説明

磁気テープのエッジ処理装置及びエッジ処理方法

【課題】 磁気テープの磁性層の凸部を安定して研磨処理することができる磁気テープのエッジ処理装置及びエッジ処理方法を提供する。
【解決手段】 本発明のエッジ処理装置は、搬送される磁気テープの被処理面の反対側の面を支持する湾曲面を有するテープ支持部材と、磁気テープのエッジに摺接するように表面に砥粒加工が施された処理シートを供給するシート供給部材と、処理シートを磁気テープの被処理面のエッジに押圧する押圧部と、を備え、シート供給部材が、処理シートを磁気テープの処理部において該磁気テープの搬送方向と反対向きに摺接させる駆動機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープのエッジの裁断面を処理する磁気テープのエッジ処理装置及びエッジ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープは、幅広の支持体フィルム上に磁性層を塗布し、磁気テープフィルムを製造し、その後、スリッティング工程において、磁気テープフィルムを所望の幅寸法に裁断することで製造される。
スリッティング工程では、磁気テープフィルムを一対の刃物で挟み込むことで磁気テープが裁断されるが、このとき、裁断された磁気テープの幅方向端部であるエッジには、刃物の押圧に起因する変形によって生じた微細なひび割れ(クラック)が生じることがある。そこで、従来、下記特許文献1及び2に示すように、スリッティング工程後に、裁断された磁気テープのエッジに研磨処理を施す工程が行われている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−352421号公報
【特許文献2】特開平7−105538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、裁断された磁気テープは、支持体の各面に磁性層とバックコート層とを積層させてなる多層構造であることから、磁性層が支持体端部より面方向に凹凸した状態となってしまうことがある。そして、磁性層において支持体より突出した凸部が形成されると、磁気テープを記録再生装置で走行させた際に、凸部が剥離し、記録再生時の特性を劣化させてしまうことが懸念される。
【0005】
上記特許文献1は、テープ裁断面処理方法及び装置に関するものであるが、エッジ処理時に円板状に巻回された磁気テープを供給するとき、磁性面を外周側としなくては処理できず、テープの供給状態が制限されていた。また、ブレードにおいて、常に同じ部位に走行する磁気テープの磁性面が摺接されるため、長時間処理するとブレードが摩耗することで安定した処理ができなくなる点で改善の余地があった。
上記特許文献2の方法では、処理部分に供給される磁気テープを支持する部材がないため、磁気テープの厚みが薄くて剛性が低い場合には、処理の切削抵抗によって当該磁気テープの処理部が撓んでしまい、安定した処理ができなくなる点で改善の余地があった。また、磁気テープが撓み易い方向(磁気テープの厚み方向)に処理材を送り移動するため、処理部における撓みが拡大してしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、磁気テープの磁性層の凸部を安定して研磨処理することができる磁気テープのエッジ処理装置及びエッジ処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、磁気テープのエッジを研磨処理するエッジ処理装置であって、搬送される磁気テープの被処理面の反対側の面を支持する湾曲面を有するテープ支持部材と、前記磁気テープのエッジに摺接するように表面に砥粒加工が施された処理シートを供給するシート供給部材と、前記処理シートを前記磁気テープの前記被処理面のエッジに押圧する押圧部と、を備え、前記シート供給部材が、前記処理シートを前記磁気テープの処理部において該磁気テープの搬送方向と反対向きに摺接させる駆動機構を備えていることを特徴とする磁気テープのエッジ処理装置によって達成される。
【0008】
また、本発明の上記目的は、磁気テープのエッジを研磨処理する磁気テープのエッジ処理方法であって、前記磁気テープの被処理面の反対側の面をテープ支持部材の湾曲面によって支持させた状態で搬送し、搬送される前記磁気テープのエッジに、表面に砥粒加工が施された処理シートを摺接させるように供給し、前記処理シートを押圧部によって前記磁気テープの前記処理面に押圧し、前記処理シートを前記磁気テープの処理部において該磁気テープの搬送方向と反対向きに摺接させることを特徴とする磁気テープのエッジ処理方法によって達成される。
【0009】
本発明によれば、磁気テープのエッジ処理を行う際に、磁気テープをテープ支持部材によって被処理面とは反対側の面から支持した状態で、処理テープを磁気テープのエッジに押圧部によって押圧することでエッジを研磨処理するものである。ここで、処理テープが磁気テープと摺接する処理部において該磁気テープの搬送される方向と反対向きに摺接されるように構成されている。磁気テープがテープ支持部材によって支持されることから処理テープをエッジに押圧した際に、エッジが被処理面の反対側に変形してしまうことを防止することができ、エッジと処理テープとの接触圧が変動してしまうことがなく、安定してエッジ処理を行うことができる。また、処理テープを磁気テープの搬送方向に対して反対向きに搬送させて摺接させていることため、処理テープ又は磁気テープを停止した状態で研磨処理する構成に比して、エッジに摺接させる処理テープの距離をより長く稼ぐことができ、エッジの処理効率が向上する。
【0010】
また、押圧部が、湾曲面を有し、湾曲面によって処理シートを支持しつつ前記磁気テープに押し付けることが好ましい。こうすれば、押圧部の湾曲面に支持されて搬送される処理シートのうち、湾曲面の頂点近傍の部位が磁気テープに対して局所的に摺接されるようになる。すると、処理シートを平面によって磁気テープに押し付ける構成に比べて、押圧部の押圧する力が摺接部位で分散されてしまうことを抑制することができ、磁気テープのエッジに対して処理テープによってより均一に研磨処理を行うことができるようになる。
【0011】
駆動機構が、処理シートの各端部を一対の駆動軸にそれぞれ巻回させて掛け渡され、一対の駆動軸を軸回転させることで、処理シートが押圧部を経由して搬送される構成であることが好ましい。こうすれば、処理シートを所定の幅寸法を有する長尺帯状に形成し、一対の駆動軸のそれぞれに巻回させた状態で、該一対の駆動軸の一方の駆動軸から送り出しつつ他方の駆動軸によって巻き取ることで、処理シートを搬送させる機構を構成することができる。そして、処理シートを長尺帯状にすることで、砥粒加工を施す表面の面積を広く確保することができるうえ、研磨処理時以外は、処理シートを駆動軸に巻き取った状態として保管することができ、取り扱いやすい。
【0012】
テープ支持部材が、円周面上に搬送される磁気テープを支持する円板状のガイド板と、ガイド板の両端面に円周面から突出するフランジ部とを有し、処理シートを磁気テープに押し当てた状態で、フランジ部において押圧部を逃がすための切欠部が形成されていることが好ましい。こうすれば、搬送される磁気テープがガイド板の円周面両側に突設するフランジ部によって幅方向の移動が規制され、常に一定の位置で搬送されるようにすることができる。このとき、押圧部を磁気テープに押し付ける場合に、フランジ部において切欠部が形成された箇所に押圧部を配置するため、押圧部がフランジ部と干渉することなく、処理テープを磁気テープに確実に摺接させることができる。
【0013】
シート供給部材が、一対の駆動軸と押圧部とを一体で変位駆動可能に支持する可動基板を備え、この可動基板に位置調整機構取り付けられ、処理シートを磁気テープに押し付ける方向に可動基板を進退駆動させ、且つ、磁気テープの処理面に対する処理シートの処理面の角度を変化さえるように可動基板の傾きを調整することが可能であることが好ましい。こうすれば、位置調整機構によって可動基板を駆動することで、磁気テープに対して押圧部を押圧する量と、磁気テープの被処理面に対する処理テープの処理面との角度を変化させることができるため、磁気テープの厚さや剛性等に応じて所望の位置及び角度に押圧部を調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁気テープの磁性層の凸部を安定して研磨処理することができる磁気テープのエッジ処理装置及びエッジ処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明にかかるエッジ処理装置の位置実施形態の構成を示す図である。図2は、図1のエッジ処理装置の側面図である。図3は、図2のエッジ処理装置の矢印Z方向に見た状態の図である。
【0016】
エッジ処理装置10は、磁気テープTにおいてエッジに研磨が施される側の面である被処理面に対し、反対側の面を支持するテープ支持部材11と、前記磁気テープTのエッジに研磨処理を施す処理シート22を供給するシート供給部材20とを備えている。本実施形態では、磁気テープTの磁性層における凸部を切削することを目的として、磁性層側の面を被処理面とし、磁性層の反対側の面であるバックコート層側の面をテープ支持部材11に支持させる構成としている。
【0017】
処理シート22は、表面に砥粒加工が施された長尺帯状の部材であって、例えば、ベースシート材に砥粒層を接着させた構成である。本実施形態では、砥粒として、粒度番号が♯600番から♯1000番のものを使用した。
【0018】
テープ支持部材11は、円板状のガイド板12を有している。ガイド板12の円周面上でその円周方向に沿って磁気テープTが搬送される。また、ガイド板12の両端面のそれぞれには円周面から突出するフランジ部14が形成されている。搬送される磁気テープTは、これらフランジ部14同士の間を円周面によって支持されつつ搬送される。ここで、ガイド板12は、磁気テープTを支持する湾曲面がその円周面の少なくとも一部に形成されていればよく、例えば、半円形の板形状とし、湾曲した一部の周面において搬送される磁気テープTを支持する構成としてもよい。
【0019】
なお、図示しないが、磁気テープTの搬送方向においてテープ支持部材11の上流側で磁気テープTをテープ支持部材11へ繰り出し、テープ支持部材11から磁気テープTを搬送方向の下流側へ送り出す搬送機構が設けられている。
【0020】
シート供給部材20は、一対の駆動軸26a,26bを有し、処理シート22の長手方向における各端部を一対の駆動軸26a,26bのそれぞれに巻回させて掛け渡し、これら一対の駆動軸26a,26bを図2に示す駆動部32によって軸回転させ、一対の駆動軸26a,26bの間を所定の経路で処理シート22を搬送させる機構を有している。
【0021】
また、シート供給部材20は、搬送される処理シート22を磁気テープTの被処理面のエッジに押圧する押圧部24が形成されている。押圧部24は、少なくとも一部に湾曲面を有し、湾曲面によって処理シート22における磁気テープTに摺接しない側の面を支持するとともに、支持する処理シート22を磁気テープTの被処理面のエッジに押圧させる構成である。本実施形態では、押圧部24は、円柱形状の部材で、その周面の一部を湾曲面としている。しかし、押圧部24の形状としては、円柱形状に特に限定されない。
【0022】
図1に示すように、テープ支持部材11は、ガイド板12の一方のフランジ部14の一部に、押圧部24に支持された処理シート22を磁気テープTに押し当てた状態で、押圧部24がフランジ部14と干渉しないように、該押圧部24を逃がすための切欠部14aが形成されている。こうすれば、搬送される磁気テープTがガイド板12の円周面両側に突設するフランジ部14によって幅方向の移動が規制され、常に一定の位置で搬送されるようにすることができる。このとき、押圧部24を磁気テープTに押し付ける場合に、フランジ部14において切欠部14aが形成された箇所に押圧部24を配置するため、該押圧部24がフランジ部14と干渉することなく、支持する処理テープ22を磁気テープTに確実に摺接させることができる。
【0023】
磁気テープTのエッジ処理を行う際は、先ず、磁気テープTをテープシッジ部材11のガイド板12の周面上に被処理面を外側にした状態で配置し、搬送させる。そして、シート供給部材20に一対の駆動軸26a,26bに巻回され、且つ、その一部が押圧部24に支持された処理シート22を搬送させるとともに、押圧部24によって支持された処理テープ22を搬送される磁気テープTの被処理面におけるエッジに押し付ける。こうすると、処理テープ22の表面と磁気テープTのエッジとが摺接し、処理テープ22の表面の砥粒によってエッジが研磨されることで、エッジにおける磁性層の凸部が切削されることで除去される。このとき、磁気テープTと処理テープ22とが摺接する処理部において、一対の駆動軸26a,26bが、処理テープ22を該磁気テープTの搬送方向と反対向きに摺接させるように駆動する駆動機構として機能する。
【0024】
図2は、エッジ処理装置が磁気テープTのエッジ処理を行う際の状態を示している。なお、図2において、ガイド板12のフランジ部14の一部を説明のため点線で示すことにより省略している。エッジ処理時には、磁気テープTの被処理面に対して、押圧部24に支持された部位の処理テープ22の処理面が所定の傾斜角度(以下、第1の押し当て角度という。)A1となるように保持される。また、押圧部24を磁気テープTの幅方向(図2において左右方向)に対して押し込まれる量(以下、押込み量a)が一定となるように保持される。
ここで、本実施形態において、第1の押し当て角度A1は、35°から45°の範囲とすることが好ましい。また、押込み量aは、0.1mmから0.5mmの範囲とすることが好ましい。
【0025】
本実施形態のエッジ処理装置10は、エッジ処理を行う前に、第1の押し当て角度A1及び押込み量aが所望の範囲内になるようにシート供給部材20の位置及び方向を調整することができる。具体的には、シート供給部材20は、可動基板34を備え、該可動基板34に押圧部24が固定されている。また、可動基板34には、一対の駆動軸26a,26bが挿通されるとともに、軸回転自在に支持されている。
【0026】
可動基板34の一端が、可動シャフト36によって駆動部38に連結されている。駆動部38は、リニアガイド部42に駆動可能に取り付けられている。駆動部38により可動シャフト36を軸回転させることで、矢印Xで示すように可動基板34を傾ける角度を調整することができる。また、駆動部38をリニアガイド部42において案内させて、矢印Yで示すように直線方向に移動させることで、可動基板34をテープ支持部材11に対して進退駆動させることができる。このように、エッジ処理装置10は、駆動部38の駆動によって可動基板34の位置及び方向を調整する位置調整機構を備えおり、押圧部24を磁気テープTに押し付ける傾斜角度Aと、押込み量aとを調整することができる。
【0027】
図3に示すように、エッジ処理時において、処理テープ22によって研磨処理された磁気テープTから削られた切削粉を除去する機構を有していることが好ましい。本実施形態のエッジ処理装置10は、エアを噴き付けることで切削粉を磁気テープ及び処理テープ22から浮かすエアブロー部44と、エアによって浮上した切削粉を吸引するサクション部46とを備えている。なお、切削粉を吸引するだけで十分であれば、エアブロー部44を設けず、サクション部46のみを設けてもよい。
【0028】
本実施形態のエッジ処理装置10は、磁気テープTのエッジ処理を行う際に、磁気テープTをテープ支持部材11によって被処理面とは反対側の面から支持した状態で、処理テープ22を磁気テープTのエッジに押圧部24によって押圧することでエッジを研磨処理するものである。ここで、処理テープ22が磁気テープTと摺接する処理部において該磁気テープTの搬送される方向と反対向きに摺接されるように構成されている。磁気テープTがテープ支持部材11によって支持されることから処理テープ22をエッジに押圧した際に、エッジが被処理面の反対側に変形してしまうことを防止することができ、エッジと処理テープ22との接触圧が変動してしまうことがなく、安定してエッジ処理を行うことができる。また、処理テープ22を磁気テープTの搬送方向に対して反対向きに搬送させて摺接させていることため、処理テープ22又は磁気テープTを停止した状態で研磨処理する構成に比して、エッジに摺接させる処理テープ22の距離をより長く稼ぐことができ、エッジの処理効率が向上する。
【0029】
また、本実施形態では、押圧部24が、湾曲面を有し、湾曲面によって処理シート22を支持しつつ磁気テープTに押し付ける構成であるため、押圧部24の湾曲面に支持されて搬送される処理シート22のうち、湾曲面の頂点近傍の部位が磁気テープTに対して局所的に摺接されるようになる。すると、処理シート22を平面によって支持しながら磁気テープTに押し付ける構成に比べて、押圧部24の押圧する力が摺接部位で分散されてしまうことを抑制することができ、磁気テープTのエッジに対して処理テープ22によってより均一に研磨処理を行うことができるようになる。
【0030】
図4は、押圧部24によって処理テープ22が磁気テープTに押し付けられている状態を模式的に示す拡大図である。押圧部24の周面の、処理テープ22を支持する湾曲面の曲率半径Rは、20mmから30mmの範囲とすることが好ましい。
【0031】
エッジ処理装置10は、駆動機構として、処理シート22の各端部を一対の駆動軸26a,26bにそれぞれ巻回させて掛け渡され、一対の駆動軸26a,26bを軸回転させることで、処理シート22が押圧部24を経由して搬送される構成であるため、処理シート22を所定の幅寸法を有する長尺帯状に形成し、一対の駆動軸26a,26bのそれぞれに巻回させた状態で、該一対の駆動軸26a,26bの一方の駆動軸26bから送り出しつつ他方の駆動軸26aによって巻き取ることで、処理シート22を搬送させる機構を構成することができる。そして、処理シート22を長尺帯状に形成しているため、砥粒加工を施す表面の面積を広く確保することができるうえ、研磨処理時以外は、処理シート22を一対の駆動軸26a,26に巻き取った状態として保管することができ、取り扱いやすい。
【0032】
本実施形態のエッジ処理装置10は、シート供給部材22が、一対の駆動軸26a,26bと押圧部24とを一体で変位駆動可能に支持する可動基板34を備え、処理シート22を磁気テープTに押し付ける方向に可動基板34を進退駆動させ、且つ、磁気テープTの処理面に対する処理シート22の処理面の角度を変化さえるように可動基板34の傾きを調整することが可能な位置調整機構が設けられている構成である。この位置調整機構によって可動基板34を駆動することで、磁気テープTに対して押圧部24を押圧する量と、磁気テープTの被処理面に対する処理テープ22の処理面との角度を変化させることができるため、磁気テープTの厚さや剛性等に応じて所望の位置及び角度に押圧部24を調整することができる。
【0033】
(実施例)
次に、本発明にかかるエッジ処理装置の一例として上記実施形態のものを使用し、磁気テープにエッジ処理を施し、磁気テープの磁性層の凸部の状態を確認した。本実施例では、磁気テープは、厚み7μmのものを使用し、磁気テープTを搬送するテープの搬送速度,処理シートの送り速度,第1の押し当て角度(A1),第2の押し当て角度(A2),及び,押込み量(a)を下記表1の値とした。ここで、第2の押し当て角度A2は、図3を参照すると、磁気テープTにおける処理テープ22と摺接する部位における、搬送方向に等しい向きの接線と、押圧部24の中心軸Sとの角度A2を意味するものとする。
【0034】
【表1】

【0035】
図5は、本実施例において、エッジ処理の対象となる磁気テープTの断面を模式的に示した図である。図5に示すように磁気テープTは、支持体1の一方の面に磁性層2が形成され、また他方の面にバックコート層3とが形成された多層構造を有している。本実施例のエッジ処理を行う前には、磁性層2の縁部に形成された凸部が支持体1の縁部より突出量bだけ突出している。エッジ処理前と処理後において磁性層の突出量を測定する試験を行った。突出量は、レーザー顕微鏡によるテープ断面の高度差測定結果から算出した。結果を下記表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2に示すように、エッジ処理前の磁性層2の凸部の突出量が0.65μmであったのに対し、本実施例のエッジ処理後において突出量を−0.55μmまで低減することができた。なお、突出量については、支持体の縁部の位置を0とした場合に、突出する向きを正(+)の向きとし、支持体の縁部より磁気テープの幅方向に減退する向きを負(−)の向きとした。
【0038】
本発明にかかるエッジ処理装置及びエッジ処理方法によれば、処理後において、厚さが6.5μmから10μmの磁気テープの場合に、磁性層の突出量を−0.6μmから−0.1μmの範囲にすることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、支持体に対する磁性層の凸部を低減する手法に適用したが、図5示すように支持体1に対してバックコート層3が突出してい場合、バックコート層3における凸部の突出量cを低減する手法として適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかるエッジ処理装置の位置実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1のエッジ処理装置の側面図である。
【図3】図2のエッジ処理装置の矢印Z方向に見た状態の図である。
【図4】押圧部によって処理テープが磁気テープに押し付けられている状態を模式的に示す拡大図である。
【図5】エッジ処理の対象となる磁気テープの断面を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0041】
10 エッジ処理装置
11 テープ支持部材
12 ガイド板
14 フランジ部
20 シート供給部材
22 処理シート
24 押圧部
26a,26b 駆動軸
T 磁気テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープのエッジを研磨処理するエッジ処理装置であって、
搬送される磁気テープの被処理面の反対側の面を支持する湾曲面を有するテープ支持部材と、
前記磁気テープのエッジに摺接するように表面に砥粒加工が施された処理シートを供給するシート供給部材と、
前記処理シートを前記磁気テープの前記被処理面のエッジに押圧する押圧部と、を備え、
前記シート供給部材が、前記処理シートを前記磁気テープの処理部において該磁気テープの搬送方向と反対向きに摺接させる駆動機構を備えていることを特徴とする磁気テープのエッジ処理装置。
【請求項2】
前記押圧部が、湾曲面を有し、前記湾曲面によって前記処理シートを支持しつつ前記磁気テープに押し付けることを特徴とする請求項1に記載の磁気テープのエッジ処理装置。
【請求項3】
前記駆動機構が、前記処理シートの各端部を一対の駆動軸にそれぞれ巻回させて掛け渡され、前記一対の駆動軸を軸回転させることで、前記処理シートが前記押圧部を経由して搬送される構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気テープのエッジ処理装置。
【請求項4】
前記テープ支持部材が、円周面上に搬送される磁気テープを支持する円板状のガイド板と、前記ガイド板の両端面に前記円周面から突出するフランジ部とを有し、前記処理シートを前記磁気テープに押し当てた状態で、前記フランジ部において前記押圧部を逃がすための切欠部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の磁気テープのエッジ処理装置。
【請求項5】
前記シート供給部材が、前記一対の駆動軸と前記押圧部とを一体で変位駆動可能に支持する可動基板を備え、前記可動基板に位置調整機構が取り付けられ、前記処理シートを前記磁気テープに押し付ける方向に前記可動基板を進退駆動させ、且つ、前記磁気テープの処理面に対する前記処理シートの処理面の角度を変化さえるように調整することが可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の磁気テープのエッジ処理装置。
【請求項6】
磁気テープのエッジを研磨処理する磁気テープのエッジ処理方法であって、
前記磁気テープの被処理面の反対側の面をテープ支持部材の湾曲面によって支持させた状態で搬送し、搬送される前記磁気テープのエッジに、表面に砥粒加工が施された処理シートを摺接させるように供給し、前記処理シートを押圧部によって前記磁気テープの前記処理面に押圧し、前記処理シートを前記磁気テープの処理部において該磁気テープの搬送方向と反対向きに摺接させることを特徴とする磁気テープのエッジ処理方法。
【請求項7】
前記押圧部が、湾曲面を有し、前記湾曲面によって前記処理シートを支持しつつ前記磁気テープに押し付けることを特徴とする請求項6に記載の磁気テープのエッジ処理方法。
【請求項8】
前記駆動機構が、前記処理シートの各端部を一対の駆動軸にそれぞれ巻回させて掛け渡され、前記一対の駆動軸を軸回転させることで、前記処理シートが前記押圧部を経由して搬送されることを特徴とする請求項6又は7に記載の磁気テープのエッジ処理方法。
【請求項9】
前記テープ支持部材が、円周面上に搬送される磁気テープを支持する円板状のガイド板と、前記ガイド板の両端面に前記円周面から突出するフランジ部とを有し、前記フランジ部に形成された切欠部で前記押圧部を逃がすとともに、前記処理シートを前記磁気テープに押し当てることを特徴とする請求項6から8のいずれか1つに記載の磁気テープのエッジ処理方法。
【請求項10】
前記シート供給部材が、前記一対の駆動軸と前記押圧部とを一体で変位駆動可能に支持する可動基板を備え、前記可動基板に位置調整機構が設けられ、前記処理シートを前記磁気テープに押し付ける方向に前記可動基板を進退駆動させ、且つ、前記磁気テープの処理面に対する前記処理シートの処理面の角度を変化さえるように前記可動基板の傾きを調整することを特徴とする請求項6から9のいずれか1つに記載の磁気テープのエッジ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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