡散していく(いわゆるHanle効果)。一方、チャンネルに外部磁場を印加しない場合、チャンネル内のスピンの向きは変化せず、そのまま拡散する。よって、受け取り電極において外部磁場に対する電圧出力や抵抗出力を読み取ると、外部磁場の有無によって生じるスピンの回転の度合いに応じた値を検出できる。従って、上述の貫通穴の大きさに対応する微小領域からの磁束が検出可能となる。この際、第一強磁体及び第二強磁性体のサイズを微細化することなく磁束を検出できるので、第一強磁性体及び第二強磁性体を微細化することによる素子抵抗の増大を抑制することも可能となる。
【0008】
また、貫通穴の軸方向と、第一強磁性体及び第二強磁性体の磁化方向と、が非平行であることが好ましい。
【0009】
上述したように、貫通穴を通して外部磁場をチャンネルに印加すると、チャンネル内のスピンの向きは、印加磁場の軸周りに回転する。仮に、貫通穴の軸方向と、第一強磁性体及び第二強磁性体の磁化方向と、が平行である場合、どちらの強磁性体からスピンを注入しても、外部磁場の印加によるスピンの向きに回転は生じず、磁束の検出が困難である。よって、貫通穴の軸方向と、第一強磁性体及び第二強磁性体の磁化方向と、が非平行であれば、上述のような磁束の検出を好適にできる。
【0010】
また、貫通穴の軸方向からみて、貫通穴の全断面が、チャンネルと対向していることが好ましい。これにより、所望の領域からの外部磁場の読み取りをより正確に行うことができる。
【0011】
また、貫通穴の底部の径は、貫通穴の頂部の径よりも小さくすることができる。つまり、貫通穴は、テーパー側面を有することができる。この場合、外部磁場による磁束が、チャンネルに対して斜めに入射しても、磁気シールドに吸収されない。よって、外部磁場の入射角度をテーパー側面のテーパー角度に応じて変更できる。
【0012】
また、チャンネルは屈曲形状を有し、貫通穴は、チャンネルの屈曲部の外側面に対向して設けられていることが好ましい。これにより、外部磁場などの磁束の読み取り領域をコンパクトにすることができる。
【0013】
また、第一強磁性体及び第二強磁性体は、チャンネルに埋設されており、第一及び第二強磁性体の上面と、絶縁膜の上面とによって、平坦面が形成され、貫通穴が設けられた磁気シールドは、該平坦面上を覆っていることが好ましい。
【0014】
このように、貫通穴の設けられた磁気シールドが、第一強磁性体、第二強磁性体、及び絶縁膜の上面が平坦化された平坦面上を覆っていることにより、記録媒体などの磁場形成面に対して平行に、貫通穴の設けられた磁気シールドを配置できる。よって、磁場の読み取りをスムーズに行える。
【0015】
また、チャンネルにおける貫通穴側に位置する部分は、チャンネルにおける第一強磁性体側に位置する部分及び第二強磁性体側に位置する部分よりも幅が狭窄されていることが好ましい。
【0016】
このように、チャンネルのうち貫通穴の下に位置する部分を絞り込んだ形状とすることにより、チャンネル内を拡散するスピン流をこの狭窄部分に集中させることができる。よって、この集中したスピンに外部磁場を貫通穴から効果的に印加することができる。従って、磁場の出力感度を向上させることができる。
【0017】
また、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方の磁化方向は、反強磁性体、形状異方性のうち少なくとも1つによって、固定されていることが好ましい。
【0018】
反強磁性体が、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方と交換結合することにより、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方の磁化方向に、一方向異方性を付与することが可能となる。この場合、反強磁性体を設けない場合よりも、高い保磁力を一方向に有する第一強磁性体や第二強磁性体を得られる。また、形状異方性によって磁化を固定する場合、保磁力差をつけるための反強磁性体を省略することが可能となる。
【0019】
また、第一強磁性体の磁化方向は第二強磁性体の磁化方向と同一であることが好ましい。この場合、第一強磁性体及び第二強磁性体の磁化固定を容易に行える。
【0020】
また、貫通穴の軸方向と同じ方向の磁界を貫通穴に供給する永久磁石を更に備えることが好ましい。永久磁石を用いて磁場をチャンネル層に印加しない場合、検出対象の外部磁場がゼロのときに出力のピークが現れるが、永久磁石を用いて磁場をチャンネル層に印加することにより、出力のピーク位置をシフトすることができ、外部磁場がゼロでないときに出力のピークを発生させることが可能となる。
【0021】
また、第一及び第二強磁性体の材料は、Cr、Mn、Co、Fe、Niからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は、前記群から選択される1以上の元素と、B、C、N、Si、Geからなる群から選択される1以上の元素とを含む化合物であることが好ましい。これらの材料はスピン分極率の大きい強磁性材料であるため、スピンの注入電極又はスピンの受け取り電極としての機能を好適に実現することが可能である。
【0022】
また、チャンネルの材料は、Si、Ge、GaAs、C、ZnOのうちのいずれか1つを含む半導体であることが好ましい。これらの半導体はスピン拡散長が比較的長いため、チャンネル内に好適にスピンを蓄積できる。
【0023】
また、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方と、チャンネルとの間に障壁層が形成されていることが好ましい。これにより、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方からチャンネルへスピン偏極した電子を多く注入することが可能となり、磁気センサーの電位出力を高めることが可能となる。
【0024】
また、第一参照電極及び第二参照電極を更に備え、チャンネルは、第一強磁性体から第二強磁性体まで延びる方向とは異なる方向に、第一強磁性体から第一参照電極まで延びており、チャンネルは、第二強磁性体から第一強磁性体まで延びる方向とは異なる方向に、第二強磁性体から第二参照電極まで延びていることが好ましい。これにより、例えば第一強磁性体及び第一参照電極を電流源に接続し、第二強磁性体及び第二参照電極を出力測定器に接続することができる。
【0025】
上記構成において、電流源及び出力測定器を更に備え、電流源及び出力測定器の一方は、第一強磁性体及び第一参照電極に電気的に接続しており、電流源及び出力測定器の他方は、第二強磁性体及び第二参照電極に電気的に接続していることが好ましい。これにより、例えば第一強磁性体及び第一参照電極を電流源に接続することにより、第一強磁性体に検出用電流を流すことができる。強磁性体である第一強磁性体から、非磁性のチャンネルへ電流が流れることにより、第一強磁性の磁化の向きに対応する向きのスピンをチャンネルへ注入できる。また、第二強磁性体及び第二参照電極を出力測定器に接続することにより、外部磁場に応じた出力を読み取ることができる。
【0026】
また、第一参照電極及び第二参照電極を用いずに、第一強磁性体と第二強磁性体との間に設けられた電源を更に備えることが好ましい。第一強磁性体と第二強磁性体との間では、外部磁場の印加の有無によって生じる磁気抵抗効果により、抵抗も変化する。従って、第一参照電極及び第二参照電極を設けずに、第一強磁性体と第二強磁性体との間に電源を設け、電流や電圧の変化をモニターすることによっても外部磁場の検出ができる。
【0027】
また、上述の磁気センサーを複数備えた磁気検出装置とすることが好ましい。この場合、各磁気センサーの出力を合算することができる。このような磁気検出装置は、例えば癌細胞などを検知する生体センサーなどに適用できる。
【0028】
また、上述の磁気センサーからなる読取ヘッド部と、書き込み用の記録ヘッド部とを備える磁気ヘッドとすることができる。これにより、いわゆるHanle効果を利用した新規な磁気ヘッドを提供できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、微小領域からの磁束が検出可能であり、かつ素子抵抗の増大を抑制可能な磁気センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、磁気センサーの上面図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、磁気センサーの効果を説明するための側面図である。
【図4】図4(a)は、磁気シールド層に形成された貫通穴の例を示す上面図である。図4(b)は、図4(a)のB1−B1線に沿った断面図である。図4(c)は、磁気シールド層に形成された貫通穴の例を示す上面図である。図4(d)は、図4(c)のD−D線に沿った断面図である。
【図5】図5(a)は、磁気シールド層に形成された貫通穴の例を示す上面図である。図5(b)は、図5(a)のB2−B2線に沿った断面図である。図5(c)は、図5(a)のC−C線に沿った断面図である。
【図6】図6は、磁気センサーが永久磁石を備える例を示す上面図である。
【図7】図7は、磁気センサーの変形例1を示す側面図である。
【図8】図8は、磁気センサーの変形例2を示す側面図である。
【図9】図9は、磁気センサーの変形例3を示す上面図である。
【図10】図10は、図9のJ−J線に沿った断面を示す側面図である。
【図11】図11は、磁気センサーの変形例4を示す側面図である。
【図12】図12は、磁気センサーの変形例5を示す側面図である。
【図13】図13は、磁気センサーの変形例6を示す側面図である。
【図14】図14は、外部磁場と抵抗出力との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、貫通穴の径の違いによる出力強度の違いを示すシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る磁気センサーの好適な実施形態について詳細に説明する。図中には、XYZ直交座標軸系が示されている。
(第一実施形態)
【0032】
図1は、第一実施形態に係る磁気センサーの上面図である。図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【0033】
図2に示すように、磁気センサー1は、チャンネル層7と、第一強磁性層12Aと、第二強磁性層12Bと、磁気シールド層とを備え、Z軸方向の外部磁界を検出するものである。
【0034】
図1に示すように、チャンネル層7は、第一強磁性層12Aから第二強磁性層12Bまで延びており、チャンネル層7の厚み方向から見て、矩形状をなしている。チャンネル層7には、導電性を付与するためのイオンが添加されていても良い。イオン濃度は、例えば1.0×1015〜1.0×1022cm−3とすることができる。チャンネル層7は、スピン寿命の長い材料であることが好ましく、例えば、Si、Ge、GaAs、C、ZnOのうちのいずれか1つを含む半導体とすることができる。また、チャンネル層7における第一強磁性層12Aから第二強磁性層12Bまでの距離は、チャンネル層7のスピン拡散長以下であることが好ましい。
【0035】
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、チャンネル層7へスピンを注入するための注入電極、あるいはチャンネル層7を伝導してきたスピンを検出するための受け取り電極として機能する。第一強磁性層12Aは、チャンネル層7の第一領域71上に設けられている。第二強磁性層12Bは、チャンネル層7の第二領域72上に設けられている。
【0036】
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、それぞれY軸方向を長軸とした直方体形状を有している。第一強磁性層12A及び第二強磁性層12BのX軸方向における幅は、同一とすることができる。図1に示すように、第一強磁性層12Aの磁化方向G1は、例えば第二強磁性層12Bの磁化方向G2と同一にすることができる。この場合、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化固定を容易に行える。
【0037】
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、強磁性材料からなる。第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの材料は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe、Niからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は、前記群から選択される1以上の元素と、B、C、N、Si、Geからなる群から選択される1以上の元素とを含む化合物とすることができる。
【0038】
磁気シールド層は、絶縁膜(例えば絶縁膜7a,7b)を間に介して、チャンネル層7の表面を少なくとも部分的に覆っており、外部磁場がチャンネル層7へ侵入することを遮蔽するものである。このため、磁気シールド層は、第一領域71と第二領域72との間に存在するチャンネル層7の上面、側面、及び下面のうち少なくとも一つの面を覆っている。図2に示す例では、磁気シールド層は、下部磁気シールド層S1と上部磁気シールド層S2とからなる。下部磁気シールド層S1は、チャンネル層7の下方に設けられている。上部磁気シールド層S2は、チャンネル層7の上方に設けられている。
【0039】
磁気シールド層は、チャンネル層7に向かって延びる貫通穴Hを有する。貫通穴Hは、チャンネル層7へ外部磁場を印加するためのものである。図2に示す例では、貫通穴Hが上部磁気シールド層S2に設けられており、第一領域71と第二領域72との間に存在するチャンネル層7の部分の上面に対向して配置している。
【0040】
この貫通穴Hの軸方向(例えば、図1の例ではZ軸方向)から見て、貫通穴Hの全断面が、チャンネル層7と対向していることが好ましい。すなわち、貫通穴Hの軸方向から見て、貫通穴Hがチャンネル層7からはみ出ないようにする。これにより、外部磁場の読み取りをより正確に行うことができる。
【0041】
図4(a)は、磁気シールド層Sに形成される貫通穴Hの例を示す上面図である。貫通穴Hは、磁気シールド層Sの厚み方向(Z軸方向)から見て、種々の形状をとることが可能であり、例えば矩形状をなしている。図4(a)に示す例では、貫通穴Hは、磁気シールド層Sの厚み方向(Z軸方向)から見て、長方形状をなしている。この場合、貫通穴Hの短辺の長さ(X軸方向の長さ)D1を例えば0.003μm〜0.3μmとして、長辺の長さ(Y軸方向の長さ)D2を例えば0.01μm〜1μmとすることができる。
【0042】
図4(b)は、図4(a)のB1−B1線に沿った断面図である。図4(b)に示すように、貫通穴Hの底部h1の径は、貫通穴Hの頂部h2の径と同一にすることができる。すなわち、貫通穴Hは、チャンネル層7に向かって垂直に延びている。
【0043】
磁気シールド層の材料として、例えばNi及びFeを含む合金、センダスト、Fe及びCoを含む合金、Fe、Co、及びNiを含む合金等の軟磁性体材料が挙げられる。
【0044】
磁気センサー1は、更に、第一参照電極20Aと第二参照電極20Bとを備えている。第一参照電極20Aは、チャンネル層7の第三領域73上に設けられている。第二参照電極20Bは、チャンネル層7の第四領域74上に設けられている。また、チャンネル層7は、第一強磁性層12Aから第二強磁性層12Bまで延びる方向とは異なる方向に、第一強磁性層12Aから第一参照電極20Aまで延びており、チャンネル層7は、第二強磁性層12Bから第一強磁性層12Aまで延びる方向とは異なる方向に、第二強磁性層12Bから第二参照電極20Bまで延びていることが好ましい。第一参照電極20A及び第二参照電極20Bは、導電性材料からなり、例えばAlなどのSiに対して低抵抗な非磁性金属からなる。
【0045】
図2に示すように、第三領域73と第四領域74との間に、第一領域71及び第二領域72が存在している。チャンネル層7上には、第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び第二参照電極20Bが、X軸方向に所定の間隔を置いて、この順に配置されている。
【0046】
磁気センサー1は、更に、障壁層81A,81Bを備えている。障壁層81A,81Bは、チャンネル層7と、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方との間に設けられている。これにより、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方からチャンネル層7へスピン偏極した電子を多く注入することが可能となり、磁気センサーの電位出力を高めることが可能となる。障壁層81A,81Bは、例えば絶縁性材料の膜からなるトンネル障壁である。図2では、障壁層81A,81Bが単層からなる例を示すが、障壁層81A,81Bは複数の層からなる積層構造を有していても良い。障壁層81A,81Bとして、例えば酸化マグネシウム層、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、または酸化ベリリウムなどを用いることができる。抵抗の増大を抑制し、トンネル絶縁層として機能させる観点から、障壁層81A,81Bの膜厚は、3nm以下であることが好ましい。また、障壁層81A,81Bの膜厚は、1原子層厚を考慮して、0.4nm以上であることが好ましい。
【0047】
磁気センサー1は、更に、絶縁膜(あるいは絶縁体)を備えている。絶縁膜は、チャンネル層7の露出を防ぎ、チャンネル層7を電気的及び磁気的に絶縁する機能を有する。絶縁膜は、磁気シールド層とチャンネル層7との間に存在していることが好ましい。これによれば、チャンネル層7を流れるスピン流の磁気シールド層への流出を特に抑制しやすいという効果がある。また、絶縁膜は、チャンネル層7の表面(例えば下面、側面、または上面)の必要な領域を覆っていることが好ましい。図2に示す例では、絶縁膜7aが、チャンネル層7の下面に設けられており、絶縁膜7bが、チャンネル層7の上面上に設けられている。具体的に、絶縁膜7bは、チャンネル層7の第一領域71と第二領域72との間に存在する領域の上面、チャンネル層7の第一領域71と第三領域73との間に存在する領域の上面、第二領域72と第四領域74との間に存在する領域の上面上に設けられている。この絶縁膜7b上に、第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び第二参照電極20Bに接続する配線を設ければ、この配線によってチャンネル層7のスピンが吸収されることを抑制できる。また、絶縁膜7b上に配線を設けることにより、配線からチャンネル層7へ電流が流れることも抑制できる。
【0048】
絶縁膜が存在する場合、下部磁気シールド層S1は、絶縁膜7aを間に介して、チャンネル層7の下面に設けられている。また、上部磁気シールド層S2は、絶縁膜7bを間に介して、チャンネル層7の上面に設けられている。
【0049】
以下、本実施形態に係る磁気センサー1の製造方法の一例を説明する。まず、予め準備した基板に、アライメントマークを形成する。基板として例えばAltic基板を用いることができる。アライメントマークを目印として、基板上において、下部磁気シールド層S1を形成する。次いで、例えば分子線エピタキシー(MBE)法によって、下部磁気シールド層S1上に絶縁膜7aを形成する。
【0050】
続いて、例えばMBE法によって、絶縁膜7a上にチャンネル層7を形成する。チャンネル層7に、導電性を付与するためのイオンを注入して、チャンネル層7の伝導特性を調節する。その後、必要に応じて熱アニールによってイオンを拡散させる。次いで、洗浄により、チャンネル層7の表面の付着物、有機物、及び酸化膜の除去をする。洗浄液として、例えば希釈したHF溶液を用いる。
【0051】
その後、例えばMBE法によって、チャンネル層7上に、障壁層81A,81Bとなる障壁膜と、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bとなる強磁性膜とをこの順に形成する。次いで、これらの障壁膜及び強磁性膜を例えば電子ビーム(EB)法にて、マスクを用いて加工する。これにより、チャンネル層7の第一領域71上に、障壁層81Aを介して第一強磁性層12Aが形成され、チャンネル層7の第二領域72上に、障壁層81Bを介して第二強磁性層12Bが形成される。なお、必要に応じて、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12B上に、例えばMBE法によって、さらに反強磁性層を形成してもよい。そして、第一強磁性層12Aまたは第二強磁性層12Bの磁化方向を固定するために、磁場下でのアニールを行う。その後、例えばイオンミリングによって、チャンネル層7上に形成された不要な障壁膜や強磁性膜を除去する。
【0052】
次いで、不要な障壁膜や強磁性膜が除去されたチャンネル層7上に絶縁膜7bを形成する。また、チャンネル層7の第三領域73及び第四領域74上の絶縁膜7bを除去し、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bをそれぞれ形成する。第一参照電極20A及び第二参照電極20Bは、例えばAlなどで形成する。
【0053】
また、第一領域71と第二領域72と間に存在するチャンネル層7の領域の上面上に設けられた絶縁膜7b上に、上部磁気シールド層S2を形成する。この上部磁気シールド層S2に、外部磁場からの磁束が侵入するための貫通穴Hを設ける。貫通穴Hは、例えばフォトリソグラフィー法によって形成できる。以上の方法により、図1及び2に示す磁気センサー1が作製できる。
【0054】
以下、本実施形態に係る磁気センサー1の作用効果を説明する。図3は、第一実施形態に係る磁気センサー1の動作を説明するための側面図である。まず、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化方向を固定する。図3に示す例では、第一強磁性層12Aの磁化方向G1は、第二強磁性層12Bの磁化方向G2と同一方向(Y軸方向)に固定している。
【0055】
例えば第一強磁性層12A及び第一参照電極20Aを電流源70に接続することにより、第一強磁性層12Aに検出用電流を流すことができる。強磁性体である第一強磁性層12Aから、障壁層81Aを介して、非磁性のチャンネル層7へ電流が流れることにより、第一強磁性層12Aの磁化の向きG1に対応する向きのスピンP1を有する電子がチャンネル層7へ注入される。注入されたスピンP1は第二強磁性層12B側へ拡散していく。このように、チャンネル層7に流れる電流及びスピン流が、主にX軸方向に流れる構造とすることができる。
【0056】
図14は、外部磁場と抵抗出力との関係の一例を示すグラフである。ここで、チャンネル層7に外部磁場Bを印加しないとき、すなわち外部磁場Bがゼロのとき、チャンネル層7の第一領域71と第二領域72との間の領域を拡散するスピンの向きは回転しない。よって、予め設定された第二強磁性層12Bの磁化の向きG2と同一方向のスピンが第二領域72まで拡散してくることとなる。従って、外部磁場Bがゼロのとき、抵抗出力あるいは電圧出力が極値となる。なお、電流や磁化の向きで極大値あるいは極小値をとりうる。出力は、第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bに接続した電圧測定器80などの出力測定器により評価することができる。
【0057】
対して、貫通穴Hからチャンネル層7へ外部磁場Bを印加する場合を考える。なお、図3の例では、外部磁場Bは、第一強磁性層12Aの磁化方向G1及び第二強磁性層12Bの磁化方向G2に対して垂直な方向(Z軸方向)から印加する。外部磁場Bを印加すると、チャンネル層7内であって貫通穴Hに対向する領域を拡散してきたスピンP2の向きは、外部磁場Bの軸方向(Z軸方向)を中心として回転する(いわゆるHanle効果)。このスピンP2がチャンネル層7の第二領域72まで拡散してきたときの回転の向きと、予め設定された第二強磁性層12Bの磁化の向きG2、すなわちスピンと、の相対角により、チャンネル層7と第二強磁性層12Bの界面の電圧出力や抵抗出力が決定される。外部磁場Bを印加する場合、チャンネル層7を拡散するスピンの向きは回転するので、第二強磁性層12Bの磁化の向きG2と向きが揃わない。よって、抵抗出力あるいは電圧出力は、外部磁場Bがゼロのときに極大値をとる場合、外部磁場Bを印加するときには極大値以下となり、外部磁場Bがゼロのときに極小値をとる場合、外部磁場Bを印加すると極小値以上となる。
【0058】
従って、図14に示すように、外部磁場Bがゼロのときに出力のピークが現れ、外部磁場Bを増加または減少させると、出力が減少していく。つまり、外部磁場Bの有無によって出力が変化するので、本実施形態に係る磁気センサー1を磁気検出素子として使用できる。
【0059】
このように、磁気シールド層に設けた貫通穴Hを用いて、貫通穴Hの大きさに対応する微小な磁束が検出可能となる。この際、解像度は貫通穴Hの大きさで決定されるので、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bのサイズを微細化することなく、微小領域から磁束を検出できる。よって、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bを微細化することによる素子抵抗の増大を抑制することも可能となる。
【0060】
なお、従来のスピンを利用した磁気センサーでは、磁化自由層と磁化固定層の磁化方向が平行や反平行のときの相対角で出力のピークが出ていたが、本発明の磁気センサーでは、上述のように外部磁場がゼロで出力のピークが出る。よって、例えば磁気ヘッドなどに本発明の磁気センサーを適用して、外部磁場の正負のタイミングを読み取る場合、磁壁の磁場がキャンセルするゼロのところで出力ピークがでるので、ここで反転したと判断することができる。また、本発明の磁気センサーでは、図14に示すように、ヒステリシスがないことも特徴である。
【0061】
以下に、出力と貫通穴Hの径との関係を補足説明する。図15は、貫通穴Hの径の違いによる出力強度の違いを示すシミュレーション結果を示すグラフである。図15では、貫通穴Hが正方形である場合を想定している。図15(a)は、正方形の貫通穴Hの一辺が0.01μmである例を示す。図15(b)は、正方形の貫通穴Hの一辺が0.1μmである例を示す。図15(c)は、正方形の貫通穴Hの一辺が1μmである例を示す。図15(d)は、正方形の貫通穴Hの一辺が10μmである例を示す。この際、チャンネル層7がSiであり、導電性を付与するためのイオン濃度が1×1020cm−3である場合を想定した。Siのスピン拡散長は、およそ2.5μmである。従って、図15のシミュレーション結果により、正方形の貫通穴Hの一辺が、スピン拡散長より小さければ、出力波形や出力強度にほとんど差がないことがわかる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、貫通穴Hの形状は、上述した形に限定されない。図4(c)は、磁気シールド層Sの貫通穴の一形態を示す上面図である。図4(d)は、図4(c)のD−D線に沿った断面図である。図4(c)に示すように、貫通穴Hの底部h1の径は、貫通穴Hの頂部h2の径よりも小さくすることができる。つまり、貫通穴Hは、テーパー側面を有することができる。この場合、外部磁場Bによる磁束が、チャンネル層7の上面に対して斜めに入射しても、磁気シールド層Sに吸収されない。よって、外部磁場Bの入射角度をテーパー角度θに応じて変更できる。
【0063】
また、図5(a)は、磁気シールド層Sの貫通穴の一形態を示す上面図である。図5(b)は、図5(a)のB2−B2線に沿った断面図である。図5(c)は、図5(a)のC−C線に沿った断面図である。図5(a)に示すように、貫通穴Hが磁気シールド層Sの厚み方向からみて矩形状をなす場合、例えば短辺においてテーパー側面を設け、長辺においてテーパー側面を設けない構造にすることができる。すなわち、図5(b)に示すように、貫通穴Hの長辺方向では、貫通穴Hの底部h1の径と頂部h2の径を同一にすることができる。一方、図5(c)に示すように、貫通穴Hの短辺方向では、貫通穴Hの底部h1の径は、貫通穴Hの頂部h2の径よりも小さくすることができる。この場合においても、外部磁場Bの入射角度をテーパー角度θに応じて変更できる。
【0064】
また、磁気センサーは、貫通穴Hの軸方向と同じ方向の磁界を貫通穴Hに供給する永久磁石を更に備えることが好ましい。図6は、磁気センサーが永久磁石を備える例を示す上面図である。図6に示す磁気センサー1では、チャンネル層7の側面に形成された絶縁膜7cを介して、永久磁石8を更に備えている。永久磁石8は、貫通穴Hの軸方向(図6の例ではZ軸方向)と同じ方向の磁界Z1を貫通穴Hに供給することが好ましい。永久磁石8を用いて磁場をチャンネル層7に印加しない場合、検出対象の外部磁場Bがゼロのときに出力のピークが現れるが、永久磁石8を用いて磁場をチャンネル層7に印加することにより、外部磁場Bがゼロでないときに出力のピークを出すことが可能となる。
【0065】
また、貫通穴Hは、チャンネル層7を覆う磁気シールド層に設けられていればよく、例えば、下部磁気シールド層に形成されていても良い。図7は、磁気センサーの変形例1を示す側面図である。図7に示す磁気センサー2では、貫通穴Hは、下部磁気シールド層S3に形成されている。貫通穴Hは、第一領域71と第二領域72との間に存在するチャンネル層7の下面に対向して配置している。すなわち、貫通穴Hが下部磁気シールド層S3に形成されている場合、チャンネル層の上面や側面に設けた磁気シールド層には、貫通穴は形成されていない。これにより、外部磁場をチャンネル層7の下面から読み取ることができる。
【0066】
また、貫通穴Hが、例えば、側部の磁気シールド層に形成されていても良い。図8は、磁気センサーの変形例2を示す側面図である。図8に示す磁気センサー3では、貫通穴Hは、側部磁気シールド層S10に形成されており、Y軸方向の外部磁界を検出するものである。貫通穴Hは、第一領域71と第二領域72との間に存在するチャンネル層7の側面に対向して配置している。すなわち、貫通穴Hが側部磁気シールド層S10に形成されている場合、上部磁気シールド層や下部磁気シールド層には、貫通穴は形成されていない。これにより、外部磁場をチャンネル層7の側面から読み取ることができる。
【0067】
また、チャンネル層7の厚み方向(Z軸方向)から見た形状は、矩形状以外であってもよい。図9は、磁気センサーの変形例3を示す上面図である。図10は、図9のJ−J線に沿った断面を示す側面図である。図9に示す磁気センサー4は、Y軸方向の外部磁界を検出するものである。この磁気センサー4では、チャンネル層7の厚み方向から見て、チャンネル層7は屈曲形状を有している。なお、図9では、絶縁膜7bの下にチャンネル層7が設けられているため、チャンネル層7は図示されていない。この場合、貫通穴Hは、屈曲形状をなすチャンネル層7の屈曲部Kの外側面KSに対向して配置されている。図9及び図10に示す例では、貫通穴Hが、チャンネル層7の側面に形成された側部磁気シールド層S11に設けられている。このように、チャンネル層7が屈曲しており、貫通穴Hが屈曲形状の屈曲部Kの外側面KSに対向して配置されていることにより、外部磁場Bなどの磁束の読み取り領域をコンパクトにすることができる。
【0068】
また、図9に示すように、チャンネル層7の屈曲部Kの外側面KSが平坦化されており、この外側面KSに沿って側部磁気シールド層S11が形成されていることが好ましい。これにより、外部磁場を読み取る面が平坦になり、例えば記録媒体などの読み取り対象面にこの外側面KSを対向させれば、磁場検出を容易に行える。なお、図9及び図10では、第一強磁性層12Aの磁化方向G5は、第二強磁性層12Bの磁化方向G6と同一方向(Z軸方向)に固定されている例を示す。さらに、永久磁石8をチャンネル層7の屈曲部Kの上面及び下面に対向するように配置し、この永久磁石8によって貫通穴HにY軸方向の磁界を供給してもよい。
【0069】
また、貫通穴Hに対向する位置のチャンネル層7の部分が絞り込まれた形状であってもよい。図11は、磁気センサーの変形例4を示す側面図である。図11に示す磁気センサー5では、貫通穴Hは、側部磁気シールド層S10に形成されている。チャンネル層7における貫通穴H側に位置する部分は、チャンネル層7における第一強磁性層12A側に位置する部分及び第二強磁性層12B側に位置する部分よりも幅が狭窄されていることが好ましい。すなわち、チャンネル層7におけるスピンの伝導する方向(図11の例ではX軸方向)に垂直な面(図11の例ではYZ面)の断面積は、貫通穴H側に位置する部分の方が、第一強磁性層12A側に位置する部分及び第二強磁性層12B側に位置する部分の少なくとも一方よりも小さいことが好ましい。このように、チャンネル層7のうち貫通穴Hに位置する部分を絞り込んだ形状とすることにより、チャンネル層7内を拡散するスピン流をこの狭窄部分に集中させることができる。よって、この集中したスピンに外部磁場Bを貫通穴Hから効果的に印加することができる。従って、磁場の出力感度を向上させることができる。
【0070】
また、図11では、貫通穴Hが側部磁気シールド層S10に形成され、貫通穴Hに対向する位置のチャンネル層7の部分が絞り込まれた形状をなす例を示したが、例えば図1や図7のように、貫通穴Hが上部磁気シールド層あるいは下部磁気シールド層に形成され、貫通穴に対向する位置のチャンネル層の部分が絞り込まれた形状をなしても良い。また、図11では、チャンネル層7の下面のみが斜面とされた例を示すが、チャンネル層7の上面、下面、及び側面のうち少なくとも1つの面が斜面であればよい。例えば、チャンネル層7の表面のうち、複数の面が斜面となっていても良い。
【0071】
また、上述の磁気センサーを複数備えた磁気検出装置とすることができる。この場合、各磁気センサーの出力を合算することができる。このような磁気検出装置は、例えば癌細胞などを検知する生体センサーなどに適用できる。例えば、上述の磁気センサーを複数並列あるいは複数積層して、磁気検出装置とすることができる。図12は、磁気センサーの変形例5を示す側面図である。一例として、図12に、図11で示した磁気センサー5を複数積層した構成を示す。
【0072】
また、上記では、チャンネル層7の上面上に、障壁層81A,81Bを介して第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bと、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bとを突出するように形成した例を示した。しかし、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bは、チャンネル層7内に埋設されていても良い。図13は、磁気センサーの変形例6を示す側面図である。例えば、図13に示す磁気センサー6では、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、障壁層81A,81Bとともにチャンネル層7に埋設されている。第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの上面と、絶縁膜7dの上面と、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bの上面と、によって平坦面Zが形成されている。貫通穴Hが設けられた上部磁気シールド層S6は、この平坦面Z上を覆っていることが好ましい。なお、図13の例では、絶縁膜7dが、チャンネル層7の上面を覆っており、この絶縁膜7dは、さらにチャンネル層7と第一強磁性層12Aの側面との間、及びチャンネル層7と第二強磁性層12Bの側面との間にも設けられている。上部磁気シールド層S6は、絶縁膜7dを介して、チャンネル層7上に形成されている。なお、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bは、チャンネル層7内に埋設されていなくても良い。
【0073】
このように、貫通穴Hの設けられた上部磁気シールド層S6が、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び絶縁膜7dの上面が平坦化された平坦面Z上を覆っていることにより、記録媒体などの磁場形成面に対して平行に、貫通穴Hの設けられた上部磁気シールド層S6を配置できる。よって、磁場の読み取りをスムーズに行える。
【0074】
また、第一強磁性層12Aまたは第二強磁性層12Bの磁化方向を固定する磁場は、評価対象である外部磁場Bよりも大きいことが好ましい。これにより、安定して外部磁場Bを検出することができる。
【0075】
また、例えば書き込み用の記録ヘッド部を備える磁気ヘッドにおいて、本発明の磁気センサーを読取ヘッド部に適用することができる。これにより、例えば記録媒体などの微小な領域から磁束を検出可能な磁気ヘッドを提供できる。
【0076】
また、第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bとの間では、外部磁場Bの印加の有無によって生じる磁気抵抗効果により、抵抗も変化する。従って、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bを設けずに、第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bとの間に電源を設け、電流や電圧の変化をモニターすることによっても外部磁場Bの検出ができる。
【0077】
また、電流源70と出力測定器(例えば電圧測定器80)の配置を交換してもよい。つまり、第一強磁性層12A及び第一参照電極20Aを出力測定器に接続し、第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bを電流源70に接続してもよい。この場合、第一強磁性層12Aが受け取り電極として機能し、第二強磁性層12Bが注入電極として機能する。
【0078】
また、障壁層81A,81Bが、絶縁膜からなるトンネル障壁である例を示した。しかし、障壁層81A,81Bは、金属膜からなるトンネル障壁であってもよく、この場合、半導体のチャンネル層7と金属の障壁層81A,81Bとのショットキー障壁とすることができる。
【0079】
また、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方の磁化方向は、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方上に設けられた反強磁性層、形状異方性のうち少なくとも1つによって、固定されていても良い。例えば、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bにおいて、X軸方向とY軸方向のアスペクト比の違いによって、反転磁場の差を付ける。あるいは、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方上に、磁化の向きを固定するための反強磁性層を備えても良い。この場合、反強磁性層を設けない場合よりも、高い保磁力を一方向に有する第一強磁性層12Aあるいは第二強磁性層12Bが得られる。
【0080】
また、上記では、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化方向が同一方向に固定されている例を示したが、貫通穴Hの軸方向(図1の例ではZ軸方向)と、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化方向と、が非平行であることが好ましい。上述したように、貫通穴Hを通して外部磁場Bをチャンネル層7に印加すると、チャンネル層7内のスピンの向きは、印加磁場の軸周りに回転する。仮に、貫通穴の軸方向と、第一強磁性層及び第二強磁性層の磁化方向とが平行である場合、どちらの強磁性層からスピンを注入しても、外部磁場の印加によるスピンの向きに回転は生じず、磁束の検出が困難である。よって、貫通穴の軸方向と、第一強磁性層及び第二強磁性層の磁化方向と、が非平行であれば、上述のような磁束の検出を好適にできる。
【0081】
そこで、第一強磁性層12Aの磁化方向は、第二強磁性層12Bの磁化方向と異なる方向、例えば逆方向であってもよい。この場合の外部磁場の評価における出力ピークは、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化方向が同一方向である場合における出力ピークと正負が逆となる。なお、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化の向きは、図1のようにチャンネル層7との対向面と平行でもよく、図8や図9のようにチャンネル層7の対向面と垂直でもよい。
【0082】
また、外部磁場に対する電圧出力や抵抗出力のピークの半値幅は、チャンネル層7におけるスピン寿命の逆数に比例するので、スピン寿命が長ければ磁場感度が良くなることとなる。チャンネル層7に用いられるスピン寿命の長い材料として、例えばSiやGaAsなどが挙げられるが、特にSiが好ましい。また、チャンネル層7におけるスピン寿命が短い方が磁場感度は悪くなるものの、広い範囲の磁場を検出できる。
【0083】
また、上記では、チャンネル層7、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び磁気シールド層が、いわゆる「層」である例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。チャンネル層7、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び磁気シールド層の各々は、上述の磁気センサーの構成物として使用できるものであれば、種々の形態のチャンネル、第一強磁性体、第二強磁性体、及び磁気シールドとすることができる。この場合、チャンネル、第一強磁性体、第二強磁性体、及び磁気シールドの各々は、例えば、球体状、円柱形状などの形態とすることができる。
【符号の説明】
【0084】
1,2,3,4,5,6…磁気センサー、7…チャンネル層、7a,7b,7c,7d…絶縁膜、8…永久磁石、12A…第一強磁性層、12B…第二強磁性層、20A…第一参照電極、20B…第二参照電極、S1,S3…下部磁気シールド層、S2…上部磁気シールド層、S10,S11…側部磁気シールド層、H…貫通穴、81A…障壁層、81B…障壁層、K…屈曲部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサー、磁気検出装置、及び磁気ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部磁場を検出する種々の素子が知られており、例えば、ホール素子、MI(Magneto Impedance)素子、MR(Magneto Resistive)素子、GMR(Giant Magneto Resistive)素子、TMR(Tunnel Magneto Resistive)素子、スピン蓄積型の素子(下記特許文献1参照)などが知られている。この種の磁場検出素子は、例えば、微小領域からの磁場を検知するHDDヘッドや、地磁気を検出するセンサーなどに用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−299467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のHDDヘッドに用いられる磁場検出素子において、より微小な領域から磁束を検出するには、素子を微細化するという方法が取られていた。しかしながら、素子の微細化技術には、限界が見え始めている。一方、素子を微細化することによって、素子抵抗が増大してしまい、低消費電力及び高速動作の障害となっていた。すなわち、微小領域からの磁束を検出可能とすることと、素子抵抗の増大を抑えることはトレードオフの関係であった。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、微小領域からの磁束が検出可能であり、かつ素子抵抗の増大を抑制可能な磁気センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明の磁気センサーは、第一強磁性体と、第二強磁性体と、第一強磁性体から第二強磁性体まで延びるチャンネルと、チャンネルを覆う磁気シールドと、チャンネルと磁気シールドとの間に設けられた絶縁膜と、を備え、磁気シールドは、チャンネルに向かって延びる貫通穴を有することを特徴とする。
【0007】
上述の第一強磁性体及び第二強磁性体の一方は、チャンネルへスピンを注入するための注入電極として機能し、他方は、チャンネルからスピンを受け取るための受け取り電極として機能する。チャンネルは、第一強磁性体または第二強磁性体から注入されるスピンが伝導する部分として機能する。この磁気センサーでは、チャンネルを覆う磁気シールドに、チャンネルに向かって延びる貫通穴が設けられている。この貫通穴を通して外部磁場をチャンネルに印加すると、チャンネル内を伝導するスピンの向きは、印加磁場の軸周りに回転し、スピンはこの回転を伴いながら拡散していく(いわゆるHanle効果)。一方、チャンネルに外部磁場を印加しない場合、チャンネル内のスピンの向きは変化せず、そのまま拡散する。よって、受け取り電極において外部磁場に対する電圧出力や抵抗出力を読み取ると、外部磁場の有無によって生じるスピンの回転の度合いに応じた値を検出できる。従って、上述の貫通穴の大きさに対応する微小領域からの磁束が検出可能となる。この際、第一強磁体及び第二強磁性体のサイズを微細化することなく磁束を検出できるので、第一強磁性体及び第二強磁性体を微細化することによる素子抵抗の増大を抑制することも可能となる。
【0008】
また、貫通穴の軸方向と、第一強磁性体及び第二強磁性体の磁化方向と、が非平行であることが好ましい。
【0009】
上述したように、貫通穴を通して外部磁場をチャンネルに印加すると、チャンネル内のスピンの向きは、印加磁場の軸周りに回転する。仮に、貫通穴の軸方向と、第一強磁性体及び第二強磁性体の磁化方向と、が平行である場合、どちらの強磁性体からスピンを注入しても、外部磁場の印加によるスピンの向きに回転は生じず、磁束の検出が困難である。よって、貫通穴の軸方向と、第一強磁性体及び第二強磁性体の磁化方向と、が非平行であれば、上述のような磁束の検出を好適にできる。
【0010】
また、貫通穴の軸方向からみて、貫通穴の全断面が、チャンネルと対向していることが好ましい。これにより、所望の領域からの外部磁場の読み取りをより正確に行うことができる。
【0011】
また、貫通穴の底部の径は、貫通穴の頂部の径よりも小さくすることができる。つまり、貫通穴は、テーパー側面を有することができる。この場合、外部磁場による磁束が、チャンネルに対して斜めに入射しても、磁気シールドに吸収されない。よって、外部磁場の入射角度をテーパー側面のテーパー角度に応じて変更できる。
【0012】
また、チャンネルは屈曲形状を有し、貫通穴は、チャンネルの屈曲部の外側面に対向して設けられていることが好ましい。これにより、外部磁場などの磁束の読み取り領域をコンパクトにすることができる。
【0013】
また、第一強磁性体及び第二強磁性体は、チャンネルに埋設されており、第一及び第二強磁性体の上面と、絶縁膜の上面とによって、平坦面が形成され、貫通穴が設けられた磁気シールドは、該平坦面上を覆っていることが好ましい。
【0014】
このように、貫通穴の設けられた磁気シールドが、第一強磁性体、第二強磁性体、及び絶縁膜の上面が平坦化された平坦面上を覆っていることにより、記録媒体などの磁場形成面に対して平行に、貫通穴の設けられた磁気シールドを配置できる。よって、磁場の読み取りをスムーズに行える。
【0015】
また、チャンネルにおける貫通穴側に位置する部分は、チャンネルにおける第一強磁性体側に位置する部分及び第二強磁性体側に位置する部分よりも幅が狭窄されていることが好ましい。
【0016】
このように、チャンネルのうち貫通穴の下に位置する部分を絞り込んだ形状とすることにより、チャンネル内を拡散するスピン流をこの狭窄部分に集中させることができる。よって、この集中したスピンに外部磁場を貫通穴から効果的に印加することができる。従って、磁場の出力感度を向上させることができる。
【0017】
また、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方の磁化方向は、反強磁性体、形状異方性のうち少なくとも1つによって、固定されていることが好ましい。
【0018】
反強磁性体が、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方と交換結合することにより、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方の磁化方向に、一方向異方性を付与することが可能となる。この場合、反強磁性体を設けない場合よりも、高い保磁力を一方向に有する第一強磁性体や第二強磁性体を得られる。また、形状異方性によって磁化を固定する場合、保磁力差をつけるための反強磁性体を省略することが可能となる。
【0019】
また、第一強磁性体の磁化方向は第二強磁性体の磁化方向と同一であることが好ましい。この場合、第一強磁性体及び第二強磁性体の磁化固定を容易に行える。
【0020】
また、貫通穴の軸方向と同じ方向の磁界を貫通穴に供給する永久磁石を更に備えることが好ましい。永久磁石を用いて磁場をチャンネル層に印加しない場合、検出対象の外部磁場がゼロのときに出力のピークが現れるが、永久磁石を用いて磁場をチャンネル層に印加することにより、出力のピーク位置をシフトすることができ、外部磁場がゼロでないときに出力のピークを発生させることが可能となる。
【0021】
また、第一及び第二強磁性体の材料は、Cr、Mn、Co、Fe、Niからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は、前記群から選択される1以上の元素と、B、C、N、Si、Geからなる群から選択される1以上の元素とを含む化合物であることが好ましい。これらの材料はスピン分極率の大きい強磁性材料であるため、スピンの注入電極又はスピンの受け取り電極としての機能を好適に実現することが可能である。
【0022】
また、チャンネルの材料は、Si、Ge、GaAs、C、ZnOのうちのいずれか1つを含む半導体であることが好ましい。これらの半導体はスピン拡散長が比較的長いため、チャンネル内に好適にスピンを蓄積できる。
【0023】
また、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方と、チャンネルとの間に障壁層が形成されていることが好ましい。これにより、第一強磁性体及び第二強磁性体の少なくとも一方からチャンネルへスピン偏極した電子を多く注入することが可能となり、磁気センサーの電位出力を高めることが可能となる。
【0024】
また、第一参照電極及び第二参照電極を更に備え、チャンネルは、第一強磁性体から第二強磁性体まで延びる方向とは異なる方向に、第一強磁性体から第一参照電極まで延びており、チャンネルは、第二強磁性体から第一強磁性体まで延びる方向とは異なる方向に、第二強磁性体から第二参照電極まで延びていることが好ましい。これにより、例えば第一強磁性体及び第一参照電極を電流源に接続し、第二強磁性体及び第二参照電極を出力測定器に接続することができる。
【0025】
上記構成において、電流源及び出力測定器を更に備え、電流源及び出力測定器の一方は、第一強磁性体及び第一参照電極に電気的に接続しており、電流源及び出力測定器の他方は、第二強磁性体及び第二参照電極に電気的に接続していることが好ましい。これにより、例えば第一強磁性体及び第一参照電極を電流源に接続することにより、第一強磁性体に検出用電流を流すことができる。強磁性体である第一強磁性体から、非磁性のチャンネルへ電流が流れることにより、第一強磁性の磁化の向きに対応する向きのスピンをチャンネルへ注入できる。また、第二強磁性体及び第二参照電極を出力測定器に接続することにより、外部磁場に応じた出力を読み取ることができる。
【0026】
また、第一参照電極及び第二参照電極を用いずに、第一強磁性体と第二強磁性体との間に設けられた電源を更に備えることが好ましい。第一強磁性体と第二強磁性体との間では、外部磁場の印加の有無によって生じる磁気抵抗効果により、抵抗も変化する。従って、第一参照電極及び第二参照電極を設けずに、第一強磁性体と第二強磁性体との間に電源を設け、電流や電圧の変化をモニターすることによっても外部磁場の検出ができる。
【0027】
また、上述の磁気センサーを複数備えた磁気検出装置とすることが好ましい。この場合、各磁気センサーの出力を合算することができる。このような磁気検出装置は、例えば癌細胞などを検知する生体センサーなどに適用できる。
【0028】
また、上述の磁気センサーからなる読取ヘッド部と、書き込み用の記録ヘッド部とを備える磁気ヘッドとすることができる。これにより、いわゆるHanle効果を利用した新規な磁気ヘッドを提供できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、微小領域からの磁束が検出可能であり、かつ素子抵抗の増大を抑制可能な磁気センサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、磁気センサーの上面図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、磁気センサーの効果を説明するための側面図である。
【図4】図4(a)は、磁気シールド層に形成された貫通穴の例を示す上面図である。図4(b)は、図4(a)のB1−B1線に沿った断面図である。図4(c)は、磁気シールド層に形成された貫通穴の例を示す上面図である。図4(d)は、図4(c)のD−D線に沿った断面図である。
【図5】図5(a)は、磁気シールド層に形成された貫通穴の例を示す上面図である。図5(b)は、図5(a)のB2−B2線に沿った断面図である。図5(c)は、図5(a)のC−C線に沿った断面図である。
【図6】図6は、磁気センサーが永久磁石を備える例を示す上面図である。
【図7】図7は、磁気センサーの変形例1を示す側面図である。
【図8】図8は、磁気センサーの変形例2を示す側面図である。
【図9】図9は、磁気センサーの変形例3を示す上面図である。
【図10】図10は、図9のJ−J線に沿った断面を示す側面図である。
【図11】図11は、磁気センサーの変形例4を示す側面図である。
【図12】図12は、磁気センサーの変形例5を示す側面図である。
【図13】図13は、磁気センサーの変形例6を示す側面図である。
【図14】図14は、外部磁場と抵抗出力との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、貫通穴の径の違いによる出力強度の違いを示すシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る磁気センサーの好適な実施形態について詳細に説明する。図中には、XYZ直交座標軸系が示されている。
(第一実施形態)
【0032】
図1は、第一実施形態に係る磁気センサーの上面図である。図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【0033】
図2に示すように、磁気センサー1は、チャンネル層7と、第一強磁性層12Aと、第二強磁性層12Bと、磁気シールド層とを備え、Z軸方向の外部磁界を検出するものである。
【0034】
図1に示すように、チャンネル層7は、第一強磁性層12Aから第二強磁性層12Bまで延びており、チャンネル層7の厚み方向から見て、矩形状をなしている。チャンネル層7には、導電性を付与するためのイオンが添加されていても良い。イオン濃度は、例えば1.0×1015〜1.0×1022cm−3とすることができる。チャンネル層7は、スピン寿命の長い材料であることが好ましく、例えば、Si、Ge、GaAs、C、ZnOのうちのいずれか1つを含む半導体とすることができる。また、チャンネル層7における第一強磁性層12Aから第二強磁性層12Bまでの距離は、チャンネル層7のスピン拡散長以下であることが好ましい。
【0035】
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、チャンネル層7へスピンを注入するための注入電極、あるいはチャンネル層7を伝導してきたスピンを検出するための受け取り電極として機能する。第一強磁性層12Aは、チャンネル層7の第一領域71上に設けられている。第二強磁性層12Bは、チャンネル層7の第二領域72上に設けられている。
【0036】
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、それぞれY軸方向を長軸とした直方体形状を有している。第一強磁性層12A及び第二強磁性層12BのX軸方向における幅は、同一とすることができる。図1に示すように、第一強磁性層12Aの磁化方向G1は、例えば第二強磁性層12Bの磁化方向G2と同一にすることができる。この場合、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化固定を容易に行える。
【0037】
第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、強磁性材料からなる。第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの材料は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe、Niからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は、前記群から選択される1以上の元素と、B、C、N、Si、Geからなる群から選択される1以上の元素とを含む化合物とすることができる。
【0038】
磁気シールド層は、絶縁膜(例えば絶縁膜7a,7b)を間に介して、チャンネル層7の表面を少なくとも部分的に覆っており、外部磁場がチャンネル層7へ侵入することを遮蔽するものである。このため、磁気シールド層は、第一領域71と第二領域72との間に存在するチャンネル層7の上面、側面、及び下面のうち少なくとも一つの面を覆っている。図2に示す例では、磁気シールド層は、下部磁気シールド層S1と上部磁気シールド層S2とからなる。下部磁気シールド層S1は、チャンネル層7の下方に設けられている。上部磁気シールド層S2は、チャンネル層7の上方に設けられている。
【0039】
磁気シールド層は、チャンネル層7に向かって延びる貫通穴Hを有する。貫通穴Hは、チャンネル層7へ外部磁場を印加するためのものである。図2に示す例では、貫通穴Hが上部磁気シールド層S2に設けられており、第一領域71と第二領域72との間に存在するチャンネル層7の部分の上面に対向して配置している。
【0040】
この貫通穴Hの軸方向(例えば、図1の例ではZ軸方向)から見て、貫通穴Hの全断面が、チャンネル層7と対向していることが好ましい。すなわち、貫通穴Hの軸方向から見て、貫通穴Hがチャンネル層7からはみ出ないようにする。これにより、外部磁場の読み取りをより正確に行うことができる。
【0041】
図4(a)は、磁気シールド層Sに形成される貫通穴Hの例を示す上面図である。貫通穴Hは、磁気シールド層Sの厚み方向(Z軸方向)から見て、種々の形状をとることが可能であり、例えば矩形状をなしている。図4(a)に示す例では、貫通穴Hは、磁気シールド層Sの厚み方向(Z軸方向)から見て、長方形状をなしている。この場合、貫通穴Hの短辺の長さ(X軸方向の長さ)D1を例えば0.003μm〜0.3μmとして、長辺の長さ(Y軸方向の長さ)D2を例えば0.01μm〜1μmとすることができる。
【0042】
図4(b)は、図4(a)のB1−B1線に沿った断面図である。図4(b)に示すように、貫通穴Hの底部h1の径は、貫通穴Hの頂部h2の径と同一にすることができる。すなわち、貫通穴Hは、チャンネル層7に向かって垂直に延びている。
【0043】
磁気シールド層の材料として、例えばNi及びFeを含む合金、センダスト、Fe及びCoを含む合金、Fe、Co、及びNiを含む合金等の軟磁性体材料が挙げられる。
【0044】
磁気センサー1は、更に、第一参照電極20Aと第二参照電極20Bとを備えている。第一参照電極20Aは、チャンネル層7の第三領域73上に設けられている。第二参照電極20Bは、チャンネル層7の第四領域74上に設けられている。また、チャンネル層7は、第一強磁性層12Aから第二強磁性層12Bまで延びる方向とは異なる方向に、第一強磁性層12Aから第一参照電極20Aまで延びており、チャンネル層7は、第二強磁性層12Bから第一強磁性層12Aまで延びる方向とは異なる方向に、第二強磁性層12Bから第二参照電極20Bまで延びていることが好ましい。第一参照電極20A及び第二参照電極20Bは、導電性材料からなり、例えばAlなどのSiに対して低抵抗な非磁性金属からなる。
【0045】
図2に示すように、第三領域73と第四領域74との間に、第一領域71及び第二領域72が存在している。チャンネル層7上には、第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び第二参照電極20Bが、X軸方向に所定の間隔を置いて、この順に配置されている。
【0046】
磁気センサー1は、更に、障壁層81A,81Bを備えている。障壁層81A,81Bは、チャンネル層7と、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方との間に設けられている。これにより、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方からチャンネル層7へスピン偏極した電子を多く注入することが可能となり、磁気センサーの電位出力を高めることが可能となる。障壁層81A,81Bは、例えば絶縁性材料の膜からなるトンネル障壁である。図2では、障壁層81A,81Bが単層からなる例を示すが、障壁層81A,81Bは複数の層からなる積層構造を有していても良い。障壁層81A,81Bとして、例えば酸化マグネシウム層、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、または酸化ベリリウムなどを用いることができる。抵抗の増大を抑制し、トンネル絶縁層として機能させる観点から、障壁層81A,81Bの膜厚は、3nm以下であることが好ましい。また、障壁層81A,81Bの膜厚は、1原子層厚を考慮して、0.4nm以上であることが好ましい。
【0047】
磁気センサー1は、更に、絶縁膜(あるいは絶縁体)を備えている。絶縁膜は、チャンネル層7の露出を防ぎ、チャンネル層7を電気的及び磁気的に絶縁する機能を有する。絶縁膜は、磁気シールド層とチャンネル層7との間に存在していることが好ましい。これによれば、チャンネル層7を流れるスピン流の磁気シールド層への流出を特に抑制しやすいという効果がある。また、絶縁膜は、チャンネル層7の表面(例えば下面、側面、または上面)の必要な領域を覆っていることが好ましい。図2に示す例では、絶縁膜7aが、チャンネル層7の下面に設けられており、絶縁膜7bが、チャンネル層7の上面上に設けられている。具体的に、絶縁膜7bは、チャンネル層7の第一領域71と第二領域72との間に存在する領域の上面、チャンネル層7の第一領域71と第三領域73との間に存在する領域の上面、第二領域72と第四領域74との間に存在する領域の上面上に設けられている。この絶縁膜7b上に、第一参照電極20A、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び第二参照電極20Bに接続する配線を設ければ、この配線によってチャンネル層7のスピンが吸収されることを抑制できる。また、絶縁膜7b上に配線を設けることにより、配線からチャンネル層7へ電流が流れることも抑制できる。
【0048】
絶縁膜が存在する場合、下部磁気シールド層S1は、絶縁膜7aを間に介して、チャンネル層7の下面に設けられている。また、上部磁気シールド層S2は、絶縁膜7bを間に介して、チャンネル層7の上面に設けられている。
【0049】
以下、本実施形態に係る磁気センサー1の製造方法の一例を説明する。まず、予め準備した基板に、アライメントマークを形成する。基板として例えばAltic基板を用いることができる。アライメントマークを目印として、基板上において、下部磁気シールド層S1を形成する。次いで、例えば分子線エピタキシー(MBE)法によって、下部磁気シールド層S1上に絶縁膜7aを形成する。
【0050】
続いて、例えばMBE法によって、絶縁膜7a上にチャンネル層7を形成する。チャンネル層7に、導電性を付与するためのイオンを注入して、チャンネル層7の伝導特性を調節する。その後、必要に応じて熱アニールによってイオンを拡散させる。次いで、洗浄により、チャンネル層7の表面の付着物、有機物、及び酸化膜の除去をする。洗浄液として、例えば希釈したHF溶液を用いる。
【0051】
その後、例えばMBE法によって、チャンネル層7上に、障壁層81A,81Bとなる障壁膜と、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bとなる強磁性膜とをこの順に形成する。次いで、これらの障壁膜及び強磁性膜を例えば電子ビーム(EB)法にて、マスクを用いて加工する。これにより、チャンネル層7の第一領域71上に、障壁層81Aを介して第一強磁性層12Aが形成され、チャンネル層7の第二領域72上に、障壁層81Bを介して第二強磁性層12Bが形成される。なお、必要に応じて、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12B上に、例えばMBE法によって、さらに反強磁性層を形成してもよい。そして、第一強磁性層12Aまたは第二強磁性層12Bの磁化方向を固定するために、磁場下でのアニールを行う。その後、例えばイオンミリングによって、チャンネル層7上に形成された不要な障壁膜や強磁性膜を除去する。
【0052】
次いで、不要な障壁膜や強磁性膜が除去されたチャンネル層7上に絶縁膜7bを形成する。また、チャンネル層7の第三領域73及び第四領域74上の絶縁膜7bを除去し、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bをそれぞれ形成する。第一参照電極20A及び第二参照電極20Bは、例えばAlなどで形成する。
【0053】
また、第一領域71と第二領域72と間に存在するチャンネル層7の領域の上面上に設けられた絶縁膜7b上に、上部磁気シールド層S2を形成する。この上部磁気シールド層S2に、外部磁場からの磁束が侵入するための貫通穴Hを設ける。貫通穴Hは、例えばフォトリソグラフィー法によって形成できる。以上の方法により、図1及び2に示す磁気センサー1が作製できる。
【0054】
以下、本実施形態に係る磁気センサー1の作用効果を説明する。図3は、第一実施形態に係る磁気センサー1の動作を説明するための側面図である。まず、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化方向を固定する。図3に示す例では、第一強磁性層12Aの磁化方向G1は、第二強磁性層12Bの磁化方向G2と同一方向(Y軸方向)に固定している。
【0055】
例えば第一強磁性層12A及び第一参照電極20Aを電流源70に接続することにより、第一強磁性層12Aに検出用電流を流すことができる。強磁性体である第一強磁性層12Aから、障壁層81Aを介して、非磁性のチャンネル層7へ電流が流れることにより、第一強磁性層12Aの磁化の向きG1に対応する向きのスピンP1を有する電子がチャンネル層7へ注入される。注入されたスピンP1は第二強磁性層12B側へ拡散していく。このように、チャンネル層7に流れる電流及びスピン流が、主にX軸方向に流れる構造とすることができる。
【0056】
図14は、外部磁場と抵抗出力との関係の一例を示すグラフである。ここで、チャンネル層7に外部磁場Bを印加しないとき、すなわち外部磁場Bがゼロのとき、チャンネル層7の第一領域71と第二領域72との間の領域を拡散するスピンの向きは回転しない。よって、予め設定された第二強磁性層12Bの磁化の向きG2と同一方向のスピンが第二領域72まで拡散してくることとなる。従って、外部磁場Bがゼロのとき、抵抗出力あるいは電圧出力が極値となる。なお、電流や磁化の向きで極大値あるいは極小値をとりうる。出力は、第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bに接続した電圧測定器80などの出力測定器により評価することができる。
【0057】
対して、貫通穴Hからチャンネル層7へ外部磁場Bを印加する場合を考える。なお、図3の例では、外部磁場Bは、第一強磁性層12Aの磁化方向G1及び第二強磁性層12Bの磁化方向G2に対して垂直な方向(Z軸方向)から印加する。外部磁場Bを印加すると、チャンネル層7内であって貫通穴Hに対向する領域を拡散してきたスピンP2の向きは、外部磁場Bの軸方向(Z軸方向)を中心として回転する(いわゆるHanle効果)。このスピンP2がチャンネル層7の第二領域72まで拡散してきたときの回転の向きと、予め設定された第二強磁性層12Bの磁化の向きG2、すなわちスピンと、の相対角により、チャンネル層7と第二強磁性層12Bの界面の電圧出力や抵抗出力が決定される。外部磁場Bを印加する場合、チャンネル層7を拡散するスピンの向きは回転するので、第二強磁性層12Bの磁化の向きG2と向きが揃わない。よって、抵抗出力あるいは電圧出力は、外部磁場Bがゼロのときに極大値をとる場合、外部磁場Bを印加するときには極大値以下となり、外部磁場Bがゼロのときに極小値をとる場合、外部磁場Bを印加すると極小値以上となる。
【0058】
従って、図14に示すように、外部磁場Bがゼロのときに出力のピークが現れ、外部磁場Bを増加または減少させると、出力が減少していく。つまり、外部磁場Bの有無によって出力が変化するので、本実施形態に係る磁気センサー1を磁気検出素子として使用できる。
【0059】
このように、磁気シールド層に設けた貫通穴Hを用いて、貫通穴Hの大きさに対応する微小な磁束が検出可能となる。この際、解像度は貫通穴Hの大きさで決定されるので、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bのサイズを微細化することなく、微小領域から磁束を検出できる。よって、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bを微細化することによる素子抵抗の増大を抑制することも可能となる。
【0060】
なお、従来のスピンを利用した磁気センサーでは、磁化自由層と磁化固定層の磁化方向が平行や反平行のときの相対角で出力のピークが出ていたが、本発明の磁気センサーでは、上述のように外部磁場がゼロで出力のピークが出る。よって、例えば磁気ヘッドなどに本発明の磁気センサーを適用して、外部磁場の正負のタイミングを読み取る場合、磁壁の磁場がキャンセルするゼロのところで出力ピークがでるので、ここで反転したと判断することができる。また、本発明の磁気センサーでは、図14に示すように、ヒステリシスがないことも特徴である。
【0061】
以下に、出力と貫通穴Hの径との関係を補足説明する。図15は、貫通穴Hの径の違いによる出力強度の違いを示すシミュレーション結果を示すグラフである。図15では、貫通穴Hが正方形である場合を想定している。図15(a)は、正方形の貫通穴Hの一辺が0.01μmである例を示す。図15(b)は、正方形の貫通穴Hの一辺が0.1μmである例を示す。図15(c)は、正方形の貫通穴Hの一辺が1μmである例を示す。図15(d)は、正方形の貫通穴Hの一辺が10μmである例を示す。この際、チャンネル層7がSiであり、導電性を付与するためのイオン濃度が1×1020cm−3である場合を想定した。Siのスピン拡散長は、およそ2.5μmである。従って、図15のシミュレーション結果により、正方形の貫通穴Hの一辺が、スピン拡散長より小さければ、出力波形や出力強度にほとんど差がないことがわかる。
【0062】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、貫通穴Hの形状は、上述した形に限定されない。図4(c)は、磁気シールド層Sの貫通穴の一形態を示す上面図である。図4(d)は、図4(c)のD−D線に沿った断面図である。図4(c)に示すように、貫通穴Hの底部h1の径は、貫通穴Hの頂部h2の径よりも小さくすることができる。つまり、貫通穴Hは、テーパー側面を有することができる。この場合、外部磁場Bによる磁束が、チャンネル層7の上面に対して斜めに入射しても、磁気シールド層Sに吸収されない。よって、外部磁場Bの入射角度をテーパー角度θに応じて変更できる。
【0063】
また、図5(a)は、磁気シールド層Sの貫通穴の一形態を示す上面図である。図5(b)は、図5(a)のB2−B2線に沿った断面図である。図5(c)は、図5(a)のC−C線に沿った断面図である。図5(a)に示すように、貫通穴Hが磁気シールド層Sの厚み方向からみて矩形状をなす場合、例えば短辺においてテーパー側面を設け、長辺においてテーパー側面を設けない構造にすることができる。すなわち、図5(b)に示すように、貫通穴Hの長辺方向では、貫通穴Hの底部h1の径と頂部h2の径を同一にすることができる。一方、図5(c)に示すように、貫通穴Hの短辺方向では、貫通穴Hの底部h1の径は、貫通穴Hの頂部h2の径よりも小さくすることができる。この場合においても、外部磁場Bの入射角度をテーパー角度θに応じて変更できる。
【0064】
また、磁気センサーは、貫通穴Hの軸方向と同じ方向の磁界を貫通穴Hに供給する永久磁石を更に備えることが好ましい。図6は、磁気センサーが永久磁石を備える例を示す上面図である。図6に示す磁気センサー1では、チャンネル層7の側面に形成された絶縁膜7cを介して、永久磁石8を更に備えている。永久磁石8は、貫通穴Hの軸方向(図6の例ではZ軸方向)と同じ方向の磁界Z1を貫通穴Hに供給することが好ましい。永久磁石8を用いて磁場をチャンネル層7に印加しない場合、検出対象の外部磁場Bがゼロのときに出力のピークが現れるが、永久磁石8を用いて磁場をチャンネル層7に印加することにより、外部磁場Bがゼロでないときに出力のピークを出すことが可能となる。
【0065】
また、貫通穴Hは、チャンネル層7を覆う磁気シールド層に設けられていればよく、例えば、下部磁気シールド層に形成されていても良い。図7は、磁気センサーの変形例1を示す側面図である。図7に示す磁気センサー2では、貫通穴Hは、下部磁気シールド層S3に形成されている。貫通穴Hは、第一領域71と第二領域72との間に存在するチャンネル層7の下面に対向して配置している。すなわち、貫通穴Hが下部磁気シールド層S3に形成されている場合、チャンネル層の上面や側面に設けた磁気シールド層には、貫通穴は形成されていない。これにより、外部磁場をチャンネル層7の下面から読み取ることができる。
【0066】
また、貫通穴Hが、例えば、側部の磁気シールド層に形成されていても良い。図8は、磁気センサーの変形例2を示す側面図である。図8に示す磁気センサー3では、貫通穴Hは、側部磁気シールド層S10に形成されており、Y軸方向の外部磁界を検出するものである。貫通穴Hは、第一領域71と第二領域72との間に存在するチャンネル層7の側面に対向して配置している。すなわち、貫通穴Hが側部磁気シールド層S10に形成されている場合、上部磁気シールド層や下部磁気シールド層には、貫通穴は形成されていない。これにより、外部磁場をチャンネル層7の側面から読み取ることができる。
【0067】
また、チャンネル層7の厚み方向(Z軸方向)から見た形状は、矩形状以外であってもよい。図9は、磁気センサーの変形例3を示す上面図である。図10は、図9のJ−J線に沿った断面を示す側面図である。図9に示す磁気センサー4は、Y軸方向の外部磁界を検出するものである。この磁気センサー4では、チャンネル層7の厚み方向から見て、チャンネル層7は屈曲形状を有している。なお、図9では、絶縁膜7bの下にチャンネル層7が設けられているため、チャンネル層7は図示されていない。この場合、貫通穴Hは、屈曲形状をなすチャンネル層7の屈曲部Kの外側面KSに対向して配置されている。図9及び図10に示す例では、貫通穴Hが、チャンネル層7の側面に形成された側部磁気シールド層S11に設けられている。このように、チャンネル層7が屈曲しており、貫通穴Hが屈曲形状の屈曲部Kの外側面KSに対向して配置されていることにより、外部磁場Bなどの磁束の読み取り領域をコンパクトにすることができる。
【0068】
また、図9に示すように、チャンネル層7の屈曲部Kの外側面KSが平坦化されており、この外側面KSに沿って側部磁気シールド層S11が形成されていることが好ましい。これにより、外部磁場を読み取る面が平坦になり、例えば記録媒体などの読み取り対象面にこの外側面KSを対向させれば、磁場検出を容易に行える。なお、図9及び図10では、第一強磁性層12Aの磁化方向G5は、第二強磁性層12Bの磁化方向G6と同一方向(Z軸方向)に固定されている例を示す。さらに、永久磁石8をチャンネル層7の屈曲部Kの上面及び下面に対向するように配置し、この永久磁石8によって貫通穴HにY軸方向の磁界を供給してもよい。
【0069】
また、貫通穴Hに対向する位置のチャンネル層7の部分が絞り込まれた形状であってもよい。図11は、磁気センサーの変形例4を示す側面図である。図11に示す磁気センサー5では、貫通穴Hは、側部磁気シールド層S10に形成されている。チャンネル層7における貫通穴H側に位置する部分は、チャンネル層7における第一強磁性層12A側に位置する部分及び第二強磁性層12B側に位置する部分よりも幅が狭窄されていることが好ましい。すなわち、チャンネル層7におけるスピンの伝導する方向(図11の例ではX軸方向)に垂直な面(図11の例ではYZ面)の断面積は、貫通穴H側に位置する部分の方が、第一強磁性層12A側に位置する部分及び第二強磁性層12B側に位置する部分の少なくとも一方よりも小さいことが好ましい。このように、チャンネル層7のうち貫通穴Hに位置する部分を絞り込んだ形状とすることにより、チャンネル層7内を拡散するスピン流をこの狭窄部分に集中させることができる。よって、この集中したスピンに外部磁場Bを貫通穴Hから効果的に印加することができる。従って、磁場の出力感度を向上させることができる。
【0070】
また、図11では、貫通穴Hが側部磁気シールド層S10に形成され、貫通穴Hに対向する位置のチャンネル層7の部分が絞り込まれた形状をなす例を示したが、例えば図1や図7のように、貫通穴Hが上部磁気シールド層あるいは下部磁気シールド層に形成され、貫通穴に対向する位置のチャンネル層の部分が絞り込まれた形状をなしても良い。また、図11では、チャンネル層7の下面のみが斜面とされた例を示すが、チャンネル層7の上面、下面、及び側面のうち少なくとも1つの面が斜面であればよい。例えば、チャンネル層7の表面のうち、複数の面が斜面となっていても良い。
【0071】
また、上述の磁気センサーを複数備えた磁気検出装置とすることができる。この場合、各磁気センサーの出力を合算することができる。このような磁気検出装置は、例えば癌細胞などを検知する生体センサーなどに適用できる。例えば、上述の磁気センサーを複数並列あるいは複数積層して、磁気検出装置とすることができる。図12は、磁気センサーの変形例5を示す側面図である。一例として、図12に、図11で示した磁気センサー5を複数積層した構成を示す。
【0072】
また、上記では、チャンネル層7の上面上に、障壁層81A,81Bを介して第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bと、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bとを突出するように形成した例を示した。しかし、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bは、チャンネル層7内に埋設されていても良い。図13は、磁気センサーの変形例6を示す側面図である。例えば、図13に示す磁気センサー6では、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bは、障壁層81A,81Bとともにチャンネル層7に埋設されている。第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの上面と、絶縁膜7dの上面と、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bの上面と、によって平坦面Zが形成されている。貫通穴Hが設けられた上部磁気シールド層S6は、この平坦面Z上を覆っていることが好ましい。なお、図13の例では、絶縁膜7dが、チャンネル層7の上面を覆っており、この絶縁膜7dは、さらにチャンネル層7と第一強磁性層12Aの側面との間、及びチャンネル層7と第二強磁性層12Bの側面との間にも設けられている。上部磁気シールド層S6は、絶縁膜7dを介して、チャンネル層7上に形成されている。なお、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bは、チャンネル層7内に埋設されていなくても良い。
【0073】
このように、貫通穴Hの設けられた上部磁気シールド層S6が、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び絶縁膜7dの上面が平坦化された平坦面Z上を覆っていることにより、記録媒体などの磁場形成面に対して平行に、貫通穴Hの設けられた上部磁気シールド層S6を配置できる。よって、磁場の読み取りをスムーズに行える。
【0074】
また、第一強磁性層12Aまたは第二強磁性層12Bの磁化方向を固定する磁場は、評価対象である外部磁場Bよりも大きいことが好ましい。これにより、安定して外部磁場Bを検出することができる。
【0075】
また、例えば書き込み用の記録ヘッド部を備える磁気ヘッドにおいて、本発明の磁気センサーを読取ヘッド部に適用することができる。これにより、例えば記録媒体などの微小な領域から磁束を検出可能な磁気ヘッドを提供できる。
【0076】
また、第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bとの間では、外部磁場Bの印加の有無によって生じる磁気抵抗効果により、抵抗も変化する。従って、第一参照電極20A及び第二参照電極20Bを設けずに、第一強磁性層12Aと第二強磁性層12Bとの間に電源を設け、電流や電圧の変化をモニターすることによっても外部磁場Bの検出ができる。
【0077】
また、電流源70と出力測定器(例えば電圧測定器80)の配置を交換してもよい。つまり、第一強磁性層12A及び第一参照電極20Aを出力測定器に接続し、第二強磁性層12B及び第二参照電極20Bを電流源70に接続してもよい。この場合、第一強磁性層12Aが受け取り電極として機能し、第二強磁性層12Bが注入電極として機能する。
【0078】
また、障壁層81A,81Bが、絶縁膜からなるトンネル障壁である例を示した。しかし、障壁層81A,81Bは、金属膜からなるトンネル障壁であってもよく、この場合、半導体のチャンネル層7と金属の障壁層81A,81Bとのショットキー障壁とすることができる。
【0079】
また、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方の磁化方向は、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方上に設けられた反強磁性層、形状異方性のうち少なくとも1つによって、固定されていても良い。例えば、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bにおいて、X軸方向とY軸方向のアスペクト比の違いによって、反転磁場の差を付ける。あるいは、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの少なくとも一方上に、磁化の向きを固定するための反強磁性層を備えても良い。この場合、反強磁性層を設けない場合よりも、高い保磁力を一方向に有する第一強磁性層12Aあるいは第二強磁性層12Bが得られる。
【0080】
また、上記では、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化方向が同一方向に固定されている例を示したが、貫通穴Hの軸方向(図1の例ではZ軸方向)と、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化方向と、が非平行であることが好ましい。上述したように、貫通穴Hを通して外部磁場Bをチャンネル層7に印加すると、チャンネル層7内のスピンの向きは、印加磁場の軸周りに回転する。仮に、貫通穴の軸方向と、第一強磁性層及び第二強磁性層の磁化方向とが平行である場合、どちらの強磁性層からスピンを注入しても、外部磁場の印加によるスピンの向きに回転は生じず、磁束の検出が困難である。よって、貫通穴の軸方向と、第一強磁性層及び第二強磁性層の磁化方向と、が非平行であれば、上述のような磁束の検出を好適にできる。
【0081】
そこで、第一強磁性層12Aの磁化方向は、第二強磁性層12Bの磁化方向と異なる方向、例えば逆方向であってもよい。この場合の外部磁場の評価における出力ピークは、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化方向が同一方向である場合における出力ピークと正負が逆となる。なお、第一強磁性層12A及び第二強磁性層12Bの磁化の向きは、図1のようにチャンネル層7との対向面と平行でもよく、図8や図9のようにチャンネル層7の対向面と垂直でもよい。
【0082】
また、外部磁場に対する電圧出力や抵抗出力のピークの半値幅は、チャンネル層7におけるスピン寿命の逆数に比例するので、スピン寿命が長ければ磁場感度が良くなることとなる。チャンネル層7に用いられるスピン寿命の長い材料として、例えばSiやGaAsなどが挙げられるが、特にSiが好ましい。また、チャンネル層7におけるスピン寿命が短い方が磁場感度は悪くなるものの、広い範囲の磁場を検出できる。
【0083】
また、上記では、チャンネル層7、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び磁気シールド層が、いわゆる「層」である例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。チャンネル層7、第一強磁性層12A、第二強磁性層12B、及び磁気シールド層の各々は、上述の磁気センサーの構成物として使用できるものであれば、種々の形態のチャンネル、第一強磁性体、第二強磁性体、及び磁気シールドとすることができる。この場合、チャンネル、第一強磁性体、第二強磁性体、及び磁気シールドの各々は、例えば、球体状、円柱形状などの形態とすることができる。
【符号の説明】
【0084】
1,2,3,4,5,6…磁気センサー、7…チャンネル層、7a,7b,7c,7d…絶縁膜、8…永久磁石、12A…第一強磁性層、12B…第二強磁性層、20A…第一参照電極、20B…第二参照電極、S1,S3…下部磁気シールド層、S2…上部磁気シールド層、S10,S11…側部磁気シールド層、H…貫通穴、81A…障壁層、81B…障壁層、K…屈曲部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一強磁性体と、
第二強磁性体と、
前記第一強磁性体から前記第二強磁性体まで延びるチャンネルと、
前記チャンネルを覆う磁気シールドと、
前記チャンネルと前記磁気シールドとの間に設けられた絶縁膜と、を備え、
前記磁気シールドは、前記チャンネルに向かって延びる貫通穴を有する、磁気センサー。
【請求項2】
前記貫通穴の軸方向と、前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体の少なくとも一方の磁化方向と、が非平行である、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項3】
前記貫通穴の軸方向からみて、前記貫通穴の全断面が、前記チャンネルと対向している、請求項1または請求項2に記載の磁気センサー。
【請求項4】
前記貫通穴の底部の径は、前記貫通穴の頂部の径よりも小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項5】
前記チャンネルは屈曲形状を有し、
前記貫通穴は、前記チャンネルの屈曲部の外側面に対向して設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項6】
前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体は、前記チャンネルに埋設されており、前記第一及び第二強磁性体の上面と、前記絶縁膜の上面とによって、平坦面が形成され、
前記貫通穴が設けられた前記磁気シールドは、前記平坦面上を覆っている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項7】
前記チャンネルにおける前記貫通穴側に位置する部分は、前記チャンネルにおける前記第一強磁性体側に位置する部分及び前記第二強磁性体側に位置する部分よりも幅が狭窄されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項8】
前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体の少なくとも一方の磁化方向は、反強磁性体、形状異方性のうち少なくとも1つによって、固定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項9】
前記第一強磁性体の磁化方向は、前記第二強磁性体の磁化方向と同一である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項10】
前記貫通穴の軸方向と同じ方向の磁界を前記貫通穴に供給する永久磁石を更に備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項11】
前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体の材料は、Cr、Mn、Co、Fe、Niからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は、前記群から選択される1以上の元素と、B、C、N、Si、Geからなる群から選択される1以上の元素とを含む化合物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項12】
前記チャンネルの材料は、Si、Ge、GaAs、C、ZnOのうちのいずれか1つを含む半導体である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項13】
前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体の少なくとも一方と、前記チャンネルとの間に、障壁層が形成されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項14】
第一参照電極及び第二参照電極を更に備え、
前記チャンネルは、前記第一強磁性体から前記第二強磁性体まで延びる方向とは異なる方向に、前記第一強磁性体から前記第一参照電極まで延びており、
前記チャンネルは、前記第二強磁性体から前記第一強磁性体まで延びる方向とは異なる方向に、前記第二強磁性体から前記第二参照電極まで延びている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項15】
電流源及び出力測定器を更に備え、
前記電流源及び前記出力測定器の一方は、前記第一強磁性体及び前記第一参照電極に電気的に接続しており、
前記電流源及び前記出力測定器の他方は、前記第二強磁性体及び前記第二参照電極に電気的に接続している、請求項14に記載の磁気センサー。
【請求項16】
第一強磁性体と第二強磁性体との間に設けられた電源を更に備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の磁気センサーを複数備える、磁気検出装置。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の磁気センサーからなる読取ヘッド部と、書き込み用の記録ヘッド部と、を備える、磁気ヘッド。
【請求項1】
第一強磁性体と、
第二強磁性体と、
前記第一強磁性体から前記第二強磁性体まで延びるチャンネルと、
前記チャンネルを覆う磁気シールドと、
前記チャンネルと前記磁気シールドとの間に設けられた絶縁膜と、を備え、
前記磁気シールドは、前記チャンネルに向かって延びる貫通穴を有する、磁気センサー。
【請求項2】
前記貫通穴の軸方向と、前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体の少なくとも一方の磁化方向と、が非平行である、請求項1に記載の磁気センサー。
【請求項3】
前記貫通穴の軸方向からみて、前記貫通穴の全断面が、前記チャンネルと対向している、請求項1または請求項2に記載の磁気センサー。
【請求項4】
前記貫通穴の底部の径は、前記貫通穴の頂部の径よりも小さい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項5】
前記チャンネルは屈曲形状を有し、
前記貫通穴は、前記チャンネルの屈曲部の外側面に対向して設けられている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項6】
前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体は、前記チャンネルに埋設されており、前記第一及び第二強磁性体の上面と、前記絶縁膜の上面とによって、平坦面が形成され、
前記貫通穴が設けられた前記磁気シールドは、前記平坦面上を覆っている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項7】
前記チャンネルにおける前記貫通穴側に位置する部分は、前記チャンネルにおける前記第一強磁性体側に位置する部分及び前記第二強磁性体側に位置する部分よりも幅が狭窄されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項8】
前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体の少なくとも一方の磁化方向は、反強磁性体、形状異方性のうち少なくとも1つによって、固定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項9】
前記第一強磁性体の磁化方向は、前記第二強磁性体の磁化方向と同一である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項10】
前記貫通穴の軸方向と同じ方向の磁界を前記貫通穴に供給する永久磁石を更に備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項11】
前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体の材料は、Cr、Mn、Co、Fe、Niからなる群から選択される金属、前記群の元素を1以上含む合金、又は、前記群から選択される1以上の元素と、B、C、N、Si、Geからなる群から選択される1以上の元素とを含む化合物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項12】
前記チャンネルの材料は、Si、Ge、GaAs、C、ZnOのうちのいずれか1つを含む半導体である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項13】
前記第一強磁性体及び前記第二強磁性体の少なくとも一方と、前記チャンネルとの間に、障壁層が形成されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項14】
第一参照電極及び第二参照電極を更に備え、
前記チャンネルは、前記第一強磁性体から前記第二強磁性体まで延びる方向とは異なる方向に、前記第一強磁性体から前記第一参照電極まで延びており、
前記チャンネルは、前記第二強磁性体から前記第一強磁性体まで延びる方向とは異なる方向に、前記第二強磁性体から前記第二参照電極まで延びている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項15】
電流源及び出力測定器を更に備え、
前記電流源及び前記出力測定器の一方は、前記第一強磁性体及び前記第一参照電極に電気的に接続しており、
前記電流源及び前記出力測定器の他方は、前記第二強磁性体及び前記第二参照電極に電気的に接続している、請求項14に記載の磁気センサー。
【請求項16】
第一強磁性体と第二強磁性体との間に設けられた電源を更に備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の磁気センサー。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の磁気センサーを複数備える、磁気検出装置。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の磁気センサーからなる読取ヘッド部と、書き込み用の記録ヘッド部と、を備える、磁気ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−176012(P2011−176012A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37362(P2010−37362)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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