説明

磁気センサー装置及び磁気計測装置

【課題】複数のセルを配列して検体からの磁場を計測する際の装置構成を小型化しつつ、磁場の測定精度を向上させる。
【解決手段】磁気センサー装置は、アルカリ金属原子を収容した複数のセル(161)と、直線偏光成分を有する入射光を出射する出射部(10,12)と、入射光の偏光面の角度を保持した状態で複数のセルが配置された範囲の大きさに相当する光束径の入射光を出射させる第1光学系を有する第1光学機構(14)と、複数のセルに各々対応して設けられ、第1光学機構から入射した入射光の偏光面の角度を保持した状態で入射時の光束径より小さい光束径の入射光をセルに出射させる第2光学系を有する第2光学機構(15)と、各セルを透過した入射光を当該セルに向けて反射させる反射部(162)と、反射されて各セルを透過して第2光学機構と第1光学機構とを通過した反射光を第1偏光成分と第2偏光成分とに分離し、各成分の受光量を示す受光情報を出力する受光部(18,19,20)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサー装置及び磁気計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の心臓等から発せられる磁場を検出する磁気計測装置等において、光ポンピングを利用した磁気センサーが利用されている。このような磁気センサーにおいては、所定の原子が封入された各セルに対して円偏光成分を有するポンプ光と直線偏光成分を有するプローブ光とを直交するように照射し、各セルにおける生体から発する磁場をプローブ光によって検出する。下記特許文献1には、そのような光ポンピング原子磁力計が開示されている。また、他の検出方法として、ポンプ光を兼ねた直線偏光成分を有するプローブ光をセルに照射し、アライメントされて歳差運動を行っている原子を透過したプローブ光の偏光面の角度を検出することでセルにおける磁場の検出を行う非線形磁気光学効果による方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−236599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記光ポンピング方式と非線形磁気光学効果による方式のいずれの方法を用いても、セルの数だけプローブ光を入射させて検出する構成が必要となるため、例えば、図8に示すように、プローブ光の入射と検出の構成とを磁場の発生源50から離れた一箇所に集中させる構成が考えられる。図8に示す構成では、光源60から円偏光のポンプ光(破線)をセル72に照射すると共に、光源70からビームスプリッター71を介して直線偏光のプローブ光(二点鎖線)をセル72に照射する。セル72に照射されたプローブ光は、セル72の底面側に設置された反射板73によって反射されてセル72の内部に再び入射し、セル72を透過した後、ビームスプリッター71によって偏光ビームスプリッター74に導かれ、偏光ビームスプリッター74でP波成分とS波成分とに分離されて受光部75、76に受光される。このように構成した場合でも、磁場を広範囲に測定するために多数のセルを配置すると図8に示した構成がセルの数だけ必要となり、装置規模が大きくなると共に消費電力が増大する。また、1つの光源から各セル72に対してプローブ光を照射する構成として、例えば、光ファイバーや石英などの導波路を用いてセルの数だけプローブ光を分岐させる方法がある。しかし、光ファイバーや導波路を用いてプローブ光を単に分岐させるだけの構成では反射光の光路において偏光状態が保持されないため、反射光の光路の構成を別途構築しなければならない。
本発明は、複数のセルを配列して検体からの磁場を計測する際の装置構成を小型化しつつ、磁場の測定精度を向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る磁気センサー装置は、アルカリ金属原子を収容した複数のセルと、直線偏光成分を有する光を入射光として出射する出射部と、前記出射部から出射された入射光の偏光面の角度を保持した状態で、前記複数のセルが配置された範囲の大きさに相当する光束径の前記入射光を出射させる第1光学系を有する第1光学機構と、前記複数のセルに各々対応して設けられ、前記第1光学機構から入射した前記入射光の偏光面の角度を保持した状態で、入射時の光束径より小さい光束径の前記入射光を対応する前記セルに出射させる第2光学系を有する第2光学機構と、前記第2光学機構から前記セルの各々に対して入射し、当該セルを透過した前記入射光を当該セルに向けて反射させる反射部と、前記反射部によって反射されて前記各セルを透過し、前記入射光の入射方向とは反対方向から前記第2光学機構と前記第1光学機構とを通過した当該入射光の反射光の第1偏光成分と第2偏光成分とに分離し、各成分の受光量を示す受光情報を出力する受光部とを備えることを特徴とする。この構成によれば、複数のセルを配列して検体からの磁場を計測する際の装置構成を小型化しつつ、磁場の測定精度を向上させることができる。
【0006】
また、本発明に係る磁気センサー装置は、上記磁気計測装置において、前記第2光学機構を収容する筐体の上面及び底面は、光を透過させる透過領域と光を透過させない非透過領域とを有し、前記透過領域は、前記第2光学系が配置された部分に対応し、前記非透過領域は、前記第2光学系が配置されていない部分に対応することとしてもよい。この構成によれば、第2光学系以外の部分で乱反射した光が受光されないようにすることができる。
【0007】
また、本発明に係る磁気センサー装置は、上記磁気計測装置において、前記第2光学系を出射した前記入射光を偏光面の角度を保持した状態で伝送する伝送媒体によって前記複数のセルと前記第2光学系とが接続され、前記伝送媒体から出射された前記入射光の平行光を対応する前記セルに出射させる第3光学系を有することとしてもよい。この構成によれば、複数のセルを配置する際の自由度を向上させることができる。
【0008】
また、本発明に係る磁気センサー装置は、上記磁気計測装置において、前記第3光学系は、入射時の光束径より小さい光束径の前記入射光を出射させることとしてもよい。この構成によれば、より高い強度の光をセルに照射することができる。
【0009】
また、本発明に係る磁気計測装置は、上記いずれかに記載の磁気センサー装置と、前記磁気センサー装置から出力された受光情報に基づいて、前記複数のセルの位置における磁気を検出する検出部とを備えることを特徴とする。この構成によれば、複数のセルを配列して検体からの磁場を計測する際の装置構成を小型化しつつ、磁場の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る磁気計測装置の構成を表す図である。
【図2】(a)は、実施形態に係る第1光学機構と第2光学機構とを表す図である。(b)及び(c)は、第2光学機構の上面と底面とを表す図である。
【図3】実施形態に係る第2光学部材を表す図である。
【図4】実施形態に係る第2光学系とセルとの位置関係を表す図である。
【図5】(a)は、実施形態に係るセンサー機構の断面図である。(b)は、実施形態に係るセルを表す図である。
【図6】変形例(1)に係る磁気計測装置の構成例を表す図である。
【図7】(a)は、変形例(2)に係る磁気計測装置の構成を表す図である。(b)は、変形例(2)におけるポンプ光照射部とセルとの位置関係を示す図である。
【図8】従来における磁気検出装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(構成)
図1は、本発明に係る実施形態の磁気計測装置の構成例を表す模式図である。磁気計測装置1は、磁気センサー装置としての、レーザー発振装置10、伝送媒体F1、ビームエクスパンダー11、偏光子12、ビームスプリッター13、第1光学機構14、第2光学機構15、センサー機構16、偏光ビームスプリッター18、S波検出用フォトディテクター19、及びP波検出用フォトディテクター20と、検出部としての信号処理装置21とを有する。
【0012】
レーザー発振装置10は、無偏光成分を有するレーザー光を伝送媒体F1に出射する。伝送媒体F1は、光ファイバーで構成され、入射したレーザー光をビームエクスパンダー11に伝送する。ビームエクスパンダー11は、出力端においてレーザー光の光束を拡げ、平行光にしてレーザー光を出射させる。偏光子12は、半波長板を有し、ビームエクスパンダー11から出射されたレーザー光(二点鎖線)を直線偏光に変換する。ビームスプリッター13は、偏光子12から出射された直線偏光成分を有するレーザー光の一部を反射させて図中Y軸方向に出射させる。レーザー発振装置10及び偏光子12は、本発明の出射部として機能する。
【0013】
次に、第1光学機構14及び第2光学機構15について説明する。図2(a)は、第1光学機構14と第2光学機構15とを表す図である。図2(b)は、第2光学機構15を上面側から見た図であり、図2(c)は第2光学機構15を底面側から見た図である。図2(a)において、第1光学機構14は、筐体140内に第1光学系141を有する。筐体140の側面の内側には、例えば光を乱反射させない黒色などの樹脂が接着され、筐体140の底面部140Aと上面部140Bは光を透過させるガラスなどの素材で構成されている。底面部140Aと上面部140Bは円形状であり、底面部140Aは上面部140Bより大きく構成されている。第1光学系141は、例えば平凹レンズと平凸レンズとを組み合わせて構成され、ビームスプリッター13から出射された直線偏光成分を有するレーザー光(二点鎖線)の光束径を拡げた平行光を底面部140Aから出射させる。第1光学系141は、出射する平行光のレーザー光が、後述するセンサー機構16に設けられている各セル161が含まれる大きさの光束径xとなるように設計されている。
【0014】
第2光学機構15は、円筒形状の筐体150内に、複数の円筒形状の第2光学部材151を有する。筐体150は、光を透過させるガラスなどの素材で構成され、筐体150の上面及び底面は、図2(b)(c)に示すように、第2光学部材151が配置された部分以外の斜線部(非透過領域)は例えば黒色の樹脂が接着されている。つまり、第2光学部材151が配置された部分(透過領域)に光を透過させ、第2光学部材151が設けられていない斜線部ではレーザー光が透過及び乱反射しないように構成されている。
【0015】
図3は、第2光学部材151を表す図である。また、図4は、第2光学部材151とセンサー機構16における各セル161との位置関係を表した図である。図3において、第2光学部材151は、光を透過させるガラスなどで構成された円筒形状の筐体151a内に、例えば平凸レンズと平凹レンズとを含む第2光学系152を有する。第2光学部材151は、筐体151aの上面部151Bから入射した第1光学系141からの直線偏光成分を有するレーザー光(二点鎖線)の光束径x1より小さい光束径x2の平行光を底面部151Aから出射させる。図4に示すように、各第2光学部材151は、第2光学系152の光軸がセンサー機構16における対応するセル161の中心部を通るように各々配置されており、各第2光学部材151の底面部151Aから出射されたレーザー光は対応する各セル161に照射される。
【0016】
図5(a)は、センサー機構16の断面を表す図であり、図5(b)は、センサー機構16におけるセル161を表す図である。センサー機構16は、光を透過させる例えばガラスなどで構成された円筒形状の筐体160内に、複数のセル161を有して構成されている。本実施形態では、図4に示したように、5つのセル161が筐体160内に配置されている。セル161は、図5(b)に示すように、4面体で構成され、光を透過させるガラス等の素材で形成されており、内部に所定の原子からなる原子群が含まれている。
【0017】
所定の原子は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)等のアルカリ金属原子である。なお、セル161の少なくとも上面161B及び底面161Aは光を透過するように構成されていればよく、各セル161の底面161A又は上面161Bが同じ向きとなるように配置されていればよい。また、セル161内には、アルカリ金属原子の他に、ヘリウム(He)、窒素(N)などのバッファーガスが含まれていてもよい。アルカリ金属原子は、磁気を検出する際に気体の状態であればよく、常時気体の状態でなくてもよい。
【0018】
また、図5(a)に示すように、各セル161の底面161A側、つまり、筐体160内の底面部には、筐体160内の底面部と同一の径を有する反射板162が設けられている。反射板162は、金属膜または誘電体多層膜を用いた反射面を有する。反射板162は、各セル161の底面161Aを透過したレーザー光を反射させ、各セル161の底面161A側から内部に向けてレーザー光を再び入射させる。
【0019】
図1に戻り、偏光ビームスプリッター18は、反射板162で反射されて各セル161を透過し、第2光学機構15及び第1光学機構14とビームスプリッター13を透過した反射光のS波成分(第1偏光成分)とP波成分(第2偏光成分)とを分離し、S波成分をS波検出用フォトディテクター19に入射させ、P波成分をP波検出用フォトディテクター20に入射させる。S波検出用フォトディテクター19は、入射したS波成分の光量に応じた信号(受光情報)を信号処理部21へ出力する。P波検出用フォトディテクター20は、入射したP波成分の光量に応じた信号(受光情報)を信号処理部21へ出力する。信号処理部21は、S波検出用フォトディテクター19とP波検出用フォトディテクター20とから出力されたS波成分とP波成分の光量を示す電気信号を解析して反射光の偏光面の回転角度を求め、回転角度に応じた磁場の強度を算出する。なお、本実施形態において、偏光ビームスプリッター18とP波検出用フォトディテクター20とS波検出用フォトディテクター19は本発明の受光部として機能し、信号処理部21は本発明の検出部として機能する。
【0020】
(動作)
次に、磁気計測装置1の動作について図1を参照しつつ説明する。検体からの磁気を測定する際には、磁気計測装置1におけるセンサー機構16の下方の位置に測定対象となる検体が位置するように磁気計測装置1が設定される。利用者は、磁気の計測を開始する際、磁気計測装置1において、レーザー発振装置10からプローブ光であるレーザー光を出力させる。レーザー発振装置10から出力された無偏光のレーザー光は、伝送媒体F1を介してビームエクスパンダー11に入射する。レーザー光はビームエクスパンダー11によって平行光にされて偏光子12に入射し、偏光子12によって直線偏光に変換されてビームスプリッター13に向かう。ビームスプリッター13に入射した直線偏光のレーザー光は、光路R1を通ってセル161に照射される。以下、光路R1を通るレーザー光を入射光と称する。
【0021】
つまり、直線偏光の入射光は、ビームスプリッター13で反射されて第1光学機構14の第1光学系141に入射し、第1光学系141において、偏光面の角度が保持された状態で光束径が拡げられ、第1光学機構14から平行光の状態で出射される。第1光学機構14を出射した入射光は、第2光学機構15の各第2光学部材151に入射する。レーザー光は、第2光学部材151の第2光学系152によって偏光面の角度が保持された状態で光束径が絞られ、センサー機構16の側へ平行光の状態で出射される。第2光学機構15の各第2光学系152から出射された直線偏光の入射光は、対応する各セル161に向けて入射する。
【0022】
各セル161に直線偏光の入射光が入射すると、各セル161内のアルカリ金属原子群はアライメントされ、線形二色性が生じる。アルカリ金属原子群は、各セル161が配置された位置における検体からの磁場に応じて歳差運動を行う。入射光は、各セル161内のアルカリ金属原子群を通過すると、ファラデー回転効果により偏光面が回転されて各セル161を透過する。
【0023】
偏光面が回転された入射光は反射板162によって反射される。そして、その反射光は、各セル161の底面161Aからセル161内に再び入射し、アルカリ金属原子群を通過する。反射光の偏光面は、ファラデー回転の非相反性によって光路R1における偏光面の回転方向と同じ方向に回転される。各セル161において偏光面が回転されて各セル161を透過した反射光は、光路R2を通って第2光学機構15に向かう。第2光学機構15の底面側から入射した各セル161からの反射光は、各セル161に対応する各第2光学系152に各々入射する。反射光は、偏光面の角度が保持された状態で、第2光学部材151の上面部151Bにおいて光束径が拡げられ、第1光学機構14の側へ平行光の状態で出射される。第1光学機構14に入射した反射光は、偏光面の角度が保持された状態で第1光学系141の上面部140Bにおいて光束径が絞られ、第1光学機構14から出射してビームスプリッター13に向かう。
【0024】
ビームスプリッター13に入射した反射光の一部が偏光ビームスプリッター18に導かれる。偏光ビームスプリッター18において、反射光はP波成分とS波成分とに分離され、P波成分はP波検出用フォトディテクター20で受光され、S波成分はS波検出用フォトディテクター19で受光される。P波検出用フォトディテクター20とS波検出用フォトディテクター19は、P波成分とS波成分の各光量に応じた電気信号を信号処理部21に各々出力する。信号処理部21は、P波成分とS波成分の各光量に応じた電気信号に基づいて、反射光の偏光面の回転角度から検体における磁場の強度を算出する。
【0025】
上記実施形態では、複数のセル161に共通の光源からプローブ光を分配して照射する構成となっており、各セル161に対して照射されたプローブ光の反射光を光源の側において受光する構成となっているため、セル161ごとにプローブ光を照射して受光する構成と比べて装置を小型化することができる。また、各セル161に照射されるプローブ光は、第1光学系141によって、各セル161が配置される範囲を含むようにプローブ光の光束径が拡げられ、第2光学系152においてセル161ごとにプローブ光の光束径が絞られるため、より高い光強度のプローブ光を各セル161に入射させることができる。また、各セル161を透過して反射されたプローブ光は、光路R2において、第2光学機構15と第1光学機構14において偏光面の角度が保持された状態で受光されるため、信号処理部21における磁場の検出精度を低下させないようにすることができる。
【0026】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のように変形させて実施してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0027】
(1)上述した実施形態において、センサー機構16の部分が第2光学機構15と分離された構成であってもよい。このような構成例を図6に示す。図6において、実施形態と同様の構成は実施形態で用いた符号を付している。本変形例に係る磁気計測装置1Aは、図6に示すように、第2光学機構15とセンサー機構16Aとを伝送媒体F2によって接続して構成されている。第2光学機構15には、実施形態と同様に、第2光学部材151が各セル161に対応して設けられており、センサー機構16Aの筐体160内の上面には、第2光学機構15における第2光学系152と同じ構成の第3光学系163が各セル161と対応する位置に設けられている。第2光学部材151と第3光学系163の組の数だけ伝送媒体F2が設けられている。伝送媒体F2は、偏波保持光ファイバーなどで構成され、偏光面の角度を保持した状態で光を伝送する。
【0028】
ビームスプリッター13から直線偏光の入射光が第1光学機構14に入射すると、入射光は、偏光面の角度が保持された状態で光束径が拡げられて平行光として第2光学機構15に入射する。入射光は、第2光学機構15に入射すると、各第2光学部材151で偏光面の角度が保持された状態で光束径が絞られて伝送媒体F2に入射する。伝送媒体F2内を通過して出射した入射光は、センサー機構16Aにおける各第3光学系163に入射する。入射光は、各第3光学系163に入射すると、偏光面の角度が保持された状態で光束径が絞られて平行光として第3光学系163から出射し、各セル161に入射する。各セル161に入射した入射光は、実施形態と同様に反射板162で反射され、その反射光が各セル161の内部に向けて入射する。反射光は、各セル161を透過して第3光学系163に入射し、第3光学系163において光束径が拡げられて伝送媒体F2に入射する。各伝送媒体F2を通過した反射光は、第2光学機構15の各第2光学部材151に入射し、第2光学系152において偏光面が保持された状態で光束径が拡げられて第1光学機構14に入射する。第1光学機構14に入射した反射光は、偏光面が保持された状態で第1光学系141によって光束径が絞られてビームスプリッター13に入射する。なお、ビームスプリッター13を透過した反射光は実施形態と同様にしてP波成分とS波成分に分離されて受光される。このように、センサー機構16の部分を伝送媒体F2によって接続することにより、センサー機構16の配置の自由度を向上させることができる。
【0029】
(2)上述した実施形態では、各セル161にポンプ光を照射しない例であったが、各セル161にポンプ光を照射するように構成してもよい。この場合の例を図7(a)に示す。図7(a)において、実施形態と同様の構成は実施形態で用いた符号を付している。磁気計測装置1Bは、センサー機構16に対してX軸方向にポンプ光を照射するポンプ光照射ユニット40を有する。図7(b)は、センサー機構16の上面側から見た各セル161とポンプ光照射ユニット40の位置関係を表す図である。この図に示すように、ポンプ光照射ユニット40は、X軸方向におけるセル161の列と対応するように3つのポンプ光照射部401を有する。ポンプ光照射部401は、無偏光成分を有するレーザー光を出射する光源、コリメートレンズ、偏光板、四分の一波長板等の光学部材(図示略)を出力端に有し、光源からのレーザー光を円偏光成分を有するポンプ光に変換して出力する。この構成の場合、Z軸方向の磁場が検出される。
【0030】
(3)上述した実施形態では、信号処理部21において各セル161における磁場の強度を算出する例を説明したが、S波検出用フォトディテクター19とP波検出用フォトディテクター20で受光されたS波成分とP波成分の光量に応じた電気信号を磁気計測装置1の外部の演算装置に出力し、当該演算装置においてプローブ光の回転角を算出し、回転角に応じた磁場の大きさを求めるようにしてもよい。
【0031】
(4)上述した実施形態では、第2光学機構15の筐体150の上面と底面の一部に黒色の樹脂を接着する例を説明したが、筐体150の内面にも同様に黒色の樹脂を接着し、筐体150内において光が乱反射しないように構成してもよい。
【0032】
(5)上述した実施形態では、第2光学系152は平凸レンズと平凹レンズとを組み合わせて構成されている例を説明したが、例えば、フライアレイレンズを複数段組み合わせて構成するなど、第2光学系152を透過する光の偏光状態を保持し、光路R1における第2光学系152の入射側より出射側の光束径が絞られる光学系であればこれに限らない。
【符号の説明】
【0033】
1,1A,1B・・・磁気計測装置、10・・・レーザー発振装置、11・・・ビームエクスパンダー、12・・・偏光子、13・・・ビームスプリッター、14・・・第1光学機構、15・・・第2光学機構、16・・・センサー機構、18・・・偏光ビームスプリッター、19・・・S波検出用フォトディテクター、20・・・P波検出用フォトディテクター、21・・・信号処理部、40・・・ポンプ光照射ユニット、140,150,160・・・筐体、141・・・第1光学系、151・・・第2光学部材、152・・・第2光学系、161・・・セル、162・・・反射板、401・・・ポンプ光照射部、F1,F2・・・伝送媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属原子を収容した複数のセルと、
直線偏光成分を有する光を入射光として出射する出射部と、
前記出射部から出射された入射光の偏光面の角度を保持した状態で、前記複数のセルが配置された範囲の大きさに相当する光束径の前記入射光を出射させる第1光学系を有する第1光学機構と、
前記複数のセルに各々対応して設けられ、前記第1光学機構から入射した前記入射光の偏光面の角度を保持した状態で、入射時の光束径より小さい光束径の前記入射光を対応する前記セルに出射させる第2光学系を有する第2光学機構と、
前記第2光学機構から前記セルの各々に対して入射し、当該セルを透過した前記入射光を当該セルに向けて反射させる反射部と、
前記反射部によって反射されて前記各セルを透過し、前記入射光の入射方向とは反対方向から前記第2光学機構と前記第1光学機構とを通過した当該入射光の反射光の第1偏光成分と第2偏光成分とに分離し、各成分の受光量を示す受光情報を出力する受光部と
を備えることを特徴とする磁気センサー装置。
【請求項2】
前記第2光学機構を収容する筐体の上面及び底面は、光を透過させる透過領域と光を透過させない非透過領域とを有し、前記透過領域は、前記第2光学系が配置された部分に対応し、前記非透過領域は、前記第2光学系が配置されていない部分に対応することを特徴とする請求項1に記載の磁気センサー装置。
【請求項3】
前記第2光学系を出射した前記入射光を偏光面の角度を保持した状態で伝送する伝送媒体によって前記複数のセルと前記第2光学系とが接続され、
前記伝送媒体から出射された前記入射光の平行光を対応する前記セルに出射させる第3光学系を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気センサー装置。
【請求項4】
前記第3光学系は、入射時の光束径より小さい光束径の前記入射光を出射させることを特徴とする請求項3に記載の磁気センサー装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の磁気センサー装置と、
前記磁気センサー装置から出力された受光情報に基づいて、前記複数のセルの位置における磁気を検出する検出部と
を備えることを特徴とする磁気計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−79893(P2013−79893A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220726(P2011−220726)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】